(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
押し子、該押し子が挿嵌される注射筒、及び該注射筒に連結される針基と被検体内へ穿刺される針管からなる注射針を備える注射器によって、被検体に内容物を注入させる注射装置であって、
被検体と当接可能であり、前記針管が通る開口部が形成された当接ヘッドと、
前記注射筒及び前記注射針を保持する可動ホルダーと、
前記当接ヘッドに固定される支持機構と、
前記押し子を前記注射筒の内部へ押し込む内容物注入制御機構と、を備えており、
前記可動ホルダーが前記支持機構に沿って移動することで、前記注射筒及び前記注射針を、前記当接ヘッドに対して移動させ、
前記注射器は、当該注射装置に対して着脱可能であり、
前記内容物注入制御機構は、前記注射筒内に対して前記押し子を押し込む押圧部を備え、
前記可動ホルダーが前記当接ヘッドへ近づく前進方向へ移動することで、前記針管を被検体に穿刺し、被検体の内部へと進入させ、
前記可動ホルダーが前記当接ヘッドから離れる後退方向へ移動することで、前記針管を被検体に対して後退させながら、前記可動ホルダーが前記押圧部に近づき、前記注射筒内に対して前記押し子を押し込んで、前記内容物を被検体に注入し、
前記注射筒は、前記内容物を収容する外筒部と、前記外筒部の後端に設けられるフランジとを備え、
前記可動ホルダーの上部には、前記フランジを保持し、前記可動ホルダーに対する前記フランジの前記後退方向への移動を規制するフランジ嵌合部と、前記可動ホルダーに対する前記外筒部の横方向への変位を規制する外筒部挟持部とが設けられ
前記フランジ嵌合部は、前記フランジの前記外筒部から横方向に延出している部分を、前端方向及び後端方向から保持し、
前記外筒部挟持部は、前記可動ホルダーの上面に起立する線状の突起により、前記外筒部を挟み込んで保持し、
前記外筒部挟持部及び前記フランジ嵌合部の上方は開放されており、前記フランジ嵌合部の前記後端方向の前記外筒部に相当する中央部分及び下方は開放されている、ことを特徴とする
注射装置。
前記可動ホルダーは、前記針基の先端付近と当接する突起により、前記注射針の移動を停止させて保持する針基ストッパーを備え、前記針基ストッパーは、前記可動ホルダーに対する、前記針基の前記前進方向への移動を規制する、ことを特徴とする
請求項1又は2に記載の注射装置。
前記可動ホルダーは、前記針基を、周面状に保持する周面保持部を備え、前記周面保持部は、前記可動ホルダーに対する、前記針基の横方向の変位を規制することを特徴とする
請求項1から3のいずれか一項に記載の注射装置。
前記支持機構は、上方及び側方において少なくとも前記注射針及び前記可動ホルダーの前記注射針を保持する部分を、周面方向で覆うカバーを備え、前記可動ホルダーが前記支持機構の内部に挿入されることを特徴とする
請求項10に記載の注射装置。
前記当接ヘッドの前記開口部は、前記当接ヘッドの下面に対して、前記可動ホルダーの移動に伴い前記針管が通る方向及び前記当接ヘッドの上下方向の二股方向に貫通しており、
前記当接ヘッドの上面における前記開口部が、注入点に対応する位置から前記支持機構に向かって細長く伸びて開口する長穴形状であることを特徴とする
請求項1から14のいずれか一項に注射装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本願の第1実施形態の注射装置の説明図である。(a)は見取り図であり、(b)は、側面図である。
【0015】
[全体説明]
注射装置1は、被検体(人間、動物、個別の臓器、皮膚等)に細胞懸濁液などの物質を含む内容物を注入する注射器が装着される注射装置である。注射装置1は、注射器を用いて適量の内容物を被検体へ注入するための、注入用シリンジホルダー(注射器ホルダー)として機能する。
【0016】
注射装置は、当接ヘッド10と、支持機構20と、可動ホルダー30と、内容物注入制御機構50とを備えている。
【0017】
当接ヘッド10は、被検体と当接可能であり、開口部が形成されている。当接ヘッド10は、注射装置1の先端に位置している。後述する針管83が被検体に対して、穿刺動作・抜針動作を行うときに、この開口部11(
図4(b)参照)を通過する。
【0018】
支持機構20は、当接ヘッド10に所定の角度で固定されている。支持機構20と当接ヘッド10との結合角度により、被検体に対する注射角度を設定する。当接ヘッド10と支持機構20とは、一体化して製造されてもよいし、別々に製造後に溶接等で固着してもよい。
【0019】
支持機構20は可動ホルダー30の移動の停止位置を規定して、可動ホルダー30を受け止めるホルダー受部である。
【0020】
可動ホルダー30は、注射筒84及び注射針81(
図2(a)参照)を保持し、当接ヘッド10に対して、支持機構20に沿って移動可能である。可動ホルダー30が、当接ヘッド10に対して移動することで、可動ホルダー30が保持している注射筒84及び注射針81を、当接ヘッド10と当接する被検体に対して、移動させる。この相対移動により、被検体に対して、注射器80の針管83が、穿刺する方向である前進方向、及び抜針する方向である後退方向へ移動する。
【0021】
内容物注入制御機構50は、押し子88を注射筒84に対して押し込む。内容物注入制御機構は、押圧部40と、ガイド棒51と、連動棒52と、連結棒53と、弾性部材54,55とを含む(
図5参照)。
【0022】
ここで、本発明の注射装置1において、注射筒と注射針とは注射器として着脱可能である。
図2に、注射器の説明図であって、(a)に、組立て後の注射器、(b)に、注射器の分解図を示す。
【0023】
図2に示すように、注射器80は、注射針81と、注射筒84と、押し子88によって構成されている。注射筒(シリンダー:cylinder)84は内容物を収容し、押し子88が挿嵌される。詳しくは、注射筒84は、内容物を収容する外筒部85と、外筒部85の後端に設けられるフランジ86と、筒先87を備える。
【0024】
ここで、本発明の注射装置内では、1mLの容積を備える注射器が用いられると好適である。そのような1mLの注射器は、10回の100μLの注射や6回の166μLの注射を可能にする。2、5、又は10mLを備える注射器を用いることもできる。注射装置の具体的な使用形態に依存して、注射器は、より大きい又はより小さい容積を備えていてもよい。
【0025】
注射針81は、注射筒84と連結される。詳しくは、注射針81は注射筒84の筒先87へ外嵌される針基82と、被検体内へ穿刺される針管83とを備えている。注射器80をセットするとき、注射針81の針基82の中に、注射筒84の筒先87を挿入して係合する。注射針81の針基82と注射筒84の筒先87が容易に外れないようにロックする構造を有する注射器を使用しても良い。
【0026】
ここで、本発明の注射装置に適用する、注射針の針管の直径は、18〜34G、20〜30Gの範囲にあると好適である。また、より好ましくは、26G、27G、又は30Gである。
【0027】
押し子88(プランジャ:plunger)は、頭部(後部)88hが押圧されることにより、注射筒84の外筒部85内を移動することで、注射器から内容物が放出される。押し子88の先端部には、液漏れ防止や異物混入防止のための薄板状のゴム製のパッキン(密封素子)であるガスケット89が接着されている。
【0028】
ここで、本発明において、
図2(a)に示すような注射筒84と注射針81とが一体化して一緒に着脱できるため、注射筒84に収容されている内容物が、注射装置1の内側に付着することがなく、あるいは極力付着を少なくして、注射装置1は再利用可能となる。ここで、注射筒84と注射針81とは、少なくとも、注射装置1への着脱のとき及び注射装置1内に搭載されているときに、連結により一体化されていればよく、注射装置1の外にあるときは、注射筒84と注射針81とは、別々の状態であってよい。
【0029】
[可動ホルダー(注射器ホルダー)]
図3に可動ホルダー30の上面の拡大断面図を示す。(a)は斜視図であり、(b)は(a)のA−A'で切断した断面上面図である。
【0030】
可動ホルダー30は、上部に位置する、前方ホルダー310及び後方ホルダー320から構成される注射器ホルダーと、棒状部材51,52,53が通る2つの貫通孔(331,332、
図5参照)が形成されている移動支持部330とを備えている。また、第1の弾性部材であるコイルばね54,55が、移動支持部330の内部に設けられている。
【0031】
可動ホルダーの上部にある310,320は、フランジ嵌合部31と、外筒部挟持部32と、針基ストッパー33と、周面保持部34とを有する。
【0032】
フランジ嵌合部31は、注射筒84のフランジ86と嵌合する。フランジ嵌合部31は、
図3(b)に示すように、上面視で翼形状の外枠形状であり、フランジ86をこの外枠形状に嵌め込むことで係合させている。この係合により、フランジ86の位置決めを行い、フランジ86が、可動ホルダー30に対して、離間方向(後退方向、
図1(b)の矢印B方向)へ移動することを規制する。
【0033】
外筒部挟持部32は、注射筒84の外筒部85の位置を両側から挟んで保持する。外筒部挟持部32は、筒状の外筒部85の側面の両側に沿うように、リブ状に起立する線状突起形状である。この構造により、外筒部挟持部32は、可動ホルダー30において、外筒部85の横方向の変位、即ち横へのズレを規制する。可動ホルダー30が動いても、保持状態を安定的に維持することができる。
【0034】
針基ストッパー33は、注射針81の針基82の、移動を規制する。
図2に示す注射器の例では、針基82の先端は、所定の面形状であり、
図3に示す、針基ストッパー33は、内径が縮径する(段差が設けられている)ことで、針基82の先端面と当接可能にする。
【0035】
図3(a)では、針基ストッパー33は注射器80の移動方向に対して停止させる方向に垂直に伸びており、針管83は通過するが、針基82の先端(移動方向に対して垂直面)が針基ストッパー33と当接して、注射器80の可動ホルダー30に対する移動が規制させる構成である。なお、針基ストッパー33は、注射器80の移動方向に対して停止させる方向に垂直でなくてもよく、例えば、円周の形状を徐減させることで針基82を停止させてもよい。あるいは、針基82の先端の垂直面が存在せず、針基82の形状が、注射筒84との連結する部分に向けて、針基82の直径が徐々に太くなる場合、針基ストッパー33が、針基82の側面に当接することで、注射器80の可動ホルダー30に対する移動を規制させてもよい。
【0036】
この構成により、注射器80を注射装置1へ装着の際、及び注入動作の最中に、針基82が、可動ホルダー30において、開口部11の側へ近接する方向(前進方向、
図1(b)の矢印A方向)への移動することを規制する。
【0037】
周面保持部(針基周面保持部)34は、注射針81の針基82の周面を周面状に保持する。なお、周面保持部34は、さらに注射筒84の外筒部85の先端を周面状に保持してもよい。
図3に示す周面保持部34は、針基82及び外筒部85の先端の周面方向に沿って全周面を覆う、筒状形状をしている。なお、周面保持部34は、全周を覆わなくてもよく、例えば針基82及び外筒部85の先端の形状に、半円状に沿うような形状であってもよい。この周面保持部34により、可動ホルダー30に対する、針基82及び外筒部の横方向の変位を規制する。この構成により、可動ホルダー30が移動したときに、保持状態の横方向(短手方向)に移動(ずれ)を防止することができる。
【0038】
上記のように、可動ホルダー30において、フランジ嵌合部31が、注射筒84の離間方向(
図1(b)の矢印Bの後退方向)への移動を規制し、針基ストッパー33が、注射針81の近接方向(
図1(b)の矢印Aの前進方向)への移動を規制することで、移動方向において、注射筒84と注射針81との結合状態が維持される。
【0039】
したがって、可動ホルダー30とともに、注射筒84及び注射針81が移動しても、注射針81が注射筒84から外れて、内容物が注射装置1内に漏れることが防止できる。
【0040】
なお、可動ホルダー30の外筒部挟持部32は、注射器80の外筒部85に沿った全ての部分に起立していなくてもよい。
図3(a)に示すように、外筒部挟持部32の突起の一部が途切れている、平面部35を設けることで、注射器80の可動ホルダー30への嵌めこみが容易になり、注射器80の着脱時の操作性が向上する。
【0041】
[支持機構]
図4及び
図1(b)を用いて、支持機構20を説明する。
図4の(a)は、当接ヘッド10と支持機構20の斜視図を示し、(b)は別の方向から見た斜視図を示す。(c)は、当接ヘッド10と支持機構20との注入方向から見た矢視図を示す。当接ヘッド10及び支持機構20は、移動可能な可動ホルダー30に対して、不動である固定部材(本体)として機能する。
【0042】
支持機構20は、当接ヘッド10に対して固定されている。当接ヘッド10と支持機構20との接続角度により、注射器80の針管83の被検体に対する接触角度が設定される。
【0043】
注射角度を規定する、支持機構20と当接ヘッド10との間の角度は、好ましくは、10度〜90度の何れであってもよいが、15度〜25度の範囲内にあると、さらに、より好ましい。
【0044】
支持機構20は、上面カバー24及び側壁23を備え、支持機構20の内部には、可動ホルダー30の移動を案内する、筒状のホルダーガイド経路(挿入貫通孔)21が形成されている。ここで、支持機構20の後端に位置する側壁23に、可動ホルダー30が挿入されるホルダーガイド経路21の挿入穴の入り口である開口部23Oが形成されている。
【0045】
支持機構20に沿って可動ホルダー30が移動可能にする、ホルダーガイド経路21のうち、下方に位置するものは、可動ホルダー30の移動を案内する、移動案内レール22として機能する。
【0046】
支持機構20の下方は、横方向(注入方向)に伸長する切り込み(開口部)25が設けられている)。下部が開放されていることで、注射器80の着脱動作を行うときに、針管83の先端が注射装置1の内部に接触することを防ぐ。
【0047】
本実施形態において、移動案内レール22として、可動ホルダー30の先端(少なくとも注射針81を保持する部分)を挿入させるための筒状の挿入貫通孔である、ホルダーガイド経路21の内周面下面以外の部分が、可動ホルダー30の先端(周面保持部34)の形状に沿う形状となっている。
【0048】
図4(a)及び
図4(c)に示すように、支持機構20では、ホルダーガイド経路21の上方、及び両側方が半円形状(かまぼこ形状)にカバーされている。詳しくは、支持機構20は、上方及び側方において少なくとも注射針81及び可動ホルダー30の注射針81を保持する部分(針基ストッパー33、周面保持部34)を、周面方向で覆う上面カバー24を備えている。従って、本実施形態では、支持機構20は、下部が開放され、可動ホルダー30をガイドするために移動方向に伸びる筒状の挿入穴であるホルダーガイド経路21が設けられているハウジング形状となっている。
【0049】
本実施形態では、支持機構20の側壁23が、可動ホルダー30の当接ヘッド10への近接方向への移動(前進移動)を停止させる。即ち、スライド移動の終止点を規定する。また、支持機構20の側壁23には、ガイド棒51の先端及び連結棒53の先端が固定(連結)されている。詳しくは、側壁23には、ガイド棒51を固定する側壁固定部23Gと、連結棒53を固定する側壁固定部23Jとが設けられている(
図5参照)。側壁固定部23G、23Jは、
図5に示すように、ガイド棒51、連結棒53を締めつける締結部材や、接着をする接着部材等を含んでいてもよい。
【0050】
なお、ホルダーガイド経路を形成する筒状のハウジングは、上方が開放されていてもよい(上面カバー24が設けられていなくてもよい)。例えば、本実施形態では、支持機構20は、最低限、当接ヘッド10へ可動ホルダー30の一部(針部を保持する部分)を移動案内する、移動案内レール22と、移動の終端を規定するストッパーとなる側壁23があれば足り得る。
【0051】
ただし、
図4(a)及び
図4(c)に示すように本実施形態において、上面カバー24を設けることで、周面で可動ホルダー30の先端を案内することが可能になるため、より移動を安定化する効果がある。さらに/あるいは、操作者の安全面や衛生面を考慮することができる。
【0052】
[内容物注入制御機構]
図5において、(a)は本発明の内容物注入制御機構50を示す分解図であり、(b)は、内容物注入制御機構50と、可動ホルダー30の下面にある移動支持部330を示す断面図である。なお、
図5(b)は、
図1(a)のB−B'面の断面図に相当する。
【0053】
本発明の実施形態の注射装置1は、内容物注入制御機構50として、押圧部40と、ガイド棒51と、連動棒52と、連結棒53と、コイルばね(第1の弾性部材)54,55を備えている。
【0054】
押圧部40は、可動ホルダー30が保持する注射筒84内に対して押し子88を押す。
【0055】
ガイド棒51と、連動棒52と、連結棒53とは、可動ホルダー30の相対移動を制御する棒状部材である。ガイド棒51は、可動ホルダー30及び押圧部40に対して、相対移動可能に係合される。
【0056】
連動棒52は、可動ホルダー30に締結され、押圧部40に対し移動可能に係合される。連結棒53は、連動棒52と同一直線状に延伸し、端部(後端)が連動棒52の端部(先端)と対向して、接触・離間可能である。また、連結棒53の先端が、可動ホルダー30の内部に位置する。
【0057】
また、
図5(b)に示すように、第1の弾性部材(コイルばね)54,55は、可動ホルダー30の内部に設けられている。
【0058】
図5(b)に示す可動ホルダー30の下部は、注射筒84を保持する部分の下部に設けられる移動支持部330を示す。
【0059】
移動支持部330には、ガイド棒51がスライド可能に挿通する第1の貫通孔331と、先端に、連結棒53がスライド可能に挿入され、同一直線上の後端に連動棒52が締結される第2の貫通孔332とが形成されている。
【0060】
ガイド棒51及び連結棒53は、可動ホルダー30の貫通孔331,332に対して夫々移動可能である。
【0061】
また、連動棒52は、接着部材38により、可動ホルダー30の貫通孔332に所定の位置で固定されている。
【0062】
可動ホルダー30が当接ヘッド10への近接方向へ移動すると、第1の弾性部材に対して、ガイド棒51及び連結棒53から、可動ホルダー30の内部に設けられたコイルばね(第1の弾性部材)54,55に圧縮力が印加される。
【0063】
押圧部40は、ガイド棒51と連動棒52に、係合されている。押圧部40は、押し子88の頭部(後端部)88hと当接し、相対移動により押し子88を押し込む、押し子押し部である。可動ホルダー30に設けられたコイルばね54,55の復元力により、可動ホルダー30と当接ヘッド10との距離、及び可動ホルダー30と押圧部40との距離が変化する。距離の変化の詳細は、
図8及び
図9を用いて後述する。
【0064】
ここで、可動ホルダー30を動かす距離が一定の場合、コイルばね54,55に掛かる圧縮力は一定となる。したがって、所定の量の内容物を複数回に分割して、毎回の注入量が等しい場合、可動ホルダー30の移動量が一定になることで、コイルばね54,55の圧縮力及びその後の復元力が一定になるため、毎回、同じ注入速度で注射動作を実施できる。
【0065】
可動ホルダー30の下部に設けられた、棒状部材51,52,53を通すための貫通孔331,332の内壁には、突起36,37(即ち、貫通孔331,332で径が小さい部分)が、バネ保持部材として、設けられている。
【0066】
ガイド棒51及び連結棒53は、夫々小径部と大径部が設けられている。小径部51S,53Sは、ガイド棒51及び連結棒53の伸長方向において、可動ホルダー30の中央付近に位置し、大径部51F,53Fは、可動ホルダー30の支持機構20の側(先端側)に位置する。
【0067】
コイルばね54,55は、ガイド棒51,53の小径部51S,53Sに、外嵌されている。コイルばね54が外嵌されたガイド棒51は、貫通孔331に内嵌されている。コイルばね55が外嵌された連結棒53と、固定された連動棒52は、貫通孔332に内嵌されている。
【0068】
コイルばね(第1の弾性部材)の、先端はガイド棒51及び連結棒53の大径部51F,53Fから小径部51S,53Sへ縮径する側面(段差部分)に保持され、後端はバネ保持部材である突起36,37の突起側面36S,37Sに保持される。
【0069】
なお、ガイド棒51および連結棒53は、コイルばね54,55が小径部51S,53Sに外嵌できるように、分割可能な構成になっている。
【0070】
可動ホルダー30の内部において、連結棒53の終端は、径が大きくなっており、その終端の大径端部53Tが、他の部分から切り離し可能であって、例えば、ネジ溝とネジ溝等を嵌め合わせることで締結される。ここで、突起37の押圧部40側の面に連結棒53の終端の大径端部53Tと小径部53Sとの段差が接触して引っ掛かる位置が、可動ホルダー30と支持機構20との距離が、最も離れる位置となる。
【0071】
また、ガイド棒51において、押圧部40側は、貫通孔331の径の大きさに近く、小径部51Sよりも大きく設計すると(中径部51Mを設けると)好適である。針管83を動かすようにコイルばね54,55に圧縮力が付加される際及びばねが復元する際に、後述するラチェット機構の係合の噛み合い方が変更しても、中径部51Mが貫通孔332に沿って移動するので、ガイド棒51に対して支持機構20をより滑らかな相対移動が可能となるためである。
【0072】
ここで、可動ホルダー30が支持機構20から離れる距離D2(後述する距離D
m)は、穿刺の開始前における、連動棒52と連結棒53との距離D1に、対応する。この距離により、注射針の注射深さが設定される。
【0073】
ここで、注射針81の針管83の注射深さは、0.5〜5.5mmの範囲内にあると好ましく、2.0mm〜3.5mmの範囲内にあるとさらに好ましい。
【0074】
[押圧部]
図6は、押圧部40におけるラチェット機構の説明図である。詳しくは、押圧部40の分解図を示す。
【0075】
ガイド棒51及び連動棒52において、押圧部40と対向可能な部分の周面には、傾きを持った係合ラック51r,52rが形成されている。
【0076】
押圧部40は、ガイド棒51及び連動棒52の係合ラックと噛み合う歯止め(板バネ)41を備えている。なお、押圧部40には、歯止めの他に、歯止め41が固定されている板ばね支持棒42と、歯止め41を覆うケース部44が設けられている。板ばね支持棒42は、押圧部40に固定された支持板45に移動自在に取り付けられている。また、歯止め41が固定されている反対側にはボタン42hが設けられており、ボタン42hと支持板との間に圧縮コイルばね43が外嵌されている。
【0077】
ここで、押圧部40内の歯止め41と、ガイド棒51及び連動棒52の係合ラック51r,52rとの係合構成がラチェット機構となっている。即ち、押圧部40は、ガイド棒51及び連動棒52に対して、可動ホルダー30に近づく方向に相対移動可能であり、可動ホルダー30から遠ざかる方向へ、相対的に離間方向(後退方向)への移動は、ロックされている。
【0078】
注射器80の装着、脱着時など、押圧部40の位置のロックを解除する場合は、コイルばね43に抗して、ボタン42hを押圧することで、歯止め41と係合ラック51r,52rとの係合が解除される。詳細は、
図8及び
図9を用いて後述する。
【0079】
[当接ヘッド]
図7は、当接ヘッド10の拡大図である。
図7に示すように、当接ヘッド10は、上面13と側面14と下面12とを有する。当接ヘッド10の上面13、下面12の形状は円形、馬蹄形、多角形状である。
【0080】
図7(a)〜(c)を参照して、開口部11は当接ヘッド10の上面13と下面12とを貫通している。また、開口部11は、針が通過可能である。即ち、当接ヘッド10の開口部11は、当接ヘッド10の下面12に対して、可動ホルダー30の移動に伴い針管83が通る方向及び当接ヘッド10の上下方向の二股方向に貫通している。
【0081】
図7(a)の側面断面図を参照して、当接ヘッド10の下面12において、開口部11の周辺の表面12cが他の下面(例えば、下面突起12e)に対して内側に位置するように構成されている。このように下面12を構成すると、被検体に内容物を注入する際、下面12は被検体と部分的に当接し、開口部11の周辺は被検体と非接触となる。
【0082】
例えば、非接触になる場合として、
図7(c)に示す実施形態において、円形の当接ヘッド10の下面の縁部である円周部に、連続的に下面の表面方向に突出する下面突起12eが形成されている。開口部11の周囲を取り囲むように、円周形状の下面突起12eの頂部が被検体と当接する。なお、下面突起12eは連続的な形状に限られず、脚形状など、断続的な形状であってもよい。
【0083】
このように当接ヘッド10の下面12を構成することで、開口部11の周辺と被検体との間には所定の空間が設けられることになる。従って、注射動作に伴い、被検体から漏出液や血液などの液体が流出した際に、当接ヘッド10の、開口部11の周辺の下面に液体が接触することで、下面12に液体が広がって付着することを抑制する。
【0084】
さらに、穿刺動作前及び抜針動作後、針管83の先端が、当接ヘッド10の下面12の被検体と当接する部分よりも上方に位置するように構成される。
【0085】
詳しくは、本発明の注射装置に適用される注射器の針管83は、穿刺前の段階で、針管83の先端が、当接ヘッド10の下面の被検体と当接する部分よりも上方に位置するように、針管83の長さを選択して使用する。
【0086】
例えば、注射容量は、別個の注射深さの各々の別個の注射部位で異なり得る。注射長の範囲は、注射針の後退動作中の注射経路の長さを定める。従って、注射全長は注射針の長さによって定められることが予見される。注射針の注射全長は、2.0mm〜50mmであると好ましく、5.0mm〜40mmの範囲内にあると、さらに好ましい。
【0087】
このように穿刺動作前及び抜針動作後において、注射針81の針管83の先端が被検体に接触しないことで、この注射装置が被検体から離す際に、被検体に針管83が刺さった状態で、予期しない方向へ動かしてしまうことを防止できる。したがって、注射装置の安全性が向上する。
【0088】
さらに、操作において、操作時の被検体との接触の安定性を向上させるとともに、開口部11と被検体との非接触となる空間が大きくなるように、当接ヘッド10において、下面12において、側面14から突出するつば部16を設けてもよい。
【0089】
図7(b)を参照して、開口部11は、上面において、注入点に対応する位置から支持機構20に向かって細長く伸びる開口する長穴形状である。
【0090】
このように、上方からみた開口部11の形状を上記のように長穴状に構成することで、注射動作を実施する際、注入方向を明確にするとともに、注射動作の操作者の針管の視認可能時間が長くなる。注入方向が明確にすることで、より目的の注入点に対して正確な位置に注入動作を実施できるようになる。また、針管の視認可能時間が長くなることで、針管83に屈曲や切断など異常があった場合に、注射動作に移行する前に、発見することができる。したがって、被検体に対して異常な注射動作を行うことを事前に防止できる。
【0091】
さらに、当接ヘッド10の下面12において、開口部11として、注射針の前記移動に伴う針管83の通過方向において、上下方向に貫通する部分から支持機構20に向かって当接ヘッド10の下面12の縁部に達する切り込み形状が設けられている。また、支持機構20の下部において、2本の移動案内レール22の間は開放されて、切り込み形状が設けられている。このように、支持機構20及び当接ヘッド10の下方が開放されていることで、注射器80の脱着のとき針管83がいずれかの部分に接触することを回避できる。
【0092】
また、本実施形態において、当接ヘッド10の上面13は、拡大鏡を構成するように、すり鉢形状あるいは内側に凹んでいる半円形状などの形状であると好ましい。上面を拡大鏡で構成すると、注射の部位を視覚化しやすくなる。例えば、光源の影響等などで、直接視認しにくい場合であっても、拡大鏡を利用することで、開口部11及び開口部11を通る針管83を視認しながら、注射することが可能になる。
【0093】
上記拡大鏡の効果を良好にするため、上面において、開口部11における注入点に対応する位置は、下面(上面)の中心であると好ましい。また、開口部11が長穴であっても、注入点がかわりやすいように、中心付近に目印17を設けてもよい。
【0094】
また、当接ヘッド10の側面14には、位置決め溝15となる線状切り込みが形成されている。この線状の切り込みは、後述する注射の準備段階で、被検体に記した印が視認するために利用される。側面14に形成された、印を視認するための切り込みである位置決め溝15が線状であることで、後述する実施手順で示す印と当接ヘッド10の位置合わせをしやすくなる。また、切り込みが直線形状であると、表面加工が容易になる利点がある。
【0095】
[注射動作]
図8は、第1実施形態に係る注射装置1における動作説明図である。
図9は、第1実施形態に係る注射動作フローの説明図である。下記、
図8と
図9とを用いて、第1実施形態における注射動作を説明する。
【0096】
本実施形態において、内容物注入制御機構50は、内容物を被検体に注入すると同時に
針管83を所望の深さから被検体表面まで後退させる抜針を行うように制御する。下記フローを説明する。
【0097】
START:注入液を充填した注射器を、注射装置へセットする。このとき、押し子88と押圧部40とが接触するように開始位置へ設定する。(後述の実施手順参照)
前提として、開始の際、注射装置1の当接ヘッド10を被検体Sに当接させる。穿刺動作前では、この注射装置1の各構成要素は
図8(a)の状態であるとする。なお、上記
図7(a)に示す当接ヘッド10の下面の形状により、穿刺前の段階で、針管83の先端が、当接ヘッド10の下面の被検体と当接する部分よりも上方に位置するので、針管83の先端は被検体に当接しない。
【0098】
S1:操作者が手動で、可動ホルダー30を当接ヘッド10に近づける(穿刺動作)。このとき、可動ホルダー30が当接ヘッド10への近接方向(矢印に示す方向)へ移動することで、注射針81の針管83が被検体に対して近接し、被検体へ穿刺し、被検体の内部へと前進する(進入する)。ここで、可動ホルダー30内に設けられたコイルバネ(第1の弾性部材)54,55が圧縮される。
【0099】
詳しくは、可動ホルダー30に締結された連動棒52とともに、押圧部40は、可動ホルダー30と所定の距離D
pを保ったまま、当接ヘッド10へ近づく方向へ移動し、距離D
mが短くなる(ゼロになる)(
図8(a)⇒
図8(b))。ここで、可動ホルダー30と締結された連動棒52が、可動ホルダー30と一緒に移動するため、押圧部40と連動棒52の終端も一緒に移動する。
【0100】
また、動かないガイド棒51に対して、押圧部40が移動するため、ガイド棒51と押圧部40との嵌合部分が相対的に前進方向(可動ホルダー30側)へスライドする。
【0101】
この押圧部40の相対移動により、穿刺動作において、可動ホルダー30と押圧部40との距離が変わらない。したがって、可動ホルダー30と押圧部40の距離が長くなることで押し子88だけが後退することの減圧により発生する気泡が混入すること防止される。また、可動ホルダー30と押圧部40の距離が短くなることで押し子88だけが前進して穿刺動作と並行して注入動作が行われることが防止される。
【0102】
S2において、操作者が可動ホルダー30から手を離すことで、当接ヘッド10からの離間方向へ移動すると、針管が被検体の内部から後退し、被検体から抜針し、被検体から離間する。
【0103】
詳しくは、可動ホルダー30に付与される前進方向の力が開放されると、可動ホルダー30に設けられた、コイルばね(第1の弾性部材)54の復元力により、可動ホルダー30が、支持機構20から離れる方向へ移動する。
【0104】
ここで、押圧部40は、棒状部材51,52に対して、相対的に離間方向(後退方向)への移動は、ラチェット機構(
図6)により、ロックされている。即ち、可動ホルダー30が当接ヘッド10から離れる方向へ動くと、押圧部40は動かない未締結のガイド棒51と一緒に停止しているため、動かない押圧部40に対して、可動ホルダー30に締結された連動棒52が位置移動する。即ち、押圧部40は、連動棒52に対して嵌合部分が可動ホルダー30側(前進方向)へスライドする。
【0105】
この動作により距離D
mが長くなり、距離D
pが短くなることで、抜針と液体注入とを一緒に行う(
図8(b)⇒(c))。可動ホルダー30の後退動作に伴って、可動ホルダー30が、ガイド棒51に対して位置移動することで、可動ホルダー30と押圧部40との距離が短くなる。押圧部40と可動ホルダー30との間の距離が短くなるとき(D
p⇒D
p')に、押し子88が、注射筒84に対して押し込まれ、注射筒84の容積が狭くなり、内部の液体が被検体へ注入される。従って、適切に適量な量の注入動作が実施されうる。
【0106】
END;注射装置1を被検体から離す。このとき、上記
図7(a)の当接ヘッド10の下面の形状により、針管83の先端は被検体から離れている。
【0107】
上記構成及びフローにより、本発明の注射装置1は注入動作が行われる際に、可動ホルダー30において注射筒84及び注射針81が適切に保持されている。特に、フランジ嵌合部31と針基ストッパー33により、内容物注入方向の注射筒84及び注射針81の移動が規制されている。
【0108】
したがって、注射による注入する内容物として、粘性の高いゲル状構造の物質を用いた場合で、使用時に注射筒に高い圧力がかかったとしても、注射針と注射筒との連結状態は解消されない。よって、注射装置1により、精密な注射動作が実現できる。
【0109】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の注射装置は、被検体のごく浅い場所に対して注射動作を行う場合に適用されると好ましい。
【0110】
第2実施形態の注射装置では、穿刺動作後、針の後退移動(抜針動作)が2段階で行われる。詳しくは、押し子の注射筒への押圧動作による注射動作(内容物射出動作)と連動して、所定の距離まで針が後退する(針抜動作)が行われ、その後、注射動作を行わずに、該所定の距離から被検体の表面から抜けるまで針が後退する動作が行われる。
【0111】
図10は、本発明の第2実施形態の注射装置2の説明図であって、(a)に斜視図、(b)に側面図を示す。
図11は、
図10の注射装置の抜針制御機構の拡大図を示す。
図12に
図10の注射装置の透視斜視図を示す。
【0112】
図10〜
図12に示すように、本実施形態の注射装置2は、抜針制御機構60を備えている。本実施形態において、内容物注入制御機構50は、内容物を被検体に注入すると同時に、針管を所望の深さから所定の位置まで後退させる一段階目の針管後退動作を制御する。抜針制御機構60は、内容物を被検体へ注入せずに、針管を所定の位置から、少なくとも被検体の表面まで後退させ、抜針させる二段階目の針管後退動作を制御する。
【0113】
図11を参照して、抜針制御機構60は、制御プレート61と、2本の位置調整ピン62,63と、2つのコイルばね(第2の弾性部材)64,65と、ロックピン66,67とを備えている。
【0114】
制御プレート61は、支持機構20−1の少なくとも一部の上面部24−1と、当接ヘッド10とは離れた後端側の側壁23−1とを覆う、上面板61T及び側面板61Sを備える。
【0115】
2本の位置調整ピン(ダボ)62,63は、大径の頭部を備え、制御プレート61の側面板61Sに嵌めこまれている。
【0116】
第2の弾性部材であるコイルばね64,65は、位置調整ピンの外周に設けられ(外嵌され)、制御プレート61の側面板61Sと、支持機構20−1に保持されている。
【0117】
2つのロックピン(弾性ピン)66,67は、支持機構20−1の上面に設けられ、一端が可動ホルダー30−1の周面保持部34−1の側面(ガイド面)に保持されている。また、ロックピン66,67は、注射器80の移動方向に対して略垂直の方向(注射筒の短手方向)に伸長して設けられている。
【0118】
また、また本実施形態では、可動ホルダー30−1の周面保持部34−1の上面に、係合用突起39が設けられている。係合用突起39の先端部は先細り形状となっており、突起先端の垂直面(ホルダー側ガイド面)39L,39Mに対して、ロックピン66,67がスライド可能に当接している。
【0119】
支持機構20−1は、上面部24−1及び側壁23−1を備え、可動ホルダー30−1の移動を案内するガイド経路が内部に形成されている。第1実施形態と同様に支持機構20−1の側壁23−1は、可動ホルダー30−1の一部が挿入されるように開口されている(開口部23O)。
【0120】
ここで、第1実施形態とは支持機構20−1の形状が異なり、支持機構20−1の上面部24−1に、制御プレート61の上面板61Tを嵌め込むために凹んだ形状である、切欠け部26が設けられている。切欠け部26の移動方向の垂直面(支持側ガイド面)27L,27Mに対して、ロックピン66,67がスライド可能に当接している。
【0121】
さらに、垂直面27L,27Mに対して凹む部分、即ち、切欠けの空間が大きくなる、溝部28L,28Mが夫々形成されている。
【0122】
ロックピン66,67は、伸縮可能な弾性ピンであり、可動ホルダー30−1のホルダー側ガイド面39L,39Mに沿って、及び上面板61Tに刻まれた溝61TL,61TMに沿って、スライド移動可能である。
【0123】
注射動作を行う際、後述する
図13(a)の状態では、ホルダー側ガイド面39L,39Mは、まだ、ロックピン66,67と接触していない。この状態で、可動ホルダー30−1を動かすと、ロックピン66,67は、ホルダー側ガイド面39L,39Mの先端に接触し始めた後、ホルダー側ガイド面39L,39Mに沿って移動する(
図11、左方向)。
【0124】
そして、
図13(b)の状態になる直前に、可動ホルダー30の凸部である係合用突起39の形状により、ロックピン66,67が外方向へ押し出され、溝部28L,28Mと係合する(
図11(a)⇒
図11(b))。溝部28L,28Mと係合した後、制御プレート61と可動ホルダー30−1は、さらに移動し、ロックピン66,67に対して、制御プレート61の上面板61Tの溝61TL,61TMが位置移動する(
図13(b)⇒
図13(c))。
【0125】
操作者が手を離すと、まず、ロックピン66,67が溝部28L,28Mと係合している状態で、可動ホルダー30−1が移動する(
図13(c)⇒
図13(d))。所定の位置に到達すると、可動ホルダー30−1の凸部である、係合用突起39のホルダー側ガイド面39L,39Mの形状により、ロックピン66,67へ付与されていた外方向の押し出し力がなくなるので、ロックピン66,67と溝部28L,28Mと係合が解除される(
図11(b))。
【0126】
そして、第2の弾性部材であるコイルばね64,65の復元力が作用し、制御プレート61と可動ホルダー30−1とが一緒に移動し(
図11(b)⇒
図11(a),
図13(d)⇒13(e))、後退動作が完了する。このとき、係合が解除された、ロックピン66,67は、垂直面(支持側ガイド面)27L,27Mに沿ってスライドする。
【0127】
また、本実施形態には、第1実施形態と異なり、支持機構20−1の側壁23−1に、ガイド棒51、連結棒53を固定するための側壁固定部23G,23Jは設けられていない。その代わりに、第2の弾性部材64,65が外側に嵌めこまれた位置調整ピン62,63が移動可能に挿入される、ピン挿入孔23P,23Qが開口されている。
【0128】
制御プレート61の側面板61Sは、可動ホルダー30−1の一部が挿入されるように開口されている。本実施形態では、ガイド棒51−1の先端及び連結棒53−2の先端は、制御プレート61の側面板61Sに固定されている。側面板61Sには、ガイド棒51を固定する側面固定部61SGと、連動棒52を固定する側面固定部61SJとが設けられている(
図12参照)。
【0129】
また、制御プレート61の側面板61Sには、第2の弾性部材64,65が外側に嵌めこまれた位置調整ピン62,63が移動可能に挿入される、側面板ピン挿入孔61SP,61SQが開口されている。
【0130】
穿刺動作により、制御プレート61の側面板61Sが支持機構20−1の側壁23−1と接触する。一段階目の針管後退動作で、制御プレート61の側面板61Sが支持機構20−1の側壁23−1と接触した状態で、可動ホルダー30−1が後退する。二段階目の針管後退動作で、制御プレート61の側面板61Sが支持機構20−1の側壁23−1から離れていき、可動ホルダー30−1が後退する。
【0131】
[注射動作]
図13は、第2実施形態に係る注射動作の動作説明図である。
図15は、第2実施形態に係る注射動作フローの説明図である。下記、
図13と
図14とを用いて、第2実施形態における注射動作を説明する。
【0132】
START:前提として、被検体に対して、注入用テンプレート100(
図16参照)を用いて注入点、及び目印を印付けた後、注射器80(
図3参照)を、注射装置2へセットし、注射装置2の当接ヘッド10−1を被検体に当接させる。
【0133】
<針管前進動作>
図14のS11において、操作者が手動で、可動ホルダー30−1を当接ヘッド10に近づける(穿刺動作)。可動ホルダー30−1が当接ヘッド10−1への近接方向へ所定距離移動すると、第1の弾性部材54,55に対して、ガイド棒51−1及び連結棒53−2から、第1の弾性部材54,55に圧縮力が印加されるとともに、可動ホルダー30−1と一緒に、位置調整ピン62,63が当接ヘッド10−1への近接方向へ移動する。即ち、
図13において、距離D
Pと距離D
Lが変らないまま距離D
Mが短くなり(ゼロになる)、第1の弾性部材54,55に圧縮力が印加される(
図13(a)⇒(b))。
【0134】
所定の位置に達すると、ロックピン66,67が、支持機構20の溝部28L,28Mに係合する。
【0135】
その後、ロックピン66,67が支持機構20−1の溝部に嵌合した状態で、位置調整ピン62,63及び制御プレート61が当接ヘッド10−1の方向(前進方向)へ移動する。即ち、距離D
Mがゼロで変らないまま、距離D
Pも変わらないまま、距離D
Lが短くなり(ゼロになり)、第2の弾性部材64,65に圧縮力が印加される(
図13(b)⇒(c))。
【0136】
<針管後退動作>
図14のS12として、操作者が可動ホルダー30−1から手を離す。可動ホルダー30−1が当接ヘッド10−1への近接方向の力が印加されなくなると、一段階目として、第1の弾性部材54,55の復元力により、位置調整ピン62,63及びロックピン66,67の位置は変わらず、可動ホルダー30−1が、支持機構20−1から離れる方向であって、押圧部40に近づける方向に移動することで、内容物を被検体へ注入するとともに、針管83を所望の深さから所定の位置まで後退させる。即ち、距離Dlが変らないまま、距離D
Mが長くなり、距離D
Pが短くなる(D
P')ことで、所定の距離の後退と、注入動作が行われる(
図13(c)⇒(d))。
【0137】
図14のS13の2段階目の後退動作として、ロックピン66,67が外れ(嵌合状態から解放され)、位置調整ピン62,63及び制御プレート61の位置が移動することで、第2の弾性部材64,65の復元力により、可動ホルダー30−1と、ガイド棒51と、接触する連結棒53と連動棒52とに嵌合された押圧部40が移動する。即ち、距離D
Mが変わらず、距離D
P'が変わらないまま、距離D
Lが長くなることで、注入動作が伴わずに、針管83を所定の位置から、被検体から抜針するまで後退させる(
図13(d)⇒(e))。
【0138】
上記構成及びフローにより、本発明の注射装置2は注入動作が行われる際に、可動ホルダー30−1において注射筒84及び注射針81が適切に保持されている。特に、フランジ嵌合部31と針基ストッパー33により、内容物注入する際の移動方向の注射筒84及び注射針81の変位が規制されている。
【0139】
したがって、注射による注入する内容物として、粘性の高いゲル状構造の物質を用いた場合で、使用時に注射筒に高い圧力がかかったとしても、注射針81と注射筒84との連結状態は解消されない。よって、注射装置2により、精密な注射動作が実現できる。
【0140】
さらに、本実施形態では、二段階に後退するので、注入動作が終了した後に抜針する。したがって、被検体のごく浅い場所に、細胞等の微量で貴重な内容物を注入する場合に、注入した内容物が被検体の表面からあふれ出してしまうことなく注射動作が実施できる。
【0141】
[適用手順]
注入部位や注入方向を確定するため、注入前に注入部位の中心に注入用テンプレート100の中央の穴を合わせ(
図15(b))、6つの縦長の穴に合わせて滅菌済み油性ペンにて印付けする(
図15(c))。同一部位に期間を置いて繰り返し注入したい場合は、アートメーク用の染料などで注入部位に印をつける。頭皮などの有毛部に注入する場合は、注入部位の周辺を事前に刈毛しておく。注入前に注入部位周辺を消毒、乾燥させたのち、麻酔する。
【0142】
注射器80を包装より取り出し、注射筒85内部に注入溶液を充填する。注射器80を注射装置1へセットするため、押圧部40の後端のボタン42hを押して当接ヘッド10とは反対側の最後端までスライドさせる(
図16(a))。
【0143】
試験製剤の入った、注射針81、押し子88が連結された注射器80を、針先(針管の先端)を注射装置1の本体10,20などに接触させないように注意しながら、注射装置1の可動ホルダー30に装着する。詳しくは、
図16(b)で示すように、注射器80を針先から斜めにはめ込み、注射筒84のフランジ(羽)86を立てて水平に押し込む(
図16(c),(d))。そして、フランジ86を回転させて、フランジ嵌合部31に咬み合わせる(
図16(e))。その後、注射装置1の押圧部40を押し子88の頭部88hに接触するまでゆっくりと移動させ、準備完了とする。(
図16(f),
図16(g))。
【0144】
注射器80が装着された注射装置1(
図17(a))を用いて、当接ヘッド10の位置決め溝と滅菌済み油性ペンで付けた印を合わせる。この状態で、当接ヘッド10を頭皮にしっかりと押し当てる(
図17(b),
図8のSTART)。
【0145】
この状態で、可動ホルダー30を手動で当接ヘッド10側へ押し込んで、可動ホルダー30と一緒に動く注射針81の針管83を頭皮内に穿刺する(
図8のS1に相当)。この際、上方から、当接ヘッド10の中央部の長穴状の開口部11を視認することで、針管83が頭皮に穿刺されていることを確認する。
【0146】
そして、注射装置1の可動ホルダー30からゆっくりと手を離すことにより製剤が頭皮内に注入される(
図8のS2に相当)。そして、注入動作完了後、注射装置1を頭皮から離す(
図8のENDに相当)。
【0147】
同一の注入部位から、異なる方向に複数回注入する場合は、皮膚上の油性ペンの印と当接ヘッド10周囲に設けられた溝15を別の方向に合わせ、上記の注入操作を繰り返す。これを注入用の印のある6ヵ所において繰り返すことにより、1mLの注射筒を使用した場合は計1.0mLの試験製剤が注入される。
【0148】
使用後の注射装置は、注射筒84と注射針81とを取り外し、廃棄した上で、洗浄及びメンテナンスを行い、個別の滅菌バッグに梱包して滅菌にかける。滅菌は、オートクレーブ、EOガス、ガンマ線滅菌等のいずれでも可能である。
【0149】
ここで、上述の構成により、注射動作を行う期間中、注射装置1、2では、注射筒84と注射針81は連結状態が維持されるので、内容物は、ほとんど注射装置1,2の内部には漏れ出さないと考えられる。従って、洗浄や滅菌工程は、当接ヘッド10の下面12を重点的に行えば十分であり、注射筒の脱着が予想される従来例の注射装置と比較して、注射器が取り付けられる、注射装置の内部の汚染はほとんど考慮しなくてもよい。
【0150】
上述の本発明の実施形態に係る注射装置で用いる、内容物(物質)は、細胞懸濁液、ゲル状材料、治療的物質、美容的物質、及び診断的物質で構成される群から選択されうる。例えば、上記注射装置で用いられる内容物(物質)は、細胞懸濁液、ゲル状材料、治療的物質、美容的物質、及び診断的物質で構成される群から選択されうる。
【0151】
注入される美容的物質として、フィラー(filler)のような脂肪細胞、ヒアルロン酸、又は皺治療におけるボツリヌス毒素(Botox、Btx)等を含み得るが、これらに限定されない。治療的物質は、抗生物質、麻酔薬、鎮痛薬、ワクチン、抗体を含み得るが、これらに限定されない。
【0152】
さらに、注射器内に収容される内容物として、懸濁液内の細胞又は液体媒体内の細胞を被験者に注入するために、本発明の注射装置が用いてもよい。
【0153】
さらに、注射器内に収容される内容物として、細胞懸濁液が発育因子と混合されてもよい。または、細胞懸濁液がゲル状構造を含んでいてもよい。そのようなゲル状構造は、別個の組織の細胞外環境を真似る細胞外基質タンパク質の混合を表すのが好ましく、更に好ましくは、ヒアルロン酸のようなゲル状構造である。
【0154】
さらに、被験者の別個の組織内への物質を注入するために本発明の実施形態に係る注射装置を用いられてもよい。特に、抜け毛、円形脱毛症のような脱毛症、又は毛の欠如若しくは少な過ぎる毛に関連する他の症状の治療における、細胞懸濁液としての、皮膚内への細胞の注入に注射装置を用いられ得る。
【0155】
また、本発明の注射装置は、薬剤、サイトカイン、又は発育因子のような、液体を被験者に注入するために用いられるのが好ましい。被験者への液体のこの適用は、抜け毛、円形脱毛症のような脱毛症、又は毛の欠如若しくは少な過ぎる毛に関連する他の症状の治療に関連して行われるのが好ましい。
【0156】
あるいは、本発明の実施態様に係る注射装置を、被験者の筋肉への物質の注入、又は被験者の腱への物質を注入するために用いてもよい。
【0157】
さらに、本発明の実施態様に係る注射装置を適用する被検体として、人間(被検者)に限定されず、魚、ネズミなどの動物であってもよい。または、被検体は、被験者や被験対象動物から取り出した皮膚、臓器等の、組織であってもよい。
【0158】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。