【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、良好な加工条件を設定するためには、上述したように、加工効率、加工コスト及び加工精度に関係する各要素について、これらを総合的に判断する必要がある。
【0009】
ところが、上記従来の表示装置では、主軸回転速度と、再生びびりを生じる工具の限界切り込み深さとの相関を表す安定限界線図しか表示されないため、加工効率,加工コスト及び加工精度に関係する要素であって、再生びびり以外の他の要素の評価については、オペレータの経験的な知見に頼らざるを得えないという問題があった。
【0010】
しかしながら、前記加工効率、加工コスト及び加工精度は所謂二律背反的な関係にあり、オペレータは、これらについて十分な知見を有していないのが実情である。例えば、加工効率を高める、即ち、加工時間を短くするには、工具がフライスである場合、その切込幅及び切込深さを大きくするとともに、工具の回転速度及び送り速度を高くすればよいが、このようにすると、消費電力が大きくなるとともに、工具寿命が短くなって、加工コストを高める一因となり、また、切込幅及び切込深さを大きくすること、並びに送り速度を高くすることは、加工精度が悪化する要因となる。
【0011】
このように、加工効率、加工コスト及び加工精度に係る加工上の評価項目(例えば、前記加工時間、加工精度及び工具寿命)は、その相互関係が二律背反的な関係にあり、また、その関係が極めて複雑であるため、熟練した知識を有しない一般的なオペレータは、その相互関係についての正確な知見を持ち得ていないのが実情である。
【0012】
したがって、このような加工効率、加工コスト及び加工精度に係る加工上の評価項目(例えば、加工時間、加工精度や工具寿命)について、その相互関係を表示することができれば、一般的なオペレータであっても、当該相互関係を容易に認識することができて便利である。
【0013】
また、オペレータは、加工効率、加工コスト及び加工精度に係る加工上の評価項目について、その相互関係を認識することで、これを踏まえた加工条件の設定や、その調整を行うことができ、更に、このような評価項目の相互関係に応じた加工条件が表示されれば、オペレータは、加工効率、加工コスト及び加工精度を総合的に考慮した良好な加工条件を容易に認識することができる。
【0014】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、予め設定された加工に関する複数の評価項目について、その実現可能な最大値から最小値まで範囲とした達成度を、相互に関連付けて表示するようにした加工状態表示装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、予め設定された加工に関する複数の評価項目に関し、それぞれその実現可能な最大値及び最小値により規定された範囲内における、その達成度を示す達成度データであって、予め設定された複数の加工条件下でそれぞれ加工した際の
、各加工条件データと、該加工条件ごとの前記各評価項目に係る達成度データとを相互に関連付けて記憶した達成度データ記憶部と、
ディスプレイを備え、前記達成度データ記憶部に記憶された加工条件データ及び達成度データを参照して、加工条件及びこれに対応する各評価項目に係る達成度を前記ディスプレイに表示する表示部と、
前記複数の評価項目から一つの評価項目を選択する信号、及び該評価項目について要求される達成度を入力する入力部とを備えて構成され、
前記表示部は、更に、前記入力部から選択信号及び要求達成度が入力されると、選択された評価項目及び要求達成度を基に、前記達成度データ記憶部に記憶された達成度データ及び加工条件データを参照して、該評価項目の要求達成度に対応した加工条件、及び該加工条件下における他の評価項目の達成度を認識し、前記入力された評価項目及び認識された他の評価項目における達成度を、それぞれ評価項目ごとに表示するとともに、認識された加工条件を表示するように構成された加工状態表示装置に係る。
【0016】
この加工状態表示装置によれば、オペレータが、一の評価項目を選択する選択信号、及び選択した評価項目についてその要求達成度を、前記入力部から入力すると、前記表示部は、入力された評価項目及び要求達成度を基に、前記達成度データ記憶部に記憶された達成度データ及び加工条件データを参照して、該評価項目の要求達成度に対応した加工条件、及び該加工条件下における他の評価項目の達成度を認識し、前記入力された評価項目及び認識された他の評価項目における達成度を、それぞれ評価項目ごとに表示するとともに、認識された加工条件を表示する。
【0017】
尚、前記評価項目としては、例えば、「加工時間」、「表面粗さ」、「工具寿命」、「切削効率(=単位電力あたりの切削体積)」、「残留応力の程度」、「主軸モータ負荷」及び「送りモータ負荷」などから選択される三以上の項目を例示することができるが、これらに限定されるものではない。この場合、「加工時間」及び「切削効率」は前記加工効率に影響する要因であり、「工具寿命」、「主軸モータ負荷」及び「送りモータ負荷」は加工コストに影響する要因であり、「表面粗さ」及び「残留応力の程度」は加工精度に影響する要因である。また、加工効率は加工コストにも影響を与える。
【0018】
また、前記各評価項目における前記達成度は、上述のように、当該評価項目について実現可能な最大値及び最小値により規定される範囲内において、その達成レベルを表すものであり、例えば、最大値を「100」とし、最小値を「0」とした場合に、その中間値の達成レベルである場合には、達成度は「50」となる。
【0019】
また、前記加工条件は加工態様によって異なり、例えば、フライス加工の場合には、その加工条件としての要素は「切込深さ[mm]」、「切込幅[mm]」、「送り速度[m/min]」及び「切削速度[m/min]」であり、旋削の場合の要素は「切込[mm]」、「送り速度[mm/rev]」及び「切削速度[m/min]」であり、ドリル加工の場合の要素は「送り速度[m/min]」及び「切削速度[m/min]」である。
【0020】
斯くして、この加工状態表示装置によれば、オペレータは、例えば、自身が注目する評価項目と、その評価項目についての要求達成度とを入力することで、当該評価項目の達成度と、これに応じた他の評価項目の達成度とを併せて認識することができ、これら評価項目相互間の関係を容易に認識することができるとともに、このような達成度が得られる加工条件を容易に認識することができる。
【0021】
また、オペレータは、入力部から入力する要求達成度を調整することで、各評価項目における達成度を調整することができ、例えば、各評価項目における達成度がバランスした状態となる、或いは各評価項目における達成度がオペレータの希望する状態となるような加工条件を容易に認識することができる。そして、上述のように、各評価項目は加工効率、加工コスト及び加工精度につながるものであるので、オペレータは、これら評価項目についての達成度を調整することで、加工効率、加工コスト及び加工精度を総合的に考慮した良好な加工条件を得ることができる。
【0022】
この加工状態表示装置において、前記表示部は、前記達成度データ記憶部の達成度データを参照した結果、前記選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合、選択された評価項目に関連して予め設定された優先順位の高い前記他の評価項目ついて、その達成度が最も高い最適な加工条件を認識した後、該加工条件下における前記他の評価項目の達成度を認識して、前記入力された評価項目及び認識された他の評価項目における達成度を、それぞれ評価項目ごとに表示するとともに、認識された最適な加工条件を表示するように構成されていても良い。
【0023】
この加工状態表示装置によれば、前記表示部において、選択評価項目の要求達成度に対応する加工条件が複数存在する場合に、当該選択評価項目に関連して予め設定された優先順位の高い他の評価項目ついて、その達成度が最も高い最適な加工条件が認識され、認識された加工工条件及び当該加工条件下における各評価項目の達成度が表示される。したがって、選択評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合でも、最適な状態での各評価項目の達成度を認識することができるとともに、これに応じた加工条件を認識することができる。
【0024】
また、前記加工状態表示装置において、前記表示部は、前記各評価項目の達成度を図形によって表示するように構成され、該図形は前記最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、該軸状図形上の、前記達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形とから構成されていても良い。この加工状態表示装置によれば、各評価項目にかかる達成度が、軸状図形及び指標図形から構成される図形によって表示されるので、オペレータは、当該達成度を瞬時に且つ直観的に認識することができる。
【0025】
また、前記加工状態表示装置において、前記表示部は、前記各評価項目の達成度を図形によって表示するように構成され、該図形は前記最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、該軸状図形上の、前記達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形とを含み、
更に、前記表示部は、前記達成度データ記憶部の達成度データを参照した結果、前記選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合、各加工条件における前記各評価項目の達成度であって、前記指標図形に対応した達成度以外の非対象達成度に関し、該非対象達成度に応じた比率の長さ位置を含み且つ前記指標図形につながる領域図形を前記軸状図形上に配置して表示するように構成されていても良い。
【0026】
この加工状態表示装置によれば、選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合に、各加工条件下における各評価項目の達成度が、指標図形及びこれにつながる領域図形として表示されるので、オペレータは、各評価項目について、指標図形に対応した達成度に加えて、他の実現可能な達成度を認識することができる。そして、オペレータは、このような認識が得られることにより、各評価項目における達成度が良好な状態となる加工条件、即ち、加工効率、加工コスト及び加工精度を総合的に考慮した良好な加工条件を容易に得ることができる。
【0027】
また、前記加工状態表示装置において、前記表示部は、前記各評価項目の達成度を図形によって表示するように構成され、該図形は前記最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、該軸状図形上の、前記達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形とを含み、
前記表示部は、更に、前記達成度データ記憶部の達成度データを参照した結果、前記優先順位の高い評価項目以外の更に他の評価項目に係る達成度であって、前記最適な加工条件以外の他の加工条件下における達成度が、前記最適な加工条件下における達成度よりも高い場合には、該評価項目について、前記他の加工条件下における達成度を表す図形と、前記最適な加工条件下における達成度を表す図形とを相互に関連づけて表示するように構成されていても良い。
【0028】
この加工状態表示装置によれば、前記優先順位の高い評価項目以外の更に他の評価項目に係る達成度であって、前記最適な加工条件以外の他の加工条件下における達成度が、前記最適な加工条件下における達成度よりも高い場合には、該評価項目について、前記他の加工条件下における達成度を表す図形と、前記最適な加工条件下における達成度を表す図形とが相互に関連づけられて表示される。したがって、オペレータは、これを参照することで、予め定めた優先順位の高い評価項目を優先した加工条件のみならず、他の良好な加工条件が存在するか否かも容易に認識することができ、より良好な加工条件を得ることができる。
【0029】
また、前記加工状態表示装置において、前記入力部は、前記ディスプレイに表示された各評価項目の前記指標図形を選択する選択信号を入力可能に構成されるとともに、選択した前記指標図形を、対応する前記軸状図形の長手方向にスライドさせるための信号を入力可能に構成され、
前記表示部は、前記入力部から選択信号及びスライド信号が入力されると、前記選択信号に応じた評価項目を認識し、前記ディスプレイに表示された前記指標図形を前記スライド信号に応じてスライドさせるとともに、該指標図形の停止位置から要求達成度を認識するように構成されていても良い。
【0030】
この加工状態表示装置によれば、ディスプレイに表示された各評価項目の指標図形を選択することによって選択信号が入力され、また、選択した指標図形を、対応する軸状図形の長手方向にスライドさせることによって、要求達成度が入力される。したがって、オペレータは、入力する要求達成度を容易に調整することができ、また、各評価項目における達成度を容易に調整することができる。
【0031】
また、前記加工状態表示装置は、工具と被加工物との相対的な回転速度と、前記工具の切削量との相関関係における、前記工具の再生びびりに関する安定限界曲線
に係るデータを記憶した安定限界曲線データ記憶部を更に備え、
前記表示部は、前記安定限界曲線データ記憶部に格納された安定限界曲線
に係るデータを基に、前記要求達成度に対応した加工条件が、前記安定限界曲線を境界とした安定領域に含まれるかどうかを検証し、安定領域に含まれる場合には、該加工条件及び該加工条件下における評価項目の達成度を表示し、安定領域に含まれない場合には、前記達成度データ記憶部に格納されたデータを参照して、安定領域に含まれるような加工条件を選定するとともに、選定した加工条件に対応する各評価項目の達成度を認識し、選定した加工条件及び認識した各評価項目における達成度を表示するように構成されていても良い。
【0032】
この加工状態表示装置によれば、選択評価項目における要求達成度に対応した加工条件が、安定限界曲線を境界とした安定領域に含まれない場合には、達成度データ記憶部に格納されたデータを基に、安定領域に含まれるような加工条件が新たに選定されるとともに、選定された加工条件及び当該加工条件に対応した各評価項目の達成度が表示される。したがって、オペレータは特別な作業を要することなく、再生びびりの生じない加工条件を得ることができる。
【0033】
また、前記加工状態表示装置は、工具と被加工物との相対的な回転速度と、前記工具の切削量との相関関係における、前記工具の再生びびりに関する安定限界曲線
に係るデータを記憶した安定限界曲線データ記憶部を更に備え、
前記表示部は、前記安定限界曲線データ記憶部に格納された安定限界曲線
に係るデータ、及び前記達成度データ記憶部に格納されたデータを基に、該安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件を認識し、認識した不安定な加工条件を基に、前記各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かを検証し、適用不可の達成度が存在する場合には、適用不可の達成度を対応する評価項目ごとに表示するように構成されていていても良い。
【0034】
この加工状態表示装置によれば、達成度データ記憶部に格納されたデータを参照して、安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件が認識され、認識された不安定な加工条件を基に、各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かが検証され、適用不可の達成度が存在する場合には、適用不可の達成度が対応する評価項目ごとに表示される。オペレータは、表示された各評価項目の達成度が適用不可であるか否かを容易に認識することができ、また、かかる認識の下、選択評価項目に係る要求達成度を適宜調整することで、各評価項目の達成度が適用不可とならないような加工条件を選定することができる。
【0035】
また、前記加工状態表示装置は、工具と被加工物との相対的な回転速度と、前記工具の切削量との関係における、前記工具の再生びびりに関する安定限界曲線
に係るデータを記憶した安定限界曲線データ記憶部を更に備え、
前記表示部は、前記安定限界曲線データ記憶部に格納された安定限界曲線
に係るデータ、及び前記達成度データ記憶部に格納されたデータを基に、
該安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件を認識し、認識した不安定な加工条件を基に、前記各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かを検証し、適用不可の達成度が存在する場合には、該適用不可の達成度に対応した図形を、対応する評価項目に係る前記軸状図形上に配置して表示するように構成されていても良い。
【0036】
この加工状態表示装置によれば、達成度データ記憶部に格納されたデータを参照して、安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件が認識され、認識された不安定な加工条件を基に、各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かが検証され、適用不可の達成度が存在する場合には、適用不可の達成度に対応した図形が、対応する評価項目ごとに表示される。
【0037】
したがって、この加工状態表示装置によっても、オペレータは、表示された各評価項目の達成度が適用不可であるか否かを容易に認識することができ、また、かかる認識の下、選択評価項目に係る要求達成度を適宜調整することで、各評価項目の達成度が適用不可とならないような加工条件を選定することができる。