特許第6371335号(P6371335)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371335
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】加工状態表示装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4063 20060101AFI20180730BHJP
   B23Q 15/12 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   G05B19/4063 L
   B23Q15/12 A
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-107575(P2016-107575)
(22)【出願日】2016年5月30日
(65)【公開番号】特開2017-215675(P2017-215675A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】西川 静雄
(72)【発明者】
【氏名】飯山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】中尾 大樹
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−5507(JP,A)
【文献】 特開2007−69330(JP,A)
【文献】 特開2004−280267(JP,A)
【文献】 特開平10−301745(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013211860(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
B23Q 15/00 − 15/28
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された加工に関する複数の評価項目に関し、それぞれその実現可能な最大値及び最小値により規定された範囲内における、その達成度を示す達成度データであって、予め設定された複数の加工条件下でそれぞれ加工した際の、各加工条件データと、該加工条件ごとの前記各評価項目に係る達成度データとを相互に関連付けて記憶した達成度データ記憶部と、
ディスプレイを備え、前記達成度データ記憶部に記憶された加工条件データ及び達成度データを参照して、加工条件及びこれに対応する各評価項目に係る達成度を前記ディスプレイに表示する表示部と、
前記複数の評価項目から一つの評価項目を選択する信号、及び該評価項目について要求される達成度を入力する入力部とを備えて構成され、
前記表示部は、更に、前記入力部から選択信号及び要求達成度が入力されると、選択された評価項目及び要求達成度を基に、前記達成度データ記憶部に記憶された達成度データ及び加工条件データを参照して、該評価項目の要求達成度に対応した加工条件、及び該加工条件下における他の評価項目の達成度を認識し、前記入力された評価項目及び認識された他の評価項目における達成度を、それぞれ評価項目ごとに表示するとともに、認識された加工条件を表示するように構成されていることを特徴とする加工状態表示装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記達成度データ記憶部の達成度データを参照した結果、前記選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合、選択された評価項目に関連して予め設定された優先順位の高い前記他の評価項目ついて、その達成度が最も高い最適な加工条件を認識した後、該加工条件下における前記他の評価項目の達成度を認識して、前記入力された評価項目及び認識された他の評価項目における達成度を、それぞれ評価項目ごとに表示するとともに、認識された最適な加工条件を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の加工状態表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記各評価項目の達成度を図形によって表示するように構成され、該図形は前記最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、該軸状図形上の、前記達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形とから構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の加工状態表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記各評価項目の達成度を図形によって表示するように構成され、該図形は前記最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、該軸状図形上の、前記達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形とを含み、
更に、前記表示部は、前記達成度データ記憶部の達成度データを参照した結果、前記選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合、各加工条件における前記各評価項目の達成度であって、前記指標図形に対応した達成度以外の非対象達成度に関し、該非対象達成度に応じた比率の長さ位置を含み且つ前記指標図形につながる領域図形を前記軸状図形上に配置して表示するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の加工状態表示装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記各評価項目の達成度を図形によって表示するように構成され、該図形は前記最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、該軸状図形上の、前記達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形とを含み、
前記表示部は、更に、前記達成度データ記憶部の達成度データを参照した結果、前記優先順位の高い評価項目以外の更に他の評価項目に係る達成度であって、前記最適な加工条件以外の他の加工条件下における達成度が、前記最適な加工条件下における達成度よりも高い場合には、該評価項目について、前記他の加工条件下における達成度を表す図形と、前記最適な加工条件下における達成度を表す図形とを相互に関連づけて表示するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の加工状態表示装置。
【請求項6】
前記入力部は、前記ディスプレイに表示された各評価項目の前記指標図形を選択する選択信号を入力可能に構成されるとともに、選択した前記指標図形を、対応する前記軸状図形の長手方向にスライドさせるための信号を入力可能に構成され、
前記表示部は、前記入力部から選択信号及びスライド信号が入力されると、前記選択信号に応じた評価項目を認識し、前記ディスプレイに表示された前記指標図形を前記スライド信号に応じてスライドさせるとともに、該指標図形の停止位置から要求達成度を認識するように構成されていることを特徴とする請求項3乃至5記載のいずれかの加工状態表示装置。
【請求項7】
工具と被加工物との相対的な回転速度と、前記工具の切削量との相関関係における、前記工具の再生びびりに関する安定限界曲線に係るデータを記憶した安定限界曲線データ記憶部を更に備え、
前記表示部は、前記安定限界曲線データ記憶部に格納された安定限界曲線に係るデータを基に、前記要求達成度に対応した加工条件が、前記安定限界曲線を境界とした安定領域に含まれるかどうかを検証し、安定領域に含まれる場合には、該加工条件及び該加工条件下における評価項目の達成度を表示し、安定領域に含まれない場合には、前記達成度データ記憶部に格納されたデータを参照して、安定領域に含まれるような加工条件を選定するとともに、選定した加工条件に対応する各評価項目の達成度を認識し、選定した加工条件及び認識した各評価項目における達成度を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至6記載のいずれかの加工状態表示装置。
【請求項8】
工具と被加工物との相対的な回転速度と、前記工具の切削量との相関関係における、前記工具の再生びびりに関する安定限界曲線に係るデータを記憶した安定限界曲線データ記憶部を更に備え、
前記表示部は、前記安定限界曲線データ記憶部に格納された安定限界曲線に係るデータ、及び前記達成度データ記憶部に格納されたデータを基に、該安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件を認識し、認識した不安定な加工条件を基に、前記各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かを検証し、適用不可の達成度が存在する場合には、適用不可の達成度を対応する評価項目ごとに表示するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の加工状態表示装置。
【請求項9】
工具と被加工物との相対的な回転速度と、前記工具の切削量との関係における、前記工具の再生びびりに関する安定限界曲線に係るデータを記憶した安定限界曲線データ記憶部を更に備え、
前記表示部は、前記安定限界曲線データ記憶部に格納された安定限界曲線に係るデータ、及び前記達成度データ記憶部に格納されたデータを基に、安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件を認識し、認識した不安定な加工条件を基に、前記各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かを検証し、適用不可の達成度が存在する場合には、該適用不可の達成度に対応した図形を、対応する評価項目に係る前記軸状図形上に配置して表示するようにしたことを特徴とする請求項3乃至6記載のいずれかの加工状態表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械で実行可能な加工状態を表示する装置に関し、より詳しくは、予め設定された加工に関する複数の評価項目について、その実現可能な最大値から最小値までを範囲とした達成度を、相互に関連付けて表示する加工状態表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を用いた加工の分野では、被加工物(ワーク)を効率よく加工すること、並びに加工コストを低減させることが永続的な課題として探求されている。一方、機械加工に求められる加工精度については、技術の進歩に伴って、より高い精度が日々求められている。したがって、工作機械を用いてワークを加工する際には、これら加工効率、加工コスト及び加工精度の各要素を総合的に判断して、それぞれが良好な状態となるような加工条件を設定する必要がある。
【0003】
このような背景の下、従来、前記加工精度に影響を与える一要素である再生びびりに着目し、工具又はワークを回転させる主軸の回転速度と、再生びびりを生じる工具の限界切り込み深さとの相関を表す安定限界線図を画面表示するようにした表示装置が知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
この表示装置によれば、主軸回転速度と、再生びびりを生じる工具の限界切り込み深さとの相関を表す安定限界線図が画面表示されるので、オペレータは、再生びびりを生じない主軸回転速度と工具の切り込み深さとの関係を、瞬時に視覚的に認識することができ、当該再生びびりが生じず、しかも加工効率の良い加工条件を適宜設定することができる。
【0005】
例えば、経験的な知見に基づき、切削抵抗等を考慮した上で、再生びびりを生じない領域において、切削可能な最も速い主軸回転速度と最も深い切り込み深さを設定することができる。
【0006】
このように、この従来の表示装置によれば、オペレータは、表示装置に表示された安定限界線図を基準にすることで、再生びびりが生じない範囲内において、効率の良い加工条件を設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−200848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、良好な加工条件を設定するためには、上述したように、加工効率、加工コスト及び加工精度に関係する各要素について、これらを総合的に判断する必要がある。
【0009】
ところが、上記従来の表示装置では、主軸回転速度と、再生びびりを生じる工具の限界切り込み深さとの相関を表す安定限界線図しか表示されないため、加工効率,加工コスト及び加工精度に関係する要素であって、再生びびり以外の他の要素の評価については、オペレータの経験的な知見に頼らざるを得えないという問題があった。
【0010】
しかしながら、前記加工効率、加工コスト及び加工精度は所謂二律背反的な関係にあり、オペレータは、これらについて十分な知見を有していないのが実情である。例えば、加工効率を高める、即ち、加工時間を短くするには、工具がフライスである場合、その切込幅及び切込深さを大きくするとともに、工具の回転速度及び送り速度を高くすればよいが、このようにすると、消費電力が大きくなるとともに、工具寿命が短くなって、加工コストを高める一因となり、また、切込幅及び切込深さを大きくすること、並びに送り速度を高くすることは、加工精度が悪化する要因となる。
【0011】
このように、加工効率、加工コスト及び加工精度に係る加工上の評価項目(例えば、前記加工時間、加工精度及び工具寿命)は、その相互関係が二律背反的な関係にあり、また、その関係が極めて複雑であるため、熟練した知識を有しない一般的なオペレータは、その相互関係についての正確な知見を持ち得ていないのが実情である。
【0012】
したがって、このような加工効率、加工コスト及び加工精度に係る加工上の評価項目(例えば、加工時間、加工精度や工具寿命)について、その相互関係を表示することができれば、一般的なオペレータであっても、当該相互関係を容易に認識することができて便利である。
【0013】
また、オペレータは、加工効率、加工コスト及び加工精度に係る加工上の評価項目について、その相互関係を認識することで、これを踏まえた加工条件の設定や、その調整を行うことができ、更に、このような評価項目の相互関係に応じた加工条件が表示されれば、オペレータは、加工効率、加工コスト及び加工精度を総合的に考慮した良好な加工条件を容易に認識することができる。
【0014】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、予め設定された加工に関する複数の評価項目について、その実現可能な最大値から最小値まで範囲とした達成度を、相互に関連付けて表示するようにした加工状態表示装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、予め設定された加工に関する複数の評価項目に関し、それぞれその実現可能な最大値及び最小値により規定された範囲内における、その達成度を示す達成度データであって、予め設定された複数の加工条件下でそれぞれ加工した際の、各加工条件データと、該加工条件ごとの前記各評価項目に係る達成度データとを相互に関連付けて記憶した達成度データ記憶部と、
ディスプレイを備え、前記達成度データ記憶部に記憶された加工条件データ及び達成度データを参照して、加工条件及びこれに対応する各評価項目に係る達成度を前記ディスプレイに表示する表示部と、
前記複数の評価項目から一つの評価項目を選択する信号、及び該評価項目について要求される達成度を入力する入力部とを備えて構成され、
前記表示部は、更に、前記入力部から選択信号及び要求達成度が入力されると、選択された評価項目及び要求達成度を基に、前記達成度データ記憶部に記憶された達成度データ及び加工条件データを参照して、該評価項目の要求達成度に対応した加工条件、及び該加工条件下における他の評価項目の達成度を認識し、前記入力された評価項目及び認識された他の評価項目における達成度を、それぞれ評価項目ごとに表示するとともに、認識された加工条件を表示するように構成された加工状態表示装置に係る。
【0016】
この加工状態表示装置によれば、オペレータが、一の評価項目を選択する選択信号、及び選択した評価項目についてその要求達成度を、前記入力部から入力すると、前記表示部は、入力された評価項目及び要求達成度を基に、前記達成度データ記憶部に記憶された達成度データ及び加工条件データを参照して、該評価項目の要求達成度に対応した加工条件、及び該加工条件下における他の評価項目の達成度を認識し、前記入力された評価項目及び認識された他の評価項目における達成度を、それぞれ評価項目ごとに表示するとともに、認識された加工条件を表示する。
【0017】
尚、前記評価項目としては、例えば、「加工時間」、「表面粗さ」、「工具寿命」、「切削効率(=単位電力あたりの切削体積)」、「残留応力の程度」、「主軸モータ負荷」及び「送りモータ負荷」などから選択される三以上の項目を例示することができるが、これらに限定されるものではない。この場合、「加工時間」及び「切削効率」は前記加工効率に影響する要因であり、「工具寿命」、「主軸モータ負荷」及び「送りモータ負荷」は加工コストに影響する要因であり、「表面粗さ」及び「残留応力の程度」は加工精度に影響する要因である。また、加工効率は加工コストにも影響を与える。
【0018】
また、前記各評価項目における前記達成度は、上述のように、当該評価項目について実現可能な最大値及び最小値により規定される範囲内において、その達成レベルを表すものであり、例えば、最大値を「100」とし、最小値を「0」とした場合に、その中間値の達成レベルである場合には、達成度は「50」となる。
【0019】
また、前記加工条件は加工態様によって異なり、例えば、フライス加工の場合には、その加工条件としての要素は「切込深さ[mm]」、「切込幅[mm]」、「送り速度[m/min]」及び「切削速度[m/min]」であり、旋削の場合の要素は「切込[mm]」、「送り速度[mm/rev]」及び「切削速度[m/min]」であり、ドリル加工の場合の要素は「送り速度[m/min]」及び「切削速度[m/min]」である。
【0020】
斯くして、この加工状態表示装置によれば、オペレータは、例えば、自身が注目する評価項目と、その評価項目についての要求達成度とを入力することで、当該評価項目の達成度と、これに応じた他の評価項目の達成度とを併せて認識することができ、これら評価項目相互間の関係を容易に認識することができるとともに、このような達成度が得られる加工条件を容易に認識することができる。
【0021】
また、オペレータは、入力部から入力する要求達成度を調整することで、各評価項目における達成度を調整することができ、例えば、各評価項目における達成度がバランスした状態となる、或いは各評価項目における達成度がオペレータの希望する状態となるような加工条件を容易に認識することができる。そして、上述のように、各評価項目は加工効率、加工コスト及び加工精度につながるものであるので、オペレータは、これら評価項目についての達成度を調整することで、加工効率、加工コスト及び加工精度を総合的に考慮した良好な加工条件を得ることができる。
【0022】
この加工状態表示装置において、前記表示部は、前記達成度データ記憶部の達成度データを参照した結果、前記選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合、選択された評価項目に関連して予め設定された優先順位の高い前記他の評価項目ついて、その達成度が最も高い最適な加工条件を認識した後、該加工条件下における前記他の評価項目の達成度を認識して、前記入力された評価項目及び認識された他の評価項目における達成度を、それぞれ評価項目ごとに表示するとともに、認識された最適な加工条件を表示するように構成されていても良い。
【0023】
この加工状態表示装置によれば、前記表示部において、選択評価項目の要求達成度に対応する加工条件が複数存在する場合に、当該選択評価項目に関連して予め設定された優先順位の高い他の評価項目ついて、その達成度が最も高い最適な加工条件が認識され、認識された加工工条件及び当該加工条件下における各評価項目の達成度が表示される。したがって、選択評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合でも、最適な状態での各評価項目の達成度を認識することができるとともに、これに応じた加工条件を認識することができる。
【0024】
また、前記加工状態表示装置において、前記表示部は、前記各評価項目の達成度を図形によって表示するように構成され、該図形は前記最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、該軸状図形上の、前記達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形とから構成されていても良い。この加工状態表示装置によれば、各評価項目にかかる達成度が、軸状図形及び指標図形から構成される図形によって表示されるので、オペレータは、当該達成度を瞬時に且つ直観的に認識することができる。
【0025】
また、前記加工状態表示装置において、前記表示部は、前記各評価項目の達成度を図形によって表示するように構成され、該図形は前記最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、該軸状図形上の、前記達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形とを含み、
更に、前記表示部は、前記達成度データ記憶部の達成度データを参照した結果、前記選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合、各加工条件における前記各評価項目の達成度であって、前記指標図形に対応した達成度以外の非対象達成度に関し、該非対象達成度に応じた比率の長さ位置を含み且つ前記指標図形につながる領域図形を前記軸状図形上に配置して表示するように構成されていても良い。
【0026】
この加工状態表示装置によれば、選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合に、各加工条件下における各評価項目の達成度が、指標図形及びこれにつながる領域図形として表示されるので、オペレータは、各評価項目について、指標図形に対応した達成度に加えて、他の実現可能な達成度を認識することができる。そして、オペレータは、このような認識が得られることにより、各評価項目における達成度が良好な状態となる加工条件、即ち、加工効率、加工コスト及び加工精度を総合的に考慮した良好な加工条件を容易に得ることができる。
【0027】
また、前記加工状態表示装置において、前記表示部は、前記各評価項目の達成度を図形によって表示するように構成され、該図形は前記最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、該軸状図形上の、前記達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形とを含み、
前記表示部は、更に、前記達成度データ記憶部の達成度データを参照した結果、前記優先順位の高い評価項目以外の更に他の評価項目に係る達成度であって、前記最適な加工条件以外の他の加工条件下における達成度が、前記最適な加工条件下における達成度よりも高い場合には、該評価項目について、前記他の加工条件下における達成度を表す図形と、前記最適な加工条件下における達成度を表す図形とを相互に関連づけて表示するように構成されていても良い。
【0028】
この加工状態表示装置によれば、前記優先順位の高い評価項目以外の更に他の評価項目に係る達成度であって、前記最適な加工条件以外の他の加工条件下における達成度が、前記最適な加工条件下における達成度よりも高い場合には、該評価項目について、前記他の加工条件下における達成度を表す図形と、前記最適な加工条件下における達成度を表す図形とが相互に関連づけられて表示される。したがって、オペレータは、これを参照することで、予め定めた優先順位の高い評価項目を優先した加工条件のみならず、他の良好な加工条件が存在するか否かも容易に認識することができ、より良好な加工条件を得ることができる。
【0029】
また、前記加工状態表示装置において、前記入力部は、前記ディスプレイに表示された各評価項目の前記指標図形を選択する選択信号を入力可能に構成されるとともに、選択した前記指標図形を、対応する前記軸状図形の長手方向にスライドさせるための信号を入力可能に構成され、
前記表示部は、前記入力部から選択信号及びスライド信号が入力されると、前記選択信号に応じた評価項目を認識し、前記ディスプレイに表示された前記指標図形を前記スライド信号に応じてスライドさせるとともに、該指標図形の停止位置から要求達成度を認識するように構成されていても良い。
【0030】
この加工状態表示装置によれば、ディスプレイに表示された各評価項目の指標図形を選択することによって選択信号が入力され、また、選択した指標図形を、対応する軸状図形の長手方向にスライドさせることによって、要求達成度が入力される。したがって、オペレータは、入力する要求達成度を容易に調整することができ、また、各評価項目における達成度を容易に調整することができる。
【0031】
また、前記加工状態表示装置は、工具と被加工物との相対的な回転速度と、前記工具の切削量との相関関係における、前記工具の再生びびりに関する安定限界曲線に係るデータを記憶した安定限界曲線データ記憶部を更に備え、
前記表示部は、前記安定限界曲線データ記憶部に格納された安定限界曲線に係るデータを基に、前記要求達成度に対応した加工条件が、前記安定限界曲線を境界とした安定領域に含まれるかどうかを検証し、安定領域に含まれる場合には、該加工条件及び該加工条件下における評価項目の達成度を表示し、安定領域に含まれない場合には、前記達成度データ記憶部に格納されたデータを参照して、安定領域に含まれるような加工条件を選定するとともに、選定した加工条件に対応する各評価項目の達成度を認識し、選定した加工条件及び認識した各評価項目における達成度を表示するように構成されていても良い。
【0032】
この加工状態表示装置によれば、選択評価項目における要求達成度に対応した加工条件が、安定限界曲線を境界とした安定領域に含まれない場合には、達成度データ記憶部に格納されたデータを基に、安定領域に含まれるような加工条件が新たに選定されるとともに、選定された加工条件及び当該加工条件に対応した各評価項目の達成度が表示される。したがって、オペレータは特別な作業を要することなく、再生びびりの生じない加工条件を得ることができる。
【0033】
また、前記加工状態表示装置は、工具と被加工物との相対的な回転速度と、前記工具の切削量との相関関係における、前記工具の再生びびりに関する安定限界曲線に係るデータを記憶した安定限界曲線データ記憶部を更に備え、
前記表示部は、前記安定限界曲線データ記憶部に格納された安定限界曲線に係るデータ、及び前記達成度データ記憶部に格納されたデータを基に、該安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件を認識し、認識した不安定な加工条件を基に、前記各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かを検証し、適用不可の達成度が存在する場合には、適用不可の達成度を対応する評価項目ごとに表示するように構成されていていても良い。
【0034】
この加工状態表示装置によれば、達成度データ記憶部に格納されたデータを参照して、安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件が認識され、認識された不安定な加工条件を基に、各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かが検証され、適用不可の達成度が存在する場合には、適用不可の達成度が対応する評価項目ごとに表示される。オペレータは、表示された各評価項目の達成度が適用不可であるか否かを容易に認識することができ、また、かかる認識の下、選択評価項目に係る要求達成度を適宜調整することで、各評価項目の達成度が適用不可とならないような加工条件を選定することができる。
【0035】
また、前記加工状態表示装置は、工具と被加工物との相対的な回転速度と、前記工具の切削量との関係における、前記工具の再生びびりに関する安定限界曲線に係るデータを記憶した安定限界曲線データ記憶部を更に備え、
前記表示部は、前記安定限界曲線データ記憶部に格納された安定限界曲線に係るデータ、及び前記達成度データ記憶部に格納されたデータを基に、安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件を認識し、認識した不安定な加工条件を基に、前記各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かを検証し、適用不可の達成度が存在する場合には、該適用不可の達成度に対応した図形を、対応する評価項目に係る前記軸状図形上に配置して表示するように構成されていても良い。

【0036】
この加工状態表示装置によれば、達成度データ記憶部に格納されたデータを参照して、安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件が認識され、認識された不安定な加工条件を基に、各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かが検証され、適用不可の達成度が存在する場合には、適用不可の達成度に対応した図形が、対応する評価項目ごとに表示される。
【0037】
したがって、この加工状態表示装置によっても、オペレータは、表示された各評価項目の達成度が適用不可であるか否かを容易に認識することができ、また、かかる認識の下、選択評価項目に係る要求達成度を適宜調整することで、各評価項目の達成度が適用不可とならないような加工条件を選定することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明に係る加工状態表示装置によれば、オペレータは、例えば、自身が注目する評価項目と、その評価項目についての要求達成度とを入力することで、当該評価項目の達成度と、これに応じた他の評価項目の達成度とを併せて認識することができ、これら評価項目相互間の関係を容易に認識することができるとともに、このような達成度が得られる加工条件を容易に認識することができる。
【0039】
また、オペレータは、入力部から入力する要求達成度を調整することで、各評価項目における達成度を調整することができ、例えば、各評価項目における達成度がバランスした状態となる、或いは各評価項目における達成度がオペレータの希望する状態となるような加工条件を容易に認識することができる。そして、上述のように、各評価項目は加工効率、加工コスト及び加工精度につながるものであるので、オペレータは、これら評価項目についての達成度を調整することで、加工効率、加工コスト及び加工精度を総合的に考慮した良好な加工条件を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態に係る加工状態表示装置の概略構成を示したブロック図である。
図2】本実施形態に係る達成度データ記憶部に格納されるデータについて説明するための説明図である。
図3】本実施形態に係る安定限界曲線データ記憶部に格納されるデータについて説明するための説明図である。
図4】本実施形態の表示装置に表示される表示画面の一例を示した説明図である。
図5】本実施形態の表示装置に表示される表示画面の一例を示した説明図である。
図6】本実施形態の表示装置に表示される表示画面の一例を示した説明図である。
図7】本実施形態の表示装置に表示される表示画面の一例を示した説明図である。
図8】2自由度系の切削モデルを示した説明図である。
図9】減衰比の算出を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る加工状態表示装置を示したブロック図である。
【0042】
図1に示すように、本例の加工状態表示装置1は、達成度表示画面作成部3、表示制御部4、入力制御部7、達成度データ記憶部9及び安定限界曲線データ記憶部10を有する演算装置11、並びに表示装置5及び入力装置8を備えて構成される。
【0043】
尚、本例において、前記達成度表示画面作成部3、表示制御部4及び表示装置5は表示部2を構成し、入力制御部7及び入力装置8は入力部6を構成する。また、前記演算装置11は適宜工作機械の制御装置に組み込むことができ、同様に、前記表示装置5は工作機械の操作盤に設けられるディスプレイ、前記入力装置8は同じく工作機械の操作盤に設けられるキーボード等から構成することができる。
【0044】
前記表示制御部4及び入力制御部7は所謂ユーザインターフェースを構成するもので、表示制御部4は表示装置5への画面表示を制御し、入力制御部7は入力装置8から入力されたデータや信号の送信を制御する。
【0045】
例えば、前記表示制御部4は、前記達成度表示画面作成部3によって作成された達成度表示画面を前記表示装置5に表示し、また、前記入力制御部7を介して前記入力装置8から入力される操作信号を受信して、表示画面をスクロールさせたり、画面内のポインタを移動させたり、表示画面上の画像を移動させたりする。
【0046】
また、前記入力制御部7は、前記入力装置8から入力された達成度データ等を前記達成度データ記憶部9に格納する処理を行い、また、同じく入力装置8から入力された安定限界曲線データを前記安定限界曲線データ記憶部10に格納する処理を行う。また、入力制御部7は、上述のように、前記入力装置8から入力される操作信号を前記表示制御部4に送信する処理を行い、また、例えば、入力装置8から入力される確定信号を受信して、前記表示装置5に表示される表示画面上のポインタの位置や特定画像の位置を、前記表示制御部4を介して認識し、その位置に応じた入力信号を前記達成度表示画面作成部3に送信する処理を行う。
【0047】
尚、このような表示装置5及び入力装置8は、同じく工作機械の操作盤に設けられるタッチパネル等から構成することができる。
【0048】
前記達成度データ記憶部9は、所定の工具及びワークについて、予め設定された複数の加工条件下でそれぞれ加工した際の、各加工条件に係るデータと、該加工条件ごとの各評価項目に係る達成度データとを相互に関連付けて記憶する機能部であり、具体的には、例えば、図2に示すようなデータテーブルとして各データを記憶する。
【0049】
設定される加工条件は、工具の種類(加工の態様)によって異なり、例えば、フライス加工の場合には、「切込深さ[mm]」、「切込幅[mm]」、「送り速度[m/min]」及び「切削速度[m/min]」であり、旋削の場合には、「切込[mm]」、「送り速度[mm/rev]」及び「切削速度[m/min]」であり、ドリル加工の場合には、「送り速度[m/min]」及び「切削速度[m/min]」である。
【0050】
図2に示した例は、フライス加工の場合の加工条件を示しており、各要素について工具メーカが推奨する最大値(max)、最小値(min)及びその中間値(middle)の値を用い、これら3つの値を順次組み合わせて81通りの加工条件を設定している。尚、本例では、概念的に最大値(max)、最小値(min)及び中間値(middle)としているが、実際には具体的な数値によって設定される(以下において同様である)。
【0051】
そして、設定した各加工条件の下で、該当する工具及びワークを用いて試加工を行い、「加工時間」、「表面粗さ」、「工具寿命」、「切削効率」、「残留応力」、「主軸モータ負荷」及び「送りモータ負荷」の各評価項目について実測を行う。ここで、「加工時間」はワークの所定体積を加工するのに要する時間であり、「表面粗さ」は所定体積加工後の当該ワークの表面粗さであり、「残留応力」は所定体積加工後の当該ワークの表面硬さで評価される。また、「主軸モータ負荷」は所定体積を加工する間に主軸モータに作用する平均負荷であり、「送りモータ負荷」は所定体積を加工する間に送りモータに作用する平均負荷である。また、「切削効率」は単位電力あたりの切削体積であり、所定体積を加工する間に要した主軸モータ及び送りモータの積算電力を計測し、前記所定体積を積算電力で除算することによって算出することができる。また、「工具寿命」は工具の摩耗量が所定量に至るまでの加工時間である。
【0052】
前記達成度は、前記各評価項目のそれぞれについて、実測された全データの最大値及び最小値によって規定される範囲内において、各加工条件における値がどのレベル(達成レベル)にあるかを表すものであり、例えば、最大値を「100」とし、最小値を「0」とした場合に、ある加工条件における値が最大値と最小値の丁度真中の値である場合には、達成度(達成レベル)は「50」となる。
【0053】
斯くして、上記の試加工によって得られた各評価項目についての実測値を基に、前記各加工条件下における前記各評価項目についてその達成度を算出して、対応する加工条件と、達成度とを相互に関連付けて前記達成度データ記憶部9に格納する。尚、この加工条件と達成度に関するデータは、工具の種類、工具材質及びワーク材質によって異なるため、工具の種類、工具材質及びワーク材質ごとに上記試加工によって取得され、この工具の種類、工具材質及びワーク材質ごとに前記達成度データ記憶部9に格納される。
【0054】
前記安定限界曲線データ記憶部10は、図3に示すような安定限界曲線に係るデータを記憶する機能部であり、当該安定限界曲線データは前記入力装置8及び入力制御部7を介して入力され、当該安定限界曲線データ記憶部10に格納される。
【0055】
安定限界曲線は、主軸回転速度と再生びびりを生じる工具の限界切込深さ(切削量)との相関を示すものである。まず、この安定限界曲線を作成するための基本的な原理について説明する。図8に示したモデルは、工具TとワークWとをx軸(送り方向)及びy軸(切り込み方向)の2つの送り軸方向に相対移動させるように構成された2自由度系の物理モデルである。このモデルから、再生びびり振動の発生する条件を、Y・Altintasの考案した解析方法を用いて求める。
【0056】
このモデルにおいて、工具Tの運動方程式は、それぞれ以下の数式1及び数式2で表わされる。
【0057】
(数式1)
x"+2ζxωxx'+ωx2x=Fx/mx
(数式2)
y"+2ζyωyy'+ωy2y=Fy/my
ここで、ωxは工具Tのx軸方向の固有振動数[rad/sec]、ωyは工具Tのy軸方向の固有振動数[rad/sec]であり、ζxはx軸方向の減衰比[%]、ζyはy軸方向の減衰比[%]である。また、mxはx軸方向の等価質量[kg]、myはy軸方向の等価質量[kg]であり、Fxは工具Tに作用するx軸方向の切削動力[N]であり、Fyは工具Tに作用するy軸方向の切削動力[N]である。また、x"及びy"はそれぞれ時間の2階微分を示し、x'及びy'はそれぞれ時間の1階微分を示す。
【0058】
切削動力Fx,Fyは、切れ刃がワークWを切り取る厚さをh(φ)[m2]、切込深さをap[mm]、周方向の切削剛性をKt[N/m2]、半径方向の比切削剛性をKr[%]とすると、次式数式3及び数式4によって算出することができる。
(数式3)
x=−Ktph(φ)cos(φ)−Krtph(φ)sin(φ)
(数式4)
y=+Ktph(φ)sin(φ)−Krtph(φ)cos(φ)
【0059】
この切削動力Fx,Fyは、工具Tの回転角φ[rad]によって変化するので、切削を開始する角度φstと切削を終了する角度φexとの間で切削動力Fx,Fyを積分し、その平均を求めることによって得られる。また、角度φst及び角度φexは、工具Tの直径D[mm]、切り込み幅Ae[mm]、送り方向、アッパーカットかダウンカットかによって幾何学的に求めることができる。
【0060】
上記数式1及び数式2に係る固有値Λは、びびり振動の振動数をωcとすると、次式数式5によって表される。
(数式5)
Λ=−(a1±(a12−4a01/2)/2a0
但し、
0=Φxx(iωcyy(iωc)(αxxαyy−αxyαyx)
1=αxxΦxx(iωc)+αyyΦyy(iωc)
Φxx(iωc)=1/(mx(−ωc2+2iζxωcωx+ωx2))
Φyy(iωc)=1/(my(−ωc2+2iζyωcωy+ωy2))
αxx=[(cos2φex−2Krφex+Krsin2φex)−(cos2φst−2Krφst+Krsin2φst)]/2
αxy=[(−sin2φex−2φex+Krcos2φex)−(−sin2φst−2φst+Krcos2φst)]/2
αyx=[(−sin2φex+2φex+Krcos2φex)−(−sin2φst+2φst+Krcos2φst)]/2
αyy=[(−cos2φex−2Krφex−Krsin2φex)−(cos2φst−2Krφst−Krsin2φst)]/2
【0061】
そして、前記固有値Λの実部をΛR、虚部をΛIとすると、安定限界における切り込み深さaplim、及び主軸の回転速度nlimは、それぞれ次の数式6及び数式7によって表される。
(数式6)
plim=2πΛR(1+(ΛIR)2)/(NKt)
(数式7)
lim=60ωc/(N(2kπ+π−2tan-1IR)))
但し、Nは工具Tの刃数、kは整数である。
【0062】
そして、上記数式6及び数式7を用い、そのωc及びkの値を任意に変化させながらそのときの限界切り込み深さaplim、及び主軸の回転速度nlimを算出することで、図3に示すような安定限界曲線を作成することができる。
【0063】
尚、前記固有振動数ωx,ωyはハンマーを用いた打撃試験によって実験的に得ることができ、切削剛性Kt及び比切削剛性Krは試加工によって得ることができる。
【0064】
また、前記減衰比ζx,ζyは、工具Tのx軸方向の固有振動数をωx、y軸方向の固有振動数をωyとすると、例えば、次の数式8及び数式9によって算出することができる。
(数式8)
ζx=(ω1x−ω2x)/2ωx
(数式9)
ζy=(ω1y−ω2y)/2ωy
但し、ω1x,ω1y及びω2x,ω2yは、図9に示すように、x軸方向及びy軸方向の各コンプライアンス(変位(=出力)/切削動力(=入力))の最大値がGx及びGyであるときに、Gx/21/2,Gy/21/2に相当する振動数であり、コンプライアンスが最大値Gx,Gyをとるときの振動数が、当該工具Tの固有振動数ωx,ωyである。
【0065】
また、前記等価質量はmx、myは次の数式10及び数式11によって算出することができる。
(数式10)
x=1/(2Gxζxωx2)
(数式11)
y=1/(2Gyζyωy2)
【0066】
尚、安定限界曲線は、工具の種類、工具材質及びワーク材質によって異なるため、上記のようにして工具の種類、工具材質及びワーク材質ごとに予め取得され、工具の種類、工具材質及びワーク材質ごとに前記安定限界曲線データ記憶部10に格納される。
【0067】
前記達成度表示画面作成部3は、前記入力装置8及び前記入力制御部7から、工具の種類、工具材質及びワーク材質について選択する信号、前記複数の評価項目から一の評価項目を選択する信号、及び該評価項目について要求される達成度に係る信号を受信するように構成される。尚、これらの信号はオペレータが前記入力装置8から入力する。
【0068】
そして、上記各選択信号及び要求達成度に係る信号を受信すると、達成度表示画面作成部3は前記達成度データ記憶部9に格納されたデータテーブルの内、選択された工具の種類、工具材質及びワーク材質に対応したデータテーブルを参照するとともに、前記安定限界曲線データ記憶部10に格納されたデータの内、選択された工具の種類、工具材質及びワーク材質に対応した安定限界曲線データを参照し、選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件、及び該加工条件下における各評価項目の達成度を表示する表示画面を作成し、作成した表示画面を、前記表示制御部4を介して前記表示装置5に表示させる処理を行う。
【0069】
以下、この達成度表示画面作成部3における表示画面の作成、及び前記表示装置5への表示の態様について詳述する。
【0070】
前記達成度表示画面作成部3は、まず、選択された工具の種類、工具材質及びワーク材質に対応したデータテーブルを参照して、選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件を認識する。そして、同じく選択された工具の種類、工具材質及びワーク材質に対応した安定限界曲線データを参照し、認識した加工条件が、安定限界曲線を境界とした安定領域に含まれるかどうかを検証し、安定領域に含まれる場合には、前記データテーブルを参照して、この加工条件下における各評価項目の達成度を認識する。
【0071】
例えば、参照するデータテーブルが図2に示したデータテーブルとし、選択された評価項目が「加工時間」で、その要求達成度が「90」であるとすると、達成度表示画面作成部3は、対応する加工条件として、「送り速度」が「max」、「切削速度」が「max」、「切込幅」が「middle」、「切込深さ」が「min」である加工条件を認識し、この加工条件に対応する各評価項目の達成度を読み出す。尚、この場合、「表面粗さ」についての達成度は「45」、「工具寿命」についての達成度は「22」、「切削効率」についての達成度は「60」、「残留応力」についての達成度は「6」、「主軸モータ負荷」についての達成度は「8」、「送りモータ負荷」についての達成度は「6」である。
【0072】
一方、認識した加工条件が、安定限界曲線を境界とした安定領域に含まれない場合には、前記達成度表示画面作成部3は、前記データテーブルを参照して、安定領域に含まれるような加工条件を選定するとともに、選定した加工条件に対応する各評価項目の達成度を読み出す。尚、加工条件の変更は、前記「切削速度」及び「切込深さ」の双方、又はいずれか一方を変更する。
【0073】
次に、達成度表示画面作成部3は、読み出した加工条件及び各評価項目に係る達成度を表す表示画面を作成する。この表示画面では、図4に示すように、各評価項目の達成度が図形によって表示され、この達成度を表す図形の下方に、対応する加工条件を文字表示する表示欄が設けられている。
【0074】
達成度を表す図形は、各評価項目における最大値及び最小値により規定される範囲に応じた長さを有する軸状図形と、この軸状図形上において、達成度に応じた比率の長さ位置に配置される指標図形(黒く塗りつぶした矩形の図形)とから構成され、本例では、各評価項目における前記軸状図形を、その最大値を「100」のレベルとし、最小値を「0」のレベルとした長さを有する図形としており、各軸状図形は同じ長さを有している。また、各軸状図形の左側に対応する評価項目が文字表示されている。図4では、上述のようにして読み出された、「送り速度」が「max」、「切削速度」が「max」、「切込幅」が「middle」、「切込深さ」が「min」である加工条件が表示され、また、「加工時間」の達成度が「90」、「表面粗さ」の達成度が「45」、「工具寿命」の達成度が「22」、「切削効率」の達成度が「60」、「残留応力」の達成度が「6」、「主軸モータ負荷」の達成度が「8」、「送りモータ負荷」の達成度が「6」である場合の指標図形が表示されている。
【0075】
斯くして、このようにして達成度表示画面作成部3によって作成された表示画面に係るデータが前記表示制御部4に送信され、この表示制御部4による制御の下で、当該表示画面が前記表示装置5に表示される。
【0076】
このように、本例の加工状態表示装置1によれば、オペレータが、表示を希望する工具の種類、工具材質及びワーク材質、並びに注目する評価項目及びその要求達成度を入力することで、希望した工具の種類、工具材質及びワーク材質の加工について、注目する評価項目の要求達成度が満足される加工条件が画面表示されるとともに、当該加工条件下における各評価項目の達成度が図形表示される。したがって、オペレータは、各評価項目についての達成度を瞬時に且つ直観的に認識することができ、また、注目する評価項目の達成度と、他の評価項目の達成度とを併せて認識することができるとともに、これら評価項目相互間の関係を容易に認識することができ、このような達成度が得られる加工条件を容易に認識することができる。
【0077】
また、オペレータは、入力装置8から入力する要求達成度を調整することで、各評価項目における達成度を調整することができ、このように調整することで、例えば、各評価項目における達成度がバランスした状態となる、或いは各評価項目における達成度がオペレータの希望する状態となるような加工条件を容易に認識することができる。そして、各評価項目は加工効率、加工コスト及び加工精度につながるものであるので、オペレータは、これら評価項目についての達成度を調整することで、加工効率、加工コスト及び加工精度を総合的に考慮した良好な加工条件を得ることができる。
【0078】
また、この加工状態表示装置1では、選択評価項目における要求達成度に対応した加工条件が、安定限界曲線を境界とした安定領域に含まれない場合には、安定領域に含まれるような加工条件が新たに選定されるとともに、選定された加工条件及び当該加工条件に対応した各評価項目の達成度が表示されるので、オペレータは特別な作業を要することなく、再生びびりの生じない加工条件を得ることができる。
【0079】
尚、本例の加工状態表示装置1では、上記のようにして達成度を表示する画面が表示装置5に表示された状態で、前記入力装置8は、前記入力制御部7及び表示制御部4を介して、前記表示装置5に表示された各評価項目の指標図形を選択する選択信号を入力可能に構成されるとともに、選択した前記指標図形を、対応する前記軸状図形の長手方向にスライドさせるための信号を入力可能に構成されていても良い。
【0080】
この場合、前記表示制御部4は、前記入力制御部7を介して入力装置8から選択信号及びスライド信号が入力されたときに、この選択信号に応じた評価項目を認識して、当該評価項目に係る信号を入力制御部8に送信するように構成され、また、前記スライド信号に応じて前記表示装置5に表示された指標図形をスライドさせるとともに、該指標図形の停止位置に応じた達成度を認識して、当該達成度に係る信号を入力制御部7に送信するように構成される。また、入力制御部7は表示制御部4から送信された評価項目に係る信号(即ち、変更された選択評価項目に係る信号)及び達成度に係る信号(変更された要求達成度に係る信号)を前記達成度表示画面作成部3に送信するように構成される。
【0081】
斯くして、達成度表示画面作成部3は、以上のようにして入力制御部7から、変更された選択評価項目に係る信号及び変更された要求達成度に係る信号を受信すると、上述した手順を繰り返して更新された新たな表示画面を作成し、当該更新表示画に係るデータを表示制御部4に送信して、当該表示制御部4による制御の下で、表示装置5に更新表示画面を表示させる。
【0082】
このように構成された加工状態表示装置1によれば、オペレータが入力装置8を介して、表示装置5に表示された各評価項目の指標図形を選択することによって選択信号が入力され、また、選択した指標図形を対応する軸状図形の長手方向にスライドさせることによって要求達成度が入力されるので、オペレータは、入力する要求達成度を容易に調整することができ、また、各評価項目における達成度を容易に調整することができる。
【0083】
また、本例の加工状態表示装置1では、前記達成度表示画面作成部3は、前記入力制御部7から入力された選択評価項目の要求達成度を満足する加工条件が複数存在する場合、選択された評価項目に関連して予め設定された優先順位の高い他の評価項目(選択評価項目以外の評価項目)ついて、その達成度が最も高い最適な加工条件を認識した後、当該加工条件下における他の評価項目の達成度を認識して、上述した表示画面を作成するように構成されていても良い。
【0084】
また、この場合において、達成度表示画面作成部3は、この表示画面において、存在する各加工条件における各評価項目の達成度であって、指標図形に対応した達成度以外の非対象達成度について、即ち、前記最適な加工条件以外の各加工条件における達成度について、当該達成度に応じた比率の長さ位置を含み且つ前記指標図形につながる領域図形を、対応する軸状図形上に配置するように構成されていても良い。
【0085】
例えば、図2において、選択された評価項目を「加工時間」とし、要求達成度を「94」とすると、これを満足する加工条件は、「送り速度」が「max」、「切削速度」が「max」、「切込幅」が「max」、「切込深さ」が「min」である第1の加工条件と、「送り速度」が「max」、「切削速度」が「max」、「切込幅」が「middle」、「切込深さ」が「middle」である第2の加工条件との2通りが存在する。
【0086】
この場合、達成度表示画面作成部3は、予め設定された優先順位の高い前記他の評価項目、例えば、「表面粗さ」について、その達成度が高い加工条件、即ち、達成度が「45」である第1の加工条件を選定し、この第1の加工条件下での他の評価項目の達成度を読み出して、上述した表示画面を作成する。また、達成度表示画面作成部3は、この表示画面において、第2の加工条件における各評価項目の達成度が第1の加工条件下における達成度と異なる場合には、その評価項目について、当該達成度(非対象達成度)に応じた比率の長さ位置を含み且つ指標図形につながる領域図形を、対応する軸状図形上に配置する。図2に示した例では、非対象達成度は「表面粗さ」の達成度「42」及び「工具寿命」の達成度「25」が該当する。このようにして作成される表示画面を図5に示す。図5では、前記領域図形を白抜きの矩形図形としている。
【0087】
このように構成された加工状態表示装置1によれば、選択された評価項目の要求達成度に対応した加工条件が複数存在する場合に、各加工条件下における各評価項目の達成度が、指標図形及びこれにつながる領域図形として表示されるので、オペレータは、各評価項目について、指標図形に対応した達成度に加えて、他の実現可能な達成度を認識することができる。そして、オペレータは、このような認識が得られることにより、各評価項目における達成度が良好な状態となる加工条件、即ち、加工効率、加工コスト及び加工精度を総合的に考慮した良好な加工条件を容易に得ることができる。
【0088】
また、本例の加工状態表示装置1において、前記達成度表示画面作成部3は、上記のように選択評価項目について要求達成度を満足する加工条件が複数存在する場合において、前記優先順位の高い評価項目以外の更に他の評価項目に係る達成度であって、前記最適な加工条件以外の他の加工条件下における達成度が、前記最適な加工条件下における達成度よりも高い場合には、該評価項目について、前記他の加工条件下における達成度を表す図形と、前記最適な加工条件下における達成度を表す図形とを相互に関連づけて表示するように構成されていても良い。
【0089】
例えば、図2において、上述と同様に「加工時間」を選択評価項目とし、その要求達成度を「94」とすると、これを満足する加工条件は上記第1の加工条件及び第2の加工条件との2通りがあり、加工条件として、優先順位の高い他の評価項目である「表面粗さ」ついてその達成度が高い第1の加工条件が選定される。そして、達成度表示画面作成部3は、この第1の加工条件における各評価項目の達成度を読み出して、その表示画面を作成する。その際、第2の加工条件における達成度が第1の加工条件下における達成度よりも高くなる評価項目については、当該達成度を非対象の達成度として、当該達成度に応じた比率の長さ位置に、参考指標としての参考指標図形を、対応する軸状図形上に配置する。前記第2の加工条件における「残留応力」の達成度は「6」であり、第1の加工条件における達成度「4」よりも高い値である。この場合、図6に示すように、「残留応力」について第2の加工条件における達成度「6」に対応した参考指標図形が、第1の加工条件における達成度「4」に対応した指標図形と共に表示される。尚、図6では、前記参考指標図形を、ハッチングを付した矩形図形としている。
【0090】
このように構成された加工状態表示装置1によれば、前記優先順位の高い評価項目以外の更に他の評価項目に係る達成度であって、前記最適な加工条件以外の他の加工条件下における達成度が、前記最適な加工条件下における達成度よりも高い場合には、該評価項目について、前記他の加工条件下における達成度を表す図形と、前記最適な加工条件下における達成度を表す図形とが相互に関連づけられて表示される。したがって、オペレータは、これを参照することで、予め定めた優先順位の高い評価項目を優先した加工条件のみならず、他の良好な加工条件が存在するか否かも容易に認識することができ、より良好な加工条件を得ることができる。
【0091】
また、本例の加工状態表示装置1では、前記達成度表示画面作成部3は、前記表示画面を作成する際に、選択された前記安定限界曲線データ及び前記達成度データを基に、安定限界曲線を境界とする不安定領域に該当する不安定な加工条件を認識し、認識した不安定な加工条件を基に、前記各評価項目について、適用不可の達成度が存在するか否かを検証し、適用不可の達成度が存在する場合には、該適用不可の達成度に対応した図形を、対応する評価項目に係る前記軸状図形上に配置するように構成されていても良い。このような表示画面の一例を図7に示す。図7において、破線で示した白抜きの矩形図形が適用不可の範囲を示している。尚、当然のことながら、図4及び図6に示した態様において、適用不可の達成度に対応した図形を表示するようにしても良い。
【0092】
この加工状態表示装置1によれば、オペレータは、表示された各評価項目の達成度が適用不可であるか否かを容易に認識することができ、また、かかる認識の下、選択評価項目に係る要求達成度を適宜調整することで、各評価項目の達成度が適用不可とならないような加工条件を選定することができる。
【0093】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は何らこれに限定されるものではない。
【0094】
上述した例では、達成度表示画面作成部3は、達成度を図形で表示する表示画面を作成するように構成されているが、各達成度を文字で表示する表示画面を作成するように構成されていても良い。この場合、上述した領域図形、参考指標図形、及び適用不可の達成度に対応した図形についても、これに対応する達成度、範囲等を、評価項目ごとに文字で表示するのが好ましい。
【符号の説明】
【0095】
1 加工状態表示装置
2 表示部
3 達成度表示画面作成部
4 表示制御部
5 表示装置
6 入力部
7 入力制御部
8 入力装置
9 達成度データ記憶部
10 安定限界曲線データ記憶部
11 演算装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9