(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371343
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】独立型椎体間固定システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
A61F2/44
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-153272(P2016-153272)
(22)【出願日】2016年8月4日
(62)【分割の表示】特願2014-508459(P2014-508459)の分割
【原出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2017-12764(P2017-12764A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年8月31日
(31)【優先権主張番号】61/479,206
(32)【優先日】2011年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507280675
【氏名又は名称】アルファテック スパイン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】マッケニー,ブレアンナ
(72)【発明者】
【氏名】アファーゾン,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】バシュ,ジェフリー エイ
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/121028(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/054181(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/028056(WO,A1)
【文献】
特表2005−512724(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0160984(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前壁と、後壁と、前記前壁と前記後壁を接続する一組の側壁とを含み、開放された上部および下部を有する空洞を形成する椎体間スペーサであって、前記前壁は、第1入口開口部を含み、前記一組の側壁の第1側壁は、前記前壁に近接する第1出口開口部を含む、椎体間スペーサと、
前記前壁の一部を通るとともに前記第1側壁の一部を通って前記第1入口開口部から前記第1出口開口部まで延在する第1ねじれ状経路と、
前記第1ねじれ状経路を通って前記第1入口開口部から入り前記第1出口開口から出るように構成され、前記後壁に近接する前記一組の側壁の第2側壁まで前記空洞の前記上部の上方の第1ねじれ方向に延在する第1ねじれ状ブレードと、を備える
椎体間スペーサシステム。
【請求項2】
前記第1ねじれ状ブレードは、基部と該基部から延在するねじれ状ブレードを備え、前記基部は、前記第1入口開口部内に配置されるように構成されている請求項1に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項3】
前記基部は、回転軸を有し、前記ねじれ状ブレードは、前記基部の一回転で前記第1側壁から前記第2側壁までの前記ねじれ状ブレードの展開を可能にするねじピッチを有する請求項2に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項4】
前記基部の前記一回転に際し、前記ねじれ状ブレードは、前記第1ねじれ方向に沿って延在する経路を通って脊椎骨の終板に該終板の第1の表面の第1の地点から入り、前記脊椎骨の前記終板の前記第1の表面の第2の地点から出て、前記ねじれ状ブレードの一部が前記第1の地点と前記第2の地点との間で前記脊椎骨内に配置されるように構成される請求項3に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項5】
前記ねじれ状ブレードは、セルフタッピング式ネジ先を含む遠位端を備える請求項2に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項6】
前記前壁は、前記第1入口開口部内の前記ねじれ状ブレードの前記基部を受け入れる凹部を含む請求項2に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項7】
前記前壁と、前記後壁と、前記一組の側壁とは、略台形を形成する請求項1に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項8】
前記前壁は、第1の幅を有し、前記後壁は、第2の幅を有し、前記第1の幅は、前記第2の幅よりも広い請求項7に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項9】
前記前壁は、第2入口開口部を含み、前記一組の側壁の第2側壁は、前記前壁に近接する第2出口開口部を含み、
前記前壁の一部を通るとともに前記第2側壁の一部を通って前記第2入口開口部から前記第2出口開口部まで延在する第2ねじれ状経路と、
前記第2ねじれ状経路を通って前記第2入口開口部から入り前記第2出口開口部から出るように構成され、前記後壁に近接する前記一組の側壁の前記第1側壁へ前記空洞の前記下部の下方の第2ねじれ方向に延在する第2ねじれ状ブレードと、をさらに備える請求項1に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項10】
前記第2ねじれ状ブレードは、基部と該基部から延在するねじれ状ブレードを備え、前記基部は、前記第2入口開口内に配置されるように構成されている請求項9に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項11】
前記基部は、回転軸を有し、前記ねじれ状ブレードは、前記基部の一回転で前記第2側壁から前記第1側壁までの前記ねじれ状ブレードの展開を可能にするねじピッチを有する請求項10に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項12】
前記基部の前記一回転に際し、前記ねじれ状ブレードは、前記第2ねじれ方向に沿って延在する経路を通って脊椎骨の終板に該終板の第1の表面の第1の地点から入り、前記脊椎骨の前記終板の前記第1の表面の第2の地点から出て、前記ねじれ状ブレードの一部が前記第1の地点と前記第2の地点との間で前記脊椎骨内に配置されるように構成される請求項11に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項13】
前記ねじれ状ブレードは、セルフタッピング式ネジ先を含む遠位端を備える請求項10に記載の椎体間スペーサシステム。
【請求項14】
前記前壁は、前記第2入口開口部内の前記ねじれ状ブレードの前記基部を受け入れる凹部を含む請求項10に記載の椎体間スペーサシステム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2011年4月26日に出願された米国仮出願第61/479,206号についての優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明の開示は、全体として脊椎融着装置に関する。より詳細には、本実施形態例は、独立型椎体間スペーサを対象とする。
【背景技術】
【0003】
本明細書で提供される背景技術は、本開示の内容を一般化して提示する目的で記載される。出願時において先行技術と見なされない明細書の表現は、本開示に対する先行技術として明示的にも暗示的にも認められない。
【0004】
脊柱は、脊椎骨と呼ばれる複数の骨で形成された柔軟な柱である。脊椎骨は、空洞を有し、基本的に互いに積み重なって、頭蓋骨および胴体を支える頑強な柱を形成する。脊柱の中空の中心部は、脊髄の神経を収容し、保護している。異なる脊椎骨が、関節突起および椎間体や線維軟骨などによって互いに連結している。各脊椎骨は、その脊椎骨内側の比較的柔らかい海綿骨よりも硬い緻密質で形成された上部終板と下部終板とを含む。
【0005】
椎間板としても知られる椎間体は、髄核物質で満たされた線維輪を含む。椎間板は脊柱の衝撃吸収体として機能し、滑膜関節と連動して脊柱の動きを円滑にし、柔軟性を保つ。事故や疾病などにより、1つ以上の椎間板が変性すると、患部を通る神経が圧迫されるため炎症を起こすことがある。結果として、これら脊柱疾患による慢性および/または消耗性の頸痛および/または背痛が引き起こされることがある。
【0006】
このような背痛を緩和するため、椎体間スペーサを使用した脊柱融着、または、前方椎体間固定術、後方椎体間固定術、あるいは、経椎間孔椎体間固定術などの技術を用いた適切な骨移植など、様々な方法や器具が考案されてきた。これらの技術で使用される移植組織は、脊柱の隣接脊椎体間の椎間板腔に配置される。融着中、隣接脊椎体を保持するため、移植組織と併せて外部板および/またはねじが何度も使用される。
【0007】
理想的には、椎体間スペーサが椎間腔を安定させ、隣接脊椎体を融着させるのがよい。加えて、椎体間スペーサは、融着中、実質的な性能の低下や変形を起こさずに、空隙を保持するストレスに耐えるのに十分な構造的完全性を持たなければならず、実際に骨が内殖融着するまで確実にその場所に配置されているよう十分な安定性を持たなければならない。
【0008】
(実際に骨が内殖融着するまで)融着に安定性を提供する際の重要な課題の一つは、患者が動きで脊柱が伸延するのを防ぐことである。融着移植片を含む椎間腔に伸延があると、椎体間スペーサがずれたり、動いたりしてしまい、骨の内殖融着を妨害し、痛みを生じさせることがある。多くの場合、融着中に隣接脊椎骨を保持するために、椎体間スペーサと併せて外部板が使用される。
【0009】
本開示は、融着中に、外部板を使用することなく、隣接脊椎骨を安定して保持することが可能な椎体間スペーサを提供する。
【発明の概要】
【0010】
本開示の諸原理による第1脊椎骨および第2脊椎骨間に挿入する椎体間スペーサシステムは、椎体間スペーサと第1湾曲ブレードとを含む。椎体間スペーサは、第1脊椎骨の終板に係合する外壁および第1表面と、第2脊椎骨の終板に係合する第2表面とを含む。外壁内の第1入口開口部、および第1表面上の第1出口開口部が、その間に延在する第1湾曲経路と連通する。第1湾曲ブレードは、第1入口開口部から入り、第1出口開口部から抜け出してスペーサを第1脊椎骨に固定する。
【0011】
他の特徴では、外壁内の第2入口開口部、および第2表面上の第2出口開口部が、その間にある第2湾曲経路と連通する。第2湾曲ブレードは、第2入口開口部から入り、第2出口開口部から抜け出してスペーサを第2脊椎骨に固定する。
【0012】
更に他の特徴では、第1湾曲経路は、ねじれ状経路、らせん状経路、およびコルク抜き状経路のいずれか一つを含む。外壁は空洞を含む円環形に形成されている。第1表面は、第1終板に係合し物質の流路を提供する複数の突出部を含む。外壁の前側は、第1湾曲ブレードを受け入れるための凹部を含む。外壁は、前壁と、後壁と、一組の側壁とを備え、略台形を形成する。
【0013】
また他の特徴では、第1湾曲ブレードは、接続機構を有する基部と、第1終板を穿孔するためのセルフタッピング式ネジ先とを含む。第1湾曲ブレードは、椎体間スペーサと第1終板の中を、ねじれ状、らせん状、およびコルク抜き状の経路の少なくとも一つを通過して前進する。第1湾曲ブレードは、遠位端に先端部を含み、この先端部は第1の地点において第1終板の外側から入り、第2の地点において前記第1終板の内側方向に突出する。第1湾曲ブレードは、遠位端に先端部を含み、この先端部は第1脊椎骨に進入する際に、第1の地点において第1終板を穿孔し、第1脊椎骨から抜け出る際に、第2の地点において第1終板を穿孔する。
【0014】
椎体間スペーサシステムは、前壁と、後壁と、これらを連結する一組の側壁とを含み、前壁は第1入口開口部を持ち、一組の側壁のうち第1側壁は第1出口開口部を持つ、ケージと、第1入口開口部より前記ケージに進入し、第1出口開口部より抜け出して、ケージを前記第1脊椎骨に強固に固定する第1ねじれ状ブレードとを含む。
【0015】
他の特徴では、システムは、第1入口開口部と第1出口開口部の間に、第1ねじれ状ブレードを摺動自在に受け入れるよう構成された第1ねじれ状経路を含む。第1入口開口部は、第1脊椎骨に囲まれた脊柱とは別の方向を向く前壁の外表面上に配置される。第1出口開口部は、側壁の上面と下面のうち少なくとも一つに配置される。前壁は、第2入口開口部を含む。
【0016】
他の特徴では、側壁のうち第2側壁は第2出口開口部を含む。第2ねじれ状ブレードは、第2入口開口部よりケージに進入し、第2出口開口部より抜け出して、ケージを第2脊椎骨に強固に固定する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の諸原理による典型的な独立型椎体間スペーサの斜視図である。
【
図2】本開示の諸原理による典型的な独立型椎体間スペーサの斜視図である。
【
図3A】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの未展開状態を表す斜視図である。
【
図3B】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの未展開状態を表す斜視図である。
【
図3C】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの未展開状態を表す斜視図である。
【
図3D】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの未展開状態を表す斜視図である。
【
図4A】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの部分的に展開された状態を表す斜視図である。
【
図4B】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの部分的に展開された状態を表す斜視図である。
【
図4C】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの部分的に展開された状態を表す斜視図である。
【
図4D】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの部分的に展開された状態を表す斜視図である。
【
図5A】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの完全に展開された状態を表す斜視図である。
【
図5B】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの完全に展開された状態を表す斜視図である。
【
図5C】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの完全に展開された状態を表す斜視図である。
【
図5D】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの完全に展開された状態を表す斜視図である。
【
図6A】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの第2ブレードが展開された状態を表す一連の前方立面図である。
【
図6B】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの第2ブレードが展開された状態を表す一連の前方立面図である。
【
図6C】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの第2ブレードが展開された状態を表す一連の前方立面図である。
【
図7A】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの第2ブレードが展開された状態を表す一連の前方立面図である。
【
図7B】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの第2ブレードが展開された状態を表す一連の前方立面図である。
【
図7C】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの第2ブレードが展開された状態を表す一連の前方立面図である。
【
図8】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサのケージを表す図の一種である。
【
図9】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサのケージを表す図の一種である。
【
図10】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサのケージを表す図の一種である。
【
図11】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサのケージを表す図の一種である。
【
図12】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサのケージを表す図の一種である。
【
図13】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの典型的なブレードを表す図の一種である。
【
図14】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの典型的なブレードを表す図の一種である。
【
図15】本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサの典型的なブレードを表す図の一種である。
【
図16】本開示の諸原理による典型的なブレードが進む湾曲経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明は、本質的に例示としてのみ記載されており、本開示、出願、用途を制限することを意図するものではない。図面中では、明確にするために、同様の要素に同じ参照番号を使用して識別する。本明細書中では、A、B、Cのうち少なくとも一つという表現は非排他的論理和の「または」を使用した論理和(AまたはBまたはC)を意味すると解釈される。当然のことながら、方法に含まれる各ステップは、本開示の諸原理を変えることなく、異なる順番で実行されてもよい。
【0019】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。全体を通して、同様の数字は同様の要素を示す。本発明の実施形態には、幾つかの新規の特徴が含まれ得るが、そのいずれの特徴も望ましい特性について責任を負うものではなく、また、本明細書に記載される発明の実施に不可欠でもない。本明細書中に適用される近位および遠位という語は、本明細書に記載される機器の構成要素の特定の端を示すために利用される。一例としてだが、近位端は、ある機器の、その機器が使用される際にその機器を操作する人により近い方の端を示す。遠位端は、操作する人からより遠くにあり、患者の術部および/または移植組織に向かって延在する、ある構成要素の端を示す。同様に、左および右、上および下、上部および下部という語は、ある構成要素の反対側を示すことがある。
【0020】
従って、本開示の諸原理による独立型椎体間スペーサシステムは、複数の構成要素が組み合わされた構造で、固定機構と椎体間スペーサが一体化しており、別の支持体を必要としない。好ましい実施形態では、システム100は、脊椎すべり症、脊柱側弯症、重度の椎間板変性、脊椎骨折などの脊柱疾患の治療のために2つ以上の脊椎体を結合あるいは融着する、前方椎体間固定術、後方椎体間固定術、または、経椎間孔椎体間固定術、側頸部および頸部の手術を含むがこれに限定されない脊柱融着手術に使用される。本実施形態では、主に頚椎前方固定術との関係で説明がなされるが、他の手術での使用も考えられる。システム100は、解放手術や、より小さな切開で低侵襲性アプローチを可能にするロープロファイル機器(low profile instrumentation)を用いた最小侵襲性外科手術(MIS)など、多様な脊柱手術で使用され得る。当業者には理解され得るように、これらの実施形態は説明のために示され、発明の範囲を制限することは意図しない。
【0021】
独立型椎体間固定システム100の特殊な設計は、全ての局面(屈曲、伸延、捻転、回転、移動)で確実な固定を提供する。実施形態の多くで、システム100は単体の機器を用いてシステム100を伸延し、挿入し、展開するよう構成されている。この設計は、皮質骨との適切な接触を確保するよう、10〜20mmの範囲の長さと幅で複数の母床形状を可能にする。多くの実施形態で、この設計は円滑な挿入と展開を可能にする先細りの先端部を含む。高さは8〜20mmの範囲になり得るが、0〜20度の範囲の脊柱前弯の場所により手術の必要性に応じて他の高さも考えられる。
【0022】
システム100の一部は、熱可塑性物質、ポリマー、またはその複合材料などの素材からなることがあり、この素材は体の動きや体勢によるストレスや圧力に耐えられる十分な弾性があり、ある程度の弾力性と、生体安定性、生体適合性を提供する。この素材は、骨に匹敵する弾性係数を持つべきである。例えば、ある部分はポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)でできていてもよく、これは弾性を表すヤング係数がおよそ3.6GPaで抗張力がおよそ90MPaの熱可塑性物質である。また、PEEKは有機的環境にも水性環境にも耐久性があるため、独立型椎体間固定システム100には実用的である。他には、金属、セラミックス、医療用プラスチック、サンゴ、その他の医学的に適用される素材が使用され得る。
【0023】
図1〜
図7Cを参照すると、脊柱融着術用の典型的な独立型椎体間固定システム100は、ケージ102と、1つ以上の湾曲ブレード104または湾曲スパイクとを含む。湾曲ブレード104は、ねじれ状、らせん状、または、コルク抜き状などの立体的な湾曲を含んでいてもよい。システム100は、損傷を受けた椎間板の代わりに支持を提供するよう、隣接脊椎体間の椎間腔に挿入されてもよい。ケージ102および湾曲ブレード104はケージ102の上と下の脊椎体に係合する。システム100は、湾曲ブレード104をケージ102に近接して保持する器具(図示せず)を用いて椎間腔に挿入されてもよい。例えば、この器具は、挿入中にケージ102を係合し支持する1つ以上の機能を含んでいてもよい。機能を付加して、湾曲ブレード104をケージ102に近接して保持してもよい。従って、ケージ102を隣接脊椎体間に固定するために湾曲ブレード104を展開する前の段階で、システム100は椎間腔に挿入され得る。上記器具は、湾曲ブレード104を係合し、回転させる機能を更に含んでいてもよい。回転しながら、湾曲ブレード104はある地点においてケージ102に入り、別の地点からケージ102を抜け出す。湾曲ブレード104は、ケージ102の上と下の脊椎体に係合するよう展開される。
【0024】
図1と
図2は2枚のブレードを持つ構成の独立型椎体間固定システム100を示す。
図1では、両方の湾曲ブレード104が完全に展開され、ケージ102の上と下の脊椎体(図示せず)に係合している。
図2は、展開された位置にある第1湾曲ブレード104aと、未展開の位置にある第2湾曲ブレード104bを示す。つまり、湾曲ブレード104のそれぞれが独立して展開されてもよい。他の実施例では、湾曲ブレード104が同時に展開されてもよい。例えば、上記器具に、湾曲ブレード104を単体でまたは同時に展開できる機能を含んでもよい。
図3A〜
図5Dは、ケージ102に対する第1湾曲ブレード104aの作動または展開を示す。
図6A〜
図7Cは、ケージ102と第1湾曲ブレード104aに対する第1湾曲ブレード104bの作動または展開を示す。
【0025】
図8〜
図12は、隣接脊椎体の間の挿入や固定を可能にするケージ102の付加機能を示す。ケージ102は、硬質な構造でできており、大きさには個体差があるため大きさの異なる減圧空間を満たすように幾つかの異なる大きさと形状が提供されるのが好ましい。ケージ102は、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、商用の純チタン、チタン合金、または、その他ケージに硬質な構造を提供する生物学的に許容される不活性材料など、放射線透過性素材でできていてもよい。
【0026】
ケージ102は環状構造で、前壁106、側壁108、110、および後壁112を含んでいてもよい。前壁106および後壁112は、患者の冠状面と実質的に平行な平面上に位置し、前壁106は脊髄とは別の方向に面し、後壁112は脊髄の方向に面している。前壁106の幅W1は、後壁の幅W2よりも広く、
図12のように上から見ると、略台形形状を形成する。この台形形状は、頸椎の形状に対応していてもよい。ケージ102は、空洞114を形成する各種壁全てが実質的に均一な厚みTを有してもよい。あるいは、それぞれの壁が多様な厚みを持っていてもよい。同様に、ケージ102は、各種壁全てが実質的に均一な高さHを有してもよい。あるいは、ケージ102の高さHは、前壁106から後壁112にかけて減少し、脊柱の頸部湾曲から典型的に類推される形状に近似したくさび形形状を形成してもよい。
【0027】
ケージ102は、隣接脊椎体に係合する上面116と下面118を更に含む。上面116は、一般的には患者の頭部を向き、下面118は一般的には患者の頭部とは別の方向を向いている。一部の実施形態では、脊椎の終板(図示せず)に食い込んで掴むために、隆起した稜/歯/条線などの、外向きに突出した複数の鋭利な突出部120が面116、118に形成されている。突出部120は、多様な厚み、高さ、幅を持つことがあり、面116、118に対して角度を持っていてもよい。稜が終板に沿っていずれかの方向にすべる可能性を低下させるため、さらに、終板上でケージが回転するのを防ぐため、突出部120は、互いに対して、あるいは、ケージの異なる場所にある稜に対してオフセット角で少し傾いて配置されてもよい。突出部120は上面と下面の表面の構成が同一であることが望ましいかもしれないが、一部の実施形態では、稜または歯はそれぞれの表面で異なるパターンを有することもある。突出部120は、後から骨セメントや材料を融着のために加えるために、流路を提供してもよい。
【0028】
ケージ102を挿入および/または展開器具に連結するため、多様な接続機構が含まれていてもよい。本実施例では接続機構は説明しないが、このような器具に係合させるために、前壁106、側壁108、110、および/または後壁112の外側表面に多様なくぼみ、ツメなどが付加されてもよいということは、当業者には当然理解される。例えば、開口部にケージ102ほどの空間を設け、挿入器具またはブレード作動器具(図示せず)を受け入れるあるいは係合するよう構成するか、または、骨あるいは他の適切な骨移植片材料を詰めるのに用いられてもよい。
【0029】
ケージ102は、上部湾曲ブレード104aおよび下部湾曲ブレード104bをそれぞれ受け入れる上部ブレード通路122aと下部ブレード通路122bとを含む(集合的に、ブレード通路122)。前壁106の外表面には、入口開口部124a、124b(集合的に124)が湾曲ブレード104を受け入れるよう形成されていてもよい。
図5Bと
図7Cに示されるように、完全に展開された際に、湾曲ブレード104が前壁106の外表面と同一平面上にあるように、入口開口部124は、前壁106の凹部126に配置される。それぞれの入口開口部124は、対応する一つのブレード通路122に開口している。ブレード通路122は、ケージ102の上面116と下面118の対応する出口開口部128a、128b(集合的に128)に開口している。例えば、出口開口部128は、側壁108、110上に配置されていてもよい。
【0030】
ブレード通路122は、
図1〜
図7Cに示されるように、湾曲ブレード104を受け入れる幾何学的特徴を含む。
図16に示されるように、ブレード通路122は、湾曲ブレード104がたどる湾曲経路に対応した湾曲経路を形成する。上部ブレード通路122aは、入口開口部124aから上面116の出口開口部128aまでの断面が実質的に均一な湾曲経路をたどる。下部ブレード通路122bは、入口開口部124bから下面118の出口開口部128bまでの断面が実質的に均一な湾曲経路をたどる。それぞれのブレード通路122は、前壁106の一部と側壁108、110の一部を通って延在し、ケージ102の上面106と下面118を出口としてもよい。つまり、湾曲ブレード104aと104bのそれぞれが前壁106を通ってケージ102に入り、それぞれケージ102の上面106と下面118を通って抜け出る。
【0031】
開口部124、128および/またはブレード通路122は、ブレードを1つ以上の位置で保持するためのブレード抵抗/ロック機構(図示せず)含んでいてもよい。これらの機構は、ブレード上の綾、ツメ、または隆起と連結するまたは作用する溝、切り欠き、またはくぼみを含んでいてもよい。例えば、湾曲ブレード104aを入口開口部124aに挿入する際、隆起が溝の一つと作用してもよい。ブレードが回転すると、この隆起は未展開の位置にある一連の溝から展開された位置にある別の一連の溝に移動し、ロック機構が形成されてもよい。他の開口部(図示せず)は、挿入器具または一組の突起の間に中央ブレード作動部を配置するブレード作動器具を収容するように略矩形の形状でもよい。これによって、この器具がケージ102の開口部をつかみ、および/または、ブレード104を回転させることができる。ブレード104と接触し、ブレード104が所望の角度を超えて回転しないように制するブレード停止機構(図示せず)が用いられてもよい。
【0032】
図13〜15は、典型的な湾曲ブレード104の様々な観点を描写する。湾曲ブレード104は、基部130を含み、基部130は、例えば、近位端および遠位端の先端132を軸として回転する短シャフトを含む。先端132は、湾曲ブレード104が下穴や開始穴なしに脊椎骨の終板に切り込んでいけるようセルフタッピング式ネジ先134を含んでいてもよい。基部130は、湾曲ブレード104を挿入器具または除去器具(図示せず)に連結させる様々な接続機構を含んでいてもよい。例えば、基部130は、挿入器具の駆動機構が湾曲ブレード104を駆動するのを可能にする雌ねじ136を含んでいてもよい。湾曲ブレード104は、実質的に均一な断面領域を含んでいてもよい。あるいは、湾曲ブレード104は、先端132から基部130にかけて拡大する断面領域を含んでいてもよい。湾曲ブレード104が脊椎骨の終板の中を前進するにつれ、表面積が増えるため、脊椎骨内によりしっかりと取り付けられ得る。
【0033】
図16を参照すると、それぞれの湾曲ブレード104は、ケージから展開されたり、ケージ104に挿入される際、湾曲経路136に沿って進む。湾曲経路136は、骨への足がかりを最大にし、湾曲ブレード104が脊椎体の終板に複数地点で係合するのを可能にする。例えば、第1湾曲ブレード104aのネジ先134がある地点で上部脊椎骨の終板を穿孔し、上部脊椎骨のより柔らかい内部を通って、湾曲経路沿いにある別の地点において終板から抜け出してもよい。つまり、第1湾曲ブレード104aは、2地点で上部脊椎骨に固定され、この2地点間の上部脊椎骨内に第1湾曲ブレード104aの一部が入りこんでいる。同様に、第2湾曲ブレード104bのネジ先134がある地点で隣接する下部脊椎骨の終板を穿孔し、下部脊椎骨のより柔らかい内部を通って、湾曲経路沿いにある別の地点において終板から抜け出してもよい。つまり、第2湾曲ブレード104bは、2地点で下部脊椎骨に固定され、この2地点間の下部脊椎骨内に第2湾曲ブレード104bの一部が入りこんでいる。更に、湾曲ブレード104は、基部130の一回転で完全に展開し、脊椎骨に挿入されるようなねじピッチPを含んでいてもよい。
【0034】
従って、湾曲ブレード104は、より固い緻密骨には1つ以上の地点で固定されてもよい。これに対して、先行技術のねじでは、一地点のみにおいて固い骨を貫通していることがある。ねじ部が海綿状物質から抜けるか、あるいは、ねじの進入地点のより固い骨が折れた場合、このねじは頑強な固定を提供しなくなる。湾曲ブレードに同様の不具合が起こった場合にも、ブレードは終板の固い骨内の2つの固定地点から完全に取り出されなければならないかもしれない。
【0035】
本発明の方法とシステムの実施形態例がこの明細書に記載された。この明細書の各所で言及しているように、これらの実施形態例は、説明のためのみに記載され、発明を制限するものではない。他の実施形態も可能であり、本発明に適用される。関連技術に熟達した者には、そのような実施形態は本明細書の内容に基づいて明白である。従って、本発明の範囲は、上述した実施形態例のいずれにも限定されず、以下の特許請求の範囲とその同等物にのみ定義される。本開示の広義の内容は、様々な形式で実施され得る。従って、本開示は特定の実施例を含むが、本開示の真の範囲はこれに限定されず、本図面、明細書、以下の特許請求の範囲を検討した上で、その他の変形が可能なことは当業者にとって明白である。