(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371356
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】フィルム冷却が統合された噛合材料遷移領域
(51)【国際特許分類】
F16B 5/07 20060101AFI20180730BHJP
F16B 5/08 20060101ALI20180730BHJP
F16B 11/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
F16B5/07 H
F16B5/08 B
F16B11/00 E
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-199623(P2016-199623)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2017-78511(P2017-78511A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2017年1月11日
(31)【優先権主張番号】14/887,459
(32)【優先日】2015年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ハーバート・チドセイ・ロバーツ,サード
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ウィリアム・アルブレヒト,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジョン・マッカレン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・アンドリュー・フリン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・フランシス・グザヴィエ・ギグリオッティ,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】エリック・アラン・エスティル
【審査官】
鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/107204(WO,A2)
【文献】
特開2014−205612(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0099476(US,A1)
【文献】
実開昭55−070207(JP,U)
【文献】
特開2000−027817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00−5/12
F16B 23/00−43/02
F16B 9/00−11/00
B29C 64/00−73/34
B29D 1/00−99/00
B33Y 10/00−99/00
B22F 1/00−8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造を使用して2つの部品(12、14)を接合する方法であって、
第1の材料からなる第1の部品(12)を形成するステップと、
第1の材料及び第2の材料から噛合遷移領域(10)を形成するステップと、
第2の材料からなる第2の部品(14)を形成するステップと
を含んでおり、
噛合遷移領域(10)が、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の各々から交互に延びて第1の部品(12)及び第2の部品(14)を分離不能に連結する複数の突起(16)を備え、
複数の突起(16)の各々は、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の相対移動を許容する、方法。
【請求項2】
付加製造を使用して2つの部品(12、14)を接合する方法であって、
第1の材料からなる第1の部品(12)を形成するステップと、
第1の材料及び第2の材料から噛合遷移領域(10)を形成するステップと、
第2の材料からなる第2の部品(14)を形成するステップと
を含んでおり、
噛合遷移領域(10)が、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の各々から交互に延びて第1の部品(12)及び第2の部品(14)を分離不能に連結する複数の突起(16)を備え、
第1の部品(12)を形成するステップは、第1の材料の層を順次堆積させるステップを含み、第2の部品(14)を形成するステップは、第2の材料の層を順次堆積させるステップを含み、噛合遷移領域(10)を形成するステップは、第1の部品(12)上に第1の材料及び第2の材料の層を順次堆積させるステップを含む、方法。
【請求項3】
第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の隣り合う突起(16)の少なくとも一部分が、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の相対移動を防止する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数の突起(16)の各々は、台形の形状(28)を有しており、各々の台形の最も幅の広い部分が第1の部品(12)又は第2の部品(14)の各々からの突起(16)の先端に位置するように、第1の部品(12)又は第2の部品(14)から延びている、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
各々の突起(16)は、第1の部品(12)又は第2の部品(14)から延びている軸部(18)を備え、軸部(18)の先端は、軸部(18)の直径よりも大きい直径を有するこぶ(20)をさらに備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第2の部品(14)は、保護コーティングである、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
噛合遷移領域(10)には、流体チャネル(38)が形成されており、流体チャネル(38)は、流体が噛合遷移領域(10)を流れて通過することを可能にするように構成されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ろう付けによる結合部が、接着剤として働くように第1の部品(12)と第2の部品(14)との間に位置している、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第1の材料の複数の融合した層を備える第1の部品(12)と、
第2の材料の複数の融合した層を備える第2の部品(14)と、
第1の部品(12)及び第2の部品(14)の各々から交互に延びて第1の部品(12)及び第2の部品(14)を分離不能に連結する複数の突起(16)を備える噛合遷移領域(10)と
を備え、
複数の突起(16)の各々は、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の相対移動を許容する付加製造による部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、広くには、2つの部品を噛合遷移領域に沿って接合する付加製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造において、2以上の部品を接合して単一の部材とすることが、望まれることが多い。しかしながら、部品を接合する現在の方法は、それらの部品が同じ材料から作られていても、或いは異なる材料から作られていても、多くの場合に、良好でない機械的特性につながる。
【0003】
例えば、2つの部品を接合する先行技術の方法として、溶接又はろう付けなどの金属溶融プロセス、リベット又はねじなどの機械的な固定具の使用、或いは構造用接着剤の塗布及び硬化を挙げることができる。これらの結合部は、良好でないせん断付着又は接着など、良好でない物理的特性を呈し、弱い機械的接合しかもたらさない可能性がある。また、これらの結合部は、材料の変わり目の線又は平面に沿って、これらの領域における応力の集中に起因した亀裂の開始及び伝播の傾向も有し得る。
【0004】
加えて、いくつかの用途においては、結合させられた部品の間に或る程度の相対移動を許容する結合部を有することが望まれる。例えば、しなやかでなく、或いは可撓でない2以上の部品の間の結合部は、結合部の疲労耐久性、耐衝撃性、及び全体としての寿命に関する問題を呈する可能がある。部品又は結合材料が異なる熱膨張係数を有する場合、相対移動を許容しない結合部は、熱による伸びの不一致を補償することができず、したがって特定の温度環境において結合部の不具合につながる。
【0005】
さらに、結合させられた部品の間を延びる冷却穴が、望まれ得る。しかしながら、結合部及び部品の向き及び構成によっては、穿孔又は機械加工などの現在の方法を使用して結合部の完全性を損なうことなく冷却穴を形成することが、不可能であり得る。例えば、穴が結合部そのものの内部にある場合や、穴を穿孔することで結合部が何らかのかたちで弱体化し得る場合に、冷却穴を生成することが不可能であり得る。
【0006】
したがって、構造的な完全性が改善された2以上の部品の結合の方法が望まれる。より詳しくは、部品間の相対移動を許容し、或いは所望に応じて冷却穴を取り入れることを可能にする一方で、強力な機械的接合を依然として提供する結合部を形成するための方法が、きわめて有用であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0127005号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の態様及び利点は、一部は以下の説明において述べられ、或いは明細書から自明であってよく、もしくは本発明の実施を通じて習得可能であってよい。
【0009】
本開示の一典型的な実施形態では、付加製造を使用して2つの部品を接合するための方法が提供される。本方法は、第1の材料で作られる第1の部品を形成するステップと、第1の材料及び第2の材料から噛合遷移領域(interlocking transition zone)を形成するステップと、第2の材料で作られる第2の部品を形成するステップとを含む。噛合遷移領域は、第1の部品及び第2の部品の各々から交互に延びて第1の部品及び第2の部品を分離不能に連結する複数の突起を含む。
【0010】
本開示の別の典型的な実施形態では、付加製造による部品が提供される。付加製造による部品は、第1の材料の複数の融合した層を備える第1の部品と、第2の材料の複数の融合した層を備える第2の部品と、第1の部品及び第2の部品の各々から交互に延びて第1の部品及び第2の部品を分離不能に連結する複数の突起を備える噛合遷移領域とを含む。
【0011】
本発明のこれらの特徴、態様、及び利点、並びに他の特徴、態様、及び利点が、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照して、よりよく理解されるであろう。本明細書に取り入れられて本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を示しており、明細書と協働して本発明の原理を説明する役に立つ。
【0012】
当業者へと向けられた本発明の最良の態様を含む本発明の充分かつ本発明を実施可能にする開示が、添付の図面を参照して、明細書において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の典型的な実施形態による噛合遷移領域の斜視図であり、第1及び第2の部品が、突起を分かりやすく見せるために離されて図示されている。
【
図2】典型的な実施形態による軸部とこぶとからなる突起を有する噛合遷移領域の側面図である。
【
図3】典型的な実施形態による台形の突起を有する噛合遷移領域の側面図である。
【
図4】典型的な実施形態による長い軸部とこぶとからなる突起を有する噛合遷移領域の側面図である。
【
図5】軸部とこぶとからなる突起を有する噛合遷移領域の側面図であり、典型的な実施形態に従い、ろう付け材料が第1及び第2の部品の間の接着剤として使用されている。
【
図6】典型的な実施形態による冷却穴が貫通している非平面の噛合遷移領域の側面図である。
【
図7】典型的な実施形態による冷却穴が貫通している噛合遷移領域の斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び図面における参照符号の繰り返しの使用は、本発明の同じ又は類似の特徴又は部品を表すように意図されている。
【0015】
次に、本発明の実施形態を詳しく参照するが、それら実施形態の1以上の実施例が図面に示されている。各々の例は、本発明の説明の目的で提示されており、本発明を限定するものではない。実際、本発明において、本発明の技術的範囲及び技術的思想から離れることなく、種々の変更及び変種が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、或る実施形態の一部として例示又は説明される特徴を、別の実施形態では使用して、またさらなる実施形態をもたらすことが可能である。このように、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の技術的範囲に含まれるような変更及び変種を包含するように意図される。
【0016】
付加製造技術は、物体を点ごとのやり方及び層ごとのやり方で典型的には鉛直(Y)方向に作り上げることによって、複雑な物体の製造を可能にする。以下の検討においては、材料の付加に言及するが、当業者であれば、本明細書に開示の方法及び構造を、任意の付加製造技法又は技術で実施できることを、理解できるであろう。例えば、本発明の実施形態は、層付加プロセス、層除去プロセス、又は混成プロセスを使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法及び構造は、噛合遷移領域10によって結合させられ、1以上の材料の層を順次堆積させることによって形成された2以上の部品をもたらすことができる。
【0017】
本開示の実施形態は、付加製造技術を使用して2以上の部品を接合するための方法及び構造を提供する。この点において、独立した存在物であるが、接合領域を横断して到達する機械的な「根元部」を効果的に形成することによって分解に抵抗するとともに推移ゾーンを横切って構造的な荷重を伝える噛合形状部を各々の構造に有しつつ生み出される複数の部品を生成することができる。得られる結合部は、平面状であっても、平面状でなくてもよく、改善された機械的強度及び付着を呈することができる。また、噛合材料遷移領域を、例えば、高度に耐衝撃性の保護コーティング層をベース材料へと固定するために使用することもできる。加えて、噛合形状部を、部品間の小さな範囲の運動を許容するように間隔を空けて位置させることができ、結合部は、一体化された冷却穴又は通路を有することができる。
【0018】
次に図面を参照すると、
図1が、本開示の典型的な実施形態による噛合遷移領域10の斜視図を示しており、第1の部品12及び第2の部品14が、複数の突起16を分かりやすく見せるために離されて図示されている。図示のとおり、噛合遷移領域10は、X−Z平面によって定められる平坦な領域内を延びることができる。とりわけ、図には噛合遷移領域10だけしか示されていないが、第1の部品12及び第2の部品14が、付加製造技術を用いて製造される任意の単純又は複雑な物体であってよいことを、当業者であれば理解できるであろう。加えて、第1の部品12及び第2の部品14、並びに両者を接続する噛合遷移領域10は、任意のサイズへと拡大/縮小可能である。例えば、各々の突起16は、断面において数ナノメートル〜数センチメートルの範囲であってよく、或いはさらに大きくてもよい。その多用途性及び拡大/縮小の可能性に鑑み、付加製造技術を使用して2以上の部品を接合するための本開示の方法及び構造は、さまざまな用途及び技術分野において実施することが可能である。
【0019】
図2は、一典型的な実施形態による軸部18とこぶ20とからなる突起16を有する噛合遷移領域10の側面図である。図示のとおり、第1の部品12及び第2の部品14の各々は、第1の部品表面22及び第2の部品表面24の各々から延びる複数の突起16を備える。図示の実施形態は、実質的に垂直方向に延びている各々の突起16を示しているが、他の実施形態では、各々の突起16を部品表面22、24に対する任意の角度に製造できることを、当業者であれば理解できるであろう。各々の突起16は、軸部18を備えており、軸部18の先端にこぶ20が位置している。
図1及び2に示されている実施形態では、軸部18は円柱形であり、こぶ20は球形である。しかしながら、いくつかの実施形態では、軸部18は、正方形、矩形、楕円形、不規則な形状、又は任意の他の適切な形状の断面を有してもよく、共通な長さ又は異なる長さであってよい。同様に、こぶ20は、真四角、引き延ばされた形状、或いは任意の他の適切な形状であってよい。
【0020】
複数の突起16は、長手(X)方向及び横(Z)方向の両方に広がる噛合遷移領域10を形成するように第1の部品12及び第2の部品14から交互に延びることができる。いくつかの実施形態では、こぶ20の直径は、軸部18の直径よりも大きく、軸部18は、こぶ20が隣り合う軸部18の間に収まることができるように第1の部品12及び第2の部品14に沿って間隔を空けて位置する。このやり方で、複数の突起16は、第1の部品12及び第2の部品14を機械的に連結する噛合遷移領域10を形成する。噛合遷移領域10を付加製造を使用して層ごとのやり方で印刷することができるため、得られる噛合遷移領域10は、第1の部品12及び第2の部品14を分離不能に連結する。この点で、第1の部品12及び第2の部品14は、非破壊の方法では分離が不可能であるように結合させられている。いくつかの実施形態では、隣り合う突起16の少なくとも一部分は、部品12、14の間の相対移動を防止することができる。さらに詳しく後述されるように、他の実施形態では、軸部18の間隔を、複数の突起16の相対移動を許容し、噛合遷移領域10に或る程度の柔軟性をもたらすように、調節することができる。
【0021】
いくつかの典型的な実施形態では、突起16は、異なる形状を有することができる。この点で、複数の突起16は、不規則な形状とされてよく、各々の突起16は、隣り合う突起16の間の全領域を埋めても、或いはギャップ又は小さなすき間26を残してもよい。例えば、
図3に示されるように、突起16は、台形の突起28であってよい。この点で、各々の台形の突起28は、第1の部品12又は第2の部品14の各々の最も近くに幅の狭い断面を有する。台形の突起28の断面積は、台形の突起28が断面が最大である台形の突起28の先端に向かって第1の部品12又は第2の部品14から遠ざかって延びるにつれて大きくなる。
【0022】
次に、
図4の実施形態を特に参照すると、複数の突起16は、長く延ばされた突起30であってよい。この点で、長く延ばされた突起30は、長く延ばされた軸部32を有することができ、或いは他のやり方で第1の部品12及び第2の部品14の間の或る程度の相対移動を許すように作られてよい。例えば、長く延ばされた軸部32は、隣り合うこぶ20が互いに接触するまで、第1の部品12及び第2の部品14を(矢印34によって示されるように)Z方向にお互いに対してスライドさせることを可能にすることができる。同様に、いくつかの実施形態では、複数の突起16の間隔を、小さな範囲のX、Y、及びZ平面における移動並びにX、Y、及びZ軸を中心とする回転を許すように、大きくすることができる。当業者であれば理解できるとおり、複数の突起16のサイズ、形状、及び間隔を、任意の特定の用途において必要とされるとおりに移動を許容又は規制するように調節することができる。
【0023】
次に、
図5を特に参照すると、噛合遷移領域10のいくつかの実施形態は、強力な接合をさらに保証するために第1の部品表面22及び第2の部品表面24の間に配置された接着剤36又は他の材料を有することができる。この接着層36は、例えばエポキシ又は硬化した樹脂であってよく、或いは結合部を、第1の部品12及び第2の部品14の間にろう付け用充てん材料を導入することによって形成することができる。或いは、接着層36は、第1の部品12及び第2の部品14の間の別の付加製造による層であってよく、後述のとおりの付加製造プロセスにおける使用に適した任意の材料から作られてよい。このやり方で、接着層36は、噛合遷移領域10の機械的な接合強度を改善することができる。
【0024】
いくつかの場合、第1の部品12と第2の部品14との間並びに/或いは噛合遷移領域10の内部の冷却用流体の連通をもたらすために、噛合遷移領域10を貫いて延びる冷却穴38を備えることが望まれる。
図6が、冷却穴38が取り入れられた非平面の噛合遷移領域10の側面図を示している。
図7が、冷却穴38が取り入れられた噛合遷移領域10の斜視断面図である。これらの典型的な実施形態では、冷却穴38を、通路又は冷却穴38を形成するように付加製造プロセスにおいて材料を選択的に堆積させることにより、部品を貫いて形成することができる。冷却穴38は、自己完結であって、結合させられた部品の外面に露出することがないように、噛合遷移領域10の内部を通って延びることができる。加えて、冷却穴38は、任意の形状又はサイズであってよく、任意の位置に配置されてよい。例えば、
図6及び7に示されている冷却穴38は、直線的であり、第1の部品12から第2の部品14まで噛合遷移領域10を真っ直ぐに貫いて延びているが、冷却穴38は、湾曲していても、曲がりくねっていてもよい。
【0025】
本明細書に開示の付加製造プロセスは、第1の部品12及び第2の部品14を、種々の材料の任意のいずれかで製作することを可能にする。各々の部品を、同じ材料又は異なる材料で製作することができる。実際、1つの部品が、異なる材料からなる複数の層を備えることさえ可能である。いくつかの実施形態では、噛合遷移領域10によって複数の部材の集成体が生み出されるように、第1の部品12が第1の部材であってよく、第2の部品14が第2の部材であってよい。さらに、本明細書に記載の方法及び構造が、必ずしも2つの部品に限られず、3以上の部品の結合に使用されてもよいことを、当業者であれば理解できるであろう。いくつかの実施形態では、第1の部品12は、ベース材料であってよく、第2の部品14は、保護コーティングであってよい。例えば、第2の部品14は、第1の部品12に改善された熱耐久性をもたらすための遮熱コーティング又は遮熱コーティングのボンドコートであってよい。他の実施形態では、保護コーティングは、高い耐衝撃性を呈するきわめて耐久性のある材料であってよい。このやり方で、保護コーティングは、下方の部品を衝撃による損傷から保護し、寿命を長くすることができる。
【0026】
上述のように、第2の部品14は、遮熱コーティング(TBC)系又は耐環境コーティング(EBC)系などの保護コーティングであってよい。そのようなTBC及びEBC系は、一般に、第1の部品12の外面を覆うボンド層と、ボンド層を覆って配置された遮熱層とを含むことができる。一般的に理解されるとおり、ボンド層を、下方の第1の部品12の酸化及び/又は腐食を抑制するように設計された耐酸化性の金属材料から形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ボンド層を、「MCrAlY」(「M」は、鉄、ニッケル、又はコバルトを表す)を含む材料、或いはアルミナイド又は貴金属アルミナイド材料(例えば、白金アルミナイド)から形成することができる。同様に、遮熱層を、第1の部品12をより高い温度で稼働できるようにするために、耐熱性の材料から形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、遮熱層を、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、又は他の貴金属酸化物によって部分的又は完全に安定化させたジルコニアなど、種々の公知のセラミック材料から形成することができる。
【0027】
さらに、上記開示の方法及び構造を使用することによって噛合遷移領域10を生成することにより、TBC及びEBC系のボンド層を、完全に無くすことが可能である。この点で、ボンド層は、典型的には、TBC及びEBC系において、熱的な不一致(すなわち第1の部品12及び遮熱コーティングが異なる熱膨張係数を有し、高温環境に置かれたときに材料が異なる割合で伸びることで応力を引き起こす可能性がある)を補償するために、第1の部品12と遮熱コーティングとの間に中間層をもたらすために使用される。ボンド層は、熱的な不一致によって接合領域の不具合が引き起こされることがないように保証するために、追加の機械的強度及び付着をもたらす。しかしながら、上述のように、複数の突起16は、部品間に強力な機械的接合及び改善された付着をもたらす噛合遷移領域10を形成する。したがって、噛合遷移領域10が保護用の遮熱コーティングを第1の部品12へと接合する場合に、ボンド層を完全に無くすことができ、集成体は依然として高温環境に耐えることができる。
【0028】
加えて、これらの材料を接合するための種々の材料及び方法が、使用可能であり、本開示の技術的範囲に包含されると考えられることを、当業者であれば理解できるであろう。例えば、材料は、プラスチック、金属、コンクリート、セラミック、ポリマー、エポキシ、感光性樹脂、或いは個体、液体、粉末、シート材、又は任意の他の適切な形態であってよい任意の他の適切な材料であってよい。本明細書において使用されるとき、「融合」への言及は、上述の材料の任意のいずれかから接合された層を生み出すための任意の適切なプロセスを指すことができる。例えば、物体がポリマーから作られている場合、融合は、ポリマー材料の間に熱硬化性の接合を生み出すことを指すことができる。物体がエポキシである場合、接合を、架橋結合プロセスによって形成することができる。材料がセラミックである場合、接合を、焼結プロセスによって形成することができる。材料が粉末状の金属である場合、接合を、溶融プロセスによって形成することができる。付加製造によって部品を製作するために材料を融合させる他の方法が可能であり、本開示の主題をそれらの方法にて実施できることを、当業者であれば理解できるであろう。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1の材料及び第2の材料は、異なる熱膨張係数を有する。そのような実施形態では、複数の突起16を或る程度の相対移動を許容するように構成することで、熱による伸びの不一致からもたらされる集中した応力に起因する不具合の可能性を減らすことが、望ましい可能性がある。
【0030】
付加製造技術は、独立した存在物であるが、移動及び/又は分解の範囲を制限する噛合形状部を各々の構造に備えて生み出された複数の部品の生成を可能にする。この点で、2以上の独立した部品を、機械的な「根元部」を効果的に形成する噛合形状部を備えて製造することができ、機械的な「根元部」が、噛合遷移領域10を横切って到達し、分解に抵抗し、噛合遷移領域10を横切って構造的な荷重を伝える能力を有する。付加製造技術を使用して2以上の部品を効果的に接合する能力は、幅広い範囲の平面状又は非平面状の結合部をもたらし、類のない集成体の生成を可能にすることができる。
【0031】
噛合材料遷移領域10は、先行技術を越える技術的及び商業的利点を提供することができる。上述の方法を使用して生み出される結合部は、異なる機能、組成、又は微細構造の領域の間の改善されたせん断接合、並びにマイクロ又はマクロスケールにおける強化された付着を呈する改善された機械的強度を有する。また、噛合材料遷移領域10を、例えば、高度に耐衝撃性の保護コーティング層をベース材料へと固定するために使用することも可能である。また、部品を同じ又は異なる材料で製作でき、結合部が平面状であっても、非平面状であってもよい点で、ボンド層の多用途性も改善される。加えて、噛合形状部を、部品間の小さな範囲の運動を許容するように間隔を空けて位置させることができ、結合部は、一体化された冷却穴又は通路を有することができる。
【0032】
本明細書においては、本発明を最良の態様を含めて開示するとともに、あらゆる装置又はシステムの製作及び使用並びにあらゆる関連の方法の実行を含む本発明の実施を当業者にとって可能にするために、いくつかの実施例を使用している。本発明の特許可能な技術的範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者にとって想到される他の実施例も含むことができる。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言から相違しない構造要素を有しており、或いは特許請求の範囲の文言から実質的には相違しない同等の構造要素を含むならば、特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。
[実施態様1]
付加製造を使用して2つの部品(12、14)を接合する方法であって、
第1の材料からなる第1の部品(12)を形成するステップと、
第1の材料及び第2の材料から噛合遷移領域(10)を形成するステップと、
第2の材料からなる第2の部品(14)を形成するステップと
を含んでおり、
噛合遷移領域(10)は、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の各々から交互に延びて第1の部品(12)及び第2の部品(14)を分離不能に連結する複数の突起(16)を備える、方法。
[実施態様2]
第1の部品(12)を形成するステップは、第1の材料の層を順次堆積させるステップを含み、第2の部品(14)を形成するステップは、第2の材料の層を順次堆積させるステップを含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
噛合遷移領域(10)を形成するステップは、第1の部品(12)上に第1の材料及び第2の材料の層を順次堆積させるステップを含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様4]
第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の隣り合う突起(16)の少なくとも一部分が、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の相対移動を防止する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様5]
複数の突起(16)の各々は、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の相対移動を許容する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様6]
複数の突起(16)の各々は、台形の形状(28)を有しており、各々の台形の最も幅の広い部分が第1の部品(12)又は第2の部品(14)の各々からの突起(16)の先端に位置するように、第1の部品(12)又は第2の部品(14)から延びている、実施態様1に記載の方法。
[実施態様7]
各々の突起(16)は、第1の部品(12)又は第2の部品(14)から延びている軸部(18)を備え、軸部(18)の先端は、軸部(18)の直径よりも大きい直径を有するこぶ(20)をさらに備える、実施態様1に記載の方法。
[実施態様8]
第1の材料は、第2の材料とは異なる、実施態様1に記載の方法。
[実施態様9]
第2の部品(14)は、保護コーティングである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様10]
保護コーティングは、遮熱コーティングである、実施態様9に記載の方法。
[実施態様11]
保護コーティングは、遮熱コーティングのボンドコートである、実施態様9に記載の方法。
[実施態様12]
第1の材料は、第1の熱膨張係数を有し、第2の材料は、第2の熱膨張係数を有し、第1の熱膨張係数は、第2の熱膨張係数と異なる、実施態様1に記載の方法。
[実施態様13]
噛合遷移領域(10)には、流体チャネル(38)が形成されており、流体チャネル(38)は、流体が噛合遷移領域(10)を流れて通過することを可能にするように構成されている、実施態様1に記載の方法。
[実施態様14]
ろう付けによる結合部が、接着剤として働くように第1の部品(12)と第2の部品(14)との間に位置している、実施態様1に記載の方法。
[実施態様15]
第1の材料の複数の融合した層を備える第1の部品(12)と、
第2の材料の複数の融合した層を備える第2の部品(14)と、
第1の部品(12)及び第2の部品(14)の各々から交互に延びて第1の部品(12)及び第2の部品(14)を分離不能に連結する複数の突起(16)を備える噛合遷移領域(10)と
を備える付加製造による部品。
[実施態様16]
第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の隣り合う突起(16)の少なくとも一部分が、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の相対移動を防止する、実施態様15に記載の付加製造による部品。
[実施態様17]
複数の突起(16)の各々は、第1の部品(12)及び第2の部品(14)の間の相対移動を許容する、実施態様15に記載の付加製造による部品。
[実施態様18]
各々の突起(16)は、第1の部品(12)又は第2の部品(14)から延びている軸部(18)を備え、軸部(18)の先端は、軸部(18)の直径よりも大きい直径を有するこぶ(20)をさらに備える、実施態様15に記載の付加製造による部品。
[実施態様19]
第1の材料は、第2の材料とは異なる、実施態様15に記載の付加製造による部品。
[実施態様20]
第1の部品(12)及び第2の部品(14)は、ポリマー材料で作られ、複数の融合した層は、熱硬化プロセスによって形成されている、実施態様15に記載の付加製造による部品。
[実施態様21]
第1の部品(12)及び第2の部品(14)は、エポキシで作られ、複数の融合した層は、架橋結合プロセスによって形成されている、実施態様15に記載の付加製造による部品。
[実施態様22]
第1の部品(12)及び第2の部品(14)は、セラミック材料で作られ、複数の融合した層は、焼結プロセスによって形成されている、実施態様15に記載の付加製造による部品。
[実施態様23]
第1の部品(12)及び第2の部品(14)は、粉末状の金属で作られ、複数の融合した層は、溶融プロセスによって形成されている、実施態様15に記載の付加製造による部品。
【符号の説明】
【0033】
10 噛合遷移領域
12 第1の部品
14 第2の部品
16 突起
18 軸部
20 こぶ
22 第1の部品表面
24 第2の部品表面
26 ギャップ、小さなすき間
28 台形の突起
30 長く延ばされた突起
32 長く延ばされた軸部
34 相対移動の矢印
36 結合接着層、接着剤
38 冷却穴