特許第6371358号(P6371358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371358
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20180730BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20180730BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20180730BHJP
   G08B 17/12 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B23K26/00 Q
   B23K26/70
   B23K26/08 Z
   G08B17/12 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-205675(P2016-205675)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-65177(P2018-65177A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2017年9月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平井 秀二朗
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−130324(JP,A)
【文献】 特開2000−259966(JP,A)
【文献】 特開2014−93002(JP,A)
【文献】 特開2007−50490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工領域内に位置するワークに対してレーザ加工ヘッドを相対的に移動してワークのレーザ加工を行うレーザ加工装置であって、前記レーザ加工ヘッドの周辺における火災発生を検知するための赤外線カメラを備え、前記レーザ加工ヘッドは、前記ワークに対して相対的にX軸方向又はY軸方向の少なくとも一方向に往復動自在に備えられており、前記赤外線カメラは、前記レーザ加工ヘッドの移動領域の外部に備えられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記赤外線カメラは、ワークのレーザ加工位置よりも高位置に備えられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、前記赤外線カメラは、前記レーザ加工ヘッド周辺をX軸方向から撮像する位置に備えられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載のレーザ加工装置において、前記赤外線カメラは、前記レーザ加工ヘッドを移動自在に支持したガイドビームの端部側に備えられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
ワークのレーザ加工を行うレーザ加工領域の上方位置に、Y軸方向に長いガイドビーム
をX軸方向に移動自在に備え、このガイドビームにY軸方向に移動自在に支持されたスラ
イダにワークのレーザ加工を行うレーザ加工ヘッドを上下動自在に備えたレーザ加工装置であって、前記ガイドビームのX軸方向の基準位置から離れた位置に、前記レーザ加工ヘッド周辺の火災発生を検出する第1の赤外線カメラを備え、前記ガイドビームのY軸方向の端部側に、前記レーザ加工ヘッド周辺の火災発生を検出する第2の赤外線カメラを備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工装置において、前記第1の赤外線カメラは、光軸をX軸方向に向けてX軸方向の一端側でかつY軸方向の一端側に備えられ、第2の赤外線カメラは、光軸をY軸方向に向けて、前記ガイドビームのY軸方向の一端側に備えられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のレーザ加工装置において、第1の赤外線カメラと第2の赤外線カメラとの撮影方向は互いに交差する方向であって、死角を補完する関係にあることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項5,6又は7に記載のレーザ加工装置において、前記第1の赤外線カメラは、前記レーザ加工ヘッドに備えたレーザノズルの最上昇位置と最下降位置との間の高さ位置においてX軸方向に水平に指向して備えられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザ加工装置において、前記第1の赤外線カメラは、前記レーザ加工領域にX軸方向に長く備えた板状のスパッタガードのX軸方向の端部から離れた位置であって、前記スパッタガードを配置した垂直な平面と同一平面内に配置してあることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のレーザ加工装置において、前記赤外線カメラは、赤外線検出部を備えたカメラであって、前記赤外線検出部を前面に備えたカメラ本体を、箱状のケーシング本体内に備え、前記ケーシング本体において前記赤外線検出部に対応する部分に検出窓を備え、前記カメラ本体を冷却するために、冷却流体を内部へ供給するための流体供給口を、前記ケーシング本体に備え、かつ前記カメラ本体の前記赤外線検出部を保護するために、赤外線を透過自在な保護プレートによって前記検出窓を閉鎖してあることを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工領域内に位置するワークに対して、レーザ加工ヘッドがX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一方向へ相対的に移動自在なレーザ加工装置に関する。さらに詳細には、前記レーザ加工領域の上方空間における火災発生を検知する機能を備えたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置によって、例えば板状のワークのレーザ加工を行うとき、ワークに貼り付けた保護シートに火災が発生することや、レーザ加工位置から飛散したスパッタや反射されたレーザ光によって、例えばレーザ加工ヘッド周辺の可燃物に火災が発生することがある。したがって、レーザ加工装置において火災が発生し易い箇所にセンサを配置し、このセンサによって火災発生の検出が行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−123581号公報
【特許文献2】特開2004−202005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の構成は、レーザ加工ヘッドを囲繞した加工ヘッドカバーを上下動自在に備えた構成である。そして、前記加工ヘッドカバー内において火災が発生したときに、加工ヘッドカバー内に備えた火災検知センサによって火災を検知する構成である。また、特許文献2に記載の構成は、レーザ加工装置における集塵機内の火災発生を検出する構成であって、火災発生時の熱風が通過する部分に、火災検知センサを備えた構成である。
【0005】
前記特許文献1,2における火災検知センサは、温度センサであって、火災発生によって温度センサの設置部周囲の温度が所定温度以上に上昇したときに、火災発生として火災を検知する構成である。したがって、火災発生初期から火災発生が検知されるまで大きな時間差がある。換言すれば、火災が発生して、周囲の温度がある程度上昇するまでは火災の発生は検知されないものである。すなわち、火災がある程度の大きさに進行するまでは火災の発生が検知されない、という問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、レーザ加工領域内に位置するワークに対してレーザ加工ヘッドを相対的に移動してワークのレーザ加工を行うレーザ加工装置であって、前記レーザ加工ヘッドの周辺における火災発生を検知するための赤外線カメラを備え、前記レーザ加工ヘッドは、前記ワークに対して相対的にX軸方向又はY軸方向の少なくとも一方向に往復動自在に備えられており、前記赤外線カメラは、前記レーザ加工ヘッドの移動領域の外部に備えられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【0007】
また、前記レーザ加工装置において、前記赤外線カメラは、ワークのレーザ加工位置よりも高位置に備えられている。
【0008】
また、前記レーザ加工装置において、前記レーザ加工ヘッドは、前記ワークに対して相対的にX軸方向又はY軸方向の少なくとも一方向に往復動自在に備えられており、前記赤外線カメラは、前記レーザ加工ヘッドの移動領域の外部に備えられている。
【0009】
また、前記レーザ加工装置において、前記赤外線カメラは、前記レーザ加工ヘッド周辺をX軸方向から撮像する位置に備えられている。
【0010】
また、ワークのレーザ加工を行うレーザ加工領域の上方位置に、Y軸方向に長いガイドビームをX軸方向に移動自在に備え、このガイドビームにY軸方向に移動自在に支持されたスライダにワークのレーザ加工を行うレーザ加工ヘッドを上下動自在に備えたレーザ加工装置であって、前記ガイドビームのX軸方向の基準位置から離れた位置に、前記レーザ加工ヘッド周辺の火災発生を検出する第1の赤外線カメラを備え、前記ガイドビームのY軸方向の端部側に、前記レーザ加工ヘッド周辺の火災発生を検出する第2の赤外線カメラを備えている。
【0011】
また、前記レーザ加工装置において、前記第1の赤外線カメラは、光軸をX軸方向に向けてX軸方向の一端側でかつY軸方向の一端側に備えられ、第2の赤外線カメラは、光軸をY軸方向に向けて、前記レーザ加工ヘッドを移動自在に支持したガイドビームのY軸方向の一端側に備えられている。
【0012】
また、前記レーザ加工装置において、第1の赤外線カメラと第2の赤外線カメラとの撮影方向は互いに交差する方向であって、死角を補完する関係にある。
【0013】
また、前記レーザ加工装置において、前記第1の赤外線カメラは、前記レーザ加工ヘッドに備えたレーザノズルの最上昇位置と最下降位置との間の高さ位置においてX軸方向に水平に指向して備えられている。
【0014】
また、前記レーザ加工装置において、前記第1の赤外線カメラは、前記レーザ加工領域にX軸方向に長く備えた板状のスパッタガードのX軸方向の端部から離れた位置であって、前記スパッタガードを配置した垂直な平面と同一平面内に配置してある。
【0015】
また、前記レーザ加工装置において、前記赤外線カメラは、赤外線検出部を備えたカメラであって、前記赤外線検出部を前面に備えたカメラ本体を、箱状のケーシング本体内に備え、前記ケーシング本体において前記赤外線検出部に対応する部分に検出窓を備え、前記カメラ本体を冷却するために、冷却流体を内部へ供給するための流体供給口を、前記ケーシング本体に備え、かつ前記カメラ本体の前記赤外線検出部を保護するために、赤外線を透過自在な保護プレートによって前記検出窓を閉鎖してある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レーザ加工装置におけるレーザ加工領域の上方空間における火災発生を検出するための赤外線カメラを、ワークのレーザ加工位置よりも高位置に備えているので、例えばレーザ加工ヘッド周辺に火災が発生すると、赤外線カメラにおける画素に所定温度以上の集合部分が得られる。したがって、火災が拡大する前の初期段階において火災の発生を検知できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の全体的構成を概念的、概略的に示した側面説明図である。
図2】レーザ加工装置の全体的構成を概略的に示した斜視説明図である。
図3】レーザ加工装置において、第1,第2の赤外線カメラが交差する方向を指向して配置してあることを示す全体説明図である。
図4】第1の赤外線カメラとスパッタガードとレーザ加工ヘッドとの位置的関係を示す作用説明図である。
図5】赤外線カメラの全体的構成を示す説明図である。
図6】赤外線カメラをケーシング本体内に内装した状態を示す斜視説明図である。
図7】ケーシング本体を分解した状態の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係るレーザ加工装置について説明するに、レーザ加工装置の全体的構成は公知である。しかし、理解を容易にするために、レーザ加工装置の全体的構成について概略的に説明する。
【0019】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置1は、機台3を備えている。この機台3の全体的構成は、図2に概略的に示すように、X軸方向に長い直方体の形状をしている。そして、機台3の上面にはワークテーブル5が備えられている。このワークテーブル5には、X軸方向に複数に区画した集塵室7が備えられている。上記集塵室7の上側には、板状のワークWを支持したパレット又は剣山テーブル(図示省略)がX軸方向に搬出入されるものである。
【0020】
前記集塵室7の上側は、ワークWのレーザ加工を行うレーザ加工領域である。このレーザ加工領域に搬入されたワークWのレーザ加工を行うために、レーザ加工ヘッド9がX,Y,Z軸方向へ相対的に移動位置決め自在に備えられている。すなわち、前記機台3のY軸方向の両側には、X軸方向のガイドレール11が備えられている。そして、上記ガイドレール11には、Y軸方向に長いガイドビーム13のY軸方向の両端部が移動自在に支持されている。このガイドビーム13には、スライダ15がY軸方向へ移動位置決め自在に備えられている。そして、このスライダ15に、前記レーザ加工ヘッド9が上下動自在に備えられている。すなわち、レーザ加工ヘッド9は、ワークWに対してX,Y,Z軸方向へ相対的に移動自在に備えられている。
【0021】
したがって、制御装置(図示省略)の制御の下に、前記ガイドビーム13をX軸方向に移動位置決めする。また、スライダ15をY軸方向に移動位置決めし、かつレーザ加工ヘッド9を上下に位置決めすることにより、レーザ加工領域内のパスライン高さ位置に位置するワークWに対してレーザ加工を行うことができる。ワークWにレーザ加工を行うと、ワークWのレーザ加工位置から周囲にスパッタが飛散するので、スパッタの飛散を防止するために、前記機台3におけるY軸方向の両側上部には、X軸方向に長い板状のスパッタガード17(図1参照)が垂直状に備えられている。
【0022】
ところで、ワークWのレーザ加工を行うと、レーザ加工位置から飛散するスパッタや、レーザ加工位置からのレーザ光の反射光によって、例えばレーザ加工ヘッド9に接続したホースやその継手等(図示省略)に火災が発生することがある。したがって、本実施形態においては、前記レーザ加工領域において、ワークWの上面よりも上方の空間(ワークWの上面を含まない)における火災発生を検知する火災検知手段が講じられている。
【0023】
すなわち、図3に概略的に示すように、前記ガイドビーム13がX軸方向の基準位置(図3に示す状態の位置)に位置するときに、前記ガイドビーム13の全体を撮像するように、火災発生検出カメラとしての第1の赤外線カメラ19が水平方向に指向して(水平角度でカメラに入射する光線の強度が最も大きくなる方向)備えられている。より詳細には、前記第1の赤外線カメラ19は、前記ガイドビーム13のX軸方向の基準位置から離れたX軸方向の一端側の位置であって、かつY軸方向の基準位置から離れたY軸方向の一端側の位置(図3に示す位置)に備えられている。
【0024】
前記第1の赤外線カメラ19は、ワークWのレーザ加工時に、レーザ加工位置から飛散するスパッタを回避してレーザ加工ヘッド9の周辺を撮像する高さ位置に備えられている。より詳細には、図4に示すように、レーザ加工時にレーザノズル22が下降したときの高さ位置(図4に示す実線の位置)よりも高位置であって、前記スパッタガード17のX軸方向の端部から離れた位置に配置してある。そして、前記スパッタガード17が、第1の赤外線カメラ19による撮影時に悪影響を与えないように、スパッタガード17を配置した平面(垂直平面)と同一平面内であって、スパッタガード17のY軸方向の両側を同時に撮影可能な位置に配置してある。したがって、前記赤外線カメラ19は、前記スパッタガード17のY軸方向の両側における火災発生を検知できるものである。
【0025】
すなわち、第1の赤外線カメラ19は、前記レーザ加工ヘッド9に備えたレーザノズル22の最上昇位置と最下降位置との間の高さ位置において、X軸方向に水平に指向して備えられているものである。
【0026】
ところで、前記第1の赤外線カメラ19における視野19Aの視野角は、赤外線カメラ19の特性として、図3に示すように小さいので、この赤外線カメラ19から前記ガイドビーム13が遠く離れている場合には、ガイドビーム13全体を撮像することはできる。しかし、ガイドビーム13が基準位置から離れるようにX軸方向の一端側に移動し、前記赤外線カメラ19にガイドビーム13が近接すると、図3から理解されるように、ガイドビーム13の一部、すなわちY軸方向の基準位置側が視野角19Aから外れるので、全体の撮像が難しくなる。すなわち、赤外線カメラ19にガイドビーム13が近接すると、赤外線カメラ19の設置位置の関係で、ガイドビーム13におけるY軸方向の基準位置側が視野角から外れて、死角になることがある。
【0027】
そこで、本実施形態においては、前記ガイドビーム13におけるY軸方向の基準側(図1において右側)には、火災発生検出カメラとしての第2の赤外線カメラ21が水平方向に指向して備えられている。この第2の赤外線カメラ21は、図1に示すように、前記レーザ加工ヘッド9周辺をY軸方向の一端側から撮像するもので、レーザ加工ヘッド9に備えたレーザノズル22の最上昇位置と最下降位置との間の高位置に備えられている。
【0028】
既に理解されるように、レーザ加工装置1におけるレーザ加工ヘッド9の周辺は、第1赤外線カメラ19によってX軸方向から撮像され(第1赤外線カメラ19の光軸はX軸方向に平行)、第2赤外線カメラ21によってY軸方向の一端側から撮像されるものである(第2赤外線カメラの光軸はY軸方向に平行)。この場合、第1赤外線カメラ19によって、レーザ加工ヘッド9におけるY軸方向の両側方を撮像することができる。
【0029】
しかし、ガイドビーム13が第1赤外線カメラ19に近接すると、ガイドビーム13のY軸方向の基準位置側が死角となり、撮像が難しくなる。ところが、第2の赤外線カメラ21がガイドビーム13のY軸方向の基準位置側(一端側)に備えられている。したがって、第1の赤外線カメラ19の死角は、第2赤外線カメラ21によってカバーされることになる。前記第2の赤外線カメラ21においては、レーザ加工ヘッド9を備えた反対側であって、第2赤外線カメラ21の影となるY軸方向の他端側(第2赤外線カメラ21を備えた側のY軸方向の反対側)は死角になる。しかし、この死角の範囲は第1赤外線カメラ19によってカバーされることになる。
【0030】
既に理解されるように、第1,第2の赤外線カメラ19,21によって、レーザ加工ヘッド9の周辺を、死角のない状態でもって監視できるものである。換言すれば、レーザ加工ヘッド9の周辺に火災が発生すると、第1,第2の赤外線カメラ19,21によって直ちに火災発生を検知できるものである。なお、前記構成において、前記第1,第2の赤外線カメラ19,21を、水平に回動可能に備えることも可能である。
【0031】
ところで、前記第1,第2の赤外線カメラ19,21は、図5に示すように、直方体形状の框体23に赤外線カメラ25と可視光デジタルカメラ27を備えた構成である。この赤外線カメラ19,21の構成は、既に公知であるが、次の機能を有するものである。すなわち、赤外線カメラ19,21は、例えばパソコン(図示省略)のモニタに、赤外線カメラ25による赤外線画像、可視光デジタルカメラ27による可視光画像及び両方の画像を組合せた画像を切り替え表示する機能を有する。また、検知温度が予め設定した温度閾値を超えると、アラームを自動的に作動させる機能を有するものである。さらに、火災発生箇所を検知し易いように、前記モニタの表示画面を複数の検出エリアに区画して表示する機能を有するものである。
【0032】
したがって、赤外線カメラ19,21によってレーザ加工ヘッド9の周辺を常に監視し、ある領域が予め設定した温度閾値以上の温度であることを検知したときに、火災発生として検知できるものである。そして、複数に区画した検出エリアを見ることによって、火災発生箇所を直ちに知ることができるものである。
【0033】
ところで、レーザ加工ヘッド9によるワークWのレーザ加工位置は勿論のこと、レーザ加工ヘッド9におけるレーザノズル22は、ワークWのレーザ加工時には極めて高温になっている。したがって、ワークWのレーザ加工時に、レーザ加工位置及びレーザノズル22を、前記赤外線カメラ19,21によって撮像すると、火災検知の誤作動を起こすことになる。そこで、前記モニタの表示画面を上下に区画して、上側画面を検出エリアに設定してある。換言すれば、下側画面は非検出エリアに設定してある。
【0034】
前記モニタの表示画面を上下に区画する画面区画手段としては、例えばマウス等を使用して設定するものである。すなわち、予め水平方向を指向して備えた第1,第2の赤外線カメラ19,21によって撮像した可視光画面のそれぞれを、例えばモニタの表示画面に表示する。そして、各赤外線カメラ19,21に対してレーザ加工ヘッド9を接近離反するように移動して、表示画面上において、レーザノズル22が表示された位置を、マウス等によってマーキングする。このマーキング位置に水平線を記入することによって表示画面を上下に区画するものである。換言すれば、前記第1,第2の赤外線カメラ19,21は、表示画面を上下に区画した水平線の位置を常に定位置に保持すべく、水平角度でカメラに入射する光線の強度が最も大きくなる方向である水平方向を指向して備えられているものである。そして、第1,第2の赤外線カメラ19,21における視野角の上下中心位置は、前記レーザ加工ヘッド9によるレーザ加工位置よりも高い位置に設定してある。
【0035】
したがって、レーザ加工ヘッド9の移動位置に拘わりなく、区画した上側の表示画面にはレーザノズル22が表示されることはないものである。換言すれば、表示画面において上下に区画した上側の画面は、火災を検出する検出エリアであり、レーザ加工ヘッド9の移動位置に拘わりなくレーザ加工位置を常に排除した画面に設定してある。よって、ワークWのレーザ加工時に、ワークWのレーザ加工位置やレーザ加工ヘッド9のレーザノズル22等の温度を検出するようなことがなく、火災検知の誤作動を生じるようなことがないものである。
【0036】
既に理解されるように、前記第1,第2の赤外線カメラ19,21は、ワークWのレーザ加工時におけるレーザ加工ヘッド9の周辺を撮像するものであるから、レーザ加工時に飛散するスパッタから赤外線カメラ19,21を保護する必要がある。そこで、本実施形態においては、前記赤外線カメラ19は、箱状のケーシング本体内に備えられている。なお、赤外線カメラ21も同一構成であるから、赤外線カメラの場合について説明し、赤外線カメラ21についての説明は省略する。
【0037】
図6図7に示すように、赤外線カメラ19はカメラ本体29(前記框体23と同義)を備えており、このカメラ本体29の前面には火災検出部31が備えられている。この火災検出部31に前記赤外線カメラ25、可視光デジタルカメラ27が備えられている。前記カメラ本体29を内装する箱状のケーシング本外33は、前記カメラ本体29の下面に対応する下面壁部33A、側面に対応する一対の側面壁部33B、後面に対応する後面壁部33C及び上面に対応した上面壁部33Dを備えた構成である。
【0038】
前記カメラ本体29をケーシング本体33内に装着するために、複数のタッピングボルト35を介してカメラ本体29の後面に取付自在な補助プレート37が備えられている。この補助プレート37は、複数の取付けボルト39によってケーシング本体33における後面壁部33Cの内面に取付けられるものである。この補助プレート37の中央部には、エア等の冷却流体が通過自在な開口部37Aが備えられている。
【0039】
既に理解されるように、前記カメラ本体29は、前記補助プレート37を介して、ケーシング本体33における後面壁部33Cの内面に取付けられるものである。
【0040】
前述のように、ケーシング本体33内にカメラ本体29を装着した後に、ケーシング本体33の前側に配置されるフロントカバー41が備えられている。このフロントカバー41は、前記カメラ本体29の火災検出部31に対応した位置に検出窓43が備えられている。なお、フロントカバー41は、複数のボルト等の取付具45(図6参照)を介して前記ケーシング本体33に取付けられる。
【0041】
前記フロントカバー41の前記検出窓43は、保護プレート47によって閉鎖されている。すなわち、前記保護プレート47は、プレート押え部材49によって前記フロントカバー41の前面に着脱交換可能に押圧固定してある。前記保護プレート47は、YAGレーザやファイバーレーザのレーザ光を遮光すべく、例えば900〜1200nmの波長を遮光し、火災時の炎が放射する赤外線の波長帯(例えば、4.3〜4.8μm)を透過するフィルタから構成してある。
【0042】
したがって、カメラ本体29の火災検出部31は、ワークWのレーザ加工位置から飛散するスパッタや、レーザ加工位置からの反射光から保護することができる。なお、レーザ光としてCO2レーザを使用する場合には、CO2レーザの波長帯を遮光し、炎が放射する赤外線の波長帯を透過するフィルタを、保護プレート47として使用すればよいものである。
【0043】
前記ケーシング本体33内の前記カメラ本体29を冷却するために、前記ケーシング本体33の後面壁部33には、エア等の冷却流体を内部へ供給する流体供給部51(図6参照)が備えられている。前記流体供給部51から内部へ供給された冷却流体を、カメラ本体29の後面から下面又は側面を経て前面に導くために、流体路形成部材53(図7参照)が備えられている。
【0044】
上記流体路形成部材53は、例えばエチレンゴムなどのごとき弾性部材から構成してある。この流体路形成部材53は、前記補助プレート37と前記カメラ本体29の後面との間に挟持される後部立上り部53Aを備えており、この後部立上り部53Aには、前記補助プレート37の開口部37Aに対応した開口部53Bが備えられている。
【0045】
また、前記流体路形成部材53には、前記フロントカバー41とカメラ本体29の前面との間に挟持される前部立上り部53Cが備えられている。そしえ、この前部立上り部53Cには、前記開口部53Bに連通した開口部53Dが備えられている。さらに、前記流体路形成部材53には、前記カメラ本体29の下面と前記ケーシング本体33の下面壁部33Aとの間に挟持される連結部53Eが備えられている。この連結部53Eは、前記後部立上り部53Aと前部立上り部53Cとを連結するもので、この連結部53Eには、前記開口部53Bと開口部53Dとを連通した開口部53Fが備えられている。
【0046】
上記構成により、前記流体供給部51からケーシング本体33内へ冷却流体を供給すると、前記流体路形成部材53における開口部53B,53F,53Dを経て、カメラ本体29の後面,下面,前面に至り、カメラ本体29を冷却するものである。したがって、カメラ本体29を効果的に冷却することができるものである。
【0047】
なお、カメラ本体29の後面から前面へ冷却流体を導く構成としては、カメラ本体29の下面に限ることなく側面を経て導く構成とすることも可能である。また、カメラ本体29の下面及び側面を経て前面に導く構成とすることも可能である。さらに、ファンを備えて、カメラ本体2の全外表面に冷却流を導くことも可能である。
【0048】
以上のごとき説明から理解されるように、レーザ加工装置1におけるレーザ加工位置付近における火災の発生を、赤外線カメラによって検知するものであるから、火災発生箇所から離隔した位置において、火災発生を検知できる。したがって、火災発生によって赤外線カメラに損傷を生じるようなことがなく、火災発生の検知に繰り返し使用することができる。
【0049】
また、赤外線カメラによって火災発生を検知するものであるから、例えば互に離隔した位置において同時に火災が発生した場合であっても、複数箇所の火災発生を同時に検出することができる。
【0050】
さらに、赤外線カメラによって火災発生を検知するものであるから、例えば、予め設定した所定温度以上を検出した画素のかたまり(集合)がある場合に、火災発生として検知できる。したがって、火災発生の初期において火災発生を検知でき、消火等の処置を迅速に行うことができるものである。
【0051】
また、ワークのレーザ加工位置を除外した状態で火災発生を検知することができるので、レーザ加工位置を火災発生箇所として誤検出するようなことがないものである。
【0052】
さらに、赤外線カメラを、スパッタやレーザ加工位置からの反射光から保護することができると共に、冷却することができるので、赤外線カメラの長寿命化を図ることができるものである。
【0053】
ところで、本発明は、前述したごとき実施形態のみに限ることなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能である。すなわち、前記説明においては、ワークとして板材のレーザ加工を行う場合について説明した。しかし、ワークとしては、例えばパイプ材等の長尺材のレーザ加工を行うレーザ加工装置に実施することも可能である。また、赤外線カメラの設置位置としては、レーザ加工ヘッドの上方位置とすることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザ加工装置
3 機台
5 ワークテーブル
7 集塵室
9 レーザ加工ヘッド
17 スパッタガード
19 第1の赤外線カメラ
21 第2の赤外線カメラ
25 赤外線カメラ
27 可視光デジタルカメラ
29 カメラ本体
31 火災検出部
33 ケーシング本体
37 補助プレート
41 フロントカバー
43 検出窓
47 保護プレート
49 プレート押え部材
51 流体供給部
53 流体路形成部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7