【文献】
KIRAN R CHAUDHARI; KUMAR ABHINESH; KHANDELWAL VINOTH KUMAR MEGRAJ; MISHRA ANIL K; MONKKONEN JUKKA,TARGETING EFFICIENCY AND BIODISTRIBUTION OF ZOLEDRONATE CONJUGATED DOCETAXEL,ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS,WILEY-VCH VERLAG GMBH,2012年 6月12日,V22 N19,P4101-4114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水中油型ミニエマルジョンが、前記少なくとも1種類のアルキルシアノアクリレートモノマーと任意選択的に前記1種類以上の活性剤とを含む水中油型ミニエマルジョンに前記少なくとも2種類のポリアルキレングリコールを加えることにより調製される、請求項1に記載のプロセス。
前記少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方が前記陰イオン重合反応を開始する、請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
前記水中油型ミニエマルジョンがラジカル重合可能な架橋剤、好ましくは無水物またはアクリレートをさらに含む、請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
前記少なくとも1種類のシアノアクリレートモノマーが、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、イソヘキシルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレートおよびそれらの誘導体および混合物からなる群から選択される、請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
前記少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方が、疎水性の化学成分、たとえばポリプロピレンオキシド成分をさらに含むポリエチレングリコールである、請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
前記少なくとも2種類のポリエチレングリコールのうちの少なくとも一方がポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマーであり、該コポリマーが、好ましくは、ポリプロピレンオキシドブロックと結合するヒドロキシ末端基またはアミノ末端基を含む、請求項8に記載のプロセス。
前記活性剤が、治療薬であり、好ましくは、ドセタキセル、カバジタキセル、パクリタキセル、5−フルオロウラシル、ソラフェニブ、AMG900、テムシロリムスまたはエベロリムスである、請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
前記活性剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、プラチナ−DACHまたはオルマプラチンである、請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
前記活性剤が、造影剤であり、好ましくは、金属類、金属塩類、近赤外線染料類、蛍光染料類、PET/SPECTキレート試薬類、MRIまたはラマン分光分析法に適する物質類および放射性医薬品類からなる群から選択される、請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載のプロセス。
請求項1乃至14のうちのいずれか一項に記載のプロセスにより調製されるポリ(アルキルシアノアクリレート)のホモポリマーまたはコポリマーから形成されるターゲットナノ粒子。
【背景技術】
【0002】
ナノテクノロジーを医療分野に適用することにより、複数の考えられる医療用途での将来性を含むワクワクする可能性がもたらされる。とくに、複雑な疾病の治療にナノ医学が大きな改良をもたらしてくれることが予想されている。ナノ粒子の使用が特定の価値を実証し始めている2つの分野は薬物送達分野と分子イメージング分野とである。
【0003】
治療薬を送達するためのナノ粒子は従来の送達アプローチに付随する多くの問題を解決する可能性を有している。これらの問題には、患者が処方された治療法によって定められた服薬を順守しないことや、副作用、標的化送達(targeted delivery)が欠如しているために臨床の有効性が劣悪であることなどが含まれる。薬物送達用ナノ粒子の重要な技術的な利点としては、水に溶けない薬物および不安定な薬物を送達することができること、疎水性治療薬および親水性治療薬を取り込むことができること、ならびにさまざまな投与ルートを利用することができることが挙げられる。また、ナノ粒子送達システムを使用することにより、標的化薬物送達(targeted drug delivery)および制御放出の適用(controlled release applications)が容易になること、作用領域における薬物の生物学的利用能が向上すること、ならびに、投与頻度および全体的な投与量が削減されることにより副作用を最小限に抑えることがさらに可能となる。これらの潜在的な利点のため、薬物を送達する担体として使用するためにさまざまなナノ粒子システムが調査されている。さまざまなナノ粒子システムには、高分子ミセル、ポリマー、リポソーム、低密度リポプロテイン、固体−脂質ナノ粒子、デンドリマ、親水性薬物−ポリマー複合体およびセラミック製ナノ粒子が含まれる。
【0004】
ナノ粒子系をベースにする造影剤は、循環時間の延長および水溶性の変更により、早急にクリアランスされてしまわないようにすることが可能となる。現在までに用いられた多くの粒子イメージングシステムはもっぱら血液プールイメージングおよびリンパ系イメージングのために設計されたものである。ターゲットイメージングシステム(targeting imaging system)は、標的部位(target site)における蓄積を増大させ可能性を有しているため、感度を向上させ、ひいては血液プールイメージングおよびリンパ系イメージング以外の分子イメージングを可能とする。治療薬と造影剤とを含有する標的化ナノ粒子により、疾病の診断、治療および経過観察に単一の担体を用いることが可能となると考えられている。
【0005】
医療分野においては、高分子ナノ粒子、とくにポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)およびポリ(アルキルシアノアクリレート)の如き生分解性高分子を含有する高分子ナノ粒子が非常に注目されているものの、今日までに開発された高分子ナノ粒子は、クリアランス速度が速くかつ健康な組織を含む体全体に分散してしまう傾向があるためその有効性は限定的なものであった。したがって、ナノ粒子を用いた活性剤の制御送達は依然として問題を有したままであり、活性剤単独での投与と比較して長期の循環時間および向上した安定性をもたらす活性剤の広範囲の送達が可能な生体適合性組成物を開発する必要性が存在する。
【0006】
この点に関して、長循環性ナノ粒子、すなわち循環系内で安定性の高いナノ粒子が、調査され、これらの問題に対処するためのいくらかの助けとなっている。これらのタイプのナノ粒子は、親水性ポリマーにより通常提供されるステルスコロナ(stealth corona)として知られる親水性のシェルをナノ粒子の周囲に有し、ナノ粒子の血液循環半減期を延ばし、循環時間を著しく延ばすことができる。この親水性のシェルは、水に類似し、免疫防御層として働き、ナノ粒子を免疫系に対して比較的「見えない存在(invisible)」となし、食細胞によるナノ粒子の取り込みの回避を可能とするようになっている。NicolasおよびCouvreur、Nanomed.Nanobiotechnol.、2009、1、111〜127;Storm et al.、Adv DrugDelivRev 1995、17:31〜48;ならびに、Stolnik、Illum & Davis、Adv Drug Deliv Rev 1995、16:195〜214に説明されているように、ステルス構造を有したナノ粒子は、周知となっており、さまざまなナノ粒子コアと一連の高分子シェルとを用いて調製されている。また、たとえばUS2002/0034474には、ステルス構造を有したナノ粒子が治療薬のカプセル化に用いられていることが記載されている。市販の例としては、Doxil(登録商標)が挙げられる。Doxil(登録商標)はPEG化リポソーム含有ドキソルビシンを含んだものである。
【0007】
しかしながら、これらの延長された循環時間(extended circultion time)と標的化送達(targeted delivery)とを組み合わせて健康組織における蓄積を最小限に抑えることにより副作用を削減する必要性が存在する。しかしながら、ステルスナノ粒子の表面にターゲットモイエティを組み込むことは簡単なことではない。というのは、これら追加される基の存在によりステルス構造が壊れてしまう恐れがあるからである。したがって、公知になっているステルスナノ粒子調製方法をうまくターゲットステルスナノ粒子の製造に適合させることは容易なことではない。
【0008】
複数のナノ粒子調製方法、たとえばエマルジョン重合(emulsion polymerization)およびナノ析出(nanoprecipitation)が公知となっている。たとえばUS2008/0138418には陰イオンエマルジョン重合が記載されている。
【0009】
平均サイズが典型的には1〜1000nm、もっとも典型的には50〜500nmの範囲にあるナノ粒子の製造については、たとえばLandfester、Macromol.Rapid Comm.2001、22、896〜936およびLandfester et al.Macromolecules 1999、32、5222〜5228に開示されているように、ミニエマルジョンプロセスが公知となっている。ミニエマルジョンプロセスについては、UgelstadとVanderhoffとにより1972年に最初に報告されている。高分子ナノ粒子を調製するためのミニエマルジョン技術とは、連続相内の分散相からなる安定なナノエマルジョンを重合反応によりナノ粒子の分散に変換することにより分散系を調製するための技術のことである。この技術は、分散相内のさまざまな化学成分を混合した後で連続相と乳化させることにより各液滴が活性剤とモノマーとからなる同一の組成を有するエマルジョンを製造することを含む。これらの液滴ナノリアクターには、あらゆるタイプの重合反応を適用することが可能である。本発明の場合、水中油型ミニエマルジョンおよび陰イオン重合が、好ましい実施形態であり、連続相に開始剤を加えることにより通常液滴界面で開始される。形成される粒子がそれらを調製する前の液滴と通常サイズおよびサイズ分布の点において同一またはほとんど同一であるため、プロセスの再現性は高い。
【0010】
ミニエマルジョンは、界面活性剤と補助安定剤とで安定化させられているのが一般的である。補助安定剤は、「疎水性物質(hydrophobe)」とも呼ばれることが多い。また、補助安定剤は、浸透圧を上昇させることによりエマルジョンの浸透圧による安定化(osmotic stabilization)に寄与する。浸透圧の上昇は、液滴の表面張力に起因する毛細管圧またはケルヴィン圧を打ち消して小さ液滴から大きな液滴へのモノマーの拡散を最小限に抑えることによりオストワルド熟成を抑制する。
【0011】
従来のエマルジョン法では、ポリマーは、モノマーを含む溶液から直接形成されていたが、ミニエマルジョンプロセスでは、まず2つの液相が接触させられ、次いで、エマルジョンが形成される。他の違いは、従来のエマルジョン重合プロセスでは、わずか約1%のナノ粒子しか含まない懸濁液が形成されるが、ミニエマルジョンプロセスでは、可能な固形ナノ粒子含有量が15〜25%またはそれ以上となる。このことは、スケールアップの観点と生産コストの観点とから重要な点である。従来のエマルジョンプロセスでは、ポリマー内に薬物が物理的にかつ一様に分散しているマトリクスシステムであるナノ球体が形成されるが、界面重合反応と組み合わせたミニエマルジョンプロセスでは、薄いポリマー層に包まれている液体コアの中に薬物が溶かされているベシクルシステム(小胞システム)であるナノカプセルが形成される。したがって特筆すべきことは、従来のエマルジョンプロセスとミニエマルジョンプロセスとは全く異なるものであって、それから製造される製品は構造の点において明確に区別できるものであるという点にある。
【0012】
US2008/182776およびUS2010/015165には、ポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子を調製するためのミニエマルジョン重合プロセスが開示されている。ここで用いられている重合開始剤は、それぞれ、界面活性剤(pluronics)および一級アミンまたは二級アミンである。しかし、一般的にいえば、たとえばヒドロキシ基またはアミノ基を含むいかなる求核性化合物が用いられてもよい。開始剤の例としては、水酸化ナトリウム、アミノ酸類(たとえば、グリシン)およびポリエチレングリコール類が挙げられる。US2009/0297613に開示されているように、pHを変えることにより開始が実行されるようになっていてもよい。
【0013】
ほとんどの公知になっているターゲットステルスナノ粒子調製プロセスとポリアルキルシアノアクリレートから形成されるターゲットステルスナノ粒子を調製するための公知になっているプロセスのみとが、複数の連続ステップ、すなわちステルス層の導入とともに活性剤のカプセル化を行うステップと、その後、活性化ステップおよび結合ステップにより通常なされるターゲットモイエティを導入するステップとを含んでいる。それに代えて、ナノ粒子の形成前にステルス層を別個に形成する化学成分にターゲットモイエティが加えられるようになっていてもよい。たとえばUS2010/0104645を参照されたい。臨床的に認可するための法律となる必要規則に準拠するにあたって、バイオマテリアルの構造および組成を正確に制御することならびにその合成における各ステップでの生産物の完全な特性評価が要求されるので、これらの従来の調製方法は非常に高価でかつ時間がかかる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ポリ(アルキルシアノアクリレート)のホモポリマーまたはコポリマーから形成されるターゲットナノ粒子を調製するためのプロセスに関するものである。かかる方法は、水中油型ミニエマルジョン(oil−in−water miniemulsion)の陰イオン重合を単一ステップで行うことによりナノ粒子を形成することを含んでいる。
【0022】
ミニエマルジョン(miniemulsion)
本明細書で用いられる場合、用語「ミニエマルジョン」とは、平均サイズが典型的には50〜500nmの範囲である安定な液滴を有する特定のタイプのエマルジョン(emulsion)のことを意味する。粒子サイズは複数の因子の影響を受ける。複数の因子には、存在する界面活性剤の量、系全体の粘度、液滴の生成に用いられる剪断速度が含まれる。ミニエマルジョンのための典型的な粒度分布曲線(たとえば、動的光散乱を用いて測定)は、ガウス状で、比較的幅が狭いものである。本発明のミニエマルジョンの多分散性指数(PDI)は、好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下、たとえば約0.1である。
【0023】
ミニエマルジョンは、界面活性剤と補助安定剤との存在により安定化されることが理想的である。補助安定剤は「疎水性物質(hydrophobe)」と呼ばれることも多い。補助安定剤は、浸透圧を上昇させてエマルジョンの浸透圧による安定化に寄与するようになっている。浸透圧の上昇は、液滴の表面張力に起因する毛細管圧またはケルヴィン圧を打ち消してオストワルド熟成を減らす。オストワルド熟成とは、分子が連続相を介して小液滴から大液滴へと拡散するプロセスのことを意味する。このプロセスはエマルジョン構造を壊してしまう。ミニエマルジョンは正エマルジョン(水中油型)であってもよいしまたは逆エマルジョン(油中水型)であってもよいが、本発明では、用語「ミニエマルジョン」は正ミニエマルジョンのみを意味すると考えることができる。したがって、本発明のミニエマルジョンでは水が連続相を形成する。典型的には、油相は、陰イオン重合に用いられるモノマーと、場合によっては補助安定剤および活性剤とを含有している。
【0024】
上述のように、ミニエマルジョンおよびナノ粒子を調製するためのミニエマルジョン重合は当該技術分野において公知になっている。
【0025】
ミニエマルジョンは、US2009/0297613に記載のような当該技術分野において公知になっているいかなる方法を用いて調製されてもよい。典型的には、プロセスは、油相と水相とを形成することと、これらを混合することと、得られた混合物を高剪断力、たとえば超音波処理、均質化処理にさらして安定化物質/界面活性剤を表面に有するモノマー含有油滴を含む安定なエマルジョンを形成することと、それに続いて、親水性の開始剤を加えることとを必要とする。その結果、モノマー含有液滴の重合が当該液滴の界面で開始してポリマー粒子が形成される。これらのポリマー粒子は重合前の液滴と同じサイズを有している。親水性の開始剤はこれらの粒子の表面に結合している。当業者にとって明らかなように、本発明の明細書に記載のミニエマルジョン重合プロセスは、モノマーが溶剤に溶解した溶液からポリマーナノ粒子が直接形成されるエマルジョン重合プロセスおよびあらかじめ作られたポリマーの自己組織化によりポリマーナノ粒子が形成されるあらかじめ作られたポリマーを用いたエマルジョンプロセスとは相当に異なるものである。
【0026】
本発明のミニエマルジョンは少なくとも2種類の構成物質を含有している。少なくとも2種類の構成物質は、少なくとも1種類のアルキルシアノアクリレートモノマー分子を含む重合可能なモノマーと、ポリエチレングリコール類(PEG)、ポリプロピレングリコール類(PPG)、またはそれらの混合物から選択される少なくとも2種類のポリアルキレングリコールとであり、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方はターゲットモイエティ(target moiety)と共有結合している。また、ミニエマルジョンは場合によっては1種類以上の活性剤をさらに含有してもよい。本発明にかかる一実施形態では、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方は重合可能なモノマーの陰イオン重合を開始するようになっている。
【0027】
本発明のミニエマルジョンは界面活性剤を含有してもよい。当該技術分野で公知になっているいかなる典型的な界面活性剤が用いられてもよいが、好ましい界面活性剤としては、グリセロール、ソルビトールおよび他の多機能のアルコール類の脂肪酸類、ポロクサマー類、ポロキサミン類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル、エトキシル化トリグリセリド類、エトキシル化フェノール類およびエトキシル化ジフェノール類、脂肪酸の金属塩類、高級アルコール硫酸エステル塩の金属塩類、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホスクシネートの金属塩類ならびにそれらの混合物が挙げられる。とくに好ましい界面活性剤としてはポリオキシエチレンエーテル類およびポリソルベート類が挙げられる。
【0028】
界面活性剤は、ミニエマルジョンの好ましくは0.05〜5wt%、さらに好ましくは0.1〜2wt%を構成している。
【0029】
これらの構成物質に加えて、ミニエマルジョンは、油相内に補助安定剤をさらに含有していてもよい。典型的には、補助安定剤は、水に極めて不溶、すなわち5xl0
−5molL
−1未満、さらに好ましくは5xl0
−6molL
−1未満、さらに好ましくは5x10
−7molL
−1未満の溶解度を有しており、また、重合可能なモノマーと相溶性あるいかなる物質、たとえば炭化水素、シラン、有機シラン、脂肪酸エステル、オイル(たとえば植物オイル)、疎水性染料または脂質であってもよい。適切な補助安定剤の例としては、ヘキサデカン、セチルアルコール、ミグリオールおよびオリーブオイルが挙げられる。とくに好ましい補助安定剤としてはミグリオール類およびオリーブオイルが挙げられる。他の実施形態では、補助安定剤の役割を活性剤が果たすようになっていてもよい。
【0030】
補助安定剤は、油相の好ましくは0.5〜5wt%、さらに好ましくは1〜3wt%を構成している。
【0031】
さらなる実施形態では、本発明にかかるプロセスにおいて用いられるミニエマルジョンは、好ましくは油相(すなわち、不連続相)の中に架橋剤(とくに、生物分解性の架橋剤)を含んでいる。好ましくは、架橋剤は、エチレングリコール(ジメタクリレート)、無水メタクリル酸、またはメチレン(ジメタクリレート)の如き無水物またはアクリレートである。
【0032】
本発明のミニエマルジョンの油相含有量は、好ましくは1〜50wt%、さらに好ましくは15〜25wt%の範囲である。当業者にとって明らかなように、本発明のミニエマルジョンの油相含有量を固形含有量と呼ぶ場合もある。したがって、「固形成分含有量」と「油相含有量」という用語は本発明の明細書において交換可能なものである。
【0033】
重合可能なモノマー(Polymerizable monomers)
本発明のミニエマルジョン内の重合可能なモノマーは少なくとも1種類のアルキルシアノアクリレートモノマーからなる。これらは、ナノ粒子の調製における使用が広く報告されている生物分解性モノマーである。アルキルシアノアクリレートモノマーは、単官能アクリレートまたは2官能アクリレートである、すなわち単一のまたは複数のアクリレート官能基を含んでいる。いかなる線状のまたは分枝状のアルキルシアノアクリレートモノマーまたはその誘導体が用いられてもよいが、好ましいモノマーは、C1〜C10アルキルシアノアクリレート、さらに好ましいモノマーはC2〜C8アルキルシアノアクリレートである。単一の種類のモノマーが用いられてもよいしまたは異なる種類のアルキルシアノアクリレートの混合物が用いられてもよい。好ましいアルキルシアノアクリレート類としては、エチルシアノアクリレート、ブチル(n−ブチル)シアノアクリレート、イソヘキシルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート、およびそれらの混合物が挙げられる。とくに、ブチルシアノアクリレート、イソヘキシルシアノアクリレートおよびオクチルシアノアクリレートが好ましい。
【0034】
いかなる理論によって拘束されることを望むものではないが、モノマーの特性がミニエマルジョンの劣化速度に影響を与えると考えられている。モノマーが疎水性であればあるほど(すなわち、アルキル基の鎖が長ければ長いほど)劣化速度はより遅くなる。このことは、ポリマーが疎水性であればあるほど水の活性がより低くなることにおそらく起因するのではないかと考えられている。したがって本発明の他の実施形態では、異なる長さの鎖を有するアルキルシアノアクリレート類の混合物、たとえば短いアルキル鎖のものと長いアルキル鎖のものとの混合物、具体的にいえばブチルシアノアクリレートとイソヘキシルシアノアクリレートまたはオクチルシアノアクリレートとの混合物が用いられる。
【0035】
一実施形態では、シアノアクリレートホモポリマーが用いられる、すなわち単一のモノマーから形成される。
【0036】
アルキルシアノアクリレートモノマーは、モノマーの総量に対して好ましくは1〜100wt%、さらに好ましくは75〜100wt%、もっと好ましくは95〜100wt%の量が存在する。
【0037】
アルキルシアノアクリレートモノマー類に加えて、本発明のミニエマルジョン内に他のコモノマーが存在していてもよい。さらに、これらのコモノマーが生体適合性または生物分解性であることが好ましい。適切なコモノマーとしては、それに限定するわけではないが、アクリレート類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニールエポキシド類、環状シロキサン類およびラクトン類が挙げられる。
【0038】
重合可能なモノマーは、油相の好ましくは25〜99.5wt%、さらに好ましくは30〜70wt%を構成している。
【0039】
好ましくは、重合可能なモノマーは、ミニエマルジョンの0.5〜50wt%、たとえば5〜18wt%を構成している。
【0040】
ポリアルキレングリコール類(Polyalkylene glycols)
本発明のミニエマルジョンは、ポリエチレングリコール類(PEG)、ポリプロピレングリコール類(PPG)またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2種類のポリアルキレングリコールを含有しており、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方は、ターゲットモイエティと共有結合している。好ましくは、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方が陰イオン重合反応を開始するようになっている。
【0041】
通常、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールはミニエマルジョンの連続相(すなわち、水相)に加えられる。好ましくは、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方がターゲットモイエティと共有結合し、少なくとも一方がターゲットモイエティと結合していない。とくに好ましくは、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールはミニエマルジョンに加える均質な溶液の調製を可能とするに十分足りる水溶性を有している。
【0042】
用語「ポリエチレングリコール」(PEG)とは、ほとんどがエチレンオキシド単位、すなわち―CH
2―CH
2−O−単位の繰り返しであるポリマーのことを意味する。典型的なポリエチレングリコールは、20000g/mol未満、好ましくは10000g/mol未満の分子量を有している。用語「ポリプロピレングリコール」(PPG)とは、ほとんどが酸化プロピレン単位、すなわち―CH
2―CH
2−CH
2―O−単位の繰り返しであるポリマーのことを意味する。
【0043】
少なくとも2種類のポリアルキレングリコールはヒドロキシ末端基、アミノ末端基、またはそれらの混合物を含んでいてもよい。また、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールは水溶性である。水溶性とは、均質な水溶液を形成してミニエマルジョンに加えるのを可能とする十分に高い水に対する溶解度、すなわちRTPにおいて10g/Lを超える溶解度を有していなければならないことを意味する。
【0044】
適切な少なくとも2種類のポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコールホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、およびそれらのコポリマーが挙げられる。特筆すべきことは、用語「ポリエチレングリコール」がポリソルベート類(たとえば、ポリソルベート80)を含むことを意図しているという点である。最も重要なことは、コポリマーがブロックコポリマーであってもよいという点である。コポリマー類の例としては、ポリ(プロピレン(グリコール)−ポリ(エチレン)グリコール)ブロックコポリマー類、ポリアルキルアミン−ポリアルキレングリコールブロックコポリマー類、脂質―ポリアルキレングリコールブロックコポリマー類、およびポリリシン−ポリアルキレングリコールブロックコポリマー類が挙げられる。
【0045】
各ポリマーのブロック長については、コポリマーが水溶性のままであることを前提として、コポリマーの特性を変えるために変更してもよい。たとえば、PPOの含有量を上げると水溶性が下がる。一実施形態では、PPOに直接結合されるヒドロキシ末端基またはアミノ末端基が存在することが好ましい。好ましくは、末端基はアミノ末端基である。
【0046】
好ましくは、PPO単位に対するポリエチレングリコール単位の比は1:5〜5:1の範囲、たとえば1:1である。各ブロックは2〜40のモノマー単位を含んでいてもよい。しかしながら、ポリエチレングリコール単位が過剰に存在すればさらに好ましい。
【0047】
本発明のポリアルキレングリコール−PPOブロックコポリマーの典型的な分子量は、20000g/mol未満、好ましくは10000g/mol未満、たとえば1000〜8000である。
【0048】
1種類のポリアルキレングリコールがターゲットモイエティと共有結合し、1種類のポリアルキレングリコールがターゲットモイエティと共有結合していないと、重合ステップの際に、長循環ナノ粒子(long−circulating nonoparticles)へのターゲットモイエティの導入が可能となり、それによってターゲットステルスナノ粒子(stealth nanoparticles)を調製するための単一ステッププロセスを促進することが可能となる。したがって、これは本発明の望ましい一実施形態である。
【0049】
ステルスコロナ(stealthcorona)内にターゲットモイエティを有するポリアルキレングリコールおよびターゲットモイエティを有しないポリアルキレングリコールが両方存在するため、これらのナノ粒子は、比較的見えない存在のまま標的を定めることができる潜在力を有しているので早急なクリアランス(rapid clearance)を回避することが可能となる。このことは、標的を定める能力とステルス能力の両方を最適化するように両方のポリアルキレングリコールの鎖長を変えることにより可能となると考えられている。
【0050】
好ましくは、ポリエチレングリコール、すなわちポリエチレングリコール単位が大多数を占めるものが用いられ、また、好ましくは、そのポリエチレングリコールが特性を最適化しかつ油相内のモノマーとの効率的な疎水性相互作用を可能とするように疎水性の化学成分をさらに含んでいる。疎水性の化学成分は、好ましくはポリエチレングリコールと共有結合し、最も好ましくはポリエチレングリコールモイエティのアミノ末端基またはヒドロキシ末端基とその他の部分との間で共有結合する。
【0051】
典型的には、疎水性の化学成分はアルキル鎖、ポリエーテルまたは脂質である。とくに好ましい疎水性の化学成分は、ポリプロピレンオキシド(PPO)であり、ポリエチレン(グリコール/ポリプロピレン)グリコールブロックコポリマーを形成する。 特筆すべきことは、PPOがPPGと同等である点である。
【0052】
ターゲットモイエティは粒子に標的を定めさせるまたは粒子を被験体内の特定の部位に局地化させることができるいかなる適切なモイエティであってもよい。ターゲットモイエティは、ポリアルキレングリコールのアミノ基末端の反対側の末端基と反応しうる官能基を含んでいる必要がある。適切な官能基としては、ポリアルキレングリコールと共有結合することができる官能基であり、たとえばアミノ、ヒドロキシ、アジド、アルキンおよびチオが挙げられる。ポリアルキレングリコールへのターゲットモイエティの結合は、当該技術分野において頻繁に用いられるいかなる方法、たとえば「クリック」ケミストリー(click chemistry)により行われてもよい。
【0053】
ターゲットモイエティは、好ましくは100〜200000Da、さらに好ましくは200〜50000Da、さらに好ましくは300〜15000Daの範囲の分子量を有している。
【0054】
特筆すべきことは、単一のターゲットモイエティが用いられてもよいしまたは異なるターゲットモイエティの混合物が用いられてもよい。
【0055】
ターゲットモイエティの例としては、アミノ酸、タンパク質、ミニタンパク質(たとえば、システインノットミニタンパク質)、ペプチド、抗体、抗体片、糖類、炭水化物、グリカン、サイトカイニン、ケモカイン(chemikine)、ヌクレオチド、レクチン、脂質、レセプタ、ステロイド、神経伝達物質、細胞表面マーカー、癌抗原、糖タンパク質抗原、アプタマーまたはそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。好ましくは、ターゲットモイエティまたはターゲットモイエティの混合物には線形および環状のペプチドまたはシステイン―ノットミニタンパク質が含まれる。
【0056】
他の実施形態では、ターゲットモイエティの例としては、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体片、糖類、炭水化物、グリカン、サイトカイニン、ケモカイン、ヌクレオチド、レクチン、脂質、レセプタ、ステロイド、神経伝達物質、細胞表面マーカー、癌抗原、糖タンパク質抗原、アプタマーまたはそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。とくに好ましいターゲットモイエティには線形および環状のペプチドが含まれる。
【0057】
ポリアルキレングリコール(合計)の量は、ミニエマルジョンの好ましくは1wt%、好ましくは5wt%を超える。ポリアルキレングリコール(合計)の量は、好ましくは15wt%、さらに好ましくは10wt%を超えてはいけない。好ましい実施形態では、ターゲットモイエティと共有結合するポリアルキレングリコールは、ポリアルキレングリコールの総量の1〜10wt%、好ましくは1〜5wt%を構成する。
【0058】
活性剤(Active Agent)
活性剤は、医療用途を有するいかなる物質、たとえば治療薬、造影剤であってもよい。活性剤は水溶性であってもよいし非水溶性であってもよいが、非水溶性であることが好ましい。活性剤が、水溶性である場合、油の中に微細パウダーとして加えられるのが一般的である。ある実施形態では、活性剤は、油相の好ましくは1〜75wt%、さらに好ましくは30〜60wt%を構成する。
【0059】
治療薬の例としては、いうまでもなく本発明を限定するわけではないが、化学療法薬、診断用薬、抗腫瘍薬、予防薬、栄養補助薬、抗生物質、抗ウイルス物質、抗炎症薬、小分子キナーゼ阻害剤、核酸、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、セラミックス、薬、ワクチン、疫学的薬剤およびそれらの混合物が挙げられる。
【0060】
好ましい治療薬としては、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ダウノルビシン、プロカルバジン、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、5−フルオロウラシル、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、塩酸ミトザントロン、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトセシン、ダカルバジン、フトラフル、5’−デオキシフルオロウリジン、エニルウラシル、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5−アザデオキシシチジン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリン、シスプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、プラチナ−DACH、オルマプラチン、エピルビシン、リン酸エトポシド、9−アミノカンプトテシン、ビンデシン、L−フェニルアラニンマスタード、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、カレニテシン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジブドジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、イマチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、N−4−((3−(2−アミノピリミジン−4−イル)ピリジン−2−イル)オキシ)フェニル)−4−(4−メチルチオフェン−2−イル)フタラジン−1−アミン(AMG900)、プロテインキナーゼD1阻害剤、プロテインキナーゼD2阻害剤、プロテインキナーゼD3阻害剤、12−(2−シアノエチル)−6、7、12、13−テトラヒドロ−13−メチル−5−オキソ−5H−インドロ[2,3−a]ピロロ[3,4−c]カルバゾール(Go6976)、N−[2−(p−ブロモシナミルアミノ)エチル]−5−イソキノリンスルホンアミド)(H89)およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
それに代えて、好ましい治療薬としては、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ダウノルビシン、プロカルバジン、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、5-フルオロウラシル、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、塩酸ミトザントロン、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトセシン、ダカルバジン、フトラフル、5’−デオキシフルオロウリジン、エニルウラシル、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5−アザデオキシシチジン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリンおよびオキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、プラチナ−DACH、オルマプラチン、エピルビシン、リン酸エトポシド、9−アミノカンプトテシン、ビンデシン、L−フェニルアラニンマスタード、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、カレニテシン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジブドジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、イマチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、N−(4−((3−(2−アミノピリミジン−4−イル)ピリジン−2−イル)オキシ)フェニル)−4−(4−メチルチオフェン−2−イル)フタラジン−1−アミン(AMG900)、プロテインキナーゼD1阻害剤、プロテインキナーゼD2阻害剤、プロテインキナーゼD3阻害剤、12−(2−シアノエチル)−6、7、12、13−テトラヒドロ−13−メチル−5−オキソ−5H−インドロ[2,3−a]ピロロ[3,4−c]カルバゾール(Go6976)、N−[2−(p−ブロモシナミルアミノ)エチル]−5−イソキノリンスルホンアミド(H89)およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
とくに好ましい治療薬としては、ドセタキセル、カバジタキセル、パクリタキセル、5−フルオロウラシル、ソラフェニブ、AMG900、テムシロリムスおよびエベロリムスが挙げられる。
【0063】
他の非常に好ましい治療薬としては、カルボプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、プラチナ−DACHおよびオルマプラチンが挙げられる。
【0064】
造影剤の例としては、金属類(たとえば、コバルト、鉄、金)、金属塩類(たとえば、酸化鉄およびガドリニウム塩類)、近赤外線染料、PETキレート試薬、SPECTキレート試薬、MRIまたはラマン分光分析法に適する物質、蛍光染料および放射性医薬品が挙げられる。
【0065】
重合(Polymerization)
本発明にかかるプロセスは、ポリ(アルキルシアノアクリレート)のホモポリマーまたはコポリマーから形成されるターゲットナノ粒子を調製することを含んでいる。かかる方法は、水中油型ミニエマルジョンの陰イオン重合を単一ステップで行うことを含んでいる。かかるミニエマルジョンは、(i)少なくとも1種類のアルキルシアノアクリレートモノマーを含む重合可能なモノマーと、(ii)ポリエチレングリコール類(PEG)、ポリプロピレングリコール類(PPG)またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2種類のポリアルキレングリコールであって、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方がターゲットモイエティと共有結合する、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールと、(iii)任意選択的に、1種類以上の活性剤とを含んでいる。かかるミニエマルジョンは、上述の少なくとも2種類のポリアルキレングリコールを少なくとも1種類のアルキルシアノアクリレートモノマーと任意選択的な1種類以上の活性剤とを含んでいる水中油型ミニエマルジョンへ加えることにより調製されるようになっていてもよい。ある好ましい実施形態では、この加えるステップおよび陰イオン重合ステップは連続的に行なわれる、すなわち加えるステップの直後(0〜10分、たとえば0〜5分以内)に陰イオン重合ステップが実行される。
【0066】
他の態様によれば、本発明にかかるプロセスはポリ(アルキルシアノアクリレート)のホモポリマーまたはコポリマーから形成されるターゲットナノ粒子を調製することを含んでいる。かかる方法は、ポリエチレングリコール類(PEG)、ポリプロピレングリコール類(PPG)またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2種類のポリアルキレングリコールを水中油型ミニエマルジョンに加えることと、得られた混合物を陰イオン重合により重合することとを含んでおり、かかるミニエマルジョンは、(i)少なくとも1種類のアルキルシアノアクリレートモノマーを含む重合可能なモノマーと、(ii)任意選択的に、1種類以上の活性剤とを含んでいる。
【0067】
好ましくは、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方が陰イオン重合反応を開始する。
【0068】
本発明のすべての態様において、上述のナノ粒子はステルスナノ粒子であることが好ましい。
【0069】
本発明にかかるプロセスを用いることにより、従来の方法ではこれまで可能ではなかった、モノマーの重合と、「ステルスコロナ」の形成と、ターゲットモイエティのナノ粒子の表面上への導入とを単一ステップで同時に行うことが可能となった。その結果、被験体内のクリアランスシステムに対して比較的「見えない存在」のままでいることができ、そのことにより、標的を定める特性を保持したまま循環時間を延長させることができるナノ粒子の生成が可能となり、ナノ粒子の効能が高められることになった。
【0070】
典型的には、ミニエマルジョンは、モノマーおよび補助安定剤を含んでいる油相を界面活性剤を含んでいる水溶液へ加え、これをたとえば超音波処理によって高剪断力にさらして水中にモノマー含有油滴を形成させることにより調製される。この段階で形成された油滴がミニエマルジョンである。次いで、このミニエマルジョンを少なくとも2種類のポリアルキレングリコールを含む第三の通常水溶液へ加えるようにしてもよい。好ましくは、重合反応は低いpH、たとえばpH1〜7で行なわれる。重合反応は室温、たとえば15〜30℃で行われる。得られる混合物は分散した状態にある。
【0071】
好ましくは、少なくとも2種類のポリアルキレングリコールのうちの少なくとも一方が陰イオン重合プロセスを開始する。ポリアルキレングリコール開始剤はアミノ末端基またはハイドロキサイド末端基がある場合、陰イオン重合プロセスの開始は、モノマーへの求核攻撃、そして陰イオンまたは双性イオン重合反応を生じさせることにより達成されるのが好ましい。
【0072】
このようなプロセスは当該技術分野において周知となっているので、その機構は当業者にとって明らかである。
【0073】
とくに好ましい実施形態では、この陰イオン重合はさらなる開始剤を加えてラジカル重合と組み合わされるようになっている。典型的には、このさらなる開始剤は油溶性であるので、ミニエマルジョンの油相、すなわち油滴内に存在しているのが普通である。これらの2つのタイプの重合が組み合わせられる場合、本発明にかかるプロセスはラジカル重合を開始させるための温度上昇を組み入れるように修正される。典型的なラジカル重合開始剤としては、過酸化物およびアゾ化合物、たとえばアゾビスジメチルバレロニトリルおよび(アゾイソブチロニトリル)が挙げられる。
【0074】
一実施形態では、本発明にかかるプロセスは、複数のアルキルシアノアクリレートモノマーの架橋を含むように修正されるようになっていてもよい、複数のアルキルシアノアクリレートモノマーの架橋が存在する場合にはコモノマーとなる。このことは、架橋剤、好ましくは重合可能な架橋剤をミニエマルジョンの中、好ましくは油相内に組み入れることにより促進することができる。この架橋剤は、水溶液の相(aqueous phase)との接触により通常加水分解され、それによって、薬剤の放出速度およびナノ粒子の生物分解性を制御するようになっている。架橋剤の例としては、無水物またはアクリレート、たとえばエチレングリコール、無水メタクリル酸またはメチレンジメタクリレートが挙げられる。
【0075】
本発明にかかるプロセスは、ナノ粒子を隔離するさらなるステップを含んでもよい。このことは当該技術分野において公知になっているいかなる方法によって行われてもよい。
【0076】
さらなる実施形態では、本発明にかかるプロセスは、すべての残余モノマーが反応しかつ/または架橋を開始するように温度を(たとえば、5℃まで)上げるステップを有するようになっていてもよい。
【0077】
標的を定める効率および薬剤の放出は、ターゲットモイエティと結合するポリアルキレングリコールおよびターゲットモイエティと結合しないポリアルキレングリコールモノマーの量、種類および長さを変えることによりまたはモノマーの組成を変えることにより変更可能となっていてもよい。
【0078】
ナノ粒子(Nanoparticles)
本発明にかかるプロセスにより製造されるナノ粒子は、エマルジョン重合により製造されるナノ粒子とは構造が異なっている。具体的にいえば、エマルジョン重合により製造されるナノ粒子は、活性剤がポリマーマトリクス内で物理的にかつ均一に分散しているポリマーマトリックスを有している。それに対して、ミニエマルジョン界面重合により製造されるナノ粒子はナノ粒子のコア内に活性剤が存在しポリマーのシェルにより周りを取り囲まれている小胞状のシステムである。
【0079】
本発明に従って製造されるナノ粒子は、ナノ粒子と1つ以上の薬学的に受け入れ可能な担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物として調製してもよい。このような担体、希釈剤および賦形剤は当該技術分野において周知となっている。かかる医薬組成物はさらなる活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0080】
用途(Uses)
このようなナノ粒子およびその組成物は、医療、とくに薬物送達用途およびイメージング用途において用いることができる。したがって、本発明は医療分野において用いられる本発明にかかるナノ粒子に関するものである。さらなる実施形態では、本発明は、特定の障害および疾病の治療、防止および診断に用いられる本発明にかかるナノ粒子に関するものである。本発明に従って治療または防止されうる障害または疾病の例としては、癌、たとえば肺癌、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、皮膚癌、睾丸癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、子宮頸癌、胃腸の癌およびそれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0081】
好ましくは、ナノ粒子またはその組成物は、治療上有効な量で投与される。「治療上有効な量」とは、個々の病気または障害を治療または予防するのに必要なナノ粒子の量のことを意味する。ナノ粒子を被験体に投与するにあたっていかなる投与ルートが用いられてもよい。適切な投与ルートとしては、筋肉注射、経皮投与、吸入、局所適用、経口投与、直腸または膣への投与、腫瘍内投与および非経口的投与(たとえば、静脈、腹膜、動脈、皮下)が挙げられる。好ましい投与ルートは注射である。
【0082】
当業者にとって明らかなように、投与の正確な用量および頻度は、用いられる個々のナノ粒子、活性剤およびターゲット物質、治療される個々の病気、治療される病気の重篤度、個々の被験体の年齢、体重、性別、病気の程度および全身的な身体状態に加えて、個々の被験体が受けている治療に応じて異なる。さらに、治療を受けている被験体の反応に応じてかつ/または本発明にかかるナノ粒子を処方する内科医の所見に応じて効果的な1日投与量を増減させてもよいことは明らかである。
【実施例】
【0083】
ナノ粒子の調製
実施例1:ミニエマルジョン法を用いて形成された約1%RGDターゲットモイエティを含むステルス粒子(PEG層内にRGDが埋め込まれた短いPEG)
溶液1(PEG/開始剤およびターゲット配位子):短い(約15PEG単位)mPEG−PPO−NH
2(MW935、m=OMe保護基)を330mgと、ペプチド−PEG−PPO(H
2N−PPO−PEG
15...RGDfK)の70mg/mlの溶液を280μlと、蒸留水を3.2gとをガラスバイアル内で混合し、5MHClを用いてpHをpH6に調節し、N
2を15分用いてガス抜きした。
【0084】
溶液2(モノマー相):n−ブチルシアノアクリレート(モノマー、Henkel Loctite社、アイルランド)を0.6gと、ヘキサデカン(補助安定剤)を12mgと、アゾビスジメチルバレロニトリル(V65、架橋のためのラジカル開始剤、和光ケミカルズ)を5mgと、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、架橋剤、Fluka社)を39mgと、ナイルレッド(蛍光染料、Fluka社)を0.5mgとをガラスバイアル内で完全に混合した。
【0085】
溶液3(安定化物質):10mgのドデシル硫酸ナトリウム(SDS、Merck社)を2.4gの蒸留水に溶かし、0.1MHClを用いてpHをpH4.5に調節した。マグネチックスターラを用いて溶液2と溶液3とを氷の上に置かれた5mlのガラスバイアル内で30秒間混合した。水中油型エマルションを直ちに氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、25%振幅)。
【0086】
超音波処理直後にエマルジョンを溶液1を含んでいるガラスバイアルに加え、室温で回転(15rpm)させながら一晩中重合した。pHを中和し、温度を50℃まで上昇させてポリマーの架橋を開始した。8時間後、界面活性剤および未反応PEGを取り除くために蒸留水に対してその溶液を室温で十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO 12−14000)。周囲溶液の導電性が純粋な蒸留水の導電性と同じ値に達するまで蒸留水を交換した。
【0087】
それらの粒子サイズおよびゼータ電位をMalvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて求めた。
【0088】
上述の方法により、0.19の多分散性指数、−14mVのゼータ電位および1.94%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された124nm(z−平均直径)のターゲットナノ粒子が得られた。
【0089】
実施例2:ミニエマルジョン法を用いて形成された約5%RGDターゲットモイエティを含むステルス粒子(PEG層からRGDが突出した長いPEG)
溶液1(PEG/開始剤およびターゲット配位子):長い(約20のPEG単位)mPEG−PPO−NH2(MW1300、m=OMe保護基)を460mgと、ペプチド−PEG−PPO(H
2N−PPO−PEG
15...RGDfK)の70mg/ml溶液を1.95mlと、蒸留水を1.55gとをガラスバイアル内で混合し、5MHClを用いてpHをpH6に調節し、N
2を15分用いてガス抜きした。
【0090】
溶液2および溶液3は実施例1に説明した通りである。
【0091】
溶液2および溶液3をマグネチックスターラを用いて氷の上に置かれた5mlのガラスバイアル内で30秒間混合した。直ちに水中油型エマルションを氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波で処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、25%振幅)。
【0092】
超音波処理直後にエマルジョンを溶液1を含んでいるガラスバイアルに加え、室温で一晩中回転(15rpm)させながら重合した。pHを中和し、温度を50℃まで上昇させてポリマーの架橋を開始した。8時間後、界面活性剤および未反応PEGを取り除くためにその溶液を室温で蒸留水に対して十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO12−14000)。周囲溶液の導電性が純粋な蒸留水の導電性と同じ値に達するまで蒸留水を交換した。
【0093】
それらの粒子サイズおよびゼータ電位をMalvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて求めた。
【0094】
上述の方法により、0.07の多分散性指数、−12mVのゼータ電位、および0.84%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された141nm(z−平均直径)のターゲットナノ粒子が得られた。
【0095】
実施例3:ミニエマルジョン法を用いて形成されたターゲットモイエティを含まないステルス粒子(負のコントロール)
溶液1(PEG/開始剤):短い(約15単位)mPEG−PPO−NH
2(MW935、m=OMe保護基)を330mgと、蒸留水を3.5gとをガラスバイアル内で混合し、pHを5MHClを用いてpH6に調節し、N
2を15分間用いてガス抜きした。
【0096】
溶液2および溶液3は実施例1に説明した通りである。
【0097】
マグネチックスターラを用いて溶液2および溶液3を氷の上に置かれた5mlのガラスバイアル内で30秒間混合した。この水中油型エマルションを直ちに氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波で処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、25%振幅)。
【0098】
このエマルジョンを超音波処理直後に溶液1を含んでいるガラスバイアルに加え、室温で一晩中回転(15rpm)させながら重合した。pHを中和し、温度を50℃まで上昇させてポリマーの架橋を開始した。8時間後、界面活性剤および未反応PEGを取り除くためにその溶液を室温で蒸留水に対して十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO 12−14000)。周囲溶液の導電性が純粋な蒸留水の導電性と同じ値に達するまで蒸留水を交換した。
【0099】
それらの粒子サイズおよびゼータ電位をMalvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて求めた。
【0100】
上述の方法により、0.16の多分散性指数、−22mVのゼータ電位および2.13%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された120nm(z−平均直径)のナノ粒子が得られた。
【0101】
実施例4:ミニエマルジョン法を用いて形成された1%RGDターゲットモイエティを含むステルスPBCA粒子(PEG層内にRGDが埋め込まれた短いPEG)
溶液1(PEG/開始剤/安定化物質およびターゲット配位子):Kolliphor HS 15(15PEG単位、MW960、Sugma社)を50mgと、Brij L23(23PEG単位、MW1225、Sugma社)を50mgと、c(RGDfK(PEG−PEG))(PEG=8−アミノ−3、6−ジオキサオクタン酸、MW894、Peptides International社、アメリカ)を0.85mgと、0.1MHClを8mlとをガラスバイアル内で混合した。
【0102】
溶液2(モノマー相):n−ブチルシアノアクリレート(モノマー、Henkel Loctite社、アイルランド)を0.75gと、Miglyol 810N(補助安定剤、Cremer社、ドイツ)を13mgとをガラスバイアル内で完全に混合した。
【0103】
溶液1と溶液2とをマグネチックスターラを用いて氷の上に置かれたガラスバイアル内で30秒間混合した。この水中油型エマルションを直ちに氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、60%振幅)。
【0104】
このエマルジョンを室温で一晩中回転(15rpm)させながら重合した。回転させている間、8mlの0.1MNaOHを注意深く加えることによりpHを上げた。室温でその溶液をさらに5時間回転(15rpm)させ続けた。未反応PEGを取り除くためにその溶液を室温で0.001MHCl(pH3)に対して十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO 12−14000)。透析液を5回交換した。
【0105】
それらの粒子サイズおよびゼータ電位を、Malvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて0.01Mリン酸緩衝液pH7中で求めた。
【0106】
上述の方法により、透析後、0.23の多分散性指数、−2mVのゼータ電位、および2.6%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された123nm(z−平均直径)のターゲットナノ粒子が得られた。
【0107】
実施例5:ミニエマルジョン法を用いて形成された5%RGDターゲットモイエティを含むステルスPBCA粒子(PEG層内にRGDが埋め込まれた短いPEG)
溶液1(PEG/開始剤/安定化物質およびターゲット配位子):Kolliphor HS 15(15PEG単位、MW960、Sugma社)を50mgと、Brij L23(23PEG単位、MW1225、Sugma社)を50mgと、c(RGDfK(PEG−PEG))(PEG=8−アミノ−3、6−ジオキサオクタン酸、MW894、Peptides International社、アメリカ)を42mgと、0.1MHClを8mlとをガラスバイアル内で混合した。
【0108】
溶液2(モノマー相):n−ブチルシアノアクリレート(モノマー、Henkel Loctite社、アイルランド)を0.75gと、Miglyol 810N(補助安定剤、Cremer社、ドイツ)を13mgとをガラスバイアル内で完全に混合した。
【0109】
溶液1および溶液2をマグネチックスターラを用いて氷の上に置かれたガラスバイアル内で30秒間混合した。この水中油型エマルションを直ちに氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、60%振幅)。
【0110】
このエマルジョンを室温で一晩中回転(15rpm)させながら重合した。回転させている間に注意深く8mlの0.1MNaOHを加えることによりそのpHを上げた。室温でその溶液をさらに5時間回転(15rpm)し続けた。未反応PEGを取り除くためにその溶液を室温で0.001MHCl(pH3)に対して十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO 12−14000)。透析液を5回交換した。
【0111】
Malvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて、それらの粒子サイズおよびゼータ電位を0.01Mリン酸緩衝液pH7中で求めた。
【0112】
上述の方法により、透析後、0.23の多分散性指数、−2mVのゼータ電位、および2.4%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された117nm(z−平均直径)のターゲットナノ粒子が得られた。
【0113】
実施例6:ミニエマルジョン法を用いて形成された5%RGDターゲットモイエティを含むステルスPIHCA粒子(PEG層内にRGDが埋め込まれた短いPEG)
溶液1(PEG/開始剤/安定化物質およびターゲット配位子):Kolliphor HS 15(15PEG単位、MW960、Sugma社)を50mgと、Brij L23(23PEG単位、MW1225、Sugma社)を50mgと、c(RGDfK(PEG−PEG))(PEG=8−アミノ−3、6−ジオキサオクタン酸、MW894、Peptides International社、アメリカ)を42mgと、0.1MHClを8mlとをガラスバイアル内で混合した。
【0114】
溶液2(モノマー相):イソヘキシルシアノアクリレート(モノマー、Henkel Loctite社、アイルランド)を0.75gと、Miglyol 810N(補助安定剤、Cremer社、ドイツ)を13mgとをガラスバイアル内で完全に混合した。
【0115】
溶液1および溶液2をマグネチックスターラを用いて氷の上に置かれたガラスバイアル内で30秒間混合した。この水中油型エマルションを直ちに氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、60%振幅)。
【0116】
このエマルジョンを室温で一晩中回転(15rpm)させながら重合した。回転させている間8mlの0.1MNaOHを加えることによりそのpHを注意深く上げた。室温でその溶液をさらに5時間回転(15rpm)させ続けた。未反応PEGを取り除くためにその溶液を室温で0.001MHCl(pH3)に対して十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO 12−14000)。透析液を5回交換した。
【0117】
Malvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて、それらの粒子サイズおよびゼータ電位を0.01Mリン酸緩衝液pH7中で求めた。
【0118】
上述の方法により、透析後、0.22の多分散性指数、−1mVのゼータ電位、および2.4%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された140nm(z−平均直径)のターゲットナノ粒子が得られた。
【0119】
実施例7:ミニエマルジョン法を用いて形成された5%RGDターゲットモイエティを含むステルスPOCA粒子(PEG層内にRGDが埋め込まれた短いPEG)
溶液1(PEG/開始剤/安定化物質およびターゲット配位子):Kolliphor HS 15(15PEG単位、MW960、Sugma社)を50mgと、Brij L23(23PEG単位、MW1225、Sugma社)を50mgと、c(RGDfK(PEG−PEG))(PEG=8−アミノ−3、6−ジオキサオクタン酸、MW894、Peptides International社、アメリカ)を42mgと、0.1MHClを8mlとをガラスバイアル内で混合した。
【0120】
溶液2(モノマー相):オクチルシアノアクリレート(モノマー、Henkel Loctite社、アイルランド)を0.75gと、Miglyol 810N(補助安定剤、Cremer社、ドイツ)を13mgとをガラスバイアル内で完全に混合した。
【0121】
溶液1および溶液2をマグネチックスターラを用いて氷の上に置かれたガラスバイアル内で30秒間混合した。この水中油型エマルションを直ちに氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、60%振幅)。
【0122】
このエマルジョンを室温で一晩中回転(15rpm)させながら重合した。回転させている間8mlの0.1MNaOHを注意深く加えることによりそのpHを上げた。室温でその溶液をさらに5時間回転(15rpm)させ続けた。未反応PEGを取り除くためにその溶液を室温で0.001MHCl(pH3)に対して十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO 12−14000)。透析液を5回交換した。
【0123】
Malvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて、それらの粒子サイズおよびゼータ電位を0.01Mリン酸緩衝液pH7中で求めた。
【0124】
上述の方法により、透析後、0.26の多分散性指数、0mVのゼータ電位、および2.6%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された163nm(z−平均直径)のターゲットナノ粒子が得られた。
【0125】
実施例8:ミニエマルジョン法を用いて形成されたターゲットモイエティを含まないステルスPBCA粒子(負のコントロール)
溶液1(PEG/開始剤/安定化物質):Kolliphor HS 15(15PEG単位、MW960、Sugma社)を150mgと、Brij L23(23PEG単位、MW1225、Sugma社)を150mgと、Jeffamine M−1000(MW 1000、Huntsman社)を3mgと、0.1MHClを25mlとをガラスバイアル内で混合した。
【0126】
溶液2(モノマー相):n−ブチルシアノアクリレート(モノマー、Henkel Loctite社、アイルランド)を2.25gと、Miglyol 810N(補助安定剤、Cremer社、ドイツ)を40mgとをガラスバイアル内で完全に混合した。
【0127】
溶液1および溶液2をマグネチックスターラを用いて氷の上に置かれているガラスバイアル内で30秒間混合した。この水中油型エマルションを直ちに氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、60%振幅)。
【0128】
このエマルジョンを室温で一晩中回転(15rpm)させながら重合した。回転させている間25mlの0.1MNaOHを注意深く加えることによりそのpHを上げた。室温でその溶液をさらに5時間回転(15rpm)させ続けた。未反応PEGを取り除くためにその溶液を室温で0.001MHCl(pH3)に対して十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO 12−14000)。透析液を5回交換した。
【0129】
Malvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて、それらの粒子サイズおよびゼータ電位を0.01Mリン酸緩衝液pH7中で求めた。
【0130】
上述の方法により、透析後、0.11の多分散性指数、−3mVのゼータ電位、および4.1%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された121nm(z−平均直径)の非ターゲットナノ粒子が得られた。
【0131】
実施例9:ミニエマルジョン法を用いて形成された2%RGDターゲットモイエティを含むステルスPBCA粒子(PEG層内にRGDが埋め込まれた短いPEG)
溶液1(PEG/開始剤):300mgのJeffamine M−2070(MW2000、Huntsman社)をガラスバイアル内で7mlの蒸留水に溶かし、pHを、5MHClを用いてpH6に調節した。
【0132】
溶液2(モノマー相):n−ブチルシアノアクリレート(モノマー、Henkel Loctite社、アイルランド)を1.5gと、Miglyol 810N(補助安定剤、Cremer社、ドイツ)を27mgとをガラスバイアル内で完全に混合した。
【0133】
溶液3(PEG/開始剤/安定化物質およびターゲット配位子):Brij L23(23のPEG単位、MW1225、Sugma社)を150mgと、c(RGDfK(PEG−PEG))(PEG=8−アミノ−3、6−ジオキサオクタン酸、MW、Peptides International社、アメリカ894)を2.2mgとを8mlの0.1MHClに溶かした。
【0134】
溶液2および溶液3をマグネチックスターラを用いて氷の上に置かれているガラスバイアル内で30秒間混合した。この水中油型エマルションを直ちに氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、60%振幅)。
【0135】
超音波処理直後、このエマルジョンを溶液1を含んでいるガラスバイアルに加え、室温で一晩中回転(15rpm)させながら重合した。8mlの0.1MNaOHを加えることによりそのpHを上げ、回転(15rpm)させ続けながらその重合を室温でさらに5時間継続した。未反応PEGを取り除くためにその溶液を室温で0.001MHCl(pH3)に対して十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO 12−14000)。透析液を5回交換した。Malvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて、それらの粒子サイズおよびゼータ電位を0.01Mリン酸緩衝液pH7中で求めた。
【0136】
上述の方法により、透析後、0.17の多分散性指数、−3mVのゼータ電位、および3.2%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された174nm(z−平均直径)のターゲットナノ粒子が得られた。
【0137】
実施例10:ミニエマルジョン法を用いて形成されたターゲットモイエティを含まないステルスPBCA粒子(コントロール)
溶液1(PEG/開始剤):1gのJeffamine M−2070(MW2000、Huntsman社)を20mlの蒸留水にガラスバイアル内で溶かし、pHを5MHClを用いてpH6に調節した。
【0138】
溶液2(モノマー相):n−ブチルシアノアクリレート(モノマー、Henkel Loctite社、アイルランド)を4.5gと、Miglyol 810N(補助安定剤、Cremer社、ドイツ)を80mgとをガラスバイアル内で完全に混合した。
【0139】
溶液3(PEG/開始剤/安定化物質):Brij L23(23PEG単位、MW1225、Sugma社)を450mgと、Jeffamine M−1000(MW 1000、Huntsman社)を19mgとを23mlの0.1MHClに溶かした。
【0140】
溶液2および溶液3をマグネチックスターラを用いて氷の上に置かれているガラスバイアル内で30秒間混合した。この水中油型エマルションを直ちに氷の上で3分間(6x30秒間隔)超音波処理した(Bransonデジタルソニファイア450CE、60%振幅)。
【0141】
超音波処理直後、このエマルジョンを溶液1を含んでいるガラスバイアルに加え、室温で一晩中回転(15rpm)させながら重合した。pHをpH5にまで上げ、回転(15rpm)させながら室温で重合をさらに5時間継続させた。未反応PEGを取り除くためにその溶液を室温で0.001MHCl(pH3)に対して十分に透析した(Spectra/Por透析膜MWCO 12−14000)。透析液を5回交換した。Malvern Nano Seriesゼータ電位測定装置を用いて、それらの粒子サイズおよびゼータ電位を0.01Mリン酸緩衝液pH7中で求めた。
【0142】
上述の方法により、透析後、0.19の多分散性指数、−4mVのゼータ電位、および5.3%(w/w)のナノ粒子濃度を有するPEG化された178nm(z−平均直径)の非ターゲットナノ粒子が得られた。