【課題を解決するための手段】
【0005】
従って本発明の目的は、単純な装置および方法を入手可能にすることであり、それによって、吸気ガスが肺へと届けられることが可能であり、しかしそれによってまた、二酸化炭素や使用している空気が、十分な量で、肺から能動的に引き出されることも可能であって、同時に、患者のこの換気が、実質的に無限の時間の間可能であることを保証する。さらに、呼気中に生じるずれ応力によって引き起こされる、肺への損傷の問題を減らす、患者の呼気を制御する方法が提案されている。加えて、吸引によって呼気を制御することにより、静脈戻り流を刺激するために特に重要となりうる、陰圧換気が可能となり、またそれによって、蘇生が促進される。
【0006】
この目的は、請求項1の特徴をもつガス流転換要素、および請求項6、請求項7、請求項13でそれぞれ主張されているような方法によって、達成される。ガス流転換要素およびその方法に関する有利な開発および構成は、各従属請求項の主題である。各請求項と明細書の中で個々に明記している(そして、装置あるいは方法のみに関する)各特徴は、技術的に意義のあるあらゆる所望の方法で互いに組み合わせ可能であり、また、発明のさらなる実施例が明記されている、その記述からの例示的な事実により、補充されうる。
【0007】
本発明による特に患者の気道内に連結または挿入可能な管路コネクタからまたは管路コネクタへ選択的にガス流を生じるために、過剰圧力下にある供給ガス、特に各吸気ガス、を用いるためのガス流転換要素では、ガス流転換要素は主要部として設計されており、主要部は、少なくとも流入領域、流動領域、ノズル領域および混合領域、またさらに分岐部を含み、流入領域は、供給ガスに連結するために、圧力コネクタを混合領域に配置された少なくとも一つの閉鎖可能な排出口に連結しており、分岐部は、主要部のノズル領域を管路コネクタに連結しており、ノズル、特に噴射ノズルが、ノズル領域に構成されて配置されていることにより、第一流路に沿って主要部から圧力コネクタへ、続いて流入領域、流動領域、ノズル領域そしてノズルを通って混合領域から開放された状態の排出口へ流れているガス流が、管路コネクタから続いて分岐部、ノズル領域そして混合領域を通って排出口へと流れる第二流路沿ったに分岐部におけるガス流を生じることができる、ガス流転換要素であって、ガス流転換要素は、ガス流が流入領域、バイパスおよび分岐部を介して第三流路に沿って流れることができるように、さらに圧力コネクタと管路コネクタとを連結するバイパスをさらに備え、少なくともバイパスおよび流動領域が少なくとも一つの閉鎖要素によって閉鎖可能となっており、これによりガス流は第三流路に沿ったバイパスを介してノズル領域内のノズルを迂回できるガス流転換要素である。
【0008】
本発明にかかるガス流転換要素は、特に、米国公開第2010/0236551A1号で公開されているガス流転換要素に相当し、その発明によれば、バイパスおよび閉鎖要素が提案されている。このため、米国公開第2010/0236551A1およびその公報全体が本明細書に援用される。
【0009】
バイパスを伴うガス流転換要素の好ましい具体例によれば、少なくとも一つの閉鎖要素は3/2式弁である。3/2式弁とは、三つの管を互いに異なるように連結すべく、二つの位置の間で切換可能な弁である。この場合、圧力コネクタは、流動領域またはバイパスにも、連結されてもよい。同時に、連結されていない管(バイパスあるいは流動領域)は、弁によって遮断されている。
【0010】
ガス流転換要素の、別の好ましい具体化によれば、二つのハサミ弁が少なくとも一つの閉鎖要素として備えられている。一つ(第一)のハサミ弁は、第三流路において、例えばバイパスの領域の中で、配置されているのが望ましい。もう一方(第二)のハサミ弁は、第一流路において、例えば流入領域と流動領域の間において、配置されている。(第二)のハサミ弁は、流出領域と流動領域との間に配置されることにより、第一または第四流路に沿った吸気ガス流を制御できる。さらに、この(第二)のハサミ弁は、第二流路に沿う吸気ガス流を制御できる。もう一方(第一)のハサミ弁は、バイパスにおいて配置されうるため、第三流路に沿った吸気ガスを制御する。
【0011】
“ハサミ弁”という用語は、外部からハサミ弁で柔軟な管を締めつけて閉じる、弁に言及している。(これらは従来技術から知られている。)それゆえに、これらの各弁は、直接には吸気または呼気ガスには接触していないため、汚染されない。ハサミ弁は、必ずしも“開放”および“閉鎖”の状態の間で切り替わるわけではない。徐々に開放、閉鎖することが可能であることが望ましい。さらに、ハサミ弁は、同時に操作できる。例えば、一方を閉じている間、他方を開けることができ、あるいは逆もまた然りである。それぞれのハサミ弁が個々に制御可能なように、各ハサミ弁を制御することが望ましい。
【0012】
一つの好ましい実施例によれば、排出口にも、閉鎖要素としてハサミ弁が備えられている。
【0013】
別の好ましい実施例によれば、排出口あるいは混合領域は、ハサミ弁によって開放/閉鎖/操作されうる。排出口を通るガス流は、混合領域に沿って配置されたハサミ弁によって操作(開放/閉鎖)されることが望ましい。
【0014】
とりわけ、閉鎖要素は、ハサミ弁ではなくピンチ弁である。ピンチ弁は、液体の流れを阻害するためのはさみ効果を用いる、大口径または完全に開放されたタイプの制御弁である。
【0015】
好ましくは、全ての閉鎖要素が個別に、そして必要であれば同時に操作されうる。各々の流路を通る容積流量が閉鎖要素によって制御でき、調整できるように、全ての閉鎖要素が徐々に開放および閉鎖可能であることが望ましい。
【0016】
特に、圧力コネクタにおける空気圧を超える、1ないし8バールの過剰圧力のために、そして、排出口が閉鎖されているために、圧力コネクタと管路コネクタとをバイパスを介して連結している第三の流路は、第一圧力損失デルタP1を有する。さらに、流入領域、流動領域、ノズル領域、そして分岐部を介して、圧力コネクタと管路コネクタとを連結している第四流路は、第二圧力損失デルタP2を有する。ガス流転換要素に関しては、デルタP1とデルタP2との間の下記の関係を満たしている。(それぞれの閉鎖要素は完全に開放、あるいは完全に閉鎖されている。)
デルタP2 > 2xデルタP1
【0017】
特に、第三流路の圧力損失デルタP1は、第四流路を通る圧力損失デルタP2よりもかなり小さい。それゆえ、とりわけ 12l/min[毎分ごとのリットル量]もしくはそれ以上の流量を意図した時、第四流路を通る圧力損失デルタP2は大きいため(おおよそ1.8バールよりも大きい)、吸気ガスは代わりに第三流路を介して供給されうる。
【0018】
約毎分約15リットルの流量では、圧力損失デルタP2が約2バールほどであるということが確立されてきた。毎分約25リットルの流量では、圧力損失デルタP2は3.5バールほどまで増える可能性がある。これは特に、圧縮ガス源が約3バールしか送出できない環境においては、問題がある。(例として、米国の各病院において、通常、約50psi[平方インチあたりのポンド量]、すなわち3.45バールに相当する50psiが供給されている。)なお、圧力損失は、ガス流転換要素の上流に配置されうる、流れを制御する各手段によってさらに増える。この問題は、一日における、病院内の全ての手術室を平行して作動する、ある時点(たとえば朝)においてさらに深刻化する。この場合は、圧縮ガス源から入手できる圧力は、通常よりかなり低い。
【0019】
さらなる好ましい実施例によれば、混合経路およびノズルは、次のような方法で、主要部において構成され配置されている。その方法とは、排出口が開放している状態で第一流路に沿って流れるガス流によって、第二流路に沿って流れるガス流も生じることができ、とりわけ、圧力コネクタにおける雰囲気圧を0.5ないし8バール超える過剰圧力では、容積流量が少なくとも1l/min[毎分ごとのリットル量]、好ましくは、少なくとも2l/minあるいは少なくとも3l/min程であるような方法である。
【0020】
好ましくは、圧力コネクタにおける雰囲気圧を0.5ないし1.5バール超える過剰圧力により、第二流路を通して少なくとも3l/minの容積流量がすでに可能となっている。とりわけ、圧力コネクタにおける雰囲気圧を1ないし5バール超える過剰圧力により、第二流路を通して少なくとも8l/minの容積流量がすでに可能となっている。
【0021】
バイパスは今や、ガス流転換要素を通る第三流路を可能にする。バイパスにより、圧力コネクタを介して供給される吸気ガスが、ノズル領域へと迂回することが可能となる。このように、ノズル領域内にあるノズルによって引き起こされる圧力低下は、第三流路に沿って患者の気道内へと流れるガス流に影響を及ぼさない。それゆえ、吸気ガスは、さらなるガス流量の制限を伴わずに、そして(それに関連した)さらなる圧力低下を伴わずに、バイパスを介して患者の気道へと直接供給されることが可能である。さらに、ガス流転換要素内において起こりうる吸気ガスのあらゆる含有物の結露も、(ほぼ完全に、あるいはまったく完全に)防げる。このため、吸気ガスをより大きな流量で、高圧ガス流として、(バイパスを介して提供されるため、圧力はノズルによって低下しない)患者に供給できる。
【0022】
ガス流転換要素を通して、湿った、そして場合により加熱した吸気ガスもまた、患者へ供給することが可能である。“吸気ガス”という言葉は、一般的には、次のうち少なくとも一つに言及する。
医療用酸素、空気、酸素と空気の混合物、これらのガスを加湿した(水湿)したもの、 これらのガスに麻酔“ガス” (麻酔は、しばしば液体として吸気ガスに利用されるも のであるから、それは“湿気”とも呼ばれている)を加えたもの、そして患者に加えら れるための、他の全ての考えられる種類のガス、および液体/湿気(の液滴)を含む。 それゆえ、吸気ガスはガスであるだけでなく、気相において分解あるいは分散している 液体のような、二相系をも含む。
【0023】
患者の気道に、湿らせた、そして恐らくは加熱した吸気ガスを提供することは、一般的に知られているように、長期的な機械換気にとって重要とみなされている。より長期的な機械換気は、複雑なあるいは大きな外科的処置において、そして集中治療室(ICU)にいる患者たちにとって、しばしば必要である。
【0024】
バイパスは、今や、(加熱および)加湿された吸気ガスを患者へと届けるために使用することが可能である。とりわけ、吸気ガスは、高圧ガス流として、第三流路に沿ったバイパスを介して、患者の気道の中へと供給される。これが、米国公開第2010/0236551A1号で公開されているようなガス流転換要素における、主な改善点である。ここでは、ノズルにより、水気及び/又は麻酔の湿気(又は他の活性化合物/薬物(=“薬剤”)の湿気)を意図したように投与することが難しくなる。これは、ノズル内における大きな圧力低下は、結露を引き起こすからである。吸気ガスはそれゆえ厳密に監視された圧力で、第三流路に沿って供給されて、同時に、供給された薬品/麻酔は、損失あるいは遅れを伴わずに、患者の気道の中へと確実に前進していく。バイパスはとりわけ、圧力コネクタを介してガス流転換要素に入るガス流が既に湿気あるいは薬剤を供給している場合の適用にとって、都合が良い。
【0025】
具体的に、(バイパスに沿った第三流路を流れている)高圧ガス流は、患者のウィーニング処置に使用される。
【0026】
ウィーニングとは、ここでは機械換気を中止する処置のことであり、同時に患者の自発呼吸が確保されることを意味する。患者は、自発呼吸を制御できる力を取り戻さなくてはならないため、このことは、機械換気の中止の後に、患者を注意深く監視しなくてはならないという問題に言及する。ウィーニングの過程は、当技術分野で一般的に知られている。
【0027】
ガス流転換要素は、具体的に、ウィーニング処置を支援するために設計されている。管路コネクタに連結し、患者の気道の中へと挿入し患者の換気に使用されている管腔を患者の気道から取り外す前に、高圧ガス流を、バイパスを介して第三流路に沿って患者に供給する。このようにして、ガス流転換要素のノズル領域を迂回させることにより、ノズルにおける圧力低下は、患者へ供給されるように意図されたガス流の圧力を低下させない。
【0028】
さらに、管腔の周囲の患者の気道が、少なくとも部分的に(好ましくは、完全に)膨張したカフによって遮断されるように、(管路コネクタに接続され、患者の気道の中へと挿入されている)管腔は、カフを備えることが提案されている。この場合、吸気ガスを用いた患者の換気は、ガス流転換要素を介して行われ、カフは、高圧ガス流が第三流路に沿ったバイパスを通じて患者へと供給される時に、収縮する。この場合、大量の吸気ガスがカフを迂回して、患者の気道の外側へと出ることができる。
【0029】
とりわけ、管腔周りの患者の気道が少なくとも部分的に(好ましくは、完全に)膨張したカフによって遮断されるように、管腔は、カフを備える。患者の換気は、ガス流転換要素を介して行われ、カフは、高圧ガス流が第三流路に沿ったバイパスを介して患者へと供給される時に膨張する。これは特に、ある容量の吸気ガス流を利用する際に必要があるが、第四流路を介して(ノズル領域を介して)では、このガス流を得るのに十分な、入手可能な圧力がない場合に利点がある。必要とされる、吸気ガスの、より大容量のガス流は、第三流路を介して導かれる。圧力コネクタにおいて入手可能な、より低い圧力は、第二流路を介して、低減した呼息ガス流量の吸気ガス流を誘導するために、使用される。具体的に、これは、吸気時間/呼息時間の割合がおよそ1:2を意図された場合の、換気の各ケースに適用できる。これは、例えば、吸気が20l/minで2秒間行われ、呼息が10l/minで4秒間行われることを意味する。この場合、呼息を支援するために必要とされる圧力は減少しうるから、呼気の間に流量が減少することは、しばしば意図されている。
【0030】
ガスあるいはガス混合物に対して薬を加えることは、必要となりうる。この目的のために、閉鎖可能な側路が、とりわけ分岐部の領域の中に、好ましくはバイパスと分岐部と管路コネクタとの接合部の間に、配置されうる。このようにして、例えば、アドレナリンや、局所麻酔や、去痰薬等(以降“薬剤”と呼ぶ)が細かく微粒化された形で、急速に流れる吸気ガスあるいはガス混合物を手段として、患者へと運ばれることが可能である。このようにして、薬を広い表面領域にわたって気道の中へと効率的に分配することができ、そしてより急速に、患者によって吸収されるのである。それに加え、あるいはその代わりに、水湿あるいは液体状の水は、分岐部を通して流れる吸気ガス流を湿らせるために、ガス流へと供給されることが可能である。
【0031】
別の方法として、側路を、分岐部の下流(第三あるいは第四流路を考慮している)、あるいは管路コネクタの下流にも、設けることができる。側路は、管路コネクタに接続されている管腔へ、直接備えられることが望ましい。
【0032】
側路の中に別の閉鎖要素を組み込むことが望ましい。閉鎖要素は弁でも良い。
【0033】
あらゆる薬剤が側路を介して加えられる場合には、弁は、バイパスおよび流出領域を閉鎖するために備えられている閉鎖要素に動作を合わせる(あるいは考慮して動作する)ことができるのが望ましいであろう。とりわけ、いったん、排出口が開き、側路における閉鎖要素が閉じ、流出領域における閉鎖要素が開けば、側路における閉鎖要素は閉じるであろう。この場合、呼気ガスは第二流路に沿って流れる。第二流路に加えられるいずれの薬剤も、外側へと開いている排出口を介して以外には、患者へと送られることははい。
【0034】
側路はまた、側方流通口カプノメトリ路を連結することを可能にする。この側方流通口カプノメトリ路によって、二酸化炭素濃度を測定するための第二流路に沿った呼気ガス流から、側路を介して、少量のガスのサンプルを、除去することが可能である。ガスのサンプルは、サンプルがカプノグラフの中へと導かれるように、吸引圧縮機/ポンプを使用して除去される。
【0035】
カプノグラフを組み込むことにより、進行中の換気(時間にわたって減少または増加する換気)効率を求めることが可能となる。
【0036】
側路を介してガス容積流量計または圧力計を直接または間接的に取り付けることも可能である。
【0037】
別の特別な実施例によれば、(当技術分野において一般的に知られている)主流カプノグラフは、バイパスと分岐部と管路コネクタでの連結部の間で配置できることが望ましい。
【0038】
典型的な主流カプノグラフは、ここでは、例えば、少なくとも第二流路が通じている分岐部または管腔等の、第二流路における呼気回路(主流)に配置されている特別な材料でできている細いチューブを含んでいる。細いチューブを通して赤外線光が発せられ、これにより、この細いチューブ内のガス流の回折を測定して二酸化炭素濃度に換算する。吸収された光量はガス流内に存在する二酸化炭素分子の数に依る。
【0039】
主流カプノグラフの主な利点は、カプノグラフが呼気と直接接することがないことであり、よって汚染の危険性およびシステムの破損の危険性がない。側方流通口カプノメトリ管路は、高圧ガスによって破損することがある。これは、例えば、各流路のどこかで障害がある時に、偶然に起きることがある。
【0040】
好適な実施例によれば、側方流通口カプノメトリ管路の吸引圧縮機/ポンプは、患者の気道を少なくとも部分的に封止するために設けられて、管腔の外側に配置されているカフの収縮に使用できる。管腔は、管路コネクタに連結されており、また患者の気道に挿入されている。気道の過圧が生じた場合、この仕組みは、カフを収縮させてガスを管腔およびガス流転換要素を迂回して、外へ排出させる、緊急措置として機能できる。この緊急カフ収縮措置は、特に下記に記載の動作および換気方法の特徴として組み入れることができる。
【0041】
具体的に、ガス流転換要素は分岐部の領域において幾つかの側路を含んでいる。
【0042】
標準的な部品との耐圧性のある連結を可能とするために、圧力コネクタおよび/または管路コネクタは、また側路にも対応すれば、ルーアーロックとして設計されていることが望ましい。
【0043】
本発明によるガス流転換要素は、吸気が第三流路か第四流路のいずれを介して患者の気道へ供給されるかの選択を可能にする。さらに、第一の流路に沿って容積流量が供給されている場合に、第二流路を介して各ガスを患者の気道から除去することができる。
【0044】
本発明によるガス流転換要素は、完全に自動化されたシステムにおいて機能するように特別に設計されている。具体的に、呼気(および第一流路を介して供給される吸気)が外気へ押し出されないよう、排出口を換気システムに連結できる。さらに、例えば、麻酔の湿気が特定(一定)の濃度に維持されるように、排出口を介して流れるこれらの各ガスは、閉ループ換気システムにおいて使用できる。
【0045】
具体的に、ガス流転換要素を完全自動換気システムに連結できる。この場合、ガス流転換要素は患者から少し離れて動作する。この場合、少し離れてとは、管路コネクタ(管腔からガス流転換要素への連結部)と患者へ挿入される点との間の管腔の長さは少なくとも40cm(センチメートル)である。
【0046】
ガス流転換要素は、その各流路(ガス流転換要素のうち、ガス流転換要素を流れるガスと直接接触する全ての部分)が直接患者の気流と接触するため、使い捨て部品として設計されてもよい。この場合、なるべく多くの部分が患者の呼気流と直接接触しないようにすることが好ましい。例えば、上記にて説明しているように各バルブは、ハサミ弁やピンチ弁として設計されてもよい。ハサミ弁やピンチ弁は、流路を外側からつまむ。このため、ガス流転換要素の少なくとも各流路が柔軟性を持っていてハサミまたはピンチ弁でつまむことが可能となっている。
【0047】
以下の記載において、ハサミ弁とは、ハサミ弁とピンチ弁の両方を含む。
【0048】
好ましくは、流入領域、流動領域および/またはバイパスを操作/閉鎖/開放するための弁は、(使い捨て)ガス流転換要素の一部である。
【0049】
好適な実施例によれば、HME(熱湿交換器フィルタ)フィルタが、管路コネクタと患者との間に配置されている。HMEフィルタは、細菌およびウィルスが通ることを妨げ、これによりガス流転換要素を廃棄または洗浄することなく相当数の患者に使用できる。
【0050】
ガス流転換要素が、粘液、血液、他の液体および(組織)粒子等のあらゆるごみが上から下へと(重力の方向に)動く、少なくとも連結管および/またはバイパスおよび/または流動領域が垂直位置に配置されている完全自動換気システムに連結されている場合にさらに有利である。このようにすれば、患者からの呼気が通るガス流転換要素の流路管から生じる、自動換気システムの液滴やその他による汚染を防止することができる。
【0051】
好適な実施例によれば、連結管および/バイパスおよび/または流動領域は、それぞれ最大6mm(ミリメートル)、好ましくは、最大4mm、特に最大2.5の平均(または最大)内径を有する。
【0052】
ガス流転換要素は、患者の直近で動作しても良い。この場合直近とは、管路コネクタ(管腔からガス流転換要素への連結部)と患者へ挿入される点との間の管腔の長さが最大40cm(センチメートル)であることを意味する。
【0053】
別の好適な実施例によれば、少なくとも、流入領域、流動領域および/またはバイパスを操作/閉鎖/開放のための弁は、ガス流転換要素の外に配置されている。
【0054】
好ましくは、ガス流転換要素は、バイパスと、バイパスと連結した、(例えば、完全自動換気システムの一部としての)ガス流転換要素の外に配置されている流動領域を含んでいる。
【0055】
上記に記載しているガス流転換要素に関連した特徴は、それらの応用は制限されていない。これらは、ガス流転換要素の動作方法、患者の換気方法または、以下に記載の呼気の制御方法と組み合わせてもよく、その逆の組み合わせも同様である。
【0056】
本発明はさらに、管路コネクタからまたは管路コネクタへのガス流を選択的に生じるための、具体的に、患者内の密閉あるいは部分的に密閉された領域でのガスを交換するために、患者の気道に挿入できる管腔または複数の管腔を連結するための、本発明によるガス流転換要素の動作方法に関する。本方法は、さらに患者の気道の部分的な領域のみでの換気の場合にも適用できる。ガス圧、特に吸気ガス圧が圧力コネクタに加えられ、第三流路に沿った管路コネクタへの高圧ガス流を生じるために、排出口および流動領域が閉じている。管路コネクタから排出口へ向かう方向への第二流路に沿ったガス流を生じるために、排出口および流動領域を開放してバイパスが閉じている。
【0057】
本発明はさらに、本発明によるガス流転換要素を用いて患者を換気または患者の呼吸を支援する方法に関し、本方法において管路コネクタが、患者の気道に挿入される管腔、針、カテーテルまたは複数の管腔、のいずれかに取付けられている。圧力コネクタは圧縮ガス源、特に呼気ガス源に連結されており、雰囲気圧より0.5から8バール高い過圧が調整されている。排出口およびバイパスが閉じていると、ガスは第四流路を介して患者の気道内へと通り、排出口が開放されていてバイパスが閉じていると、ガスは第二流路に沿った管路を介して患者の気道から送り出される。流動領域および排出口が閉じていて、バイパスが開放されていると、高圧ガス流が第三流路に沿ったバイパスを介して患者の気道内へと送られる。この換気方法は、特にウィーニング処置の際に行われる。
【0058】
具体的に、上記の各方法において、排出口は少なくとも、一定間隔で、また少なくとも気道から吸引されたガスまたはガス混合物の特に二酸化炭素含有量の、測定特性値を確実に測定できるように十分に長い間開放されている。この点に関し、ガス流転換要素は、分岐部の側方アクセス部または上記に記載の通り分岐部へ直接取付けられている、測定装置(好ましくは、側方流通口または主流カプノグラフ)を含んでいる。
【0059】
具体的に、患者はガス流転換要素を介してのみ(および完全に)換気されている。これは、全ての容積ガス流がガス流転換要素を通じて患者からまたは患者へと流れることを意味する。具体的に、患者の気道に供給されている吸気の全容積ガス流が、第四流路および/または第三流路を介して供給されている。さらに、患者の気道から呼気の全容積ガス流がガス流転換要素を通る第二流路を介して送られる。
【0060】
特定の応用例においては、ガス流転換要素によるさらなる支援なく、呼気の全てあるいは一部を患者の気道から流出させることを可能にすることが好ましいこともある。この場合、呼気はガス流転換要素を通ることなく、患者の気道から直接外へ流れることができる。
【0061】
具体的に、患者の気道内に挿入されて管路コネクタへ連結された管腔が、管腔周りの患者の気道が少なくとも部分的に膨張したカフによって遮られるように、カフを備えることが提案されている。患者の気道からの呼気がガス流転換要素を迂回することにより管腔およびカフを迂回して外へ流出できるように、第二流路に沿った管路コネクタを介して患者の気道からガスを送り出すときにカフが収縮して、患者の換気がガス流転換要素を介して行われることが提案されている。この方法は、患者のウィーニングの際に有利に適用される。このようにして、患者は徐々に自主的な呼吸動作に再び慣れることができる。
【0062】
具体的に、患者の気道内に挿入されて管路コネクタに連結される管腔は、最大50mm
2、好ましくは最大15mm
2、具体的には最大10mm
2または最大7mm
2の(ガス流が導かれる)断面積を有する。
【0063】
具体的に、管腔の長さ(ガス流転換要素での管路コネクタと患者内に配置される管腔の末端との間の距離)は、少なくとも60cm、好ましくは少なくとも100cmである。
【0064】
ガス流転換要素を用いると、単一の管腔を通して患者を完全に換気することが可能である。非常に小さな(小さな断面積)管腔を介して完全換気を行えることが特に有利である。さらに、(断面積が50mm
2またはそれより小さい)小さな管腔を使用することにより、管腔内で活用されていいない空間(概ね管路コネクタと患者内に配置されている管腔の末端との間での管腔の体積)が小さくなる。管腔内で活用されていない空間が小さいため、高頻度(1分間で100呼吸まであるいはそれ以上)で低流量の換気(2l/minより小さい)も行うことができる。
【0065】
具体的に、ガス流転換要素およびガス流転換要素に連結されている管腔を通る流路で起こり得る詰まりを効果的に防止できるために、ガス流転換要素の利用は有利となる。これは、少なくとも各流路の各部分を通じてガス流が両方向に流れるため、血液、組織またはその他に起因する障害物を効果的に除去できるからである。
【0066】
さらに、患者の換気で呼気段階が制御される、呼気の制御方法が提案されている。本方法によれば、呼気容量ガス流は、呼気ガス流の圧力測定値に基づいて規制されている。本方法は、少なくとも以下を含んでいる。
1.呼気ガス流の(静的および/または動的)圧力を測定するステップ
2.呼気容量ガス流を規制するステップ
ここで、ステップ2はステップ1における測定値に基づいて行われる。
【0067】
具体的に、呼気の制御方法は本発明によるガス流転換要素を用いて、および/または、ガス流転換要素の動作および患者の換気方法の一部として行われる。好ましくは、呼気の制御方法は、患者からの呼気容積ガス流を制御可能とするどのような換気装置を用いても行うことができる。好ましくは、本方法は、呼気ガス流が管腔と換気装置(管腔と膨張カフを組み合わせたガス流転換要素など)のみを通る呼気段階に関する。
【0068】
本方法は、呼気の第一段階では通常、その後再び吸気が始まるまでまたは引き起こされるまで、その後減少する大きな容積ガス流が生じるという問題を考慮して適用される。この呼気段階の始めにおける呼気容積ガス流の高い数値は患者の肺における呼気ずれ応力に繋がることがある。特に、この段階における換気でによって患者がずれ応力の危害を受けることがある。
【0069】
具体的に、本方法は呼気の第一段階における呼気容積ガス流を低減させることを対象としている。特に呼気容積ガス流の規制のために、呼気容積ガス流および/または呼気容積ガス流の流路内での圧力を、測定している(ガス流転換要素の場合、第二流路に沿った容積ガス流、または第二流路)ことを提案する。測定圧力値に基づいて呼気容量ガス流が規制(閉鎖要素を介したガス流転換要素および/または圧力コネクタにて与えられる圧力の場合)される。
【0070】
具体的に、本方法は、換気の呼気段階における、呼気容量ガス流および/または患者の肺(の換気される部分)内の圧力の均等(均一)な減少を確実にするために適用される。
【0071】
好ましくは、本方法のステップ1および2が繰り返し(反復して)行われるために、呼気容量ガス流の圧力を常時監視および常時規制できる。
【0072】
好ましくは、呼気の制御方法は、管腔およびカフと組み合わせて(バイパスを有するまたは有しない)ガス流転換要素で行われる。ガス流転換要素は、カフを用いて気道を外部から封鎖している患者の全換気を一つの管腔(呼気および吸気)を介して可能にする。好ましくは、管路コネクタと連結して患者の気道に挿入されているこの管腔の内径は小さく、例えば、6mm以内、好ましくは、4mm以内、特に、2.5mm以内および/または断面積が最大50mm
2、好ましくは、最大15mm
2、特に最大10mm
2または最大7mm
2である。この場合、呼気ガス流路(第二流路)に沿った流れ抵抗が、大きいため、呼気の第一段階でも呼気容量ガス流が十分に制限される。実際、このように流れ抵抗が大きい場合、第二流路に沿った呼気容量ガス流は第一流路に沿ったガス流に支援されなければならない。このようにして、各ずれ応力が生じるのを防ぐことができる。