(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371392
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】並行流蓄熱式石灰焼成炉内で炭酸塩岩を焼成し冷却するための方法、および並行流蓄熱式石灰焼成炉
(51)【国際特許分類】
C04B 2/12 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
C04B2/12
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-532259(P2016-532259)
(86)(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公表番号】特表2016-530201(P2016-530201A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2014002056
(87)【国際公開番号】WO2015018504
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年7月24日
(31)【優先権主張番号】102013108410.9
(32)【優先日】2013年8月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516031325
【氏名又は名称】メルツ オフェンバウ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Maerz Ofenbau AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ピリンガー,ハンネス
【審査官】
手島 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−162389(JP,A)
【文献】
特開昭57−175754(JP,A)
【文献】
HANNES PIRINGER,SCHUTTGUTBEWEGUNG, STROMUNGSVERHALTEN UND TEMPERATURVERTEILUNG IN DER KUHLZONE 以下備考,VEITSCH-RADEX RUNDSCHAU 1/1999,1999年 1月31日,PAGE(S):1 - 13,EINES 800 UND 1000 TATO MAERZ-REGENERATIV-KALKSCHACHTOFENS,URL,http://www.maerz.com/downloads/downloads_publications/piringer3.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
F27B 1/00− 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成用シャフトとしてかつ蓄熱用シャフトとして交互に動作させる2つのシャフト(1、2)を有する並流蓄熱式石灰焼成炉内で炭酸塩岩(3)を焼成し冷却するための方法において、
a.前記炭酸塩岩(3)が、各シャフトの予熱・焼成帯(4)として構成された上部領域に導入され、かつそこで予熱されてか焼され、
b.前記か焼された炭酸塩岩(3)がその後、冷却帯(9)として構成されかつ各シャフトの中央変位体(10、11)を有する下部領域内で冷却され、
c.冷却された、前記か焼された炭酸塩岩がその後、各シャフト(1、2)に割り当てられた吐出装置(12、13)を介して吐出され、ならびに
d.冷却空気(21、22)が、前記か焼された炭酸塩岩を冷却するために前記冷却帯(9)に導入され、前記冷却空気の一部が前記吐出装置(12、13)の領域に導入され、かつ前記冷却空気の一部が前記変位体(10、11)を介して導入され、
前記焼成用シャフトに送り込まれるべき前記冷却空気量が、変位体を介して90〜100%の程度でかつ前記吐出装置の前記領域内では10%以下の程度で送り込まれ、その一方で、前記蓄熱用シャフトに送り込まれるべき前記冷却空気量が、前記吐出装置の前記領域内では90〜100%の程度でかつ前記変位体を介して10%以下の程度で送られることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記2つのシャフト(1、2)に送り込まれる前記冷却空気の20%〜50%が前記焼成用シャフトに送られ、かつ前記残部が前記蓄熱用シャフトに送られることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記2つのシャフト(1、2)に送り込まれる前記冷却空気の30%±10%が前記焼成用シャフトに送られ、かつ前記残部が前記蓄熱用シャフトに送られることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記吐出装置(12、13)の前記領域に送り込まれる前記冷却空気が、前記か焼されかつ冷却された炭酸塩岩によりこの領域内に形成された材料のダム(3a、3b)を介して送り込まれることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記吐出装置(12、13)の前記領域に送り込まれた前記冷却空気が、上方にかつ前記シャフトの中央に流れることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記変位体(10、11)を介して送り込まれた前記冷却空気が、上方にかつ前記シャフトの外側境界に流れることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記吐出装置(12、13)は、前記か焼されかつ冷却された炭酸塩岩の60〜80%が外方に吐出されかつ前記残りが内方に吐出される状態で、前記か焼されかつ冷却された炭酸塩岩を径方向外方および径方向内方に吐出することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、97%超のCaCO3を有する炭酸塩岩(3)のか焼の場合には、冷却空気が、0.70Nm3/kgのか焼された炭酸塩岩よりも少ない全量で送り込まれることを特徴とする方法。
【請求項9】
焼成用シャフトとしてかつ蓄熱用シャフトとして交互に動作させる2つのシャフト(1、2)を有する、請求項1に記載の炭酸塩岩(3)を焼成し冷却するための並流蓄熱式石灰焼成炉において、
a.各シャフトの前記上部領域が、導入された炭酸塩岩を予熱してか焼するための予熱・焼成帯(4)として構成され、
b.各シャフトの前記下部領域が、前記か焼された炭酸塩岩を冷却するための冷却帯(9)として構成され、
c.前記冷却帯(9)が各々、前記それぞれの冷却帯に開口するガス出口開口(10a、11a)を有する中央変位体(10、11)を有し、
d.冷却された前記か焼された炭酸塩岩を吐出するための、前記冷却帯(9)に隣接する吐出装置が(12、13)が設けられ、
e.前記変位体を介して冷却空気を送り込むために、第1の冷却空気導管(14)が、前記一方のシャフト(1)の前記変位体(10)の前記ガス出口開口(10a)に連結され、かつ、第2の冷却空気導管(15)が、前記他方のシャフト(2)の前記変位体(11)の前記ガス出口開口(11a)に連結され、
f.第3の冷却空気導管(16)が前記一方のシャフト(1)の前記吐出装置(12)の前記領域に開口し、かつ、第4の冷却空気導管(17)が前記他方のシャフト(2)の前記吐出装置(13)の前記領域に開口し、
g.前記焼成用シャフトに送り込まれるべき前記冷却空気量が、前記変位体(10、11)を介して90〜100%の程度でかつ前記吐出装置(12、13)の前記領域内では10%以下の程度で送り込まれ、その一方で、前記蓄熱用シャフトに送り込まれるべき前記冷却空気量が、前記吐出装置の前記領域内では90〜100%の程度でかつ前記変位体を介して10%以下の程度で送り込まれるように、制御装置(24)が、前記第1および/または第2の冷却空気導管(14、15)を介してかつ更に第3および/または第4の冷却空気導管(16、17)を介して送り込まれるべき前記冷却空気量を制御するために設けられることを特徴とする並流蓄熱式石灰焼成炉。
【請求項10】
請求項9に記載の並流蓄熱式石灰焼成炉において、前記冷却帯(9)の前記下端部の直径が、前記予熱・焼成帯(4)の前記下端部の直径の1.1〜1.5倍の大きさであることを特徴とする並流蓄熱式石灰焼成炉。
【請求項11】
請求項9に記載の並流蓄熱式石灰焼成炉において、前記制御装置(24)により制御できるフラップシステム(18)が、前記第1乃至第4の冷却空気導管(14〜17)を介して前記冷却空気量を調節するために設けられることを特徴とする並流蓄熱式石灰焼成炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成用シャフトとしてかつ蓄熱用シャフトとして交互に動作させる2つのシャフトを有する並流蓄熱式石灰焼成炉内で炭酸塩岩を焼成し冷却するための方法に関し、かつ更に並流蓄熱式石灰焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば独国特許発明第3038927C2号明細書で公知であるかかる焼成炉は、他のシャフトが蓄熱用シャフトとして動作する一方で焼成が焼成用シャフト内でのみ行われる状態で、周期的に動作する。例えば、10〜12分かかるサイクル中に、焼成されるべき炭酸塩岩が両シャフトにおける吐出装置を介して連続して吐出される。柱状の材料は、シャフト内を均一に降下する。次いで、先に焼成用シャフトとして動作させていたシャフトが蓄熱用シャフトとなり、次に、先に蓄熱用シャフトとして動作させていたシャフトが焼成用シャフトとなるように焼成炉の運転が変更される。焼成炉への炭酸塩岩の投入は、運転の変更中または蓄熱用シャフトでの焼成工程中に行われる。2つのシャフトの下部領域において、上部領域内でか焼された炭酸塩岩を冷却するための冷却帯は、この目的で使用される冷却空気の一部が吐出装置の領域に送り込まれかつ一部が各冷却帯内に配設された中央変位体を介して送り込まれる状態で設けられる。
【0003】
最終生成物の品質は、か焼された炭酸塩岩がシャフトの幅にわたって非常に均一に下方に降下することと、非常に均一な冷却が確実に行われるように冷却帯が構成されることとに決定的に依存する。上記の並流蓄熱式石灰焼成炉は、Hannes Piringerによる記事“Schuettgutbewegung,Stroemungsverhalten und Temperatu−rverteilung in der Kuehlzone eines 800 und 1000 tato Maerz−Regenerativ−Kalkschachtofens”,Veitsch−Radex Rundschau 1/1999,pages 1 to 15により公知である。加えて、冷却帯と吐出装置の最適な構成に関する研究が詳細に提示されている。
【0004】
特に小片の岩(例えば、10〜50mm)の場合には、焼成された材料がもはや冷却帯の外縁において降下せず、結果としてより大きな蓄積が形成されるので、並流蓄熱式石灰焼成炉の場合には、冷却帯における傾斜角が非常に急峻でなければならないことが工業的な実施から公知である。それゆえ、メルツ式微細岩焼成炉の場合には、82°よりも大きな傾斜角を有する円筒形または僅かに円錐形の冷却帯に変更されている。これにより材料蓄積の問題を解消することができたが、この構造の結果として他の欠点が生じる。この構造のため、冷却帯の下端部の出口直径が著しく大きくなり、その結果、焼成物を均一に冷却するために冷却帯内に冷却空気を均一に分配することが困難である。しかしながら、焼成物の不均一な冷却の結果、特に、焼成物がシャフトの中央において十分に冷却されず、その結果として、吐出装置に損傷が生じる可能性がある。これに対して、焼成物が、外部領域内、特に冷却帯の上部領域内で大いに冷却されすぎると、その結果として、焼成物との燃焼排ガスの不要な反応が生じる可能性があり、かつ焼成物が燃焼排ガスにより再びCO
2に富んだものとなり、かつそれにより生成物の品質が損なわれる。それゆえ、局部過熱を回避するために、焼成物を冷却するための一定量の冷却空気を増加させているが、このことは同様に、熱消費量に悪影響を及ぼす、排ガス温度の増加をもたらす。加えて、中央変位体の特に下部分が拡大され、これにより冷却空気分配を改善する、ことが提案されている。大きな変位体の場合には、その先端が実質的に焼成帯の下端部に達する。しかしながら、大きな変位体は、二重壁で作られなければならずかつ焼成炉が運転していないときでさえも空気により継続的に冷却されなければならないので、非常に複雑でかつコストがかかる。
【0005】
それゆえ、最大でも冷却帯の半分の高さまでしか延びていないより小さな変位体に再び変更されている。非常に良好な冷却作用を達成するために、冷却空気の大部分、通常少なくとも85%が、吐出装置を介して導入されており、残りの15%以下が中央変位体を介して導入されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、非常に少量の冷却空気を使用して並流蓄積式石灰焼成炉の冷却帯内でのより一層均一な冷却を達成することであった。
【0007】
この目的は、請求項1および9の特徴により本発明に従って達成される。
【0008】
炭酸塩岩を焼成し冷却するための方法が、焼成用シャフトとしてかつ回生用シャフトとして交互に動作させる2つのシャフトを有する並流蓄熱式石灰焼成炉内で行われ、
a.炭酸塩岩が、各シャフトの予熱・焼成帯として構成された上部領域に導入され、かつそこで予熱されてか焼され、
b.か焼された炭酸塩岩がその後、冷却帯として構成されかつ各シャフトの中央変位体を有する下部領域内で冷却され、
c.冷却された、か焼された炭酸塩岩がその後、各シャフトに割り当てられた吐出装置を介して吐出され、ならびに、
d.冷却空気が、か焼された炭酸塩岩を冷却するために冷却帯に導入され、冷却空気の一部が吐出装置の領域に導入され、かつ冷却空気の一部が変位体を介して導入され、
e.焼成用シャフトに送り込まれるべき冷却空気量が、変位体を介して90〜100%の程度でかつ吐出装置の領域内では10%以下の程度で送り込まれ、その一方で、蓄熱用シャフトに送り込まれるべき冷却空気量が、吐出装置の領域内では90〜100%の程度でかつ変位体を介して10%以下の程度で提供される。
【0009】
上記の方法に従って炭酸塩岩を焼成し冷却するための本発明の並流蓄熱式石灰焼成炉が、焼成用シャフトとしてかつ蓄熱用シャフトとして交互に動作させる2つのシャフトを有し、
a.各シャフトの上部領域が、導入された炭酸塩岩を予熱してか焼するための予熱・焼成帯として構成され、
b.各シャフトの下部領域が、か焼された炭酸塩岩を冷却するための冷却帯として構成され、
c.冷却帯が各々、それぞれの冷却帯に開口するガス出口開口を有する中央変位体を有し、
d.冷却された、か焼された炭酸塩岩を吐出するための冷却帯に隣接する吐出装置が設けられ、
e.変位体を介して冷却空気を送り込むために、第1の冷却空気導管が一方のシャフトの変位体のガス出口開口に連結され、かつ、第2の冷却空気導管が他方のシャフトの変位体のガス出口開口に連結され、
f.第3の冷却空気導管が一方のシャフトの吐出装置の領域に開口し、かつ、第4の冷却空気導管が他方のシャフトの吐出装置の領域に開口し、
g.焼成用シャフトに送り込まれるべき冷却空気量が、変位体を介して90〜100%の程度でかつ吐出装置の領域内では10%以下の程度で送り込まれ、その一方で、蓄熱用シャフトに送り込まれるべき冷却空気量が、吐出装置の領域内では90〜100%の程度でかつ変位体を介して10%以下の程度で送り込まれるように、制御装置が、第1および/または第2の冷却空気導管を介してかつ更に第3および/または第4の冷却空気導管を介して送り込まれるべき冷却空気量を制御するために設けられる。
【0010】
冷却空気量分配のこの新たな概念は、冷却帯内において非常に均一な冷却をもたらし、その結果、冷却帯における等温線がほぼ水平となる。このことは、第1に、非常に均一でかつ高い生成物品質を可能にし、かつ第2に、吐出装置が過度に高温の炭酸塩岩により損傷を受けるのを防止する。更に、冷却空気が導入される新たな方式は、生成物の冷却に必要とされる冷却空気の全量を低減する。97%超のCaCO
3含有量を有する炭酸塩岩のか焼の際に、冷却空気の全量は、0.7Nm
3/kgのか焼された炭酸塩岩よりも少ない、好ましくは0.65Nm
3/kgのか焼された炭酸塩岩よりも少ない。0.75Nm
3/kgのか焼された炭酸塩岩よりも多い冷却空気量が、特に小岩焼成炉(微細岩焼成炉)の場合に、これまでは通常必要であった。
【0011】
本発明の更なる実施形態は、従属請求項の主題である。
【0012】
本発明の更なる実施形態では、2つのシャフトに送り込まれる冷却空気の20〜50%が焼成用シャフトに送られ、かつ残部が蓄熱用シャフトに送られる。2つのシャフトに送り込まれる冷却空気の30%±10%が焼成用シャフトに送られかつ残部が蓄熱用シャフトに送られることが好ましい。本発明の基礎となる実験では、全冷却空気の約1/3が焼成用シャフトに送られかつ全冷却空気の約2/3が蓄熱用シャフトに送られた場合に最良の結果を達成できることが判明している。
【0013】
吐出装置の領域に送り込まれる冷却空気は、有利には、か焼されかつ冷却された炭酸塩岩によりこの領域内に形成された材料のダムを介して送り込まれる。本発明の更なる実施形態では、吐出装置の領域に送り込まれた冷却空気は、基本的に上方にかつシャフトの中央に流れなければならない。これに対して、変位体を介して送り込まれた冷却空気は、基本的に上方にかつシャフトの外側境界に流れなければならない。
【0014】
炭酸塩岩の均一な冷却はまた、吐出装置の動作モードにより補助され、この吐出装置は、好ましくは、か焼されかつ冷却された炭酸塩岩の60〜80%が外方に吐出されかつ残りが内方に吐出される状態で、か焼されかつ冷却された炭酸塩岩を径方向外方および径方向内方に吐出する。
【0015】
冷却帯は、好ましくは円筒形または僅かに円錐形であり、かつ82°よりも大きな傾斜角を有する。良好な冷却を確実に行うために、冷却帯の下端部の直径はまた、予熱・焼成帯の下端部の直径の1.1〜1.5倍の大きさであるべきである。
【0016】
第1の冷却空気導管乃至第4の冷却空気導管を介しての冷却空気量の調節は、好ましくは、制御装置により制御できるフラップシステムによって実現される。
【0017】
以下の説明および図面の助けを借りて、本発明の更なる利点および実施形態を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の並流蓄熱式石灰焼成炉の概略図である。
【
図4】
図4は、2つのシャフトの冷却帯の領域内の流れ経路の概略図である。
【
図5】
図5は、冷却帯の1つにおける温度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
炭酸塩岩を焼成し冷却するための
図1に示す並流蓄熱式石灰焼成炉は、焼成用シャフトとしてかつ蓄熱用シャフトとしてそれ自体公知である方式で交互に動作させる2つのシャフト1、2を有する。例えば、10mm〜50mmまでの粒径範囲を有する炭酸塩岩3は、各シャフトの予熱・焼成帯4として構成された上部領域に導入される。更に、燃料5は燃料導管6を介して導入され、かつ、燃焼空気7は、少なくとも1つの燃焼空気導管8を介して導入される。燃焼空気7を伴う燃料5の燃焼は、予熱・焼成帯の領域内において炭酸塩岩3を予熱してか焼する。か焼された炭酸塩岩はその後、(冷却帯9として構成されかつ各シャフトの中央変位体10、11を有する)下部領域内に入り、そこで冷却される。冷却された、か焼された炭酸塩岩はその後、各シャフトに割り当てられた吐出装置12、13を介して吐出される。炭酸塩岩3は、それゆえ重力の元、最上部から下方に移動する。通常の滞留時間は、例えば、20時間である。底部に吐出された冷却された炭酸塩岩量が、更に処理されるべき炭酸塩岩3に上部領域内で置き換えられる。
【0020】
か焼された炭酸塩岩の冷却は、2箇所で(すなわち、変位体10または11を介してかつ吐出装置12および13の領域内で)冷却帯9に送り込まれる冷却空気により実現される。
【0021】
変位体は各々、冷却帯の中央に位置すると共に、例えば、円錐形状または、図示のように、最上部に丸みを帯びた形状を有することができる。変位体10、11の下部領域において、これら変位体には、変位体の全周にわたってガス出口開口10aおよび11aが設けられる。
【0022】
更に、変位体を介しての冷却空気の導入のために、第1の冷却空気導管14はシャフト1の変位体10のガス開口10aに連結され、かつ、第2の冷却空気導管15は第2のシャフト2の変位体11のガス出口開口11aに連結される。更に、第3の冷却空気導管16は第1のシャフト1の吐出装置12の領域に開口し、かつ、第4の冷却空気導管17は第2のシャフト2の吐出装置13の領域に開口する。4つの冷却空気導管を介して導入される冷却空気量の空気分配は、少なくとも1つの第1のフラップ18aと第2のフラップ18bとを備える適切なフラップシステム18によって調節することができる。
図1は、シャフト1を焼成用シャフトとして動作させかつシャフト2を蓄熱用シャフトとして動作させる状況での流れ経路を示している。フラップシステム18は、ここではより詳細には図示されていない、制御装置によって制御され、その結果、シャフト1に送り込まれるべき冷却空気の基本的に全量であるが、少なくとも90%が、第1の冷却空気導管14を介して変位体10に送られ、その一方で、シャフト2内の冷却空気量が、基本的に関連の吐出装置13のみを介して送り込まれる。従って、冷却空気を、変位体10を介してまたはフラップ18aによって変位体11を介して所望により送り込むことができる。変位体のガス出口開口の閉塞を回避するために、比較的少量のバリア空気が閉鎖された冷却空気導管を通って依然として流れることを、適切な対策により確実にすることができる。対応する方式で、冷却空気をフラップ18bによって第3の冷却空気導管16または第4の冷却空気導管17のいずれかを介して搬送することができる。ここでは、少量のバリア空気を提供することも考えられる。
【0023】
変位体10に連結される第1の冷却空気導管14および変位体11に連結される第2の冷却空気導管15は、有利には中空変位体の内部に開口し、結果として、冷却空気が冷却帯内のガス出口開口10aおよび11aを介して流出する。第3の冷却空気導管16および第4の冷却空気導管17は、吐出装置12、13の下方に開口し、その結果、冷却空気が、か焼されかつ冷却された炭酸塩岩により形成された材料のダム3a、3bを介して吐出装置12、13に向かって送られる(
図2参照)。
【0024】
シャフト1の上部領域において、煙道ガス19は、燃焼空気7を伴う燃料5の燃焼により生成され、かつ、これら煙道ガス19は、焼成帯から下方向に流
出し、2つのシャフト連結する越流路20を介してシャフト2内に入る。変位体10を介して送り込まれた冷却空気21を、最上部から下方に焼成帯から流出する煙道ガスにより移動させ、その結果、冷却空気21が基本的に上方にかつシャフト1の外側境界に流れ、次いで、冷却空気21が煙道ガスと共に越流路20を介してシャフト2内に入る。
【0025】
これに対して、蓄熱用シャフト2内の流れ経路は根本的に異なる。まず、燃焼空気が最上部からそこに送り込まれず、かつ燃焼も行われない。むしろ、煙道ガス19および冷却空気21は、シャフト1からシャフト2からの冷却空気22と共に上方に流れ、排ガス導管23を介して最上部で吐出される。シャフト2内の冷却空気22が基本的に吐出装置13のみを介して送り込まれるので、基本的に上方にかつシャフトの中央方向に導かれる冷却空気の流れが形成される。例えば10〜12分の所定のサイクルが終了した後に、シャフト1が蓄熱用シャフトになりかつシャフト2が焼成用シャフトとして機能するように、2つのシャフトの機能が変更される。次いで、対応する方式で、冷却空気の導入もそれに応じて変更され、その結果、ここで焼成用シャフトとして機能するシャフトに送り込まれるべき空気量が、変位体を介して90〜100%の程度でかつ吐出装置の領域内では10%以下の程度で送り込まれ、その一方で、蓄熱用シャフトに送り込まれるべき冷却空気量が、吐出装置の領域内では90〜100%の程度でかつ変位体を介して10%以下の程度で送り込まれることが常に確実にされる。
【0026】
図4には、シャフト1を焼成用シャフトとして動作させかつシャフト2を蓄熱用シャフトとして動作させる、
図1で説明した状況に関して、冷却空気21、22および煙道ガス19の流線が描かれている。ここでは、冷却帯への冷却空気の非常に均一な導入を見て取ることができる。
【0027】
焼成用シャフトの変位体と蓄熱用シャフトの吐出装置とを介して冷却空気を導入する配分は別として、焼成用シャフトに送り込まれるべき冷却空気量を蓄熱用シャフトに送り込まれるべき冷却空気量よりも少なく維持することも有利である。冷却空気の50%〜30%が焼成用シャフトの変位体を介して送り込まれ、かつ冷却空気の残りが蓄熱用シャフトの吐出装置を介して送り込まれる配分が特に有効であると判明している。
【0028】
図4に示す例示的な実施形態において、冷却空気導管14〜17には各々、制御装置24を介して制御できるフラップ18c、18d、18eおよび18fが設けられる。加えて、冷却空気供給器25が概略的に表されている。
【0029】
基本的に水平方向に延在する等温線27が冷却帯の領域内に形成され、その結果、冷却帯の幅にわたるか焼された炭酸塩岩の非常に均一な冷却が確実に行われることが
図5から分かる。従って、過度に高温の材料に起因する吐出装置の損傷につながり得る谷状に垂れ下がった等温線の形成が生じない。
【0030】
吐出装置12、13は、
図2および
図3に示すように、か焼されかつ冷却された炭酸塩岩を径方向外方または径方向内方に吐出できるように構成される。この目的で、吐出装置は各々、例えば、押し出し機構26によって二重矢印27の方向に移動させることができるセグメント状の吐出台を有する。
図2に示す例示的な実施形態において、吐出装置13を左側に移動させる場合、炭酸塩岩の外側が下方に落下するまでその岩の真下で吐出装置13が押し出される。吐出装置を逆方向に移動させると、内方向に吐出が生じる。当然ながら、材料の吐出はまた、炭酸塩岩が全幅にわたって下方に非常に均一に滑落するかどうかに重大な影響を及ぼす。この種類の吐出装置の場合には、か焼されかつ冷却された炭酸塩岩の60〜80%が外方向に吐出されかつその残りが内方向に吐出されることが有利であると判明している。
【0031】
効果的な冷却を確実に行うために、冷却帯の下端部の直径は、予熱・焼成帯の下端部の直径の1.1〜1.5倍の大きさとなるように選択される。つまり、本発明の目的では、直径は、冷却帯または予熱・焼成帯の内径である。焼成用シャフト内および蓄熱用シャフト内での上で説明した空気分配は、それぞれ、極めて効率的な冷却を可能にし、その結果、97%超のCaCO
3含有量を有する炭酸塩岩のか焼の際に導入されるべき冷却空気の全量を、0.7Nm
3/kgのか焼された炭酸塩岩よりも少なく、好ましくは、0.65Nm
3/kgのか焼された炭酸塩岩よりも少なく低減することができる。このことは、排ガス導管23を介して吐出されるべきガスの量もそれに応じて低減されかつ焼成炉の熱消費量が減少する利点を有する。
【0032】
また、本発明による空気分配は、以前に観察されている周縁に沿った流れの大幅な低減につながる。加えて、再炭化が生じる可能性がある局所領域の危険性を低減することができる。