特許第6371396号(P6371396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371396耐破壊性を有する多層基体、および耐破壊性を有する多層基体を含む物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371396
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】耐破壊性を有する多層基体、および耐破壊性を有する多層基体を含む物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/34 20060101AFI20180730BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20180730BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20180730BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   C03C17/34 Z
   C03C21/00 101
   B32B9/00 A
   B32B17/06
【請求項の数】9
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2016-542805(P2016-542805)
(86)(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公表番号】特表2016-533316(P2016-533316A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】US2014055295
(87)【国際公開番号】WO2015038843
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年8月30日
(31)【優先権主張番号】61/877,371
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】アミン,ジェイミン
(72)【発明者】
【氏名】マヨレット,アレクサンドル ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ポールソン,チャールズ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】プライス,ジェイムズ ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】レイマン,ケヴィン バリー
【審査官】 山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5110723(JP,B2)
【文献】 特表2016−517381(JP,A)
【文献】 特開平10−231147(JP,A)
【文献】 特開2012−064765(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0028906(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0032073(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0115651(US,A1)
【文献】 特開2000−113510(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/041528(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に面した表面を含む基体と、
前記外側に面した表面の上に配設され、少なくとも500nmの厚さを有する、AlOを含む層と、
前記層の上または前記層と前記基体との間に配設された、SiOおよびAlのうちの一方を含む付加層と、
を備えた多層基体であって、
前記多層基体が、バーコビッチ圧子硬度試験によって、100nm以上の押し込み深さに沿って測定された、少なくとも12GPaの硬さを示し、
装置に組み付けられた前記多層基体は、前記装置を少なくとも100cmの高さからアスファルトの落下面上に落下させた際に、破壊に耐えることができる
ことを特徴とする多層基体。
【請求項2】
前記基体が、非晶質の基体または結晶質の基体から選択される透明または不透明の基体を含む、請求項1記載の多層基体。
【請求項3】
前記非晶質の基体が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラス、およびアルカリアルミノボロシリケートガラスからなる群より選択されるガラスを含む、請求項2記載の多層基体。
【請求項4】
前記ガラスが化学的に強化されており、前記化学的に強化されたガラスの表面から、少なくとも10μmの層の深さ(DOL)まで、前記化学的に強化されたガラスの内部に延在する少なくとも250MPaの圧縮応力(CS)を有する圧縮応力(CS)層を含む、請求項3記載の多層基体。
【請求項5】
前記基体が、両側にある主表面のうち1以上の表面において、0.5%以上の平均破断ひずみを示す、請求項14のいずれか項記載の多層基体。
【請求項6】
前記層が、バーコビッチ圧子硬さ試験によって、100nm以上の押し込み深さに沿って測定された、少なくとも20GPaの硬さを示す、請求項1〜5のいずれか一項記載の多層基体。
【請求項7】
前記層が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、ダイヤモンドライクカーボン、またはそれらの組合せを含み、前記金属がB、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、およびWからなる群より選択される、請求項1〜のいずれか一項記載の多層基体。
【請求項8】
前記多層基体が、少なくとも85%、または10%未満の透過率を示す、請求項1〜のいずれか一項記載の多層基体。
【請求項9】
前記SiOおよびAlのうちの他方を含む第2の付加層を更に備えた、請求項1〜のいずれか一項記載の多層基体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、合衆国法典第35巻第119条に基づき、2013年9月13日に出願された米国仮特許出願第61/877,371号による優先権を主張するものであり、その内容に依拠すると共に、その全体を参照して本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、耐破壊性を有する多層基体、そのような多層基体を含む物品および装置、並びに、そのような多層基体、物品、および/または装置を製造する方法に関する。より具体的には、本開示は、多層基体が物品(例えば、電子装置、建築上の構造物、電化製品、自動車部品等)に組み付けられた場合に、物品が落下面上に落下した際、または物品上に他の物体が落下した際に、破壊に耐えることができる基体および層を含む多層基体に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、電子装置(例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ビデオプレイヤー、情報端末装置、ラップトップコンピュータ等)、建築上の構造物(例えば、カウンタートップまたは壁)、電化製品(例えば、調理器、冷蔵庫および食洗器の扉等)、情報ディスプレイ(例えば、ホワイトボード)、並びに自動車部品(例えば、ダッシュボードのパネル、フロントガラス、ウィンドウ部品等)等の物品は、内部構成要素または外部構成要素として様々な基体を組み込んでいる。そのような物品において用いられる場合には、基体はハウジングまたはディスプレイの一部であり得る。ディスプレイにおいて用いられる場合には、基体は、カバー基体と称される場合があり、幾つかの事例では、タッチモジュールの一部を構成し得る。カバー基体はしばしば透明であり、耐スクラッチ性を有する。ハウジングとして用いられる基体は、ハウジングの側面、後ろ部分、および前部分を構成し得ると共に、耐スクラッチ性と、透明度を示す代わりに不透明度とを示し得る。
【0004】
何らかの物品または物品の構成要素をより軽く、より薄くすると共に、より高い機能性を含める継続的な努力により、基体は、カバー基体として用いられるか、またはハウジング基体として用いられるかに関わらず、より薄くなっている。基体が薄くなるにつれて、基体は、そのような基体を組み込んだ物品の通常の使用中に生じ得る損傷をより受け易くなる。特に、“実世界での”使用および用途において経験する、例えば、アスファルトもしくはコンクリート、および/または落下する物体等の硬い/鋭い面との接触によって生じる引張応力を受けた際の、改善されたサバイバビリティを有する基体を開発することがより重要になっている。
【0005】
更に、摩耗損傷を生じるスクラッチ、および/または単事象のスクラッチ損傷を生じるスクラッチに対する耐性を示す、上記のような基体の必要性がある。単事象のスクラッチ損傷とは、摩耗損傷と対比され得るものである。摩耗損傷は、一般的に、硬い物体(例えば、砂、砂利、およびサンドペーパー)が往復して滑る接触によって生じるので、一部のケースでは、例えば電子装置等の装置において外部構成要素として用いられる基体には、典型的に、摩耗損傷は生じない。その代わりに、カバー基体は、典型的に、例えば指等の柔らかい物体が往復して滑る接触に耐える。更に、上記のような基体が層(またはコーティング)と組み合わされた場合には、摩耗損傷は、熱を生じる場合があり、そのような層における化学結合を損傷し、剥落や他のタイプの損傷を生じ得る。摩耗損傷は、しばしば長期間にわたって起こるので、摩耗損傷が生じる基体上に配設された層は酸化する場合があり、それによって層および多層基体の耐久性を更に低下させ得る。スクラッチ損傷を生じる単事象は、一般的に、摩耗損傷を生じる事象と同じ条件を含まないので、摩耗損傷を防止するために用いられる解決手段では、基体または多層基体における単事象のスクラッチ損傷は防止されない場合がある。更に、公知のスクラッチおよび摩耗損傷の解決手段は、しばしば光学特性を低下させ、これは、基体、多層基体、またはそれらを組み込んだ物品のほとんどの用途においては許容できない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1以上の実施形態は、装置または物品が少なくとも100cmの高さから落下面(例えば、アスファルトまたは粒度180のサンドペーパー)上に落下した際に、破壊に耐えることができる耐破壊性の多層基体を含む装置または物品に関する。この多層基体は、両側にある主表面を有する基体と、第1の主表面上に配設された層とを含み得る。1以上の実施形態において、多層基体は、第1の平均曲げ強度を示すと共に、摩耗後の第2の平均曲げ強度を示し、第2の平均曲げ強度は、第1の平均曲げ強度の少なくとも80%である。多層基体は略透明であってもよく、および/または、少なくとも90%の透過率を示してもよい。1以上の実施形態において、多層基体は略不透明であってもよく、および/または、20%未満または10%未満の透過率を示してもよい。
【0007】
1以上の実施形態において、多層基体は、層から基体の中へと侵入する1以上の傷に対する耐性を示し得る。傷は、多層基体と落下面との接触によって層に生じ得るか、または、衝撃試験を受ける前に層内に存在し得る。衝撃試験は、落下試験と、多層基体上に物体を落下させる試験とを含む。1以上の別の実施形態においては、層は、基体に新たな傷が生じるのを実質的に防止し得る。
【0008】
1以上の実施形態において、基体は透明または不透明であってよく、非晶質の基体(例えば、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラス、および/またはアルカリアルミノボロシリケートガラス)、結晶質の基体(例えば、サファイア等の単結晶の基体、および/またはガラスセラミック基体)、またはそれらの組合せを含み得る。一部の実施形態において、基体は、約1.45〜約1.55の範囲内の屈折率を示す。更に別の実施形態において、基体は、両側にある主表面のうち1以上の表面において、0.5%の平均破断ひずみを示す。非晶質の基体が用いられる場合には、基体は、任意に、強化された、または化学的に強化されたガラスであり得る。例えば、一部のガラス基体は、化学的に強化されたガラスの表面から層の深さDOL(単位はμm)までの化学的に強化されたガラスの内部に延在する圧縮応力(CS)層を含み得る。CSは少なくとも250MPaであり得、DOLは少なくとも10μm、または75μm以上であり得る。1以上の特定の実施形態において、CS/DOLの割合は15以下であり得、ここで、CSは基体の表面における圧縮応力である。更に別の特定の実施形態において、強化されたガラス基体は、表面から50μm下の中間臨界深さにおける圧縮応力CSがCSの少なくとも5%である応力プロファイルを有し得る。1以上の別の実施形態においては、強化されたガラス基体は、表面における圧縮応力CSのスパイク(急上昇)を示し得る。
【0009】
1以上の実施形態において、多層基体は、単独で、または基体との組合せにおいて、基体に耐スクラッチ性を与える層を含み、この層は、(本明細書に記載されるように)バーコビッチ圧子硬さ試験によって、約100nm以上(例えば、約100nm〜約300nm、約100nm〜約400nm、約100nm〜約500nm、または約100nm〜約600nm)の押し込み深さに沿って測定された特定の硬さ(例えば約8GPaより高い硬さ)を示し得る。一部の実施形態において、バーコビッチ圧子硬さ試験によって、約100nm以上(例えば、約100nm〜約300nm、約100nm〜約400nm、約100nm〜約500nm、または約100nm〜約600nm)の押し込み深さに沿って測定された、層、または基体と組み合わされた層(即ち、多層基体)の硬さは、少なくとも約10GPa、少なくとも約15GPa、少なくとも約20GPa、または少なくとも約23GPaである。層は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、ダイヤモンドライクカーボン、またはそれらの組合せを含み得る。例示的な金属としては、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、およびWが挙げられる。層は、原子層堆積、化学蒸着、物理蒸着、または熱蒸着によって形成され得る。1以上の実施形態において、層は、多層基体の光学特性も改善し得る。一例において、層は、基体の反射率を低減し得る。
【0010】
1以上の実施形態において、多層基体は、1以上の付加層を含み得る。付加層は、層の上、層と基体との間、または層の上および層と基体との間の両方に配設され得る。一部の実施形態において、1以上の付加層は、多層基体の1以上の光学特性(例えば、反射性、透過、反射率、透過率、反射色、および/または透過色)を管理し得る。例えば、1以上の付加層は、層の屈折率よりも低い屈折率を示し得る。別の実施形態において、付加層は、層の厚さと異なるまたは同じ厚さを有し得る。1以上の付加層の厚さおよび屈折率は、多層基体の反射性、透過、反射率、透過率、反射色、および/または透過色を変更し得る。
【0011】
1つの変形例において、1以上の付加層は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、および/または、それらの組合せを含み得る。例示的な金属としては、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、およびWが挙げられる。1以上の特定の実施形態において、層はAlOを含んでもよく、付加層はSiOまたはAlを含んでもよい。別の変形において、多層基体は2つの付加層を含んでもよく、第1の付加層はSiOまたはAlの一方を含んでもよく、第2の付加層はSiOまたはAlの他方を含んでもよい。また、第1の付加層および第2の付加層は、同じ多層基体を含んでもよい。第1の付加層および第2の付加層は、互いに同じまたは異なる厚さを示してもよく、または、(それぞれ、もしくは共に)層の厚さと同じまたは異なる厚さを示してもよい。
【0012】
一部の実施形態において、付加層はクラック軽減層を含んでもよく、そのような層は、層と基体との間に配設され得る。クラック軽減層の例は、2013年10月11日に出願された米国特許出願第14/052,055号明細書、2013年10月14日に出願された米国特許出願第14/053,093号明細書、および2013年10月14日に出願された米国特許出願第14/053,139号明細書に記載されており、それらの内容の全体を参照することにより本明細書に組み込む。
【0013】
また、装置の方法も提供される。1以上の実施形態において、この方法は、両側にある主表面を含む基体を設ける工程と、第1の主表面の上に、本明細書に記載される層を設けて、装置に組み付けられた際に、装置を少なくとも100cmの高さから落下面上に落下させる試験において破壊に耐えることができる多層基体を形成する工程と、多層基体を装置に組み付ける工程とを含む。
【0014】
本発明の別の態様は、ユーザインターフェースを提供すると共に初期の耐スクラッチ性および初期の耐衝撃性を有する基体と、強化された耐スクラッチ性および強化された耐衝撃性を示す多層基体を形成するために基体上に配設された層とを含む携帯型装置に関する。1以上の実施形態において、強化された耐衝撃性は、摩耗前の多層基体の平均曲げ強度の少なくとも80%である摩耗後の多層基体の平均曲げ強度を含む。強化された耐スクラッチ性は、バーコビッチ圧子硬さ試験によって約100nm以上の押し込み深さに沿って測定された、少なくとも約20GPaの硬さを含み得る。
【0015】
更なる特徴および長所は、以下の詳細な説明で述べられ、その一部はその説明から当業者に自明であり、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含む本明細書に記載されるように実施形態を実施することによって認識される。
【0016】
上記の概要説明および以下の詳細説明は共に例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部をなすものである。図面は本開示の1以上の実施形態を示しており、明細書と共に、様々な実施形態の原理および作用を説明する役割を担うものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】1以上の実施形態による多層基体の側面図
図1A】1以上の実施形態による層の上面図
図1B図1Aに示されている層の、線1B−1Bに沿って切り取った断面図
図1C】1以上の実施形態による層の上面図
図1D】1以上の実施形態による多層基体の側面図
図1E】1以上の実施形態による多層基体の側面図
図1F】1以上の実施形態による多層基体の側面図
図2】1以上の実施形態による基体を示す図
図3】1以上の実施形態による、936MPaのCSおよび80μmのDOLを有する1mm厚の強化されたガラス基体の応力プロファイルのグラフ
図4】1以上の実施形態による、897MPaのCSおよび108μmのDOLを有する1mm厚の強化されたガラス基体の応力プロファイルのグラフ
図5】1以上の実施形態による、372MPaのCSおよび80μmのDOLを有する1mm厚の強化されたガラス基体の応力プロファイルのグラフ
図6】1以上の実施形態による、225MPaのCSおよび112μmのDOLを有する1mm厚の強化されたガラス基体の応力プロファイルのグラフ
図7】1以上の実施形態による基体の圧縮応力プロファイルの模式図
図8】1以上の実施形態による基体の圧縮応力プロファイルの模式図
図9】1以上の実施形態による多層基体、および公知の基体の落下試験性能を示す
図10】1以上の実施形態による多層基体の摩耗後の強度、および公知の基体の摩耗後の強度を示す
図11】1以上の実施形態による多層基体の摩耗後の強度、および公知の基体の摩耗後の強度を示す
図12】実施例6に従った携帯電話サンプルのサバイバル率を示す
図13】実施例6の幾つかの携帯電話サンプルの破壊高さを示す
図14】実施例N、O、およびP、並びにむき出しの結晶質の基体の、むき出しのガラス基体と比較したスクラッチ深さの減少を示す
図15A】選択された基体および実施例6に従った実施例Nの、L色空間における透過色の座標aおよびbのプロット
図15B】選択された基体および実施例6に従った実施例Oの、L色空間における透過色の座標aおよびbのプロット
図15C】選択された基体および実施例6に従った実施例Pの、L色空間における透過色の座標aおよびbのプロット
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。可能な場合には常に、同一参照番号は、複数の図面を通して同一または類似の部分を参照するために用いられる。
【0019】
本開示の第1の態様は、改善されたサバイバビリティを有する多層基体に関する。本明細書で用いる「サバイバビリティ」とは、本明細書に記載されるように、落下試験中に、または多層基体上に物体を落下させた後に、多層基体が破壊に抵抗するまたは耐える能力を指す。図1に示されるように、多層基体10は、物品および/または装置における用途に応じてカバー基体またはハウジング基体として記載され得る基体100と、その上に配設された層200とを含み得る。基体100は、互いに反対側にある主表面110、112と、互いに反対側にある小さい表面(図示せず)とを含む。図1に示されている層200は、第1の主表面110の上に配設されているが、層200は、第1の主表面110の上に配設されることに加えて、または、その代わりに、第2の主表面112の上、および/または、互いに反対側にある小さい表面の一方もしくは両方の上に配設されてもよい。
【0020】
一実施形態において、多層基体は、基体100および層200、互いに結合された異なる層(層200、他の多層基体層、および/または薄膜層を含む)、本明細書に記載されるような基体および不連続層200、並びに/または、層200および他の不連続層を含み得る。
【0021】
「層」という用語は、単層を含み得るか、または1以上のサブ層を含み得る。そのようなサブ層は、互いに直接接触していてもよい。サブ層は、同じ材料または2以上の異なる材料から形成され得る。1以上の別の実施形態においては、そのようなサブ層は、それらの間に配設された異なる材料の介在層を有し得る。1以上の実施形態において、層は、1以上の連続した途切れていない層、および/または1以上の不連続な途切れた層(即ち、互いに隣接して形成された複数の異なる材料を有する層)を含み得る。層またはサブ層は、個別堆積プロセスまたは連続堆積プロセスを含む当該技術分野において知られている任意の方法によって形成され得る。1以上の実施形態において、層は、連続堆積プロセスのみを用いて、または、個別堆積プロセスのみを用いて形成され得る。
【0022】
本明細書で用いる「配設する」という用語は、当該技術分野において知られている任意の方法を用いて、表面の上に材料をコーティング、堆積、および/または形成することを含む。配設された材料は、本明細書で定義する層を構成する。「上に配設された」という表現は、材料が表面と直接接触するように材料が表面の上に形成される例を含み、また、配設された材料と表面との間に1以上の材料が介在するように材料が表面の上に形成される例も含む。介在する材料は、本明細書で定義する層を構成してもよい。
【0023】
「不連続層」については、そのような層は、基体100の全面を覆わない層を含んでもよく、または、基体100が層によって覆われていない領域を含んでもよい。例えば、図1Aおよび図1Bに示されるように、層200は、互いに接続されていない材料の個別の島として基体100の上に配設されて、層200の島の間の覆われていない空間210を基体100上に残すようにしてもよい。或いは、図1Cに示されるように、層200は、基体の表面100にわたって個別の線として配設されて、層200の線の間に覆われていない空間210が存在するようにしてもよい。幾つかの事例では、層200の個別の線を交差させて、線の間に覆われていない空間210があるにもかかわらず、層200が基体100の上にまとまりのある層を形成するようにしてもよい。
【0024】
基体
本明細書に別様で記載されたように、基体100は、物品および/または装置において、ハウジング基体またはカバー基体として用いられ得る(例えば、ディスプレイ)。ディスプレイにおいて用いられる場合には、基体100はタッチモジュールの一部を構成し得る。物品および/または装置においてハウジング基体として用いられる基体100は、ハウジングの側面、後面、および/または前面の少なくとも一部を構成し得る。
【0025】
基体100は、非晶質の基体、結晶質の基体、またはそれらの組合せを含み得る。基体100は、人工材料および/または天然材料から形成され得る。一部の特定の実施形態において、基体100は、プラスチック基体および/または金属基体を特に除外し得る。1以上の実施形態において、基体は、約1.45〜約1.55の範囲内の屈折率を示す。特定の実施形態において、基体100は、主表面のうち1以上の表面において、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個のサンプルを用いたボール・オン・リング試験を用いて測定された、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上1.5%以上、または2%以上の平均破断ひずみを示し得る。特定の実施形態において、基体100は、両側にある主表面のうち1以上の表面において、約1.2%、約1.4%、約1.6%、約1.8%、約2.2%、約2.4%、約2.6%、約2.8%、または約3%以上の平均破断ひずみを示し得る。
【0026】
1以上の実施形態において、非晶質の基体は、強化された、または強化されていないガラスを含み得る。適切なガラスの例としては、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラス、およびアルカリアルミノボロシリケートガラスが挙げられる。幾つかの変形例ではは、ガラスは、酸化リチウムを含まないものであり得る。1以上の別の実施形態においては、基体100は、例えば、(強化された、または強化されていない)ガラスセラミック基体等の結晶質の基体を含んでもよく、または、例えば、サファイア等の単結晶の構造体を含んでもよい。1以上の特定の実施形態においては、基体100は、非晶質のベース(例えば、ガラス)と、結晶質のクラッド(例えば、サファイア層、多晶質アルミナ層、および/またはスピネル(MgAl)層)とを含む。
【0027】
基体100は、略平面状またはシート状であり得るが、別の実施形態では、湾曲した、または別の形状の、または造形された基体が用いられ得る。基体100は、実質的に、光学的に透き通った、透明で光の散乱を生じないものであり得る。そのような実施形態では、基体は、可視スペクトル(例えば、380nm〜780nm)にわたって約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上、または約92%以上の平均透過率を示し得る。1以上の別の実施形態においては、基体100は不透明であるか、または可視スペクトル(例えば、380nm〜780nm)にわたって約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0%未満の平均透過率を示し得る。基体100は、任意に、例えば、白、黒、赤、青、緑、黄、橙等の色を示してもよい。本明細書で用いる「光透過率」という用語は、媒質を透過する光の量を指す。光透過率の尺度は、媒質に入る光の量と(媒質によって反射または吸収されずに)媒質から出る光の量との差である。「平均光透過率」という用語は、CIE標準観測者によって描写される比視感度を掛けた光透過率のスペクトル平均を指す。本明細書で用いる「透過率」という用語は、所与の波長範囲内における入射光強度のうち、材料(例えば、物品、無機酸化物基体、または多層基体もしくはその一部)を透過した割合として定義される。同様に、「反射率」という用語は、所与の波長範囲内における入射光強度のうち、材料(例えば、物品、無機酸化物基体、または多層基体もしくはその一部)から反射された割合として定義される。透過率および反射率は、特定の線幅を用いて測定される。1以上の実施形態において、透過率および反射率の特徴づけのスペクトル分解能は5nm未満または0.02eV未満である。
【0028】
それに加えて、またはその代わりに、美的および/または機能的な理由のために、基体100の厚さは1以上の寸法に沿って変化してもよい。例えば、基体100の縁部は、基体100の中心寄りの領域と比較して、厚くなっていてもよい。基体100の長さ、幅、および厚さの寸法も、多層基体10の用途または使用に従って様々であってよい。
【0029】
基体100は、様々な異なるプロセスを用いて設けられてよい。例えば、基体100がガラス等の非晶質の基体を含む場合には、様々な形成方法としては、フロートガラス法、並びに、例えば、フュージョンドロー法およびスロットドロー法等のダウンドロー法が挙げられる。
【0030】
フロートガラス法によって調製されたガラス基体は、典型的にはスズである溶融金属のベッドに溶融ガラスを浮かべることによって作られる平滑な表面および均一な厚さによって特徴づけられ得る。例示的なプロセスでは、溶融スズのベッドの表面に供給された溶融ガラスが、そこに浮かぶ帯状ガラスを形成する。帯状ガラスが溶融スズ槽に沿って流れるにつれて、温度が徐々に低下して、帯状ガラスが硬化して固体のガラス基体になり、このガラス基体をスズからローラ上に引き上げることができる。ガラス基体が溶融スズ槽から出たら、ガラス基体は更に冷却され、内部応力を下げるためにアニールされ得る。
【0031】
ダウンドロー法では、比較的無傷の表面を有する、均一な厚さを有するガラス基体が製造される。ガラス基体の平均曲げ強度は、表面の傷の量および大きさによって制御されるので、最小限の接触しかしていない比較的無傷の表面は、より高い初期強度を有する。この高強度のガラス基体を更に(例えば化学的に)強化した場合には、得られる強度は、粗研磨および研磨された表面を有するガラス基体の強度よりも高くなり得る。ダウンドローで形成されたガラス基体は、約2mm未満の厚さまで延伸され得る。更に、ダウンドローで形成されたガラス基体は、コストのかかる研磨を行わずとも、最終的な用途において使用可能な非常に平坦で平滑な表面を有する。
【0032】
フュージョンドロー法は、例えば、溶融したガラス原料を受容するチャネルを有する延伸タンクを用いる。チャネルの両側には、チャネルの長さに沿って上部が開いた堰がある。チャネルが溶融材料で一杯になると、溶融ガラスは堰を越えて流れる。重力に起因して、溶融ガラスは、延伸タンクの外面を2つの流れるガラスの膜として流れ下る。延伸タンクの外面は、下方向に内側に向かって延びており、延伸タンクの下の縁部で合わさる。2つの流れるガラスの膜は、この縁部で合わさって融合し、単一の流れるガラス基体を形成する。フュージョンドロー法では、チャネルを越えて流れた2つのガラスの膜が合わさって融合するので、得られたガラス基体のどちらの外面も、装置のどの部分とも接触しないという長所が提供される。従って、フュージョンドローで形成されたガラス基体の表面特性は、そのような接触の影響を受けない。
【0033】
スロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法では、溶融した原料ガラスが延伸タンクに供給される。延伸タンクの底部には、スロットの長さにわたって延びるノズルを有する開口したスロットがある。溶融ガラスはスロット/ノズルを通って流れ、連続した基体として下に向かって延伸され、アニール領域に入る。
【0034】
ガラス基体が形成されたら、ガラス基体は、強化されたガラス基体を形成するために強化され得る。本明細書で用いる「強化されたガラス基体」という用語は、例えば、ガラス基体の表面中のより小さいイオンを、より大きいイオンと交換するイオン交換によって、化学的に強化されたガラス基体を指し得る。しかし、強化されたガラス基体を形成するために、例えば、熱によるテンパリングや、基体の部分間の熱膨張係数の不一致を利用して圧縮応力および中心張力領域を作る等の、当該技術分野において知られている他の強化方法が用いられてもよい。
【0035】
ガラス基体は、イオン交換法によって化学的に強化され得る。このプロセスでは、ガラス基体の表面層中にあるイオンが、同じ価数または酸化状態を有するより大きいイオンによって置き換えられる、即ち交換される。ガラス基体がアルカリアルミノシリケートガラスを含むこれらの実施形態では、ガラスの表面層中にあるイオン、およびより大きいイオンは、例えば、Li(ガラス中に存在する時)、Na、K、Rb、およびCs等の一価のアルカリ金属カチオンである。或いは、表面層中にある一価のカチオンは、アルカリ金属カチオン以外の一価のカチオン(例えば、Ag等)で交換されてもよい。
【0036】
イオン交換法は、典型的に、ガラス基体を、ガラス基体中のより小さいイオンと交換されるより大きいイオンを含む溶融塩槽に浸漬することによって行われる。溶液槽の組成および温度、浸漬時間、塩溶液槽(または複数の溶液槽)中へのガラスの浸漬回数、複数の塩溶液槽の使用、追加工程(例えば、アニール、洗浄等)等を含むが、それらに限定されないイオン交換法のパラメータは、一般的に、ガラス基体の組成、並びに、強化処理によって得られるガラス基体の圧縮層の所望の深さおよび圧縮応力によって決定されることが、当業者には認識されよう。例として、アルカリ金属含有ガラス基体のイオン交換は、例えば、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物等であるが、それらに限定されない塩を含む、少なくとも1つの溶融槽に浸漬することによって達成され得る。溶融塩槽の温度は、典型的に、約380℃〜約450℃の範囲内であり、浸漬時間は約15分間〜約40時間の範囲内である。しかし、上記とは異なる温度および浸漬時間が用いられてもよい。
【0037】
更に、複数のイオン交換槽にガラス基体が浸漬され、浸漬の間に洗浄および/またはアニール工程を有するイオン交換法の限定しない例が、2008年7月11日に出願された米国仮特許出願第61/079,995号による優先権を主張している、2009年7月10日に出願されたDouglas C Allanらによる「Glass with Compressive Surface for Consumer Applications(民生用の圧縮表面を有するガラス)」という名称の米国特許出願第12/500,650号明細書、および、2008年7月29日に出願された米国仮特許出願第61/084,398号による優先権を主張している、2012年11月20日に発行された、Christopher M. Leeらの「Dual Stage Ion Exchange for Chemical Strengthening of Glasss(ガラスの化学的強化のための2段階イオン交換)」という名称の米国特許第8,312,739号明細書に記載されており、前者では、ガラス基体は、それぞれ異なる濃度の塩溶液槽中における複数の連続したイオン交換処理において浸漬によって強化されており、後者では、溶出イオンで薄められた第1の溶液槽中でイオン交換を行い、次に、第1の溶液槽よりも溶出イオン濃度が低い第2の溶液槽中に浸漬することによって、ガラス基体が強化される。米国特許出願第12/500,650号明細書および米国特許第8,312,739号明細書の内容の全体を参照して本明細書に組み込む。
【0038】
イオン交換によって達成される化学的強化の程度は、中心張力(CT)、圧縮応力(CS)、層の深さ(DOL)、および圧縮層の深さ(DOC)のパラメータに基づいて定量化され得る。圧縮応力、DOL、およびDOCは、当該技術分野において知られている手段を用いて測定される。そのような手段としては、例えば、株式会社ルケオ(Luceo Co., Ltd.)(日本、東京に所在)製のFSM−6000等の市販の機器を用いた表面応力測定(FSM)が挙げられるが、それらに限定されない。圧縮応力および層の深さを測定する方法は、「Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass(化学的に強化された平坦なガラスの標準仕様)」というタイトルのASTM1422C−99、および、「Standard Test Method for Non-Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed, Heat-Strengthened, and Fully-Tempered Flat Glass(アニールされ熱強化され完全にテンパリングされた平坦なガラスにおける、縁部および表面応力の非破壊光弾性測定のための標準試験方法)」というタイトルのASTM1279.19779に記載されており、それらの内容の全体を参照することにより本明細書に組み込む。表面応力測定は、ガラス基体の複屈折に関係する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依存する。SOCは、例えば、ファイバ法および4点曲げ法(両方とも、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient(ガラスの応力−光学係数を測定するための標準試験方法)」というタイトルのASTM標準C770−98(2008)に記載されており、それらの内容の全体を参照することにより本明細書に組み込む)、並びにバルクシリンダー法等の、当該技術分野において知られている方法によって測定される。
【0039】
CSは、表面付近で、または強化されたガラスの内部の様々な深さにおいて測定され得る。最大圧縮応力値は、強化されたガラス基体の表面において測定された圧縮応力(CS)を含み得る。DOLとして特徴づけられる圧縮応力層の厚さは、例えば、FSM−6000等の市販の機器を用いた表面応力計(FSM)による測定によって決定され得る。圧縮応力は、ガラス内部の応力が圧縮応力から引張応力へと変化する深さを指すDOCに関しても特徴づけられ得る。DOCにおいては、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力へと移行し、従って0の値を有する。幾つかの事例では、ガラス基体内部の圧縮応力層に隣接した内部領域について計算されるCTは、圧縮応力CS、厚さt、およびDOLから算出できる。CSと中心張力CTとの関係は、式(1)によって与えられる。
CT=(CS・DOL)/(t−2DOL)…(1)
式中、tは、ガラス物品の厚さであり、マイクロメートル(μm)で表される。本開示の様々なセクションにおいて、中心張力CTおよび圧縮応力CSは、本明細書においてはメガパスカル(MPa)で表され、厚さtはマイクロメートル(μm)またはミリメートル(mm)で表され、層の深さDOLはマイクロメートル(μm)で表される。DOCが用いられる場合には、これもマイクロメートル(μm)で表され得る。
【0040】
一実施形態において、強化されたガラス基体100は、250MPa以上、300MPa以上、例えば、400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、または800MPa以上の表面圧縮応力を有し得る。強化されたガラス基体は、10μm以上、15μm以上、20μm以上(例えば、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm以上)の層の圧縮の深さ、および/または、10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、40MPa以上(例えば、42MPa、45MPa、または50MPa以上)であり且つ100MPa未満(例えば、95、90、85、80、75、70、65、60、55MPa以下)の中心張力を有し得る。1以上の特定の実施形態において、強化されたガラス基体は、500MPaより主表面圧縮応力、15μmより大きい圧縮層の深さ、および、18MPaより大きい中心張力のうち1以上を有する。
【0041】
強化されたガラス基体の1以上の具体的な実施形態の模式的な断面図が、図2に示されている。強化されたガラス基体300は、厚さtと、第1の表面310と、第2の表面312とを有する。強化されたガラス基体300は、第1の表面310から層の深さDOCまでガラス基体300の体積内へと延在する第1の圧縮層320を有する。図2に示されている実施形態では、強化されたガラス基体300は、第2の表面312から第2の層の深さDOLまで延在する第2の圧縮層322も有する。強化されたガラス基体300は、圧縮層320と圧縮層322との間の中心領域330も有する。中心領域330は、層320および層322のそれぞれの圧縮応力に対してバランスをとるまたは対抗する引張応力または中心張力(CT)下にある。
【0042】
図2に示されている実施形態では、強化されたガラス基体300は、圧縮応力層320および322の内部に中間臨界深さCDおよびCDを含む。理論に縛られたものではないが、これらの中間臨界深さCDおよびCD、並びに、これらの臨界深さにおける圧縮応力は、層200(図示せず)が存在してもしなくても、強化されたガラス基体300のサバイバビリティを高めるのに十分であり得る。
【0043】
1以上の実施形態において、強化されたガラス基体300は、表面CS(CS)および75μm以上のDOLを含み得るが、ここで、CS/DOLの割合は15以下、または12以下であり得る。幾つかの事例では、CS/DOLの割合は約0.1〜約12の範囲内であり得る。特定の実施形態において、強化されたガラス基体300は、表面から50μm下の中間臨界深さにおける圧縮応力CSがCSの少なくとも5%、CSの少なくとも10%、CSの少なくとも25%、またはCSの約25%〜約75%の範囲内である応力プロファイルを含み得る。一部の実施形態において、DOLは、約80〜約120μmの範囲内であり得る。CSは、250MPa以上、または約350MPa〜約500MPaの範囲内であり得る。幾つかの事例では、CSは500MPa以上(例えば、約700〜約1200MPa)であり得る。1以上の実施形態において、CSは約70MPa〜約200MPaの範囲内であり得る。
【0044】
更なる説明として、図3図6は、深いDOL(即ち、75μm以上のDOL)を有する1mm厚の強化されたアルカリアルミノシリケートガラス基体の応力プロファイルを示している。図3に示されるように、936MPaのCSおよび80μmのDOLを有する強化されたガラス基体は、ガラス基体の表面において圧縮応力のスパイク、即ち増加を有する。50μmの中間深さでは、約100MPa圧縮応力CSがある。図3に示されているガラス基体と同様に、図4は、表面に圧縮応力のスパイクを有する強化されたガラス基体を示している。897MPaのCSおよび108μmのDOLを有する強化されたガラス基体は、50μmの深さにおいて、約100MPaの圧縮応力を有する。図5および図6は、表面に圧縮応力のスパイクを含まない強化されたガラス基体を示している。図5に示されている強化されたガラス基体は、372MPaのCSおよび80μmのDOLを有し、50μmのCDにおいて約100MPaのCSを含む。図6の強化されたガラス基体は、225MPaのCSおよび112μmのDOLを有し、50μmのCDにおいて約110MPaのCSを含む。
【0045】
1以上の実施形態において、強化されたガラス基体は、基体の表面から基体内の少なくとも約45μmのDOCまで延在する少なくとも1つの深い圧縮層を有し得る。一実施形態において、強化されたガラス基体の圧縮応力プロファイルは、表面から圧縮の深さDOCまで延びる単一の線形のセグメントを含む。或いは、強化されたガラス基体の圧縮応力プロファイルは、2つのほぼ線形の部分を含み、第1の部分は表面から比較的浅い深さまで延びて、急な傾斜を有しており、第2の部分は浅い深さから圧縮の深さまで延びている。この実施形態では、本明細書に記載される強化されたガラス基体は、少なくとも約150MPaの最大圧縮応力CSを有する。一部の実施形態では、最大圧縮応力CSは少なくとも約210MPaであり、別の実施形態では少なくとも約300MPaである。一部の実施形態では、最大圧縮応力CSは表面(図2の310、312)に位置する。しかし、別の実施形態では、最大圧縮応力CSは、強化されたガラス基体の表面より下の或る深さにある圧縮領域内(320、322)に位置し得る。圧縮領域は、強化されたガラス基体の表面から、少なくとも約45マイクロメートル(μm)の圧縮の深さDOCまで延在している。一部の実施形態では、DOCは少なくとも約60μmである。別の実施形態では、DOCは少なくとも約70μmであり、一部の実施形態では少なくとも約80μmであり、更に別の実施形態では、DOCは少なくとも約90μmである。特定の実施形態では、圧縮の深さDOCは少なくとも100μmであり、一部の実施形態では少なくとも約140μmである。特定の実施形態では、圧縮の深さは約100μmの最大値を有する。
【0046】
圧縮応力は、強化されたガラス基体の表面より下の深さの関数として変化し、圧縮領域(図2の330)において圧縮応力プロファイルを生じる。2014年6月19日に出願された「Strengthened Glass with Deep Depth of Compression(深い圧縮の深さを有する強化ガラス)」という名称の米国特許出願第62/014,464号明細書(この文献を参照して本明細書に組み込む)に記載されているように、強化されたガラス基体は、特定の圧縮応力を示し得る。一部の実施形態においては、図7に模式的に示されているように、圧縮応力プロファイルは圧縮領域内では略線形である。図7では、圧縮応力は略線形の挙動を有し、傾斜mを有する直線aとなり(MPa/μmで表される)、CSにおいて縦軸のy(CS)軸と交差する。CSプロファイルaは、圧縮の深さDOCにおいてx軸と交差する。この点における合計応力は0である。DOCより下では、ガラス物品は張力CT下にあり、中央値CTに達する。1つの限定しない例では、張力が0からCTに等しい(絶対値での)最大張力まで変化するサブ領域と、張力が略一定でCTに等しい領域とがあり得る。
【0047】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるガラス物品の圧縮応力プロファイルaは、特定の範囲内の傾斜mを有する。図7では、例えば、線aの傾斜mは、上の境界δと下の境界δとの間に存在する(即ち、δ≧m≧δ)。一部の実施形態では、2MPa/μm≦m≦200MPa/μmである。一部の実施形態では2MPa/μm≦m≦8MPa/μmであり、一部の実施形態では3MPa/μm≦m≦6MPa/μmであり、更に別の実施形態では2MPa/μm≦m≦4.5MPa/μmである。
【0048】
特定の実施形態では、傾斜mは約1.5MPa/μm未満であり、一部の実施形態では約0.7MPa/μm〜約2MPa/μmである。傾斜maがそのような値を有し、圧縮の深さDOCが少なくとも約100μmである場合には、特定の装置設計において、使用現場における破損で優勢であり得る、少なくとも1つのタイプの破壊モード(例えば、非常に深い穿刺)に対する強化されたガラスの耐性は、特に有利である。
【0049】
別の実施形態では、圧縮応力プロファイルは、図8に模式的に示されているように、2以上の略線形の関数の組合せである。図8からわかるように、圧縮応力プロファイルは、第1のセグメントまたは部分a’と、第2のセグメントまたは部分bとを有する。第1の部分a’は、ガラス物品の強化された表面から深さdまで略線形の挙動を示す。部分a’は傾斜ma’と、y切片CSとを有する。圧縮応力プロファイルの第2の部分bは、ほぼ深さdから圧縮の深さDOCまで延びており、傾斜mを有する。深さdにおける圧縮応力CS(d)は次式によって与えられる。
CS(d)≒CS−d(ma’)…(7)
一部の実施形態では、深さdは約3μm〜約8μmの範囲内(即ち、3μm≦d≦8μm)である。別の実施形態では3μm≦d≦10μmである。更に他の実施形態では3μm≦d≦12μmである。
【0050】
一部の実施形態において、圧縮応力プロファイルは、更なるセグメントを含み得る。一部の実施形態では、圧縮応力プロファイルのそれぞれ異なる線形の部分またはセグメントは、プロファイルの傾斜が第1の傾斜から第2の傾斜へと(例えば、ma’からmへと)遷移する遷移領域(図示せず)によって接続され得る。
【0051】
図8に示されるように、圧縮応力プロファイルの部分a’の傾斜は、部分bの傾斜よりも遥かに急である(即ち、|ma'|≧|m|)。これは、衝撃によって生じる何らかの傷の発生または成長に耐えるのに十分な圧縮応力を有する表面を設けるために、連続して行われる複数のイオン交換プロセスによって、ガラス物品の表面に “スパイク”を有する圧縮応力プロファイルが生じる条件に対応する。
【0052】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるガラス物品の圧縮応力プロファイルaおよびbは、それぞれ特定の範囲内の傾斜ma’およびmを有する。図8では、例えば、線a’の傾斜ma’は、上の境界δと下の境界δとの間に存在し、線bの傾斜mは、上の境界δと下の境界δとの間に存在する(即ち、δ≧ma’≧δ、およびδ≧m≧δ)。一部の実施形態では、40MPa/μm≦ma’≦200MPa/μmおよび2MPa/μm≦m≦8MPa/μmである。一部の実施形態では40MPa/μm≦ma’≦120MPa/μmであり、一部の実施形態では50MPa/μm≦ma’≦120MPa/μmである。
【0053】
一部の実施形態において、ガラス基体は、ガラス物品の表面において少なくとも約150MPaの圧縮応力CSを有する圧縮領域を有する。この圧縮領域は、表面から、少なくとも約45μmの圧縮の深さDOCまで延在している。この圧縮領域の圧縮応力プロファイルは、表面から、少なくとも約45μmの深さdまで延びる第1の部分aであって、傾斜mを有し、2MPa/μm≦m≦8MPa/μmである第1の部分aと、任意に、表面から少なくとも約3μm深さd’まで延びる第2の部分a’であって、40MPa/μm≦ma’≦200MPa/μm(または40MPa/μm≦ma’≦120MPa/μmもしくは3MPa/μm≦m≦6MPa/μm)である第2の部分a’とを有する。一部の実施形態において、圧縮応力プロファイルは、表面から深さdまで延びる第1の部分aであって、傾斜mを有し、3μm≦d≦8μmであり、40MPa/μm≦m≦200MPa/μm(または40MPa/μm≦m≦120MPa/μmもしくは50MPa/μm≦m≦120MPa/μm)である第1の部分aと、dから圧縮の深さDOCまで延びる第2の部分bであって、傾斜mを有し、2MPa/μm≦m≦8MPa/μmである第2の部分bとを含む。
【0054】
深さdは圧縮の深さに等しくてもよく、第1の部分aは表面からdまで延びている。一部の実施形態では、第2の部分a’は表面から深さda’まで延びており、第1の部分aはda’から深さdまで延びている。厚さは、約0.1mmから約1.5mmまでの範囲内であり得る。
【0055】
本明細書に記載される強化されたガラス基体において用いられ得る、例示的なイオン交換可能なガラスとしては、アルカリアルミノシリケートガラス組成物、またはアルカリアルミノボロシリケートガラス組成物が挙げられるが、他のガラス組成物も考えられる。本明細書で用いる「イオン交換可能」とは、ガラス基体が、ガラス基体の表面または表面付近に位置するカチオンを、サイズがより大きいまたはより小さい同じ価数のカチオンと交換できることを意味する。1以上の実施形態において、ガラス基体を形成するために用いられるガラス組成物は、少なくとも130キロポアズの液相粘度を示し得る。1つの例示的なガラス組成物は、SiO、B、およびNaOを含み、(SiO+B)≧66モル%であり、NaO≧9モル%である。一実施形態では、強化されたガラス基体は、少なくとも6重量%の酸化アルミニウムを含むガラス組成物を含む。更に別の実施形態では、強化されたガラス基体(または強化されていないガラス基体)は、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5重量%である1以上のアルカリ土類酸化物を含むガラス組成物を含む。一部の実施形態では、適切なガラス組成物は、KO、MgO、およびCaOの少なくとも1つを更に含む。特定の実施形態では、強化されたガラス基体(または強化されていないガラス基体)において用いられるガラス組成物は、61〜75モル%のSiOと、7〜15モル%のAlと、0〜12モル%のBと、9〜21モル%のNaOと、0〜4モル%のKOと、0〜7モル%のMgOと、0〜3モル%のCaOとを含み得る。
【0056】
強化されたガラス基体または強化されていないガラス基体に適した更に別のガラス組成物の例は、60〜70モル%のSiOと、6〜14モル%のAlと、0〜15モル%のBと、0〜15モル%のLiOと、0〜20モル%のNaOと、0〜10モル%のKOと、0〜8モル%のMgOと、0〜10モル%のCaOと、0〜5モル%のZrOと、0〜1モル%のSnOと、0〜1モル%のCeOと、50ppm未満のAsと、50ppm未満のSbとを含み、12モル%≦(LiO+NaO+KO)≦20モル%であり、0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0057】
強化されたガラス基体または強化されていないガラス基体に適した更に別のガラス組成物の例は、63.5〜66.5モル%のSiOと、8〜12モル%のAlと、0〜3モル%のBと、0〜5モル%のLiOと、8〜18モル%のNaOと、0〜5モル%のKOと、1〜7モル%のMgOと、0〜2.5モル%のCaOと、0〜3モル%のZrOと、0.05〜0.25モル%のSnOと、0.05〜0.5モル%のCeOと、50ppm未満のAsと、50ppm未満のSbとを含み、14モル%≦(LiO+NaO+KO)≦18モル%であり、2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0058】
特定の実施形態では、強化されたガラス基体または強化されていないガラス基体に適したアルカリアルミノシリケートガラス組成物は、アルミナと、少なくとも1つのアルカリ金属と、一部の実施形態では50モル%を超えるSiO、別の実施形態では少なくとも58モル%のSiO、更に別の実施形態では少なくとも60モル%のSiOとを含み、
【0059】
【数1】
【0060】
であり、この割合において、各成分はモル%で表され、「改質剤」はアルカリ金属酸化物である。特定の実施形態では、このガラス組成物は、58〜72モル%のSiOと、9〜17モル%のAlと、2〜12モル%のBと、8〜16モル%のNaOと、0〜4モル%のKOとを含み、
【0061】
【数2】
【0062】
である。
【0063】
更に別の実施形態では、強化されたガラス基体または強化されていないガラス基体は、64〜68モル%のSiOと、12〜16モル%のNaOと、8〜12モル%のAlと、0〜3モル%のBと、2〜5モル%のKOと、4〜6モル%のMgOと、0〜5モル%のCaOとを含むアルカリアルミノシリケートガラス組成物を含んでもよく、ここで、66モル%≦SiO+B+CaO≦69モル%であり、NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10モル%であり、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%であり、(NaO+B)−Al≦2モル%であり、2モル%≦NaO−Al≦6モル%;であり、4モル%≦(NaO+KO)−Al≦10モル%である。
【0064】
別の実施形態では、強化されたガラス基体または強化されていないガラス基体は、2モル%以上のAlおよび/もしくはZrO、または4モル%以上のAlおよび/もしくはZrOを含むアルカリアルミノシリケートガラス組成物を含み得る。
【0065】
一部の実施形態では、ガラス基体に用いられる組成物は、0〜2モル%の、NaSO、NaCl、NaF、NaBr、KSO、KCl、KF、KBr、およびSnOを含む群から選択される少なくとも1つの清澄剤を用いてバッチ処理され得る。
【0066】
基体100が結晶質の基体を含む場合には、基体は単結晶を含み得る(これはAlを含み得る)。そのような単結晶の基体はサファイアと称され得る。結晶質の基体の他の適切な材料としては、多晶質アルミナ層および/またはスピネル(MgAl)が挙げられる。
【0067】
任意に、結晶質の基体100は、強化されたまたは強化されていないガラスセラミック基体を含み得る。適切なガラスセラミックの例としては、LiO−Al−SiO系(即ちLAS系)ガラスセラミック、MgO−Al−SiO系(即ちMAS系)ガラスセラミック、並びに/または、β−石英固溶体、β−スポジュメンss、コーディエライト、およびリチウムジシリケートを含む主要結晶相を含むガラスセラミックが挙げられる。ガラスセラミック基体は、本明細書において開示されるガラス基体強化プロセスを用いて強化され得る。1以上の実施形態において、MAS系ガラスセラミック基体は、LiSO溶融塩中で強化されてもよく、これによってMg2+と2Liとの交換が生じ得る。
【0068】
1以上の実施形態による基体100は、約100μm〜約5mmの範囲の厚さを有し得る。例示的な基体100の厚さは、約100μm〜約500μmの範囲(例えば、100、200、300、400、または500μm)である。更に別の例示的な基体100の厚さは、約500μm〜約1000μmの範囲(例えば、500、600、700、800、900、または1000μm)である。基体100は、約1mmより大きい(例えば、約2、3、4、または5mmの)厚さを有し得る。1以上の特定の実施形態では、基体100は、2mm以下または1mm未満の厚さを有し得る。基体100は、表面の傷の影響を除去または低減するために、酸磨きをされてもよく、または別様で処理されてもよい。
【0069】

本明細書に記載される層200の実施形態は、基体100および/または多層基体10に、耐スクラッチ性、耐破壊性、または耐損傷性を付与するために用いられ得る。任意に、層200は、基体100および/または多層基体10の光学特性を改善するために用いられ得る。層200のこれらの属性は、組み合わせて用いられ得る。従って、層200は、本明細書においては“耐スクラッチ”層、“耐破壊”層、またはより一般的に“耐損傷”層と称され得る。層200は連続層または不連続層であり得る。
【0070】
1以上の実施形態において、多層基体10、および/または層200、および/または層を形成するサブ層のうち1以上の硬さは、その測定された硬さによって特徴づけられ得る。本明細書で用いる「硬さ」は、“バーコビッチ圧子硬さ試験”を用いて測定され、この試験は、ダイヤモンドのバーコビッチ圧子を表面に押し込むことによって、材料の表面上の硬さを測定することを含む。バーコビッチ圧子硬さ試験は、一般的に、Oliver, W. C.、Pharr, G. M.の「An improved technique for determining hardness and elastic modulus using load and displacement sensing indentation experiments(負荷および変位感知圧子押し込み実験を用いた、硬さおよび弾性率を決定するための改善された技術)」(J. Mater. Res., Vol. 7, No. 6, 1992, 1564-1583)、およびOliver、W.C.、Pharr, G. M.の「Measurement of Hardness and Elastic Modulus by Instrument Indentation: Advances in Understanding and Refinements to Methodology(器具の押し込みによる硬度および弾性率の測定:理解の進歩および方法論の洗練)」(J. Mater. Res., Vol. 19, No. 1, 2004, 3-20)に述べられている方法を用いて、ダイヤモンドのバーコビッチ圧子を表面に押し込んで、約50nm〜約1000nmの範囲内(または、材料または層の厚さ全体の小さい方)の押し込み深さを有する凹みを形成し、押し込み深さの全範囲またはこの押し込み深さの一部に沿ったこの押し込みから、最大硬さを測定することを含む。押し込み深さは、表面の材料または層から作られて測定される。本明細書で用いる「硬さ」とは、平均硬さではなく、最大硬さを指す。
【0071】
典型的に、下にある基体より硬いコーティングの(例えば、バーコビッチ圧子を用いた)ナノインデンテーション測定方法においては、測定された硬さは、浅い押し込み深さにおける塑性領域の発達に起因してまず増加するように見え、次に、より深い押し込み深さにおいて増加して最大値または横這いの状態に達する。その後、更に深い押し込み深さにおいて、硬さは下にある基体の影響に起因して減少し始める。
【0072】
押し込み深さの範囲、および特定の押し込み深さ範囲における硬さの値は、本明細書に記載される材料または層の特定の硬さ応答を、下にある基体の影響を受けずに識別するように選択される。バーコビッチ圧子を用いて、(基体上に配設された)材料または層の硬さを測定する場合には、材料の永久ひずみの領域(塑性領域)は、材料の硬さと関連づけられる。圧子押し込み中、弾性応力場は、この永久ひずみの領域を遥かに超えて延びる。押し込み深さが増加するにつれ、見掛けの硬さおよび弾性率は、下にある基体との応力場の相互作用の影響を受ける。基体は、より深い押し込み深さ(即ち、典型的に、材料または層の厚さの約10%より大きい深さ)において生じる硬さに影響する。更に複雑なのは、硬さ応答は、押し込みプロセス中に完全な可塑性を生じるには、特定の最小負荷を必要とすることである。その特定の最小負荷の前には、硬さは概ね増加する傾向を示す。
【0073】
小さい押し込み深さ(小さい負荷としても特徴づけられ得る)(例えば、高々約100nmまで、または約70nm未満)では、材料の見掛けの硬さは、押し込み深さに対して劇的に増加するように見える。この小さい押し込み深さのレジームは、硬さの真の尺度を表すものではなく、圧子の有限の曲率半径に関連する上述の塑性領域の発達を反映するものである。中間の押し込み深さでは、見掛けの硬さは最大レベルに近づく。より深い押し込み深さでは、押し込み深さが増加するにつれ、基体の影響がより顕著になる。押し込み深さが層の厚さの約30%を超えると、硬さは劇的に低下し始める。
【0074】
(硬さが最大レベルに近づいて維持される)中間の押し込み深さ、およびより深い押し込み深さにおける測定は、材料または層の厚さに依存することが観察された。それぞれ異なる厚さ(例えば、500nm、1000nm、1500nm、および2000nm)を有する同じ材料の4つの層の硬さ応答を、バーコビッチ圧子硬さ試験を用いて評価したところ、500nm厚の層は、約100nm〜180nmの押し込み深さにおいて最大硬さを示し、その後、約180nm〜約200nmの押し込み深さにおいて硬さが劇的に減少した(基体の硬さが硬さ測定に影響していることを示す)。1000nm厚の層は、約100nm〜約300nmの押し込み深さにおいて最大硬さを示し、その後、約300nmより大きい押し込み深さにおいて硬さが劇的に減少した。1500nm厚の層は、約100nm〜約550nmの押し込み深さにおいて最大硬さを示し、2000nm厚の層は、約100nm〜約600nmの押し込み深さにおいて最大硬さを示した。
【0075】
一部の実施形態において、約200nmより大きい押し込み深さにおいて最大硬さを有することは、基体による影響を受けない耐スクラッチ性を提供するのに十分な硬さを有する材料または材料の層を提供する。一部の実施形態では、そのような押し込み深さにおいて最大硬さを有することは、例えば、(典型的に約200nm〜約400nmの深さを有する)微小延性スクラッチ等の特定のスクラッチに対する耐性を提供する。本明細書で用いる「微小延性スクラッチ」という表現は、材料中の、長い長さを有する単一の溝を含む。例えば、物品が、バーコビッチ圧子硬さ試験によって特定の押し込み深さに沿って測定された、本明細書において述べる硬さの値を示す場合、その物品(または物品の表面)は、微小延性スクラッチに耐性があり得る。
【0076】
1以上の特定の実施形態において、層200は、バーコビッチ圧子硬さ試験によって約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nm〜約300nm、約100nm〜約400nm、約100nm〜約500nm、約100nm〜約600nm、約200nm〜約300nm、約200nm〜約400nm、約200nm〜約500nm、または約200nm〜約600nm)の押し込み深さに沿って測定された、約8GPaより高い硬さを有する。1以上の実施形態では、層200は、上述の押し込み深さに沿って、約16GPa以上、約17GPa以上、約18GPa以上、約19GPa以上、約20GPa以上、約22GPa以上の硬さを有する。層200は、バーコビッチ圧子硬さ試験によって約50nm以上または約100nm以上(約100nm〜約300nm、約100nm〜約400nm、約100nm〜約500nm、約100nm〜約600nm、約200nm〜約300nm、約200nm〜約400nm、約200nm〜約500nm、または約200nm〜約600nm)の押し込みの深さに沿って測定された、約16GPa以上、約17GPa以上、約18GPa以上、約19GPa以上、約20GPa以上、約22GPa以上の硬さを有する少なくとも1つのサブ層を有し得る。1以上の特定の実施形態では、層200(または層を形成する少なくとも1つのサブ層)は、バーコビッチ圧子硬さ試験によって約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nm〜約300nm、約100nm〜約400nm、約100nm〜約500nm、約100nm〜約600nm、約200nm〜約300nm、約200nm〜約400nm、約200nm〜約500nm、または約200nm〜約600nm)の押し込み深さに沿って測定された、約15GPa〜約25GPa、約16GPa〜約25GPa、約18GPa〜約25GPa、約20GPa〜約25GPa、約22GPa〜約25GPa、約23GPa〜約25GPaの範囲内、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲内の硬さを有し得る。後述するように、層200は、多層基体10に硬さを付与する。層200の硬さは、基体100の硬さより大くなるよう選択され得る。
【0077】
本明細書に記載される層200の実施形態は、層の弾性率、および/または層を形成するサブ層のうち1以上の弾性率によって特徴づけられ得る。本明細書で用いる「弾性率」とはヤング率を指す。1以上の特定の実施形態では、層200は150GPa以上の弾性率を有する。1以上の実施形態では、層200は、ダイヤモンドのバーコビッチ圧子を用いたナノインデンテーション法を含む公知の方法に従って測定された、約160GPa以上、約170GPa以上、約180GPa以上、約190GPa以上、約200GPa以上、約220GPa以上の弾性率を有する。1以上の実施形態では、層200は、約100GPa〜約250GPaまたは約150GPa〜約240GPaの範囲内、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲内の弾性率を示す。
【0078】
一部の実施形態において、層200は、スクラッチ深さおよび/またはスクラッチ幅の減少によって測定される耐スクラッチ性を示し得る。このように、1以上の実施形態による層200は、特に、スクラッチ幅および/またはスクラッチ深さを低減することによって、単事象のスクラッチ損傷を防止または軽減する。層200を含む多層基体10は、層200を含まない(同じスクラッチ条件を経験した)基体100が示すスクラッチ深さおよび/またはスクラッチ幅と比較して、スクラッチ深さおよび/またはスクラッチ幅の減少を示し得る。このスクラッチ深さおよび/またはスクラッチ幅の減少は、基体100が非晶質および/もしくは結晶質であるか、並びに/または、基体100が強化されているかもしくは強化されていないかに関わらず(該当する場合)、示され得る。
【0079】
1以上の実施形態において、多層基体10を、ダイヤモンドのバーコビッチ圧子を用いて、160mNの負荷を用いて10μm/秒の速度で、多層基体の表面(多層基体の層200が配設されている側)に沿って少なくとも100μmの長さにわたってスクラッチした場合、結果のスクラッチは、層200が配設されていない基体100上に同様に(即ち、同じ圧子、負荷、速度、および長さを用いて)形成されたスクラッチの深さより、少なくとも20%少ない、一部のケースでは少なくとも30%少ない深さを有した。負荷を120mN、60mN、または30mNまで低下させると、スクラッチ深さの減少はより増加した。換言すれば、より低い負荷では、1以上の実施形態による多層基体10における結果のスクラッチ深さは、層200が配設されていない基体100において示されるスクラッチ深さよりも更に浅くなり得る。更に、この耐スクラッチ性は、多層基体10が、ダイヤモンドのバーコビッチ圧子を用いて、10μm/秒の速度で、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、または少なくとも5mmの長さにわたってスクラッチされた場合に示され得る。1以上の実施形態では、層200が示す耐スクラッチ性は、層200を含む多層基体10を、ダイヤモンドバーコビッチ圧子によって、160mNの負荷を用いて10μm/秒の速度で、多層基体の表面に沿って少なくとも100μmの長さにわたってスクラッチした場合に、結果のスクラッチが300nm未満、290nm未満、280nm未満、270nm未満、260nm未満、250nm未満、240nm未満、230nm未満、220nm未満、210nm未満、200nm未満、180nm未満、170nm未満、160nm未満、150nm未満、140nm未満、130nm未満、120nm未満、110nm未満、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、20nm未満、10nm未満、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲内のスクラッチの深さを有するような耐スクラッチ性である。本明細書に記載されるスクラッチ深さは、元のかく乱されていない層200の表面から測定され得る。換言すれば、スクラッチ深さは、ダイヤモンドバーコビッチ圧子が層内へと侵入することによって生じる層材料の変位に起因してスクラッチの縁部の周囲に盛り上がり得る層200のいかなる量も含まない。
【0080】
1以上の実施形態では、多層基体10を、ダイヤモンドのバーコビッチ圧子を用いて、160mNの負荷を用いて10μm/秒の速度で、多層基体の表面(多層基体の層200が配設されている側)に沿って少なくとも100μmの長さにわたってスクラッチした場合、結果のスクラッチは、層200が配設されていない基体100上に同様に(即ち、同じ圧子、負荷、速度、および長さを用いて)形成されたスクラッチの幅よりも少なくとも10%少ない、一部のケースでは少なくとも30%少ない、または50%少ない幅を有する。負荷を120mN、60mN、または30mNまで低下させると、スクラッチ幅の減少は更に増加する。換言すれば、より低い負荷では、1以上の実施形態による多層基体10における結果のスクラッチ幅は、層200が配設されていない基体100において示されるより更に狭くなり得る。更に、この耐スクラッチ性は、多層基体10が、ダイヤモンドのバーコビッチ圧子を用いて、10μm/秒の速度で、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、または少なくとも5mmの長さにわたってスクラッチされる場合に示され得る。1以上の実施形態では、層200が示す耐スクラッチ性は、層200を含む多層基体10を、ダイヤモンドバーコビッチ圧子によって、160mNの負荷を用いて10μm/秒の速度で、多層基体の表面に沿って少なくとも100μmの長さにわたってスクラッチされた場合に、結果のスクラッチが10nm未満、9.5nm未満、9nm未満、8.5nm未満、8nm未満、7.5nm未満、7nm未満、6.5nm未満、6nm未満、5.5nm未満、5nm未満、4.5nm未満、4nm未満、3.5nm未満、3nm未満、2.5nm未満、2nm未満、1.5nm未満、1nm未満、0.5nm未満、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲内のスクラッチ幅を有するような耐スクラッチ性である。本明細書に記載されるスクラッチ幅は、元のかく乱されていない層200の表面から測定され得る。換言すれば、スクラッチ幅は、ダイヤモンドバーコビッチ圧子が層内へと侵入することによって生じる層材料の変位に起因して、スクラッチの縁部の周囲に盛り上がり得る層200のいかなる量も含まない。
【0081】
1以上の実施形態において、本明細書に記載される層200は、ガーネットサンドペーパー試験を用いて評価される場合の耐スクラッチ性を示し得る。ガーネットサンドペーパー試験は、本明細書に記載される材料が、例えば、携帯電話等の携帯型電子装置に組み込まれた場合の、日常的な使用条件を再現または真似ることを意図したものである。1以上の実施形態において、本明細書に記載される材料は、表面を手作業で150粒度のガーネットサンドペーパー(3M社製)を用いて1回スワイプしてから、裸眼で観察した場合に、層を含む表面上にいかなるスクラッチも実質的に含まない。
【0082】
層200は、0.05μmまたは0.1μm以上の厚さを有し得る。1以上の特定の実施形態では、層200の厚さは2μm以上、または3μm以上であり得る。特定の層200は、0.05μm、0.06μm、0.07μm、0.08μm、0.09μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、1.1μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、3.0μm、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲の厚さを有し得る。層200の厚さは略均一であり得る。
【0083】
1以上の実施形態による層200は、光学的なレジーム(即ち、約380nm〜約780nmの波長範囲)において、略透き通った、または透明なものであり得る。1以上の実施形態では、層200は、多層基体10の反射性を維持または低減するものであり、多層基体10の反射性を故意に増加させるいかなる材料も含まない。1以上の別の実施形態では、層200は略不透明であり得る。1以上の実施形態において、層200は、約1.8〜2.2の範囲内の平均屈折率を有する。1以上の実施形態において、層200および/または多層基体10は、反射色または透過色の色調を提供しない(換言すれば、提供される反射色の色調は無彩色または無色である)。1以上の実施形態において、多層基体10は、分光光度計を用いたD65光源下での正反射率測定から決定される、CIELAB色空間座標において示される透過色を有し、CIEaは約−2〜約2(例えば、−1.5〜1.5、−1〜1、−0.5〜0.5、−0.25〜0.25、−0.1〜0.1、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲)の範囲内であり、CIEbは約−4〜約4(例えば、約−3.5〜3.5、−3〜3、−2.5〜2、−2〜2、−1.5〜1.5、−1〜1、−0.5〜0.5、−0.1〜0.1、−0.05〜0.05、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲)の範囲内であり、CIELは約90〜約100(例えば、91〜100、92〜100、93〜100、94〜100、95〜100、96〜100、97〜100、98〜100、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲)の範囲内である。1以上の実施形態において、多層基体10は、分光光度計を用いたD65光源下での正反射率測定から決定される、CIELAB色空間座標において示される反射色を有し、CIEaは約−2〜約2(例えば、−1.5〜1.5、−1〜1、−0.5〜0.5、−0.25〜0.25、−0.1〜0.1、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲)の範囲内であり、CIEbは約−4〜約4(例えば、約−3.5〜3.5、−3〜3、−2.5〜2、−2〜2、−1.5〜1.5、−1〜1、−0.5〜0.5、−0.1〜0.1、−0.05〜0.05、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲)の範囲内であり、CIELは50以下(例えば、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、または15以下、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲内)である。
【0084】
1以上の実施形態において、層200は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、ダイヤモンドライクカーボンまたはそれらの組合せを含み得る。一部の実施形態では、層200は、金属酸窒化物および/またはオキシカーバイドを含み得る。1以上の特定の実施形態では、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属オキシカーバイド、および/または金属ホウ化物で用いられる金属は、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、Wおよびそれらの組合せを含み得る。層200に含まれ得る適切な材料の例としては、Si、AlN、AlO、SiO、AlSiN、SiC、および他の類似の材料が挙げられる。1以上の実施形態では、層200は層全体を通して同じ材料を含む。
【0085】
1以上の実施形態において、層200は、酸素含有量勾配、窒素含有量勾配、ケイ素含有量勾配、アルミニウム含有量勾配、およびそれらの様々な組合せを含み得る。本明細書で用いる「勾配」という用語は、層の組成中の元素の原子%が変化することを指す。元素の原子%の変化は、層200の複数のサブ層(図示せず)の間で生じ得る。幾つかの事例では、或る元素の互いに異なる原子%を有する高々10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、110個、120個、または130個までのサブ層が、勾配を有する層を形成するために用いられ得る。酸素勾配を含む層においては、層と基体100との間の界面またはその付近における層の組成中の酸素の量(原子%)は、層の反対側またはその付近(または、本明細書で説明するように、層200と付加層との間の界面またはその付近)およびそれらの間の他の領域における層の組成中の酸素の量(原子%)とは異なり得る。
【0086】
1以上の実施形態において、層200における組成勾配はケイ素/アルミニウム組成勾配を含んでもよく、この場合、層の厚さに沿ったケイ素およびアルミニウムの原子%が、互いに独立してまたは相互の関係において変化する。別の実施形態では、組成勾配は、酸素/窒素組成勾配を含んでもよく、この場合、層の厚さに沿った酸素および窒素の原子%が、互いに独立してまたは相互の関係において変化する。1以上の実施形態では、基体100と層200との間の界面またはその付近における窒素に対する酸素の割合は、層200の反対側(または、本明細書で説明するように、層200と付加層との間の界面またはその付近)およびそれらの間の他の領域における窒素に対する酸素の割合より大きくてもよい。例えば、基体100と層200との間の界面またはその付近における層200中に存在する窒素は非常に少ないかまたは無くてもよく、並びに/または、層200の反対側(または、本明細書で説明するように、層200と付加層との間の界面またはその付近)における層200中に存在する酸素は非常に少ないかまたは無くてもよい。1以上の実施形態において、基体100と層200との間の界面またはその付近におけるアルミニウムに対するケイ素の割合は、層200の反対側(または、本明細書で説明するように、層200と付加層との間の界面またはその付近)におけるアルミニウムに対するケイ素の割合より大きくてもよい。例えば、基体100と層200との間の界面またはその付近における層200中に存在するアルミニウムは非常に少ないかまたは無くてもよく、並びに/または、層200の反対側(または、本明細書で説明するように、層200と付加層との間の界面またはその付近)における層中に存在するケイ素は非常に少ないかまたは無くてもよい。
【0087】
1以上の実施形態において、酸素含有量勾配および/または窒素含有量勾配は、堆積プロセス(即ち、層200を基体100の上に堆積するための堆積チャンバ)に導入される酸素ガスおよび/または窒素ガスの流量によって制御され得る。酸素または窒素の含有量を増加させるには、酸素または窒素の流量を増加させる。一部の実施形態では、アルミニウムおよび/またはケイ素勾配は、アルミニウムおよび/またはケイ素の原料物質に向けられる電力を制御することによって制御され得る(例えば、スパッタリングを用いて層を形成する場合には、アルミニウムおよび/またはケイ素のスパッタリングターゲットに向けられる電力が制御される)。アルミニウムまたはケイ素の含有量を増加させるには、アルミニウムおよび/またはケイ素の原料物質に向けられる電力を増加させる。
【0088】
1以上の実施形態において、多層基体10は、1以上の付加層300を含み得る。付加層300は、(図1Dに示されるように)層200の上、または(図1Eに示されるように)層200と基体100との間に配設され得る。複数の層が用いられる場合には、(図1Fに示されるように)第1の付加層310が層200と基体100との間に配設され、第2の付加層320が層200の上に配設されてもよい。一部の実施形態では、1以上の付加層300は、多層基体の1以上の光学特性(例えば、平均光反射性、平均光透過、反射率、透過率、反射色、および/または透過色)を管理し得ると共に/または、多層基体に耐スクラッチ性を付与し得る。例えば、1以上の付加層300は、層の屈折率より低い屈折率を示し得る。別の実施形態において、1以上の付加層300は、層の厚さと異なるまたは同じ厚さを有し得ると共に、その屈折率との組合せにおいて、1以上の付加層は、多層基体の平均光反射性、平均光透過、反射率、透過率、透過色および/または反射色を変更し得る。別の実施形態では、1以上の付加層は、多層基体の耐スクラッチ性を変更するために特定の硬さおよび/または厚さを有し得る。
【0089】
1つの変形例において、1以上の付加層300は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物またはそれらの組合せを含み得る。例示的な金属としては、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、およびWが挙げられる。1以上の特定の実施形態では、層200はAlOを含んでもよく、付加層300はSiOまたはAlを含んでもよい。別の変形例では、多層基体は、SiOまたはAlの第1の付加層と、SiOおよびAlの他方を含む第2の付加層とを含み得る。第1の付加層および第2の付加層は、異なる材料または同じ材料を含み得る。第1の付加層および第2の付加層は、互いに同じもしくは異なる厚さ、または(それぞれもしくは共に)層の厚さと同じもしくは異なる厚さを示し得る。
【0090】
一部の実施形態において、付加層はクラック軽減層を含んでもよく、そのような層は、層と基体との間に配設され得る。クラック軽減層の例は、2013年10月11日に出願された米国特許出願第14/052,055号明細書、2013年10月14日に出願された米国特許出願第14/053,093号明細書、および2013年10月14日に出願された米国特許出願第14/053,139号明細書に記載されており、それらの内容の全体を参照することにより本明細書に組み込む。
【0091】
1以上の実施形態において、層200で用いられる材料は、層200の様々な特性を最適化するよう選択され得る。一部の実施形態では、層200の酸素含有量が、層200の光学特性および/または機械的特性(例えば、硬さ、弾性率等)を調整するために変更され得る。例えば、視野角が垂直入射(即ち、0度)から斜入射(例えば、70度以上、75度以上、80度以上、85度以上、86度以上、87度以上、88度以上、89度以上、または89.5度以上であるが、斜入射は90度未満であり得る)へと変化するにつれて反射色の点が変化するのを抑制するために、Al、SiO、SiO、AlO等の酸素含有材料が用いられ得る。1以上の特定の実施形態では、層200の屈折率および/または層200の他の特性を制御するために、層200またはそのサブ層のいずれかにおける酸素の量が調整され得る。
【0092】
1以上の実施形態において、層200で用いられる材料は、層の耐スクラッチ性を最適化するよう選択され得る。例えば、特定の特性(例えば、硬さ)のために、Si、AlN、SiC等が用いられてもよく、これらの材料は、層200で用いられる材料の少なくとも50重量%を構成し得る。これらの材料は、任意に、層200で用いられる材料の55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、または75重量%以上を構成してもよい。
【0093】
層200は、当該技術分野において知られている任意の方法を用いて形成され得る。適切な方法としては、例えば、化学蒸着(例えば、プラズマ化学蒸着)、物理蒸着(例えば、反応性もしくは非反応性のスパッタリングもしくはレーザーアブレーション)、熱的もしくは電子ビーム蒸着、および/または原子層堆積等の、不連続または連続真空堆積法が挙げられる。1以上の特定の実施形態では、層200は、原子層堆積以外の方法によって形成され得る。層200は、層が原子層堆積によって形成された場合よりも共形性が低くてもよく、または原子層堆積によって形成された他の層よりも共形性が低くてもよい。幾つかの事例では、基体100は微小クラックを含み得るが、層200は、ガラスに見出される微小クラックのかなりの数を埋めない。
【0094】
多層基体
1以上の実施形態において、多層基体10は、バーコビッチ圧子硬さ試験によって、約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nm〜約300nm、約100nm〜約400nm、約100nm〜約500nm、約100nm〜約600nm、約200nm〜約300nm、約200nm〜約400nm、約200nm〜約500nm、または約200nm〜約600nm)の押し込み深さに沿って測定された、約8GPaより高い硬さを有する。1以上の実施形態では、多層基体10は、上記の押し込み深さに沿って、約16GPa以上、約17GPa以上、約18GPa以上、約19GPa以上、約20GPa以上、約22GPa以上の硬さを有する。1以上の特定の実施形態では、多層基体10は、バーコビッチ圧子硬さ試験によって、約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nm〜約300nm、約100nm〜約400nm、約100nm〜約500nm、約100nm〜約600nm、約200nm〜約300nm、約200nm〜約400nm、約200nm〜約500nm、または約200nm〜約600nm)の押し込み深さに沿って測定された、約15GPa〜約25GPa、約16GPa〜約25GPa、約18GPa〜約25GPa、約20GPa〜約25GPa、約22GPa〜約25GPa、約23GPa〜約25GPaの範囲内、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲内の測定された硬さを示し得る。幾つかの事例では、多層基体10の硬さは、層200の存在に起因して、下にある基体100の硬さより高い。
【0095】
1以上の実施形態において、多層基体は、その平均曲げ強度によって特徴づけられ得る。本明細書で用いる「平均曲げ強度」という用語は、多層基体(例えば、多層基体10および/または基体100)の曲げ強度、または、例えば、リング・オン・リング、ボール・オン・リング、またはボール落下試験等の方法で試験される、曲げ負荷下において多層基体が破壊または破損される強度を指すことが意図される。「平均曲げ強度」は、少なくとも5個のサンプル、少なくとも10個のサンプル、少なくとも15個のサンプル、または少なくとも20個のサンプルを用いて測定される。「平均曲げ強度」は、負荷、応力、または当該技術分野において知られている他の測定パラメータに関する数学的な平均も含み得る。より広義には、「平均曲げ強度」は、例えば、ボール落下試験等の他の試験によっても定義されてもよく、この場合、表面の曲げ強度は、破壊を生じずに耐えることができるボール落下高さによって特徴づけられる。また、多層基体の表面強度を、装置構成において試験してもよく、この場合、多層基体(例えば、多層基体10および/または基体100)物品を含む電化製品または装置を、表面曲げ応力を生じ得る複数の異なる向きで落下させる(即ち、落下試験)。一部のケースでは、「平均曲げ強度」には、例えば、3点曲げまたは4点曲げ試験等の、当該技術分野において知られている他の方法によって試験される強度も組み込まれ得る。幾つかのケースでは、これらの試験方法は、物品(例えば、多層基体10および/または基体100)の縁部強度によって大きく影響され得る。
【0096】
1以上の実施形態において、多層基体は、リング・オン・リング試験によって測定された、本明細書に記載される、摩耗前の多層基体の平均曲げ強度と略同じ摩耗後の平均曲げ強度を示す。多層基体または基体が摩耗した後の平均曲げ強度は、「摩耗後の強度」と称され得る。本明細書で用いる「摩耗後」という用語は、基体または多層基体の表面が摩耗される過程を含む。そのような摩耗後の基体または多層基体の平均曲げ強度は、基体または多層基体が使用に供された後の基体または多層基体の強度の示唆を提供できる。換言すれば、摩耗後の強度は、基体または多層基体の平均曲げ強度が、傷または表面損傷が生じた後も使用中の目標レベルより高いままであるように、基体または多層基体が傷または表面損傷に対してどのくらい耐性があるかの示唆を提供する。本明細書で用いる、基体または多層基体の表面を摩耗させる1つの方法は、一般的に、空気を用いて粒子(例えば、SiC)を加速させて、基体または多層基体の表面に衝突させる方法を規定するASTM Method C158-02に記載されている。多層基体の平均曲げ強度は、リング・オン・リング破壊試験によって測定される。
【0097】
リング・オン・リング破壊試験は、基体または多層基体を負荷リングと支持リングとの間に配置することを含む。多層基体を試験する場合には、多層基体の層200が配設されている側が、負荷リングと支持リングとの間で張力がかかった状態で保持される。本明細書に記載される実施形態では、負荷リングは0.5インチ(1.27センチメートル)の直径を有し、支持リングは1インチ(2.54センチメートル)の直径を有する。そのような実施形態の試験パラメータは、約1.6mmの接触半径と、1.2mm/分のクロスヘッド速度とを含む。平均曲げ強度を測定するには、基体または多層基体が破壊または破損される応力を決定するために、負荷リングに負荷が加えられる。試験を行う前に、割れたガラスの破片を収容するための接着フィルムを基体または多層基体の両側に配置してもよい。
【0098】
1以上の実施形態において、多層基体10は、摩耗前の第1の平均曲げ強度と、摩耗後の第2の平均曲げ強度とを示し、第2の平均曲げ強度は、第1の平均曲げ強度と略同じであるか、または第1の平均曲げ強度の少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも86%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%である。
【0099】
本明細書において開示される多層基体10の実施形態は、落下試験を繰り返し受けた際、または多層基体の主表面上に物体を落下させる試験を繰り返し受けた際に、改善された耐破壊性を示す。当業者は、落下試験のための様々な実験パラメータを考え得るが、本明細書に記載される多層基体10は、落下試験において少なくとも100cmの高さから、少なくとも150cmの高さから、少なくとも200cmの高さから、または約220cmの高さから落下面上に落下させた場合でも、破壊に耐えることができる。当業者は、多層基体の主表面の上に物体を落下させる試験のための様々な実験パラメータを考え得るが、1以上の実施形態では、本明細書に記載される多層基体10は、少なくとも10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cm、70cm、80cm、90cm、100cm、110cm、120cm、130cm、140cm、150cm、160cm、170cm、180cm、190cm、200cm、210cm、または220cm、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲の高さから、多層基体上にそのような物体を落下させた場合でも、破壊に耐えることができる。この試験は、ボール落下試験と類似もしくは同じであってもよく、または、多層基体の表面に衝撃を与え得る“実世界の”物体をシミュレーションするよう選択された特定の物体を用いてもよい(例えば、物体は、特定の硬さ、および/または、ぎざぎざのもしくは粗い表面を有し得る)。本明細書で用いる「破壊」という用語は、層200、基体100、および/または多層基体10におけるクラック、欠け、または機械的欠陥をも含む。
【0100】
多層基体の改善されたサバイバビリティを更に示すものとして、多層基体10は、平坦な角度、平坦でない角度、またはそれらの両方の角度で落下面に接触した場合でも、破壊に耐えることができる。本明細書で用いる「平坦な角度」とは、落下面に対して180°を意味する。「平坦でない角度」としては、落下面に対する様々な角度が考えられる。以下の例では、平坦でない角度は落下面に対して30°である。同様に、多層基体の改善されたサバイバビリティを示すものとして、多層基体10は、物体(例えば、硬いおよび/または鋭い物体)が、本明細書で定義する平坦な角度、平坦でない角度、またはそれらの両方の角度で多層基体に接触した場合でも、破壊に耐えることができる。
【0101】
落下試験が考えられる1以上の実施形態において、落下面は、物品および/または装置(例えば、電子装置)が、例えばアスファルト等の“実世界の”表面の上に落下した際に(生じ得る損傷をシミュレーションするよう構成された摩耗面である。摩耗面の上への繰り返しの落下に耐えることは、アスファルト上、並びに、例えば、コンクリートや花こう岩等の他の表面上におけるより良好な性能を示唆する。摩耗面としては様々な材料が考えられる。特定の実施形態では、摩耗面は、支持体(例えば、鋼板)上に配置された、例えば、SiCサンドペーパー、人工砂サンドペーパー、またはそれらに匹敵する硬さおよび/または鋭さを有する、当業者に知られている任意の摩耗材料等のサンドペーパーである。既知の範囲の粒子の鋭さ、コンクリートやアスファルトよりも一貫した表面トポグラフィ、並びに、所望のレベルの試料表面損傷を生じる粒径および鋭さを有することから、粒度180およびの平均粒径約80μmのSiCサンドペーパーが用いられ得る。本明細書に記載される落下試験において用いられ得る市販の粒度180のSiCサンドペーパーの限定しない1つの例は、インダサ社(Indasa)製の粒度180のRhynowet(登録商標)SiCサンドペーパーである。
【0102】
上記の試験において、コンクリートやアスファルトの落下面を繰り返し使用する際に観察される“老化”の影響を回避するために、各落下の後にサンドペーパーを交換してもよい。アスファルトの性能には、老化に加えて、異なるアスファルトのモフォロジー、並びに/または、異なる温度および湿度も影響し得る。コンクリートやアスファルトとは異なり、サンドペーパーである摩耗面は、全てのサンプルにわたって一貫した損傷の量をもたらす。
【0103】
更に、落下試験(以下に示す例)においては、様々な落下高さが用いられる。例えば、落下試験は、最小落下高さ(例えば、約1メートルの落下高さ)を用いてもよい。そして、約20個の多層基体のサンプルセットをそれぞれこの落下高さから落下させ、各サンプルが破壊されたか否かを観察する。多層基体(または試験されている基体もしくは他の材料)が破壊されると、試験は中断される。本明細書で用いる「破壊」という用語は、多層基体または基体のみ(むき出しの基体に対して落下試験が行われる場合)の全厚さを貫通するクラックの存在を含む。落下高さから落下後も多層基体が破壊されない場合にも、落下試験は中断されてもよく、または、その最大高さから、多層基体(または試験されている基体もしくは他の材料)を繰り返し落下させてもよい。多層基体、基体、または他の材料が装置に含まれる場合にも、上述の落下試験の手順は同じであってもよく、その場合には、装置が、多層基体、基体、および/または他の材料と同様の方法で落下試験を受ける。多層基体と落下面との間で衝撃が生じる表面を制御するために、多層基体の向きが制御されてもよい。具体的には、多層基体の向きは、層が配設されている表面上で衝撃が生じるように制御され得る。
【0104】
多層基体の表面の上に物体を落下させる試験では、層200を含む多層基体の表面が、落下してくる物体に晒される。換言すれば、層200を含む多層基体10の表面は、落下してくる物体によって付与される曲げ応力を経験する。本明細書に別様で記載されたように、物体は、公知のボール落下試験方法に従って選択されてもよく、並びに/または、多層基体10の表面に曲げ応力を加えるのと同時にまたは直前に表面に損傷(例えば、スクラッチ)を与えるよう、特定の硬さの、および/もしくは鋭い、および/もしくはぎざぎざした表面として選択されてもよい。そのような実施形態では、層200を含む多層基体10の表面は、表面損傷および曲げ応力を経験する。
【0105】
多層基体に曲げ応力が加えられるのと同時にまたは直前に、多層基体10の表面が損傷される、試験の他のバリエーションが用いられてもよい。例えば、多層基体の表面は、表面に沿ってサンドペーパーで擦ること、砂の粒子を表面に落下させること、または吹きつけること等によって損傷されてもよく、その後、多層基体に対して曲げ応力試験(例えば、ボール落下、リング・オン・リング、またはボール・オン・リング)を行ってもよい。
【0106】
多層基体10の表面の上に物体を落下させる試験においては、物体の様々な落下高さが用いられる。例えば、多層基体10の上に物体を落下させる試験は、開始時の最小落下高さ(例えば、約10〜20cmの落下高さ)を用いてもよく、一連の落下を行うために、高さを一定のまたは可変の増分で増加させてもよい。多層基体(または試験されている基体もしくは他の材料)が破壊されたら、試験は中断される。或いは、落下高さが最大落下高さ(例えば、約220cmの高さ)に達しても、物体を表面に落下させた後に多層基体(または試験されている基体もしくは他の材料)が破壊されない場合にも、試験は中断されてもよく、または、その最大高さから、物体を繰り返し多層基体(または試験されている基体もしくは他の材料)に落下させてもよい。多層基体、基体、または他の材料が装置または物品に含まれる場合にも、上記の試験手順は同じであってもよく、その場合、装置または物品が、多層基体、基体、および/または他の構成要素と同様の方法で試験を受ける。
【0107】
1以上の実施形態においては、少なくとも約60%のサンプルが、本明細書に記載される落下試験を耐える。別の実施形態では、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%のサンプルが、本明細書に記載される落下試験を耐える。そのような実施形態では、多層基体10は、少なくとも60%のサバイバビリティ(または少なくとも65%のサバイバビリティ、少なくとも70%のサバイバビリティ、少なくとも75%のサバイバビリティ、少なくとも80%のサバイバビリティ、少なくとも85%のサバイバビリティ、もしくは少なくとも90%のサバイバビリティ)を有するものとして特徴づけられる。
【0108】
1以上の実施形態では、用いられている下にある基体100に関わらず、本明細書における多層基体10は改善された耐スクラッチ性を示す。更に、基体が強化されたガラスまたは強化されていないガラスを含む場合の、多層基体10の耐破壊性も観察した。多層基体10の耐破壊性は、基体が結晶質の基体および/または(ガラスを含むもしくは除外した)非晶質の基体を含むかに関わらず観察され得る。そのような改善は、層200が、(例えば、堆積条件もしくはプロセス、または他の原因によって)層200内に存在する傷、または(例えば、多層基体10と落下面との間で生じた衝撃によって)層に生じた傷が、基体100内にまで生じるまたは侵入するのを防止する役割を果たしていることを示す。
【0109】
1以上の実施形態において、基体100の強度、特に、基体がガラス基体を含む場合の基体100の強度は、耐破壊性のレベルにおける役割を果たす。上述したように、強化されていないガラス基体が層200と組み合わされた場合であっても、落下試験では改善された耐破壊性が示されるが、強化された基体が層200と組み合わされた場合には、落下試験において、(むき出しのガラス基体および/または層200と組み合わされた強化されていない基体と比較して)更に高い耐破壊性の改善が示された。1以上の実施形態において、深い層の深さ(例えば、>50μm)を有する、および/または特定のDOCにおいて何らかのCSがあるように強化されたガラス基体を含む材料は、落下試験において更に高い耐破壊性を示す。
【0110】
1以上の実施形態において、多層基体10は、可視領域(例えば、380nm〜780nm)にわたって決定される70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、または90%以上の平均透過率を示す。一部の特定の実施形態では、多層基体10は、約90.5%以上、91%以上、91.5%以上、92%以上、92.5%以上、93%以上、93.5%以上、94%以上、94.5%以上、または95%以上の平均透過率を示す。幾つかの変形例では、多層基体10は略不透明であり、および/または、可視領域(例えば、380nm〜780nm)にわたって約10%以下の平均透過率を示し得る。例えば、上記平均透過率は、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、または0%、並びに、それらの間の全範囲および部分的な範囲内であり得る。
【0111】
1以上の実施形態において、多層基体10は、可視領域(例えば、380nm〜780nm)にわたって10%以下の平均全反射率を有する。例えば、多層基体10は、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下の全反射率を有し得る。一部の特定の実施形態では、多層基体10は、6.9%以下、6.8%以下、6.7%以下、6.6%以下、6.5%以下、6.4%以下、6.3%以下、6.2%以下、6.1%以下、6.0%以下、5.9%以下、5.8%以下、5.7%以下、5.6%以下、5.5%以下の平均全反射率を示す。1以上の実施形態によれば、多層基体10は、基体100の全反射率と同じかまたはそれより低い全反射率を有する。
【0112】
多層基体10は、層200の上、または基体100の層200とは反対側の表面の上(例えば、図1に示されている第2の主表面112の上)に配設された1以上の機能層を含んでもよい。そのような機能層は、IR遮断層、UV遮断層、導電層、半導体層、電子装置層、薄膜トランジスタ層、タッチセンサ層、画像ディスプレイ層、蛍光層、リン光層、発光層、波長選択的反射層、ヘッドアップディスプレイ層、反射防止層、グレア防止層、防汚層、セルフクリーニング層、バリア層、パッシベーション層、気密層、拡散遮断層、指紋付着防止層、またはそれらの組合せを含み得る。
【0113】
本開示の第2の態様は、本明細書に記載される多層基体10を含む装置および/または物品に関する。多層基体10は、装置および/または物品のハウジングの一部または全体として用いられ得る。多層基体10は、装置および/または物品に含まれるディスプレイのカバーとしても用いられ得る。例示的な装置としては、電子装置(例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ビデオプレイヤー、情報端末装置、ラップトップコンピュータ等)、建築上の構造物(例えば、カウンタートップまたは壁)、電化製品(例えば、調理器、冷蔵庫、および食洗器の扉等)、情報ディスプレイ(例えば、ホワイトボード)、自動車部品(例えば、ダッシュボードのパネル、フロントガラス、ウィンドウ部品等)等が挙げられる。
【0114】
本開示の別の態様は、本明細書に記載される物品および/または装置を形成する方法に関する。1以上の実施形態において、上記方法は、本明細書に記載されるように、両側にある主表面を含む基体を設けることと、第1の主表面の上に層200を設けて、物品および/または装置に組み付けられた際に、装置を少なくとも100cmの高さから落下面上に落下させる試験において破壊に耐えることができる多層基体、または、物体を少なくとも100cmの高さから多層基体の上に落下させる試験において破壊に耐えることができる多層基体を形成することとを含む。上記方法は、多層基体を装置に組み付けることも含む。1以上の実施形態において、上記方法は、上記層を、原子層堆積、化学蒸着、物理蒸着、熱蒸着またはそれらの組合せによって配設することを含む。一部の実施形態において、上記方法は、上記層を、原子層堆積以外の方法によって配設することを含む。1以上の特定の実施形態において、得られた層は、原子層堆積によって形成される層より共形性が低い。
【実施例】
【0115】
以下の例によって、様々な実施形態が更に明確になる。
【0116】
例1
表1に示されるように、実施例AおよびB、並びに比較例CおよびDを調製した。実施例Aに従って、1mmの厚さと、110mmの長さと、56mmの幅とを各々が有する5個の強化されたガラス基体を設けることにより、5個のサンプルを作製した。このガラス基体はアルミノボロシリケートガラスを含み、このアルミノボロシリケートガラスは、少なくとも約50モル%のSiO、約12モル%〜約22モル%のAl、約4.5モル%〜約10モル%のB、約10モル%〜約20モル%のNaO、0モル%〜約5モル%のKO、少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、またはそれらの組合せを含み、0モル%≦MgO≦6および0≦ZnO≦6モル%である組成を有した。約350℃〜450℃の温度範囲内に加熱された溶融硝酸カリウム(KNO)槽にガラス基体を3〜8時間にわたって浸漬するイオン交換プロセスを用いて、これらのガラス基体を、少なくとも約700MPaのCSおよび少なくとも約40μmのDOLを示すよう強化した。DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって、各ガラス基体の片側にSi層を堆積させた。この層は、約0.5mTorrの圧力で、約109.6℃の温度で、約60sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、2.1kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングされた。イオンビームは、0.2kWの電力で、100sccmの窒素を用いて発生させた。実施例Aのサンプル上に得られたSi層は、約2μmの厚さを有した。
【0117】
実施例Bに従って、実施例Aの基体と同じ組成および寸法を有する10個のガラス基体を設けることにより、10個のサンプルを作製した。これらのガラス基体は強化されなかった。実施例Aのサンプルにおいて用いられた層と同じSi層を、実施例Aと同様の方法で、実施例Bの各ガラス基体の片側に形成した。実施例Bのサンプル上に得られたSi層は、約2μmの厚さを有した。
【0118】
比較例Cに従って、実施例Aのガラス基体と同じ組成、寸法、CS、およびDOLを有する10個のガラス基体を設けることにより、10個のサンプルを作製した。比較例Cのサンプルに用いられたガラス基体は、いかなる層またはコーティングとも組み合わされなかった。
【0119】
比較例Dに従って、実施例Aの基体と同じ組成および寸法を有するガラス基体を設けることにより、1個のサンプルを作製した。このガラス基体は強化されず、いかなる層またはコーティングとも組み合わされなかった。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例A、実施例B、比較例Cおよび比較例Dに従った各サンプルを携帯電話に組み付けた。アスファルトの落下面を用いた落下試験を用いて、これらの携帯電話を試験した。図9は、多層基体または基体が落下面と接触する少なくとも1つの向きを含む複数の異なる向きまたは位置を用いて、各携帯電話サンプルを1メートルの高さから落下させた後の、落下試験を耐えたサンプルの割合(%)を(x軸に沿って)示す。
【0122】
比較例Dは、上記で設けたアスファルトの落下面に落下させた際に壊れた。比較例Cのサンプルの半分は、アスファルトの落下面に落下させた際に壊れた。実施例Bのサンプルの20パーセントは、アスファルトの落下面に落下させた際に耐えた。実施例Aに従ったサンプルの全ては、アスファルトの落下面に落下させた際に耐えた。
【0123】
例2
実施例Eを9個のサンプルとして調製し、そのうち8個を、以下に示すように、バークレー社(Berkeley)の砂およびSiC粒子を用いて摩耗させた。1mmの厚さと、50mmの長さと、50mmの幅とを各々が有する9個の強化されたガラス基体を設けることにより、これらの9個のサンプルを調製した。用いられたガラス基体は、実施例1と同じ組成を有し、実施例1のガラス基体と同様の方法で強化され、同じCSおよびDOLを示した。DCマグネトロンシステムを用いたDCスパッタリングプロセスによって、各ガラス基体の片側にSi層を形成した。この層は、約6.9×10−4Torrの圧力で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、4kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングされた。イオンビームは、0.310kWの電力で、115sccmで流された窒素の存在下で発生させた。堆積速度は1.4Å/秒であり、合計堆積時間は230分とした。得られたSi層は約2μmの厚さを有した。
【0124】
ベースライン平均曲げ強度を提供するために、実施例Eの摩耗していないサンプル1の平均曲げ強度を、リング・オン・リング強度試験を用いて測定した。実施例Eのサンプル2〜9を、表2に示されるように摩耗させてから、リング・オン・リング強度試験を行った。用いられたリング・オン・リング強度試験の手順は、本開示に開示されている。サンプル2〜5を摩耗させるために、USシリカ社(U.S. Silica)によって米国ウェストヴァージニア州バークレー・スプリングスから供給され、70〜100メッシュになるようふるいにかけられたバークレー砂を用いた。サンプル6〜9は、米国ニューヨーク州ナイアガラフォールに所在するワシントン・ミルズ社(Washington Mills)からCarborexC−6の商品名で入手可能な粒度90のSiC粒子を用いて摩耗させた。
【0125】
【表2】
【0126】
図10は、実施例Eのサンプル1〜5の平均曲げ強度を示す。図11は、実施例Eのサンプル1および6〜9の平均曲げ強度を示す。図10および図11の両方において、平均破壊負荷(kgf)はサンプル1(摩耗していないサンプル)を基準に正規化されている。換言すれば、摩耗後の各サンプル(例えば、サンプル2〜9)の平均破壊負荷を、サンプル1(摩耗していないサンプル)の平均破壊負荷で割った。図10および図11に示されている正規化されたプロットは、サンプルが摩耗していないときと、その後、複数の異なる摩耗材および摩耗圧力を用いて摩耗させられたときとの、平均破壊負荷の相対的な変化を示すものである。図10および図11は、サンプルが複数の異なる摩耗材および摩耗圧力を用いて摩耗させられた後に維持される強度の割合も示している。図10および図11に示されるように、実施例Eに従ったサンプルの平均曲げ強度は、摩耗前も摩耗後も略同じであった。
【0127】
例3
本明細書において開示される多層基体の改善された耐スクラッチ性を、むき出しの基体と比較してより浅いスクラッチ深さおよびより狭いスクラッチ幅を示すことに関して示すために、実施例Fおよび比較例Gのそれぞれにつき3個のサンプルを調製した。
【0128】
実施例Fの4個のサンプルは、両側にある主表面を各々が有する3個の化学的に強化されたガラス基体を設け、各サンプルの主表面の一方の上に、SiOを含む層を形成することによって調製された。これらのガラス基体は、実施例1および2で用いられたガラス基体と同じ組成物を含み、少なくとも約700MPaのCSおよび少なくとも約40μmのDOLを示すよう化学的に強化された。これらのガラス基体は、約1mmの厚さと、約50mmの長さと、約50mmの幅とを有した。SiO層は、約2μmの厚さを有し、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって、実施例2のSiO層を形成するのに用いたのと同じ条件を用いて堆積された。比較例Gの4個のサンプルは、実施例Fのサンプルで用いられたガラス基体と同じ組成、寸法、圧縮応力、および圧縮応力層の厚さ(DOL)を有する3個の化学的に強化されたガラス基体を設けることによって調製された。実施例Fおよび比較例Gの各サンプルを、ダイヤモンドのバーコビッチ圧子を用いて、4通りの異なる負荷で、10μm/秒の速度で、サンプルの表面に沿って少なくとも100μmまたは少なくとも約1mmの長さにわたってスクラッチした。実施例Fのサンプルについては、ガラス基体の層を含む側をスクラッチした。各サンプル上のスクラッチの幅および深さを測定したものを、表3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
例4
本明細書において開示される多層基体の改善された耐スクラッチ性を、むき出しの基体と比較してより浅いスクラッチ深さおよびより狭いスクラッチ幅を示すことに関して示すために、実施例Hおよび比較例Iに従った4個のサンプルを調製した。
【0131】
両側にある主表面を各々が有する4個の化学的に強化されたガラス基体を設け、各サンプルの主表面の一方の上にAlNを含む層を形成することにより、実施例Hの4個のサンプルを調製した。これらのガラス基体は、実施例1および2で用いられたガラス基体と同じ組成物を含んでおり、少なくとも約700MPaのCSおよび少なくとも約40μmのDOLを示すよう化学的に強化された。これらのガラス基体は、約1mmの厚さと、約50mmの長さと、約50mmの幅とを有した。各ガラス基体の上に配設されたAlN層は、約2μmの厚さを有し、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって堆積させた。上記AlN層は、約5.88×10−4Torrの圧力で、約160℃の温度で、約74.91sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、3.9kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングされた。イオンビームは、0.224kWの電力で、98.84sccmおよび24.66sccmでそれぞれ流された窒素およびアルゴンの存在下で発生させた。堆積速度は1.4Å/秒であり、合計堆積時間は113分とした。実施例Hのサンプル上に得られたAlN層は、約1.175μmの厚さを有した。
【0132】
実施例Hのサンプルで用いられたガラス基体と同じ組成、寸法、圧縮応力、および圧縮応力層の厚さを有する4個の化学的に強化されたガラス基体を設けることにより、比較例Iの4個のサンプルを調製した。実施例Hおよび比較例Iの各サンプルを、ダイヤモンドのバーコビッチ圧子を用いて、10μm/秒の速度で、サンプルの表面に沿って少なくとも100μmまたは少なくとも約1mmの長さにわたって、4通りの異なる負荷でスクラッチした。実施例Hのサンプルについては、ガラス基体のAlN層を含む側をスクラッチした。各サンプル上のスクラッチの幅および深さを測定したものを、表4に示す。
【0133】
【表4】
【0134】
例5
本明細書において開示される多層基体の改善された機械的特性(例えば、スクラッチ深さ減少)および関連付けられた光学特性(例えば、無色の透過色および/または反射色)を示すために、実施例JおよびKを調製した。結果を表5および表6に示す。
【0135】
実施例Jに従った2個のサンプルを調製した。これらのサンプルは、以下の表5に示すように、約2μmの厚さを有するAlNを含む層を有するガラス基体(実施例J1)、および約2μmの厚さを有するSiOを含む層を有するガラス基体(実施例J2)を含んだ。これら2個のサンプルを形成するために用いられた基体は、実施例1および2で用いた基体と同じとした。基体は、2インチ(5.08センチメートル)×2インチの長さおよび幅を有し、約1mmの厚さを有した。
【0136】
実施例J1は、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によってAlN層を堆積させることによって調製した。このAlN層は、1.7mTorrの圧力で、約100sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、約4kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングされた。イオンビームは、約0.434kW〜約0.345kWの範囲内の電力で、約50sccmおよび75sccmの流量でそれぞれ流されたアルゴンガスおよび窒素ガスの混合ガスを用いて発生させた。堆積時間は120分間とし、堆積速度は約3Å/秒であった。
【0137】
実施例J2に従ったSiO層を含むサンプルは、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって層を堆積させることによって調製した。このSiO層は、約0.5mTorrの圧力で、約60sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、6kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングされた。イオンビームは、0.18kWの電力で、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いて発生させた。
【0138】
実施例1および2で用いた基体と同じ(2インチ(5.08センチメートル)×2インチの長さおよび幅を有し、約1mmの厚さを有する)基体を用いて、実施例K1およびK2のそれぞれ1個のサンプルを調製した。実施例K1の基体は、AlO層、AlO層と基体との間に配設されたAlの第1の付加層、およびAlO層の上に配設されたSiOの第2の付加層と組み合わされた。Al付加層は、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって形成された。Al付加層は、0.4mTorrの圧力で、約50sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、約4kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングされ、イオンビームは、約0.6kWの電力で、アルゴン(約10sccmの流量で流された)と酸素(約40sccmの流量で流された)との混合ガスを用いて発生させた。Al層の堆積速度は約3Å/秒であり、得られた厚さは300nmであった。AlO層は、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって、Al付加層の上に形成された。AlO層は、約0.95mTorrの圧力で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、約4kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングされ、イオンビームは、約0.18kWの電力で、アルゴン(約25sccmの流量で流された)と、酸素(約2sccmの流量で流された)と、窒素(約50sccmの流量で流された)との混合ガスを用いて発生させた。AlO層の堆積速度は1.6Å/秒であり、得られた層は約2μmの厚さを有した。SiO付加層は、それぞれ30sccmおよび15sccmの流量で流されたアルゴンおよび酸素の存在下で、約0.8kWの電力を用いた電子ビームによって形成された。SiO付加層の堆積速度は5Å/秒であり、厚さは83nmであった。
【0139】
実施例K2の基体は、DCマグネトロンを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって形成されたSiO層と組み合わされた。SiO層は14回の一連の堆積サイクルで形成され、各サイクル間を、約0.76mTorrの圧力で、アルゴン(40sccmで流された)および窒素(20sccmで流された)の存在下で発生させたイオンビームを用いたクリーニング工程で分けた。1回目の堆積サイクルは、SiO層を、約0.86mTorrの圧力で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、約4kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングすることを含み、イオンビームは、酸素(約10sccmの流量で流された)および窒素(約115sccmの流量で流された)の存在下で発生させた。1回目の堆積サイクルの堆積速度は約1.4Å/秒であり、合計堆積時間10分とした。次の10回の堆積サイクルは、SiO層を、約0.75mTorr〜約8.88mTorr範囲内の圧力で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、約4kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングすることを含み、イオンビームは、酸素(約5sccmの流量で流された)および窒素(約115sccmの流量で流された)の存在下で発生させた。これら10回の堆積サイクルの堆積速度は約1.3Å/秒であり、堆積時間は各サイクルにつき28分とした。12回目および14回目の堆積サイクルは、SiO層を、それぞれ約0.84mTorrおよび0.82mTorrの圧力で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、約4kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングすることを含み、イオンビームは、酸素(約2sccmの流量で流された)および窒素(約115sccmの流量で流された)の存在下で発生させた。12回目および14回目の堆積サイクルの堆積速度はそれぞれ約1.3Å/秒であり、堆積時間はそれぞれ21分および4分とした。13回目の堆積サイクルは、SiO層を、約0.68mTorrの圧力で、約60sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、約4kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングすることを含み、イオンビームは、酸素(約100sccmの流量で流された)の存在下で発生させた。13回目の堆積サイクルの堆積速度は約0.5Å/秒であり、合計堆積時間は10分とした。得られたSiO層の厚さは約2.434μmであった。
【0140】
【表5】
【0141】
【表6】
【0142】
表5および表6に示されているスクラッチ深さの減少の測定に関して、実施例JおよびKに従ったサンプルによって示されたスクラッチ深さの減少は、むき出しの基体と比較したものである。むき出しの基体は、実施例JおよびKに従ったサンプルを調製するために用いられたと同じ基体であるが、これらの比較例のむき出しの基体は、層を含まないことが理解されよう。更に、実施例JおよびKに従ったサンプル上に形成されたスクラッチと比較するためのベースライン測定値を提供するために、これらの比較例のむき出しの基体を、実施例JおよびKに従ったサンプルと同じ方法でスクラッチした。むき出しの基体について得られたベースラインスクラッチ深さ測定値と、実施例JおよびKに従ったサンプルについて得られたスクラッチ深さ測定値とを用いて、スクラッチ深さの減少を算出した。
【0143】
表6に示されているCIELAB色空間座標は、分光光度計を用いたD65光源下での正反射率測定値から決定された。
【0144】
例6
携帯電話に組み付けた際の様々な基体および多層基体の耐破壊性を決定するために、143個のサンプルの携帯電話を調製した。表7は、各サンプルの属性を記載している。
【0145】
合計143個のサンプルのうち10個のサンプル(比較例L1〜L10)は、何も変更を加えていない市販の携帯電話とした。
【0146】
携帯電話サンプルのうち33個(実施例M1〜M33)は、比較例L1〜L10と同じ市販の携帯電話であるが、各携帯電話のカバーガラスを、約60.1モル%のSiO、約15.6モル%のAl、約16モル%のNaO、約3モル%のMgO、約5.1モル%のP、および約0.1モル%のSnOを含むガラス組成物を含むガラス基体に交換または改造した。このガラス基体の長さおよび幅の寸法は、それぞれ110mmおよび56mmとし、厚さは約1mmとした。実施例M1〜M33の携帯電話を改造するために用いた各ガラス基体は、携帯電話に組み込む前に化学的に強化され、約900MPaのCSおよび約40μm〜約45μmの範囲内のDOLを示した。
【0147】
組成、サイズ、CS、およびDOLに関して実施例M1〜M33で用いられたガラス基体と同じ15個のガラス基体を設けることにより、15個の携帯電話サンプル(実施例N1〜N15)を調製した。実施例N1〜N15の15個のガラス基体を、100nmの厚さを有する窒化ケイ素層でコーティングし、15個のガラス多層基体を形成した。このSi層は、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって、実施例N1〜N15の各ガラス基体の片側に堆積させた。この層は、約5.73×10−4Torrの圧力で、約99.9℃の温度で、約59.92sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、2.04kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングされた。イオンビームは、0.186kWの電力で、98.81sccmの窒素を用いて発生させた。これら15個のガラス多層基体を、比較例L1〜L10の携帯電話と同じ15個の携帯電話を改造するのに用いた。
【0148】
実施例M1〜M33で用いたガラス基体と組成およびサイズが同じ58個のガラス基体を設けることにより、58個の携帯電話サンプル(実施例O1〜O58)を調製した。これらのガラス基体を、表7に示されているように、層および任意に付加層と組み合わせて多層基体を形成し、各多層基体を用いて、比較例L1〜L10の携帯電話と同じ携帯電話を改造した。
【0149】
(実施例O1〜O15で用いた)15個のガラス基体を、実施例M1〜M33と同様の方法で化学的に強化したところ、約900MPaのCSおよび約40μm〜約45μmの範囲内のDOLを示した。実施例O1〜O15は、単一のAlO層と組み合わされた。AlO層は、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって、各ガラス基体の片側に堆積させた。この層は、約7.4×10−4Torrの圧力で、200℃の温度で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、4kWのDC電力を供給して、ターゲットからスパッタリングされた。イオンビームは、0.15kWの電力で、それぞれ2sccm、25sccm、および50sccmの流量で流された酸素、アルゴン、および窒素の存在下で発生させた。堆積速度は1.3Å/秒であり、堆積時間は275分とした。AlO層は約2マイクロメートルの厚さを有した。
【0150】
(実施例O16〜O30で用いた)15個のガラス基体を、約29重量%のNa+イオン濃度を有するKNO溶液槽中で450度で27時間にわたって化学的に強化し、375MPaのCSおよび約100μmのDOLを与えた。実施例O16〜O30は、実施例O1〜O15と同じプロセスを用いてガラス基体の上に形成された単一のAlON層と組み合わされた。得られたAlO層は約2マイクロメートルの厚さを有した。
【0151】
(実施例O31〜O39で用いた)9個のガラス基体を、実施例O16〜O30と同様の方法で化学的に強化し、その後、ガラス基体を第2の溶液槽に浸漬して、約375MPaのCS、約75μmのDOL、およびガラス基体の表面におけるCSのスパイクを与えた。実施例O31〜O39で用いた各ガラス基体は、AlO層、AlO層とガラス基体との間に配設されたAlの第1の付加層、およびAlO層の上に配設されたSiOの第2の付加層と組み合わされた。層、Alの第1の付加層、およびSiOの第2の付加層は、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって、各ガラス基体の片側に形成された。第1の付加層は、6.5×10−4Torrの圧力で、200℃の温度で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、4kWのDC電力を供給してスパッタリングされた。イオンビームは、0.155kWの電力で、20sccmおよび40sccmの流量でそれぞれ流されたアルゴンおよび酸素の存在下で発生させた。堆積速度は3Å/秒であり、堆積時間は8分とした。Al層は88.7nmの厚さを有した。AlO層は、7.6x10−4Torrの圧力で、200℃の温度で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、4kWのDC電力を供給してスパッタリングされた。イオンビームは、0.180kWの電力で、25sccm、4sccm、および50sccmの流量でそれぞれ流されたアルゴン、酸素、および窒素の存在下で発生させた。堆積速度は1.5Å/秒であり、堆積時間は217分とした。AlO層は約2マイクロメートルの厚さを有した。SiOの第2の付加層は、それぞれ30sccmおよび15sccmの流量で流されたアルゴンおよび酸素の存在下で、約0.8kWの電力を用いた電子ビームによって形成された。SiO付加層の堆積速度は5Å/秒であり、堆積時間は3分とし、厚さは33nmであった。
【0152】
(実施例O40〜O48で用いられた)9個のガラス基体を、イオン交換プロセスの時間および/または溶液槽の組成を変更した以外は実施例O31〜O39と同様の方法で化学的に強化し、約375MPaのCS、約125μmのDOL、およびガラス基体の表面におけるCSのスパイクを与えた。次に、これらのガラス基体を、AlO層、AlO層とガラス基体との間に配設されたAlの第1の付加層、およびAlO層の上に配設されたSiOの第2の付加層と組み合わせた。AlO層、第1の付加層、および第2の付加層は、実施例O31〜O39と同じ条件を用いて各ガラス基体上に形成された。層、第1の付加層、および第2の付加層の得られた厚さも、実施例O31〜O39と同じであった。
【0153】
(実施例O49〜O58で用いられた)10個のガラス基体の組成、CS、およびDOLは、実施例O1〜O15と同じとした。実施例O49〜O58で用いた各ガラス基体は、AlO層、AlO層とガラス基体との間に配設されたAlの第1の付加層、およびAlO層の上に配設されたSiOの第2の付加層と組み合わされた。層、第1の付加層、および第2の付加層は、DCマグネトロンシステムを用いたイオンアシストDCスパッタリング法によって、各ガラス基体の片側に形成された。第1の付加層は、7.5×10−4Torrの圧力で、200℃の温度で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、4kWのDC電力を供給してスパッタリングされた。イオンビームは、0.2kWの電力で、20sccmおよび40sccmの流量でそれぞれ流されたアルゴンおよび酸素の存在下で発生させた。堆積速度は2.5Å/秒であり、堆積時間は8分とした。Al層は88.6nmの厚さを有した。AlO層は、7.5×10−4Torrの圧力で、200℃の温度で、約75sccmの流量で流されたアルゴンの存在下で、4kWのDC電力を供給してスパッタリングされた。イオンビームは、0.180kWの電力で、25sccm、4sccm、および50sccmの流量でそれぞれ流されたアルゴン、酸素、および窒素の存在下で発生させた。堆積速度は1.6Å/秒であった。AlO層は約2マイクロメートルの厚さを有した。SiOの第2の付加層は、それぞれ30sccmおよび15sccmの流量で流されたアルゴンおよび酸素の存在下で、約0.8kWの電力を用いた電子ビームによって形成された。SiO付加層の堆積速度は5Å/秒であり、堆積時間は3分とし、厚さは33nmであった。
【0154】
実施例O16〜O30)と組成、サイズ、CS、およびDOLが同じガラス基体を設けることにより、27個の携帯電話サンプル(実施例P1〜P27)を調製した。これらのガラス基体は、層とも付加層とも組み合わされなかった。各ガラス基体を用いて、比較例L1〜L10の携帯電話と同じ携帯電話を改造した。
【0155】
【表7】
【0156】
次に、実施例L、M、N、O、およびPの各携帯電話サンプルを、1mの高さから、複数の異なる向きでアスファルトの落下面に落下させた。表8は、縁部の破損を生じたサンプルを含む、および縁部の破損を生じたサンプルを除外した、耐えたサンプルの割合を含む。縁部の破損を生じたサンプルを含む耐えたサンプルの割合(“(縁部の破損を生じたサンプルを含む)サバイバル率”)は、(ガラス基体、層、および任意に付加層を含む)ガラス基体または多層基体が何らかのタイプの破損を生じた携帯電話サンプルを含んだ。縁部の破損はガラス基体または多層基体(ガラス基体、層、および任意に付加層を含む)の耐破壊性に起因しないので、1)試験されたサンプルの合計数、および2)耐えたサンプルの数から、縁部の破損を生じたサンプルの数を除外して、縁部の破損を生じたサンプルを含まない耐えたサンプルの割合(“縁部の破損を生じたサンプルを除外したサバイバル率”)を算出した。従って、縁部の破損を生じたサンプルを除外したサバイバル率は、縁部の破損を生じた携帯電話サンプルを除外した母集団における、ガラス基体または多層基体(ガラス基体、層、および任意に付加層を含む)の主表面の破壊を生じなかった携帯電話サンプルの数を示す。実施例O1〜O58に関して、58個の携帯電話サンプルのうち、8個の携帯電話サンプルに縁部の破損が生じたため、携帯電話サンプルの合計数は50個に減り、ガラス基体または多層基体(ガラス基体、層、および任意に付加層を含む)の主表面の破壊を生じなかったサンプルの数は44個であった。従って、実施例O1〜O58のサバイバル率(44/50)は88%であった。“縁部の破損を生じたサンプルを含むサバイバル率”が、“縁部の破損を生じたサンプルを除外したサバイバル率”と同じである場合には、生じた破損は全て縁部の破損ではなかった。
【0157】
【表8】
【0158】
図12は、実施例L、M、N、O、およびPの(縁部の破損を除外した)サバイバル率のグラフを示す。
【0159】
1mにおけるアスファルトの表面への落下試験を耐えた携帯電話サンプルを、次に、30cmから開始して増加させた高さから、アスファルトの表面に落下させた。これらの携帯電話サンプルは、多層基体(ガラス基体、層、および任意に付加層を含む)またはガラス基体が最初に直接アスファルトの表面に接触するようにして落下させた。耐えた各携帯電話サンプルに対して、落下高さを10cmずつ増加させた。試験されたサンプルの平均破壊高さを、以下の表9および図13に示されているグラフに示す。
【0160】
実施例N、O、およびP、並びに、むき出しの結晶質の基体の耐スクラッチ性を、むき出しのガラス基体と比較した。実施例NおよびOで用いた少なくとも1つの多層基体(ガラス基体、層、および任意に付加層を含む)、実施例Pで用いた少なくとも1つのガラス基体、少なくとも1つのむき出しのサファイア基体、並びに、少なくとも1つのむき出しのガラス基体を、バーコビッチ圧子を用いて、同じ手順を用いてスクラッチした。多層基体(ガラス基体、層、および任意に付加層を含む)、サファイア基体、およびガラス基体のそれぞれについての結果のスクラッチの深さを比較した。スクラッチの深さは、当該技術分野において知られている方法を用いて、原子間力顕微鏡法(AFM)によって測定された。図14において、実施例N、O、およびPのスクラッチ深さの減少を、むき出しのガラス基体と比較した。更に、サファイア基体のスクラッチ深さの減少を、同上のガラス基体と比較した。図14に示されるように、サファイア基体は、むき出しのガラス基体と比較して、スクラッチ深さの35〜38%の減少を示した。実施例Nは、約5%〜約10%の範囲内のスクラッチ深さの減少を示した。実施例Oは、約45%〜約75%の範囲内のスクラッチ深さの減少を示した。やはりむき出しのガラス基体である実施例Pは、比較例のむき出しのガラス基体と比較して、スクラッチ深さの減少を示さなかった。
【0161】
実施例NおよびOで用いた多層基体(ガラス基体、層、および任意に付加層を含む)、実施例Pで用いたガラス基体、およびサファイア基体の透過色を、第1のガラス基体(参照1)および第2のガラス基体(参照2)の透過色と比較した。第1のガラス基体は、約65モル%のSiO、約14モル%のAl、約5モル%のB、約14モル%のNaO、および約2.5モル%のMgOの通常の組成を有した。更に、第1のガラス基体は、少なくとも約700MPaのCSおよび少なくとも約40μmのDOLを示すよう強化された。第2のガラス基体(参照2)は、約65モル%のSiO、約14モル%のAl、約7モル%のB、約14モル%のNaO、および約0.5モル%のKOの通常の組成を有した。図15A図15B、および図15Cに示されるように、分光光度計を用いたD65光源下での正反射率測定値から決定された、実施例NおよびOの多層基体(ガラス基体、層、および任意に付加層を含む)、実施例Pで用いたガラス基体、サファイア基体、第1のガラス基体、および第2のガラスの透過色を、透過色のCIELAB色空間座標に示した。
【0162】
本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく様々な変形および変更が行われ得ることは、当業者には自明である。
図1
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C