(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371401
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】注射針カバーシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
A61M5/32 500
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-551211(P2016-551211)
(86)(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公表番号】特表2017-505676(P2017-505676A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】US2015014722
(87)【国際公開番号】WO2015123095
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2016年8月10日
(31)【優先権主張番号】61/938,402
(32)【優先日】2014年2月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フォート,ジェシー アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,ジェレミー クリストファー
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−180904(JP,A)
【文献】
米国特許第04775369(US,A)
【文献】
米国特許第05527297(US,A)
【文献】
特開2000−167054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器の針用の針カバーシステムであって、
前記針用の汚染防止ポケットを形成するブーツと、ここで、前記ブーツは、密閉リング部と、前記ポケットの基部における針貫通可能端部と、前記密閉リング部と前記針貫通可能端部との間に延在し、前記針用の内部中空を有する本体とを備え、前記密閉リング部は、前記注射器の支持部と連続シールを形成するように構成され、前記本体は、前記針の先端の密閉リング部に向かって前記針貫通可能端部が移動して、前記針貫通可能端部を通過できるように圧潰可能に構成され、
前記注射器の前記支持部に向かって前記密閉リング部を押圧する固定カラー、および筒型基部を含む保護シェルと
を備え、
前記筒型基部は、前記ブーツを収容する中空内部を含み、
前記固定カラーと前記筒型基部の間の接続は、破断可能であり、
前記固定カラーは、前記破断可能な接続が製造時に前記筒型基部を取り除くために破断された後でも、前記注射器の前記支持部に対して前記密閉リング部を押圧したままである、前記針カバーシステム。
【請求項2】
前記ブーツは、弾性材料の単体構造を有する、請求項1に記載の針カバーシステム。
【請求項3】
前記固定カラーは、リング形状である、請求項1に記載の針カバーシステム。
【請求項4】
前記固定カラーは、前記ブーツの前記密閉リング部の外周を囲む、請求項3に記載の針カバーシステム。
【請求項5】
前記固定カラーは、複数の平面部を含む外径周を有する、請求項4に記載の針カバーシステム。
【請求項6】
前記ブーツは、前記密閉リング部を取り巻くとともに前記密閉リング部から外径方向に突出するリップを備え、前記リップは、前記固定カラーを挿入する環状中空を前記密閉リング部とともに形成する、請求項1に記載の針カバーシステム。
【請求項7】
前記ブーツ本体は、軸方向に延在する第1と第2の領域を備え、前記第1の領域の壁厚は、前記第2の領域の壁厚より薄く、前記ブーツ本体が圧潰して前記針貫通可能端部の前記密閉リング部へ向かう動きを許容すると、前記第1の領域の軸方向の圧潰を促進する、請求項1に記載の針カバーシステム。
【請求項8】
前記ブーツの第1の領域は、前記密閉リング部と前記ブーツの第2の領域との間に配設され、前記固定カラーは、軸方向で、前記ブーツの第2の領域を避けた部分に位置する、請求項7に記載の針カバーシステム。
【請求項9】
前記固定カラーは、軸方向で、前記ブーツの第1の領域を避けた部分に位置する、請求項8に記載の針カバーシステム。
【請求項10】
前記固定カラーは、前記密閉リング部を間に挟むことによって前記支持部に取り付け可能である、請求項1に記載の針カバーシステム。
【請求項11】
前記固定カラーは、前記固定カラーの内径周と前記注射器の前記支持部の外表面との摩擦係合によって、前記注射器に直接取り付けれる、請求項1に記載の針カバーシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、薬剤注射装置に関し、特に注射装置の針を覆うシステムに関する。
【0002】
数多くの異なる疾病で苦しむ患者は、自分で薬剤を注射しなければならない場合もある。こうした注射を容易に行うため、単体で使用する単純な充填済み針付き注射器や、使用者が起動すると、起動前には自動注射装置の筐体内に配設されていた充填済み注射器の針が自動的に使用者に挿入され、挿入された針を通して薬剤を自動的に投与する自動注射装置などのような、様々な装置が利用可能である。
【0003】
使用前に注射器の針の無菌状態を維持するため、様々な針カバーが提案されている。あるタイプの針カバーは、注射器を使用する前に使用者が取り外さなければならない。このような針カバーは、内側カバーと外側カバーを備える複合部品構造になっていることが多い。内側カバーは比較的可撓性、あるいは弾性を有し、針の周りに無菌バリアを提供して、例えば、針が延在する注射器のハブとシールを形成する。針がすでに注射器の内容物と流体連通しているデザインの場合などには、内側カバーは、針の先端をシールするようにしてもよい。外側カバーは、比較的剛性材料で形成され、内側カバーを保護するように周囲を囲むとともにそれと係合する。注射器から外側カバーを引くことによって、内側カバーが引き出され、使用する針が露出する。このタイプの針カバーの他の例では、剛性カバーをその周りに設けない可撓性カバーとして設けている。このような針カバーは有用ではあるが、注射に先立ち、使用者が注射器から取り外さなければならず、状況によっては不都合な場合もある。
【0004】
別のタイプの針カバーは、有利なことに、使用に先立ち使用者が注射器から取り外す必要がない。このタイプの針カバーの例として、WO 2013/032779で知られたものがある。このタイプの針カバーは、弾性材料から形成され、圧潰可能な本体を備える。カバー本体が直接、またはそれが使用される装置の開口部を間に介在させて間接的に注射箇所に対して押し付けられて潰れると、カバー内の針の先端が、カバーを突き破り、使用者に挿入できるようになる。
【0005】
針カバーを使用者が取り外さなくて済むことは、それが配設された装置の使用者とって、非常に便利である一方、そのような設計に潜在的な欠点がないわけではない。まず、針付き注射器用の圧潰可能な針カバーは、製造が複雑である。可撓性針カバーを針上に組み立てなければならないだけでなく、組み立てた時にも針を損傷から保護しなければならず、針カバーは、残りの全製造工程で取り扱うことになるため、人に針が刺さるという事故からも保護しなければならない。さらに、針カバーが針の周りにしっかりと取り付けられていないと、その取り付け後、例えばその後の製造、流通、使用準備中などに針カバーがその装置の残りの部分から外れたり、あるいはその部分と間の針無菌保持シールが失われたりする。
【0006】
よって、従来技術のこれらのそして他の欠点を1つ以上克服できる針カバーシステムを提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一形態では、本発明はブーツおよび固定カラーを有する注射器の針の針カバーシステムを提供する。ブーツは、針の汚染防止ポケットを形成する。ブーツは、密閉リング部と、ポケットの基部に形成された針貫通可能端部と、密閉リング部と針貫通可能端部との間で延在し針用の内部中空を有する本体を備える。密閉リング部は、注射器の支持部と連続的シールを形成するように構成されている。本体は、圧潰可能なため、針貫通可能端部が密閉リング部に向かって移動可能となり、針の先が針貫通可能端部を貫通する。固定カラーは、密閉リング部を、注射器の支持部に対して押し付ける。固定カラーは、保護シェルの残部である。残部は、製造中に残部と保護シェルの残余部分を切り離した後に残る部分で、残余部分はブーツ本体の周囲の保護位置から取り外される。
【0008】
本発明の有利な点の一つは、針カバーシステムは、それとともに使用する針の周囲にしっかりと取り付けられるように設けられる点である。
【0009】
本発明の別の利点は、針カバーシステムを設けて、それを取り付ける針付き装置の取り扱いを容易にすることができる点である。
【0010】
本発明の別の利点は、径方向にコンパクトな針カバーシステムを設けることができる点である。
【0011】
さらに本発明の別の利点は、多くの相互連結用の別部品を必要としない針カバーシステムを設けることができる点である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上記の、そして他の利点と、本発明の目的、そしてそれらを得るための方法については、添付の図面とともに次に示す本発明の実施形態の説明によって、より明らかになり、本発明をより深く理解できよう。
【
図1】
図1は、本発明の注射針カバーシステムを備えた針付き注射器の正面図であり、注射器を使用して内容物を注入する前の状態を示す。
【
図2】
図2は、
図1の針付き注射器と、注射針カバーシステムの長手方向断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に類似した正面図であるが、針付き注射器と注射針カバーシステムを分解して示す図である。
【
図4】
図4は、
図3の針付き注射器と、注射針カバーシステムの長手方向断面図である。
【
図5】
図5a,5b,5c,5d,および5eは、それぞれ、
図1の注射針カバーシステムのブーツの斜視図、正面図、長手方向断面図、底面図および上面図である。
【
図6A】
図6a,6bは、それぞれ、
図1の注射針カバーシステムの保護カバーの斜視図および正面図である。
【
図6B】
図6c,6d,および6eは、それぞれ、
図1の注射針カバーシステムの保護カバーの上面図、線6d−6dに沿って切った長手方向断面図、および線6e−6eに沿って切った長手方向断面図である。
【
図7】
図7は、
図1の針付き注射器および注射針カバーシステムの正面図であり、保護カバーを破壊する前、かつ、その残留カラーのみを残すために部分的に取り外した状態を示す。
【
図8】
図8は、
図7の針付き注射器と、注射針カバーシステムの長手方向断面図である。
【
図9】
図9は、点線で示される注射装置に取り付けられた
図1の針付き注射器と注射針カバーシステムの長手方向断面図であり、抽象的に示した使用者に注射している工程を示す。
【
図10】
図10は、本発明の別の注射針カバーシステムを有する針付き注射器を示す長手方向の部分断面図である。
【0013】
対応する参照符号は、複数の図面を通して対応する部分を示す。これら図面は、本発明の実施形態を表すものであるがこれらの、図面は、必ずしも正しい縮尺ではなく、図面によっては、本発明をより理解しやすくし、説明するために一部強調表示、もしくは省略している場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および2において、全体を20で示した本発明の注射針カバーシステムの第1の実施形態は、全体を130で示す針付き注射器に設置された、または取り付けられた状態で示されている。注射針カバーシステム20は、弾性ブーツ22と、固定カラー80を備え、針付き注射器130の針の注射器の使用前の無菌状態を維持することを意図するものである。
図1および2の針付き注射器130およびカバーシステム20の組立体は、さらに詳しく下記に説明する自動注射装置で使用するのに好適である。しかしながら、カバーシステム20は、本発明の範囲内において、標準充填済み注射器などのような異なる装置とともに使用してもよい。
【0015】
図5aから5eを参照する。ブーツ22は圧縮または液体射出成形シリコンなどのような射出成形エラストマーから硬度計でショアA硬度が40と60の間となる単一弾性部品として形成されている。ブーツ22は、長手軸の周りに均一に構成されており、よって、
図5cに示す断面図は、長手方向に延在する切断面に沿ったブーツ22を表す。ブーツ22は、円盤形状の先端26と、そこから基端側に延在する中空の本体30と、本体30の基端(proximal end)における密閉または取付け領域34とを備える。ブーツ22の材料には、ブーツ22が、注射器支持面とシールを形成すると液密の内部体積を提供できるように穴は設けていない。ブーツ22の材料は、製造中に装置の針を殺菌するために使用する殺菌ガスが透過できるものである。
【0016】
ブーツの先端26は、それを取り巻く先端(distal end)の環状領域40の厚みより中央領域38の厚みは薄くなっている。注射器針184の先端188は注射器の使用中に中央領域38を突き抜けるまたは貫通するよう意図している。中央領域38は、カバーシステム20を使用している自動注射装置の筐体端板の開口を挿入可能に充填するように先端に向けて凸となっており、その装置の開口は、注射中に注射針先端188を通過できるようにも構成されている。
【0017】
ブーツ本体30は、ブーツの先端26がブーツ取付け領域34に向かって移動可能となるように使用中は軸方向に圧潰されるように構成されている。ブーツ本体30は、先端26の外径周から始まり、そこから軸方向上方に延在する概ね円筒形のスリーブ形状の基部または領域44を備える。ブーツ本体30の内径は先端で先細になっている。基部44の上縁は、円錐台形外周を有し、さらに概ね円筒形スリーブ形状のブーツ上部または領域52へと続くブーツヒンジ領域48へと続く。上側領域52は、内径、外径とも、先端に向かうにつれわずかに先細になっている。上部52の外径周は、基部44の内径周より円周が小さく、内部に挿入可能となっている。ヒンジ領域48は、基部44または上部52のいずれかより構造が薄いので、基部44が針の先端188に対して基端方向にずれるにしたがって、基部44がヒンジ領域48を乗り越えてそれ自身がたたみこまれることで軸方向に圧潰しやすくなっている。また別の実施形態では、ブーツ本体の圧潰は他の本体構造でも実現可能である。例えば、本体がアコーディオン状に圧縮するベローズ型本体(bellows chaped body)を採用できる。
【0018】
本体の上部52の上縁は、針付き注射器1つとシールを形成するブーツ取付け領域34まで継ぎ目なく続く。ブーツ取付け領域34は、先端に行くにしたがって内径および外径ともにわずかに先細になっている。ブーツ取付け領域34は、リング形状であり、針付き注射器130の剛性支持部または表面201と連続的または360°のシールを形成する。取付け領域34は、本体上部52と構造は類似しているが、本体上部52が軸方向下側に位置しており、下記でさらに説明するように針付き注射器支持面201とシールを形成していない点が異なる。
【0019】
取付け領域34が支持面201としての役割を果たす注射器の外周に亘って嵌合する図示の実施形態では、取付け領域34の内面58は、その内側円周に沿って連続的に支持面とシールを形成する。図示の実施形態では、支持面201は、円筒形外周を有しているが、多角形のものなど、異なる形状を有する支持面の外周であっても、その取り付け領域の内面の内側円周全体と係合することによって連続的に密閉される。別の実施形態では、シールを形成する相手であるその取り付け領域の形状は、必要ならば変更可能である。
【0020】
さらに別の実施形態では、また、固定カラー(securement collar)が変形されている形態では、ブーツの取付け領域は、その外側円周に連続的に沿って、固定カラーをその支持面に、間にブーツ取付け領域を挟んで取り付け可能な状態で、内径側を向いた針付き注射器支持面と係合する外径面を有するように構成されていてもよい。
【0021】
図5cに示すように、取付け領域34の内部中空35とブーツ本体30の内部中空は、注射器針用のポケット60を形成するブーツ22となる。ブーツ先端26は、ポケット60の閉鎖された基礎を形成し、取付け領域34はポケット60の口を形成する。取付け領域34が針付き注射器とシールを形成すると、ポケットは、汚染防止となり、ポケット60内の針184は外部環境による汚染から保護される。
【0022】
取付け領域34の基端(proximal end)では、ブーツ22は、ブーツを取り扱いやすいように、外径側に突出するリップ65を有する。リップ65は概ねL字型であり、取付け領域34を包囲している。リップ65は、ブーツ取付け領域34の外径周68とともに、固定カラー80の上縁を収容するように構成された寸法および形状の環状中空部70を形成する。
【0023】
固定カラー80は、全体を85で示す保護カバーまたはシェルの残部であり、
図6aから6eにもさらに詳しく示している。保護カバー85は、射出成形されたポリスチレンプラスチックのような単一部品として形成された剛性の部品である。カバー85は、筒型基部87と、ネック領域96と、カラー80とを備える。基部87は、内部中空89を有する筒型スリーブで、ブーツ本体30を自由に受容できる寸法である。基部87の長さは、
図8に示すように先端側の針の先端188並びにブーツ本体30の高さ全体を保護して収容するだけの十分な長さを有する。基部87の先端88は2つの直径方向に配置され、ブーツが内部に配設された時に、ブーツの先端26の下方の基端側位置まで延びる切欠き90を有する。切欠き90は、下記に説明するように、使用中はカバー85のねじれを許容するツールを収容する。別の実施形態では、切欠き90は、先端88から間隔を空けて位置し、基部87のねじり並びに先端側への引っ張りを行うために工具を挿入できる開口に置き換えてもよい。
【0024】
カバー85の先細のネック領域96は、基部87の基端92とカラー80の間を延在する。ネック領域96は、カラー80とカバー基部87を破壊可能に接続している。
【0025】
図示の実施形態では、破壊可能なネック領域96は、カラー80と基部87との間の距離だけ延びる4つの三角形のフランジ98によって形成される。フランジ98は、カバーの円周方向に90°の間隔をあけている。ネック領域96を貫通する開口100は、フランジ98間で延在し、円周方向の長さは、フランジ98より大きく、ネック領域の円周方向の大部分を形成している。三角形のフランジ98は、それぞれ、基端92を形成する大きい脚領域102と、カラー80を形成する先端部104を有する。先端部104の円周方向の長さは、脚領域102の円周方向の長さと比較すると短く、図示の実施形態では、約1/5の比率であるので、製造工程中に、カラー80と基部87を互いに十分、意図的にねじると、脚部102が基部87から破断される代わりに先端部104がカラー80から表面を滑らかに破断またはせん断することができる。
【0026】
破壊後に残る固定カラーの形状により注射針カバーシステムが適切な機能を果たすのを妨げられない限り、異なる破断性接続(frangible connections)を設けてもよい。例えば、開口100で分離されている三角形のフランジ98ではなく、破断性接続は異なる形状の延在要素でも、固定部に切れ目を入れることによって実現できる。
【0027】
固定カラー80は、ブーツ取付け領域34の周りに嵌合する開口112を形成する内径周110を有する概ね筒型スリーブである。カラー80の下側または先端側部位の外径周114は、製造ツールが係合するのに適した平面部116を有する六角形である。その先端側領域に沿った平坦部116の交差点に施した面取り118により、カラー80の先端に面した表面がより丸みを帯びた外径となる。カラー80の上端もしくは基端122は、ブーツ22の環状中空部70内に嵌合する寸法である。
【0028】
連続するリング形状であるように図示しているが、固定カラーの形は異なっていてもよい。例えば、そして、剛健性については劣るが、リング形状であれば、ブーツ固定機能を提供しながらその円周で軸方向または螺旋状の隙間によって遮断されることがある。
【0029】
図1〜4に戻り、針付き注射器130についてさらに詳細に説明する。針付き注射器130の図示の形状は、説明を目的としたもので、限定を意図したものではなく、発明のカバーシステムは、ステーキング加工した針(staked needles)を有する注射器、カートリッジを有する注射器、そして、注射針を注射器の容器と流体連通させるための異なる機構を有する注射器などを含む、異なった構成の針付き注射器とでも有益な適用方法がある。
【0030】
針付き注射器130は、円筒部140、ピストン144、隔壁155、取付け具160、針保持部180を備える。円筒部140は、プラスチック製であり、円筒部140の容器146内の注射器内容物の上部を密閉するエラストマー製ピストン144を摺動可能に収容する内面142を有する。直径が小さくなっている円筒部140のネック部150は、その先端に、先端方向に向かって突出するリング152が設けられており、弾性の密閉隔壁155が取付け具160によって圧縮されている。密閉隔壁155は、取付け具160が円筒部140にしっかり固定されると、リング152と取付け具160のハブ部163の内側肩部162で捕えられる。このようなしっかりした固定は、内方に突出した取付け具160のドッグ164によって初めはネック部150の外径周上のL字型のリブ166の間を軸方向上方に移動し、ドッグ164が、リブ166の上向きの面の中の浅いポケットと整列するように取付け具と円筒部を互いに対して回転させることで製造中に実現できる。圧縮された隔壁155の軸方向の力は、ドッグ164をリブ166のポケットの中に保持するように働き、差し込み取付けが強化される。
【0031】
取付け具160は、単一のアセタール(acetal)のプラスチック部品であり、ハブ部163から延在する段差の円筒形突起170を有する。突起170の内部は中空で、針保持部180を保持するように構成され、直径方向に対向する溝172と直径方向に対向する凹部174を備える。
【0032】
取付け突起170は、先細部204で繋がった基端側領域(proximal region)200と先端側領域(distal region)202を有する。基端側領域200は、円筒形外面または周201を有する。表面201の半径方向にわずかに先細りの部分は先端方向に延在し、ブーツが製造中にそのうえで摺動するのを助ける。表面201は、ブーツ取付け領域34が固定カラー80によって押し付けられる堅固な支持面として働く。
【0033】
棒状の保持部180のプラスチック本体182は、溝172内を摺動し、剛健な金属針またはカニューラ184を保持する。針184の基端186は、本体182から基端側に向かって突出し、使用中に隔壁155を穿孔し通過して、円筒ネック部150の中心開口151に挿入されて円筒形容器146と流体連通するように鋭く形成される。針184の先端188は本体182から先端方向に突出し、ブーツの先端26を穿孔して通過し、使用者に挿入されて注射を行うよう、鋭く形成される。弾性フィンガ190が本体182の両側から突出し、それぞれは、取付け用凹部174とスナップフィットできる形状の窪み領域192および194を有する。使用前、そして
図2にもっともわかりやすく示すように、針保持部180は、窪み領域192に凹部174が嵌合することによって、針の先端186が隔壁155から間隔を空けた取付け具160の内部の位置で取付け具160内に保持される。針の先端188が注射の箇所を貫通して、針保持部180にかかる軸方向の力がフィンガ190を内側に移動させて針保持部が、さらに軸方向に、窪み領域194が凹部174にスナップフィットするまで嵌合突起170に移動すると、針の先端186は隔壁155を貫通して移動し、開口151に入って針184を通して流体を容器146から搬送する。
【0034】
ブーツ取付け領域34の内側の寸法は、通常、ブーツ取付け領域34自体が取付け具160の支持面201と摩擦密閉嵌合するように製造業者が選択する。固定カラー80の内部の寸法は、ブーツ取付け領域34が支持面201に対して押し付けられて、さらに確実に密閉し、ブーツ22が注射器130からより外れにくくなるように製造業者が選択する。
【0035】
製造中に針を保護するために、そして、さらに注射器の取り扱いを容易にするために針カバーシステム20を、針付き注射器130に取り付けることができる。特に、取付けは、一般的に、まず、針付き注射器130の残りの箇所と区別したブーツ22の本体30がカバー基部87の内部中空に嵌合し、カラーの端部122が中空部70内に挿入され、リップ65と係合するように、保護カバー85を操作して行われる。そして、係合したブーツ22を伴うカバー85を操作してそれをすでに針保持部180を備えた、針付き注射器130の取付け具160に取り付ける。そのような保持部180を備えた取付け具160は、すでに
図1に示した注射器円筒部140に取り付ける、もしくは注射器円筒部140から外すことができ、後者の場合、カバーと係合したブーツは、針保持部を備えた取付け具を有する副組立体として取り付け、これにより、隔壁155をその間に捕えながら取付け具を把持して注射器円筒部に取り付けることができるようになる。
【0036】
保持部180を保持する取付け具160にブーツ22付きカバー85を取り付ける作業は、カバーとブーツの組立体を軸方向に操作して、ブーツ取付け領域34が取付け支持面201と密閉係合するまで針の先端188をブーツポケット60に十分に奥まで挿入する作業を含む。この軸方向の動作中、カラー80は取付け領域34を取付け表面201に対して強く押し付けて、または挟み込んで良好で永続的なシールを形成する。この軸方向の動作は、針保持部180をさらに取付け具160まで移動させることはしない。
【0037】
製造工程後、注射器円筒部130と、隔壁155と、取付け具160と、係合したブーツ22を有するカバー85は、単体のユニットとして、また、カバー85の内部に収容されて保護されたブーツ22の内部に収容されて保護される針184とともに、容易に取扱いすることができる。カバー85は、その針付き注射器に対して剛性を有するという関係から、円筒部140に薬剤が充填され、そしてピストン144が円筒部140の内部に挿入される際、注射器を支持することができ、充填機によって保持された部品として使用することができる。この点から、注射針カバーシステム20および針付き注射器130は
図7および
図8に示すように配置される。
【0038】
製造時、針付き注射器140がカバー85の保護性または取扱い性をもはや必要としない点まで達すれば、カバー85は破断操作をコントロールできるようになる。このように、カバー85の基部87およびネック領域96は、残余部分として一緒に固定カラー80から破断されてカラー80を離れ、所定の位置の残部がブーツ取付け領域34を取付け具160に固定する。このように制御された破断は、平面部116を介してカラー80を把持し、それを回転しないように保持する第1のツールと、切欠き90はそれに代わる開口などを介してカバー本体87を係合して、カラー80から破断されるようなトルクをかける第2のツールによって実現する。破断負荷はカラー80とカバー85の残余部分のみにしかかからないので、この制御された破断は、針を保護するシールを損なうことはない。そのような破断の後、カバー85の残余部分は、
図1に示すように針付き注射器と注射針カバーシステムを離れて取り除かれ、破棄されて、使用できる状態になる。
【0039】
その様な使用法の代表的な例は、
図1に示す組立体を自動注射装置に取り付けて、例えば、
図1に示す組立体全体が使用前に装置の筐体内に保護されて保持され使用中には装置内部で下方に駆動されるというものである。このような装置を操作するときには、針付き注射器130は注射針の先端188がブーツ領域38を突き抜けて装置の筐体の底端を超えて突出して使用者に穿刺されるように自動的に下方に駆動される。ブーツ本体30はブーツの先端26が装置の開口を有する端板に押し付けられると、圧潰する。基端側の針先186は、円筒形容器146と連通し、注射器プランジャ144は装置の駆動ピストンによって前進せしめられて注射器の内容物を使用者に注射する。この操作は、
図9に示しており、点線200で示す外側筐体を有する自動注射装置を抽象的に示しており、202の点線で示す駆動ピストンは、針付き注射器容器146から薬剤を210で示す使用者に注入する。
【0040】
図10を参照する。針カバーシステムの別の実施形態を示す保護シェルの残余部分が取り除かれた後の付属品を示している。ダッシュ記号を付けて上記の実施形態に対応する部品を表したこの実施形態では、径方向のシールに対向する軸方向のシールがブーツと針付き注射器の間に形成されている。固定カラー80’は、その環状リップ81をブーツ22’のリップ65’に対して水平方向にのみ押して、取付け部160’のハブ部163’の、注射器支持面として作用する取付け具160’の下側161’に押し付けることにより、ブーツ密閉リング部に対する剛性の支持を提供する。よって、リップ65’は、下側161’に対して、連続する、または360°の軸方向シールを形成する。カラー80’は、
図1〜9の実施形態のように、ブーツをその間に挟むまたは圧縮することによって与えられる摩擦嵌合によって注射器に取り付けられるのではなく、むしろ、カラーの内径周110’の、嵌合ハブ部163’の外表面との摩擦係合によって直接注射器に取り付けられる。スナップやねじ山や差し込み型の係合のような、相互嵌合は、この摩擦取付けで代用することができる。
【0041】
本発明は、好ましい設計を有するものとして図示し、説明してきたが、本発明は、本開示の精神と範囲の範囲内で変更が可能である。例えば、固定カラーと保護シェルの残余部分は、1個の部品として形成されるものとして上記で説明したが、破断可能な接続部を破断することによって外すことができるが、このような構成要素や接続は、カラーや保護シェルの残余部分として別に形成して、スナップなどのように、機械的接続によって接続され、外されることによりブーツを固定しているカラーを離れるような部品でもよい。さらに、ブーツ22とカラー80を備えた針付き注射器130が、あるタイプの自動注射装置とともに使用する場合について上記に説明したが、例えば、別に操作する自動注射装置とともに使用することも可能である。さらに、使用前に針が注射器の内容物とともに流体連通している注射器とともに使用する場合には、ブーツは、針の先端を密閉するように構成してもよい。よって、本出願は、一般の原理を利用して、本発明のいかなる変形、使用方法、および適用方法も含むものとする。さらに、本出願は、本発明が含む従来の慣習的方法の範囲内であれば、本開示からはなれる部分についても含むことを意図している。
なお、本発明には以下の態様が含まれることを付記する。
〔1〕 注射器の針用の針カバーシステムであって、
前記針用の汚染防止ポケットを形成するブーツと、ここで、前記ブーツは、密閉リング部と、前記ポケットの基部における針貫通可能端部と、前記密閉リング部と前記針貫通可能端部との間に延在し、前記針用の内部中空を有する本体とを備え、前記密閉リング部は、前記注射器の支持部と連続シールを形成するように構成され、前記本体は、前記針の先端の密閉リング部に向かって前記針貫通可能端部が移動して、前記針貫通可能端部を通過できるように圧潰可能に構成され、
前記注射器の前記支持部に向かって前記密閉リング部を押圧する固定カラーとを備え、前記固定カラーは保護シェルの残部であり、前記残部は、製造時に前記残部と前記保護シェルの残余部分を切断し、前記残余部分を前記ブーツ本体の周りの保護位置から取り除いた後に残る部分である、前記針カバーシステム。
〔2〕
前記残部と前記保護シェルの前記残余部分の間の接続は、破断可能であり、前記残部と前記残余部分との間の前記破断可能な接続は、製造時に前記残余部分を取り除くために破断される、〔1〕に記載の針カバーシステム。
〔3〕
前記ブーツは、弾性材料の単体構造を有する、〔2〕に記載の針カバーシステム。
〔4〕
前記固定カラーは、リング形状である、〔2〕に記載の針カバーシステム。
〔5〕
前記固定カラーは、前記ブーツの前記密閉リング部の外周を囲む、〔4〕に記載の針カバーシステム。
〔6〕
前記固定カラーは、ツールが複数の係合可能な平面部を含む外径周を有する、〔5〕に記載の針カバーシステム。
〔7〕
前記ブーツは、前記密閉リング部を取り巻くとともに前記密閉リング部から外径方向に突出するリップを備え、前記リップは、前記固定カラーを挿入する環状中空を前記密閉リング部とともに形成する、〔2〕に記載の針カバーシステム。
〔8〕
前記ブーツ本体は、軸方向に延在する第1と第2の領域を備え、前記第1の領域の壁厚は、前記第2の領域の壁厚より薄く、前記ブーツ本体が圧潰して前記針貫通可能端部の前記密閉リング部へ向かう動きを許容すると、前記第1の領域の軸方向の圧潰を促進する、〔2〕に記載の針カバーシステム。
〔9〕
前記ブーツの第1の領域は、前記密閉リング部と前記ブーツの第2の領域との間に配設され、前記固定カラーは、軸方向で、前記ブーツの第2の領域を避けた部分に位置する、〔8〕に記載の針カバーシステム。
〔10〕
前記固定カラーは、軸方向で、前記ブーツの第1の領域を避けた部分に位置する、〔9〕に記載の針カバーシステム。
〔11〕
前記保護シェルの前記残余部分は、前記ブーツを収容する内部中空を含む、〔2〕に記載の針カバーシステム。
〔12〕
前記固定カラーは、前記密閉リング部を間に挟むことによって前記支持部に取り付け可能である、〔2〕に記載の針カバーシステム。
〔13〕
前記固定カラーは、前記注射器に取り付けるための手段を備え、前記取付け手段は前記密閉リング部を避けた位置に設ける、〔2〕に記載の針カバーシステム。