特許第6371412号(P6371412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371412
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】静止型開閉器
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/725 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
   H03K17/725 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-568208(P2016-568208)
(86)(22)【出願日】2015年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2015050259
(87)【国際公開番号】WO2016110958
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2017年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰明
(72)【発明者】
【氏名】安藤 彰修
(72)【発明者】
【氏名】細川 靖彦
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭62−6417(JP,B2)
【文献】 特開昭62−239614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K17/725
H02M1/088
H02M1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と負荷との電気的接続および遮断を切替えるための静止型開閉器であって、
前記交流電源と前記負荷との間に接続され、各々が複数のサイリスタを直列接続してなる1組のアームを逆並列に接続して構成されたサイリスタスイッチと、
前記サイリスタスイッチのオンオフを制御するための制御装置とを備え、
前記サイリスタスイッチは、前記制御装置から与えられるゲート信号に応答してオンする一方で、前記ゲート信号が遮断された状態において電流がゼロになるのに応じてオフするように構成され、
前記制御装置は、
前記交流電源から供給される電源電圧の位相を検出する位相検出部と、
前記静止型開閉器に開指令が与えられた場合において、前記位相検出部により検出される前記電源電圧の位相が目標位相に一致したときに、前記ゲート信号を遮断するように構成されたゲート信号生成部とを含み、
前記目標位相は、負荷電流の極性が切り換わるゼロクロス点を含むように設定された前記ゲート信号の遮断を禁止する位相範囲の外側に設定される、静止型開閉器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記目標位相を設定する目標位相設定部をさらに含み、
前記目標位相設定部は、前記負荷の力率角に基づいて前記ゲート信号の遮断を禁止する位相範囲を設定するとともに、当該位相範囲の外側に前記目標位相を設定する、請求項1に記載の静止型開閉器。
【請求項3】
前記ゲート信号の遮断を禁止する位相範囲の上限および下限は、前記アームを構成する前記複数のサイリスタのすべてにおいて、導通電流が保持電流以上となるという条件を満たすように設定される、請求項1または2に記載の静止型開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静止型開閉器に関し、より特定的には、サイリスタスイッチを用いた静止型開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源と負荷との電気的接続および遮断を切替えるための切替開閉器として、静止型開閉器の適用が検討されている。静止型開閉器には、一般的に、逆並列接続された一組のサイリスタによって構成されるサイリスタスイッチが用いられる。
【0003】
たとえば特開昭55−103073号公報(特許文献1)には、複数のサイリスタを直列接続して成るサイリスタアームを逆並列接続し、この逆並列接続された一組のサイリスタアームを介して負荷に交流電力を供給するように構成されたサイリスタスイッチが開示される。特許文献1では、サイリスタアームにゲート信号を印加すると、複数のサイリスタがオンして負荷電流が流れることにより、負荷に交流電力が供給される。そして、この状態でゲート信号を遮断すると、複数のサイリスタはオフ状態になるため、負荷電流はゼロになり、負荷への電力供給が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−103073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のサイリスタスイッチでは、サイリスタアームを構成する複数のサイリスタ間の素子特性のばらつきに起因して、ゲート信号を遮断する時点によっては、1つのサイリスタアーム内に、消弧するサイリスタと、点弧したままのサイリスタとが混在して現われることがある。このような場合には、点弧したままのサイリスタに不要なストレスがかかる可能性がある。そのため、ストレスによってサイリスタの劣化が促進され得る。また、ストレスが増大することでサイリスタが素子破壊に至る可能性もある。この結果、サイリスタスイッチの寿命を低下させてしまうという問題がある。
【0006】
この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、静止型開閉器において、サイリスタスイッチを構成する複数のサイリスタに不要なストレスが印加されるのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、静止型開閉器は、交流電源と負荷との電気的接続および遮断を切替えるための静止型開閉器である。静止型開閉器は、交流電源と負荷との間に接続され、各々が複数のサイリスタを直列接続してなる1組のアームを逆並列に接続して構成されたサイリスタスイッチと、サイリスタスイッチのオンオフを制御するための制御装置とを備える。サイリスタスイッチは、制御装置から与えられるゲート信号に応答してオンする一方で、ゲート信号が遮断された状態において電流がゼロになるのに応じてオフするように構成される。制御装置は、交流電源から供給される電源電圧の位相を検出する位相検出部と、静止型開閉器に開指令が与えられた場合において、位相検出部により検出される電源電圧の位相が目標位相に一致したときに、ゲート信号を遮断するように構成されたゲート信号生成部とを含む。目標位相は、負荷電流の極性が切り換わるゼロクロス点を含むように設定されたゲート信号の遮断を禁止する位相範囲の外側に設定される。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、静止型開閉器において、サイリスタスイッチを構成する複数のサイリスタの消弧タイミングを揃えることができる。これにより、複数のサイリスタに不要なストレスが印加されるのを抑制することができる。この結果、サイリスタスイッチの寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態に従う静止型開閉器の回路構成図である。
図2】ゲート信号がオン状態のときのサイリスタスイッチの動作を説明するための波形図である。
図3】ゲート信号をオフ状態に切り替えたときのサイリスタスイッチの動作の一態様を説明するための波形図である。
図4】ゲート信号をオフ状態に切り替えたときのサイリスタスイッチの動作の他の態様を説明するための波形図である。
図5】この発明の実施の形態に従うサイリスタスイッチの開放位相制御の概念を説明するための図である。
図6】この発明の実施の形態に従うサイリスタスイッチの開放位相制御の概念を説明するための図である。
図7】この発明の実施の形態に従う静止型開閉器における制御装置の制御構造を示す機能ブロック図である。
図8】この発明の実施の形態に従うサイリスタスイッチの開放位相制御を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0011】
図1は、この発明の実施の形態に従う静止型開閉器の回路構成図である。
図1を参照して、静止型開閉器は、交流電源2と負荷3との電気的接続および遮断を切り替えるための開閉器であり、サイリスタスイッチ1と、制御装置4とを備える。
【0012】
サイリスタスイッチ1は、交流電源2と負荷3との間に接続される。図1では、交流電源2の電源電圧をVとし、サイリスタスイッチ1の端子間電圧をVsとし、サイリスタスイッチ1を通って負荷3に供給される電流(負荷電流)をIとしている。なお、以下の説明では、サイリスタスイッチ1の動作の理解を容易にするために、負荷3を誘導性負荷とする。
【0013】
サイリスタスイッチ1は、逆並列に接続された1組のサイリスタアームTA1,TA2を有する。サイリスタアームTA1,TA2の各々は、直列に接続された複数のサイリスタT1〜Tn(nは2以上の整数)によって構成される。各サイリスタT1〜Tnは、制御装置4から入力(オン)されるゲート信号Gに応答してオンする。そして、オンされた各サイリスタT1〜Tnは、ゲート信号Gが遮断(オフ)された状態において電流が0になるのに応じてオフする。以下では、サイリスタアームTA1,TA2を包括的に表記する場合には、単に「サイリスタアームTA」とも称し、サイリスタT1〜Tnを包括的に表記する場合には、単に「サイリスタT」とも称する。
【0014】
制御装置4は、サイリスタスイッチ1のオンオフを制御する。制御装置4は、主にCPU(Central Processing Unit)、メモリおよびインターフェイス回路などによって実現される。制御装置4は、上位の制御部(図示せず)から与えられる開閉指令に応答して、サイリスタスイッチ1に与えるゲート信号Gを生成する。制御装置4の制御構造については後述する。
【0015】
図2は、ゲート信号Gがオン状態のときのサイリスタスイッチ1の動作を説明するための波形図である。
【0016】
図2を参照して、電源電圧Vに対して負荷電流Iは、負荷の力率角φだけ位相が遅れている。負荷電流Iの正弦波波形における負の半サイクル期間は、サイリスタスイッチ1のサイリスタアームTA2がオンする。一方、正弦波波形における正の半サイクル期間は、サイリスタアームTA1がオンする。このように、ゲート信号Gが与えられている間は、負荷電流Iの極性に従って、サイリスタアームTA1およびサイリスタアームTA2の一方が半サイクル期間ごとに交互にオン状態となる。そのため、サイリスタスイッチ1の端子間電圧Vsは略零を示している。
【0017】
図3は、サイリスタスイッチ1を開放するためにゲート信号Gをオフ状態に切り替えたときのサイリスタスイッチ1の動作の一態様を説明するための波形図である。図3は、電源電圧Vの正の半サイクルの間、電源電圧Vの位相θが0の時点から位相αだけ遅れた時点でゲート信号Gをオフした場合における、サイリスタスイッチ1の動作を示している。
【0018】
図3を参照して、位相αが力率角φよりも小さい場合(0<α<φ)には、ゲート信号Gをオフした時点では、負荷電流Iは負極性であるため、サイリスタアームTA2がオンし続ける。そして、負荷電流Iが零点に至ったときに、サイリスタアームTA2がターンオフする。このとき、サイリスタアームTA1にはゲート信号Gが与えられていないため、サイリスタアームTA1はターンオンせず、この結果、サイリスタスイッチ1は開放状態となる。サイリスタスイッチ1が開放状態となったタイミングで、サイリスタスイッチ1の端子間には正方向に電源電圧Vが印加される。
【0019】
しかしながら、以下に説明するように、ゲート信号Gをオフする位相αによっては、サイリスタスイッチ1のサイリスタTに不要なストレスがかかる場合がある。
【0020】
図4は、ゲート信号Gをオフ状態に切り替えたときのサイリスタスイッチ1の動作の他の態様を説明するための波形図である。図4は、負荷電流Iの極性が切り替わるゼロクロス点でゲート信号Gをオフした場合(位相αが力率角φに等しい場合)における、サイリスタスイッチ1の動作を示している。
【0021】
図4を参照して、負荷電流Iのゼロクロス点において、サイリスタアームTA2はターンオフする。一方、ゼロクロス点でゲート信号Gがオフされることにより、サイリスタアームTA1はターンオンしない。その結果、サイリスタスイッチ1は開放状態となり、サイリスタスイッチ1の端子間には正方向に電源電圧Vが印加される。
【0022】
ここで、負荷電流Iのゼロクロス点の直後にゲート信号Gをオフした場合における、サイリスタスイッチ1の動作を考える。
【0023】
図2に示したように、ゲート信号Gをオンしている場合には、負荷電流Iのゼロクロス点では、サイリスタアームTA2がターンオフする一方で、サイリスタアームTA1がターンオンする。一方、負荷電流Iのゼロクロス点よりも前(図3参照)、または負荷電流Iのゼロクロス点(図4参照)においてゲート信号Gをオフした場合、すなわち、位相αが力率角φ以下となる場合には、負荷電流Iのゼロクロス点においてサイリスタアームTA1はターンオンしない。
【0024】
しかしながら、負荷電流Iのゼロクロス点よりも僅かに遅れてゲート信号Gをオフした場合、すなわち、位相αが力率角φよりも僅かに大きい場合(α=φ+ε)には、負荷電流Iのゼロクロス点においてサイリスタアームTA1がターンオンするため、サイリスタアームTA1に負荷電流Iが流れ始めた直後にゲート信号Gがオフすることになる。このような場合には、以下に述べる2つの不具合が発生する可能性がある。
【0025】
第1に、サイリスタアームTA1を構成する複数のサイリスタT1〜Tnにおいて、素子特性の差に起因して、負荷電流Iのゼロクロス点からゲート信号Gが与えられるまでの僅かな期間(φ<θ<α)の間に、一部のサイリスタがターンオンする一方で、残りのサイリスタがターンオンせず、オフ状態を維持するという、不揃いの状態が発生する可能性がある。このように、ターンオンのタイミングのばらつきによって、直列接続されるサイリスタT1〜Tnに不揃いの状態が発生すると、サイリスタスイッチ1の端子間電圧Vsが、オフ状態となっている一部のサイリスタに対して集中的に印加されることになる。端子間電圧Vsは電源電圧Vに等しいため、交流電源2が高圧系統である場合には、電源電圧Vによってはオフ状態のサイリスタに過電圧が印加される虞がある。
【0026】
第2に、サイリスタはゲート信号Gを与えてオンさせた後は負荷電流が流れるが、この負荷電流がラッチング電流以上となるサイリスタは、ゲート信号Gをオフした後も、次のゼロクロス点までは通弧したままとなる。その一方で、負荷電流がラッチング電流よりも小さいサイリスタは、ゲート信号Gをオフした時点で消弧する。ラッチング電流は素子ばらつきに起因するため、ターンオンした一部のサイリスタがゲート信号Gをオフしてからターンオフするまでに時間がかかってしまう。この結果、当該一部のサイリスタに発生するスイッチング損失が増加することになり、サイリスタにストレスを与えてしまう。
【0027】
このように、負荷電流Iのゼロクロス点の直後にゲート信号Gをオフした場合には、サイリスタアームTAを構成するサイリスタTに不要なストレスを与える可能性がある。このような不具合を防止するための対策として、本実施の形態に従う静止型開閉器では、サイリスタスイッチ1を開放する際に、サイリスタアームTAをターンオフする位相αを制御する、サイリスタスイッチ1の開放位相制御を実行する。
【0028】
以下、本実施の形態に従うサイリスタスイッチの開放位相制御について説明する。
図5および図6は、本実施の形態に従うサイリスタスイッチ1の開放位相制御の概念を説明するための図である。
【0029】
図5は、負荷3を純抵抗負荷とした場合における電源電圧Vおよび負荷電流Iの波形を示す図である。図5に示すように、負荷の力率角φ=0であるため、負荷電流Iのゼロクロス点はθ=0,180°,360°となっている。
【0030】
本実施の形態では、負荷電流Iのゼロクロス点とその近傍の位相とを含む位相範囲内に、ゲート信号Gをオフすることを禁止する位相の範囲を設定する。以下の説明では、当該位相範囲を「ゲートオフ禁止帯」とも称する。図5においては、0≦θ≦β、180°−β≦θ≦180°+β、および360°−β≦θ≦360°からなる位相範囲(図中の領域RGN1に相当)がゲートオフ禁止帯に設定されている。
【0031】
なお、各ゲートオフ禁止帯の上限および下限(図中の位相βに相当)は、サイリスタアームTAを構成する複数のサイリスタT1〜Tnのすべてにおいて、サイリスタの導通電流が保持電流以上となるという条件を満たすように設定することが好ましい。このようにすれば、ゲートオフ禁止帯の外側の位相ではサイリスタT1〜Tnはすべてオン状態となっている。そのため、ゲートオフ禁止帯の外側のいずれの位相でゲート信号Gをオフした場合であっても、サイリスタT1〜Tnの一部に過電圧が印加されるのを回避することができる。
【0032】
図6は、負荷3を誘導性負荷とした場合における電源電圧Vおよび負荷電流Iの波形を示す図である。図6に示すように、負荷電流Iのゼロクロス点は、θ=φ(力率角),180°+φとなっている。
【0033】
負荷の力率角φが0°〜90°の範囲である場合には、当該範囲内に負荷電流Iのゼロクロス点が現われる。したがって、図6では、一例として、0≦θ≦90°および180°≦θ≦270°の位相範囲(図中の領域RGN2に相当)がゲートオフ禁止帯に設定されている。なお、各ゲートオフ禁止帯の上限および下限は、図5(力率角φが0の場合)と同様に、サイリスタTAを構成するサイリスタT1〜Tnのすべてにおいて、サイリスタの導通電流が保持電流以上となるという条件を満たすように設定することが好ましい。
【0034】
このようにして負荷の力率角φに応じてゲートオフ禁止帯が設定されると、設定されたゲートオフ禁止帯の外側に、ゲート信号Gをオフする目標位相(以下、「ゲートオフ位相」とも称する)θOFFが設定される。本実施の形態では、負荷3が純抵抗負荷である場合のゲートオフ禁止帯(図5参照)および負荷3が誘導性負荷である場合のゲートオフ禁止帯(図6参照)のいずれにも含まれない位相を、ゲートオフ位相θOFFに設定する。図5および図6には、ゲートオフ位相θOFFを120°,300°(=180°+120°)に設定する例が示されている。
【0035】
図7は、本実施の形態に従う静止型開閉器における制御装置4の制御構造を示す機能ブロック図である。
【0036】
図7を参照して、制御装置4は、位相検出部10と、ゲート信号生成部20と、目標位相設定部40とを含む。
【0037】
電圧検出器6は、交流電源2の電圧(電源電圧)Vを検出する。電圧検出器6によって検出された電源電圧Vは、制御装置4内の位相検出部10に与えられる。位相検出部10は、電圧検出器6によって検出された電源電圧Vの位相θを検出する。
【0038】
目標位相設定部40は、外部から入力される負荷の力率角φに基づいてゲートオフ位相θOFFを設定する。具体的には、目標位相設定部40は、負荷の力率角φに基づいてゲートオフ禁止帯を設定すると、その設定したゲートオフ禁止帯の外側にゲートオフ位相θOFFを設定する(図5および図6参照)。目標位相設定部40は、設定したゲートオフ位相θOFFをゲート信号生成部20に出力する。
【0039】
なお、図7の構成例では、電源電圧Vの正負の対称性から、位相検出部10は、電源電圧Vの位相θを、正弦波のゼロクロス点ごとにリセットし、0°〜180°の範囲として扱っている。また、負荷3の力率角φが0°〜90°の範囲である場合を想定して、目標位相設定部40は、ゲートオフ位相θOFFを120°に設定している。
【0040】
ゲート信号生成部20は、位相検出部10によって検出された電源電圧Vの位相θと、目標位相設定部40により設定されたゲートオフ位相θOFFとを比較する。そして、ゲート信号生成部20は、その比較結果に基づいてゲート信号Gを生成する。
【0041】
具体的には、ゲート信号生成部20は、比較部22と、ワンショットパルス発生部24と、反転(NOT)回路26と、論理積(AND)回路28と、RSフリップフロップ回路30,32,34とを含む。
【0042】
比較部22は、電源電圧Vの位相θとゲートオフ位相θOFF(=120°)とを比較する。位相θがゲートオフ位相θOFF以上であるとき、比較部22は、出力信号を活性化レベルの値「1」に設定する。一方、位相θがゲートオフ位相θOFFより小さいときには、比較部22は出力信号を非活性化レベルの値「0」に設定する。
【0043】
比較部22の出力信号は、ワンショットパルス発生部24に入力される。ワンショットパルス発生部24は、比較部22の出力信号の立上りに応答して所定のパルス幅のワンショットのパルス信号を生成する。生成されたパルス信号は、論理積回路28の一方入力に入力される。
【0044】
RSフリップフロップ回路32は、リセット優先型のRSフリップフロップ回路である。RSフリップフロップ回路32は、上位の制御部(図示せず)からサイリスタスイッチ1の開放指令を受ける。具体的には、RSフリップフロップ回路32は、セット端子Sにサイリスタスイッチ1の閉指令を受け、リセット端子Rにサイリスタスイッチ1の開指令を受ける。RSフリップフロップ回路32は、閉指令が活性化レベルのH(論理ハイ)レベルのとき出力端子QからHレベルの信号を出力し、開指令が活性化レベルのHレベルのとき出力端子QからL(論理ロー)レベルの信号を出力する。RSフリップフロップ回路32は、リセット優先型であるため、閉指令および開指令が共にHレベルのとき出力端子QからLレベルの信号を出力する。RSフリップフロップ回路32の出力は、反転回路26に入力されるとともに、RSフリップフロップ回路34のセット端子Sに入力される。
【0045】
反転回路26は、RSフリップフロップ回路32の出力信号を反転させる。反転回路26の出力は、論理積回路28の他方入力に入力される。
【0046】
論理積回路28は、パルス信号と、反転回路26の出力信号(RSフリップフロップ回路32の出力の反転信号)との論理積を演算する。論理積回路28は、閉指令がHレベルのときにLレベルの信号を出力する。一方、開指令がHレベルのときには、論理積回路28は、パルス信号がHレベルとなる期間においてHレベルの信号を出力する一方で、パルス信号がLレベルとなる期間においてLレベルの信号を出力する。なお、論理積回路28の出力がHレベルとなる期間は、ワンショットパルス発生部24から出力されるパルス信号のパルス幅に相当する。
【0047】
RSフリップフロップ回路30は、セット優先型のRSフリップフロップ回路である。RSフリップフロップ回路30は、セット端子Sに論理積回路28の出力を受け、リセット端子RにRSフリップフロップ回路32の出力を受ける。RSフリップフロップ回路30は、論理積回路28の出力がHレベルのとき出力端子QからHレベルの信号を出力する。すなわち、開指令がHレベルであり、かつ、パルス信号がHレベルであるとき、RSフリップフロップ回路30は出力端子QからHレベルの信号を出力する。また、RSフリップフロップ回路30は、RSフリップフロップ回路32の出力がHレベルのとき出力端子QからLレベルの信号を出力する。すなわち、閉指令がHレベルであるとき、RSフリップフロップ回路30は出力端子QからLレベルの信号を出力する。RSフリップフロップ回路30は、セット優先型であるため、論理積回路28の出力およびRSフリップフロップ回路32の出力が共にHレベルのとき出力端子QからHレベルの信号を出力する。言い換えれば、RSフリップフロップ回路30は、開指令がHレベルのとき、電源電圧Vの位相θがゲートオフ位相θOFFに達した時点を起点とするパルス信号のパルス幅に相当する時間の範囲内において、Hレベルの信号を出力する。
【0048】
RSフリップフロップ回路34は、リセット優先型のRSフリップフロップ回路である。RSフリップフロップ回路34は、セット端子SにRSフリップフロップ回路32の出力を受け、リセット端子RにRSフリップフロップ回路30の出力を受ける。RSフリップフロップ回路34は、RSフリップフロップ回路32の出力がHレベルのとき出力端子QからHレベルの信号を出力する。すなわち、RSフリップフロップ回路32は、閉指令がHレベルのとき出力端子QからHレベルの信号を出力する。また、RSフリップフロップ回路30の出力がHレベルのとき出力端子QからLレベルの信号を出力する。すなわち、RSフリップフロップ回路34は、開指令がHレベルであり、かつ、パルス信号がHレベルであるとき、出力端子QからLレベルの信号を出力する。RSフリップフロップ回路34は、リセット優先型であるため、RSフリップフロップ回路32の出力およびRSフリップフロップ回路30の出力が共にHレベルのとき出力端子QからLレベルの信号を出力する。RSフリップフロップ回路34の出力は、ゲート信号Gとして、サイリスタスイッチ1のサイリスタアームTA1,TA2に与えられる。
【0049】
以上をまとめると、ゲート信号生成部20は、閉指令がHレベルのときにHレベルのゲート信号Gを出力する。一方、ゲート信号生成部20は、開指令がHレベルであり、かつ、パルス信号がHレベルであるときにLレベルのゲート信号Gを出力する。言い換えれば、ゲート信号生成部20は、開指令がHレベルのとき、電源電圧Vの位相θがゲートオフ位相θOFFに達した時点を起点とするパルス信号のパルス幅に相当する時間の範囲内において、Lレベルのゲート信号Gを出力する。
【0050】
サイリスタスイッチ1では、Hレベルのゲート信号Gに応答して、サイリスタアームTA1,TA2にゲート信号Gが入力される一方で、Lレベルのゲート信号Gに応答してゲート信号Gがオフされる。
【0051】
図8は、本実施の形態に従うサイリスタスイッチ1の開放位相制御を説明するタイミングチャートである。
【0052】
図8を参照して、時刻t0以降、ゲート信号GはHレベルを示している。これにより、サイリスタスイッチ1のサイリスタアームTA1,TA2の各々にはゲート信号Gが与えられる。
【0053】
制御装置4では、位相検出部10によって検出される電源電圧Vの位相θと、ゲートオフ位相θOFF(たとえば120°)とが比較部22によって常時比較されている。そして、比較部22における比較結果に基づいて、電源電圧Vの正の半サイクルの間、および負の半サイクルの間の各々において、電源電圧Vの位相θがゲートオフ位相θOFFに到達すると、ワンショットパルス発生部24によって所定のパルス幅Δtのワンショットのパルス信号が生成される。
【0054】
ここで、時刻t1にて、上位の制御部から制御装置4に対して、Hレベルに活性化された開指令が与えられたものとする。制御装置4において、ゲート信号生成部20は、Hレベルの開指令を受けると、Hレベルの開指令とパルス信号とを用いて図7に示した制御処理を実行することにより、ゲート信号Gを生成する。これにより、図8に示すように、時刻t1よりも後の時刻t2において、パルス信号の立上りに応答してゲート信号GがHレベルからLレベルに遷移する。そして、ゲート信号GがLレベルに遷移したことにより、サイリスタスイッチ1のサイリスタアームTA1,TA2に与えられていたゲート信号Gがオフされる。
【0055】
時刻t2においてゲート信号Gがオフされたことにより、サイリスタアームTA1,TA2のうち、オン状態となっている一方のサイリスタアームは、時刻t2よりも後の負荷電流Iのゼロクロス点でターンオフする。一方、オフ状態となっている他方のサイリスタアームは、この負荷電流Iのゼロクロス点ではターンオンしない。その結果、サイリスタスイッチ1は開放状態となる。
【0056】
このように本実施の形態に従う静止型開閉器によれば、負荷電流Iのゼロクロス点およびその近傍の位相を含むゲートオフ禁止帯の外側に、ゲートオフ位相θOFFを設定する。これにより、サイリスタスイッチ1の開指令に応答してゲート信号Gをオフしたときに、サイリスタアームTAを構成するサイリスタTに不要なストレスが加わるのを抑制することができる。この結果、サイリスタスイッチ1の故障を回避することができるため、静止型開閉器の寿命を長くすることが可能となる。
【0057】
なお、上記の実施の形態では、制御装置4内に、サイリスタスイッチ1のゲートオフ位相θOFF(目標位相)を設定するための目標位相設定部40を設ける構成について例示したが、目標位相設定部40に代えて、静止型開閉器の外部からゲートオフ位相θOFFの入力を受け付けるための入力部を設ける構成としてもよい。負荷の力率角φは、本発明に従う静止型開閉器が採用されるシステムの運用状況によって一義的に特定される。そのため、当該システムのユーザは、この力率角φに基づいてゲートオフ位相θOFFを設定して制御装置4に入力することが可能である。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 サイリスタスイッチ、2 交流電源、3 負荷、4 制御装置、10 位相検出部、20 ゲート信号生成部、22 比較部、24 ワンショットパルス発生部、26 反転回路、28 論理積回路、30,32,34 RSフリップフロップ回路、40 目標位相設定部。
図1
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