【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、検査時間を短縮し、検査効率を向上できる残留農薬検査方法を提供し、
被験試料から2つの同じ抽出液を抽出し、それらのいずれかの抽出液内にいかなる農薬も別途添加されていない第1検液及び別の抽出液内に少なくとも1種の濃度既知(X)の特定農薬が意図的に添加されている第2検液として各々調製するステップ(a)と、
対応するマスクロマトグラム(mass chromatogram)を作成するため、連続的に第1検液及び第2検液をクロマトグラフ質量分析計内に送り込んで測定を行い、第2検液の特定農薬は、特定の保持時間(retention time)においてクロマトグラフ質量分析計で検出されるステップ(b)と、
コンピュータ画像認識法を用いて第1検液のマスクロマトグラムと第2検液のマスクロマトグラムを比較することで、第1検液が特定の保持時間において、特徴的なピークが現れ、その形状が第2検液の特定農薬の特徴的なピークと同一或いは近似し、且つその強度が第2検液の特定農薬の特徴的なピークよりやや低い状況があるかどうかを判断し、その状況がなかった場合、被験試料に特定農薬が残留していないと判定し、その状況があった場合、画像分析法で第2検液の特徴的なピークが第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積を計算し、また第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積と特定農薬の濃度(X)の比例関係により、第1検液の特徴的なピークの面積から被験試料の残留農薬の濃度(Y)を推定するステップ(c)と、
を含む。
【0006】
好ましくは、前記ステップ(c)において、
各々第1検液のピーク面積値及び第2検液のピーク面積値を得るため、各々第1検液の特徴的なピーク及び第2検液の特徴的なピークに対し積分するステップ(1)と、
第2検液のピーク面積値から第1検液のピーク面積値を差し引くことで、第2検液の特徴的なピークが第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積値を得るステップ(2)と、
を含む。
【0007】
好ましくは、前記ステップ(b)のクロマトグラフ質量分析計は、液体クロマトグラフ直結質量分析計(LC−MSMS)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)、ガスクロマトグラフ直結質量分析計(GC−MSMS)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)
、ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析計(GC/TOF)、液体クロマトグラフ−飛行時間型質量分析計(LC/TOF)、ガスクロマトグラフイオントラップ型質量分析計(GC/ion trap)、液体クロマトグラフイオントラップ型質量分析計(LC/ion trap)からなる群より選ぶことができる。
【0008】
別の視点から見ると、本発明は、残留農薬検査方法を提供し、
被験試料から2つの同じ抽出液を抽出し、それらのいずれかの抽出液内にいかなる農薬も別途添加されていない第1検液及び別の抽出液内に少なくとも1種の濃度既知の特定農薬が意図的に添加されている第2検液として各々調製するステップ(a)と、
別の被験試料から2つの同じ抽出液を抽出し、それらのいずれかの抽出液内にいかなる農薬も別途添加されていない第1検液及び別の抽出液内に少なくとも1種の濃度既知の特定農薬が意図的に添加されている第2検液として各々調製するステップ(b)と、
対応するマスクロマトグラム(mass chromatogram)を作成するため、連続的に被験試料の第1検液及び第2検液をクロマトグラフ質量分析計内に送り込んで測定を行い、第2検液の特定農薬は、特定の保持時間においてクロマトグラフ質量分析計で検出されるステップ(c)と、
コンピュータ画像認識法を用いて被験試料の第1検液のマスクロマトグラムと第2検液のマスクロマトグラムを比較することで、第1検液が特定の保持時間において、特徴的なピークが現れ、その形状が第2検液の特定農薬の特徴的なピークと同一或いは近似し、且つその強度が第2検液の特定農薬の特徴的なピーク強度よりやや低い状況があるかどうかを判断し、その状況がなかった場合、被験試料に特定農薬が残留していないと判定し、その状況があった場合、画像分析法で第2検液の特徴的なピークが第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積を計算し、また第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積と特定農薬濃度の比例関係により、第1検液の特徴的なピークの面積から被験試料の残留農薬の濃度を推定するステップ(d)と、
被験試料の第1検液及び第2検液がクロマトグラフ質量分析計内に送り込まれた後、対応するマスクロマトグラムを作成するため、その後連続的に別の被験試料の第1検液及び第2検液をクロマトグラフ質量分析計内に送り込んで測定を行い、別の被験試料の第2検液の特定農薬は、特定の保持時間においてクロマトグラフ質量分析計で検出されるステップ(e)と、
コンピュータ画像認識法を用いて別の被験試料の第1検液のマスクロマトグラムと第2検液のマスクロマトグラムを比較することで、第1検液が特定の保持時間において、特徴的なピークが現れ、その形状が第2検液の特定農薬の特徴的なピークと同一或いは近似し、且つその強度が第2検液の特定農薬の特徴的なピークよりやや低い状況があるかどうかを判断し、その状況がなかった場合、別の被験試料に特定農薬が残留していないと判定し、その状況があった場合、画像分析法で第2検液の特徴的なピークが第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積を計算し、また第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積と特定農薬の濃度の比例関係により、第1検液の特徴的なピークの面積から別の被験試料の残留農薬の濃度を推定するステップ(f)と、
を含む。
【0009】
好ましくは、前記ステップ(a)内の被験試料の第2検液に意図的に添加される特定農薬とステップ(b)内の別の被験試料の第2検液に意図的に添加される特定農薬の種類及び濃度が全て同一となる。
【0010】
好ましくは、前記ステップ(d)又は前記ステップ(f)において、
各々第1検液のピーク面積値及び第2検液のピーク面積値を得るため、各々第1検液の特徴的なピーク及び第2検液の特徴的なピークに対し積分するステップ(1)と、
第2検液のピーク面積値から第1検液のピーク面積値を差し引くことで、第2検液の特徴的なピークが第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積値を得るステップ(2)と、
を更に含む。
【0011】
好ましくは、前記ステップ(c)のクロマトグラフ質量分析計は、液体クロマトグラフ直結質量分析計(LC−MSMS)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)、ガスクロマトグラフ直結質量分析計(GC−MSMS)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)
、ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析計(GC/TOF)、液体クロマトグラフ−飛行時間型質量分析計(LC/TOF)、ガスクロマトグラフイオントラップ型質量分析計(GC/ion trap)、液体クロマトグラフイオントラップ型質量分析計(LC/ion trap)からなる群より選ぶことができる。
【0012】
本発明は、被験試料が某特定農薬を含有するかどうかを検査するために用いられる残留農薬検査システムを更に提供する。システムは、クロマトグラフ質量分析計とコンピュータ設備とを包括する。クロマトグラフ質量分析計は、第1検液及び第2検液の注入に供するための試料注入口を備え、第1、2検液が被験試料の抽出液から取り、第1検液とは抽出液内にいかなる農薬も別途添加されていないものをいい、第2検液とは抽出液内に少なくとも1種の濃度既知(X)の特定農薬が意図的に添加されているものをいう。コンピュータ設備は、クロマトグラフ質量分析計と電気的に接続し、第1検液及び第2検液のマスクロマトグラム(mass chromatogram)を作成するために用いられ、第2検液の特定農薬が特定の保持時間においてクロマトグラフ質量分析計で検出され、コンピュータ設備は、更に画像認識法で第1検液のマスクロマトグラムと第2検液のマスクロマトグラムを比較することで、第1検液が特定の保持時間において、特徴的なピークが現れ、その形状が第2検液の特定農薬の特徴的なピークと同一或いは近似し、且つその強度が第2検液の特定農薬の特徴的なピーク強度よりやや低い状況があるかどうかを判断し、その状況がなかった場合、被験試料に特定農薬が残留していないと判定し、その状況があった場合、画像分析法で第2検液の特徴的なピークが第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積を計算し、また第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積と特定農薬の濃度(X)の比例関係により、第1検液の特徴的なピークの面積から被験試料の残留農薬の濃度(Y)を推定するために用いられる。
【0013】
好ましくは、コンピュータ設備は、先に各々第2検液の特徴的なピーク及び第1検液の特徴的なピークに対し積分し、得られた積分値の差分を算出することで、第2検液の特徴的なピークが第1検液の特徴的なピークより高い部分の面積値を得る。
【0014】
好ましくは、クロマトグラフ質量分析計は、液体クロマトグラフ直結質量分析計(LC−MSMS)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)、ガスクロマトグラフ直結質量分析計(GC−MSMS)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)
、ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析計(GC/TOF)、液体クロマトグラフ−飛行時間型質量分析計(LC/TOF)、ガスクロマトグラフイオントラップ型質量分析計(GC/ion trap)、液体クロマトグラフイオントラップ型質量分析計(LC/ion trap)からなる群より選ぶことができる。