【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題の解決策は、感圧接着剤の主成分として、単分岐状及び非分岐状のアルコール成分を有するモノマーの混合物を本質的にベースとするポリ(メタ)アクリレートを使用するという思想に基づく。
【0023】
本発明の第一のかつ一般的な対象は、感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で少なくとも一種のポリマーAを含む感圧接着剤であって、このポリマーAが、以下のモノマー組成物に由来し得る感圧接着剤である:
a1)ホモポリマーのガラス転移温度が最大−60℃であり、アルコール成分が、1のイソインデックスを有する分岐状の第一級アルコールをベースとする、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル55〜75重量%;
a2)アルコール成分が線状C
1〜C
18アルコールをベースとする、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル20〜40重量%;
a3)アクリル酸5〜15重量%。
【0024】
本発明による感圧接着剤は、特に、低エネルギー表面の迅速な湿潤、及び接着に持続的な機械的負荷がかけられている場合でも高い脱湿潤抵抗、並びにその他の良好な接着技術的特性を特徴とする。
【0025】
本発明では、感圧接着剤とは、一般の用法の通り、(特に室温で)持続的にタック性並びに接着性である物質のことである。圧力によって基材上に施すことができ、そしてそこに付着し続けることが感圧接着物質の特徴であり、この際、適用される圧力及びこの圧力の作用時間は詳しくは定義されない。幾つか場合において、感圧接着物質の正確な種類、温度及び空気湿度並びに基材に依存して、一瞬の軽い接触を超えない短時間の最小の圧力の作用が付着効果を達成するのに十分であり、他の場合には、高い圧力の比較的長期の作用時間が必要なこともある。
【0026】
感圧接着物質は、特に、持続的なタック及び接着性をもたらす特徴的な粘弾性特性を有する。感圧接着物質に特徴的なのは、機械的に変形されると、粘性流動プロセスも、弾性復元力の発生も起こることである。両方のプロセスは、それぞれの割合に関して、感圧接着物質の正確な組成、構造、及び架橋度にも、変形の速度及び時間にも、並びに温度にも応じて、互いに特定の比率にある。
【0027】
割合に応じた粘性流動は、接着の達成のために必要である。比較的大きな可動性を持つ高分子によって引き起こされる粘性部分のみが、接着すべき基材上での良好な湿潤及び良好な流動を可能にする。粘性流動の高い割合は、強い感圧接着性(タックまたは表面接着性とも称される)をもたらし、それ故、多くの場合に高い接着力も与える。強く架橋した系、結晶性またはガラス様に硬化したポリマーは、流動可能な成分が欠けているので、一般的に感圧接着性ではないか、または少なくとも僅かにしか感圧接着性でない。
【0028】
割合に応じた弾性復元力は、凝集性を達成するために必要である。この復元力は、例えば非常に長鎖で強く絡んだ高分子及び物理的または化学的に架橋された高分子によってもたらされ、そして接着結合に作用する力の伝達を可能にする。復元力により、接着結合が、例えば持続的なせん断負荷の形で接着結合に作用する持続的負荷に対して十分に、比較的長時間にわたって持ちこたえ得るようになる。
【0029】
弾性部分及び粘性部分の尺度並びにこれらの部分の互いの比率をより正確に表現しかつ定量化するためには、動的機械分析(DMA)によって確定可能な値である貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を引用することができる。G’は、物質の弾性部分のための尺度であり、G”は物質の粘性部分のための尺度である。両方の値は変形周波数及び温度に左右される。
【0030】
これらの値は、レオメータによって確定することができる。その際、調べるべき材料は、例えばプレート・プレート構成において、正弦波状に振動するせん断負荷に曝される。ずり応力制御された機器の場合、時間の関数としての変形及びずり応力の導入に対するこの変形の時間的ずれが測定される。この時間的ずれは位相角δと呼ばれる。
【0031】
貯蔵弾性率G’は次のように定義されている。すなわちG’=(τ/γ)・cos(δ)(τ=ずり応力、γ=変形、δ=位相角=ずり応力ベクトルと変形ベクトルとの間の位相ずれ)。損失弾性率G’’は次のように定義される:G’’=(τ/γ)・sin(δ)(τ=ずり応力、γ=変形、δ=位相角=ずり応力ベクトルと変形ベクトルとの間の位相ずれ)。
【0032】
材料が一般的に感圧接着性とみなされ、また本明細書の意味において感圧接着性と定義されるのは、室温において、ここでは定義に基づき23℃で、変形周波数が10
0〜10
1rad/secの範囲の際に、G’が少なくとも部分的に10
3〜10
7Paの範囲内にある場合で、かつG”も同様に少なくとも部分的にこの範囲内にある場合である。「部分的」とは、10
0rad/sec以上10
1rad/sec以下の変形周波数範囲(横座標)並びに10
3Pa以上10
7Pa以下のG’値(縦座標)の範囲に広がるウィンドウ内に、G’曲線の少なくとも一区間があることである。G”についても同様である。
【0033】
「(メタ)アクリル酸エステル」という用語は、一般的な解釈に一致して、アクリル酸エステルだけでなく、メタアクリル酸エステルも包含するものと解される。「(メタ)アクリレート」という用語についても同様である。
【0034】
イソインデックスは、(メタ)アクリレートコモノマーのアルコール残基の分岐度の目安またはアイソマー混合物の場合には平均値であり、そして第一級アルコールのメチル基(−CH
3)から1を引いた数と定義される(WO2013/048945A1(特許文献4))。イソインデックスの確定のためには、(メタ)アクリル酸エステルの遊離のアルコールをトリクロロアセチルイソシアナートと反応させてカルバメートとし、そして以下の等式1に従って計算を行う。
【0035】
【数1】
【0036】
分岐度は、アルコールまたはアルコール混合物の
1H−NMR分光分析によって求めることができる。等式1中のI(CH
3)は、積分によって決定したメチルプロトンの絶対ピーク面積(0.70ppmと0.95ppmの間の範囲のδ)を意味し、そしてI(CH
2−OR)は、誘導体化したアルコールのカルバメートに対してα位置におけるメチレンプロトンの絶対ピーク面積(3.9ppmと4.5ppmとの間のδ)を意味する。1のイソインデックスは、アルコール残基が正確に一つの分岐点を有することを意味する。
【0037】
ホモポリマーのガラス転移温度が最大−60℃であり、アルコール成分が、イソインデックスが1の分岐状第一級アルコールをベースとする好ましい(メタ)アクリル酸エステルは、例えば2−プロピルヘプチルアクリレート(PHA)及びイソデシルアクリレートである。
【0038】
好ましくは、本発明による感圧接着剤は、少なくとも一種のエポキシシクロヘキシル誘導体の使用下に、プロトンアクセプター、電子対ドナー及び電子対アクセプターの不在下に熱的に架橋される。熱架橋は、材料層全体を通して有利に均質な架橋を引き起こし、他方で、例えば、放射線架橋された材料では、材料の内部に向かって減少する架橋密度を持つ架橋プロフィルが観察される。均質な架橋された感圧接着剤層は、接着が負荷にさらされた時に起こり得るような、応力の均一な分布を可能にする。接着性及び凝集性の特性は、層全体について非常に正確に均衡されるために、正確に予測可能な特性プロフィルを持つ負荷可能な接着を得ることができる。特に好ましくは、本発明による感圧接着剤は、少なくとも一種のエポキシシクロヘキシル誘導体の使用下に、架橋促進剤の不在下に熱的に架橋される。
【0039】
本発明による感圧接着剤は、好ましくは接着力を高める樹脂を含まない。感圧接着剤の接着力を高めるために通常使用される樹脂には、例えば脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、アルキル芳香族炭化水素樹脂;テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂;ロジン樹脂、特に水素化、非水素化及び不均化ロジン樹脂;官能化炭化水素樹脂及び天然樹脂などが含まれる。接着力を高める樹脂の不在は、本発明による感圧接着剤の凝集特性に有利に作用し、この際、本発明による感圧接着剤は、それら自体は、非常に軟質かつ柔軟でありそして高いタックを示す。
【0040】
好ましくは、ポリマーAは、少なくとも500,000g/モル、特に好ましくは少なくとも700,000g/モルの重量平均分子量M
wを有する。同様に好ましくは、ポリマーAは、最大1,700,000g/モルの重量平均分子量M
wを有する。重量平均分子量M
wと数平均分子量M
nとの商として求められる多分散度PD、すなわちモル質量分布の幅は、ポリマーAの場合は、好ましくは10≦PD≦100、特に好ましくは20≦PD≦80である。
【0041】
実施形態の一つでは、本発明による感圧接着剤は、一種以上のポリマーAと一種以上の合成ゴムとのブレンドを含む。一種以上の合成ゴムは、好ましくは、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム;スチレン−イソプレン−スチレンゴム、及び上記のゴムの水素化誘導体からなる群から選択される。
【0042】
本発明の更に別の対象は、発泡したキャリアと、本発明による感圧接着剤とを含む接着テープである。好ましくは、発泡したキャリアは、シンタクチックポリマーフォームを含む。「シンタクチックフォーム」という用語は、独立気泡型フォームの特殊な形態を表すものであり、それの空隙が、ガラス中空球体、セラミック中空球体及び/またはポリマー中空球体によって形成されているものである。
【0043】
シンタクチックポリマーフォーム層の裏側には、安定化またはカバーのために、例えばライナーまたは慣用のフィルム材料を備えることができ、そうして本発明による少なくとも二層の接着テープを含む少なくとも一つの三層の系が存在するようにできる。
【0044】
十分に厚いポリマーフォーム層の場合には、該感圧接着剤層とは反対側の、該ポリマーフォーム層の二層系における自由な面は、これを、短い侵入深さの架橋プロセスによって強く架橋して、フォームキャリア層の一部だけが強く架橋されるようにし、他方、感圧接着剤層側の他方のキャリア面上では元々存在するむしろ粘弾性の特性が保持されるようにして安定化することもできる。
【0045】
特に好ましくは、発泡したキャリアの両面上に感圧接着剤が配置され、この際、これらの感圧接着剤の一方は、本発明による感圧接着剤である。特に、発泡したキャリアの両面に、本発明による感圧接着剤が配置される。この場合、接着テープの両面が、本発明による感圧接着剤の有利な接着技術上の特性を持つことになるため有利である。
【0046】
特殊な実施形態の一つでは、発泡したキャリアの両面に感圧接着剤が配置され、そしてこれらの両側の感圧接着剤は、同じ濃度で同一の添加剤、特に機能性添加剤及び/または充填材を含む。同様に、両感圧接着剤は、機能性添加剤及び/または充填材を含まないこともできる。特定の実施形態の一つでは、発泡したキャリアの両面上に、感圧接着剤、特に本発明による感圧接着剤が配置され、そしてこれらの感圧接着剤は、化学的に、物理的に及び/またはそれらのサイズが同一である。特に、両感圧接着剤は完全に同一であり、この際、常在濃度範囲での不純物、生産起因の不精確さ、及び類似の他の原因から生じ得るような、本質的ではない不一致は考慮されない。
【0047】
発泡したキャリアは、好ましくは、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で、ゴム、特に天然ゴム、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート及びスチレンブロックコポリマー並びに上記のポリマーのブレンドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマーを含む。特に好ましくは、発泡したキャリアは、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で一種以上のポリ(メタ)アクリレートを含む。
【0048】
特に、発泡したキャリアは、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で、以下のモノマー組成物に由来し得る少なくとも一種のポリ(メタ)アクリレートBを含む:
b1)65〜97重量%のエチルヘキシルアクリレート及び/またはブチルアクリレート、
b2)0〜30重量%のメチルアクリレート、
b3)3〜15重量%のアクリル酸。
【0049】
好ましくは、発泡したキャリア中に含まれる一種以上のポリマー、特に好ましくはポリマーBは、少なくとも500,000g/モル、特に好ましくは少なくとも700,000g/モルの重量平均分子量M
wを有する。同様に好ましくは、発泡したキャリア中に含まれるポリマーは、最大で1,700,000g/モルの重量平均分子量M
wを有する。重量平均分子量M
wと数平均分子量M
nとの商として求められる多分散度PD、すなわちモル質量分布の幅は、発泡したキャリア中に含まれるポリマーでは、好ましくは10≦PD≦100、特に好ましくは20≦PD≦80である。
【0050】
本発明による感圧接着剤中だけでなく、発泡したキャリア中にも含まれるポリマーは、好ましくは、従来技術に従いフリーラジカル重合によって、特に溶液状態で製造することができる。場合により後続する溶融物からの加工の場合には、溶剤を重合の後に除去する。
【0051】
発泡したキャリアは、好ましくは溶融物から層を形成する。この際好ましくは、発泡した層の熱架橋が行われる。本発明による感圧接着剤も溶融物から層を形成することができる。しかし、これらの層は、通常、層厚をわずか100μmとして生成されるために、これらは、格別に、溶液からコーティングし、次いで乾燥することもよい。
【0052】
方法技術に依存して、発泡したキャリア層などの非常に厚手のポリマー層は、ポリマー溶液からよりも溶融物から形成することが遙かに良好である(いわゆるホットメルト)。溶融物の定義には、非晶質のポリマー(例えばポリアクリレート)の溶融物は、本発明では、F.R.Schwarzl,Polymermechanik:Struktur und mechanisches Verhalten von Polymeren,Springer Verlag,Berlin,1990(非特許文献1)に記載の規準が使用され、それによれば、その粘度は最大η≒10
4Pa・sのオーダーの粘度であり、そして内部減衰は、≧1のtanδ値に達する。
【0053】
本発明による感圧接着剤のポリマー層及び本発明の接着テープの発泡したキャリアのポリマー層を溶融物からのコーティングによって形成する場合には、好ましい熱架橋の結果起こる問題が発生する。一方では、熱架橋剤は、後続の熱架橋の開始のためにコーティングの前に添加する必要があるが、他方で、架橋剤は次いでポリマー溶融物の生成及び維持のために高温に曝される。これは、制御された架橋が起こる前に既に、不制御のポリマー架橋(いわゆるゲル化)を招く恐れがある。このゲル化を大幅に抑制するために、ホットメルト法では通常のは非常に反応不活発な架橋剤を、詳しくはコーティングの少し前になって始めて使用する。しかし、コーティングの後に満足できる架橋の成果を達成するためには、その他に多くの場合にいわゆる促進剤が混合される。
【0054】
溶液からコーティングされた熱架橋するべきポリマー系のためにも、促進剤の使用は有意義であり得、そして多くの場合に実行される。熱的に開始される架橋過程は、通常は、塗布された層からの溶剤の熱による除去(すなわち、材料層の乾燥)と組み合わされる。この際、溶剤のあまりに急速な除去は、粗悪に形成されたムラのある不均質な層を招く、というのも、あまりに過激な乾燥は例えば気泡の形成を招くからである。この理由から、乾燥は好ましくは温和な温度で行われる。しかし、良好でかつ十分に急速に進行する架橋を保証するためには、通常は促進剤が溶剤系にも加えられる。
【0055】
この時、生じる層の厚さがあまり厚くなく、そのため施与されるポリマー溶液の高められた粘度が(ほぼ溶剤を含まない溶融物と比べて)大きな問題を伴わない場合には、溶液からのコーティングが多くの場合に好ましい。
【0056】
発泡されたキャリア層を促進剤の関与下に架橋させることが本発明において好ましい。促進剤または促進作用する物質としては、特に、プロトンアクセプター、電子対ドナー(ルイス塩基)及び/または電子対アクセプター(ルイス酸)が使用される。促進剤とは、本発明において十分な反応速度を保証するという点で架橋反応を援助する化合物または化学品である。これは、特に、触媒作用により(架橋反応の活性化により)及び/または架橋剤物質もしくは架橋すべき高分子の官能基を、高分子の互いの結合反応(ブリッジ形成、ネットワーク形成)の意味で反応し得るかまたは架橋剤物質を介して更なる官能基と反応し得る官能基に転換することによって行われる。
【0057】
促進剤自体は、このような結合反応には関与しないが(すなわちそれ自体は架橋しない)、反応生成物またはフラグメントの形でネットワークに組み入れられ得るかまたはこれらに結合し得る。すなわち、促進剤は、架橋反応の反応速度の本質的な改善を保証する。
【0058】
これに対して架橋剤は、それら自体の官能基によって、ネットワークの形成をもたらすブリッジ形成を導く反応、特に付加反応もしくは置換反応に関与することができる物質である。更に、(例えば促進剤の上記の影響または他の過程によって)架橋反応の枠内で、引き続いて架橋すべきポリマーの高分子間のブリッジ形成をもたらす官能基に変換される官能基も含まれ得る。
【0059】
促進剤の不在下での架橋反応は、選択された反応パラメータ(本発明では特に、発泡したキャリア層のポリマーの加工温度未満の温度)では、進行しないかまたは不十分な速度でしか進行しないであろう。例えば、ポリアクリレートのための架橋剤として使用される多くのエポキシドは、むしろ反応不活発な性質を有し、そのため、これらは、促進剤が無い場合には、満足な架橋の成果をもたらさない。
【0060】
プロトンドナー、特にカルボン酸またはカルボン酸基またはそれの脱プロトン化誘導体は、本発明の意味においては促進剤には数えられない。
【0061】
本発明による感圧接着剤中での促進剤の存在は全く不利でもある。例えば、特に窒素含有促進剤、例えばアミンは、時間と共に酸化プロセスによって黄変する傾向があり、そのため、このような促進剤系は、特に透明な感圧接着剤または多層感圧接着テープ、特に光学的目的に使用するべきこれらの接着剤または接着テープでは、適性が低いかまたは不適である。
【0062】
塩様のまたは塩を形成する促進剤(特に塩基性促進剤)、例えば上記のアミンまたは塩化亜鉛は、製品の高められた湿分吸収能力をもたらす、というのも、塩は一般的に吸湿特性を持つからである。特に意図された使用分野の故に非常に高い耐温湿性を有するべき感圧接着剤の場合には、このような促進剤は適していない。
【0063】
それ故、本発明によれば、本発明による感圧接着剤の熱架橋を、特に空気と接触する接着剤の場合については、促進剤を混合せずに、エポキシシクロヘキシル誘導体を用いて達成することが目的とされる。この際、促進剤の不在とは、特に、外部添加された(すなわち重合導入されていないまたはポリマー骨格に組み込まれていない)促進剤に関することであり;しかし、特に好ましくは、本発明による感圧接着剤は、外部添加された促進剤も重合導入された促進剤も含まず、特には促進剤を全く含まない。
【0064】
ポリマー層、ここでは特に本発明による感圧接着剤の性質、及びそれらの物理的特性(例えば粘弾性、凝集、弾性成分)は、それらの架橋のタイプ及び程度によって影響され得る。
【0065】
それ故、本発明による感圧接着剤は、好ましくは、少なくとも一種のエポキシシクロヘキシル誘導体によって、特に好ましくは少なくとも一種のエポキシシクロヘキシルカルボキシレート、特に少なくとも(3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CAS 2386−87−0)によって架橋される。
【0066】
エポキシシクロヘキシル誘導体は、架橋すべき感圧接着剤中に、それぞれ架橋すべきポリマーの総量を基準にして0.4重量%まで、非常に好ましくは0.3重量%までの総量で存在することが好ましい。ポリマー100重量部に対し0.3重量部を超える架橋剤量では、接着力の損失が益々見込まれるようになり、そして湿潤が劇的に悪化する。特に好ましい架橋剤の量は、例えば、それぞれ架橋すべきポリマーの総量を基準にして、0.12〜0.30重量%の範囲、特に0.15〜0.25重量%の範囲である。
【0067】
発泡されたキャリアも好ましくは熱架橋され、これは、層の非常に均質な形成をもたらす。特に好ましくは、発泡されたキャリアは、少なくとも一種のグリシジルエーテル、特に少なくとも一種のポリグリシジルエーテル、非常に好ましくは少なくともペンタエリトリトールテトラグリシドエーテル(CAS3126−63−4)によって熱的に架橋される。発泡されたキャリアの架橋は、好ましくは、促進剤としてのアミンと組み合わせて、特に好ましくはイソホロンジアミン(CAS2855−13−2)と組み合わせて行われる。架橋すべき発泡したキャリア層中での架橋剤の総割合は、架橋すべきポリマーの総量をそれぞれ基準にして、好ましくは1.0重量%まで、より好ましくは0.8重量%までである。好ましい架橋剤量は、例えば、架橋すべきポリマーの総量をそれぞれ基準にして0.05〜0.6重量%、特に0.10〜0.5重量%の範囲である。
【0068】
促進剤は、好ましくは、架橋すべきポリマーの総量をそれぞれ基準にして0.1〜1.5重量%、より好ましくは0.15〜1.2重量%の量で存在する。
【0069】
発泡したキャリア中のアミン系促進剤の存在は、特に、三層または多層構成では重要ではない、というのも、これらの場合ではキャリア層は、外側の接着剤層もしくは感圧接着剤層によって、空気酸素などの酸化性物質の影響から大幅に遮られるからである。
【0070】
発泡したキャリア及び一方もしくは両方の感圧接着層の熱架橋は、例えば感圧接着剤層がまだ架橋されていない発泡したキャリア上にコーティングされるかまたはこれらの層が特殊なプロセスにおいて一緒に形成される時に、同時に実施できる。
【0071】
しかし、個々の層は、例えば感圧接着剤を既に熱架橋したキャリア層にコーティングし、次いで熱架橋する場合にまたは感圧接着剤を他の箇所で形成及び熱架橋し(例えばリリース材料などの一次的なキャリア上で行う場合)、次いで既に架橋した発泡キャリア上に積層する場合には、別々のプロセスでも熱架橋することもできる。このためには特に、発泡したキャリア及び/または一つ以上の感圧接着剤を、例えばコロナ処理及び/もしくはプラズマ処理及び/または反応性コロナ処理及び/もしくは反応性プラズマ処理(例えば窒素、酸素、フッ素及び/または他のガスなどのガスの使用して)及び/または火炎処理(Flame Treatment)によって、化学的に及び/または物理的に前処理することが有利であり得る。
【0072】
本発明による特に三層の両面接着テープの製造は、EP05792143A1(特許文献8)における三層または多層系についての製法に応じて行うこともできる。そこに記載の製造及びコーティング方法は、本明細書の接着テープのためにも類似して使用でき; それ故、EP05792143A1(特許文献8)の開示内容は、本明細書に明示的に掲載されたものとする。EP05792143A1(特許文献8)に記載の製品構成の製法についても同様である。特に、発泡されたキャリアの製造のためのマイクロバルーンを用いた発泡は、有利には、EP2414143A1(特許文献8)及びDE102009015233A1(特許文献9)に記載の方法に従い行われる。
【0073】
発泡されたキャリアは、好ましくは、圧力負荷下に流動挙動(「クリープ」とも称される)を示す非常に高粘性の液体と見なされる。この意味での粘弾性材料は、好ましくは既に重力によって、すなわちそれ自体の重量による負荷下で、程度の差はあれゆっくりと流動しそして特に下地上を流れるかまたは下地を湿潤する能力を有する。しかし、少なくとも、この効果は外部圧力作用下に起こる。例えば接着テープを下地上に押圧することによる圧力の上昇は、この挙動を明らかに促進できる。
【0074】
更に、ここに記載の好ましい発泡キャリアの意味での粘弾性材料は、ゆっくりとした力の作用下に、それに作用する力を緩和する能力を有する。すなわち、これらは、力を振動及び/または変形(これは(少なくとも部分的に)可逆的であることもできる)に分散することができ、それ故、作用する力を「緩衝」でき、そして作用する力による機械的な破壊を好ましく防ぐか、しかし少なくとも低減でき、または破壊が始まる時点を遅らせることができる。非常に迅速に作用する力の場合には、粘弾性材料は通常な粘弾性の挙動、すなわち完全に可逆性の変形の挙動を示し、この際、材料の弾性力を超えている力は破断を招く恐れがある。
【0075】
これと反対のものが、ゆっくりとした力の作用下でも上記の弾性挙動を示す弾性材料である。弾性挙動は、基本的に湿潤に対して不利に作用する。それ故、本発明による感圧接着剤も、急速な力の負荷下での際だった弾性挙動にもかわらず、全体としてはむしろ粘弾性挙動を示し、特に長期の時間スケールでむしろ液体のように粘性挙動し、それ故、最適でかつ特に迅速な湿潤を引き起こすことが有利である。
【0076】
発泡したキャリアは、好ましくは、ポリマー中空球体、ポリマー中実球体、ガラス中空球体、ガラス中実球体、セラミック中空球体、セラミック中実球体及び炭素中実球体(「カーボンマイクロバルーン」)からなる群から選択される少なくとも一種の発泡剤を含む。特に好ましくは、発泡したキャリアは、少なくとも部分的に膨張したポリマー性マイクロ中空体を含み;特にそれらの基本状態から熱及び/または他のエネルギー供給下に膨張し得、そしてそれの外皮が、ポリメチルメタクリレート、PVDCまたはポリスチレンなどの熱可塑性材料からなるポリマー性マイクロ中空体、例えばガス充填及び/または液体充填ポリマー球を含む。本発明による感圧接着剤もこのような発泡剤を含むことができる。
【0077】
発泡したキャリアは、好ましくは、シリカ、特に好ましくはジメチルジクロロシランで表面処理した沈降シリカを含む。それによって、キャリア層の熱せん断強度が調節され、特に高められるので有利である。更に、シリカは、透明なキャリアに優れて使用できる。好ましくは、発泡したキャリア中に含まれるポリマーの全体を基準として15重量%までのシリカが発泡したキャリア中に含まれる。本発明による感圧接着剤もシリカを含むことができる。
【0078】
発泡したキャリア及び/または本発明による感圧接着剤、特に本発明による感圧接着剤は、好ましくは少なくとも一種の可塑剤を含む。可塑剤は、好ましくは、(メタ)アクリレートオリゴマー、フタレート、シクロヘキサンジカルボン酸エステル(例えばHexamoll(登録商標)DINCH、BASF社、CAS166412−78−8)、水溶性可塑剤、軟質樹脂、ホスフェート(例えばLevagard(登録商標)DMPP、Lanxess社、CAS18755−43−6)及びポリホスフェートからなる群から選択される。
【0079】
本発明に従う特に両面の接着テープは、一般的に及び上述の実施形態において、一連の利点を有する:
好ましい熱架橋によって、接着テープは一方ではそれらの層を通して架橋プロフィルを持たない。化学線(紫外線、電子線)によって架橋された粘弾性層または感圧接着剤層は、各々の架橋された層を通して架橋プロフィルを示す。熱架橋された材料層はこの挙動を示さない。なぜならば、熱が均一に層中に侵入できるからである。
【0080】
エポキシシクロヘキシル誘導体を用いて熱架橋された本発明による感圧接着剤は、他の架橋剤を用いて架橋された系よりも高い接着力を示す。この知見は、本発明による接着テープに大きな意味を有する。ポリアクリレートベースの発泡したキャリアを使用し、そしてこれの少なくとも一方の面に、本発明に従う熱的に、特にエポキシシクロヘキシル誘導体を用いて架橋された感圧接着剤を備えると、接着力ばかりでなく、この接着テープ面上の湿潤挙動も、
−対応する感圧接着剤を弾性ポリマーキャリア上に有する系、または
−同一の、好ましくは粘弾性のキャリアを有するが、他の感圧接着剤(たとえそれ自体は接着性が明らかにより高い場合も)を有する系、
よりも良好である。
【0081】
本発明による接着テープの接着力のためには、外側の感圧接着剤だけでなく、発泡したキャリアも同様に役割を果たすために、優れた接着性のためには、系全体が重要である。すなわち、本発明による接着テープが基づく思想は、好ましくは粘弾性で比較的軟質のフォーム層と、それ自体(すなわち例えばキャリアとして弾性フィルム下地を用いた)感圧接着性がそれほど強くない感圧接着層との組みあわせを内包する。それによって、両層の協力によって、感圧接着剤層の側上での接着挙動が改善され、それによって、それ自体でまたは弾性キャリア上で感圧接着性がそれ自体より強い感圧接着剤層の場合よりも明らかに良好な接着力並びに湿潤挙動が達成されるという結果となる。
【0082】
本発明によって、それ自体は接着性が比較的弱い凝集性接着剤が、この凝集性ポリマー層に隣接してフォーム層を設けることによって、接着力が非常に強い及び迅速に湿潤する接着テープ用の接着テープとして首尾良く適格化される。
【0083】
接着力そのものは外側の接着剤によって決定される接着テープでは、しばしば接着と凝集との間で妥協しなければならない(本明細書の冒頭部を参照されたい)。本発明によれば、個別に最適化できる二つの異なる層の特性を制御することによって、優れた総合特性を首尾良く達成できる。特に、鋼鉄または非極性自動車塗料に対する本発明による接着テープの接着力は、本発明による感圧接着剤の側で、好ましくは12時間後、より好ましくは8時間後に、少なくとも40N/cm以上である。特に好ましくは、この接着力は実際は測定可能ではない。というのも、50N/cm超の値は、シンタクチックポリマーフォームの望ましい凝集破壊をもたらすからである。加えて、本発明による接着テープは、高温(例えば約70℃)で長いせん断耐久時間を有する。
【0084】
本発明による接着テープの改善された取り扱いまたは貯蔵のためには、これは、片面または両面にリリース材料を備えることができ、ここで、このリリース材料は、例えば、シリコーン、フィルム、シリコーン化されたフィルムまたは紙、表面処理されたフィルムまたは紙あるいは類似物、すなわちいわゆるライナーである。
【0085】
本発明による接着テープは、上記の層の他に更なる層を含むことができ、すなわち3超の層順列を持つ多層系が可能である。この際、発泡したキャリア層に、好ましくは直接的にまたは少なくとも間接的に本発明による感圧接着層が備えられる場合に特に有利である。というのも、この場合、既に記載した接着技術上の利点が実現されるからである。
【0086】
本発明による接着テープは、追加的に非常に高い接着力を有する非常に厚手の製品として製造できることを特徴とする。このような製品は、例えば建築部門、自動車工業、または凹凸もしくは空洞を均す必要のある接着に使用される。
【0087】
発泡したキャリア層の良好な緩和挙動に基づいて、本発明による接着テープは、機械的な負荷、衝撃及び類似の力などの力の作用を捕らえそしてそのエネルギーを拡散するのに適している。それ故、本発明による接着テープは、例えば壊れやすい物体の接着のために、エレクトロニクス分野においてまたは類似の分野において、衝撃及び/または振動減衰作用が望ましい時にはどのような場合でも非常に好適である。異なる熱膨張係数を持つ材料を互いに接着すべき場合に、本発明による接着テープを使用することが格別有利である。というのも、本発明による接着テープは、互いに接着された物体または表面の異なる膨張挙動によって生じる応力をその緩和力によって拡散できるからである。それとは異なり、慣用の接着テープは、接着された物体が大きく異なる膨張挙動を示す場合には、多くの場合破壊を招く傾向がある、すなわち接着部分の弱化またはそれどころか破断を招く。
【0088】
本発明による接着テープは、数マイクロメータから数百マイクロメータの通常の接着テープの厚さで、しかし特に有利には300μm超、例えば500μm以上、1000μm以上、1500μm以上、2000μm以上、または更には3000μm以上の厚さで製造することができる。更に厚手の製品も実現可能である。
【0089】
好ましくは、本発明による接着テープでは、発泡したキャリアは、300〜2500μm、より好ましくは400〜2400μmの層厚を有し、そして少なくとも一つの感圧接着剤は40〜150μm、より好ましくは50〜100μmの層厚を有する。
【0090】
本発明による接着テープは、非極性自動車塗料上に飾り縁、エンブレム及びバンパーを接着及び固定するのにも格別良好に適している。必要な場合には、接着強度を更に高めるために、接着の前に表面を更にプライマーで処理することができる。
【0091】
本発明の接着テープが卓越して適している更に別の使用分野は、例えば、建物の建設または解体、建物の装備及び建築分野(各々内装及び/または外装)、DIY分野、模型製作、家具製造、船舶及び航空機の建造、電子及び電気工業(例えば、家庭用エレクトロニクス、白物、褐色物、良好な耐熱性に基づいて赤物にも)並びに道路交通(道路標識など)である。