(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の開示は、長さと直径の分布が制御された銀ナノワイヤーを製造する合成方法である。この方法は、ナノワイヤーの生産量のさらなる向上と所望の形態を有する濃縮されたナノワイヤーのさらなる向上のために、精製工程が任意に組み合わされたものであってもよい。特に、ここで開示された工程は、既知のポリオール合成により製造されたものよりも細い直径を持つ銀ナノワイヤーを製造する。合成と精製でナノワイヤーの形態を制御することによって、多様な実施形態は、所望の直径と長さのピークを有する(例えば、平均長さが約10μmで平均直径が25nm未満)サイズ分布プロファイルを持ったナノワイヤーの集団を提供する。これらのナノワイヤーの集団は、光学特性が向上した透明導電膜を作り出すための塗料になり得る。
【0021】
<ナノ構造の形態>
ナノ構造は、少なくとも一面(例えば、直径または幅)が500nm未満であり、より一般的には100nmまたは50nm未満である構造である。既定のナノ構造の形状を定義する一つの方法として、その「アスペクト比」で定義する方法がある。それは、ナノ構造の長さと直径との割合を参照する方法である。いくつかの実施形態において、ナノ構造は等方的に形成されている(言い換えれば、アスペクト比=1)。一般的な、等方性又は実質的に等方性のナノ構造は、本明細書でアスペクト比が3未満であると定義されるナノ粒子を含んでいる。
【0022】
ナノワイヤーは、ナノ構造を少なくとも10の高アスペクト比で伸長させたものである。一般的には、ナノワイヤーは少なくとも50のアスペクト比を有し、より一般的には少なくとも100、さらに一般的には少なくとも300のアスペクト比を有する。
【0023】
「低アスペクト比のナノ構造」は一般的には10未満のアスペクト比を有する。
低アスペクト比のナノ構造は、ナノ粒子、ナノロッド等を含む。
低アスペクト比のナノ構造は導電ネットワークの形成には寄与しないが、光の散乱とヘイズに寄与する。低アスペクト比のナノ構造は、暗視野の顕微鏡像における光の散乱により輝くので、低アスペクト比のナノ構造はしばしば「明るい物体」として引き合いに出される。
【0024】
溶液ベースのアプローチ(既知のポリオール合成方法を含む)で製造された粗組成物は、多様な長さ、直径、そしてアスペクト比を有するナノ構造を必ず含み、ナノワイヤーはもちろん、低アスペクト比のナノ構造も含む。有利な点として、本明細書に記載されるこの工程は、低アスペクト比のナノ構造の製造を最小限に抑えつつ、ナノワイヤー合成におけるサイズ分布を制御することができる。
【0025】
<共添加剤を用いるポリオール合成>
以下の開示は、塩化物源(chloride source)を伴う、1以上の共添加剤(co-additive)を用いるポリオール合成を含む。
より具体的には、ポリオール合成は、銀塩が還元され、ナノワイヤーの状態になるように制御される二段階の合成である。
いかなるの理論に縛られることを望むものでは無いが、合成の第1段階は、銀の結晶形成の促進及び銀ナノワイヤーの軸方向(長さ)と放射方向(直径)との両方向への初期の成長という、主にシーディング過程であると考えている。合成の第2段階は、主にナノワイヤーの長さが伸長する成長過程であると考えている。
【0026】
したがって、一実施形態では、
ポリオール溶媒、第1分量の銀塩、キャッピング剤、塩化物源及び共添加剤を含む第1段階の反応混合物を、第1の期間で反応させる工程と、
前記第1の期間の後、全反応混合物の銀塩の濃度を0.1%w/w未満に保ちながら、前記第1段階の反応混合物に第2分量の銀塩を徐々に添加する工程と、を備え、
前記共添加剤は、
(a)過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、トリフレート、リン酸塩、チオ硫酸塩、サリチル酸塩からなる群から選択される、アニオンを有する可溶性塩、
(b)N(R
1)
3、置換基を有していてもよいピリジン、置換基を有していてもよいピリミジン、置換基を有していてもよいピラジン及び置換基を有していてもよいピリダジンから選択される含窒素塩基であって、
前記各R
1は、同一または異なっており、独立に、
水素、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又はR
1基の2つが互いに結合してN−複素環を形成している
(c)置換基を有していてもよいフェノールまたはハイドロキノン、又は、
(d)置換基を有していてもよいアニリンであって、
前記共添加剤は塩化物源の塩化物に対して5%〜120%のモル比で存在する、銀ナノワイヤーの製造方法を提供する。
【0027】
ここで「銀塩」とは、銀イオンと、負の電荷を帯びたカウンターイオンを有する中性化合物である。このカウンターイオンは、無機又は有機である。例示的な銀塩は、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、フッ化銀、テトラフルオロホウ酸銀、銀トリフレート等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0028】
一般的には、銀塩はポリオール溶媒に可溶である。例えば、還元性溶媒中における銀塩の溶解性は少なくとも0.001g/ml又は少なくとも0.05g/ml又は少なくとも0.1g/mlである。銀塩の還元は、対応する銀元素を生成する。金属元素は、ナノ構造の放射状と軸方向に結晶化及び成長する。軸方向の成長が、放射状の成長よりも実質的に有利である場合、高アスペクト比のナノ構造(例えば、ナノワイヤー)が形成される。
【0029】
「ポリオール溶媒」は、銀塩を対応する銀元素に還元する還元剤としても機能する溶媒である。一般的に、還元性溶媒は、少なくとも2つのヒドロキシ基を備える化学物質である。還元性溶媒の例として、ジオール、ポリオール、グリコール、またはこれらの混合が含まれるが、これらに限定されるものではない。具体的には、ポリオール溶媒は、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセリン、グリセロール、そしてグルコースの場合がある。
【0030】
「キャッピング剤」は、キャッピング剤が側面の表面が成長することを抑制し、ナノワイヤーの断面の表面が結晶化するように促進するような、成長するナノワイヤーの側面の表面に特異的に作用し付着する化学物質を指す。キャッピング剤の例として、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ポリカプロラクタム、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンカーボネート)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、またはそのいずれかの共重合体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
「塩化物源」は、塩化物イオンを反応混合物へ供給する水溶性物質を指す。
様々な実施形態において、塩化物源は、アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属、遷移金属と含む金属塩化物であってもよい。金属塩化物の例として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、塩化ニッケル、塩化インジウム、塩化亜鉛等が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0032】
さらに別の実施形態では、塩化物源は、それぞれのRが、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立した、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルであるNR
4Clで現される四級塩化アンモニウムであってもよい。四級塩化アンモニウムの例として、NH
4Cl、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、塩化テトラブチルアンモニウム(TBAC)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、C
8−C
18アルキル−ジメチル−ベンジル塩化アンモニウム(例えば、Aliquet 336(登録商標))等を含むが、これに限定されるものではない。
他の有機カチオン塩化物塩としては、テトラフェニルホスホニウムクロリドを含む。
【0033】
「共添加剤」は、銀ナノワイヤー合成の第一段階において、塩化物源と共に管理される化合物である。共添加剤は可溶性の塩、窒素を含有する塩基、または、フェノール、ハイドロキノン、又はアニリン由来の小分子でもよく、詳細は下記で定義される。
【0034】
ある実施の形態において、共添加剤は、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、トリフレート、リン酸塩、チオ硫酸塩、サリチル酸塩から成る群の中から選択された、カチオンとアニオンからなる塩であってもよい。塩がポリオール溶媒に可溶であれば、塩のアニオンと結合するカチオンについて、特に制限はない。例示的なカチオンは、ナトリウム、リチウム、アンモニウム等を含む。したがって、共添加剤は、過塩素酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ナトリウムトリフレート、リン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムトリフレート、リン酸リチウム、チオ硫酸リチウム、サリチル酸リチウム等であってもよい。
【0035】
他の実施形態では、共添加剤は例えば、N(R
1)
3で表されるアミンであって、それぞれのR
1は、各出現において同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立している、水素、置換基を有していてもよいアルキル、又は置換基を有していてもよいアラルキルである、窒素を含有する塩基であってもよい。例示的なアミンは、トリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン(TBA))、アンモニア(NH
3又はNH
4OH)、2−アミノ−2(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(トリズマ(登録商標)塩基、シグマアルドリッチ社)を含む。
【0036】
他の実施形態では、R
1の2基が窒素に結合し、N−複素環を形成している。例えば、アミンは、ピペリジン、モルフォリン、ピロリジン等の環状アミンであってもよいし、これらすべてのアミンが、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、ハロアルキル、又はカルボン酸によってさらに置換されたものでもよい。
【0037】
さらなる実施形態では、窒素を含有する塩基は、置換基を有していてもよいピリジン、置換基を有していてもよいピリミジン、置換基を有していてもよいピラジン、置換基を有していてもよいピリダジン、置換基を有していてもよいトリアジンであってもよい。ここで置換基とは、例えば、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、ハロアルキル、そしてカルボン酸を含む。
【0038】
さらに別の実施形態においては、共添加剤は、ここで定義されるように、フェノール、アニリン、又は誘導体の小有機分子であって、置換フェノールと置換アニリンを含む。
小分子の分子量は一般的に500未満であり、より一般的には300未満であり、さらに一層一般的には、200未満である。置換フェノールは、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、ハロアルキル、カルボン酸、その他同種類のもので、1つ又は複数置換されているフェノールである。例示的なフェノールは、カテコール(2−ヒドロキシフェノール)、1,4−ハイドロキノン(4−ヒドロキシフェノール)、没食子酸、レゾルシノールを含むがこれに限定されるものではない。アニリンはさらに、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボン酸、その他同種類のもので、1つ又は複数置換されていてもよい。置換基はフェニル環またはアニリンのアミン基であってもよい。例えば、置換アニリンは、N−メチルアニリンまたは4−メチルアニリン(すなわち4−トルイジン)であってもよい。
【0039】
ある実施形態においては、前駆体が、還元剤であるポリオール溶媒の中で、フェノール又は置換フェノールに置き換えることのできるフェノールの前駆体、又は置換フェノールを共添加剤として使用してもよい。例えば、1,4−ベンゾキノンが共添加剤として用いられてもよい。ポリオール溶媒の中で、1,4−ベンゾキノンは、四級アンモニウムの共添加剤として機能する1,4−ハイドロキノンに、容易に還元される。
【0040】
ここで、「アルキル」とは、炭素数1〜20の間の、一価の飽和炭化水素の構造を示し、これらの炭素は直鎖でも分枝でもよい。低級アルキルとは、炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル等を含む。長鎖のアルキル基の例としては、オクチル(C
8)、デシル(C
10)、ドデシル(C
12)、セチル(C
16)等を含む。特定の炭素数を有するアルキル残基の名をあげる場合、その特定の炭素数を持つすべての幾何異性体が考慮される、つまり、例えば、「ブチル」はn−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、及びt−ブチルを意味し、プロピルはn−プロピルとイソプロピルを含む。
【0041】
「アラルキル」は、フェニル基などのアリル基で置換されているアルキルを示す。アルキル基とフェニル基の両方とも、さらに置換されてもよい。
「アルコキシ」は、化学式-O-アルキル基を示し、アルキルは本明細書で定義されるものである。例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ等を含む。
「ハロ」は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基を示す。
「ハロアルキル」は、本明細書で定義したように、1又は複数のハロ基で置換されたアルキルを示す。例えば、トリフルオロメチル、トリクロロメチル等を含む。
【0042】
「N−複素環」は安定した3〜18員環であって、1〜12の炭素原子と少なくとも1つの窒素原子を環の原子に備える。N−複素環はさらに、環の原子として、酸素や硫黄など他のヘテロ原子をさらに含んでもよい。N−複素環基の例として、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリジンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0043】
「置換基を有していてもよい」の意味は、置換があってもなくてもよいという意味である。したがって、置換基を有していてもよい部分は、部分自体(例えば、未置換の形状)や、置換形の場合がある。例えば、置換基を有していてもよいフェノールの共添加剤は、フェノール、又はヒドロキシ置換フェノール(例えば、カテコール又は1,4−ハイドロキノン)である場合がある。
反応前の第一段階の反応混合物中の反応物質の相対的な量は、ナノワイヤーの形状を制御するために調節する場合がある。
【0044】
様々な実施形態では、第一段階の反応混合物中の銀の含有量、いわゆる「初期の銀」は、第一段階の反応混合物の全重量に対して1.2%(w/w)未満である。様々な実施形態では、初期の銀の濃度は、第一段階の反応混合物の全重量に対して、約0.01〜1%(w/w)、約0.05〜1%(w/w)、約0.1〜1%(w/w)、約0.5〜1%(w/w)、約0.2〜0.7%(w/w)、または約0.1〜0.6%(w/w)である。好ましくは、第一段階の反応混合物における銀の含有量は、第一段階の反応混合物の全重量に対して約0.2〜0.4(w/w)である。
【0045】
様々な実施形態では、第一段階の反応混合物における共添加剤の初期の銀に対するモル比は、約0.2〜7%(mol/mol)である。好ましくは、そのモル比は約0.2〜6%(mol/mol)、約0.2〜5%(mol/mol)、約0.2〜4%(mol/mol)、約0.2〜3%(mol/mol)、約0.2〜2%(mol/mol)、または約0.2〜1%(mol/mol)であって、より好ましくは、約0.5〜0.8%(mol/mol)である。
【0046】
様々な実施形態では、第一段階の反応混合物における共添加剤の塩化物に対するモル比は約5〜120%(mol/mol)である。好ましくは、そのモル比は約5〜100%(mol/mol)、約5〜50%(mol/mol)、約5〜20%(mol/mol)、または約10〜20%(mol/mol)であって、より好ましくは約10〜15%(mol/mol)である。
【0047】
様々な実施形態では、初期の銀に対する、第一の反応混合物におけるキャッピング剤(例えば、PVP)のモル比は約100〜1000%(mol/mol)である。好ましくは、そのモル比は約100〜800%(mol/mol)、約100〜600%(mol/mol)、約200〜500%(mol/mol)、約400〜800%(mol/mol)、または約300〜500%(mol/mol)であって、より好ましくは、約400〜500%(mol/mol)である。
【0048】
様々な実施形態では、初期の銀に対する、第一の反応混合物における塩化物のモル比は、約1〜20%(mol/mol)である。好ましくは、そのモル比は約1〜15%(mol/mol)、約1〜10%(mol/mol)、または約2〜8%(mol/mol)であって、より好ましくは、約2〜6%(mol/mol)である。
【0049】
さらなる実施形態では、第2分量(second portion)の銀塩が追加される前に、第1分量(first portion)の銀塩は、少なくとも初期の銀の80%が銀ナノ構造(銀ナノワイヤー、銀ナノ粒子等を含む)へ変換されるまでに十分な時間で、反応させてよい。
好ましい実施形態では、第2分量の銀塩が追加される前に、第1分量の銀塩の少なくとも85%以上、より好ましくは少なくとも90%以上が銀ナノ構造へ変換されることが好ましい。したがって、第1の期間は、温度、初期の銀の濃度、試薬の相対的な量などの反応条件による。しかしながら、第1の期間を決定するために、初期の銀が次第に銀元素に(銀ナノ構造として)還元される変換比率を測定することは、当業者の技術常識である。
【0050】
目的の変換が満たされる(例えば、初期の銀のうち少なくとも85%または少なくとも90%が変換された)と、反応混合液の中の銀塩(例えば銀イオン)の濃度を確実に0.1%(w/w)未満の割合で維持するために、第2分量の銀塩が徐々に追加される。
【0051】
第二段階の反応における第2の期間は、銀ナノワイヤーの形態と、所望のサイズ分布に達したところをモニターすることによって決定されてもよい。様々な実施形態では、第二段階の反応の最後に、全反応混合物の0.01〜10%w/wの量となるように追加された全銀塩が形成される(例えば、第一段階の反応の混合物と第2分量の銀塩とが結合したもの)。好ましい実施形態では、全銀塩は、全反応混合物の0.01〜5%w/wである。
【0052】
図1A及び
図1Bは、本明細書に記載の方法と、先行技術文献である米国公開出願第2011/0174190号明細書及び第2013/0291683号明細書に記載の方法とを用いて製造された銀ナノワイヤーの平均直径と平均長さの変化の比較を示す。特に、
図1Aは、本明細書の方法で製造された銀ナノワイヤーが、先行技術文献の方法で製造された銀ナノワイヤーと比較して、平均長さがより短いことを示している。
図1Bは、本明細書の方法で製造された銀ナノワイヤーが、先行技術文献の方法で製造された銀ナノワイヤーと比較して、平均直径がより細いことを示している。
【0053】
図2A及び
図2Bは、共添加剤を含まない先行技術文献の方法で製造された銀ナノワイヤー(
図2A)と、本明細書の方法で製造された銀ナノワイヤー(
図2B)の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。これらの像は60kXで撮像された。
図2A及び
図2Bは、共添加剤無しで製造されたナノワイヤー(より太い)と共添加剤を伴って製造されたナノワイヤー(より細い)とを比較した際の直径の違いを視覚的に示している。
【0054】
図3Aは、本明細書の一実施形態の記載の方法(共添加剤有り)によって製造されたナノワイヤーと、先行技術文献の方法(共添加剤無し)によって製造されたナノワイヤーとを比較した直径の分布のプロファイルを示している。図に示すように、本明細書に記載のナノワイヤーの直径分布のプロファイルは、先行技術文献のナノワイヤーに比べて、約5〜7nm細い方へ均一にシフトしている。さらに、本明細書に記載の直径の分布のプロファイルは、先行技術文献に比べ広がりがより狭く、より均一な直径分布であることを示している。
【0055】
図3Bは、本明細書の一実施形態の記載の方法(共添加剤有り)によって製造されたナノワイヤーと、先行技術文献の方法(共添加剤無し)によって製造されたナノワイヤーとを比較した長さの分布のプロファイルを示している。図に示すように、本明細書に記載のナノワイヤーはより細い直径を有するにも関わらず、先行技術文献に記載のナノワイヤーの長さと実質的に同一の長さを有しており、本願明細書に記載のナノワイヤーは、先行技術文献に記載のナノワイヤーに比べ、高アスペクト比となりやすいことを示している。
【0056】
図4は、3種類の異なる共添加剤、すなわち、カテコール、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF
4)、トリブチルアミン(TBA)によって製造されたナノワイヤーの直径の分布のプロファイルを示している。図に示すように、共添加剤の存在下で製造されたナノワイヤーは、全て直径が23nm未満であり、既知のポリオール法によって製造されたナノワイヤーよりも細い。
【0057】
<精製>
一般的に、既知の工程を含むポリオール合成は、粗組成物、すなわち、ナノワイヤーと、ナノロッド、ナノ粒子等の低アスペクト比のナノ構造体との集合物、を製造する。低アスペクト比のナノ構造は、ナノワイヤーネットワークの導電率に関与しない。短いナノワイヤー(<5μm)は、アスペクト比が少なくとも10であってもナノワイヤーネットワークの導電率に効果的に関与しない。したがって、これらの存在は光の散乱に寄与するのみであり、透明導電膜の光学特性に負の影響を与えてしまう可能性がある。
【0058】
第一段階の反応混合物において共添加剤を用いると、本明細書に記載のポリオール合成は、短いナノワイヤーなどの低アスペクト比のナノ構造のような不純物の生成物が最小化される一方で、高アスペクト比のナノワイヤー(例えば、≧300)の生成物が偏在する粗組成物を提供する。それでも、精製過程は低アスペクト比のナノ構造と短いナノワイヤーを粗組成物から取り除くことができるので、ナノ構造の集団の中で所望の形態のナノワイヤーをさらに濃縮する。
【0059】
一般的に、安定した溶媒系では、沈降速度はナノワイヤーの直径及び長さに強く依存する。より長くより太いナノワイヤーは、より早く沈降する。本明細書に記載の細いナノワイヤーは、平均直径が23nm未満であり、典型的な精製による沈降では遅く、分離の効果が薄い。
【0060】
その一方で、ナノワイヤーはお互いに静電的に引き合っているため、粗組成物内においてナノワイヤーがより高濃度ほど、沈降速度もより速くなる。第一段階の反応混合物内で、全体の銀塩の量を増やすと同時に、反応物質の相対的な量を調整することにより、ナノワイヤー間の静電誘引を高めることによって、より細いナノワイヤーにおける遅い沈降速度という欠点を補う以上に、粗組成物内におけるナノワイヤーの収量を十分に高くすることができることを見出した。例えば、一実施形態は高パーセンテージのナノワイヤーを含む粗組成物を供給するために全体の銀の添加量を高くし([Ag]>0.60wt%)、50〜65%という、相対的に高い収量となった。
【0061】
この場合、沈殿とは、溶媒中に懸濁した銀ナノワイヤーが、遠心力ではなく、重力により沈降することを指す。
したがって、一実施形態は、
銀ナノ構造を含む、銀ナノ構造粗組成物をポリオール溶媒中に供給し、その粗組成物は、銀ナノワイヤーと低アスペクト比のナノ構造から成り、
低アスペクト比のナノ構造を含む上清を得るために、前記銀ナノワイヤーを沈殿させる工程と、
低アスペクト比のナノ構造を含む上清を取り除く、
より細いナノワイヤーを沈殿によって精製する方法を提供する。
【0062】
図5A及び
図5Bは、高濃度の銀ナノワイヤーを精製する沈殿工程の有効性を示している。
図5Aは、粗組成物と精製物の長さの分布プロファイルを示す。図に示すように、短いナノワイヤーを取り除く精製によって、平均長さが長くなっている。
図5bは、精製後に幅の分布が維持されていることを示す(例えば、平均的なナノワイヤーの直径は23nm未満のままである)。
【0063】
代わりの精製方法では、粗製生物からナノワイヤーを選択的に取り除くキャッピング剤の溶解性に依拠する。この方法は、粗組成物内に不純物(例えば、ナノ粒子)が高レベルで存在するときに、特に効果的である。特に、キャッピング剤(例えば、PVP)はナノ構造に付着しやすいため、PVPが難溶性である溶媒が、粗組成物に追加されると、PVPと共にナノ構造がすぐに溶液から沈殿する。適切な溶媒としては、キャッピング剤が5%w/w未満の可溶性を有するものである。溶媒の例として、アセトン、メチルエチルケトン、及び酢酸エチルを含む。ナノワイヤーに付着するPVPの量は、ナノ粒子に付着するPVPの量よりもかなり多いため、この工程は過度のナノ粒子が上清に残っているナノワイヤーの沈殿に有利である。ナノワイヤーがPVPと共に沈殿物は、ナノ粒子を含む上清と分離され、沈殿物は、すぐにまたPVPが溶けやすい溶媒(例えば、ポリプロピレングリコール、水、エタノールなど)中へ分散される。この、ナノワイヤーを沈殿及び再懸濁する工程は、ナノ粒子を取り除く一方で、ナノワイヤーを連続的に濃縮することを複数回繰り返す場合がある。一般的に、この繰り返しは、ナノ粒子が最大限取り除かれたことを示す指標となる、上清が透明になるまで行う場合がある。
【0064】
したがって、一実施形態は、
(a)ポリオール溶媒中に懸濁された銀ナノワイヤーと低アスペクト比のナノ構造を懸濁させたものを用意し、さらに、キャッピング剤を粗組成物に供給する工程と、
(b)前記キャッピング剤の溶媒への溶解度が5%w/w未満になるように、粗組成物に溶媒を添加する工程と、
(c)低アスペクト比のナノ構造を含む上清を得るために前記銀ナノワイヤーを沈殿させる工程と、
(d)前記上清から前記沈殿した銀ナノワイヤーを単離する工程と、を備える、
前記工程(d)の後に、
(e)沈殿した銀ナノワイヤーをポリオール溶媒の中で再懸濁させ、工程(b)〜(d)を繰り返す、
粗組成物を生成するポリオール合成に続く、ナノワイヤーの精製方法を提供する。
【0065】
<ナノワイヤー塗布液>
本明細書に記載の様々な実施形態によれば、ポリオール合成と精製方法は、所望の形態の銀ナノワイヤーを高いパーセンテージで持つ銀ナノ構造の集団を提供する。
特に、そのナノ構造の集団の中で、長く細いナノワイヤーが、上述の方法によって濃縮され、それは塗布液に直接配合することができる。
【0066】
したがって、一実施形態は、複数の銀ナノ構造を含む塗布液であって、アスペクト比が少なくとも3である銀ナノ構造の80%超が、直径約25nm未満である、塗布液を提供する。
【0067】
別の実施形態は、複数の銀ナノ構造を含む塗布液であって、アスペクト比が少なくとも3である銀ナノ構造が、平均直径約21〜23nmであり、標準偏差3〜4nmである、塗布液を提供する。
【0068】
別の実施形態は、複数の銀ナノ構造を含む塗布液であって、アスペクト比が少なくとも3である銀ナノ構造の90%超が、5μm以上の長さを有する、塗布液を提供する。
【0069】
さらに別の実施形態は、複数の銀ナノ構造を含む塗布液であって、アスペクト比が少なくとも3である銀ナノ構造が、平均長さ約12〜20μmであり、標準偏差約6〜8μmである、塗布液を提供する。
【0070】
銀ナノ構造に加え、塗布液はさらにバインダー、界面活性剤、そして分散液から構成されていてもよい。
【0071】
適したバインダーの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセスロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセスロース、ヒドロキシエチルセスロースを含む。
【0072】
適した界面活性剤の代表例としては、例えばCapstone(登録商標)FS−3100(非イオン性のフッ素系界面活性剤、デュポン社)フッ素系界面活性剤を含む。他の例示的な界面活性剤は、例えばTRITON(登録商標)(x100、x114、x45)のようなオクチルフェノールエトキシレートや、例えばTERGITOL(登録商標)(ダウ・ケミカル社、ミッドランド、ミシガン州)のようなノニルフェノールエトキシレートである。
【0073】
適した分散液としては、水とアルコール(例えば、エタノールまたはイソプロパノール)を含む。1より多い溶媒を使用してもよい。例えば、水とイソプロパノールを混合したものを分散液として用いてもよい。
【0074】
<透明導電膜の形成>
透明導電膜を基板の上に形成するために、塗布液は(すべての銀ナノ構造を含めて)通常約0.05〜1.4%の銀を含む。基板は、ナノワイヤーが堆積されるものであればどのような材料であってもよい。基板は剛性を有するものでも可撓性を有するものでもよい。好ましくは、基板もまた光学的に透明であり、例えば、材料の光透過が可視領域(400〜700nm)において少なくとも80%以上ある。
【0075】
剛性を有する基板の例としては、ガラス、ポリカーボネート、アクリル等が含まれる。
特に特殊ガラス、例えば、無アルカリガラス(例えばホウケイ酸ガラス)、低アルカリガラス、ゼロ膨張ガラスセラミックを使用することができる。特殊ガラスは特に、液晶ディスプレイ(LCD)などの薄い表示パネルシステムに適している。
【0076】
可撓性を有する基板の例として、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、ポリカーボネート)、ポリオレフィン(例えば、ライナーポリオレフィン、分枝ポリオレフィン、環状ポリオレフィン)、ポリビニル(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリアクリレート等)、セルロースエステル基材(例えば、セルローストリアセテート、酢酸セルロース)、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、シリコーンのようなポリスルホン、そして他の従来の高分子フィルム等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0077】
従来のどのような塗布方法を用いてもよい。引き合いに出す方法としては、スロットダイ、ロールツーロール塗布を含むスロットダイ塗布方法である。
当業者が理解するように、例えば、狭チャネルによって計測される堆積フロー、ダイフロー、傾斜フロー、スリットコート、グラビア塗布、マイクログラビア塗布、ビード塗布、浸漬塗布、スロットダイ塗布、スピン塗布等、他の蒸着技術を用いることができる。
インク組成物を基板へパターン有または無で直接プリントする、印刷技術もまた、用いることができる。例えば、インクジェット、フレキソ印刷、スクリーン印刷を用いることができる。
【0078】
本明細書に記載の様々な実施形態が、以下の限定されない例により説明される。
[実施例1]共添加剤を付加しないナノワイヤーの合成
表1は、米国公開出願第2011/0174190号明細書に開示されている出発組成物として例示的な反応物質を示している。
【表1】
*PVPに対するモル比は、PVP繰り返し単位を参照しており、完全な高分子鎖ではない。
【0079】
代表的な先行技術文献の方法は、1,2−プロピレングリコール(PG)455gとポリビニルピロリドン(PVP)(分子量58,000)7.2gを90℃まで加熱し、窒素(N
2)雰囲気で、90分攪拌した。攪拌中の混合物へ、TBAC溶液1.2g(PG中10%(w/w))と硝酸銀(AgNO
3)溶液18.6g(PG中14%(w/w))が加えられた。そして、上述の反応混合物を、窒素雰囲気で、90℃で16時間攪拌した。そして、硝酸銀(AgNO
3)溶液18.6g(PG中14%(w/w))を、7時間に渡って反応容器に徐々に滴下した。反応混合物の加熱を止め、窒素雰囲気で、攪拌しながら室温まで冷やした。
ナノワイヤーの平均長さは12μm、平均直径は25nmであった。
図1A及び
図1B参照のこと。
【0080】
[実施例2]カテコール共添加剤
1リットルの反応容器で、1,2−プロピレングリコール(PG)448gとポリビニルピロリドン(PVP)(分子量:58,000)7.2gを90℃まで加熱し、窒素(N
2)雰囲気で、90分攪拌した。攪拌中の混合物へ、TBAC溶液2.4g(PG中10%(w/w))、カテコール溶液2.25g(PG中0.5%(w/w))、硝酸銀(AgNO
3)溶液18.6g(PG中14%(w/w))が加えられた。そして、上述の反応混合物を、窒素雰囲気で、90℃で16時間攪拌した。そして、硝酸銀(AgNO
3)溶液38g(PG中14%(w/w))が、49時間に渡って反応容器に徐々に滴下された。反応混合物の加熱を止め、窒素雰囲気で、攪拌しながら室温まで冷やした。
ナノワイヤーの平均長さは10.2μm、平均直径は20.3nmであった。
【0081】
[実施例3]カテコール共添加剤
本実施例では、実施例2と異なる順番で反応物が追加された。1リットルの反応容器で、PVP溶液72g(PG中10%)、硝酸銀18.6g(PG中10%)、PG388g、カテコール2.25g(PG中0.5%)、そしてTBAC2.4g(PG中10%)が加えられた。この第一段階の反応混合物は、窒素雰囲気で、90℃で16.5時間攪拌された。そして、硝酸銀溶液38g(PG中14%)が、49時間にわたって反応容器に徐々に滴下された。反応混合物の加熱を止め、窒素雰囲気で、攪拌しながら室温まで冷やした。
ナノワイヤーの平均長さは11.9μm、平均直径は20.9nmであった。
【0082】
[実施例4]銀または塩化物の量の増加による影響
先行技術文献と比較し、共添加剤として塩化物源(TBAC)に10〜100%のモル比でカテコールが追加されると、すべてのナノワイヤーが直径約20nmとなり、実施例1の直径より有意に細くなった。反応中のTBACの量を、表1と比較して100〜400%に増やすと、第二段階で追加した銀(100〜150%)が、直径は細く保ちながらも(〜20nm)、ワイヤーの伸長を特異的に促進することがわかった。
【0083】
図6Aは、銀とTBACの量が調整されたときの、ナノワイヤーの長手方向の成長の傾向を示している。図に示すように、TBACと銀の量が増加した場合に、長さが長くなっている。それに対し、(表1に記載の量と比較して)TBACの量は100%で維持し、銀のみの量を増やしても、ナノワイヤーの長手方向の成長はみられなかった。
【0084】
図6Bは、銀とTBACの量が調整された場合の、ナノワイヤーの直径の成長傾向を示している。図に示すように、(表1に記載の量と比較して)TBACと銀の量の両方を増加させても、その約20nmの直径の細さは維持されたままであった。それに対し、(表1に記載の量と比較して)TBACの量は100%で維持し、銀の量を増やすことで、ナノワイヤーを太くした。
【0085】
[実施例5]テトラフルオロホウ酸ナトリウム共添加剤
1リットルの反応容器で、1,2−プロピレングリコール(PG)448gと、PVP(分子量:58,000)5.4gとを窒素雰囲気で、90℃で90分加熱した。
攪拌中の混合物へ、TBAC溶液1.2g(PG中10%(w/w))、テトラフルオロホウ酸ナトリウム溶液6.0g(NaBF
4)(PG中0.5%(w/w))、硝酸銀溶液18.6g(PG中14%(w/w))が追加された。この第一段階の反応混合物は窒素雰囲気で、90℃で16時間攪拌された。そして、硝酸銀溶液18.9g(PG中14%)が、24.5時間にわたって反応容器に徐々に滴下された。反応混合物の加熱を止め、窒素雰囲気で、攪拌しながら室温まで冷やした。
ナノワイヤーの平均長さは11.3μm、平均直径は19.7nmであった。
テトラフルオロホウ酸ナトリウムの量について、TBACに対しモル比で25%〜100%の間で様々な量を試した。所望の形態を得て、ナノ粒子を最小限に抑えるナノワイヤーの最善の収率は、塩化物源に対してモル比で45%〜70%であった。
【0086】
[実施例6]テトラフルオロホウ酸ナトリウム共添加剤
本実施例では、第1分量の銀塩が二分割され(〜2:98)、少ない方(「プレ銀」)を最初に、残りの反応物質と結合させた。多い方は、短時間の間に追加された。1リットルの反応容器で、1,2−プロピレングリコール(PG)455gと、PVP(分子量:58,000)7.2gとを窒素雰囲気で、90℃で105分加熱した。攪拌中の混合物へ、硝酸銀溶液0.45g(PG中14%(w/w))、TBAC溶液1.2g(PG中10%(w/w))、テトラフルオロホウ酸ナトリウム溶液5.0g(NaBF
4)(PG中0.5%(w/w))が追加された。そして、硝酸銀溶液18.2g(PG中14%(w/w)が6分間にわたって反応容器に滴下された。この反応混合物は窒素雰囲気で、90℃で17時間攪拌された。そして、硝酸銀溶液18.9g(PG中14%)が、24.5時間にわたって反応容器に徐々に滴下された。反応混合物の加熱を止め、窒素雰囲気で、攪拌しながら室温まで冷やした。
ナノワイヤーの平均長さは11.3μm、平均直径は21.3nmであった。
【0087】
[実施例7]トリブチルアミン共添加剤
1リットルの反応容器で、1,2−プロピレングリコール(PG)455gと、PVP(分子量:58,000)5.4gとを窒素雰囲気で、90℃で145分加熱した。
攪拌中の混合物へ、TBAC溶液1.2g(PG中10%(w/w))、トリブチルアミン溶液(TBA)(0.5%(w/w))10.0gが追加された。そして、硝酸銀溶液18.6g(PG中14%(w/w))が、6分にわたって反応容器に徐々に滴下された。この反応混合物は窒素雰囲気で、90℃で17時間攪拌された。そして、硝酸銀溶液18.6g(PG中14%)が、24時間にわたって反応容器に徐々に滴下された。反応混合物の加熱を止め、窒素雰囲気で、攪拌しながら室温まで冷やした。
ナノワイヤーの平均長さは10.6μm、平均直径は22.3nmであった。
【0088】
[実施例8]トリブチルアミン共添加剤の効果とPVP添加のナノワイヤーの形態
トリブチルアミンはTBACに対してモル比で25〜100%の量で試された。
図7は、共添加剤量の低減は、ワイヤーの長さを長くすると共に、ナノ粒子の量も増大したことを示している。
ワイヤーの長さを伸ばすために、(表1と比較して)PVPを25%〜95%添加し、PVPを75%〜90%添加するとワイヤーの長さが伸長することがわかった。
図8A、
図8B,
図8Cは、PVP添加をそれぞれ100%、75%、50%で製造されたナノワイヤーのSEM像である。最適なPVP添加の幅(75%〜90%、表1と比較)よりも下か上となると、より多くのナノ粒子と太いワイヤーが存在した。合成の間に、分割した最初の硝酸銀をプレ銀(500gスケールで0.1g〜0.6g)へ追加することもまた、ナノ粒子の量を減少させた。
【0089】
[実施例9]沈殿による精製
実施例2及び実施例3に記載の、カテコール共添加剤を用いることで合成された未処理のナノワイヤーは、沈殿によって精製された。
銀の添加(銀塩も含む)が多かった(>0.6g w/w)ため、銀ナノ構造の収量は高く、ナノワイヤー間の静電吸着が増大したため、すぐに沈殿が生じた。
ナノ粒子と短いナノワイヤー(<3μm)を含む上清は除去された。
【0090】
精製されたナノワイヤーの長さと直径は、本明細書にその全体が参照として組み込まれている、米国公開出願第2011/0174190号明細書に開示されている方法と装置を用いて測定された。本明細書におけるナノワイヤーのサイズ測定において、アスペクト比が3より小さいナノ構造は、実質上カウントから除外した。実施例2では、ナノ構造のおおよそ25%(精製後)が、アスペクト比が3未満であった。実施例3では、ナノ構造のおおよそ28%(精製後)が、アスペクト比が3未満であった。
表2は、実施例
2及び実施例
3におけるワイヤーの長さの分布を、
5μmのデータ区間で示したものである。
長さの分布
【表2】
表3はナノワイヤーの長さ分布の統計値を示している。
長さの統計
【表3】
【0091】
図9Aと
図9Bは、実施例2及び実施例3の精製したナノワイヤーの長さの分布のヒストグラムである。
表4は、実施例2及び実施例3のナノワイヤーの直径の分布を、
5nmのデータ区間で示したものである。
直径の分布
【表4】
表5は、直径の統計値を示している。
直径の統計値
【表5】
【0092】
図10A及び
図10Bは、実施例2及び実施例3の精製したナノワイヤー直径分布のヒストグラムである。図に示されたように、直径が25nm未満の細いナノワイヤーの頻度は少なくとも80%であった。
【0093】
[実施例10]沈殿の精製及び溶媒による洗浄
実施例2及び実施例3により調製された粗組成物は複数段階の洗浄工程を経て精製された。この工程は、酢酸エチルを用いて粗組成物を洗浄し、ナノワイヤーを沈殿させ、上清を廃棄し、そして沈殿物をプロピレングリコールと水の中で再懸濁させることを含む。
最終的な精製したナノワイヤー溶液中で、ナノ粒子に対するナノワイヤーの割合を非常に高くするために、洗浄、沈殿、そして沈殿物を再懸濁させる工程を、上清が、ナノ粒子が最大限取り除かれたことを示す透明になるまで繰り返す。
【0094】
この複数段階の洗浄工程は、粗組成物中のナノワイヤーに対する明るい物体(bright object)の割合が非常に高い(例えば、>20wt%)場合、細いナノワイヤーから明るい物体の除去に非常に効果的である。さらに、この工程は、精製中に直径と長さの分布を維持する。典型的な精製収率は、50〜60%の間である。
図11A及び
図11Bに示すように、精製されたワイヤーは、長さと細い直径を維持している。短く細いワイヤーのいくつかが失われていることを示唆する、1nm以下(〜1nm)のわずかな直径のシフトが存在している。
【0095】
[実施例11]沈殿による精製
完全な洗浄前後のナノワイヤーで導電膜は作成された。そのSEM像は、
図12A及び
図12Bに示されている。これらの膜はどちらも同様のシート抵抗を有しており、120 Ω/□と115Ω/□である。
図12Bに示された膜は、酢酸エチルで洗浄され、水とプロピレングリコールに再懸濁されたナノワイヤーによって製造された膜である。沈殿の色が、濁りのある茶色から銅に似た色に変わるまで、洗浄と再懸濁のサイクルは7〜8回繰り返された。沈殿の色の変化は、大半の明るい物体が失われ、洗浄工程の完了を示している。
図12Aは、4〜5回洗浄され、色が変化する前のナノワイヤーによって製造された膜を示している。図に示すように、明るい物体の存在がまだ残っていることが明白である。
【0096】
本明細書に示すように、従来の沈殿方法は、平均直径がおおよそ23nm未満で、溶液の銀の濃度がおおよそ0.65wt%未満であるナノワイヤーには、効果が少ない。しかしながら、実施例11に示すように、粗組成物における銀の含有量が低い(例えば<0.65wt%)としても、酢酸エチルを加えることで溶液からナノワイヤーを沈殿し、最初の精製とすることができる。そして、PG溶液と水の中で沈殿を再懸濁し、より高い銀の含有量(例えば>0.8wt%)とすることができる。この高濃度で、従来の沈殿方法は、ナノワイヤーの精製に用いることができ、精製収率は>50%となる。
【0097】
[実施例12]特有の分布を有するナノワイヤーの塗布液による導電膜の形成
実施例2及び実施例3から得たナノワイヤーは実施例10及び実施例11において説明された工程によって精製された。精製されたナノワイヤーは一連の塗布液に配合された。塗布液は、銀とバインダーの質量比が1:2である、重量で0.1〜0.2%の銀、及び250ppmの界面活性剤の添加によって、水の中で調製された。バインダーはHPMC(Methocel(登録商標)K100M)であり、界面活性剤はオクチルフェノールエトキシレート(TRITON(登録商標)X-100)であった。
透明導電膜は1000〜3000rpmで60秒スピンコートし、50℃で90秒乾燥させ、そして最終的に140℃で90秒焼成することによって作られた。
対照として、米国公開出願第2011/0174190号明細書に記載された方法によって作られたナノワイヤーを塗布液に配合させ、導電膜として同様の方法で塗布した。
膜のヘイズは、BYK Gardner Haze-Gard Plusによって測定され、シート抵抗はDelcom Instruments 717 Conductance Meterによって測定された。
図13は、先行技術文献の方法で合成されたナノワイヤーで調製された膜と、本願の方法で合成されたナノワイヤーで調製された膜の、ヘイズと抵抗との関係を示している。本願発明に基づく膜は、所定のシート抵抗において、ヘイズが約15〜20%向上していることを示す。
表6は、実施例2で合成されたナノワイヤーによって製造された膜の、回転スピード、透過率、ヘイズ、及び、シート抵抗を示す。
【表6】
表7は、実施例3で合成されたナノワイヤーによって製造された膜の回転スピード、透過率、ヘイズ、及びシート抵抗を示す。
【表7】
【0098】
ここに示すように、本明細書の開示に従って合成されたナノワイヤーを用いて作られた膜は、シート抵抗が35Ω/□未満または33Ω/□未満の場合のヘイズが1.27%未満であって、シート抵抗が366Ω/□未満の場合のヘイズが0.23%未満であって、そして、シート抵抗が752Ω/□未満または618Ω/□未満の場合のヘイズが0.2%未満である。
【0099】
これらの細い直径のため、本願明細書に記載のポリオール合成法で製造されたナノワイヤーは、拡散反射を向上させた導電膜を形成することができる。シート抵抗が65Ω/□以下(〜65Ω/□)における膜の拡散反射について、
図14にプロットした。本願明細書の開示に従ったナノワイヤーによって作られた膜は、先行技術文献の膜よりも低い拡散反射を示す。比較としてガラスの拡散反射が示されている。ヘイズと拡散反射のデータにより、本願明細書に記載のより細い著形とサイズの分布を有するナノワイヤーを用いることによる光学特性の向上が示された。
【0100】
上述のいくつかの実施形態の記載を組み合わせることにより、さらなる実施形態を供給することができる。本明細書で参照及び/または出願データシートに記載されている、すべての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許文献のすべては、その全体が本明細書に参考文献として組み込まれる。実施形態の態様は、種々の特許、出願、及びさらなる実施形態を供給する刊行物の概念を利用する必要があれば、修正することができる。
【0101】
実施形態に対するこれら及び他の変更は、上述の詳細な説明に照らし合わせて行うことができる。一般的には、次の特許請求の範囲において使用される用語は、明細書中に開示された特定の実施形態及び特許請求の範囲の請求項に開示されたものに限定して解釈されるべきではなく、すべての可能な実施形態も全面的に含め、特許請求の範囲が権利を有するのと同等に扱い解釈すべきである。従って、特許請求の範囲は本開示によって限定されるものではない。