(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記完全に水和した状態の前記装具材料が10年分の加速劣化(平衡塩溶液中で90℃、81日間)の後に30CCT以下の表面光散乱を有する、請求項1又は2に記載の眼科用装具材料。
前記1種以上の式(I)のアリールアクリルモノマーが、2−エチルフェノキシアクリレート;2−エチルフェノキシメタクリレート;フェニルアクリレート;フェニルメタクリレート;ベンジルアクリレート;ベンジルメタクリレート;2−フェニルエチルアクリレート;2−フェニルエチルメタクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;3−フェニルプロピルメタクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;4−フェニルブチルメタクリレート;4−メチルフェニルアクリレート;4−メチルフェニルメタクリレート;4−メチルベンジルアクリレート;4−メチルベンジルメタクリレート;2−2−メチルフェニルエチルアクリレート;2,2−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,3−メチルフェニルエチルアクリレート;2,3−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,4−メチルフェニルエチルアクリレート;2,4−メチルフェニルエチルメタクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレート;2−(フェニルチオ)エチルアクリレート;2−(フェニルチオ)エチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;2−ベンジルオ
キシエチルメタクリレート;3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルメタクリレート;又はこれらの組み合わせである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
前記1種以上のアリールアクリルモノマーが、2−フェニルエチルアクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;5−フェニルペンチルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;2−[2−ベンジルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;又はこれらの組み合わせである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の眼科用装具材料。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって普通に理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書で使用される用語及び実験室手順は、当該技術分野で周知であり、一般的に用いられている。これらの手順のためには、当該技術分野及び様々な一般的な文献で示されているものなどの従来の方法が使用されている。用語が単数形で示されている場合、本発明者らは用語の複数形も意図している。本明細書で使用される用語及び以下で述べる実験室手順は当該技術分野で周知のものであり、一般的に用いられている。
【0012】
本明細書で使用される「約」は、「約」として言及されている数が、その列挙されている数のプラス又はマイナス1〜10%の列挙されている数を含むことを意味する。
【0013】
「任意選択的な」又は「任意選択的には」は、引き続いて記載されている事象又は状況が生じても生じなくてもよく、またその記載に事象又は状況が生じる場合と生じない場合が含まれることを意味する。
【0014】
別途指示されていない限り、全ての成分量は%(w/w)基準(「重量%」)で示されている。
【0015】
用語「アルキル」は、直鎖又は分岐のアルカン化合物から1つの水素原子を取り除くことによって得られる一価のラジカルを指す。アルキル基(ラジカル)は、有機化合物中でもう1つの基と1つの結合を形成する。
【0016】
用語「アルキレン二価基」又は「アルキレンジラジカル」又は「アルキルジラジカル」は同じ意味で、アルキルから1つの水素原子を取り除くことによって得られる二価のラジカルを指す。アルケン二価基は、有機化合物中で他の基と2つの結合を形成する。
【0017】
用語「アルコキシ」又は「アルコキシル」は、直鎖又は分岐のアルキルアルコールのヒドロキシル基から水素原子を取り除くことによって得られる一価のラジカルを指す。アルコキシ基(ラジカル)は、有機化合物中でもう1つの基と1つの結合を形成する。
【0018】
本出願において、アルキルジラジカル又はアルキルラジカルに関しての用語「置換された」は、アルキルジラジカル又はアルキルラジカルの1つの水素原子を置換する、ヒドロキシ(−OH)、カルボキシ(−COOH)、−NH
2、スルフヒドリル(−SH)、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、C
1〜C
4アルキルチオ(アルキルスルフィド)、C
1〜C
4アクリルアミノ、C
1〜C
4アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
4アルキルアミノ、ハロゲン原子(Br又はCl)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を含む、アルキルジラジカル又はアルキルラジカルを意味する。
【0019】
概して本発明は、室温(約23℃〜約28℃)での乾燥状態では硬くてガラス状であるが、完全な水和状態では軟らかくて非常に変形しやすく、高い屈折率及びグリスニングに対する高い耐性を有し、経年劣化による表面光散乱が少ない、眼科用装具材料に関する。
【0020】
本発明の眼科用装具材料は、組成物A1、組成物A2、及び組成物A3からなる群から選択される重合性組成物の重合生成物であって、組成物A1は(a1)約18重量%〜約32重量%(好ましくは約20重量%〜約30重量%、より好ましくは約22.5重量%〜約27.5重量%)のN,N−ジメチルアクリルアミド、(b1)N−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシプロピルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される(好ましくはN−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される)少なくとも1種の疎水性アクリルアミド成分、(c1)約40重量%〜約76重量%(好ましくは約45重量%〜約74重量%、より好ましくは約50重量%〜約72重量%)の式(I)
【化1】
の前記1種以上のアリールアクリルモノマーを含み(式中、A
1はH又はCH
3(好ましくはH)であり;B
1は(CH
2)
m1又は[O(CH
2)
2]
Z1であってm1が2〜6でありz1が1〜10であり;Y
1は直接結合、O、S、又はNR’であってR’はH、CH
3、C
n’H
2n’+1であってn’=1〜10、iso−OC
3H
7、C
6H
5又はCH
2C
6H
5であり;W1はm1+w1≦8であることを条件として0〜6であり;D
1はH、Cl、Br、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、C
6H
5、又はCH
2C
6H
5である)、組成物A2は(a2)約15重量%〜約35重量%(好ましくは約20重量%〜約30重量%、より好ましくは約22.5重量%〜約27.5重量%)のN−メチルアクリルアミド、(b2)少なくとも1種の重合性架橋剤、(c2)約60重量%〜約80重量%の1種以上の上で定義した式(I)のアリールアクリルモノマーを含み、組成物A3は(a3)約10重量%〜約35重量%(好ましくは約15重量%〜約30重量%)のN,N−ジメチルアクリルアミドとN−ヒドロキシエチルアクリルアミドとの混合物、(b3)少なくとも1種の重合性架橋剤、(c3)約60重量%〜約80重量%の1種以上の上で定義した式(I)のアリールアクリルモノマーを含み、乾燥状態の眼科用装具材料は、23℃より高い(好ましくは25℃超、より好ましくは約28℃〜約40℃)ガラス転移温度を有し、完全に水和状態の眼科用装具材料は、589nmかつ室温(23±3℃)で測定される1.50超(好ましくは1.51、より好ましくは1.52)の屈折率、16℃〜45℃の温度で約5重量%〜11重量%(好ましくは約6重量%〜約10重量%、より好ましくは約7重量%〜約9重量%)の平衡含水率、グリスニング試験において観察面当たり明視野微小液胞なし及び約10個以下の微小液胞を有することによって特徴付けられる耐グリスニング性、約1.0MPa〜約45.0MPa(好ましくは約2.5MPa〜約40MPa、より好ましくは約5.0MPa〜約35.0MPa)のヤング率、5.0MPa未満(好ましくは約3.0MPa以下、より好ましくは1.5MPa以下)の100%割線係数を有する。好ましくは、これは90%より大きい破断伸び(好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%)の破断伸び、及び/又は、10年分の加速劣化(Alconからの平衡塩溶液、BSS中で90℃、81日間)の後の約30CCT以下の表面光散乱を有する。
【0021】
本発明によれば、本発明の装具材料は、乾燥状態で23℃より高い(好ましくは25℃超、より好ましくは約28℃〜約40℃)ガラス転移温度(Tg)を有するはずであるが、完全な水和状態では20℃未満(好ましくは15℃未満、より好ましくは10℃未満)のガラス転移温度を有する。
【0022】
IOLにおける使用のためには、本発明の完全に水和状態の装具材料は、これらから作られる装具が微小切開創用途のために柔軟で高度に変形できるように、好ましくは十分な強度、低い剛性、及び低い100%割線係数を示す。したがって、本発明の眼科用装具材料は、150%超(好ましくは少なくとも約180%、より好ましくは約200%〜約400%)の伸び(%破断歪み);約1.0MPa〜約45.0MPa(好ましくは約2.5MPa〜約40MPa、より好ましくは約5.0MPa〜約35.0MPa)のヤング率;及び5.0MPa未満、好ましくは約3.0MPa以下、より好ましくは1.5MPa以下)の100%割線係数を有するであろう。そのような特性を有するそのような材料から作られるレンズは、通常折り畳んだ際に、ひび、割れ、又は裂けを生じないであろう。ポリマー試料の伸びは、全長20mm、グリップ領域の長さ11mm、全幅2.49mm、狭隘部の幅0.833mm、フィレット半径8.83mm、及び厚さ0.9mmであるダンベル形状の引張試験片で決定される。試験は、50ニュートンのロードセルを有するInstron Material Tester(型番4442又は同等の物)を使用して、周囲条件(23±2℃、相対湿度50±5%)の試料に対して行われる。グリップの距離は11mmに設定され、クロスヘッド速度は50mm/分に設定され、試料は破断まで引っ張られる。伸び(歪み)は、元のグリップ距離に対する破断時の変位の割合として報告される。破断歪みは、元のグリップ距離に対する破断時の変位の割合として報告される。破断応力は、初期面積が一定のままであると仮定して、試料に対する最大荷重で、典型的には試料の破断時の荷重で計算される。ヤング率は、線形弾性領域における応力−歪み曲線の瞬時の傾きから計算される。50%割線係数は、0%の歪みと50%の歪みとの間の応力−歪み曲線上に引かれた直線の傾きとして計算される。100%割線係数は、0%の歪みと100%の歪みとの間の応力−歪み曲線上に引かれた直線の傾きとして計算される。試験される材料は本質的に軟らかいエラストマーであることから、これらをInstron機に取り付けるとこれらはねじれる傾向にある。材料試料のたるみを取るために、試料に予荷重がかけられる。これはたるみの低減に役立ち、またより一貫性のある測定値を与える。試料が望ましい値(典型的には0.03〜0.05N)まで予荷重がかけられた時点で歪みがゼロに設定され、試験が開始される。
【0023】
本発明の装具材料は、好ましくは16℃〜45℃の温度範囲にわたって約5重量%〜11重量%(好ましくは約6重量%〜約10重量%、より好ましくは約7重量%〜約9重量%)の平衡含水率を更に有する。装具材料は、45℃の水中で平衡化され、引き続いて周囲温度(約22℃)まで冷却された際に、顕微鏡検査で検出されるようなBF微小液胞を生成せず最大でも10個のDF微小液胞しか生じないような、耐グリスニング性を好ましくは有する。
【0024】
式(I)のアリールアクリルモノマーは、当該技術分野で公知の方法によって製造することができる。例えば、望ましいモノマーの共役アルコールを、反応容器中で、メチルアクリレート、テトラブチルチタネート(触媒)、及び4−ベンジロキシフェノールなどの重合阻害剤と結合させることができる。その後、容器を加熱して反応を促進し、反応を完結させるために反応副生成物を留去することができる。別の合成スキームには、アクリル酸を共役アルコールに添加してカルボジイミドで触媒させること、又は、塩化アクリル及びピリジン若しくはトリエチルアミンなどの塩基と共役アルコールとを混合することが含まれる。
【0025】
式(I)の好適なアリールアクリルモノマーとしては、これらに限定されるものではないが、2−エチルフェノキシアクリレート;2−エチルフェノキシメタクリレート;フェニルアクリレート;フェニルメタクリレート;ベンジルアクリレート;ベンジルメタクリレート;2−フェニルエチルアクリレート;2−フェニルエチルメタクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;3−フェニルプロピルメタクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;4−フェニルブチルメタクリレート;4−メチルフェニルアクリレート;4−メチルフェニルメタクリレート;4−メチルベンジルアクリレート;4−メチルベンジルメタクリレート;2−2−メチルフェニルエチルアクリレート;2,2−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,3−メチルフェニルエチルアクリレート;2,3−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,4−メチルフェニルエチルアクリレート;2,4−メチルフェニルエチルメタクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレート;2−(フェニルチオ)エチルアクリレート;2−(フェニルチオ)エチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルメタクリレート;3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルメタクリレート;又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
好ましい式(I)のアリールアクリルモノマーは、B
1が(CH
2)
m1であり、m1が2〜5であり、Y
1がなし又はOであり、W1が0又は1であり、D
1がHであるものである。最も好ましいのは2−フェニルエチルアクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;5−フェニルペンチルアクリレート;2−ベンゾイロキシエチルアクリレート;3−ベンゾイルオキシプロピルアクリレート;2−[2−(ベンゾイルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;及びこれらの対応するメタクリレートである。
【0027】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、N−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシプロピルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から(好ましくはN−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から)選択される1種以上の疎水性アクリルアミド成分を含有する。疎水性アクリルアミド成分は、平衡塩溶液中での10年分の加速劣化(90℃で81日間)後の表面光散乱を減少させるために添加することができると考えられている。
【0028】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、約5重量%〜約15重量%の2−ヒドロキシエチルメタクリレートも更に含有する。2−ヒドロキシエチルメタクリレートも、平衡塩溶液中での10年分の加速劣化(90℃で81日間)後の表面光散乱を減少させるために添加することができると考えられている。
【0029】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、ポリ(エチレングリコール)含有(PEG含有)重合性成分も更に含有する。PEG含有重合性成分も、本発明の完全に水和状態の材料を23℃から35℃まで加熱した際に生じる潜在的なヘイズの問題を低減するか解消するため、すなわち完全に水和状態の材料が23℃から35℃に加熱された際に実質的に透明のまま(すなわち、
【数2】
≦20%(T
23及びT
35はそれぞれ23℃及び35℃の材料の400nm〜700nmの間の平均透過率である)である)にするために添加することができると考えられている。
【0030】
本発明によれば、PEG含有重合性成分は、上述したような1つ若しくは2つの末端重合性基を有する直鎖のポリ(エチレングリコール)であってもよく、又は上述したような3つ以上の末端重合性基を有する分岐ポリ(エチレングリコール)であってもよい。そのようなPEG含有重合性成分は、1つ以上の末端官能基(例えばヒドロキシル、アミノ、又はカルボキシル基)を有する市販のポリエチレングリコールから当該技術分野で公知の方法に従って合成することができる。通常、1つ以上のヒドロキシル末端基を有するポリ(エチレングリコール)はテトラヒドロフラン中に溶解され、トリエチルアミン又はピリジンの存在下で塩化メタクロイル又は無水メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸誘導体で処理される。反応は、90%超のヒドロキシル基が対応するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに変換されるまで進行する。ポリマー溶液は濾過され、ポリマーはジエチルエーテル中への析出によって単離される。アミン及びカルボン酸が末端のポリエチレングリコールは、適切な(メタ)アクリル酸誘導体を使用して同様の方法で官能化される。
【0031】
好ましくは、本発明で使用されるPEG含有重合性成分は式(II)
【化2】
によって表される(式中、A
2はH又はCH
3であり;Q
2及びQ
2’は互いに独立に直接結合、O、NH、又はC(=O)NHCH
2CH
2Oであり;X
2及びX
2’は互いに独立に直接結合、O、NH、OC(=O)NH、又はNHC(=O)NH(好ましくは直接結合又はO)であり;R
2及びR
2’は互いに独立に直接結合、又は(CH
2)
p(好ましくは直接結合)であり;p=1〜3であり;G
2はH、C
1〜C
4アルキル、(CH
2)
m2NH
2、(CH
2)
m2CO
2H、又はR
2’−X
2’−Q
2’−C(=O)CA
2=CH
2(好ましくはC
1〜C
4アルキル又はR
2’−X
2’−Q
2’−C(=O)CA
2=CH
2)であり;m2=2〜6であり;G=H、C
1〜C
4アルキル、(CH
2)
m2NH
2、又は(CH
2)
m2CO
2Hの場合はn2=45〜225であり;それ以外はn2=51〜225である(好ましくはG
2=C
1〜C
4アルキルの場合はn2=45〜180であり、それ以外はn2=51〜225である))。
【0032】
式(II)のPEG含有重合性成分は、当該技術分野で公知の方法によって製造することができる。例えば、これらは上述の手順に従って、又は米国特許第8,449,610号明細書(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載の通りに合成することができる。
【0033】
本発明の装具材料中に含まれる式(II)のPEG含有重合性成分の総量は、装具材料の重合性成分の総量の約1重量%〜約5重量%(好ましくは約2重量%〜約5重量%、より好ましくは約2重量%〜約4重量%)であるが、そのような量は1種の式(II)のPEG含有重合性成分を含んでいてもよいし、式(II)のPEG含有重合性成分の組み合わせを含んでいてもよい。式(II)のPEG含有重合性成分は、2,000〜10,000ダルトン、好ましくは2,000〜8,000ダルトン、より好ましくは2,000〜6,000ダルトン、最も好ましくは2,500〜6,000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0034】
本発明の眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、好ましくは重合性架橋剤を更に含有する。架橋剤は、2つ以上の不飽和基を有する任意の末端エチレン性不飽和化合物であってもよい。好適な架橋剤としては、例えば:エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;エチレングリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート;1,3−プロパンジオールジアクリレート;2,3−プロパンジオールジアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート;1,4−ブタンジオールジアクリレート;N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド;N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド;N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド;N,N’−ジヒドロキシエチレンビスメタクリルアミド;N,N’−メチレンビスアクリルアミド;N,N’−メチレンビスメタクリルアミド;CH
2=C(CH
3)C(=O)O−(CH
2CH
2O)
p−C(=O)C(CH
3)=CH
2(p=1〜50);CH
2=CHC(=O)O−(CH
2CH
2O)
p−C(=O)CH=CH
2(p=1〜50);CH
2=C(CH
3)C(=O)O(CH
2)
tO−C(=O)C(CH
3)=CH
2(t=3〜20);及びCH
2=CHC(=O)O(CH
2)
tO−C(=O)CH=CH
2(t=3〜20)が挙げられる。好ましい架橋剤モノマーは、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、又はN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドである。
【0035】
通常、架橋剤成分の総量は約0.4重量%〜約2.5重量%、より好ましくは約0.8重量%〜約1.5重量%である。
【0036】
1種以上の式(I)のモノマー、1種以上の疎水性アクリルアミド成分、1種以上の式(II)のPEG含有重合性成分、及び1種以上の架橋剤に加えて、眼科用装具材料を製造するための重合性組成物は、重合性UV吸収材(又はUV吸収剤)、重合性着色染料、シロキサンモノマー、及びこれらの組み合わせなどの(ただしこれらに限定されない)、他の成分も含んでいてもよい。
【0037】
重合性紫外線(UV)吸収剤も本発明の材料中に含まれていてもよい。重合性UV吸収剤は、UV光(すなわち約380nmより短波長の光)を吸収し、任意選択的には高エネルギー紫色光(HVEL)(すなわち380nm〜440nmの波長を有する光)も吸収する任意の化合物であってもよいが、440nmより長波長の可視光をあまり吸収しない。UV吸収化合物はモノマー混合物の中に組み込まれ、モノマー混合物が重合する際にポリマーマトリックス中に取り込まれる。任意の適切な重合性UV吸収剤を本発明で使用することができる。本発明で使用される重合性UV吸収剤は、ベンゾフェノン部位又は好ましくはベンゾトリアゾール部位を含む。重合性ベンゾフェノン含有UV吸収剤は、米国特許第3,162,676号明細書及び米国特許第4,304,895号明細書(これらの全体は参照により本明細書に援用される)に記載の手順に従って合成することができ、あるいは販売業者から入手することができる。重合性ベンゾトリアゾール含有UV吸収剤は、米国特許第3,299,173号明細書、米国特許第4,612,358号明細書、米国特許第4,716,234号明細書、米国特許第4,528,311号明細書、米国特許第8,153,703号明細書、及び米国特許第8,232,326号明細書(これらの全体は参照により本明細書に援用される)に記載の手順に従って合成することができ、あるいは販売業者から入手することができる。
【0038】
好ましい重合性ベンゾフェノン含有UV吸収剤の例としては、これらに限定されないが、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシアルコキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシアルコキシベンゾフェノン、アリル−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−アクリロイルエトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン(UV2)、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン(UV7)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
好ましい重合性ベンゾトリアゾール含有UV吸収剤及びUV/HEVL吸収剤の例としては、これらに限定されないが、2−(2−ヒドロキシ−5−ビニルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルアミドメチル−5−tert オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピル−3’−t−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−1)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−メトキシ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−5)、3−(5−フルオロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリレート(WL−2)、3−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリレート(WL−3)、3−(5−クロロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリレート(WL−4)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−メチル−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−6)、2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−7)、4−アリル−2−(5−クロロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−6−メトキシフェノール(WL−8)、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−5’[3’’−(4’’−ビニルベンジルオキシ)プロポキシ]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、フェノール,2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−エテニル−(UVAM)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2−プロペン酸、2−メチル−,2−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]エチルエステル、Norbloc)、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−[3’−メタクリロイルオキシプロポキシ]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV13)、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(3’−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−5−トリフルオロメチル−2H−ベンゾトリアゾール(CF
3−UV13)、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール(UV6)、2−(3−アリル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV9)、2−(2−ヒドロキシ−3−メタリル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV12)、2−3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(3’’−ジメチルビニルシリルプロポキシ)−2’−ヒドロキシ−フェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール(UV15)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルプロピル−3’−tert−ブチル−フェニル)−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV16)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロイルプロピル−3’−tert−ブチル−フェニル)−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV16A)、2−メチルアクリル酸3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]−プロピルエステル(16−100,CAS#96478−15−8)、2−(3−(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−5−(5−メトキシ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)フェノキシ)エチルメタクリレート(16−102);フェノール,2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−メトキシ−4−(2−プロペン−1−イル)(CAS#1260141−20−5);2−[2−ヒドロキシ−5−[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]−3−tert−ブチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール;フェノール,2−(5−エテニル−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−,ホモポリマー(9CI)(CAS#83063−87−0)が挙げられる。
【0040】
より好ましくは、重合性UV吸収剤は2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(2−メチルアリル)フェノール(oMTP)、3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−メトキシ−2−ベンズ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)フェノキシ]プロピルメタクリレート(UV13)、及び2−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]エチルメタクリレート(Norbloc 7966)、又はこれらの組み合わせである。
【0041】
紫外線吸収材料に加えて、本発明のコポリマーから作られる眼科用装具は、米国特許第5,470,932号明細書及び米国特許第8,207,244号明細書に開示されている黄色染料などの着色染料も含んでいてもよい。
【0042】
本発明のコポリマーは、従来の重合方法によって合成される。たとえば、N,N−ジメチルアクリルアミドと、1種以上の式(I)及び式(III)のモノマーと、架橋剤との望ましい比率の混合物が、UV吸収剤、黄色染料、及び従来のフリーラジカル開始剤(例えば熱開始剤(又は光開始剤))などの任意の他の重合性成分と共に調製される。混合物はその後望ましい形状のモールドに入れることができ、重合は開始剤を活性化するために熱的に(すなわち加熱により)又は光化学的(すなわち化学線照射、例えばUV照射及び/又は可視光照射)に行われる。
【0043】
好適な熱開始剤の例としては、これらに限定されないが、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN);過酸化ベンゾイルなどの過酸化物;ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(Perkadox16)などのペルオキシカーボネート等が挙げられる。好ましい開始剤はAIBNである。
【0044】
重合が光化学的に行われる場合、モールドは重合を開始することが可能な波長の化学線照射に対して透明である必要がある。例えばベンゾフェノン型又はビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)光開始剤などの従来の光開始剤化合物も、重合を促進するために入れることができる。好適な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocur及びIrgacur型の光開始剤(好ましくはDarocur 1173(登録商標)、Darocur 2959(登録商標)、及びIrgacure 819(登録商標)、並びに約400〜約550nmの領域の光を含む光源を用いた照射でフリーラジカル重合を開始することができるゲルマニウム系NorrishタイプI光開始剤である。ベンゾイルホスフィン開始剤の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシド;及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。ゲルマニウム系NorrishタイプI光開始剤の例としては、米国特許第7,605,190号明細書(この全体は参照により本明細書に援用される)に記載のアシルゲルマニウム化合物である。
【0045】
選択した開始剤又は硬化方法に関わらず、欠陥がなく、粘着性が低く、重合時に材料が収縮するにつれてのモールド界面からの早期剥離が少ない、光学的に透明な材料を製造するために硬化方法を制御する必要がある。
【0046】
本発明の眼科用装具材料が硬化した後、材料の未反応成分をできるだけ多く取り除くために、これらは適切な溶媒中で抽出される。適切な溶媒の例としては、アセトン、メタノール、及びシクロヘキサンが挙げられる。抽出に好ましい溶媒はアセトンである。
【0047】
開示された眼科用装具材料で作られたIOLは、比較的小さな切開創を通り抜けることが可能な小さな断面積になるように巻くか折り曲げることができる、任意の設計のものであってもよい。例えば、IOLは、シングルピース又はマルチピース設計として公知のものであってもよい。典型的には、IOLは光学部と少なくとも1つの支持部とを含む。光学部はレンズとして機能する部分であり、支持部は光学部に取り付けられており光学部を眼の中の適切な場所で保持するアームのようなものである。光学部と支持部は同じ材料のものでも異なる材料のものであってもよい。マルチピースレンズは、光学部と支持部が別個に作られ、その後に支持部が光学部に取り付けられるためそのように呼ばれている。シングルピースレンズにおいては、光学部と支持部は一片の材料から形成される。その後、材料に応じて支持部が材料から切り出されるか旋盤加工されることでIOLが製造される。
【0048】
IOLに加え、本発明の眼科用装具材料は、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜内レンズ、角膜インレー又は角膜リング、及び緑内障フィルトレーションデバイスなどの他の装具における使用にも適している。
【0049】
これらの装具材料は、表面粘着性が低く屈折率が高い眼内レンズを形成するために使用することができる。これらの材料で作られるレンズは軟らかく、透明であり、比較的小さい切開創から眼の中に挿入することができ、挿入後に元の形状に回復することができる。
【0050】
具体的な用語、装具、及び方法を使用して本発明の様々な実施形態を述べてきたが、そのような記述は例示のみを目的としている。使用されている言葉は限定ではなく記述のための言葉である。以降の請求項に記述されている本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなしに当業者によって変更及び変形がなされ得ることを理解すべきである。また、様々な実施形態の態様は、以下に示すように、全体若しくは一部が入れ替えられてもよく、あるいは任意の方法で組み合わせることができ、及び/又は一緒に使用することができる。
【0051】
1.(1)乾燥状態で23℃超(好ましくは25℃超、より好ましくは約28℃〜約40℃)のガラス転移温度;(2)完全に水和状態で約20℃以下(好ましくは約18℃以下、より好ましくは約15℃以下)のガラス転移温度;(3)589nmかつ室温(23±3℃)で測定される1.50超(好ましくは1.51超、より好ましくは1.52超)の完全な水和状態での屈折率;(4)16℃〜45℃の温度で約5重量%〜11重量%(好ましくは約6重量%〜約10重量%、より好ましくは約7重量%〜約9重量%)の平衡含水率;(5)グリスニング試験において観察面当たり明視野微小液胞なし及び約10個以下の微小液胞によって特徴付けられる耐グリスニング性;(5)約1.0MPa〜約45.0MPa(好ましくは約2.5MPa〜約40MPa、より好ましくは約5.0MPa〜約35.0MPa)のヤング率;並びに(6)5.0MPa未満(好ましくは約3.0MPa以下、より好ましくは約1.5MPa以下)の100%割線係数;を有する高分子眼科用装具材料であって、
眼科用装具材料は組成物A1、組成物A2、及び組成物A3からなる群から選択される重合性組成物の重合生成物であって、
組成物A1は(a1)約18重量%〜約32重量%(好ましくは約20重量%〜約30重量%、より好ましくは約22.5重量%〜約27.5重量%)のN,N−ジメチルアクリルアミド、(b1)N−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシプロピルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される(好ましくはN−ブチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、及びN,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される)少なくとも1種の疎水性アクリルアミド成分、(c1)約40重量%〜約76重量%(好ましくは約45重量%〜約74重量%、より好ましくは約50重量%〜約72重量%)の式(I)
【化3】
の前記1種以上のアリールアクリルモノマーを含み(式中、A
1はH又はCH
3(好ましくはH)であり;B
1は(CH
2)
m1又は[O(CH
2)
2]
Z1であってm1が2〜6でありz1が1〜10であり;Y
1は直接結合、O、S、又はNR’であってR’はH、CH
3、C
n’H
2n’+1であってn’=1〜10、iso−OC
3H
7、C
6H
5又はCH
2C
6H
5であり;W1はm1+w1≦8であることを条件として0〜6であり;D
1はH、Cl、Br、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、C
6H
5、又はCH
2C
6H
5である)、
組成物A2は(a2)約15重量%〜約35重量%(好ましくは約20重量%〜約30重量%、より好ましくは約22.5重量%〜約27.5重量%)のN−メチルアクリルアミド、(b2)少なくとも1種の重合性架橋剤、(c2)約60重量%〜約80重量%の1種以上の上で定義した式(I)のアリールアクリルモノマーを含み、
組成物A3は(a3)約10重量%〜約35重量%(好ましくは約15重量%〜約30重量%)のN,N−ジメチルアクリルアミドとN−ヒドロキシエチルアクリルアミドとの混合物、(b3)少なくとも1種の重合性架橋剤、(c3)約60重量%〜約80重量%の1種以上の上で定義した式(I)のアリールアクリルモノマーを含む、高分子眼科用装具材料。
【0052】
2.乾燥状態の眼科用装具材料が25℃超、より好ましくは約28℃〜約40℃のガラス転移温度を有する、発明1に記載の眼科用装具材料。
【0053】
3.完全に水和した状態の乾燥状態の眼科用装具材料が約18℃以下、より好ましくは約15℃以下のガラス転移温度を有する、発明1又は2に記載の眼科用装具材料。
【0054】
4.完全に水和した状態の眼科用装具材料が589nmかつ室温(23±3℃)で測定された1.51超(より好ましくは1.52超)の屈折率を有する、発明1〜3のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0055】
5.完全に水和した状態の眼科用装具材料が16℃〜45℃の温度で約6重量%〜約10重量%(より好ましくは約7重量%〜約9重量%)の平衡含水率を有する、発明1〜4のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0056】
6.完全に水和した状態の眼科用装具材料が約2.5MPa〜約40MPa(より好ましくは約5.0MPa〜約35.0MPa)のヤング率を有する、発明1〜5のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0057】
7.完全に水和した状態の装具材料が約3.0MPa以下(より好ましくは約1.5MPa以下)の100%割線係数を有する、発明1〜6のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0058】
8.完全に水和した状態の装具材料が10年分の加速劣化(平衡塩溶液中で90℃、81日間)の後に約30CCT以下の表面光散乱を有する、発明1〜7のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0059】
9.完全に水和した状態の眼科用装具材料が、23℃から35℃まで加熱された際に実質的に透明のままである(すなわち、
【数3】
≦20%(T
23及びT
35はそれぞれ23℃及び35℃での材料の400nm〜700nmの間の平均透過率である)である)、発明1〜8のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0060】
10.完全に水和した状態の装具材料が90%超、好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%の破断伸びを有する、発明1〜9のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0061】
11.式(I)において、B
1が(CH
2)
m1であり、m1が2〜5であり、Y
1がなし又はOであり、W1が0又は1であり、D
1がHである、発明1〜10のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0062】
12.前記1種以上の式(I)のアリールアクリルモノマーが、2−エチルフェノキシアクリレート;2−エチルフェノキシメタクリレート;フェニルアクリレート;フェニルメタクリレート;ベンジルアクリレート;ベンジルメタクリレート;2−フェニルエチルアクリレート;2−フェニルエチルメタクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;3−フェニルプロピルメタクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;4−フェニルブチルメタクリレート;4−メチルフェニルアクリレート;4−メチルフェニルメタクリレート;4−メチルベンジルアクリレート;4−メチルベンジルメタクリレート;2−2−メチルフェニルエチルアクリレート;2,2−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,3−メチルフェニルエチルアクリレート;2,3−メチルフェニルエチルメタクリレート;2,4−メチルフェニルエチルアクリレート;2,4−メチルフェニルエチルメタクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレート;2−(フェニルチオ)エチルアクリレート;2−(フェニルチオ)エチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルメタクリレート;3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート;2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エチルメタクリレート;又はこれらの組み合わせである、発明1〜11のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0063】
13.前記1種以上の式(I)のアリールアクリルモノマーが、2−フェニルエチルアクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;5−フェニルペンチルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;3−ベンジルオキシプロピルアクリレート;又はこれらの組み合わせである、発明1〜12のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0064】
14.前記重合性組成物が組成物A1である、発明1〜13のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0065】
15.組成物A1が約18重量%〜約32重量%(好ましくは約20重量%〜約30重量%、より好ましくは約22.5重量%〜約27.5重量%)のN,N−ジメチルアクリルアミドを含む、発明14に記載の眼科用装具材料。
【0066】
16.組成物A1が約40重量%〜約76重量%(好ましくは約45重量%〜約74重量%、より好ましくは約50重量%〜約72重量%)の前記1種以上のアリールアクリルモノマーを含む、発明14又は15に記載の眼科用装具材料。
【0067】
17.重合性組成物が組成物A2である、発明1〜13のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0068】
18.組成物A2が約15重量%〜約35重量%(好ましくは約20重量%〜約30重量%、より好ましくは約22.5重量%〜約27.5重量%)のN−メチルアクリルアミドを含む、発明17に記載の眼科用装具材料。
【0069】
19.重合性組成物が組成物A3である、発明1〜13のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0070】
20.組成物A3が約10重量%〜約35重量%(好ましくは約15重量%〜約30重量%)のN,N−ジメチルアクリルアミドとN−ヒドロキシエチルアクリルアミドとの混合物を含む、発明19に記載の眼科用装具材料。
【0071】
21.重合性組成物が、
(i)約5重量%〜約15重量%のヒドロキシエチルメタクリレート;
(ii)約1重量%〜約5重量%の式(II)
【化4】
のポリ(エチレングリコール)含有重合性成分(式中、A
2はH又はCH
3であり;Q
2及びQ
2’は互いに独立に直接結合、O、NH、又はC(=O)NHCH
2CH
2Oであり;X
2及びX
2’は互いに独立に直接結合、O、NH、OC(=O)NH、又はNHC(=O)NH(好ましくは直接結合又はO)であり;R
2及びR
2’は互いに独立に直接結合、又は(CH
2)
p(好ましくは直接結合)であり;p=1〜3であり;G
2はH、C
1〜C
4アルキル、(CH
2)
m2NH
2、(CH
2)
m2CO
2H、又はR
2’−X
2’−Q
2’−C(=O)CA
2=CH
2(好ましくはC
1〜C
4アルキル又はR
2’−X
2’−Q
2’−C(=O)CA
2=CH
2)であり;m2=2〜6であり;G=H、C
1〜C
4アルキル、(CH
2)
m2NH
2、又は(CH
2)
m2CO
2Hの場合はn2=45〜225であり;それ以外はn2=51〜225である(好ましくはG
2=C
1〜C
4アルキルの場合はn2=45〜180であり、それ以外はn2=51〜225である));
(iii)エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、2,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、2,3−プロパンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレンビスメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、及びN,N’−メチレンビスメタクリルアミド、からなる群から選択される約0.4重量%〜約2.5重量重量%の重合性架橋剤;
(iv)重合性UV吸収剤;並びに
(v)これらの組み合わせ;
からなる群から選択される少なくとも1種の成分を更に含有する、発明1〜20のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0072】
22.重合性組成物が約2重量%〜約5重量%(より好ましくは約2重量%〜約4重量%)の式(II)のポリ(エチレングリコール)含有重合性成分を含有する、発明21に記載の眼科用装具材料。
【0073】
23.式(II)のPEG含有重合性成分が、2,000〜10,000ダルトン、好ましくは2,000〜8,000ダルトン、より好ましくは2,000〜6,000ダルトン、最も好ましくは2,500〜6,000ダルトンの数平均分子量を有する、発明21又は22に記載の眼科用装具材料。
【0074】
24.重合性組成物が、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される重合性架橋剤を含有する、発明1〜23のいずれか1つに記載の眼科用装具材料。
【0075】
25.発明1〜24のいずれか1つに記載の眼科用装具材料を含む眼内レンズ。
【0076】
上述の開示によって当業者は発明を実施できるようになるであろう。具体的な実施形態及びその利点をより理解できるようにするために、以降の非限定的な実施例を参照することが提案される。しかしながら、以降の実施例を本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0077】
実施例1
抽出物の測定
抽出物についての試験は、抽出(n=4)前後のスラブを秤量して乾燥させ、%抽出物を計算することによって行った。
【0078】
平衡含水率
%抽出物測定の後、同じ試料をガラスバイアルの中に入れ、平衡塩溶液(BSS,Alcon)中に浸し、少なくとも24時間45℃の水浴の中に入れた後、取り出して再秤量することで%平衡含水率(EWC)を決定した。いくつかの事例では、含水率はMV試験の前後の試料を秤量することで決定した。
【0079】
グリスニング試験
温度変化によって誘発される(ΔT誘発)微小液胞試験(グリスニング試験)のために、試料をガラスバイアルの中で平衡塩溶液(BSS,Alcon)中に浸し、少なくとも24時間45℃の水浴室温の中に入れた後、取り出して室温まで2時間冷却した。冷却後、明視野微小液胞(BF MV)及び暗視野微小液胞(DF MV)を決定するために設定された50〜100×の倍率のOlympus顕微鏡を使用して材料試料(スラブ又はレンズ)を調べた。
【0080】
ガラス転移温度
乾燥状態又は完全に水和状態の材料のガラス転移温度(Tg)は、10℃/分で示差走査熱量測定法によって測定し、熱流束曲線の転移の中点で決定した。
【0081】
屈折率(RI)
材料の屈折率は、589nm、35℃でBausch&Lomb屈折率計(Cat.#33.46.10)を使用して測定した。試験スラブ試料は脱イオン水又はBSSの中で最低でも24時間水和させ、拭き取って乾燥させ、その後試料台に乗せた。測定は台に乗せてから5分以内に行った。
【0082】
潜在的なヘイズ
潜在的なヘイズは、Schott KL 2500 LCD光源を使用して定性的に測定した。IOL又は長方形の試験スラブ(1×2×0.1cm)をBSS中で最低でも24時間水和させた。水和させた試料をその後35℃の水浴に浸し、潜在的なヘイズの存在を判定するために試料をx、y及びz方向に回転させながら最も高い強度で照射した。概して、35℃で5分以内に脱イオン水又はBSS中で材料が著しく濁り、且つ35Cの浴中で1時間より長く濁ったままである場合に、水和材料は許容できないレベルの潜在的なヘイズを有すると見なされる。ほとんどの場合においては、ヘイズは永久的なものではなく、35℃での分子の再配向によって材料は透明になる。許容できるレベルの潜在的なヘイズを有する材料は、通常約30分以内の35℃での加熱で透明になる。潜在的なヘイズを有さないと見なされる材料は、35℃の浴に入れられた場合にヘイズの増加を示さない。
【0083】
表面粘着性
粘着性試験は、金属−ポリマーの粘着性又は接着性を測定するための独自の治具を使用してInstron力学的試験機上で行った。治具には、ロードフレームの固定部に取り付けられた直径8mmのよく研磨されたステンレス鋼製の円形の固定ピンが含まれる。ロードフレームクロスヘッドの上部(可動部)は、中央に穴を有する円形の金属製プラットフォームにつながれている。可動クロスヘッドは上部の治具の中心にある穴を通り抜けて底部のピンが現れるまで下げられ、クロスヘッドの動きはピンが金属製プラットフォームのわずかに上に来た時に止められる。その後、ポリマー試料を突出ピンの上に置く。ポリマー試料から新鮮な直径10mmのディスクを打ち抜き、突出ピンの先端に配置する。300gの荷重を試料の上に載せ、均一な力でピンに対して試料を押し付ける。試料に荷重を載せて1分後、Instron力学試験機を分離速度5mm/分で開始する。データは試料がピンから引き剥がされるまで、5点/秒の割合で収集する。曲線(仕事エネルギー)下の最大の力及び面積を記録する。
【0084】
表面光散乱分析
Scheimpflug画像取得システムをIOLの一貫性のある表面光散乱(SLS)分析用に設定した。試験するIOLを保持し、室温で空気又は平衡塩溶液(BSS,Alcon Laboratories,Inc.)で満たすことができる、目的に合うように設計された黒眼模型を組み立てた。模型眼球とIOLの画像は、200Wのフラッシュ、10.00mmのスリット長、0.08mmのスリット幅、及び光線路から45°の固定カメラ角度位置、の設定を使用してEAS−1000前眼部解析装置(Nidek Co.Ltd.)を用いて取り込んだ。表面光散乱濃度測定は、0(最小強度)から255(最大強度)の範囲でコンピューター適合テープ(CCT)単位で測定した。SLS濃度測定値は、IOL光学部の中心に対して直交する線の軸に沿って、IOLの前眼部表面及び後眼部表面について測定した。ピーク散乱強度は、光学部ゾーンの中央3mm以内の3本の軸に沿った前眼部表面及び後眼部表面について測定することで1つのIOLにつき6回の測定を行い、これらをその後平均化した。表面光散乱は乾燥、湿潤(平衡塩溶液中で約2分間後)、及び水和(平衡塩溶液中で24時間後)状態のIOLで測定した。
【0085】
透明度
試料の透明度は、Dolan−Jenner Fiber−Liteファイバー光照明装置(190型)を使用して乾燥レンズ及び水和レンズについて定性的に評価した。相対的なヘイズを測定するために、試料をx、y、及びz方向に回転させながら水和レンズを光路に置いた。
【0086】
引張特性
得られた材料の引張特性を測定するために、試験する各材料のスラブ試料から小型のドッグボーンを8〜12個切り取り、微量遠心分離バイアルの中でBSSで水和させ、水浴中で18℃で平衡化した。温度制御式引張試験は、Instron5943材料試験機に取り付けたBioplus環境チャンバーを使用して行った。Bioplusチャンバーは、温度制御された水浴を循環させることによって18℃に制御した。小型のドッグボーンを試験する直前に18℃の水浴から取り出し、引張試験機のクロスヘッドに置いた。Biopulsチャンバーをクロスヘッドの上に上げ、試料をBiopulsチャンバーの中で2分間更に平衡化させた。小型のドッグボーンは50mm/分の速度で破断点まで引っ張り、引張特性を測定した。1つの材料処方につき8〜12回の試験の平均から、引張強度(極限引張応力)、破断伸び(最大歪み)、ヤング率及び割線係数の値を決定した。
【0087】
注入送達試験
それぞれ以下のとおりの配合である2つのIOLについて、Monarch−III Dカートリッジによる注入送達試験を行った。Monarch−III Dカートリッジを開け、Viscoatで満たした。1つの配合物由来の40DのSA60ATのIOL(40ジオプトリのモールドで成型したIOL)を、カートリッジ使用説明書に従ってカートリッジの中に装填した。カートリッジをMonarch−III Dハンドピースの中に入れ、プランジャーをねじ山の作動点まで前進させ、その後IOLがかみ合うまで更にゆっくり前進させた。IOLは、カートリッジ先端を通して水の皿まで前進させた。IOLを観察し、光学部が開く時間及び支持部が光学部から完全に離れるまでの時間を決定した。
【0088】
また、注入で生じるあらゆる損傷について、30×の倍率の顕微鏡で観察した。更に、カートリッジ先端を、先端頂部における圧迫痕又はあらゆる破損についても観察した。IOLの損傷又はカートリッジ先端の損傷が観察されなかった場合に、送達は合格とみなされた。IOL又は先端の損傷は送達試験の失敗を意味した。
【0089】
薬品
PEA=2−フェニルエチルアクリレート;
DEGMBA=ジエチレングリコールモノベンジルエーテルアクリレート;
nBAA=n−ブチルアクリルアミド;
BMAA=N−ブトキシメチルアクリルアミド;
DMAA=N,N−ジメチルアクリルアミド;
NMAA=N−メチルアクリルアミド;
HEAA=N−ヒドロキシエチルアクリルアミド;
HEMA=ヒドロキシエチルメタクリレート;
HEA=ヒドロキシエチルアクリレート;
HEAA=ヒドロキシエチルアクリルアミド;
AA=アクリルアミド;
EGDMA=エチレングリコールジメタクリレート;
BDDA=1,4−ブタンジオールジアクリレート;
HMBAA=N,N−ヘキサメチレンビスアクリルアミド;
WL−1=2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート;
oMTP=2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(2−メチルアリル)フェノール;
AL8739=N−[2−[4−ヒドロキシ−3−[2−(2−メチルフェニル)ジアゼニル]フェニル]エチル]メタクリルアミド;
AIBN=アゾ−ビス−(iso−ブチルニトリル);
tBPO=tert−ブチルペルオキシオクトエート;
Irgacure819=フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;
PEG=ポリエチレングリコール;
Luperox A98=過酸化ベンゾイル;
Perk=Perkadox16(ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート)
【0090】
実施例2
表1に示される組成を有する配合物をガラスバイアル中で調製し、全ての成分が完全に溶解するまでよく混合した。PEAに対するnBAAの比率は、配合物8A〜8Cについては約0.67で、配合物12A〜12C及び15A〜15Dについては約0.25に保たれる。
【0091】
【表1】
【0092】
その後、調製した配合物を、新しいバイアルの中へ0.2μmのシリンジフィルターを通してろ過し、窒素で脱気し、空気雰囲気で未処理ポリプロピルスラブモールド又はモールド(正味形状が21DのSN60WF及び40DのSA60ATのIOLレンズウエハー)に流し込み、熱的に硬化させた。配合物8A〜8Cについては、3つの硬化方式を使用した:(1)90℃で1時間、その後110℃で1時間;(2)70℃で15時間、その後100℃で1時間、最後に110℃で1時間;(3)70℃で3時間、その後90℃で1時間、最後に110℃で1時間。組成物12A〜12Cについては、硬化は、70℃で20時間、その後110℃で3時間行った。組成物15A〜15Dについては、硬化は、70℃で3時間、その後90℃で1時間、最後に110℃で1時間行った。
【0093】
熱的硬化の後、試料をモールドから取り出して、室温(21〜23℃)で通常は16〜20時間、最初にエタノールで(別の溶媒が記載されていない限り)抽出した。抽出後、試料を少なくとも6〜8時間ゆっくり空気乾燥させ、その後30インチHgの減圧度の60〜70℃の真空オーブン中で少なくとも16時間乾燥させた。
【0094】
抽出可能物%、EWC%、BFMV’s、DFMV’s、及び室温(RT)での水和RIを実施例1に記載の手順に従って決定した。結果は表2に報告されている。
【0095】
【表2】
【0096】
実施例3
表3に示される組成を有する配合物をガラスバイアル中で調製し、全ての成分が完全に溶解するまでよく混合した。
【0097】
【表3】
【0098】
その後、調製した配合物を、新しいバイアルの中へ0.2μmのシリンジフィルターを通してろ過し、窒素で脱気し、空気中で貯蔵された未処理ポリプロピレンスラブモールド又はモールド(正味形状が21DのSN60WF及び40DのSA60ATのIOLレンズウエハー)に空気雰囲気で流し込み、熱的に硬化させた(30〜70℃で15分、70℃で3時間、70〜90℃で10分、90℃で1時間、90〜110℃で10分、及び110℃で1時間)。
【0099】
熱的硬化の後、試料をモールドから取り出して、室温(21〜23℃)で通常は16〜20時間、最初にエタノールで(別の溶媒が記載されていない限り)抽出した。抽出後、試料を少なくとも6〜8時間ゆっくり空気乾燥させ、その後30インチHgの減圧度の60〜70℃の真空オーブン中で少なくとも16時間乾燥させた。
【0100】
抽出可能物%、EWC%、BFMV’s、DFMV’s、引張特性、ガラス転移温度、表面粘着性、表面光散乱を実施例1に記載の手順に従って決定した。注入送達試験は実施例1に記載の手順に従って行った。
【0101】
全ての得られた材料はガラス状であり、乾燥状態で室温で行った粘着性試験では1Nを大きく下回る値を示した。これは合格基準の30Nよりもはるかに低かった。88C及び88D由来の材料についてのガラス転移温度(Tg)は乾燥状態で28℃であり、水和状態で約4℃であることが分かった。
【0102】
各配合物から作製した40D SA60ATの正味形状のIOLの注入試験は、Monarch−III Dカートリッジによってうまく送達され、カートリッジ先端の圧迫痕は最小限であったか全く観察されなかった。そのため、これらの材料からなる40DのSA60ATのIOLの注入は2mmの切開創からの注入を近似しており、注入基準を満たした。
【0103】
1.4年分劣化させた時点での予備的な表面光散乱は、試料88Dに関し、前眼部表面で33CCT、後眼部で25CCTを示した。
【0104】
結果は表4に報告されている。
【0105】
【表4】
【0106】
引張特性は18℃の水和試料で決定した。これは、手術室温度を近似している。概して、引張強度、破断伸び、50%及び100%の割線係数は含水率が増えるほど低い値になる傾向にあるようであった。しかし、破断伸びは317〜387%の範囲と非常に高く、これは対照としてのAcrySof Natural(引張強度=8.99±1.08MPa;破断伸び=118±7%;ヤング率=150±48MPa;100%割線係数=7.16±0.27MPa)よりも200%超高い。実際、全ての値は、全ての上で得られた材料がAcrySof Naturalで見られたよりもはるかに軟らかく変形可能な材料であることを示している。
【0107】
実施例4
表5に示される組成を有する配合物をガラスバイアル中で調製し、全ての成分が完全に溶解するまでよく混合した。
【0108】
【表5】
【0109】
その後、調製した配合物を、新しいバイアルの中へ0.2μmのシリンジフィルターを通してろ過し、窒素で脱気し、空気中で貯蔵された未処理ポリプロピレンスラブモールド又はモールド(正味形状が21DのSN60WF及び40DのSA60ATのIOLレンズウエハー)に空気雰囲気で流し込み、熱的に硬化させた(30〜70℃で15分、70℃で3時間、70〜90℃で10分、90℃で1時間、90〜110℃で10分、及び110℃で1時間)。
【0110】
熱的硬化の後、試料をモールドから取り出して、室温(21〜23℃)で通常は16〜20時間、最初にエタノールで(別の溶媒が記載されていない限り)抽出した。抽出後、試料を少なくとも6〜8時間ゆっくり空気乾燥させ、その後30インチHgの減圧度の60〜70℃の真空オーブン中で少なくとも16時間乾燥させた。
【0111】
抽出可能物%、EWC%、BFMV’s、DFMV’s、引張特性、ガラス転移温度、表面粘着性、表面光散乱を実施例1に記載の手順に従って決定した。注入送達試験は実施例1に記載の手順に従って行った。
【0112】
全ての得られた材料はガラス状であり、乾燥状態で室温で行った粘着性試験では1Nを大きく下回る値を示し、これは合格基準の30Nよりもはるかに低い。結果は表6に報告されている。
【0113】
【表6】
【0114】
%抽出物は組成に関係した傾向を示さずに0.90%(92A)から2.37%(92D)まで様々であり、全て<3%であった。これは、通常望ましいとみなされる。92Bを無視すると、含水率は架橋剤が増加するとともに含水率が低下する緩やかな傾向を示す。
【0115】
微小液胞の性能は、全ての配合物(92A〜D)でBF又はDFのMV’sを全く示さず、全体的に良好であった。全ての配合物は室温での乾燥状態で濁りがなく透明であり、ガラス状であった。これは、表面粘着性が、モールドからの取り出し及び取り扱いに関する抗し難い問題ではないであろうということを示している。
【0116】
配合物92A〜Dは、23℃の水中で平衡化した後35℃の水浴中に浸漬した際に、全体的に少ししか又は全く潜在的なヘイズを示さなかった。
【0117】
示された注入性能は、この材料についての架橋剤量を更に漸増させると重要な傾向を示した。Monarch−III Dカートリッジによって注入すると、配合物92C、92D、及び92Eは全てカートリッジ先端に割れを生じさせた。92Aはカートリッジに圧迫痕を残さず、92Bは先端の破損なしでわずかな圧迫痕だけ残した。結果として、2%以上の量のBDDA架橋剤では注入性能は低下した。そのため、92A、92C、92D、又は92Eについては表面光散乱のデータは決定せず、92Bに対してのみ行った。配合物92B由来の水和した材料についての表面光散乱データは次の通りであった:0年劣化の時点で19±CCT;1年劣化の時点で36±28CCT;5年劣化の時点で37±23CCT;10年劣化の時点で60±55CCT。
【0118】
引張特性は全ての92配合物シリーズについて決定した。92Aは88Dの再現配合物であるため、92Aは若干割線係数(50%及び100%)及び引張強度(極限引張応力)が高いが、破断伸びが低い(299vs.317%)ようである。それでも、92シリーズの中での最も明白な傾向は架橋剤の濃度が増加するにつれて破断伸びの値が減少することであった。引張強度、ヤング率、及び50%割線係数についてはデータからは明確に定義される傾向は見出せなかった。100%割線係数については架橋剤濃度の増加と共に値が増加する穏やかな傾向が見られた。
【0119】
実施例5
表7に示される組成を有する配合物をガラスバイアル中で調製し、全ての成分が完全に溶解するまでよく混合した。配合物8−5B及び8−5Aはほぼ同一の組成であるが、配合物8−5Bを使用した1回目の試験では試験に適した良好な群の21及び40DのIOLが得られた一方で、配合物8−5Aを使用した1回目の試験ではスラブ及び数個のIOLしか得られなかった。そのためこれら両方の2つの配合物は混合される。
【0120】
【表7】
【0121】
その後、調製した配合物を、新しいバイアルの中へ0.2μmのシリンジフィルターを通してろ過し、窒素で脱気し、グローブボックス中で脱気したポリプロピレンスラブモールド又はIOLモールド(正味形状が21DのSN60WF及び40DのSA60ATのIOLレンズウエハー)に空気雰囲気で流し込んだ。硬化方式は次の通りである:配合物8−5A、8−5B、及び8−27は熱的に硬化し、グローブボックス中で流し込み、モールドを脱気した(30〜70℃で15分間、70℃で3時間、70〜90℃で10分間、90℃で1時間、90〜110℃で10分間、及び110℃で1時間)。配合物8−6A、8−8、8−9、及び8−21は、400〜440nmで約4mW/cm
2の出力のsuper actinic蛍光灯を使用して55℃で青色光で1時間硬化した。光硬化した試料は、一方から試料に入る照射で片側から硬化した。
【0122】
硬化後、試料をモールドから取り出して、室温(21〜23℃)で通常は16〜20時間、最初にエタノールで(別の溶媒が記載されていない限り)抽出した。抽出後、試料を少なくとも6〜8時間ゆっくり空気乾燥させ、その後30インチHgの減圧度の60〜70℃の真空オーブン中で少なくとも16時間乾燥させた。
【0123】
抽出可能物%、EWC%、BFMV’s、DFMV’s、引張特性、ガラス転移温度、表面粘着性、表面光散乱を実施例1に記載の手順に従って決定した。注入送達試験は実施例1に記載の手順に従って行った。結果は表8に報告されている。
【0124】
【表8】
【0125】
これらの材料は、アクリルアミド系IOL材料でこれまでに見られた良好な特性、すなわち、これらの高いTg(28℃)によって室温でガラス状になることによる低い表面粘着性;スラブについては1.4〜3.4%、IOLについては3.2〜4.1%の少ない抽出物;基準の<10を大幅に下回る、観察面当たりBF微小液胞なし及び3個以下のDF微小液胞;35℃で1.524〜1.526の高い水和RIを維持しながらの8.0〜8.4%のEWC;240〜304%の範囲の破断伸び及び0.83〜0.89MPa(1.0%のBDDAで)からの低い100%割線係数(高度に変形しやすい材料であることを示す)を有する、微小切開創に望ましい引張プロファイル;20分の滞留時間の成功を含むMonarch 111−Dカートリッジによる水和した40DのSA60AT IOL複製物の注入のためのラボ試験での合格した結果;及び<10N(全て)及び通常<6N(配合物8−5B(8−5A)、8−6A、8−8、及び8−9由来のIOL)の低い注入力測定の結果を示したDカートリッジによる送達試験、並びに注入による光学部又は支持部の損傷の低い発生率;を引き続き示した。
【0126】
Monarch−III Dカートリッジにより送達すると、配合物8−6A、8−8、8−9、及び8−21由来でプラズマ処理なしの40DのIOLの支持部は、配合物6A、8、9、及び21に関して観察されたのと同様にIOL光学部に貼り付きがちであり、剥がれるのに5分も要したことが観察された一方で、配合物8−5B(8−5A)由来のアルゴンプラズマ処理した40DのIOLの支持部はIOL光学部に貼り付かなかった。配合物8−9由来の40DのIOLに対してもアルゴンプラズマ処理を行った後には、6個のIOLのうちの1つのみが支持部が光学部に貼り付いたが、剥がれるのに1秒しかかからなかった。したがって、支持部の貼り付きの問題はIOLをアルゴンプラズマ処理によって処理することによって解決することができる。
【0127】
表9は、ゼロ時間から1〜10年分劣化させた試料についての表面光散乱(SLS)データを示している。
【0128】
【表9】
【0129】
実施例6
表10に示される組成を有する配合物をガラスバイアル中で調製し、全ての成分が完全に溶解するまでよく混合した。
【0130】
その後、調製した配合物を、新しいバイアルの中へ0.2μmのシリンジフィルターを通してろ過し、窒素で脱気し、グローブボックス中で脱気したポリプロピレンスラブモールド又はモールド(正味形状が21DのSN60WF及び40DのSA60ATのIOLレンズウエハー)に空気雰囲気で流し込んだ。硬化方式は次の通りである:配合物29B+以外の全ての配合物は、空気中、脱気したモールド中で55℃で1時間、青色光で硬化した。配合物29B+は、空気中、脱気したモールド中で55℃で1時間、青色光で最初に硬化した後に、100℃で2時間熱的にポストキュアした。
【0131】
【表10】
【0132】
硬化後、試料をモールドから取り出して、室温(21〜23℃)で通常は16〜20時間、最初にエタノールで(別の溶媒が記載されていない限り)抽出した。抽出後、試料を少なくとも6〜8時間ゆっくり空気乾燥させ、その後30インチHgの減圧度の60〜70℃の真空オーブン中で少なくとも16時間乾燥させた。
【0133】
抽出可能物%、EWC%、BFMV’s、DFMV’s、引張特性、ガラス転移温度、表面粘着性、表面光散乱を実施例1に記載の手順に従って決定した。注入送達試験は実施例1に記載の手順に従って行った。抽出可能物%、EWC%、抽出前の粘着性、及び透明性の結果は表10に報告されている。
【0134】
1年の劣化時点(29℃)での不十分なSS結果のためあるいは抽出から乾燥後の再水和での不十分な透明性のため(配合物29B+、29E、及び29F)、複数の配合物は早期に調査から脱落した。そのため、配合物29B及び29Dのみが調査に残った。しかし、29Bは0.9年及び10年の劣化の時点で高いSS値(>30CCT)を有していたが、29Dは全ての劣化時間の時点で一貫して基準限界の30CCT未満であった。そのため、29Dについて追加的なデータを集めたところ、7.4%の含水率、1.528の高いRI、BF微小液胞なし、及び観察領域当たり10個を大幅に下回るDF微小液胞(平均1.1個)を有することが分かった。それだけでなく、29D材料の40DのSA60ATのIOLは、20分の滞留時間でのD−カートリッジによる注入基準に合格した。29D組成物と、実施例5の配合物8−5B(8−5A)及び8−6Aのようなその前のいくつかのアクリルアミド材料との組成の違いは、BDDAをビスアクリルアミド架橋剤で置換したことのみであった。
【0135】
実施例7
表11及び12に記載されている各組成物99.7重量%を0.30重量%のIrgacure819と十分混合することによってガラスバイアル中で配合物を調製した。
【0136】
【表11】
【0137】
【表12】
【0138】
その後、調製した配合物を、新しいバイアルの中へ0.2μmのシリンジフィルターを通してろ過し、窒素で脱気し、グローブボックス中で脱気したポリプロピレンスラブモールド又はモールド(正味形状が21DのSN60WF及び40DのSA60ATのIOLレンズウエハー)に空気雰囲気で流し込んだ。配合物35A〜35C及び35E〜35Nは、前述したとおり、空気中、脱気したモールド中で55℃で1時間、青色光で硬化した。配合物35Dは注型しなかった。
【0139】
硬化後、試料をモールドから取り出して、室温(21〜23℃)で通常は16〜20時間、最初にエタノールで(別の溶媒が記載されていない限り)抽出した。抽出後、試料を少なくとも6〜8時間ゆっくり空気乾燥させ、その後30インチHgの減圧度の60〜70℃の真空オーブン中で少なくとも16時間乾燥させた。
【0140】
抽出可能物%、EWC%、BFMV’s、DFMV’s、引張特性、ガラス転移温度、表面粘着性、表面光散乱を実施例1に記載の手順に従って決定した。注入送達試験は実施例1に記載の手順に従って行った。抽出可能物%、EWC%、抽出前の粘着性、及び透明性の結果は表13〜15に報告されている。
【0141】
【表13】
【0142】
【表14】
【0143】
【表15】
【0144】
35シリーズの中で調製された13個の配合物のうち、6つのみが10年分の劣化の時点でのSS試験に合格した。35シリーズ中のSSに合格した1つの材料のみが15%のHEAAを有しており(35K)、他の5つの合格した材料はHEMAを含んでおり(358、35C、35H、351、及び35M)、35B(5%HEMA)以外のこれら全ては10〜15%のHEMAを有していた。6つの配合物は10年分の劣化後にSS試験に合格したものの(<30CCT)、1つの配合物(35B)は2年目及び5年目の時点で一貫性のないSSの結果(>30CCT)を有していた。
【0145】
全体として、これらの結果は、HEMAのような表面に分布する親水性メタクリレートを組み込む配合物の調整が、表面光散乱を改善する(35B、35C、35H、351、及び35M)ための最も信頼性のある方法であることを示している。しかし、架橋剤をより加水分解耐性のあるビスアクリルアミド架橋剤へと若干変更することによっても、実施例6でのSSの結果を改善することができる(29D)。そして最後に、脱気したモールドの中への不活性状態での注型の改良された方法(実施例5)は、10年分の劣化後に合格する基本配合物の1つ(8−27)を与えるのに十分であった一方で、類似の青色光で硬化した配合物(8−8、8−9、及び8−21)は全て10年分の劣化後に>30CCTのSS結果を有していた。
【0146】
実施例8
表16に示される組成を有する配合物をガラスバイアル中で調製し、全ての成分が完全に溶解するまでよく混合した。その後、調製した配合物を、新しいバイアルの中へ0.2μmのシリンジフィルターを通してろ過し、窒素で脱気し、ポリプロピレンスラブモールド又はモールド(正味形状が21DのSN60WF及び40DのSA60ATのIOLレンズウエハー)に空気雰囲気で流し込んだ。配合物を熱的に硬化させ、空気中で注型し、脱気されていないモールドから次の通りに表面酸素を取り除いた:30〜70℃で15分、70℃で3時間、70〜90℃で10分、90℃で1時間、90〜110℃で10分、及び110℃で1時間)。
【0147】
【表16】
【0148】
硬化後、試料をモールドから取り出して、室温(21〜23℃)で通常は16〜20時間、最初にエタノールで(別の溶媒が記載されていない限り)抽出した。抽出後、試料を少なくとも6〜8時間ゆっくり空気乾燥させ、その後30インチHgの減圧度の60〜70℃の真空オーブン中で少なくとも16時間乾燥させた。
【0149】
表面光散乱は実施例1に記載の手順に従って決定した。結果は表17に報告されている。
【0150】
【表17】
【0151】
高いアクリルアミドモノマー濃度を有するアクリル系材料は下限臨界溶液温度(LCST)限界を示す場合があり、これは室温からLCSTを超える高温までの加熱で水和材料中に連続的なヘイズと相分離を生じさせる。N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)のコポリマーはこの挙動に関して周知であり、これは、水素結合の喪失による結合水分子の開放、及びポリマーマトリックス中での疎水性会合によって特徴づけられる。この現象は相分離を生じ、これらの材料を濁らせて透明性を失わせる場合がある。上述したアクリルアミド系IOL材料の多くは同様の現象を示し、それにより水和したIOLを室温から35℃まで加熱すると断続的な形態でこの挙動が生じ、実施例1で記載した一定の時間「LSCT」又は潜在的なヘイズ転移温度を超えると濁って透明性が失われる。アクリルアミド系IOL材料におけるこの現象は一時的なものであり、35℃までの加熱の後、数分から24時間以上継続する。しかし、この一時的なヘイズは、注入の後の患者に加えて開発段階時にも、湿潤充填されたIOL材料についての深刻な問題になり得る。
【0152】
以下の実施例は室温から35℃までの加熱の際の水和したIOL中の断続的なヘイズ及び相分離を生じる潜在的なヘイズの限界の解消方法を示す。この問題の最も単純な解決手段は、配合物中のN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)含量を30%から25%以下に減らすことである(表18参照)。
【0153】
表18に示されている組成を有する配合物をガラスバイアル中で調製し、全ての成分が完全に溶解するまでよく混合した。その後、調製した配合物を、新しいバイアルの中へ0.2μmのシリンジフィルターを通してろ過し、窒素で脱気し、ポリプロピレンスラブモールド又はモールド(正味形状が21DのSN60WF及び40DのSA60ATのIOLレンズウエハー)に空気雰囲気で流し込んだ。配合物は55℃で1時間、青色光で硬化した。
【0154】
【表18】
【0155】
実施例10
この実施例は、PEG系親水化剤が、潜在的なヘイズの限界による転移時に材料中でより連続的に水を分布させるために使用でき、それによって水和したレンズ配合物を室温から35℃までの加熱工程の間ずっと透明なままにできることを示している。潜在的なヘイズ現象を解消する目的のために好ましいPEG系モノマーは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートのアルキルアクリレート官能化ポリマーであるポリPEGであった。これは3重量%の濃度で使用した場合に潜在的なヘイズ転移の間ずっとIOLを透明なままにすることが可能である。
【0156】
配合:74.2重量%のPEA;20重量%のDMAA;3.0重量%のポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート;0.5重量%のBDDA;0.5重量%のHMBAA;1.8重量%のoMTP;0.04重量%のAL8739;及び0.2重量%のIrgacure819。
【0157】
配合物をガラスバイアル中で調製し、全ての成分が完全に溶解するまでよく混合した。その後、調製した配合物を、新しいバイアルの中へ0.2μmのシリンジフィルターを通してろ過し、窒素で脱気し、ポリプロピレンスラブモールド又はモールド(正味形状が21DのSN60WF及び40DのSA60ATのIOLレンズウエハー)に空気雰囲気で流し込んだ。配合物は55℃で1時間、青色光で硬化した。
【0158】
以下のことが明らかになった:
抽出前粘着性=43.8±4.2N
BF MV(スクリーン当たり)=0(オートクレーブ処理)
DF MV(スクリーン当たり)=100(オートクレーブ処理)
SLS(t=0、水和)=2.6±1.2CCT
SLS(t=1年、水和)=12.1±3.5CCT
SLS(t=5年、水和)=15.0±8.9CCT
SLS(t=10年、水和)=13.9±2.3CCT
シミュレーションした2.0mmでの送達、40D/Monarch−III D=合格(レンズ/カートリッジに損傷なし;良好に展開)
室温→35℃での潜在的なヘイズの存在=なし(合格)
【0159】
実施例11
これまでの実施例においては、乾燥状態での低い粘着性、水和状態での良好な折り畳み性、高い屈折率、微小液胞なし、良好な光学的透明性、及び模擬加速劣化後の低い表面光散乱、を有する材料を生成するための主要な親水性コモノマーとして、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)を使用した。この研究の拡張として、表19に示されているような方法でN−メチルアクリルアミド(NMAA)を配合した。対応する結果は表20に示されている。見込まれたように、平衡含水率(EWC)の値はNMAA添加量が多いほど増加した。また、NMAA配合物の含水率は、NMAAの追加的な水素結合供与能のため対応するDMAA配合物よりも高かった。対照的に、DMAAは、その窒素原子しか水素結合受容体として機能せずその結果少ししか水を取り込まないことから親水性度がより低い。表20に示されているように、最低でも20%のNMAAを含有する配合物は、良好な透明性を有し、微小液胞なしで、送達試験に関して許容可能な引張特性を有して得られた。全ての配合物は乾燥状態で低い粘着性を示した。
【0160】
【表19】
【0161】
【表20】
【0162】
実施例12
引き続いて、主要な親水性成分としてN−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を使用した。主要成分としての30%のHEAAと66.7%のPEAとから構成された配合物では、より高い密度のHEAAが底に沈降してモノマーの相分離が生じた。HEAAを20%に減らすと、2つのモノマーに同様の分離が生じた。15%のHEAAと80%のPEAとで構成される配合物はより良好なモノマー間の相溶性を示したが、硬化試験試料は十分に硬化しなかった。PEA中へのHEAAの溶解性を向上させるためにDMAAを添加することで配合物の相溶性がよくなり、相分離が妨げられた。代表的な例は表21に示されている。モノマー混合物の相分離は観察されず、得られた材料は、表22で示されている配合物Jを除いては硬化後及びΔT微小液胞試験後に透明であった。実施例Aで示されているように(表22)、15%のHEAAと15%のDMAAとを使用すると含水率が約9%の材料となる一方で、30%のDMAAを含有する配合物は約半分の含水率を有する。これは、増加する水素結合の結果としてHEAAがDMAAよりも多くの水を吸収できることを示している。
【0163】
【表21】
【0164】
【表22】
【0165】
実施例13
ポリアクリルアミドは165℃の既報告Tgを有しており、これはポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)(Tg=89℃)よりもかなり高い。そのため、アクリルアミド(AA)が粘着性を下げるためのターゲットとされた。DMAA、NMAA、及びHEAAと同様に、アクリルアミド(AA)及びPEAを含有する配合物を調製して、乾燥状態で十分粘着性が低く、AAによる水素結合の結果として水を吸収することにより水和状態で高度な軟らかさを持つ材料を得た。コモノマーとしての10〜20%のAAと75〜85%のPEAとから構成される最初の配合物は非相溶性であった。AAは、周囲温度でPEAなどの芳香族アクリル系モノマーに不溶性の結晶性の固体(融点=84.5℃)である。モノマー混合物を60〜80℃に加熱すると溶解性は向上したが、周囲温度に冷却するとAAはすぐに析出した。上記でHEAAについて観察されたように、DMAAは注型及び硬化工程の間均一な混合物のままにするのに役立つ相溶化剤として使用された。PEA及びAAを含有する配合物は表23に示されている通りに調製され、対応するデータは表24に示されている。配合物は透明であり、良好な光学的透明性を示したが、材料はより微小液胞が形成され易い傾向があり、DMAA、NMAA、及びHMAAを含有する対応する配合物と比較して全体的に硬かった。
【0166】
【表23】
【0167】
【表24】