(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
ゴルフクラブの主要な機能は、所望の距離および方向を引き出すために、可能な限り正確にボールを打撃することである。ティーショットに関しては、ドライバタイプのゴルフクラブを使用してボールを打撃することで、ゴルファは、ピンまでの残りの距離を効果的に最短にすることができる。熟練ゴルファが200ヤードをさらに超えてボールを飛ばすのは珍しいことではない。一部のプロゴルファは、300ヤードをさらに超えて飛ばすことができる。400ヤード以上離れたホールもあることを考えると、この飛距離でボールを飛ばすのは有利である。ただし、飛距離を最大限に伸ばすために、ゴルファは、100マイル/時をさらに超える速度でゴルフクラブ(例えば、ドライバ)をスイングしなければならないことがある。
【0004】
そのような速度では、ボールをインパクトした瞬間に、非常に大きな振動が誘発されて、ゴルフクラブヘッドの打撃面のインパクト部分から発してゴルフクラブ全体に広がる。不都合なことに、そのような大きさの振動は、挿入物(例えば、バッジ、プレート、メダル、飾り板など)とゴルフクラブとの間の接着剤を脆弱にする傾向があり、それにより、挿入物がゴルフクラブから分離する可能性が高まる。
【0005】
競争の非常に激しい市場では、容易に剥がれ落ちる外部視認性の挿入物を有するゴルフクラブをメーカが製造することで、メーカはその後の販売で損害を被る可能性があり、かつ/またはメーカの評判が落ち、それにより、そのメーカが製造した他の系列のゴルフクラブの販売に不利な影響を与え、通常では、メーカを望ましくない状況に置く。一方、挿入物を全部まとめて取りやめ、ブランド印にペンキ、エッチング、または他の形態を使用すると、ゴルフクラブの美的品質が低下して、潜在的な顧客が、挿入物を含む他の製品を好むようになる虞がある。例えば、挿入物の体裁をしているが、実際には挿入物の代わりの別の構成要素を有さないゴルフクラブヘッドを鋳造した場合、得られる細部のレベルが大きく低下し、それにより、製品の見た目が安っぽくなり、顧客にとって大して魅力的なものでなくなるという大きな欠点がある。さらに、そのような選択により、美的品質をさらに高めるフレームラインを含むこともできなくなる。さらに、ゴルフクラブに外部挿入物を組み込むことができることで、ゴルフクラブのデザイナーにとって、ゴルフクラブのデザインおよび美的印象をその競合品からさらに差別化する選択肢が増える。
【0006】
挿入物をゴルフクラブの表面の所定の位置に確実に保持するのに加えて、この問題に対する任意の提案解決策は、製造上の複雑さが増すのを最小限にすること、製造コストが上がるのを最小限にすること、クラブの性能を維持すること、クラブの美的品質を維持することなどの他の要素を考慮に入れるべきである。
【0007】
これを背景にして、多くの可能性のある解決策が研究された。例えば、接着品質を改善した接着テープが研究および試験された。しかし、接着特性を改善した接着テープを使用
した場合でさえ、それでもなお、挿入物は、ゴルフボールを100回程度打撃することで、ゴルフクラブヘッドから剥がれ落ちることがあった。特定の公知の接着剤は、耐久性を高めることが可能であるが、これらの接着剤のコストは法外に高い。
【0008】
膠を使用するなどの他の解決策も同様の理由から問題があった。ゴルフクラブを連続して使用することで、多くの場合、挿入物がゴルフクラブから剥がれ落ちることになる接着力の低下が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態によるゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図1B】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、
図1Aのソール部分を示している。
【
図1C】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、
図1Bのソール部分および挿入物の分解図を示している。
【
図2A】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による挿入物の表面板を示している。
【
図2B】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、
図2Aの挿入物の背面を示している。
【
図2C】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、
図2Aの挿入物の背面斜視図を示している。
【
図2D】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、
図2Cの挿入物の固定部材を示している。
【
図2E】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、
図2Dの固定部材の一方の突起を示している。
【
図3A】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、面心で切り取った、圧縮されていない状態にある挿入物の断面図を示している。
【
図3B】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、圧縮された状態にある、挿入作業時の
図3Aの挿入物の断面図を示している。
【
図3C】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、挿入作業完了後の
図3Aの挿入物の断面図を示している。
【
図4】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、接着剤層のない挿入物を示している。
【
図5】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、割れ目のない固定部材を有する挿入物を示している。
【
図6】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、複数の固定部材を含む挿入物を示している。
【
図7】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による湾曲した挿入物を示している。
【
図8】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、矢印形状の固定部材を有する挿入物を示している。
【
図9】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、割れ目のある矢印形状の固定部材を有する挿入物を示している。
【
図10】本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態による、丸みの付いたヘッドを有する固定部材を含む挿入物を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の様々な特徴の実施形態を使用する装置、システム、および/または方法が、図面
を参照して以下に説明される。図面および関連する説明は、特定の実施形態を例示するために提示され、本発明の範囲を限定するものではない。参照符号の付いた要素間の対応関係を示すために、図面全体にわたって参照符号が繰り返し使用される。
【0019】
通常、本明細書で説明される概念はゴルフクラブ(例えば、ドライバ、フェアウェイ、アイアン、ウェッジ、パターなど)に関するものである。しかし、これらの概念は、スポーツ産業の他の装置(例えば、ホッケースティック、ラクロススティック、テニスラケット、野球のバットなど)に適用することができる。明瞭かつ簡潔にするために、概念は、ドライバタイプのゴルフクラブに関連して下記に詳細に説明される。
【0020】
図1Aに示すように、ゴルフクラブヘッド100は通常、打撃面105、ホーゼル111、およびソール部分115を有する本体を含む。この特定の実施形態では、挿入物110は、トウ部分120の近くで、ヒール部分125から離れた、ソール部分115の外側面に配置されている。挿入物110は、奇抜なデザインとして示されている一方で、任意の形状とすることができるが、挿入物に回転防止機能を付与するために非幾何学的であるのが好ましい。さらに、挿入物110は、任意の所望の情報または印を表示することができる。例えば、挿入物110は、クラブのブランドに関連する表号、クラブの名前、および/またはクラブが最初に販売された年を表すことができる。
【0021】
図1Bは、挿入物110をどのように配置することができるかを示すソール部分115の図を示している。この場合に、陥凹部分130は、挿入物110を受け入れる大きさとされ、ソール部分115内に完全に画定されて示されている。陥凹部分130はまた、外側にテーパの付いた壁135を有することができる。外側にテーパの付いた壁135は、挿入物110の縁部が見えるようにし、それにより、ゴルフクラブヘッド100の美的印象を向上させる。さらに図示するように、挿入物110は、挿入物110のどの部分も陥凹部分130から外に延びないように、陥凹部分130の寸法内に完全に配置されている。ただし、所望であれば、挿入物110は、陥凹部分の内側でほぼ面一に着座することができる。
【0022】
この実施形態では、陥凹部分130および挿入物110はソール部分115にあるが、陥凹部分130および挿入物110は、ゴルフクラブヘッドの任意の位置(クラウン、側面部分など、クラウンは本発明の上部部分に対応)、さらには、ゴルフクラブのゴルフクラブヘッド以外の部分(例えば、シャフト)に配置できることに留意されたい。ただし、ゴルフボールを打撃したときにゴルフクラブに生じる振動は、ゴルフクラブヘッドで最も顕著になるので、挿入物110をシャフトよりもソール部分115に配置する方が、本明細書で説明する利点を最大限にするのに寄与することができる。
【0023】
一態様では、挿入物110および陥凹部分130は、回転を防止する形状部を含む。より詳細には、挿入物110および陥凹部分130は、挿入物110が陥凹部分130内に固定された場合に回転するのを阻止されるように(すなわち、それにより、挿入物を回転不能にするように)、互いに相補的な非円形形状とすることができる。より詳細には、壁135の外形部は挿入物110と係合し、したがって、挿入物110が、陥凹部分130内で回転するのを防止する。円形の壁が、相補的な円形挿入物が回転するのを防止する外形部を有さないのに対して、非円形の壁は、少なくとも、非円形の挿入物が回転するのを防止する部分を含むことができる。そのような形状は、運動競技用器材の分野では有益である。
【0024】
挿入物110の配置が、ゴルフクラブヘッド100のソール部分115上であることを考えると、スイング時に、挿入物110と地面との間の接触はよく見られることであり、したがって、挿入物110の回転防止は、挿入物110が所望の位置で適切に固定された
ままであるのを確実にする望ましい特徴である。
【0025】
図1Cは、挿入物110およびゴルフクラブヘッド100の分解図を示している。この図では、開孔140が示されている。開孔140は、ソール部分115の陥凹部分130内に完全に画定することができる。開孔140は、陥凹部分130の底面145に配置することができ、テーパ付きの壁135から隔てることができる。開孔140は、底面145からゴルフクラブヘッド100の内側に延びる。すなわち、開孔140は、ゴルフクラブヘッド100の壁のうちの陥凹部分130に対応する部分の厚さ全体を貫通している。開孔140は、底面145の任意の位置に配置することができるが、底面145の幾何学的中心の近くに配置するのが好ましい。代替案として、および/またはそれに加えて、開孔140の中心を通る垂直軸は、挿入物110の重心から2mm以内とすることができるが、挿入物110の重心と合致するのが好ましい。開孔140をこのように配置することで、挿入物110の耐久性(挿入後)が改善される。
【0026】
図2Aは、
図1Aの挿入物110の実施形態とすることができる挿入物200の前面側を示している。示すように、前面側は、表示表面板205を含む。表示表面板205は、挿入物200がゴルフクラブヘッド(例えば、ゴルフクラブヘッド100)に配置された場合に見ることができ、構造要素および美観形状部を含むことができる。表示表面板205は、様々な深さの要素を含むことができる。しかし、他の実施形態では、表示表面板は実質的に平坦とすることができる。表示表面板205は、プラスチック、ゴムなどのいくつかの材料の中で特に、アルミニウム、ニッケル、または他のタイプの軽金属から構築することができる。
【0027】
図2Bおよび
図2Cは、挿入物200の背面側を示している。挿入物200の背面側は、(大部分が接着剤層215によって隠されている)背面を囲むリム210を含むことができる。このように、リム210および背面は、接着剤層215を受け入れる浅い空洞を形成している。別の言い方をすれば、接着剤層215は、リム210の周縁境界内に実質的に収まる形状とされる。ただし、接着剤層215は、接着剤層215の一部がリム210の上側境界より上に延びるように、空洞の深さよりも若干厚くすることができる。相対的に厚い方の接着剤層の機能は、ゴルフクラブヘッドがゴルフボールを打撃したときに生ずる振動に応じて、リム210がゴルフクラブヘッドのソール部分に当たってがたつき音を出すことが決してないようにすることである。接着剤層215はまた、固定部材220が背面から突出するのを可能にする切り取り部240を含むことができる。固定部材220は、第1の突起225および第2の突起230を含むことができる。示すように、固定部材は、第1の突起225と第2の突起230との間に配置された割れ目235を有することができる。
【0028】
図2Dは、見やすくするために、固定部材220を単独で示している。
【0029】
固定部材220は、割れ目235(例えば、スリットまたは穴)によって分離された第1の突起225および第2の突起230を含み、割れ目235は、第1の突起225を第2の突起230から構造上切り離す。割れ目235は、挿入作業時に、第1の突起225および第2の突起230が互いに向かって曲がるのを可能にする。割れ目235には、内側面245、250が互いに対向するように、第1の突起225および第2の突起230の向きを合わせる効果がある。一方、第1の突起225および第2の突起230は構造的にほぼ同様である。したがって、
図2Eは、簡潔にするために、第1の突起225のみを示している。
図2Eに関連する第1の突起225についてのすべての説明は、第2の突起230に同様に適用可能である。
【0030】
図2Eに示すように、第1の突起225は、第1のヘッド部分255および第1のステ
ム部分260を含むことができる。第1のヘッド部分255は、第1の前端面265、第1の側壁275、および第1の係合面270を含むことができる。第1の前端面265は平坦であり、第1の係合面270に対して実質的に平行とすることができる。示すように、第1の前端面265は、第1の側壁275によって第1の係合面270から隔てられている。第1の係合面270は、第1の係合面270と第1のステム部分260とが互いに垂直になるように、第1のステム部分260の外側面とつながっている。すなわち、軸A1の近くで切り取った第1の突起225の任意の断面において、第1の係合面270と第1のステム部分260の外側面とは直角を形成し、それにより、下記にさらに詳細に説明するように、第2の突起230とともに、外れ防止特性をもたらす。中間軸である軸A1は、示すように、第1の中間点280および第2の中間点285を通る。第1の中間点280は、第1の前端面265と第1の内側面245との間の縁部に存在し、第2の中間点285は、第1の内側面245、第1のステム部分260、および挿入物の背面(
図2Eには示していない)の共通縁部に存在する。
【0031】
固定部材220は、実装される場合に、
図2B、
図2Cに示すように背面に組み込まれる。しかし、特定の実施形態では、代替案として、固定部材は表示表面板に組み込まれない(図示せず)。例えば、固定部材は、表示表面板に取り付けられた中間プレートに組み込むことができる。この構成は、固定部材の材料(例えば、プラスチック)が、表示表面板の材料(例えば、アルミニウム)と異なるのが望ましい状況において有益である。これらの場合に、中間プレートは、表示表面板の内側面と接着剤層との間に配置され、表示表面板と接着剤層とを結合する働きをする。中間プレートの厚さは、0.2mm〜1.2mmとすることができる。この場合に、中間プレートは、第1の側に平面を有することができ、第1の側の反対にある第2の側から突出する固定部材を有することができる。第1の側は、表示表面板の内側に取り付けることができ、したがって、接着剤層は、接着剤層の切り取り部により、固定部材が接着剤層を貫通して、挿入物の構築を完成するのが可能になるように第2の側に取り付けることができる。その結果、次いで、挿入物をゴルフクラブに配置することができる。
【0032】
挿入物の特定の実施形態の基本構造について説明したが、以下は挿入物の機能性に目を向ける。
図3A〜3Cは、挿入物が、
図3Aの圧縮されていない状態(挿入前)から
図3Bの圧縮された状態(挿入中)になり、
図3Cの圧縮されていない状態(挿入プロセスの完了後)に戻る間に、どのようにしてトグル式に留めることができるかをまとめて示している。
【0033】
より詳細には、
図3Aは、挿入物が開孔345に挿入される前にどのようにして即座に位置合わせできるかを示している。
図3Aは、第1の突起および第2の突起の対応する中間軸(例えば、
図2Eに示す軸A1)を通る平面で切り取った、挿入前の状態の断面図である。示すように、挿入物300は、固定部材370を含むことができる。固定部材370は、第1の突起365および第2の突起366を含むことができる。各突起365、366は、それぞれのヘッド部分(例えば、ヘッド部分360)およびステム部分(例えば、ステム部分371)を有することができる。固定部材370は、ゴルフクラブ375の(例えば、ゴルフクラブのヘッド上、またはゴルフクラブの別の部分上の)陥凹部分380に形成された開孔345に挿入できるように構成されている。
【0034】
図3Bは、圧力301が挿入物300にかけられた場合の影響を示している。すなわち、挿入物300が開孔345に押し込まれる。ヘッド部分360の第1のヘッド部分320および第2のヘッド部分325が開孔345に移動すると、示すように、第1のヘッド部分320および第2のヘッド部分325のテーパの付いた壁がゴルフクラブヘッドの縁部と接触し、対応する半径方向の力303、304が突起365、366に作用するために、第1の突起365および第2の突起366が互いに向かって押されながら曲がる。第
1のヘッド部分320および第2のヘッド部分325のテーパの付いた壁は、挿入物300を開孔345に案内するように補助および機能する。割れ目340は、突起365、366が互いに向かって曲がるのを可能にする助けとなる。係合面349、350がゴルフクラブ375の内側面388を越えると、突起365、366は圧縮を解かれ、その圧縮されていない状態(非圧縮状態)に弾性で復帰して、
図3Cに示すように、挿入物300を所定の位置にロックする。
【0035】
図3Cに示すように、固定部材370を開孔345に挿入後、固定部材370は、開孔345を埋める所定の位置にはまり込む。すなわち、係合面349、350は、ゴルフクラブ375を完全なものにして、これと係合する。ロックされると、固定部材370は、挿入物300が、外れる、回転する、または再配置されるのを防止する。具体的には、固定部材370を開孔345から引き抜くことができないように、係合面349、350が内側面388を押す。1つまたは複数の実施形態では、係合面349、350は、ステム部分371、372から段部を形成する。段部は、ステム部分371、372から係合面349、350までの間の移行領域を形成すると考えることができる。
【0036】
接着剤層315は、挿入物300を所定の位置にロックされた状態に保つための第2の構造要素を形成して、挿入物300をゴルフクラブ375に結合する保持基材として機能する。
【0037】
接着剤層315は、挿入物300への付着を確実にするために、第1の面に接着材料を有することができる。さらに、接着剤層315は、陥凹部分380の底面385への付着を確実にするために、第2の面に接着材料(例えば、膠、両面テープなど)を有することができる。あるいは、接着剤層315は、結合性物質とすることができる。
【0038】
通常、挿入物300とゴルフクラブ375の陥凹部分380との間に接着剤層315を挟み込んで配置することで、陥凹部分380および挿入物300の両方と絶えず接触し続ける接着剤層315の能力がさらに高まる。言い換えると、接着剤層315自体が所定の位置にロックされた後、接着剤層315は、陥凹部分380および挿入物300の両方と絶えず接触したままであり、それにより、接着剤層315および挿入物300のそれぞれの面間、または接着剤層315および陥凹部分380の底面385のそれぞれの面間の接着が強化される。
【0039】
さらに、接着剤層315が存在することで、小さな付勢力が、接着剤層315および固定部材370の係合面349、350の両方が接触する壁の部分に圧力をかけ、単に、封止およびロック特性だけが改善される。
【0040】
1つまたは複数の実施形態では、接着剤層315は0.15mm以上の最小厚さを有することができる。例えば、接着剤層315の厚さは、0.2mm〜0.35mmとすることができる。接着剤層315は、独立気泡発泡体で構築することができ、挿入物300および陥凹部分380(例えば、陥凹部分380の底面385)の両方に付着するように、両面を接着剤でコーティングすることができる。ただし、他の材料および組成物を使用して、接着剤層315を構築することができる。挿入物300が外れるのを防止するのに加えて、接着剤層315は、挿入物300がゴルフクラブと接触して、望ましくない騒音を発生させるのを防止するために、十分な厚さであるように構成されている。ゴルフクラブの「響き」は多くのゴルファにとって重要な特性であるので、実際に、接着剤層315が吸音特性を有することを確実にすることが、ゴルフクラブ製造の分野において強く望まれている。望ましくない騒音が確実に存在しないようにするための十分な厚さが接着剤層315にない場合、ゴルフクラブをスイングする度に、挿入物300が、例えば、がたつき音を発生させることがある。
【0041】
さらに、接着剤層315は、挿入物300とゴルフクラブ375との間に挟み込まれるので、固定部材370を開孔345にこれ以上挿入できないのは明らかである。このように、挿入物300は所定の位置にロックされる。
【0042】
示すように、挿入物300の上面305は、陥凹部分380の上面390と同一平面上に配置されている。しかし、必要に応じて、挿入物300の上面305は、陥凹部分380の上面390の外に若干突出してよい。
【0043】
上記に説明した挿入物の機能を果たすために、挿入物300の様々な構造要素とゴルフクラブ375との間に特定の寸法関係が存在し得る。例えば、
図3Aに示すように、(割れ目340を横断して測定した)前端部分330、335における最大縁部間距離D1は、開孔345の直径D6以下であるように構成されている。これらの構成は、挿入物300が開孔345に押し込まれるのを可能にする。
【0044】
一方、係合面349、350における(割れ目340を横断して測定した)最大縁部間距離D2は、開孔345の直径D6よりも大きくすることができる。したがって、係合面349、350が開孔345を通り抜けると、係合面349、350は内側面388に重なって、ゴルフクラブ375の内側面388を押すことができ、それにより、挿入物300が開孔345から引き出されるのを防止する。このように、挿入物300は一方向性であり、挿入物300が開孔345に挿入されると、反対方向に移動することができない。
【0045】
より詳細には、上記に簡単に説明したように、係合面(例えば、349)とステム部分(例えば、371)の面との間に形成される角度は、前記外れ防止特性を付与し、さらに挿入物300を一方向性にするために直角(または、他の実施形態では鋭角)とすることができる。外れ防止特性を付与することに関しては、鈍角は好ましくない。
【0046】
(割れ目340を横断し、かつ割れ目軸341と合致する平面に対して実質的に垂直な任意の平面に沿って測定した)ステム部分371、372間の最大直径D3は、開孔345の直径D6以下である。一実施形態では、D3は、ステム部分371、372が開孔345内に隙間なく収まるようにD6に実質的に等しい。
【0047】
D5は、ステム部分371、372の1つのうちの、それぞれの係合面349または係合面350と接着剤層315の底面との間の部分の長さを表す。
【0048】
D7は、底面385と内側面388との間のゴルフクラブの壁の厚さを表す。開孔345は、壁の厚さ全体を貫通するので、D7は、開孔345の高さも表すことができる。ステム部分371、372のうちの、それぞれの係合面349または係合面350と接着剤層の底面との間の部分は、挿入作業が完了したときに開孔345内に存在するように構成されるので、D5はD7以上であり、一実施形態では、D5≧D7である。
【0049】
下記に示す表1は、2つの実施形態からのデータ、および上記のD1−D7に対応する値の範囲を含む。下記の数値は単なる例であり、本発明の範囲を限定すると解釈すべきでない。
【0051】
図3Cに示すように、挿入物300が正しく収まるのを確実にするために、
図3Aに関連して説明した様々な寸法間に別の関係が存在し得る。
【0052】
例えば、(D2−D3)/2は、各係合面の、ゴルフクラブ375の内側面388と接触する部分を表す。挿入物300が確実に所定の位置に保持されるようにするために、(D2−D3)/2の値は、最小値0.25mmを有することができる。しかし、(D2−D3)/2≧0.45mmが好ましい。他方で、挿入物300が確実に開孔345に挿入できるようにすることも考慮しなければならない。例えば、(割れ目340において、直径を表すD4が、前端部分で測定して実質的にゼロまで狭くなる、すなわち、突起が互いに向かって押される挿入作業時に、前端部分のそれぞれの縁部が互いに接触する場合である)最大曲げ点において、挿入物300が開孔345内に確実に収まるようにするために、最大距離D2は、開孔の寸法D6未満でなければならない。
【0053】
図4は、接着剤層を必要としない挿入物400の実施形態を示している。例えば、挿入物400の材料が非金属(例えば、ゴム、発泡体など)である場合、またはゴルフクラブヘッドの材料が非金属である場合、緩衝用の接着剤層は必要とされないことがある。しかし、それでもなお、挿入物400を所定の位置にさらに保持するために、膠または他の接着剤コーティング(図示せず)を利用することができる。
【0054】
図5は、割れ目のない固定部材570を有する挿入物500を示している。挿入物500を構築する材料は、ゴム、軟質プラスチックなどであり、材料自体は、固定部材が、固定部材570の最大直径よりも小さい開孔内に収まるのを可能にするある程度の圧縮性特性を有することができる。このように、挿入物500は、固定部材570に割れ目がなくてもゴルフクラブに固定することができる。
【0055】
図6は、複数の固定部材670、671を有する挿入物600を示している。一定の縮尺で示されていないが、挿入物600は、例えば、
図1A〜1Cの挿入物110の2倍の大きさとすることができる。挿入物600などのより大きい挿入物は、複数の固定部材を使用することで恩恵を受けることができる。各固定部材670、671は、
図2Cの固定部材220と同様に挙動することができる。
【0056】
図7は、固定部材770によって、湾曲したゴルフクラブ面710に対接して所定の位
置に固定される、湾曲した内側面705を含むことができる挿入物700を示している。当然のことながら、挿入物を所定の位置にロックするために、他の変則面もやはり(接着剤層のある、またはない)固定部材を使用することができる。
【0057】
固定部材のヘッド部分の形状に対するさらなる代替案があり得る。例えば、
図8は、挿入物800の一部として、矢印形状のヘッド870を示している。示すように、矢印形状のヘッド870は、割れ目を含むことができない。
図9は、矢印形状のヘッド970内に割れ目がある、変形版の挿入物900を示している。
【0058】
図10は、丸みの付いた先端を有する1対の突起1070を有する挿入物1000を示している。
【0059】
様々な構成要素が1つまたは複数の図に示されているが、当然のことながら、様々な構成要素の任意の組み合わせを様々な実施形態で利用することができる。構成要素の任意の組み合わせは本発明の範囲内である。
【0060】
別途指摘されない限り、量を表すすべての数値は、小さい製造公差を有すると考えるべきであり、それに応じて、本明細書および特許請求の範囲において、すべての場合に、「約」という用語を用いて修正されると解釈すべきである。したがって、そうでないと指摘されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に示された数値パラメータは、本発明が得ようとする所望の特性に応じて変わり得る近似値である。
【0061】
最低限でも、および請求項の範囲に対する均等論の適用を限定することを企図するものではなく、各数値パラメータは、少なくとも、示された有効桁数を考慮して、かつ通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の例で記した数値は、可能な限り正確に示されている。しかし、任意の数値は、本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差による特定の誤差を必ず含む。
【0062】
用語「1つの」、「前記」、および本発明を説明する中で(特に、添付の特許請求の範囲の中で)使用される同様の指示語は、別途本明細書で指摘されない限り、または文脈から明確に矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈すべきである。本明細書における値の範囲の記載は、単に、その範囲内に収まる各別の値を個別に示すことに対する略記法となることを意図されている。本明細書で別途指摘されない限り、各個別の値は、本明細書に個々に記載された場合と同様に本明細書に援用される。本明細書で説明したすべての方法は、別途本明細書で指摘されない限り、あるいは文脈から明確に矛盾しない限り、任意の適切な順番で実施することができる。本明細書で提示した任意のおよびすべての例、または例示的表現(例えば、「など」)の使用は、単に、本発明をよりいっそう明らかにすることを意図されており、別途請求項で主張される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる表現も、本発明の実施に不可欠な、請求項で主張されない任意の要素を示すと解釈すべきでない。
【0063】
本明細書で開示された本発明の代替の要素または実施形態の群化は、限定するものと解釈すべきでない。各群のメンバーを、個別に、または群の他のメンバーもしくは本明細書に見られる他の要素と任意に組合せて言及および主張することができる。利便性および/または特許性上の理由で、群の1つまたは複数のメンバーを、群に含めるか、または群から削除することができると考えられる。任意でそのように含める、または削除する場合、本明細書は修正された群を含み、したがって、添付の特許請求の範囲で使用される全てのマーカッシュ群の記述要件を満たすと見なされる。
【0064】
本発明を実施するための、本発明者に周知の最良の形態を含む本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されている。当然、これらの記載した実施形態の変形版が、前述の説明を読んだときに当業者に明らかになるであろう。本発明者は、当業者が、必要に応じて、このような変形版を使用すると予期し、本発明者は、本発明が、本明細書で具体的に説明した以外の別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法が許す限り、添付の特許請求の範囲に列挙した主題の全ての修正形態及び等価物を含む。さらに、別途本明細書で指摘されない限り、あるいは文脈から明確に矛盾しない限り、全ての可能な変形版における上記要素の任意の組合せは本発明に包含される。
【0065】
本明細書に開示した特定の実施形態は、「〜からなる」または/および「基本的に〜からなる」という表現を使用して、特許請求の範囲においてさらに限定することができる。出願時であっても、補正による付加時であっても、特許請求の範囲で使用する場合、移行用語(transition term)「〜からなる」は、特許請求の範囲で指定されない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。移行用語「基本的に〜からなる」は、請求項の範囲を、指定した材料またはステップ、および基本的かつ新規の特徴(1つまたは複数)に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップに限定する。そのように請求項で主張された本発明の実施形態は、本明細書において本質的にまたは明示的に記載され、実施可能とされる。
【0066】
最後に、当然のことながら、本明細書に開示した本発明の実施形態は、本発明の原理について例示したものである。使用できる他の修正形態は、本発明の範囲内である。このため、限定ではないが一例として、本発明の代替の構成を本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は、正確に示し、説明したものに限定されない。