(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371510
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】車載レーダの軸調整装置及び軸調整方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20180730BHJP
G01S 7/40 20060101ALI20180730BHJP
G01S 13/93 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
G01S7/03 240
G01S7/40 134
G01S13/93 220
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-204118(P2013-204118)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-68746(P2015-68746A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】河内 竜
(72)【発明者】
【氏名】辰本 恒一郎
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−058817(JP,A)
【文献】
特開2007−024525(JP,A)
【文献】
特開2000−292316(JP,A)
【文献】
特開2012−198138(JP,A)
【文献】
特表2003−500283(JP,A)
【文献】
特開2008−051771(JP,A)
【文献】
特開平11−316278(JP,A)
【文献】
特開2003−270327(JP,A)
【文献】
特開2006−184144(JP,A)
【文献】
米国特許第06809806(US,B1)
【文献】
特開2007−298409(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0186244(US,A1)
【文献】
米国特許第06418775(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 − G01S 1/82
G01S 3/80 − G01S 3/86
G01S 5/18 − G01S 7/64
G01S 13/00 − G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載レーダの軸調整を行う軸調整装置であって、
前記車載レーダのビーム軸の向きを可動させて変化させる可動部と、
前記可動部の動作を制御するための制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記車両における少なくとも車型の種別に基づいてオフセット値を導出し、
水平面に対する前記ビーム軸の角度が当該オフセット値に応じてオフセットするように、前記可動部を動作させ、
前記車両は、架装物が架装される商用車であり、
前記オフセット値は、前記車両の架装状態が空車時と定積時との間の状態のときに水平面に対する前記ビーム軸の角度が所定角度範囲に収まるように補正する角度値であり、
車型の種別として、単車系、トラクタ系及びバス系を含むこと、を特徴とする車載レーダの軸調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、
車型の種別を少なくともパラメータとして前記オフセット値を規定するマップを有し、
前記マップを用いて、外部入力又は予め記憶された前記車両の車両情報に基づき、前記車両における車型の種別に対応する前記オフセット値を導出すること、を特徴とする請求項1記載の車載レーダの軸調整装置。
【請求項3】
前記マップは、サスペンションの種別をさらにパラメータとして前記オフセット値を規定し、
前記制御部は、前記マップを用いて、外部入力又は予め記憶された前記車両情報に基づき、前記車両におけるサスペンションの種別に対応する前記オフセット値を導出すること、を特徴とする請求項2記載の車載レーダの軸調整装置。
【請求項4】
前記マップは、ホイールベースをさらにパラメータとして前記オフセット値を規定し、
前記制御部は、前記マップを用いて、外部入力又は予め記憶された前記車両情報に基づき、前記車両のホイールベースに対応する前記オフセット値を導出すること、を特徴とする請求項2又は3記載の車載レーダの軸調整装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両における車型の種別、サスペンションの種別、及びホイールベースに基づいて前記オフセット値を導出すること、を特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の車載レーダの軸調整装置。
【請求項6】
車両に搭載された車載レーダの軸調整を行う軸調整方法であって、
前記車載レーダのビーム軸がリフレクタの中心を向くように、前記ビーム軸の向きを可動させて変化させる可動部を動作させる第1工程と、
前記第1工程の後、前記車載レーダの前記ビーム軸の角度がオフセットするように、前記可動部を動作させる第2工程と、を含み、
前記第2工程では、
前記車両における少なくとも車型の種別に基づいてオフセット値を導出し、
水平面に対する前記ビーム軸の角度が当該オフセット値に応じてオフセットするように、前記可動部を動作させ、
前記車両は、架装物が架装される商用車であり、
前記オフセット値は、前記車両の架装状態が空車時と定積時との間の状態のときに水平面に対する前記ビーム軸の角度が所定角度範囲に収まるように補正する角度値であり、
車型の種別として、単車系、トラクタ系及びバス系を含むこと、を特徴とする車載レーダの軸調整方法。
【請求項7】
前記第2工程では、前記車両における車型の種別、サスペンションの種別、及びホイールベースに基づいて前記オフセット値を導出すること、を特徴とする請求項6記載の車載レーダの軸調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載レーダの軸調整装置及び軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、例えば車両前方の対象物を検出するものとして、ミリ波レーダ等の車載レーダが搭載される場合があり、このような車載レーダの軸調整装置として、例えば下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された軸調整装置は、車軸方向に可視レーザを照射する照射装置を備え、車載レーダのビーム軸(アンテナ軸)方向をレーザ照射方向又は車軸方向に平行となるような調整することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11―326495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、通常、上述した車載レーダの軸調整装置では、例えば工場の製造ラインにおいて、車両に架装物が存在しない状態でビーム軸の調整を行わなければならず、また、設備や調整時間の制約のために、一の狙い値(一基準)でビーム軸を調整せざるを得ない実情がある。よって、車両に架装物が架装された架装時には、調整時に対して車両姿勢が変化する場合があることから、ビーム軸の向きが変わってしまい、その結果、車載レーダが対象物を誤検出してしまう虞がある。そのため、架装後に再度ビーム軸の調整を行わなければならない場合がある。かかる虞は、例えば車両が商用車の場合、架装される架装物が多岐にわたること等から顕著となる。
【0005】
そこで、本発明は、架装物の架装時においても車載レーダの精度よい検出を実現できる車載レーダの軸調整装置及び軸調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る車載レーダの軸調整装置は、車両に搭載された車載レーダの軸調整を行う軸調整装置であって、車載レーダのビーム軸の向きを可動させて変化させる可動部と、可動部の動作を制御するための制御部と、を備え、制御部は、車両における少なくとも車型の種別に基づいてオフセット値を導出し、水平面に対するビーム軸の角度が当該オフセット値に応じてオフセットするように、可動部を動作させること、を特徴とする。
【0007】
この本発明に係る車載レーダの軸調整装置によれば、例えば次の理由から、架装物の架装時においても車載レーダの精度よい検出を実現することが可能となる。すなわち、架装時においては、車両が前傾又は後傾し、さらに、その程度が車型により異なる場合があることから、水平面に対するビーム軸の角度(水平線方向とビーム軸とのなす角:以下、「高低角」ともいう)が車型によって変化することが見出される。この点、本発明では、上述したように、少なくとも車型の種別に基づいて導出したオフセット値に応じて、ビーム軸の高低角をオフセットさせており、これにより、架装時に車型によって変化するビーム軸の高低角を考慮し、車型毎に最適なビーム軸の調整を実現することができるためである。
【0008】
また、制御部は、車型の種別を少なくともパラメータとしてオフセット値を規定するマップを有し、マップを用いて、外部入力又は予め記憶された車両の車両情報に基づき、車両における車型の種別に対応するオフセット値を導出することか好ましい。これにより、車型毎に最適なビーム軸の調整を実現できるという上記作用効果が、好適且つ具体的に発揮されることとなる。
【0009】
また、マップは、サスペンションの種別をさらにパラメータとしてオフセット値を規定し、制御部は、マップを用いて、外部入力又は予め記憶された車両情報に基づき、車両におけるサスペンションの種別に対応するオフセット値を導出することが好ましい。この場合、架装時にサスペンションの種別によって変化するビーム軸の高低角をも考慮でき、サスペンションの種別毎に最適なビーム軸の調整をも実現することが可能となる。
【0010】
また、マップは、ホイールベースをさらにパラメータとしてオフセット値を規定し、制御部は、マップを用いて、外部入力又は予め記憶された車両情報に基づき、車両のホイールベースに対応するオフセット値を導出することが好ましい。この場合、架装時にホイールベースによって変化するビーム軸の高低角をも考慮でき、ホイールベース毎に最適なビーム軸の調整をも実現することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る車載レーダの軸調整方法は、車両に搭載された車載レーダの軸調整を行う軸調整方法であって、車載レーダのビーム軸がリフレクタの中心を向くように、ビーム軸の向きを可動させて変化させる可動部を動作させる第1工程と、第1工程の後、車載レーダのビーム軸の角度がオフセットするように、可動部を動作させる第2工程と、を含み、第2工程では、車両における少なくとも車型の種別に基づいてオフセット値を導出し、水平面に対するビーム軸の角度が当該オフセット値に応じてオフセットするように、可動部を動作させること、を特徴とする。
【0012】
この車載レーダの軸調整方法においても、上記効果と同様な効果が奏される。すなわち、架装時に車型によって変化するビーム軸の高低角を考慮し、車型毎に最適なビーム軸の調整を実現し、その結果、架装物の架装時においても車載レーダの精度よい検出を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、架装物の架装時においても車載レーダの精度よい検出を実現できる車載レーダの軸調整装置及び軸調整方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る車載レーダの軸調整装置を示す概略ブロック図である。
【
図2】実施形態に係る車載レーダの軸調整装置において予め記憶されたマップの一例を説明する図である。
【
図3】実施形態に係る車載レーダの軸調整方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、実施形態に係る車載レーダの軸調整装置を示す概略ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車載レーダの軸調整装置1は、自車両(車両)Vに搭載されたミリ波レーダ10の軸調整を行うためのものである。適用される自車両Vとしては、特に限定されるものではないが、例えばバス及びトラック等の商用車が挙げられる。
【0017】
ミリ波レーダ10は、ミリ波を利用して自車両Vの周囲状況を探知可能なレーダ装置であり、例えば自車両Vの前面の車幅方向中央に取り付けられている。ここでのミリ波レーダ10は、ビーム状のミリ波(ミリ波帯の電磁波)を自車両Vから前方へ出射すると共に、当該前方の物体表面で反射された反射波を検知することにより、物体までの距離、物体の大きさ、及び物体の相対速度等の情報を取得する。
【0018】
例えば、ミリ波レーダ10は、衝突被害の軽減に寄与する衝突被害軽減ブレーキシステムを構成するものとして、自車両Vの前方の物体(障害物)を検出することができる。また例えば、ミリ波レーダ10は、自車両Vの車速を自動的にコントロールするクルーズシステムを構成するものとして、自車両Vに先行する他車両との車間距離や相対速度を検出することができる。
【0019】
このミリ波レーダ10は、アンテナ基板11、モータ12及びコントロール部13を備えている。アンテナ基板11は、ビーム軸Gを有する送受信アンテナであって、基板と一体に構成された基板一体型のものである。アンテナ基板11は、ビーム軸Gに沿ってミリ波を送信すると共に、その反射波を受信する。このアンテナ基板11は、当該ビーム軸Gの向きが可変できるようにして保持されている。
【0020】
モータ12は、アンテナ基板11を可動させてビーム軸Gの向きを変化させる可動部である。モータ12としては、例えばDCモータが用いられている。コントロール部13は、モータ12の駆動(動作)を制御するものである。このコントロール部13は、ミリ波の送受信結果に基づきモータ12を駆動させる制御(下記S5参照)と、後述のECU20からの指令に基づきモータ12を駆動させる制御(下記S8参照)と、を少なくとも実行する(詳しくは、後述)。
【0021】
また、本実施形態における車載レーダの軸調整装置1は、ECU(Electronic Control Unit)20を備えている。ECU20は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータにより構成されている。
【0022】
ECU20は、モータ12の動作を制御するための機能を有し、ミリ波レーダ10のコントロール部13にCAN(Controller Area Network)通信等を介して接続されている。また、ECU20は、自車両Vに関する情報である車両情報を、その受信部(不図示)によって外部のライン設備Lから有線又は無線で受信可能とされている。
【0023】
このECU20は、自車両Vにおける車型の種別、サスペンションの種別及びホイールベースに基づいて、オフセット値を導出する。具体的には、ECU20においては、車型の種別とサスペンションの種別とホイールベースとをパラメータにしてオフセット値を規定するマップが予め記憶されており、このマップを用いて、受信した車両情報に基づきオフセット値を導出する。そして、導出したオフセット値に応じてビーム軸Gの角度をオフセットさせるべく、当該オフセット値をコントロール部13に送信する。
【0024】
上記車型の種別としては、特に限定されるものではないが、単車系、トラクタ系(トレーラ系)及びバス系等を含んでいる。単車系は、ダンプ、カーゴ、タンクローリ及びミキサ等を含み、トラクタ系は、セミトラクタを含んでいる。さらにまた、自車両Vの車型の種別は、車輪軸に係る構成としては、前一軸、前二軸、後一軸、後二軸及び低床後二軸を含んでいる。
【0025】
上記サスペンションの種別としては、特に限定されるものではないが、リーフスプリングにより車台を支持するリーフサスペンション(以下、単に「リーフ」ともいう)、及び、圧縮空気の弾力性を利用して車台を支持するエアサスペンションを含んでいる。エアサスペンションの種別としては、リア(Rear)側のみがエアサスペンションであるリアエアサスペンション(以下、単に「Rrエア」ともいう)、及び、全てがエアサスペンションであるフルエアサスペンション(以下、単に「フルエア」ともいう)を含んでいる。
【0026】
図2は、ECUに予め記憶されたマップの一例を説明する図である。図中において、車型のA型〜H型は、その種別の名称の例を示し、ホイールベースのRange1〜Range4は、その番号が大きくなるに連れてホイールベースが長いことを意味している(つまり、Range1<Range2<Range3<Range4)。
【0027】
図2に示すように、マップMでは、まず車型の種別毎に区画され、その夫々でサスペンションの種別毎に区画され、さらにその夫々でホイールベースの距離(長さ範囲)で区画されて、オフセット値が割り当てられている。このマップMは、車型の種別、サスペンションの種別及びホイールベースについて、以下の関係を有している。
【0028】
すなわち、マップMは、車型の種別として、単車系及びトラクタ系を含んでおり、トラクタ系に対応するオフセット値が、単車系に対応するオフセット値よりも大きい関係を有している。また、マップMは、サスペンションの種別として、リーフサスペンション及びエアサスペンションを含んでおり、リーフサスペンションに対応するオフセット値が、エアサスペンションに対応するオフセット値よりも大きい関係を有している。また、マップMは、ホイールベースが長いほどオフセット値が小さい関係を有している。
【0029】
また、このオフセット値は、水平面に対するビーム軸Gの角度(以下、単に「高低角」ともいう)に関する値とされている。換言すると、オフセット値は、車幅方向に沿う軸回りの回転角度に相当する角度値とされている。ここでのオフセット値は、例えば、計算上、実測上又は経験上から求めることができる。一例として、オフセット値は、自車両Vの架装状態が空車時と定積時との間の状態のときに、ビーム軸Gの高低角が所定角度範囲に収まるように補正する角度値とされている。なお、所定角度範囲は、例えばビーム軸Gが上向き/下向きになり過ぎず、ミリ波レーダ10に誤検出が生じないとされる角度範囲である。
【0030】
次に、上述した車載レーダの軸調整装置1を用いて実施する軸調整方法について、
図3を参照しつつ説明する。なお、ここでは、工場の製造ラインにて架装前の状態のときに実施される例について説明する。
【0031】
図3は、実施形態における車載レーダの軸調整方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、まず、工場側治具であるライン設備LからECU20に自車両Vの車両情報が送信され、これにより、ECU20にて車両情報が取得される(S1)。車両情報には、自車両Vにおける車型の種別、サスペンションの種別及びホイールベースに関する情報が少なくとも含まれている。
【0032】
続いて、三角錐形状を有する反射物であるリフレクタが、ミリ波レーダ10の中心位置と対向するようにセットされる(S2)。そして、ライン設備LからECU20に、ミリ波レーダ10の軸調整を開始させる開始要求が送信され、ECU20からミリ波レーダ10のコントロール部13に、ビーム軸Gの調整を開始させる軸調整モード移行指令が送信される(S3,S4)。
【0033】
上記軸調整モード移行指令を受け、ミリ波レーダ10においては、ビーム軸Gがリフレクタ中心に向くように自動調整される(S5:第1工程)。具体的には、アンテナ基板11からミリ波がリフレクタに送信(照射)され、その反射波がアンテナ基板11で受信されると共に、これら送信及び受信に係る値が一基準(一位の値)の範囲内に収まるように、コントロール部13でモータ12が駆動されてアンテナ基板11が可動される。これにより、ビーム軸Gの向きがリフレクタ中心の向きへと自動的に調整される。
【0034】
続いて、ECU20により、予め記憶されたマップMを用いて、上記S1にて取得された車両情報からオフセット値が導出される(S6)。例えば、
図2の例では、車型がA型の場合、サスペンションがリーフのときには、オフセット値は−0.5となる一方、サスペンションがRrエアのときには、オフセット値は0.0となる。また例えば、車型がB型でサスペンションがリーフの場合、ホイールベースがRange1のときには、オフセット値は−0.4となる一方、ホイールベースがRange2のときには、オフセット値は−0.2となる。
【0035】
続いて、上記S6にて導出されたオフセット値が、ECU20からミリ波レーダ10のコントロール部13に送信される(S7)。そして、ミリ波レーダ10において、ビーム軸Gの向きがオフセット値に基づいてさらに自動調整される(S8:第2工程)。具体的には、ビーム軸Gの高低角がオフセット値分だけ角度オフセットするように、コントロール部13でモータ12が駆動されてアンテナ基板11が可動されることとなる。
【0036】
ところで、ミリ波レーダ10のビーム軸Gの高低角については、架装物の架装に起因して、車型、サスペンション及びホイールベースの少なくとも何れか如何で変化することが見出される。この点、本実施形態では、上述したように、マップMを用いて自車両Vにおける車型の種別に対応するオフセット値を導出し、このオフセット値分だけビーム軸Gの高低角をオフセットさせている。
【0037】
従って、本実施形態によれば、架装時(出荷時、空車時及び定積時)にて車型によって変化するビーム軸Gの高低角を考慮することができ、車型毎に最適なビーム軸Gの調整を実現することができる。よって、架装物の架装時においても(架装状態によらずに)ミリ波レーダ10の精度よい検出を実現することが可能となる。その結果、ミリ波レーダ10の不要作動を抑制することができ、例えば、道路の継ぎ目や道路標識等を障害物として誤検知することを抑制することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、上述したように、マップMがサスペンションの種別をさらにパラメータとしており、オフセット値は、自車両Vにおけるサスペンションの種別にも対応するものとして導出されている。これにより、架装時にてサスペンションの種別によって変化するビーム軸Gの高低角をも考慮することができ、サスペンションの種別毎に最適なビーム軸Gの調整を実現することも可能となる。
【0039】
加えて、本実施形態では、上述したように、マップMがホイールベースをさらにパラメータとしており、オフセット値は、自車両Vにおけるサスペンションの種別にも対応するものとして導出されている。これにより、架装時にてホイールベースによって変化するビーム軸Gの高低角をもさらに考慮でき、ホイールベース毎に最適なビーム軸の調整を実現することも可能となる。
【0040】
なお、上記のように、マップMにあっては、トラクタ系のオフセット値が単車系のオフセット値よりも大きい関係、リーフサスペンションのオフセット値がエアサスペンションのオフセット値よりも大きい関係、及び、ホイールベースが長いほどオフセット値が小さい関係を有している。これらは、架装によるピッチ方向の車両姿勢について、単車系がトラクタ系よりも安定すること、エアサスペンションがリーフサスペンションよりも安定すること、ホイールベースが長いほど安定すること、に夫々よるものである。
【0041】
ちなみに、ミリ波レーダ10におけるビーム軸Gの水平角(水平面内の角度)の調整は、例えば自車両Vの走行時に、物体に対して送受信されたミリ波の角度から演算によって自動調整することができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0043】
例えば、上記実施形態では、車載レーダとしてミリ波レーダ10を適用しているが、光式レーダ等を適用しても勿論よく、本発明では、電波、光又は超音波等を送受信するレーダ装置を車載レーダとして適用可能である。また、上記自車両Vとしては、限定されるものではなく、例えば大型車両や中型車両、普通乗用車、小型車両又は軽車両等であってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、車型の種別とサスペンションの種別とホイールベースとをパラメータとしたマップMを利用してオフセット値を導出しているが、これらの少なくとも何れをパラメータとしたマップを利用してオフセット値を導出してもよい。また、マップMを利用せずにオフセット値を導出してもよく、要は、車型の種別とサスペンションの種別とホイールベースとの少なくとも何れかに基づきオフセット値を導出すればよい。
【0045】
また、上記実施形態では、自車両Vの車両情報をライン設備Lから外部入力として取得したが、車両情報を自車両Vが予め有していてもよい。また、上記実施形態では、可動部としてモータ12を用いたが、ビーム軸Gの向きを可動できるものであれば他の手段を用いてもよい。なお、上記において、コントロール部13及びECU20が、モータ12の動作を制御するための制御部を構成する。
【符号の説明】
【0046】
1…車載レーダの軸調整装置、10…ミリ波レーダ(車載レーダ)、12…モータ(可動部)、13…コントロール部(制御部)、20…ECU(制御部)、G…ビーム軸、M…マップ、V…自車両(車両)。