特許第6371528号(P6371528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371528
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】液状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20180730BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20180730BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20180730BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20180730BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   A61K8/64
   A61K8/41
   A61Q5/12
   A61Q5/02
   A61Q5/06
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-8539(P2014-8539)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-137242(P2015-137242A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚人
(72)【発明者】
【氏名】堀井 嗣哲
(72)【発明者】
【氏名】西尾 彩
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−285401(JP,A)
【文献】 特開2010−155823(JP,A)
【文献】 特表2001−512495(JP,A)
【文献】 特開2005−187359(JP,A)
【文献】 特開2013−14557(JP,A)
【文献】 特開2010−132595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(Ia)〜(Ic)で表される構造及びこれらの構造の塩から選ばれた単位を有する側鎖基を一種又は二種以上備える変性ペプチド、並びに
長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及び/又はN−長鎖アルキルピリジニウム塩が配合され、
(前記長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及び前記N−長鎖アルキルピリジニウム塩の総配合量)/(前記変性ペプチドの配合量)で算出される比(II)/(I)が1.5以上、
pHが7.0未満である液状組成物。
−S−S−(CH−COOH (Ia)
(式(Ia)中、nは1又は2である。)
−S−S−CH(CH)−COOH (Ib)
−S−S−CH(COOH)−CH−COOH (Ic)
【請求項2】
粘度が200mPa・s未満である請求項1に記載の液状組成物。
【請求項3】
前記長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩として、下記式(IIa)で表されるトリメチルアンモニウム塩(IIa)が配合された請求項1又は2に記載の液状組成物。
【化1】

[上記式(IIa)において、Rは炭素数12以上22以下のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
【請求項4】
前記N−長鎖アルキルピリジニウム塩として、下記式(IIb)で表されるピリジニウム塩(IIb)が配合された請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状組成物。
【化2】


[上記式(IIb)において、Rは炭素数12以上22以下のアルキル基を表し、Yはハロゲン原子を表す。]
【請求項5】
前記pHが3.0以上6.5未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項6】
2価の低級アルコール又は3価の低級アルコールが配合された請求項1〜5のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項7】
毛髪に塗布して用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液状組成物を配合した毛髪用処理剤。
【請求項9】
下記式(Ia)〜(Ic)で表される構造及びこれらの構造の塩から選ばれた単位を有する側鎖基を一種又は二種以上備える変性ペプチド、並びに
長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及び/又はN−長鎖アルキルピリジニウム塩が配合され、
(前記長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及び前記N−長鎖アルキルピリジニウム塩の総配合量)/(前記変性ペプチドの配合量)で算出される比(II)/(I)が0.5以上であり、
pHが7.0未満の液状である、
シャンプー、リンス、コンディショナー、洗い流さないトリートメント、洗い流すトリートメント、整髪兼用トリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント又は整髪剤のいずれかとして用いられる毛髪用処理剤。
−S−S−(CH−COOH (Ia)
(式(Ia)中、nは1又は2である。)
−S−S−CH(CH)−COOH (Ib)
−S−S−CH(COOH)−CH−COOH (Ic)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の変性ペプチドが配合された液状組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質を加水分解して得られるペプチドは、毛髪の修復効果やコンディショニング効果を期待して、毛髪用途とされる組成物に配合される。また、そのようなペプチドの効果の向上や機能の付加を目指した研究開発が行われており、カチオン化、アシル化又はシリル化したペプチド誘導体が知られている。特許文献1、2には、毛髪用処理剤に配合されるペプチド誘導体として、チオグリコール酸塩、メルカプトプロピオン酸塩、チオ乳酸塩又はチオリンゴ酸塩を用いてカルボキシメチルジスルフィド基などをペプチドに導入した変性ペプチドが開示されている。この変性ペプチドの水への分散性は、導入基がカルボキシル基を有するので、その導入前よりも向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−132595号公報
【特許文献2】特開2012−224572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の変性ペプチドの分散性はpHが7.0以上の場合であり、pHを下げたときにはその分散性が低下することがあった。カチオン界面活性剤として知られているものを配合したときにも、変性ペプチドの分散性が低下することがあった。また、変性ペプチドを配合した組成物が液状であると、その分散性の低下が顕著となり易く、変性ペプチドの沈殿にまで至ることがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、pHが7.0未満であるときに、所定の変性ペプチドの分散性低下が抑えられた組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、所定の変性ペプチドを配合した液状組成物のpHが7.0未満であったとしても、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩又はN−長鎖アルキルピリジニウム塩を所定量配合すれば、上記変性ペプチドの分散性が高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る液状組成物は、下記式(Ia)〜(Ic)で表される構造及びこれらの構造の塩から選ばれた単位を有する側鎖基を一種又は二種以上備える変性ペプチド、及び、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩又はN−長鎖アルキルピリジニウム塩が配合され、(前記長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及び前記N−長鎖アルキルピリジニウム塩の配合量)/(前記変性ペプチドの配合量)で算出される比(II)/(I)が0.5以上、pHが7.0未満のものである。
−S−S−(CH−COOH (Ia)
(式(Ia)中、nは1又は2である。)
−S−S−CH(CH)−COOH (Ib)
−S−S−CH(COOH)−CH−COOH (Ic)
【0008】
本発明に係る液状組成物の粘度は、例えば200mPa・s未満である。
【0009】
本発明に係る液状組成物は、前記長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩として、下記式(IIa)で表されるトリメチルアンモニウム塩(IIa)が配合されたものが良い。
【化1】
[上記式(IIa)において、Rは炭素数12以上22以下のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
【0010】
本発明に係る液状組成物は、前記N−長鎖アルキルピリジニウム塩として、下記式(IIb)で表されるピリジニウム塩(IIb)が配合されたものが良い。
【化2】
[上記式(IIb)において、Rは炭素数12〜22のアルキル基を表し、Yはハロゲン原子を表す。]
【0011】
本発明に係る液状組成物のpHは、例えば3.0以上である。また、pHは、6.5未満としても良い。pHが6.5未満であったとしても、変性ペプチドの分散性の低下が抑えられる。
【0012】
本発明に係る液状組成物は、2価の低級アルコール又は3価の低級アルコールが配合されたものが良い。2価又は3価の低級アルコールが配合されることで、液状組成物を低温放置してから常温に復帰したときの変性ペプチドの析出が抑えられる。
【0013】
本発明に係る液状組成物を、毛髪に塗布して用いても良い。また、本発明に係る液状組成物を配合したものを、毛髪用処理剤としても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る液状組成物によれば、pHが7.0未満で長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩又はN−長鎖アルキルピリジニウム塩が配合されていても、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及びN−長鎖アルキルピリジニウム塩の配合量を所定量以上とするので、変性ペプチドの分散性低下が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】比較例1、実施例1a〜1dの液状組成物の撮影写真。
図2】比較例2、実施例2a〜2dの液状組成物の撮影写真。
図3】実施例3a〜3b、参考例1、実施例4a〜4b、参考例2の液状組成物の撮影写真。
図4】参考例3a〜3fの液状組成物の撮影写真。
図5】本発明における変性ペプチドの製造方法例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の液状組成物は、所定の変性ペプチド、及び、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩又はN−長鎖アルキルピリジニウム塩が水と配合され、pHが所定値の液状組成物である(水の配合量は、例えば90質量%以上)。また、毛髪用処理剤の原料として公知のものを任意原料として更に配合したものを、本実施形態の液状組成物としても良い。
【0017】
(変性ペプチド)
本実施形態の液状組成物には、所定の変性ペプチドが配合される。この所定の変性ペプチドは、2以上のアミノ酸のペプチド結合によって形成された主鎖と、この主鎖に結合する側鎖基を備える。
【0018】
変性ペプチドの上記主鎖は、特に限定されない。この主鎖の例としては、システインを構成アミノ酸の一種としているペプチドの主鎖と同じものが挙げられる。また、システインを構成アミノ酸の一種としているペプチドの例としては、ケラチン、カゼインが挙げられる。ケラチンは、天然物由来のペプチドの中でもシステイン比率が高いものとして知られており、当該変性ペプチドが効率よく得られる原料となる。かかる観点から、変性ペプチドの主鎖はケラチンの主鎖と同じものが好適である。
【0019】
所定の変性ペプチドは、下記式(Ia)〜(Ic)で表される構造及びこれらの構造の塩から選ばれた単位を有する側鎖基を一種又は二種以上備える。
−S−S−(CH−COOH (Ia)
(式(Ia)中、nは1又は2である。)
−S−S−CH(CH)−COOH (Ib)
−S−S−CH(COOH)−CH−COOH (Ic)
【0020】
上記(Ia)〜(Ic)で表される構造の塩は、カルボキシラートアニオンとカチオンとのイオン結合体である。そのカチオンとなる単位としては、例えば、NHなどのアンモニウム;Na、Kなどの金属原子;が挙げられる。
【0021】
上記変性ペプチドは、分子量が小さいほど本実施形態の組成物に分散し易く、同組成物のpHを低下させた際の分散性への影響が小さい。また、分子量が大きいほど、本実施形態の組成物のpHを低下させたときの分散性が低下する。この観点から、上記変性ペプチドの分子量は、70000以下が良く、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。同分子量の下限は、特に限定されないが、例えば10000である。ここで、変性ペプチドの分子量については、Sodium Dodecyl Sulfate−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE法)による変性ペプチドのバンドと分子量マーカーのバンドとの相対距離から算出した分子量を、変性ペプチドの分子量とみなして採用する。
【0022】
本実施形態に係る液状組成物における上記変性ペプチド配合量の下限は、特に限定されないが、例えば0.01質量%であり、必要に応じて0.1質量%とする。一方、変性ペプチド配合量の上限は、多量配合によるコスト上昇抑制と液状組成物の透明性向上の観点から、5質量%が良く、3質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、0.5質量%が更により好ましい。
【0023】
次に、変性ペプチドの製造方法例として、ケラチンを原料とした変性ペプチドの製造方法について説明する。当該変性ペプチドの製造方法は、図5に示すように、還元工程(STP1)、酸化剤混合工程(STP2)、固液分離工程(STP3)、及び回収工程L(STP4)を有する。図5に示す全工程を備える方法では、酸化剤混合工程(STP2)にて変性ペプチド(図5に示す液体部Lに溶解している変性ペプチド、及び固体部Sに含まれる変性ペプチド)が生成するので、固液分離工程(STP3)及び回収工程L(STP4)を設けなくても変性ペプチドが製造されることになる。
【0024】
ケラチン:
原料であるケラチンとしては、これを構成タンパク質として含む羊毛(メリノ種羊毛、リンカーン種羊毛等)、人毛、獣毛爪等が挙げられる。中でも、変性ペプチドを安価かつ安定的に入手するために、羊毛を原料とすることが好ましい。この羊毛等の原料については、殺菌、脱脂、洗浄、切断、粉砕及び乾燥を適宜に組み合わせて、予め処理するとよい。
【0025】
還元工程(STP1):
還元工程(STP1)は、還元剤とケラチンと水とを混合する工程である。かかる還元工程(STP1)において、ケラチンが有するジスルフィド基(−S−S−)をメルカプト基(−SH HS−)に還元する。
【0026】
還元工程(STP1)で用いる還元剤は、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸塩、チオ乳酸、チオ乳酸塩、チオリンゴ酸、及びチオリンゴ酸塩から選択される一種又は二種以上である。二種以上の還元剤を使用する場合の還元剤の組合せは、任意の組合せで良く、例えば、チオグリコール酸とチオグリコール酸塩一種との組合せ、チオグリコール酸塩二種の組合せ、メルカプトプロピオン酸とメルカプトプロピオン酸塩一種との組合せ、メルカプトプロピオン酸塩二種の組合せ、チオ乳酸とチオ乳酸塩一種との組合せ、チオ乳酸塩二種の組合せ、チオリンゴ酸とチオリンゴ酸塩一種との組合せ、チオリンゴ酸塩二種との組合せ、チオグリコール酸塩一種とメルカプトプロピオン酸塩一種の組合せ、チオグリコール酸塩一種とチオ乳酸塩一種の組合せ、チオグリコール酸塩一種とチオリンゴ酸塩一種の組合せ、メルカプトプロピオン酸塩一種とチオ乳酸塩一種の組合せ、メルカプトプロピオン酸塩一種とチオリンゴ酸塩一種の組合せ、チオ乳酸塩一種とチオリンゴ酸塩一種、チオグリコール酸塩一種とチオ乳酸塩一種とチオリンゴ酸塩一種の組合せが挙げられる。
【0027】
チオグリコール酸塩としては、例えば、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸カリウム、チオグリコール酸リチウム、チオグリコール酸アンモニウムが挙げられる。メルカプトプロピオン酸塩としては、例えば、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、メルカプトプロピオン酸リチウム、メルカプトプロピオン酸アンモニウムが挙げられる。チオ乳酸塩としては、例えば、チオ乳酸ナトリウム、チオ乳酸カリウム、チオ乳酸リチウム、チオ乳酸アンモニウムが挙げられる。チオリンゴ酸塩としては、例えば、チオリンゴ酸ナトリウム、チオリンゴ酸カリウム、チオリンゴ酸リチウム、チオリンゴ酸アンモニウムが挙げられる。
【0028】
上記所定の還元剤の使用量としては、羊毛等の原料1gを基準として、0.005モル以上0.02モル以下であると良い。また、被処理液(ケラチン又はケラチン由来である処理物を含み、各工程での反応系となる液。以下、同じ。)の容量を基準とした場合の還元剤の使用量は、0.1mol/L以上0.4mol/L以下であると良い。
【0029】
水の量は、特に限定されないが、例えば、羊毛等の原料1質量部に対して、20容量部以上200容量部以下であると良い。
【0030】
還元工程(STP1)においては、一種又は二種以上のアルカリ性化合物を被処理液に混合するとよい。アルカリ性化合物とは、水に添加することで、その水をアルカリ性にすることができる化合物である。このアルカリ性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0031】
上記アルカリ性化合物の混合量は、特に限定はされないが、還元工程(STP1)における被処理液のpHを下記範囲に調整する量である。還元工程(STP1)でのpHの下限としては、9が好ましく、10がより好ましい。一方、還元工程(STP1)でのpHの上限としては、13が好ましく、12がより好ましい。還元工程(STP1)でのpHを上記下限以上にすることで、ケラチンの還元を効率良く行うことができる。また、pHを上記上限以下にすることで、ケラチン主鎖の切断を抑制できる(ケラチン主鎖の切断を促進することを目的とする場合は、被処理液のpHが13を超えるように調整すればよい。)。
【0032】
還元工程(STP1)の温度条件は、特に限定されないが、35℃以上60℃以下が良く、40℃以上50℃以下が好ましい。温度条件が35℃未満であると、ジスルフィド基をメルカプト基に変換するための還元反応速度が低下し、ケラチンを十分に還元できないことがある。一方、60℃を超えると、ケラチン主鎖が切断されやすくなる。また、還元工程(STP1)の時間は、設定温度が低いほど長時間となり、設定温度が高いほど短時間となる。
【0033】
酸化剤混合工程(STP2):
酸化剤混合工程(STP2)は、還元工程(STP1)を経た処理物(ケラチン由来物)と酸化剤とを混合し、変性ペプチドを生成させる工程である。かかる酸化剤の混合は、処理物のメルカプト基を変性する酸化反応を促進するために行われる。通常、還元工程(STP1)を経た処理物を含む被処理液に、酸化剤を混合する。
【0034】
酸化剤としては、例えば、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化水素等が挙げられる。用いる酸化剤は、一種又は二種以上である。
【0035】
酸化剤の使用量は、特に限定されないが、羊毛等の原料1gを基準として、0.001モル以上0.02モル以下であると良く、酸化剤混合工程(STP2)の被処理液の容量を基準として、0.02mol/L以上1mol/L以下であると良い。
【0036】
酸化剤を被処理液に混合する際には、この酸化剤が被処理液中で局所的に高濃度化することを避けるため、1mol/L以上5mol/L以下程度の酸化剤溶液を例えば10分から6時間かけて連続的と断続的とを問わず徐々に混合するとよい。
【0037】
pH9以上の被処理液に混合する酸化剤量(A)を、pH7以上9未満の被処理液に混合する酸化剤量(B)より多くするのが好適である。これにより、変性ペプチド生成時間が短縮化する。上記酸化剤量(A)及び(B)の合計に対する酸化剤量(B)の割合は、20mol%以下が好ましく、10mol%以下がより好ましく、5mol%以下が更に好ましく、0mol%が特に好ましい。
【0038】
酸化剤混合工程(STP2)での被処理液のpHは、本工程の進行に応じて調整される。酸化剤の混合を開始する際のpHは、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、そのpHは、13以下が良く、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。pH9以上であれば、変性ペプチドの生成効率が良く、pH13以下であれば、ケラチン由来の処理物の主鎖の切断を抑制できる。酸化剤混合工程(STP2)終了時のpHは、特に限定されないが、7程度で良い。
【0039】
酸化剤混合工程(STP2)において、pH9以上の時間がpH7以上9未満の時間よりも長いことが好ましく、pH9以上12以下の時間がpH7以上9未満の時間より長いことがより好ましく、pH10以上11以下の時間がpH7以上9未満の時間より長いことがさらに好ましい。このような手順を採用した場合、変性ペプチドの生成効率が高まる。
【0040】
被処理液のpHを調整するための酸としては、有機酸及び無機酸から選択された一種又は二種以上を使用するとよい。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、コハク酸、酢酸が挙げられ、無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸が挙げられる。酸の混合量は、被処理液のpHを監視しつつ、適宜設定すると良い。酸を被処理液に混合する際には、被処理液において局所的にpHが低下すると、処理物のメルカプト基同士がジスルフィド基になるおそれがあるため、被処理液に酸を徐々に混合することが好ましい。
【0041】
酸化剤混合工程(STP2)での温度条件は、10℃以上60℃以下が良く、40℃以下が好ましい。温度を上記範囲に制御することで、副生成物であるシスチンモノオキシド等の生成を抑制できる。
【0042】
酸化剤混合工程(STP2)での反応式を、還元工程(STP1)での還元剤としてチオグリコール酸若しくはその塩、メルカプトプロピオン酸若しくはその塩、チオ乳酸若しくはその塩、又は、オリンゴ酸若しくはその塩を用いた場合、その還元剤の順の通り挙げれば次の通りである。
【化3】
【0043】
固液分離工程(STP3):
固液分離工程(STP3)は、酸化剤混合工程(STP2)後の被処理液を液体部Lと固体部Sとに分離する工程である。固液分離工程(STP3)では、濾過、遠心分離、圧搾分離、沈降分離、浮上分離等の公知の固液分離手段を採用することができ、必要に応じてイオン交換や電気透析等による脱塩等を行うとよい。
【0044】
回収工程L(STP4):
回収工程L(STP4)は、固液分離工程(STP3)で得た液体部Lに分散溶解する変性ペプチドLを固形状のものとして回収する工程である。この回収工程L(STP4)における固形状変性ペプチドLの回収方法としては、(1)液体部Lを凍結乾燥することによる回収、(2)液体部Lを噴霧乾燥することによる回収、(3)塩酸等の酸を液体部Lに添加して、液体部LのpHを2.5から4.0程度に低下させることにより生じた変性ペプチドL沈殿物の回収などが挙げられる。回収した固形状の変性ペプチドLについては、必要に応じて、水や酸性水溶液による洗浄、乾燥等を行う。
【0045】
加水分解工程:
上記の通り、酸化剤混合工程(STP2)での処理を終えることで、被処理液に高分散して溶解した変性ペプチドと、同液に溶解していない変性ペプチドが得られる。これら変性ペプチドを低分子化すれば、水への分散性が向上して溶解性が高まる。低分子化する態様としては、(1)固液分離工程(STP3)で得られた固体部Sを加水分解する態様、(2)固液分離工程(STP3)で得られた液体部Lに溶解している変性ペプチドLを加水分解する態様、(3)回収工程Lにより回収した変性ペプチドLを加水分解する態様、(4)変性ペプチドLと固体部Sを一括して加水分解する態様、が挙げられる。また、その他に加水分解による低分子化を図る方法としては、還元工程(STP1)の前、還元工程(STP1)と同時、還元工程(STP1)と酸化剤混合工程(STP2)との間に、低分子化のための加水分解を行うことが挙げられる。
【0046】
変性ペプチドを加水分解する方法としては、ペプチドの加水分解として公知の(a)酵素による加水分解、(b)酸による加水分解及び(c)アルカリによる加水分解が挙げられる。
【0047】
(a)酵素による加水分解
加水分解のための酵素としては、例えば、ペプシン、プロテアーゼA、プロテアーゼBなどの酸性タンパク質分解酵素;パパイン、プロメライン、サーモライシン、プロナーゼ、トリプシン、キモトリプシンなどの中性乃至アルカリ性タンパク質分解酵素等が挙げられる。
【0048】
上記酵素による加水分解時のpHは、酸性タンパク質分解酵素の場合には1以上3以下に調整するとよく、中性乃至アルカリ性タンパク質分解酵素の場合には5以上11以下に調整するとよい。このpHを上記範囲とすることにより、酵素活性が向上する。
【0049】
上記酵素による加水分解時の反応温度は30℃以上60℃以下、反応時間は10分以上24時間以内で適宜設定される。この酵素による加水分解を停止させるには、温度を70℃以上にして酵素を失活させるとよい。
【0050】
(b)酸による加水分解
加水分解のために用いられる酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸、又は蟻酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられ、これらの中から適宜選択される。この加水分解の条件は、例えばpH4以下、反応温度40℃以上100℃以下、反応時間2時間以上24時間以内である。
【0051】
(c)アルカリによる加水分解
加水分解のために用いられるアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等が挙げられる。この加水分解の条件は、例えばpH8.0以上、反応温度50℃以上100℃以下、反応時間20分以上24時間以内である。
【0052】
加水分解された変性ペプチドを回収するためには、上記回収工程L(STP4)と同様の方法を採用できる。ただし、pHが2.5から4.0程度になるように酸を添加する回収方法では、変性ペプチドが加水分解により低分子化しているので、回収困難であるか回収不能な場合がある。
【0053】
(長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩、N−長鎖アルキルピリジニウム塩)
本実施形態の液状組成物には、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩、N−長鎖アルキルピリジニウム塩、又は、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及びN−長鎖アルキルピリジニウム塩が配合される。
【0054】
本実施形態の液状組成物には、化粧品原料として公知の長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩から選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。
【0055】
上記長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩として、下記式(IIa)で表されるトリメチルアンモニウム塩(IIa)を配合すると良い。
【化4】
[上記式(IIa)において、Rは炭素数12以上22以下(好ましくは12以上20以下、より好ましくは12以上18以下)のアルキル基を表し、Xは塩素、臭素などのハロゲン原子を表す。]
【0056】
上記トリメチルアンモニウム塩(IIa)を構成する長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウムとしては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0057】
上記N−長鎖アルキルピリジニウム塩として、下記式(IIb)で表されるピリジニウム塩(IIb)を配合すると良い。
【化5】
[上記式(IIb)において、Rは炭素数12以上22以下(好ましくは12以上20以下、より好ましくは12以上18以下)のアルキル基を表し、Yは塩素、臭素などのハロゲン原子を表す。]
【0058】
上記ピリジニウム塩(IIb)を構成するN−長鎖アルキルピリジニウムとしては、例えば、ラウリルピリジニウム、セチルピリジニウムが挙げられる。
【0059】
本実施形態の液状組成物における長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及びN−長鎖アルキルピリジニウム塩の配合量は、次の関係の通りである。「前記長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及び前記N−長鎖アルキルピリジニウム塩の配合量」を(II)とし、「前記変性ペプチドの配合量」を(I)としたときに、(I)に対する(II)で算出される比(II)/(I)が0.5以上であり、0.7以上が良く、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましい。比(II)/(I)を0.5以上に設定することで、変性ペプチドの分散性に優れ、本実施形態の液状組成物の透明性も向上する。比(II)/(I)の上限は、特に限定されないが、例えば300である。
【0060】
上記比(II)/(I)の関係を満足する限り、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及びN−長鎖アルキルピリジニウム塩の配合量は、適宜設定されるべきである。本実施形態の液状組成物における長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及びN−長鎖アルキルピリジニウム塩の配合量は、例えば0.05質量%以上3.0質量%以下である。
【0061】
(任意原料)
本実施形態の液状組成物に配合される任意原料は、毛髪用処理剤の原料として公知のものから適宜に選定される。この任意原料は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤などである。
【0062】
本実施形態の液状組成物には、2価の低級アルコール、3価の低級アルコール、又は、2価の低級アルコール及び3価の低級アルコールを配合するのが良い。2価の低級アルコール又は3価の低級アルコールを配合することで、本実施形態の液状組成物を低温に置いて常温に復帰させたときに生じる場合がある変性ペプチドの析出が抑えられる。
【0063】
上記2価の低級アルコールは、炭素数が4以下のものであり、例えば1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられ、上記3価の低級アルコール、炭素数が4以下のものであり、例えばグリセリンが挙げられる。本実施形態の液状組成物における2価の低級アルコール及び3価の低級アルコールの配合量は、0.5質量%以上が良く、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましい。また、その配合量の上限は、特に限定されないが、例えば10質量%である。
【0064】
(pH)
本実施形態の液状組成物のpHは、25℃の条件で、7.0未満であり、6.5未満、5.0未満、4.0未満に設定しても良い。pHを低く設定しても、長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩又はN−長鎖アルキルピリジニウム塩を配合するので、変性ペプチドの分散性の低下を抑え、本実施形態の液状組成物の透明性の向上を図れる。pHの下限は、例えば3.0である。
【0065】
(粘度)
本実施形態の液状組成物の粘度は、特に限定されない。この粘度は、例えば200mPa・s以下であり、100mPa・s以下でも良い。このような低い粘度であっても、変性ペプチドの分散性の低下が抑えられる。なお、上記粘度は、B型粘度計を使用し、適宜なローターを用いて、25℃でローター回転数12rpmとして計測したときの、計測開始から60秒後の値を意味している。
【0066】
(用途)
本実施形態の液状組成物を毛髪に塗布して用いる場合には、上記任意原料を配合せず又は配合したものとすると良い。
【0067】
また、本実施形態の液状組成物を配合したものを、毛髪処理剤として用いても良い。このときの毛髪用処理剤を使用する際の剤型は、例えば、液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、固形状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。
【0068】
上記の毛髪用処理剤については、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント(例えば、洗い流さないトリートメント、洗い流すトリートメント、整髪兼用トリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)、整髪剤等として用いると良い。
【0069】
上記毛髪用処理剤を製造する場合に使用する原料は、毛髪用処理剤の原料として公知のものから適宜に選定したものである。この原料は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤などである。
【実施例】
【0070】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0071】
(変性ペプチド(Ia)溶液)
以下の還元工程、酸化剤混合工程、固液分離工程、回収工程、加水分解工程、及び調製工程に従い、上記式(Ia)で表される側鎖基(n=1)を備える変性ペプチドが分散する透明の変性ペプチド(Ia)溶液を得た。
【0072】
還元工程:
中性洗剤で洗浄、乾燥させたメリノ種羊毛を、約5mmに切断した。この羊毛5.0質量部、30質量%チオグリコール酸ナトリウム水溶液15.4質量部及び6mol/L水酸化ナトリウム水溶液8.5質量部を混合し、さらに水を混合して全量150質量部、pH11の被処理液を調製した。この被処理液を、45℃、1時間の条件で攪拌した。次いで、さらに水を混合して全量を200質量部とし、45℃、2時間の条件で放置し、その後、液温が常温になるまで自然冷却した。
【0073】
酸化剤混合工程:
還元工程後の被処理液を攪拌しながら、当該液に、35質量%過酸化水素水を15.26質量部配合した水溶液178質量部を、約30分かけて攪拌しながら混合した(過酸化水素水の混合に伴って被処理液のpHは上昇することになるが、その上昇は約20質量%酢酸水溶液を混合することでpH10以上11以下の範囲に調整した。)。その後、約20質量%酢酸水溶液を徐々に混合し、被処理液のpHが漸次11から7になるように調整した。
【0074】
固液分離工程及び回収工程:
酸化剤混合工程で得られた液をろ過することによりその液の不溶物を除去した。その後、回収した液体部(ろ液)に36質量%塩酸水溶液97.2質量部を配合した水溶液160質量部を添加して液のpHを7から3.8にすることにより、変性ペプチド(Ia)の沈殿を生じさせた。この沈殿を回収、水洗し、固形状の変性ペプチド(Ia)を得た。
【0075】
加水分解工程:
回収工程で得た固形状変性ペプチド(Ia)を配合し、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpH10.5とした水溶液を、80℃で2時間加熱した。この加熱後の液をろ過し、ろ液を得た。
【0076】
調製工程:
加水分解工程で得たろ液と、フェノキシエタノール、1,3−ブチレングリコール、及び水を配合し、変性ペプチド(Ia)液を得た。当該液は、変性ペプチド(Ia)が1質量%、フェノキシエタノール1質量%、1,3−ブチレングリコール3質量%含ませたものであり、SDS−PAGE法では、変性ペプチド(Ia)のバンドが44000の分子量で認められた。
【0077】
(比較例1、実施例1a〜1d)
変性ペプチド(Ia)溶液、塩化セチルトリメチルアンモニウム、水を配合し、クエン酸でpHを調整した下記表1の通りの比較例1及び実施例1a〜1dの液状組成物を製造した。
【表1】
【0078】
比較例1及び実施例1a〜1dの液状組成物を目視確認した(図1は、比較例1及び実施例1a〜1dの液状組成物の撮影写真)。配合比(II)/(I)が0.5を超える実施例1a〜1dは、比較例1に比べて変性ペプチド(Ia)の分散性が高く、透明性に優れていた。なお、pHが6.0である場合には、塩化セチルトリメチルアンモニウムが無配合と、0.03質量%配合の場合には、後者の方が変性ペプチド(Ia)の分散性が低かったことが確認されている。
【0079】
(比較例2、実施例2a〜2d)
変性ペプチド(Ia)溶液、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、水を配合し、クエン酸でpHを調整した下記表2の通りの比較例2及び実施例2a〜2dの液状組成物を製造した。
【表2】
【0080】
比較例2及び実施例2a〜2dの液状組成物を目視確認した(図2は、比較例2及び実施例2a〜2dの液状組成物の撮影写真)。配合比(II)/(I)が0.5を超える実施例2a〜2dは、比較例2に比べて変性ペプチド(Ia)の分散性が高く、透明性に優れていた。なお、pHが6.3である場合には、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが無配合と、0.03質量%配合の場合には、後者の方が変性ペプチド(Ia)の分散性が低かったことが確認されている。
【0081】
(実施例3a〜3b、参考例1、実施例4a〜4b、参考例2)
変性ペプチド(Ia)溶液、塩化セチルトリメチルアンモニウム又は塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、水を配合し、クエン酸又はアルギニンでpHを調整した下記表3〜4の通りの液状組成物を製造した。
【表3】
【表4】
【0082】
実施例3a〜3b及び参考例1、実施例4a〜4b及び参考例2の液状組成物を目視確認した(図3は、実施例3a〜3b及び参考例1と、実施例4a〜4b及び参考例2の液状組成物の撮影写真)。pHが7.0未満の実施例3a〜3bと、pHが9.0の参考例1とでは、透明性に差異がなく、変性ペプチド(Ia)の分散性が同等であった。また、実施例4a〜4b及び参考例2でも、同様であった。
【0083】
(参考例3a〜3f)
変性ペプチド(Ia)溶液、水を配合し、クエン酸又はアルギニンでpHを調整した。pHは、参考例3aを4.5、参考例3bを5.5、参考例3cを5.8、参考例3dを7.3、参考例3eを9.0、参考例3fを10.0とした。なお、参考例3a〜3fでは、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩及びN−長鎖アルキルピリジニウム塩は配合しなかった。
【0084】
参考例3a〜3fの液状組成物を目視確認した(図4は、参考例3a〜3fの液状組成物の撮影写真)。7.0未満では、変性ペプチド(Ia)の分散性が徐々に低下したことが認められた。
【0085】
(実施例6)
上記と同様の変性ペプチド溶液(変性ペプチド1質量%、フェノキシエタノール1質量%、1,3−ブチレングリコール3質量%、水95質量%)の100質量部に、塩化セチルピリジニウムを徐々に添加した。添加を開始してから変性ペプチド溶液の透明性(変性ペプチドの分散性)が低下し、添加を続けると透明性の向上が確認された。0.12質量部まで添加してから測定したpHは、5.9であった。その後、pHが3.5になるまでクエン酸を添加したところ、上記透明性は保たれていた。
【0086】
下記表5のAに属する原料を配合したものに、Bに属する原料を配合したものを混合し、洗い流さないトリートメントとして用いられる実施例6a〜6fの毛髪用処理剤を製造した。そして、−10℃で凍結後に常温復帰させたときの各毛髪用処理剤を目視確認し、変性ペプチド(Ia)の析出有無を確認した。結果は、下記表5の通り、2価又は3価の低級アルコールの増量又は配合により、変性ペプチド(Ia)の析出抑制が認められた。このことは、前記低級アルコールの配合が、変性ぺプチドの析出抑制に適切であることを示す。
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5