特許第6371543号(P6371543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371543過熱保護回路及びボルテージレギュレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371543
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】過熱保護回路及びボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
   G05F1/56 320H
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-52145(P2014-52145)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-176327(P2015-176327A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】東 文傑
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−282118(JP,A)
【文献】 特開2007−036711(JP,A)
【文献】 特開平11−015546(JP,A)
【文献】 特開2011−150675(JP,A)
【文献】 特開2006−140299(JP,A)
【文献】 特開2009−058272(JP,A)
【文献】 特開2000−322136(JP,A)
【文献】 特開2002−108465(JP,A)
【文献】 特開2011−024405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検出回路と、
前記温度検出回路にバイアス電流を流すバイアス回路と、
前記バイアス回路のバイアス電流を流すトランジスタのリーク電流を検出するリーク電流検出回路と、を備え、
前記リーク電流検出回路は、検出したリーク電流に応じて前記バイアス電流を制御することによって、前記温度検出回路が動作不要の時には消費電流を削減する
ことを特徴とする過熱保護回路。
【請求項2】
前記リーク電流検出回路は、
ゲートとソースが接続され、前記リーク電流を流す第一のトランジスタと、
前記リーク電流をミラーする第一のカレントミラー回路と、
前記第一のカレントミラー回路の出力に接続されるプルアップ回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の過熱保護回路。
【請求項3】
前記バイアス回路は、
第一の電流源と、
前記第一の電流源の電流をミラーして、前記バイアス電流を流す第のカレントミラー回路と、
前記リーク電流検出回路からの信号に応じて前記第二のカレントミラー回路の動作を制御する第一のスイッチ回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の過熱保護回路。
【請求項4】
前記バイアス回路は、さらに前記第一の電流源の電流をミラーして、前記バイアス電流を流す第三のカレントミラー回路を備えた
ことを特徴とする請求項3に記載の過熱保護回路。
【請求項5】
基準電圧を出力する基準電圧回路と、
出力端子から出力電圧を出力する出力トランジスタと、
前記出力電圧を分圧した分圧電圧と前記基準電圧の差を増幅して出力し、前記出力トランジスタのゲートを制御する誤差増幅回路と、
前記出力トランジスタのゲートを制御する請求項1から4のいずれかに記載の過熱保護回路と、
を備えたことを特徴とするボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱保護回路及び過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ボルテージレギュレータは、内蔵された出力トランジスタにおける電力損失が大きく、負荷電流が大きい場合には自己発熱によりボルテージレギュレータ自身の破壊に至る場合がある。そのため、所定の温度以上では負荷への電力供給を停止する過熱保護回路が設けられている。
【0003】
図4は、ボルテージレギュレータに設けられた、従来の過熱保護回路の回路図である。従来の過熱保護回路は、ダイオード61と、電流源62、64と、抵抗2、3、63と、コンパレータ65と、PMOSトランジスタ1、66と、グラウンド端子100と、電源端子101と、出力端子102を備えている。抵抗2と抵抗3の接続点の分圧電圧Vfbは、図示はしないが、ボルテージレギュレータの誤差増幅回路に接続され、誤差増幅回路が基準電圧Vrefと分圧電圧Vfbに応じて出力トランジスタ1を制御する。
【0004】
ダイオード61を流れる電流は電流源62により一定の電流が流れる。ダイオード61に一定電流を流した時、ダイオード61の順方向バイアス温度依存性はシリコンの場合約−2mV/℃となる。抵抗63と電流源64の接続点には基準電圧Vrefが発生しコンパレータ65の非反転入力端子に入力される。ダイオード61のカソード側の電圧をVf、電源端子101の電圧をVDDとすると、電圧Vfは電源電圧VDDからダイオード61の順方向バイアス電圧を差し引いた電圧であり、通常状態ではVf<Vrefとなって、コンパレータ65の出力によりPMOSトランジスタ66をオフさせPMOSトランジスタ1の制御は行わない。
【0005】
ICの温度上昇に伴って電圧Vfは約−2mV/℃の割合で変化し、基準電圧Vrefと等しくなると、コンパレータ65の出力が反転し、PMOSトランジスタ1がオフする。これによってPMOSトランジスタ1の発熱がなくなり、ICの温度が下がる。そして電圧Vfが基準電圧Vrefよりも小さくなると再びコンパレータ65の出力が反転しPMOSトランジスタ1はオンになる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−108465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の過熱保護回路では、半導体の素子構造上発生するリーク電流の影響が無視できない値となり、リーク電流が過熱保護回路の基準電圧を生成する電流の温度特性に影響を与え、所望の温度での検出動作の精度が低下するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、低消費電流でありながらリーク電流の影響がなく、検出精度のよい過熱保護回路および過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来の課題を解決するために、本発明の過熱保護回路および過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータは以下のような構成とした。
高温時にリーク電流が流れたことを検出するリーク電流検出回路と、前記リーク電流検出回路の出力信号に応じてバイアス電流を流すバイアス回路と、前記バイアス電流によって動作する温度検出回路を備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明の過熱保護回路および過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータは、低温時は低消費電流で動作し、高温時はリーク電流の影響を受けることなく、精度の良い温度検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一の実施形態の過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータの回路図である。
図2】第一の実施形態の過熱保護回路の回路図である。
図3】第二の実施形態の過熱保護回路の回路図である。
図4】従来の過熱保護回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<第一の実施形態>
図1は、第一の実施形態の過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータの回路図である。第一の実施形態の過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータは、過熱保護回路10と、出力トランジスタ1と、抵抗2、3と、誤差増幅回路4と、基準電圧回路5と、グラウンド端子100と、電源端子101と、出力端子102を備える。 過熱保護回路10は、電流源11と、リーク電流検出回路20と、温度検出回路30と、出力端子110を備える。電流源11は、温度検出回路30のバイアス電流を流すバイアス回路である。
【0013】
図2は、第一の実施形態の過熱保護回路の回路図である。第一の実施形態の過熱保護回路は、PMOSトランジスタ21、42、36、38、40、66と、NMOSトランジスタ23、24と、抵抗22、63と、インバータ31、32と、スイッチ回路33、34、35、44と、電流源43と、ダイオード61と、コンパレータ65と、出力端子110を備えている。PMOSトランジスタ21と、NMOSトランジスタ23、24と、抵抗22でリーク電流検出回路20を構成する。インバータ31、32と、スイッチ回路33、34、35、44と、電流源43と、PMOSトランジスタ42、36、38、40で電流源11を構成する。抵抗63と、ダイオード61と、コンパレータ65と、PMOSトランジスタ66で温度検出回路30を構成する。
【0014】
第一の実施形態の過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータの接続について説明する。誤差増幅回路4は、反転入力端子は基準電圧回路5に接続され、非反転入力端子は抵抗2と3の接続点に接続され、出力は過熱保護回路10の出力端子110とPMOSトランジスタ1のゲートに接続される。抵抗3のもう一方の端子はグラウンド端子100に接続され、抵抗2のもう一方の端子は出力端子102とPMOSトランジスタ1のドレインに接続され、PMOSトランジスタ1のソースは電源端子101に接続される。
【0015】
PMOSトランジスタ21は、ゲートとソースは電源端子101に接続され、ドレインはNMOSトランジスタ23のゲートとドレインに接続される。NMOSトランジスタ23のソースはグラウンド端子100に接続される。NMOSトランジスタ24は、ゲートはNMOSトランジスタ23のゲートに接続され、ドレインは抵抗22を介して電源端子101に接続され、ソースはグラウンド端子100に接続される。インバータ32は、入力はNMOSトランジスタ24のドレインに接続され、出力はインバータ31の入力に接続される。インバータ31の出力はスイッチ回路44、33、34、35に接続されオンオフを制御する。スイッチ回路44は、一方の端子は電源端子101に接続され、もう一方の端子はPMOSトランジスタ42のソースに接続される。スイッチ回路33は、一方の端子は電源端子101に接続され、もう一方の端子はPMOSトランジスタ36のソースに接続される。スイッチ回路34は、一方の端子は電源端子101に接続され、もう一方の端子はPMOSトランジスタ38のソースに接続される。スイッチ回路35は、一方の端子は電源端子101に接続され、もう一方の端子はPMOSトランジスタ40のソースに接続される。PMOSトランジスタ42のゲートとドレインは電流源43の一方の端子に接続され、電流源43のもう一方の端子はグラウンド端子100に接続される。PMOSトランジスタ36は、ゲートはPMOSトランジスタ42のゲートに接続され、ドレインは抵抗63とコンパレータ65の反転入力端子に接続される。抵抗63のもう一方の端子はグラウンド端子100に接続される。PMOSトランジスタ38は、ゲートはPMOSトランジスタ42のゲートに接続され、ドレインはダイオード61のアノードとコンパレータ65の非反転入力端子に接続される。ダイオード61のカソードはグラウンド端子100に接続される。PMOSトランジスタ40は、ゲートはPMOSトランジスタ42のゲートに接続され、ドレインはコンパレータ65に接続される。PMOSトランジスタ66は、ゲートはコンパレータ65の出力に接続され、ドレインは出力端子110に接続され、ソースは電源端子101に接続される。
【0016】
次に、第一の実施形態の過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータの動作について説明する。ボルテージレギュレータが高い温度で動作したり、出力トランジスタとして動作するPMOSトランジスタ1から発生する熱によってボルテージレギュレータの温度が高くなった時、PMOSトランジスタ21にリーク電流が発生する。このリーク電流はNMOSトランジスタ23と24で構成されるカレントミラー回路によりミラーされ、インバータ32の入力端子の電圧をグラウンド端子100の電圧VSSにする。インバータ32はこの電圧を受けてインバータ31を介してスイッチ回路44、33、34、35をオンさせる。こうして、PMOSトランジスタ42と36、PMOSトランジスタ42と38、PMOSトランジスタ42と40が構成するカレントミラー回路により電流源43の電流がミラーされる。そして、抵抗63、ダイオード61、コンパレータ65にバイアス電流が流れ温度検出回路30が動作を開始する。
【0017】
ボルテージレギュレータの温度が温度検出回路30で設定された検出温度より低い時、ダイオード61に発生する電圧は抵抗63に発生する電圧より高くなり、コンパレータ65はPMOSトランジスタ66をオフさせPMOSトランジスタ1の動作の制御はしない。ボルテージレギュレータの温度が温度検出回路30で設定された検出温度より高い時、ダイオード61に発生する電圧は抵抗63に発生する電圧より低くなり、コンパレータ65はPMOSトランジスタ66をオンさせる。そして、PMOSトランジスタ66からの信号によってPMOSトランジスタ1をオフさせる。こうして、ボルテージレギュレータの動作を停止させ発熱を抑える。
【0018】
ボルテージレギュレータが通常の温度で動作している時、PMOSトランジスタ21はリーク電流を流さないためインバータ32の入力端子は電源端子101の電源電圧VDDにプルアップされる。インバータ32はこの電圧を受けてインバータ31を介してスイッチ回路44、33、34、35をオフさせる。こうして、温度検出回路30のバイアス電流の供給を止めて動作を停止させ、消費電流を削減することができる。
【0019】
なお、リーク電流検出回路20は、電流源11のトランジスタのリーク電流を検出して検出信号を電流源11に出力することが出来れば、どのように構成してもよく、図2図3のリーク電流検出回路20の回路に限定するものではない。
【0020】
以上により、第一の実施形態の過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータは、通常の温度で動作する時は過熱保護回路の動作をとめて消費電流を削減し、高温で動作する時のみリーク電流を検出して過熱保護回路を動作させることができる。
【0021】
<第二の実施形態>
図3は、第二の実施形態の過熱保護回路の回路図である。第一の実施形態との違いはPMOSトランジスタ37、39、41を追加し、スイッチ回路44を削除した点である。PMOSトランジスタ37は、ゲートはPMOSトランジスタ42のゲートに接続され、ドレインはコンパレータ65の反転入力端子に接続され、ソースは電源端子101に接続される。PMOSトランジスタ39は、ゲートはPMOSトランジスタ42のゲートに接続され、ドレインはコンパレータ65の非反転入力端子に接続され、ソースは電源端子101に接続される。PMOSトランジスタ41は、ゲートはPMOSトランジスタ42のゲートに接続され、ドレインはコンパレータ65に接続され、ソースは電源端子101に接続される。PMOSトランジスタ42のソースは電源端子101に接続される。他は第一の実施形態と同様である。
【0022】
第二の実施形態の過熱保護回路の動作について説明する。ボルテージレギュレータが通常の温度で動作している時、PMOSトランジスタ21はリーク電流を流さないためインバータ32の入力端子は電源端子101の電圧VDDにプルアップされる。インバータ32はこの電圧を受けてインバータ31を介してスイッチ回路33、34、35をオフさせる。こうして、温度検出回路30はPMOSトランジスタ42と37、PMOSトランジスタ42と39、PMOSトランジスタ42と40が構成するカレントミラー回路により少ないバイアス電流で動作し、通常の温度のときの消費電流を低減することができる。
【0023】
ボルテージレギュレータが高い温度で動作したり、出力トランジスタとして動作するPMOSトランジスタ1から発生する熱によってボルテージレギュレータの温度が高くなった時、PMOSトランジスタ21はリーク電流が発生する。このリーク電流はNMOSトランジスタ23と24で構成されるカレントミラー回路によりミラーされ、インバータ32の入力端子の電圧をグラウンド端子100の電圧VSSにする。インバータ32はこの電圧を受けてインバータ31を介してスイッチ回路33、34、35をオンさせる。こうして、温度検出回路30はPMOSトランジスタ42と36、PMOSトランジスタ42と38、PMOSトランジスタ42と40が構成するカレントミラー回路からリーク電流の影響を無視できるほど大きな電流が流れ、温度検出回路30の温度検出精度を向上させることができる。温度検出回路30の動作は第一の実施形態と同様である。
【0024】
なお、リーク電流検出回路20は、電流源11のトランジスタのリーク電流を検出して検出信号を電流源11に出力することが出来れば、どのように構成してもよく、図2図3のリーク電流検出回路20の回路に限定するものではない。
【0025】
以上により、第二の実施形態の過熱保護回路を備えたボルテージレギュレータは、通常の温度で動作する時、過熱保護回路は低いバイアス電流で動作して消費電流を低減し、高温で動作する時のみリーク電流を検出して過熱保護回路のバイアス電流を増加させ、温度検出精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0026】
4 誤差増幅回路
5 基準電圧回路
11、43、62、63 電流源
20 リーク電流検出回路
30 温度検出回路
33、34、35、44 スイッチ回路
61 ダイオード
65 コンパレータ
100 グラウンド端子
101 電源端子
102 出力端子
図1
図2
図3
図4