(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371556
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】トンネル覆工における打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-70800(P2014-70800)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-190294(P2015-190294A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】原 秀利
(72)【発明者】
【氏名】上村 正人
(72)【発明者】
【氏名】青柳 茂男
(72)【発明者】
【氏名】前田 啓太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 徳晃
【審査官】
清藤 弘晃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−020684(JP,A)
【文献】
特開2013−108242(JP,A)
【文献】
実開昭53−000369(JP,U)
【文献】
特開平08−184299(JP,A)
【文献】
特開2012−036564(JP,A)
【文献】
特開2007−138592(JP,A)
【文献】
特開2003−003795(JP,A)
【文献】
特開2012−229546(JP,A)
【文献】
米国特許第05522677(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D11/00−19/06
E21D23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル覆工を形成する際に、覆工コンクリートの表面に現れる打設痕跡模様を解消するための装置であって、
トンネル覆工用型枠の肩部に設けた打設口の下方に近接して設けた、蓋部材により開閉可能なシュート挿脱窓と、
前記シュート挿脱窓の下辺から前記トンネル覆工用型枠の内面に沿って、下方へ垂らす可撓性を有するシート部材と、
前記シュート挿脱窓の前記トンネル覆工用型枠の内面側を覆うとともに、コンクリート打設終了後に当該シュート挿脱窓からトンネル覆工用型枠の外部へ取り出し可能であり、平板状をなして、その左右両側部から上方へ向かって延長して設けた一対のコンクリート誘導壁部を有するシュートと、
を備えたことを特徴とするトンネル覆工における打設痕跡模様解消装置。
【請求項2】
前記一対のコンクリート誘導壁部は、その間隔が前記トンネル覆工用型枠の下部に向かって徐々に縮小していることを特徴とする請求項1に記載のトンネル覆工における打設痕跡模様解消装置。
【請求項3】
前記コンクリート誘導壁部は、前記シュートに対する上下方向の高さが、前記トンネル覆工用型枠の下部に向かって増加していることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル覆工における打設痕跡模様解消装置。
【請求項4】
トンネル覆工を形成する際に、覆工コンクリートの表面に現れる打設痕跡模様を解消するための方法であって、
トンネル覆工用型枠の肩部に設けた打設口の下方に近接して設けた、蓋部材により開閉可能なシュート挿脱窓を開放して、当該シュート挿脱窓の下辺からトンネル覆工用型枠内面に沿って、下方へ可撓性を有するシート部材を垂らし、
平板状をなして、その左右両側部から上方へ向かって延長して設けた一対のコンクリート誘導壁部を有するシュートにより、前記シュート挿脱窓のトンネル覆工用型枠の内面側を覆い、
コンクリートの打設高さに合わせて、前記シート部材を引き上げ、
前記肩部からのコンクリート打設終了後に、前記シュート挿脱窓から前記トンネル覆工用型枠の外部へシュートを取り出し、
前記シュート挿脱窓を前記蓋部材により閉塞して、前記肩部より上方へコンクリートを打設すること、
を特徴とするトンネル覆工における打設痕跡模様解消方法。
【請求項5】
前記肩部より上方へコンクリートを打設するには、前記肩部に設けた打設口からコンクリートを圧入すること、
を特徴とする請求項4に記載のトンネル覆工における打設痕跡模様解消方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工における打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法に関するものであり、詳しくは、覆工コンクリートを打設した後に、覆工コンクリートの表面に現れる打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)を解消するための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル覆工を形成するためのコンクリートの打設順序は、側壁部、アーチ部、クラウン部(天端)の順に行われるのが一般的である。このような覆工コンクリートの打設において、側壁部ではサクションホースを用いてコンクリートを打設し、アーチ部ではアーチ
肩部に設けた打設口からコンクリートを打設する。この際、打設口よりも下側へは、コンクリートを自然流下させて打設し、打設口よりも上側へは、引き続きコンクリートを圧入して、天端付近までコンクリートを打設する。続いて、打設口をクラウン部(天端)に切り替えて、コンクリートを圧入する方法を採用している。
【0003】
しかし、打設口よりも下側へ向かってコンクリートを自然流下させて打設する場合には、打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)が残ることが知られている。従来、コンクリートを自然流下させてトンネル覆工を打設する場合には、トンネル覆工用型枠に沿ってコンクリートを打設するので、打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)の発生は許容せざるを得なかった。
【0004】
打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)が発生する原因は定かではないが、打設するコンクリートが、トンネル覆工用型枠表面を連続して流下するため、流下の痕跡が残ると考えられる。また、トンネル覆工用型枠表面におけるセメント量のバラツキや、コンクリートの配合、剥離剤の塗布の仕方、トンネル覆工用型枠面のすり減り等が原因となることも考えられる。このような打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)にはバラツキがあり、小断面のトンネルの方が大断面のトンネルに比べて打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)が目立つことが知られている。
【0005】
従来、トンネル覆工において、パイプの抜き跡を残さないようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された技術は、パイプの抜き跡を残さない覆工の形成方法及びこれに用いられるトンネル覆工用型枠装置に関するものである。このトンネル覆工用型枠装置は、トンネルの壁面との間にコンクリート打設空間を形成するためのトンネル覆工用型枠であって頂部を有する、コンクリート打設空間に打設されるコンクリートのための供給口が設けられたトンネル覆工用型枠と、トンネル覆工用型枠の端部近傍に配置され、かつトンネル覆工用型枠の頂部において、上方に向けて取り付けられたパイプであってその軸線に沿って昇降可能である少なくとも1つのパイプと、トンネル覆工用型枠に取り付けられパイプに近接するバイブレータであってその軸線に沿って昇降可能である少なくとも1つのバイブレータとを備えている。
【0006】
そして、コンクリート打設空間へのコンクリートの打設の間またはこれに先立ち、パイプをトンネル壁面に当接しまたは近接するまで上昇させ、コンクリートがトンネル壁面の頂部に達した後、パイプを下降させて、パイプの下降の間にバイブレータを作動させることにより、パイプの抜き跡を残さないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−291791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、トンネル覆工を施工する際に打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)が生じてしまうため、この色むらが顕著である場合には、トンネル覆工の見栄えが悪いという問題があった。また、打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)が存在すると、一見して漏水等による色むらと見分けが付かないこともあり、トンネルを供用した後の管理に支障を来すおそれもある。
【0009】
そこで、このような打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)を解消することができる技術の開発が望まれていた。この点、上述した特許文献1に記載された技術は、トンネル覆工において、パイプの抜き跡を残さないようにした技術であり、これを打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)の解消に適用することはできない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、トンネル覆工においてコンクリートを自然流下で打設する際に、打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)が生じないようにした、トンネル覆工における打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のトンネル覆工における打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴を有している。すなわち、本発明のトンネル覆工における打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法は、トンネル覆工を形成する際に、覆工コンクリートの表面に現れる打設痕跡模様を解消するための装置及び方法に関するものであり、以下の構成を備えている。
【0012】
本発明のトンネル覆工における打設痕跡模様解消装置は、トンネル覆工用型枠の肩部に設けた打設口の下方に近接して設けた、蓋部材により開閉可能なシュート挿脱窓と、シュート挿脱窓の下辺からトンネル覆工用型枠の内面に沿って、下方へ垂らす可撓性を有するシート部材と、シュート挿脱窓のトンネル覆工用型枠の内面側を覆うとともに、コンクリート打設終了後に当該シュート挿脱窓からトンネル覆工用型枠の外部へ取り出し可能
であり、平板状をなして、その左右両側部から上方へ向かって延長して設けた一対のコンクリート誘導壁部を有するシュートとを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
また、一対のコンクリート誘導壁部は、その間隔がトンネル覆工用型枠の下部に向かって徐々に縮小していることが好ましい。
さらに、コンクリート誘導壁部は、シュートに対する上下方向の高さが、トンネル覆工用型枠の下部に向かって増加していることが好ましい。
【0014】
本発明のトンネル覆工における打設痕跡模様解消方法は、トンネル覆工用型枠の肩部に設けた打設口の下方に近接して設けた、蓋部材により開閉可能なシュート挿脱窓を開放して、当該シュート挿脱窓の下辺からトンネル覆工用型枠内面に沿って、下方へ可撓性を有するシート部材を垂らす工程と、
平板状をなして、その左右両側部から上方へ向かって延長して設けた一対のコンクリート誘導壁部を有するシュートにより、シュート挿脱窓のトンネル覆工用型枠の内面側を覆う工程と、コンクリートの打設高さに合わせて、シート部材を引き上げる工程と、肩部からのコンクリート打設終了後に、シュート挿脱窓からトンネル覆工用型枠の外部へシュートを取り出す工程と、シュート挿脱窓を蓋部材により閉塞して、肩部より上方へコンクリートを打設する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、上述した工程に加えて、肩部より上方へコンクリートを打設するには、肩部に設けた打設口からコンクリートを圧入することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のトンネル覆工における打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法によれば、トンネル覆工用型枠の肩部に設けた打設口から、コンクリートを自然流下により打設する際に、打設口の下方にシュート挿脱窓を設け、シュート挿脱窓の下辺からトンネル覆工用型枠内面に沿って、下方へ向かって、可撓性を有するシート部材を垂らしている。これにより、自然流下するコンクリートは、トンネル覆工用型枠の表面と直接接触せずに、シート部材の表面を伝わって流下するため、打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)の発生を防止することができる。
【0017】
また、シュート挿脱窓のトンネル覆工用型枠の内面側をシュートにより覆うことにより、シュート挿脱窓からコンクリートが漏れ出すことがなく、効率よくコンクリートの打設を行うことができる。
【0018】
また、打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)は、打設するコンクリートの自然流下により発生するため、肩部より上方へコンクリートを打設する際に、肩部に設けた打設口からコンクリートを圧入することにより、コンクリートの自然流下がなくなり、肩部より上方においても打設痕跡模様(ヒゲ模様の色むら)の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル覆工における打設痕跡模様解消装置の断面模式図。
【
図2】本発明の実施例1に係るシュートの平面図(a)及び断面図(b)。
【
図4】本発明の実施形態に係る保護板材の平面図(a)及び断面図(b)。
【
図5】本発明の実施形態に係る打設痕跡模様解消方法におけるコンクリートの打設手順を示す説明図(1)。
【
図6】本発明の実施形態に係る打設痕跡模様解消方法におけるコンクリートの打設手順を示す説明図(2)。
【
図7】本発明の実施形態に係る打設痕跡模様解消方法におけるコンクリートの打設手順を示す説明図(3)。
【
図8】本発明の実施形態に係る打設痕跡模様解消方法におけるコンクリートの打設手順を示す説明図(4)。
【
図9】本発明の実施形態に係る打設痕跡模様解消方法におけるコンクリートの打設手順を示す説明図(5)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1〜
図9は本発明の実施形態に係るトンネル覆工における打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法を説明するもので、
図1は打設痕跡模様解消装置の断面模式図、
図2は実施例1に係るシュートの平面図及び断面図、
図3は実施例2に係るシュートの斜視図、
図4は保護板材の平面図及び断面図、
図5〜
図9は打設痕跡模様解消方法におけるコンクリートの打設手順を示す説明図である。
【0021】
<打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法の概要>
本発明の実施形態に係る打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法は、トンネル覆工を形成する際に、覆工コンクリートの表面に現れる打設痕跡模様を解消するための装置及び方法に関するものである。
【0022】
打設痕跡模様解消装置は、
図1に示すように、主要な構成要素として、シュート挿脱窓10と、シート部材20と、シュート30とを備えている。シュート挿脱窓10は、トンネル覆工用型枠40の肩部に設けた打設口50の下方に近接して設けられ、シュート30を挿脱するための窓であり、蓋部材11により開閉可能となっている。このシュート挿脱窓10から、トンネル覆工用型枠40の内面に沿ってシート部材20を下方へ垂らすことにより、打設口50から打設するコンクリート60がトンネル覆工用型枠40の内面に直接接触しないようにする。また、この際、シュート30により、シュート挿脱窓10のトンネル覆工用型枠40の内面側を覆うことにより、シュート挿脱窓10からコンクリート60が漏れ出さないようにする。
【0023】
<トンネル覆工用型枠>
本発明の実施形態に係る打設痕跡模様解消装置及び打設痕跡模様解消方法は、例えば、従来から使用されている型枠装置を使用して、トンネル覆工を施工する際に適用する技術である。この型枠装置は、図示しないが、セントル(スライドフォーム)と称される装置であり、トンネルの内壁面に合致したアーチ状で、トンネルの延長方向に移動可能なトンネル覆工用型枠40を備えている。この型枠装置は、一対のレール上に載置する台車と、トンネルの内空断面形状に対応したトンネル覆工用型枠40と、覆工材料の充填装置(例えば、圧送ポンプ)等を備えている。
【0024】
<シュート挿脱窓>
シュート挿脱窓10は、
図1に示すように、トンネル覆工用型枠40の肩部に設けた打設口50の下方に近接して設けた窓部であり、蓋部材11により開閉可能となっている。すなわち、トンネル覆工用型枠40の肩部に設けた打設口50からコンクリート60を打設する際に、当該シュート挿脱窓10を開放し、シュート挿脱窓10の下辺からトンネル覆工用型枠40の内面に沿ってシート部材20を下方へ垂らすとともに、コンクリート60の打設高さに応じてシート部材20を引き上げる。
【0025】
また、当該シュート挿脱窓10を開放した状態では、シュート挿脱窓10からトンネル覆工用型枠40の内面側へシュート30を挿入して、当該シュート30により、トンネル覆工用型枠40の内面側を覆う。一方、トンネル覆工用型枠40の肩部に設けた打設口50からのコンクリート60の打設が終了した後は、蓋部材11によりシュート挿脱窓10を閉塞し、天端付近へコンクリート60を打設する。なお、シュート挿脱窓10は、打設したコンクリート60の締固めを行うための棒状バイブレータ(図示せず)の挿入口として使用することもできる。
【0026】
<蓋部材>
蓋部材11は、
図1に示すように、シュート挿脱窓10を開閉するための部材で、トンネル覆工用型枠40において、シュート挿脱窓10の一側(例えば下辺側)を回転軸として、トンネルの内側(下方)へ向かって回転可能な板状の部材である。この蓋部材11は、トンネル覆工用型枠40の内面形状に合致して屈曲しており、閉鎖状態において、トンネル覆工用型枠40と一体となる。
【0027】
<シート部材>
シート部材20は、
図1に示すように、シュート挿脱窓10の下辺からトンネル覆工用型枠40の内面に沿って、下方へ垂らす可撓性を有する部材であって、トンネル覆工用型枠40のトンネル内側に設けた巻取装置70に巻回されている。そして、トンネル覆工用型枠40の肩部に設けた打設口50からコンクリート60を打設する際に、所定の深さ(例えば、シュート挿脱窓10の下辺から3m程度)まで、シート部材20を垂らしてトンネル覆工用型枠40の内面を覆うとともに、コンクリート60の打設高さに応じて、巻取装置70によりシート部材20を巻き取ることにより、打設口50から打設するコンクリート60がトンネル覆工用型枠40の内面に直接接触することを防止する。
【0028】
シート部材20は、可撓性を有する部材であればどのような部材であってもよいが、例えば、合成樹脂製のシートや不織布を用いることができる。また、シート部材20は、破れたり、傷ついたりしなければ繰り返し使用することができる。この場合、コンクリート60の打設高さに合わせて、巻取装置70により巻き取った後に、再度引き出して使用すればよい。シート部材20を繰り返し使用し、劣化した場合には、劣化した部分を切り離して、未使用の部分を巻取装置70から引き出して使用すればよい。
【0029】
本実施形態では、例えば、シュート挿脱窓10の横方向の幅が65cm程度の場合、シート部材20の横方向幅はシュート挿脱窓10の幅よりも小さい64cm程度としている。また、シート部材20の厚みは、例えば0.8mm程度である。
【0030】
<巻取装置>
図示しないが、巻取装置70には、その付帯装置として、シート部材20を巻き取る際に、シート部材20に付着したコンクリート60を除去するための散水装置及びスクレーパーを設けることが好ましい。また、散水装置及びスクレーパーは、シート部材20の表裏両面に対してそれぞれ設けることが好ましい。この散水装置及びスクレーパーを設けることにより、使用後のシート部材20に付着したコンクリートが除去されるので、綺麗な状態でシート部材20を再使用することができる。
【0031】
<シュート>
シュート30は、シュート挿脱窓10のトンネル覆工用型枠40の内面側を覆うとともに、コンクリート打設終了後に当該シュート挿脱窓10からトンネル覆工用型枠40の外部へ取り出し可能な平板状の部材からなる。なお、ここで、平板状とは、必ずしも平坦な板状である必要はなく、トンネル覆工用型枠40の内面形状に合致して屈曲していてもよいことを意味する。
【0032】
<実施例1/シュート>
実施例1に係るシュート30は、
図2に示すように、シュート挿脱窓10の幅方向の中央部に位置するように設けた回転軸31を回転中心として、トンネル覆工用型枠40の内面側(トンネル地山側)へ回転可能な一対の屈曲板材32を備えている。また、屈曲板材32の側片部には、それぞれ上方へ向かって延長したコンクリート誘導壁部34を設けてある。
【0033】
そして、回転軸31を回転中心として、一対の屈曲板材32が互いに近接するように回転させた状態で、シュート挿脱窓10からトンネル覆工用型枠40の内面側へ挿入した後、回転軸31を回転中心として、一対の屈曲板材32が平板状となるように回転させることにより、シュート30によりシュート挿脱窓10のトンネル覆工用型枠40の内面側を覆うことができる。一方、回転軸31を回転中心として、一対の屈曲板材32が互いに近接するように回転させることにより、シュート30をシュート挿脱窓10から外部に取り出すことができる。
【0034】
<実施例2/シュート>
実施例2に係るシュート30は、
図3に示すように、底板33と、当該底板33の左右両側部から上方へ向かって延長して設けた一対のコンクリート誘導壁部34を有している。また、一対のコンクリート誘導壁部34は、その間隔がトンネル覆工用型枠40の下部に向かって徐々に縮小している。さらに、コンクリート誘導壁部34は、シュート30に対する上下方向の高さが、トンネル覆工用型枠40の下部に向かって増加している。
【0035】
すなわち、実施例2に係るシュート30は、打設するコンクリート60が側方へ向かって広がり、シート部材20の上面から外れて流下することを防止するために、一対のコンクリート誘導壁部34を設けてある。さらに、打設するコンクリート60が側方へ向かって広がるのを確実に防止するために、一対のコンクリート誘導壁部34の間隔を、トンネル覆工用型枠40の下部に向かって徐々に縮小させ、シュート30に対する上下方向の高さを、トンネル覆工用型枠40の下部に向かって増加させている。また、実施例2に係るシュート30の幅は、シュート挿脱窓10の幅よりも1cm程度小さくなっている。これにより、シュート挿脱窓10から、シュート30をトンネル覆工用型枠40の内面側に挿入し、あるいは取り出すことができる。
【0036】
<保護板材>
トンネル覆工用型枠40の構造上、肩部に設けた打設口50とシュート挿脱窓10とを連接して設けることは困難であり、打設口50とシュート挿脱窓10との間には間隔を置かざるを得ない。このため、本実施形態では、
図1に示すように、打設口50とシュート挿脱窓10との間、すなわち、打設口50とシュート30との間に、保護板材80を取り付けている。この保護板材80により、打設口50とシュート挿脱窓10との間において、打設するコンクリート60を、トンネル覆工用型枠40の内面に接触させることなく、シュート30及びシート部材20の上面を流下させることができる。
【0037】
この保護板材80は、
図4に示すように、平板状の部材からなり、取り扱いを容易にするため、一対の取手81を取り付けてある。保護板材80の材料は、どのようなものであってもよいが、加工の容易さ、強度等を考慮して、例えば鉄板を用いる。
【0038】
<コンクリート打設に伴う打設痕跡模様の解消>
次に、
図5〜
図9を参照して、コンクリート打設に伴う打設痕跡模様の解消手順について説明する。
【0039】
本実施形態の打設痕跡模様解消方法では、
図5に示すように、トンネル覆工用型枠40の肩部に設けた打設口50の下方に近接して設けた、蓋部材11により開閉可能なシュート挿脱窓10を開放して、当該シュート挿脱窓10の下辺からトンネル覆工用型枠40内面に沿って、下方へ可撓性を有するシート部材20を垂らす。シート部材20は、巻取装置70により、繰り出し及び巻き取りを行うことができる。
【0040】
そして、平板状のシュート30により、シュート挿脱窓10のトンネル覆工用型枠40の内面側を覆う。この状態で、
図6〜
図8に示すように、コンクリート60の打設高さに合わせて、シート部材20を引き上げながら、肩部からコンクリート60を打設する。そして、
図9に示すように、肩部からのコンクリート60の打設が終了したら、シュート挿脱窓10からトンネル覆工用型枠40の外部へシュート30を取り出す。
【0041】
その後、シュート挿脱窓10を蓋部材11により閉塞して、肩部より上方へコンクリート60を打設する。この際、肩部に設けた打設口50からコンクリート60を圧入することが好ましい。天端付近に設けた打設口からコンクリート60を打設すると、肩部と比較して規模は小さいとはいえ、打設痕跡模様が発生することがあるが、肩部に設けた打設口50からコンクリート60を圧入すると、コンクリート60の流下が生じないため、打設痕跡模様が発生する可能性は極めて低くなる。
【符号の説明】
【0042】
10 シュート挿脱窓
11 蓋部材
20 シート部材
30 シュート
31 回転軸
32 屈曲板材
33 底板
34 コンクリート誘導壁部
40 トンネル覆工用型枠
50 打設口
60 コンクリート
70 巻取装置
80 保護板材
81 取手