特許第6371557号(P6371557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371557リン捕集材およびそれを用いた自動車排気ガス浄化触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371557
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】リン捕集材およびそれを用いた自動車排気ガス浄化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/04 20060101AFI20180730BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20180730BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20180730BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20180730BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20180730BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B01J20/04 A
   B01J20/02 A
   B01J23/58 A
   B01J23/63 A
   B01D53/86 222
   F01N3/10 A
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-70923(P2014-70923)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-188881(P2015-188881A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】中村 匠
(72)【発明者】
【氏名】安藤 竜児
(72)【発明者】
【氏名】原 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】藤村 雄大
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−170047(JP,A)
【文献】 特開2004−160297(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/022958(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/28;20/30−20/34
B01J 21/00−38/74
B01D 53/73;53/86−53/90;53/94;53/96
F01N 3/00;3/02;3/04−3/38;9/00−11/00
C01F 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス中に夾雑するリン化合物を捕集する第2族元素及び/又は希土類元素が無機酸化物のアルミナ(Alに担持されたリン捕集材であって
前記第2族元素は、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびストロンチウム(Sr)の群から選ばれる1種以上、また、前記希土類元素は、プラセオジム(Pr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、およびネオジム(Nd)の群から選ばれる1種以上であり、さらに、前記アルミナは、BET比表面積が140〜500m/g、平均粒径が1〜40μmであり、かつ前記リン捕集材の塩基点量が0.7mmol/g以上であることを特徴とするリン捕集材。
【請求項2】
第2族元素の担持量が、酸化物換算で1〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載のリン捕集材。
【請求項3】
第2族元素が、単体、酸化物、炭酸塩のいずれかの形態で無機酸化物に担持されていることを特徴とする請求項1に記載のリン捕集材。
【請求項4】
希土類元素の担持量が、酸化物換算で1〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載のリン捕集材。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のリン捕集材が、触媒層として一体構造型担体に被覆されてなる自動車排気ガス浄化触媒。
【請求項6】
一体構造型担体のセル密度が、100〜900セル/inch(15.5〜139.5セル/cm)であることを特徴とする請求項に記載の自動車排気ガス浄化触媒。
【請求項7】
触媒層が、さらにパラジウム(Pd)を含むことを特徴とする請求項に記載の自動車排気ガス浄化触媒。
【請求項8】
触媒層が、さらにセリア−ジルコニア複合酸化物および/または固溶体を含むことを特徴とする請求項に記載の自動車排気ガス浄化触媒。
【請求項9】
触媒層が単層であり、リン捕集材が排気ガスと接する表面側に含まれることを特徴とする請求項に記載の自動車排気ガス浄化触媒。
【請求項10】
触媒層が複層であり、リン捕集材が排気ガスと接する層に含まれることを特徴とする請求項に記載の自動車排気ガス浄化触媒。
【請求項11】
パラジウム(Pd)が、触媒層深さ方向の任意の位置に存在することを特徴とする請求項に記載の自動車排気ガス浄化触媒。
【請求項12】
セリア−ジルコニア複合酸化物および/または固溶体が、触媒層深さ方向の任意の位置に存在することを特徴とする請求項に記載の自動車排気ガス浄化触媒。
【請求項13】
リン捕集材の総被覆量が、一体構造型担体の単位体積あたり20〜80g/Lであることを特徴とする請求項に記載の自動車排気ガス浄化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン捕集材およびそれを用いた自動車排気ガス浄化触媒に関し、より詳しくは、ガソリン自動車から排出される排気ガス中に夾雑するリン化合物を優先的に捕集するリン捕集材およびそれを用いた窒素酸化物(NOx)の浄化性能に優れる自動車排気ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排気ガスを浄化する触媒装置には、その目的に応じて様々な触媒が使用されてきた。この主要な触媒成分には白金族金属があり、通常、活性アルミナ等の高表面積の耐火性無機酸化物上に高分散に担持して使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
触媒成分としての白金族金属には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)が知られており、広く自動車等の内燃機関から排出される排気ガス浄化触媒に使用されてきた。前述のTWCにおいては、Pt、Pdなど酸化活性に優れる触媒活性種と、NOxの浄化活性に優れるRhを組み合わせて使用されることが多い。近年、排気ガス中に含まれる有害物質、特にNOxに対する規制が厳しさを増している。そのため、NOxの浄化活性に優れるRhを効果的に使用する必要がある。また、Rhは産出量も少なく、高価であり、近年市場価格も高騰している。そのため、触媒活性種としてのRhは、資源保護の観点、またコスト面からその使用量を少なくすることが好ましい。
【0004】
また、排気ガス浄化触媒では、更なる浄化性能の向上を図るため、触媒には白金族金属の他、様々な助触媒成分の添加が検討されている。このような助触媒成分としては、酸素吸蔵放出成分(Oxygen Storage Component:OSC)や、アルカリ土類金属や、ジルコニウム酸化物、ゼオライト等が知られている。
このうち、OSCは排気ガス中の酸素を吸蔵・放出するものであり、酸化セリウムが知られている。酸化セリウムは、排気ガス中の酸素濃度が高い時にはCeOとして酸素を吸蔵し、酸素濃度が低い時にはCeになって酸素を放出する。放出された酸素は活性な酸素であり、PtやPdによる酸化作用に利用されることでCO、HCの浄化を促進する。また、OSCは酸素の吸蔵・放出により、排気ガス中の酸素濃度変化を緩衝する働きもする。この働きによりTWCでは排気ガスの浄化性能が向上する。
TWCは一つの触媒で酸化と還元を行うものであり、設計上、浄化に適した排ガス成分の範囲がある。この範囲は空燃比に依存することが多い。このような範囲はウィンドウといわれ、多くの場合、Stoichiometryと呼ばれる理論空燃比の近傍で燃焼した排気ガスをウィンドウ域に設定している。排気ガス中の酸素濃度の変化が緩衝されることで、このウィンドウ域が長時間保たれて排気ガスの浄化が効果的に行なわれる。これは特にRhによるNOxの浄化特性に影響すると言われている。
【0005】
このような酸化セリウムとしては、純粋なセリウム酸化物も使用できるが、ジルコニウムとの複合酸化物として使用されることが多い(特許文献2参照)。酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物は耐熱性が高く、酸素の吸蔵・放出速度も速いといわれている。それは酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物の結晶構造が安定で、主要なOSC成分であるセリウム酸化物の働きを阻害しないので、粒子の内部までOSCとして機能するためと考えられる。
【0006】
一方、RhによるNOxの浄化では、例えばスチームリフォーミング反応やCO+NO反応がRh成分を介して以下のように促進され、NOxを浄化するものと考えられている。
HC+HO ――――――――→ COx+H ・・・・・・ (1)
+NOx ――――――――→ N+HO ・・・・・・ (2)
CO+NO ――――――――→ CO+1/2N ・・・・・・ (3)
そして、ジルコニウム酸化物は、Rh成分と共に用いるとスチームリフォーミング反応やCO+NO反応を促進することが公知の技術となっている(特許文献3参照)。
このような反応が以下に示すHCによるNOxの浄化反応に加えて生じることにより、NOxの浄化をさらに加速させることになるので、ジルコニウム酸化物以外のスチームリフォーミング反応を加速させる助触媒の存在が非常に重要である。
NOx+HC ――――――――→ CO+HO+N ・・・・・・ (4)
【0007】
助触媒成分としては、このほかにBa成分などのアルカリ土類金属も知られている(特許文献4参照)。Ba成分は、排気ガス中に含まれるNOxを一時的に吸蔵し、吸蔵したNOxを排気ガスに含まれる還元成分によりNに還元して浄化する。
一般に、エンジンに供給される燃料が少ないとき、空気の量が多いとき、あるいは燃焼温度が高いときにNOxが多量に発生する。Ba成分は、このように発生するNOxを一時的に吸収する。
そして、Ba成分に吸収されたNOxは、排気ガス中のNOxの濃度が低くCO濃度が高くなったときにBa成分から放出される。これは前述の例に続ければ、Ba(NOがCOと反応し、BaCOになるものであり、化学平衡であるといえる。Ba成分から放出されたNOxは、前述したようにRh成分表面で還元成分と反応して還元浄化される。
【0008】
このような助触媒成分は2つ以上を併用することもでき、例えば、Ba成分と酸化セリウムを使用したTWCが知られている(特許文献5参照)。ところが、触媒材料の組み合わせによっては浄化性能を低下してしまうことがあり、例えば、Rh成分とBa成分が同一組成中に存在するとNOxの浄化性能が低下することが報告されている(特許文献6参照)。この理由は、アルカリ土類金属成分がNOxを吸蔵する作用を有することから、Rh成分におけるNOxの浄化作用が妨害されることや、BaからRhへの電子供与作用により酸化Rh構造が安定化することに起因するためと思われる。
【0009】
そのため、Rh成分とBa成分を分離してアルミナに担持することで、NOx浄化性能と耐熱性を向上させることが提案されている(特許文献7参照)。ここには、触媒層中のRh成分とBa成分がどの程度分離しているかについては言及が無いが、Ba源として水溶性の酢酸Baを用いた場合は、Ba成分がスラリー中に溶出してしまい、Rh成分と十分に分離できているとは言い難い。結果、Rh成分とBa成分が近接してしまうため、NOx浄化性能が低下してしまうという問題は十分には解決できない。
また、母材であるアルミナやOSC成分であるCeOの耐熱性を向上させる為、アルミナへ酸化ネオジム、酸化プラセオジムなどの希土類酸化物を添加したり(特許文献8参照)、酸化セリウムへ酸化ランタン、酸化ネオジムなどの希土類酸化物を添加すること(特許文献9参照)の他、貴金属であるRh、Pd等を酸化ランタン、ジルコニアなどで耐熱性を向上させたアルミナ粒子と酸化ネオジム、ジルコニアなどで耐熱性を向上させたCeO微粒子の両方に担持する方法(特許文献10参照)などが試みられている。
【0010】
このように、触媒成分の組み合わせは様々であり、触媒成分相互の相関作用による複雑な反応経路を経ることから、これらを総合的に検討して、最も浄化作用が発揮される触媒成分の組み合わせが模索されている。
【0011】
ところで、排気ガス浄化触媒は、排気ガス流路の中に一つ配置されれば良いが、2個以上配置される場合もある。これは、排ガス規制の強化に伴って、排気ガス浄化触媒の特性をより生かすための処置であり、白金、パラジウム、ロジウムのそれぞれの貴金属が有する耐久性(耐熱性、耐雰囲気性、耐被毒性)、触媒特性(酸化活性、還元活性)等に応じてそれぞれ最適の位置を設定してやる必要があるためである。
また、高価な貴金属や希土類の使用量を削減することは、限りある資源の効率的な活用に繋がっており、そのためにも、それぞれの貴金属や希土類の特性に応じて排気ガス流路の最適の位置に排気ガス浄化触媒を設置することが求められている。
【0012】
さらに、近年、排気ガスの規制は、ますます厳しくなる一方であり、複数の触媒を使用して、より優れた排気ガス浄化性能を発揮する触媒の登場が望まれている。例えば、米国カリフォルニア州のLEV3−SULEV30規制では、LA−4走行モードにおけるNMOG(非メタン有機ガス)とNOx(窒素酸化物)を合わせた排出量として30mg/mile以下が求められており、エンジン始動時に排出される炭化水素の量を考慮すると、窒素酸化物(NOx)の排出量をLA−4モードで10mg/mile以下にしうる自動車排気ガス浄化触媒の開発が必要な状況となっている。
【0013】
ところで、自動車排気ガス浄化触媒にとって、燃料であるガソリンや潤滑油として使用されるオイルに含まれる鉛、硫黄、リンなどが排気ガス中に飛散し、触媒毒となって浄化性能を悪化させ、触媒として寿命を短くするため、これらの被毒物質の削減も触媒開発と並行して進められてきた。
まず、ガソリンに含まれている鉛については、ガソリンの無鉛化により対処された。続いて、ガソリンに含まれる硫黄についても、ガソリンの低硫黄化、特に、国内においてはサルファーフリー化(硫黄分:10ppm以下)されたことで著しく軽減された。
また、エンジンの構造上生じるシリンダーとピストンとの間の金属摩擦の緩和、隙間の密封のため、潤滑油としてのオイルの使用は不可欠であり、そのため、オイルの一部はどうしても高温下で気化し、排気ガス中に混入する。オイル中に含まれる硫黄やリンの含有量を低減するため、ILSACなどのエンジンオイル規格により、硫黄とリンの含有量規制が行われており、含有量は低下している。しかし、潤滑性能を維持するため、リンに関しては最低含有量が設定されており、オイル中にリンは一定量含有されることになる。
このため、近年では触媒毒として硫黄の影響が減少する一方、リンによる影響がクローズアップされている。
【0014】
リンによる触媒被毒の回避方法は数多く報告されており、触媒の前側(特許文献11参照)や複数層からなる触媒層の最上層(特許文献12、特許文献13参照)又は最上層の前側(特許文献14参照)にリンの捕集材を設置することが報告されており、貴金属の中で、白金やロジウムに比べリンによる被毒の影響を受け易いパラジウムやリンの酸化物(P)と反応してリン酸セリウム(CePO)を生成して酸素の吸蔵性能の悪化するセリア及び/又はセリア・ジルコニア複合酸化物を保護する役割を担っていた。
また、リンの捕集材としては、ジルコニア、チタニアなどの無機酸化物(特許文献15、特許文献16参照)やLi、Na、K、Caなどのアルカリ金属、Mg、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属元素(特許文献17参照)、低BET比表面積のアルミナ、ジルコニア、セリア、セリア−ジルコニア複合酸化物(特許文献18参照)が知られている。
【0015】
しかしながら、まだ十分なリンの捕集性能を有する実用性が高い材料は得られておらず、窒素酸化物(NOx)の排出量を規制適合の目安の一例としてLA−4モードで10mg/mile以下にしうる自動車排気ガス浄化触媒が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平05−237390号公報
【特許文献2】特公平06−75675号公報
【特許文献3】再公表特許2000/027508
【特許文献4】特開2007−319768号公報
【特許文献5】特開平03−106446号公報
【特許文献6】特開2002−326033号公報
【特許文献7】特開平09−215922号公報
【特許文献8】特開昭61−38626号公報
【特許文献9】特開昭64−4250号公報
【特許文献10】特開2011−200817号公報
【特許文献11】特開昭61−78438号公報
【特許文献12】特開昭63−240946号公報
【特許文献13】特開2003−170047号公報
【特許文献14】特表2009−501079号公報
【特許文献15】特開2004−261681号公報
【特許文献16】特開昭55−167046号公報
【特許文献17】特開2006−175322号公報
【特許文献18】特開2011−104485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、上記従来の課題に鑑み、自動車等の内燃機関から排出されるリン化合物が夾雑する排気ガスに含まれる有害物質(CO、HC、NOx)の内、特にNOxを浄化するための触媒、特にTWC触媒として好適なリン捕集材を有する自動車排気ガス浄化触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するために鋭意研究を重ね、第2族元素及び/又は希土類元素をBET比表面積が高い無機酸化物に担持し、塩基点量が特定値以上であると、自動車排気ガス浄化触媒として用いたときに優れた脱硝性能を発揮することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、排気ガス中に夾雑するリン化合物を捕集する第2族元素及び/又は希土類元素が無機酸化物のアルミナ(Alに担持されたリン捕集材であって前記第2族元素は、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびストロンチウム(Sr)の群から選ばれる1種以上、また、前記希土類元素は、プラセオジム(Pr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、およびネオジム(Nd)の群から選ばれる1種以上であり、さらに、前記アルミナは、BET比表面積が140〜500m/g、平均粒径が1〜40μmであり、かつ前記リン捕集材の塩基点量が0.7mmol/g以上であることを特徴とするリン捕集材が提供される。
【0021】
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、第2族元素の担持量が、酸化物換算で1〜30重量%であることを特徴とするリン捕集材が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、第2族元素が、単体、酸化物、炭酸塩のいずれかの形態で無機酸化物に担持されていることを特徴とするリン捕集材が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、希土類元素の担持量が、酸化物換算で1〜30重量%であることを特徴とするリン捕集材が提供される。
【0022】
また、本発明の第の発明において、第1〜のいずれかの発明において、リン捕集材が、触媒層として一体構造型担体に被覆されてなる自動車排気ガス浄化触媒が提供される。
また、本発明の第の発明において、第の発明において、一体構造型担体のセル密度が、100〜900セル/inch(15.5〜139.5セル/cm)であることを特徴とする自動車排気ガス浄化触媒が提供される。
また、本発明の第の発明において、第の発明において、触媒層が、さらにパラジウム(Pd)を含むことを特徴とする自動車排気ガス浄化触媒が提供される。
また、本発明の第の発明において、第の発明において、触媒層が、さらにセリア−ジルコニア複合酸化物および/または固溶体を含むことを特徴とする自動車排気ガス浄化触媒が提供される。
また、本発明の第の発明において、第の発明において、触媒層が単層であり、リン捕集材が排気ガスと接する表面側に含まれることを特徴とする自動車排気ガス浄化触媒が提供される。
【0023】
また、本発明の第10の発明において、第の発明において、触媒層が複層であり、リン捕集材が排気ガスと接する層に含まれることを特徴とする自動車排気ガス浄化触媒が提供される。
また、本発明の第11の発明において、第の発明において、パラジウム(Pd)が、触媒層深さ方向の任意の位置に存在することを特徴とする自動車排気ガス浄化触媒が提供される。
また、本発明の第12の発明において、第の発明において、セリア−ジルコニア複合酸化物および/または固溶体が、触媒層深さ方向の任意の位置に存在することを特徴とする自動車排気ガス浄化触媒が提供される。
また、本発明の第13の発明において、第の発明において、リン捕集材の総被覆量が、一体構造型担体の単位体積あたり20〜80g/Lであることを特徴とする自動車排気ガス浄化触媒が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明のリン捕集材は、排気ガス中に夾雑するリン化合物に対し、高い捕集性能を発揮する。
さらに、本発明のリン捕集材を含む自動車排気ガス浄化触媒は、リン耐久性に優れるため、排気ガスとの接する箇所にリン捕集材からなる層を追加コートすることなく、リン被毒に脆弱なパラジウムやセリア−ジルコニア複合酸化物および/または固溶体を触媒層深さ方向の任意の位置に存在させることができるため、何ら制約を受けることなく触媒の設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】CO−TPD評価方法の操作手順を示すグラフである。
図2】リン捕集材による塩基点量を示すグラフである。
図3】自動車排気ガス浄化触媒のリン被毒後におけるLA−4モードのNOx排出量を示すグラフである。
図4】リン被毒後の触媒のXRD回折パターンを示すグラフである。
図5】自動車排気ガス浄化触媒のリン被毒後におけるLA−4モードのNOx排出量と各々の触媒に使用されたリン捕集材による塩基点量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第2族元素及び/又は希土類元素が特定の高いBET比表面積(以下、高BET比表面積あるいは単に高BETとも記述)の無機酸化物に担持されたリン捕集材について詳細に説明する。なお、ガソリンエンジンにおける実施形態を中心に述べるが、本発明は自動車用途に限定されるものではなく、排気ガス中にリン化合物が夾雑する場合の窒素酸化物の脱硝技術に広く適用可能である。
【0027】
1.リン捕集材
本発明のリン捕集材は、第2族元素及び/又は希土類元素が高BET比表面積の無機酸化物に担持された材料として存在する。
【0028】
(1)無機酸化物
無機酸化物としては、具体的には、リン捕集材の母材として使用されているアルミナ、チタニア、シリカ、セリア、およびジルコニアなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上の無機酸化物を組み合わせてもよい。
また、後述するように、リン捕集材の有する塩基点量の多寡がリン被毒後の脱硝性能の優劣を左右するため、無機酸化物自体の塩基点量は多いことが好ましい。塩基点量は材料のBET比表面積と正の相関を持つため、比表面積の大きい無機酸化物を使用することがより好ましい。
【0029】
以下に、第2族元素及び/又は希土類元素を担持するための無機酸化物(無機母材)の一例として、アルミナの場合を以下に述べる。
(1−1)アルミナ
本発明において、アルミナは、多孔質無機酸化物の一種であり、第2族元素及び/又は希土類元素を高分散に担持する母材として機能する。
γ−アルミナの他、β−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ等が挙げられるが、BET比表面積をできるだけ大きくするため、γ−アルミナが好ましい。BET比表面積は140〜500m/gであり、200〜450m/gが好ましい。但し、BET比表面積が500m/gを超えると粒子内の細孔径が小さくなり過ぎ、細孔内にリン化合物が入り難くなるので好ましくない。一方、140m/gに満たないと塩基点の数が少なくなり、塩基点量が少なくなるので好ましくない。
また、アルミナの平均粒子径は1〜50μmが好ましく、1〜40μmがより好ましい。アルミナの平均粒子径が1μmを下回ると、触媒成分と混合して触媒層を形成した際、粒子間の細孔径が小さくなってガスの拡散が悪化するので、好ましくない。一方、アルミナの平均粒子径が50μmを上回ると、第2族元素及び/又は希土類元素を含浸法でBET比表面積の無機酸化物に担持する際、細孔径が小さいため、第2族元素及び/又は希土類元素を含む溶液の粒子中心部への浸透が悪く、表面部と中心部で第2族元素及び/又は希土類元素の濃度差を生じ易くなるので好ましくない。
また、アルミナは単独で用いても良いが、耐熱性を高めるため、ランタン(La)、セリウム(Ce)などの希土類元素や、ジルコニウム(Zr)などと複合酸化物を形成させてもよい。なお、以下、アルミナに上記希土類元素やジルコニアなどを含む場合をアルミナ系複合酸化物という。
【0030】
(1−2)他の無機酸化物
BET比表面積については、他の無機酸化物も同様で、アルミナに比べ、ややBET比表面積の大きさでは劣るジルコニア、シリカ、チタニア、セリアでも、50〜350m/gが好ましく、70〜280m/gがより好ましい。
また、ジルコニアやチタニア、シリカ、セリアのBET比表面積をさらに大きくするため、アルミナ上にジルコニウムやチタニウム、シリカ、セリアの可溶性の塩を原料とする溶液やゾル状のジルコニアやチタニアなどを含水法で担持することにより、アルミナ上に高分散させることも好ましい。
【0031】
(2)第2族元素
本発明において、第2族元素として、リン化合物との反応性のある既知の元素が使用できる。
具体的には、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびストロンチウム(Sr)群から選ばれる1種以上である
第2元素の出発原料の形態には、特に制限はなく、例えば、単体であってもよく、酢酸塩、水酸化物、酸化物、塩化物、硫酸塩、炭酸塩などが使用できる。但し、後述するように、無機酸化物上で高分散させる必要があるため、可溶性の出発原料の使用が好ましい。
また、無機母材への第2族元素の担持量についても特に制限はないが、酸化物換算で1〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましい。
第2族元素の酸化物換算での担持量が1重量%を下回るとリン化合物と反応する第2元素の絶対量が足らなくなるので好ましくない。一方、第2族元素の酸化物換算での担持量が30重量%を超えると、第2族元素の分散性が悪化するので好ましくない。
【0032】
(3)希土類元素
本発明において、希土類元素として、リン化合物との反応性のある既知の元素が使用できる。
具体的には、プラセオジム(Pr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、およびネオジム(Nd)群から選ばれる1種以上である
【0033】
希土類元素の出発原料の形態には、特に制限はなく、例えば、酢酸塩、水酸化物、酸化物、塩化物、硫酸塩、炭酸塩などが使用できる。但し、後述するように、無機酸化物上で高分散させる必要があるため、可溶性の出発原料の使用が好ましい。
また、無機母材への希土類元素の担持量についても特に制限はないが、酸化物換算で1〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましい。
希土類元素の酸化物換算での担持量が1重量%を下回るとリン化合物と反応する希土類元素の絶対量が足らなくなるので好ましくない。一方、希土類元素の酸化物換算での担持量が30重量%を超えると、希土類元素の分散性が悪化するので好ましくない。
【0034】
(4)リン捕集材の物性
(4−1)塩基点量
本発明の第2族元素及び/又は希土類元素を高BET比表面積の無機酸化物に担持したリン捕集材の塩基点量は0.7mmol/g以上でなければならない。塩基点量が0.7mmol/g以上であれば、リン被毒後の排ガスに対して、脱硝性能を向上させることができる。
【0035】
前記のとおり、近年の規制強化に対応するため、規制適合の目安の一例として、自動車排気ガス浄化触媒に対しては、窒素酸化物(NOx)の排出量をLA−4モードで10mg/mile以下にする必要がある。これまで、LA−4モードによるNOx排出量とリン捕集材の塩基点量との間に明確な相関性は見出されていなかった。本発明は、NOx排出量を10mg/mile以下にするためには、リン捕集材の塩基点量を0.7mmol/g以上にする必要があることを見出したものである。
【0036】
これまでのリンの捕集材においては、捕集性能が期待される候補物質が非常に多岐にわたっており、様々な組み合わせが考えられる一方で、実際には、リンの捕集材を調製した後、触媒に組み込んで、リン被毒のためのエンジン耐久とシャーシによる性能評価を行うため、1種類のリン捕集材の評価だけでかなりの費用と相当な時間を必要としていた。また、無機酸化物の物性や担持される元素の担持状態についても、どういう傾向が望ましいかについて知見が必要であった。
本発明によれば、簡単な方法でリンの捕集材の優劣を求めることができ、その結果から実際の触媒においても浄化性能の優劣が予測することができる。
【0037】
本発明の第2族元素及び/又は希土類元素を高BET比表面積の無機酸化物に担持したリン捕集材の塩基点量は0.75mmol/g以上が好ましく、0.80mol/g以上がより好ましい。これに対して、塩基点量が0.7mmol/gを下回ると、リン被毒後の脱硝性能が悪化するので好ましくない。
【0038】
(4−2)粒子径
また、本発明の排気ガス浄化用リン捕集材の粒子径は、1〜40μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
リン捕集材の平均粒子径が1μmを下回ると、触媒成分と混合して触媒層を形成した際、粒子間の細孔径が小さくなってガスの拡散が悪化するので、好ましくない。一方、リン捕集材の平均粒子径が40μmを越えると、粒子の中心部までのガス拡散が遅くなり、リン捕集材粒子の中心部が有効に活用されないため、好ましくない。
本発明の排気ガス浄化用リン捕集材は、各種担体表面に被覆された触媒の含有物として用いることができる。ここで担体の形状は、特に限定されるものではなく、角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状などの構造型担体から選択可能である。構造型担体のサイズは、特に制限されないが、角柱状、円筒状、球状のいずれかであれば、例えば数ミリから数センチの直径(長さ)のものが使用できる。
【0039】
2.自動車排気ガス浄化触媒
本発明の自動車排気ガス浄化触媒(以下、単に触媒ともいう)は、第2族元素及び/又は希土類元素が高BET比表面積の無機酸化物に担持されたリン捕集材を含む触媒材料がハニカム構造担体に一層以上被覆したものである。
【0040】
層構成は、一層でもよいが、排気ガス規制が厳しい場合には、二層以上とすることが好ましい。また、二層以上の場合、リン捕集材が、排気ガスと接する層にあることが好ましい。
【0041】
また、触媒材料には、パラジウム、ロジウム、白金などの一種以上の貴金属を添加することができる。
一般に、ロジウムや白金はリン被毒に強く、パラジウムのみがリン被毒に弱いと言われており、パラジウムは二層以上の層構成とし、その下層に配置するか、一層の場合は後半部に配置することが常であった。本発明の場合、パラジウムが排気ガスと接する層にあっても、近隣に存在するリン捕集材が優先的にリン化合物と反応して、パラジウムの被毒を抑制するため、パラジウムは触媒層深さ方向のどの位置にあっても特に問題とならない。
リン被毒に弱いセリア及び/又はセリア・ジルコニア複合酸化物および/または固溶体についても、同様のことが言え、本発明のリン捕集材が優先的にリン化合物と反応するため、パラジウム同様、セリア及び/又はセリア・ジルコニア複合酸化物および/または固溶体も触媒層深さ方向のどの位置にあっても特に問題とならない。
本発明においては、上記の様にパラジウムやセリア及び/又はセリア・ジルコニア複合酸化物および/または固溶体の位置は限定されないが、以下に一例として、パラジウムを上層においた場合の触媒の仕様を示す。
【0042】
(1)アルミナ系複合酸化物
本発明においては、貴金属などを担持するために使用される無機酸化物の一つであるアルミナは、さらに、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)などを1種又は複数加えて複合酸化物とし、耐熱性を上げることが好ましい。
【0043】
(2)セリア−ジルコニア(系)複合酸化物および/または固溶体
本発明において、セリア−ジルコニア複合酸化物および/または固溶体は、OSC材としての機能及び母材としての機能を有する。
OSC材としては、セリア(酸化セリウム)が主体となるが、OSC機能を維持したまま耐熱性を向上させるため、ジルコニア(酸化ジルコニウム)の添加が好ましい。一方、母材としてはジルコニアが主体となるが、担持される貴金属の酸化−還元作用を促進させるため、セリアの添加が好ましい。
セリア−ジルコニア固溶体において、セリアとジルコニアの混合比率には特に制限はないが、OSC材としての機能と母材としての機能を両立させるうえで、セリアの比率で10〜80重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。セリアの比率が10重量%より少ないとOSCとしての機能に支障をきたし、80重量%より多いと母材としての機能に支障をきたすことがある。
セリア−ジルコニア複合酸化物および/または固溶体は、さらに耐熱性を増すために、さらに酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化ネオジム、酸化プラセオジム等の希土類酸化物を加えてもよい。なお、以下、セリア−ジルコニア複合酸化物および/または固溶体に上記希土類酸化物を含む場合を、セリア−ジルコニア系複合酸化物および/または固溶体という。
【0044】
(3)パラジウム(Pd)
本発明において、貴金属元素のパラジウムは、活性金属として機能する。
その際に使用する出発塩としては硝酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)酸、硫酸パラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩等が好ましい。特に、焼成後に塩素、硫化物等の残渣が残らない硝酸パラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩等の使用が好ましい。
無機酸化物へのパラジウムの担持量は、0.1〜10.0g/Lが好ましく、0.5〜6.0g/Lがより好ましい。パラジウムの量が0.1g/Lより少ないとHC、COなどの浄化性能が急激に低下し、10.0g/Lより多いと浄化性能には問題はないが、価格の面で好ましくない。
【0045】
(4)ロジウム(Rh)
本発明において、貴金属元素のロジウムも、活性金属として機能する。
その際に使用する出発塩としては塩化ロジウム(III)、硝酸ロジウム(III)、酢酸ロジウム(III)、硫酸ロジウム(III)等が好ましい。特に、焼成後に塩素、硫化物等の残渣の残らない硝酸ロジウム(III)、酢酸ロジウム(III)等の使用が好ましい。
ロジウムの担持量は、0.05〜2.0g/Lが好ましく、0.1〜1.5g/Lがより好ましい。ロジウムの量が0.05g/Lより少ないと脱硝性能が急激に低下し、2.0g/Lより多いと脱硝性能には問題はないが、価格の面で好ましくない。
【0046】
(5)白金(Pt)
本発明においては、その他、活性金属として、貴金属元素の白金も使用できる。
その際に使用する出発塩としては、塩化白金(IV)酸、塩化第一白金(II)酸、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、テトラアンミン白金(II)硫酸塩、水酸化白金酸のエタノールアミン溶液、硝酸白金等が好ましい。特に、焼成後に塩素、硫化物等の残渣が残らないテトラアンミン白金(II)硝酸塩、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、水酸化白金酸のエタノールアミン溶液、硝酸白金等の使用が好ましい。
白金の担持量は、0.05〜5.0g/Lが好ましく、0.1〜3.0g/Lがより好ましい。白金の量が0.05g/Lより少ないとHC、COなどの浄化性能が急激に低下し、5.0g/Lより多いと浄化性能には問題はないが、価格の面で好ましくない。
【0047】
(6)バインダー
本発明において、母材粒子や助触媒粒子に付着して各々の粒子を結合するために、アルミナゾルなどのバインダーを使用することができる。
アルミナゾルは、数十nm〜数μmの微粒子から成り立っており、母材粒子や助触媒粒子と付着、結合する。バインダーの量は、特に制限はなく、耐久後もハニカム構造体から触媒が剥離しなければ少量でも特に問題はない。
バインダーとしては、アルミナゾルの他、シリカゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル等の種々のゾルを挙げることができる。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩も使用できる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も使用できる。
【0048】
本発明の排気ガス浄化触媒は、上記触媒成分をハニカム状の担体表面に被覆した一体型構造型触媒として用いることが好ましい。ハニカム状の一体構造型担体のサイズは、特に制限されないが、例えば数ミリから数センチの直径(長さ)のものが使用できる。
【0049】
(7)ハニカム構造担体
ハニカム構造担体とは、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックや、ステンレス等の金属からなるもので、その構造は構造担体中の全体に渡って伸びている平行な多数の微細な気体流路を有することから一体構造型担体ともいわれる。この材質としてはコージェライトが耐久性、コストの理由で好ましい。
また、ハニカム構造担体の開口部の孔数は、処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失あるいは除去効率などを考慮して適正な範囲とされる。そのセル密度は100〜900セル/inch(15.5〜139.5セル/cm)であることが好ましく、300〜600セル/inch(46.5〜93セル/cm)であることがより好ましい。セル密度が900セル/inch(139.5セル/cm)を超えると、付着したPMで目詰まりが発生しやすく、100セル/inch(15.5セル/cm)未満では幾何学的表面積が小さくなるため、触媒の有効使用率が低下してしまう。なお、セル密度とは、ハニカム構造担体を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことである。
また、ハニカム構造担体には、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ、かつ気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られている。フロースルー型構造体であれば空気抵抗が少なく、排気ガスの圧力損失が少ない。また、ウォールフロー型構造体であれば、排気ガス中に含まれる粒子状成分を濾し取ることが可能である。本発明の排気ガス浄化触媒は、そのどちらの構造体にも用いる事ができる。
【0050】
(8)層構成
本発明の自動車排気ガス浄化触媒は、前記触媒組成物をハニカム構造担体に一層以上被覆したものである。層構成は、一層でもよいが、二層以上として排気ガス浄化性能を高めることが好ましい。
本発明においては、触媒層が一層(単層)の場合、リン捕集材が排気ガスと接する表面側に含まれるようにするのが好ましい。触媒層が複層の場合、リン捕集材が排気ガスと接する層に含まれるようにするのが好ましい。
また、パラジウム(Pd)またはセリア−ジルコニア複合酸化物および/または固溶体が、触媒層深さ方向の任意の位置に存在することができる。
本発明では、この様に第2族元素及び/又は希土類元素が高BET比表面積の無機酸化物から成るリン捕集材が最上層の触媒層中に存在することを基本概念とし、車に搭載されるエンジンの仕様・排気量、車体内に許容される触媒容量、触媒の使用個数、許容される貴金属の種類・量・比率に応じて、触媒の層の構成、貴金属の各層への配置、助触媒(OSC、希土類、遷移金属等を含む化合物)の種類・量及び各層への配置などが決められる。
なお、最上層に含まれるリン捕集材の総被覆量は、一体構造型担体の単位体積あたり20〜80g/Lであることが好ましく、30〜60g/Lであることがより好ましい。20g/Lより少ないとリン化合物を捕集するための絶対量が乏しく、好ましくない。一方、80g/Lを上回ると最上層における貴金属による有害成分の浄化性能が悪化するので、好ましくない。
【0051】
本発明において、触媒組成物の総被覆量は100〜350g/Lが好ましく、150〜300g/Lがより好ましい。100g/Lより少ないと母材の量の減少に伴い担持されるRh等の貴金属の分散性が悪化する上、OSC材の量も減少するため、有害成分(HC、CO、NOx)の浄化性能が低下するので好ましくなく、350g/Lより多いとセル内が狭くなることで圧損が増大し、エンジンに対する負荷が高くなるので、好ましくない。
【0052】
3.リン捕集材の調製法
(1)リン捕集材の調製方法
本発明では、リンとの反応性がある第2族元素及び/又は希土類元素を選択し、これが高BET比表面積の無機酸化物に担持した後、リン捕集材の塩基点量が0.7mmol/g以上となるようにする。
本発明の排気ガス浄化用リン捕集材を調製するため、第2族元素及び/又は希土類元素をアルミナに担持するには、例えば、以下のような方法によることができる。
(プロセス)
出発原料である第2族元素及び/又は希土類元素を含有する原料を特定量用意し、純水中に加えて溶解させる。出発原料は酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、アンモニウム塩、など、水溶性又は懸濁性であれば、水溶液又は懸濁液の性質は酸性、中性、アルカリ性のいずれであっても問題ない。無機酸化物にできるだけ均一に高分散させるため、溶解度の高い原料の使用が望ましい。
第2族元素及び/又は希土類元素を含浸した後、乾燥、焼成を行う事により触媒組成物が担持されたリン捕集材が得られる。なお、乾燥温度は、70〜200℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜700℃が好ましく、400〜600℃が好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
【0053】
(2)一体構造型触媒の調製方法
本発明の自動車排気ガス浄化触媒を調製するには、前記触媒組成物と、必要に応じてバインダーなどを水系媒体と混合してスラリー状混合物にしてから、一体構造型担体へ塗工して、乾燥、焼成する。
すなわち、まず、触媒組成物と水系媒体を所定の比率で混合してスラリー状混合物を得る。本発明においては、水系媒体は、スラリー中で触媒組成物が均一に分散できる量を用いれば良い。
この際、必要に応じてpH調整のための酸、塩基を配合したり、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤、分散用樹脂等を配合する事ができる。スラリーの混合方法としては、一般的な粉砕混合が適用可能である。
【0054】
次に、一体構造型担体へスラリー状混合物を塗工する。塗工方法は、特に限定されないが、ウォッシュコート法が好ましい。
塗工した後、乾燥、焼成を行う事により触媒組成物が担持された一体構造型触媒が得られる。なお、乾燥温度は、70〜200℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜700℃が好ましく、400〜600℃が好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
【0055】
4.排気ガス浄化用触媒装置
本発明においては、上記自動車排気ガス浄化触媒をエンジンからの排気系の後流に配置して触媒装置を構成する。
エンジンからの排気系における触媒の位置および個数は、排気ガスの規制に応じて適宜設計できる。排気ガスの規制が厳しくない車種では、1個使いが可能であるし、排ガス規制の厳しい車種では2個使いとし、本発明の触媒は排気系における直下位置に配置することができる。
その際、触媒の層構成はCO、HC、NOxの排出濃度、稼動システムに応じて決定でき、特に、低価格で、かつ、始動時での脱硝性能が求められる場合には、従来、リンなどの被毒物質に対する耐久性に乏しいと言われ、直下触媒として触媒層の上層内に担持することができなかったパラジウムを本発明のリン捕集材に近接させることにより、リン被毒に対応して優れた脱硝性能を発揮できるようになった
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例、比較例を示すが、本発明は、この実施例に限定して解釈されるものではない。なお、塩基点量、エンジン耐久・走行試験、BET比表面積、粒子径、細孔径の測定は、次のようにして行った。
【0057】
(1)塩基点量の測定:
下記実施例、比較例で得られた各サンプルから50mgを秤量し、日本ベル製BELCAT−A−SC(CO−TPD:CO−Temperature Program Desorption)のサンプル管に入れた。
サンプルはCOの吸着・脱離(Adsorption−Desorption)にて評価した。まず、サンプルはHe気流中、600℃で1時間、サンプル表面を清浄処理した後、80℃まで降温し、CO気流中、80℃で30分間、COを吸着させた。その後、Heを流して管中のCOをパージした後、10℃/分の速度で630℃まで昇温し、脱離したCOの総量を測定した。
【0058】
(2)触媒のエンジン耐久・走行試験
下記実施例、比較例で得られた触媒を1個ずつコンバーターに格納後、ガソリンエンジンの排気口の後流にコンバーターを装着した。
その後、Pが微量含まれたオイルをガソリンと混合し、定常、減速、加速のサイクルを50時間繰り返した。その間の触媒床の最高到達温度は、定常時の1000℃だった。なお、本耐久におけるPの総通過量はP換算で約18gであった。
その後、自動車の排気口にエンジン耐久済みの触媒付きコンバーターを装着して、シャーシ台上にてLA−4モードの走行を実施した。そして、Bag−1〜Bag−3における個々のNOxの排出量を測定した。
【0059】
(3)BET比表面積
粉末サンプルのBET比表面積は、Micromeritcs社製のTristar3000にて吸着分子としてNを使用し、BET法により算出した。
【0060】
(4)粒度分布測定
粉末サンプルの粒度分布は、SHIMADZU社製のナノ粒子径分布測定装置SALD−7100を用いて、レーザー散乱法により測定し、d50(50%粒度:フルイ下の粒子量の体積基準の積算値が全体の50%に達した時の粒子の直径、以下同じ)を測定し、メディアン径(d50)を平均粒子径とした。
【0061】
(5)細孔分布測定
各種粉末サンプルを乾燥後、Thermo Fisher Scientific社製PASCAL140−440を用いて、Hg圧入法により、粉末サンプルの平均細孔径および細孔容積(細孔分布)を測定した。なお、平均細孔径としてモード径(直径)を採用した。
【0062】
(6)XRD測定
リン被毒後の触媒の一部を切り出した後、ハニカムの溝に沿って触媒層の部分だけを掻き出して、測定用の粉末サンプルとした。
PANalytical社製のX線回折測定装置X‘Pert PRO MPDを用いて、上記粉末サンプルの回折パターンを測定し、ICSDカードデータと照合することで、成分の同定を行なった。
【0063】
(実施例1)
酢酸バリウムを酸化物換算で10g秤量後、純水で希釈して合計90gにした。γ−Al A(平均粒子径:24μm、BET比表面積:280m/g、平均細孔径:12nm)を90g秤量し、先の酢酸バリウムを含む溶液を含浸担持した後に500℃、1時間電気炉焼成することで、実施例1のリン捕集材となる10重量%BaO/高BET Al aを調製した。
【0064】
得られた10重量%BaO/Al aを50mg秤量し、CO−TPDのサンプル管に入れた。サンプルはCO−TPDにより、COの脱離量が塩基点量として測定され、その結果は図2に示した。
【0065】
(実施例2)
酢酸バリウムの代わりに硝酸プラセオジム(III)(酸化物換算で10g)を用いた以外は実施例1と同様の調製方法にて、実施例2のリン捕集材となる10重量%Pr10/高BET Al bを調製した。
その後、得られたリン捕集材粉末を用いたCO−TPDにより脱離するCOの量が測定され、その結果は図2に示した。
【0066】
(比較例1)
γ−Al B(平均粒子径:26μm、BET比表面積:120m/g、平均細孔径:27nm)を比較例1のリン捕集材とした。
その後、得られたリン捕集材粉末を用いたCO−TPDにより脱離するCOの量が測定され、その結果は図2に示した。
【0067】
(比較例2)
γ−Al Aの代わりに比較例1のγ−Al Bを用いた以外は実施例1と同様の調製方法にて、比較例2のリン捕集材となる10重量%BaO/Al cを調製した。
その後、得られたリン捕集材粉末を用いたCO−TPDにより脱離するCOの量が測定され、その結果は図2に示した。
【0068】
(比較例3)
実施例1で使用された高BET γ−Al Aを、比較例3のリン捕集材とした。
その後、得られたリン捕集材粉末を用いたCO−TPDにより脱離するCOの量が測定され、その結果は図2に示した。
【0069】
「評価結果」
上記のCO−TPDによる塩基点量の測定結果を示す図2から次のことがわかる。本発明の高BET比表面積(280m/g)を有するγ−アルミナ AにBa(実施例1)やPr(実施例2)を高分散させたリン捕集材は、通常のBET比表面積(120m/g)を有するγ−アルミナ Bに比べ、塩基点量が多かった。
また、高BET比表面積を有するγ−アルミナ Aを用いたリン捕集材(比較例3)は、通常のBET比表面積を有するγ−アルミナ BにBaを分散させたリン捕集材(比較例2)を上回る塩基点量を示した。この結果は、無機酸化物のBET比表面積が高いほど、塩基点量が多く、その量はBaによる塩基点量の加算効果を上回っていることを示唆している。
したがって、以下の実施例に示すように、実施例1,2の粉末は高性能なリン捕集材として使用できる。
【0070】
(実施例3)
まず、以下の要領で、触媒組成物のRh担持アルミナ、Rh担持セリア−ジルコニア系複合酸化物、Pd担持アルミナ系複合酸化物を調製し、引き続き、リン捕集材と共にハニカム担体に触媒層を形成した。
【0071】
[Rh/アルミナ]
硝酸Rh溶液をメタル換算で2g秤量後、純水で希釈し、合計200gにした。アルミナ C(平均粒子径:23μm、BET比表面積:140m/g、平均細孔径:28nm)を398g秤量し、先の硝酸Rh水溶液を含浸担持した。その後、500℃、1時間電気炉で焼成することにより、0.5重量%Rh/アルミナ dを調製した。
[Rh/セリア−ジルコニア系複合酸化物]
硝酸Rh溶液をメタル換算で0.02g秤量後、純水で希釈し、合計100gにした。セリア・ジルコニア系複合酸化物 D(セリア:40重量%、ジルコニア:55重量%、酸化ランタン:5重量%、平均粒子径:6.5μm、BET比表面積:57m/g、平均細孔径:44nm)を199.98g秤量し、先の硝酸Rh水溶液を含浸担持した。その後、500℃、1時間電気炉で焼成することにより、0.01重量%Rh/セリア−ジルコニア系複合酸化物 eを調製した。
【0072】
[Rh層(下層)の調製]
0.5重量%Rh/アルミナ dを200g、0.01重量%Rh/セリア−ジルコニア系複合酸化物 eを100g各々秤量後、ポットミルに加え、さらに純水400mlを加えて平均粒子径が5μm前後の粒度になるまでミリングした。こうして調製したスラリーを、ウォッシュコート法で1.0L(118.4mm径×91mm長)、600セル/inch(93セル/cm)、3ミル(0.1mm)のコーディエライト担体に焼成後の重量で150g/Lコートし、150℃で乾燥後、500℃、1時間焼成して下層のRh担持層を調製した。
[Pd/アルミナ系複合酸化物]
硝酸Pd溶液をメタル換算で14g秤量後、純水で希釈し、合計100gにした。アルミナ系複合酸化物 E(酸化ランタン:2重量%、アルミナ:98重量%、平均粒子径:26μm、BET比表面積:90m/g、平均細孔径:27nm)を186g秤量し、先の硝酸Pd水溶液を含浸担持した。その後、500℃、1時間電気炉で焼成することにより、7重量%Pd/アルミナ系複合酸化物 fを調製した。
【0073】
[Pd層(上層)の調製]
7重量%Pd/アルミナ系複合酸化物 fを100gと実施例1の10重量%BaO/高BET Al a(リン捕集材)を80g、各々秤量後、ポットミルに加え、さらに純水200mlを加えて平均粒子径が5μm前後の粒度になるまでミリングした。こうして調製したスラリーを、ウォッシュコート法で先のRh担持触媒の上にさらに焼成後の重量で90g/Lコートし、150℃で乾燥後、500℃、1時間焼成して、上層のPd担持層を調製した。
【0074】
以上の製法により、実施例3のPd−Rh触媒を調製した。
その後、得られた触媒は前記の方法でエンジン耐久を実施し、次に、自動車の排気口にエンジン耐久済みの触媒付きコンバーターを装着してシャーシ台上にてLA−4モードの走行を実施した。Bag−1〜Bag−3のCold領域及び走行モードにおけるNOxの排出量を測定し、結果は図3にまとめた。
評価後の触媒の一部を切り出した後、ハニカムの溝に沿って触媒層の部分だけを掻きとって粉末サンプルとした。サンプルはXRDにより回折パターンが測定され、その結果は図4に示した。
【0075】
(実施例4)
リン捕集材として、10重量%BaO/高BET Al aの代わりに実施例2の10重量%Pr10/高BET Al bを用いた以外は実施例3と同様にして、実施例4のPd−Rh触媒を調製した。
その後、得られた触媒は前記の方法でエンジン耐久を実施し、自動車の排気口にエンジン耐久済みの触媒付きコンバーターを装着してシャーシ台上にてLA−4モードの走行を実施した。Bag−1〜Bag−3のCold領域及び走行モードにおけるNOxの排出量を測定し、結果は図3にまとめた。
【0076】
(比較例4)
リン捕集材として、10重量%BaO/Al aの代わりに比較例1のγ−Al Bを用いた以外は実施例3と同様にして、比較例4のPd−Rh触媒を調製した。
その後、得られた触媒は前記の方法でエンジン耐久を実施し、自動車の排気口にエンジン耐久済みの触媒付きコンバーターを装着してシャーシ台上にてLA−4モードの走行を実施した。Bag−1〜Bag−3のCold領域及び走行モードにおけるNOxの排出量を測定し、結果は図3にまとめた。
評価後の触媒の一部を切り出した後、ハニカムの溝に沿って触媒層の部分だけを掻きとって粉末サンプルとした。サンプルはXRDにより回折パターンが測定され、その結果は図4に示した。
【0077】
(比較例5)
リン捕集材として、10重量%BaO/Al aの代わりに比較例2の10重量%BaO/Al cを用いた以外は実施例3と同様にして、比較例5のPd−Rh触媒を調製した。
その後、得られた触媒は前記の方法でエンジン耐久を実施し、次に、自動車の排気口にエンジン耐久済みの触媒付きコンバーターを装着してシャーシ台上にてLA−4モードの走行を実施した。Bag−1〜Bag−3のCold領域及び走行モードにおけるNOxの排出量を測定し、結果は図3にまとめた。
【0078】
(比較例6)
リン捕集材として、10重量%BaO/Al aの代わりに比較例3の高BET γ−Al Aを用いた以外は実施例3と同様にして、比較例6のPd−Rh触媒を調製した。
その後、得られた触媒は前記の方法でエンジン耐久を実施し、自動車の排気口にエンジン耐久済みの触媒付きコンバーターを装着してシャーシ台上にてLA−4モードの走行を実施した。Bag−1〜Bag−3のCold領域及び走行モードにおけるNOxの排出量を測定し、結果は図3にまとめた。
【0079】
「評価結果」
上記LA−4モードのエンジン評価結果を示す図3から次のことがわかる。高BET比表面積(280m/g)を有するγ−アルミナ AにBa(実施例1)やPr(実施例2)を高分散担持させた本発明のリン捕集材を用いた自動車排気ガス浄化触媒(各々、実施例3および実施例4)は、通常のBET比表面積(120m/g)を有するγ−アルミナ B(比較例3)を用いた自動車排気ガス浄化触媒(比較例4)に比べ、優れた脱硝性能を発揮した。また、この高BET比表面積を有するγ−アルミナをリン捕集材とする自動車排気ガス浄化触媒(比較例6)は、通常のBET比表面積を有するγ−アルミナ BにBaを分散担持させた従来の自動車排気ガス浄化触媒(比較例5)と同等の脱硝性能を発揮した。
この結果は、本発明のリン捕集材がリン化合物と優先的に反応するため、パラジウムが排気ガスと接する上層にあったとしても、リン被毒後も優れた脱硝性能を発揮していることを示唆している。
【0080】
また、リン被毒後の触媒のXRD回折パターンをまとめた図4から次のことがわかる。リン被毒後も優れた脱硝性能を発揮した高BET比表面積(280m/g)のアルミナにBaを担持した本発明のリン捕集材(実施例1)を含有する触媒(実施例3)では、セリウムとリンの化合物であるCePOが検知されなかったのに対し、リン被毒後の脱硝性能が劣った通常のBET比表面積(120m/g)のアルミナを従来のリン捕集材(比較例3)として含有する触媒(比較例4)では、CePOが明確に検知された。
この結果は、この結果は、本発明のリン捕集材がリン化合物と優先的に反応するため、リン被毒後もセリア−ジルコニア複合酸化物はリン化合物とは反応せずに優れた脱硝性能を発揮していることを示唆している。
【0081】
また、各々のリン捕集材の塩基点量と各々のリン捕集材を用いた自動車排気ガス浄化触媒の脱硝性能の関係を図5にまとめた。図5から明らかなように、塩基点量と脱硝性能は明確な負の相関が得られた。
この結果は、リン捕集材の塩基点量が当該リン捕集材を用いた自動車排気ガス浄化触媒のリン被毒後の脱硝性能と密接な関係にあることを示しており、リン捕集材の塩基点量をCO−TPDにより測定して、塩基点量が特定値以上であるか否かを見ることにより、自動車触媒にした時のリン被毒後の脱硝性能の優劣を容易に予想することができる。
そのため、リン捕集材の一つ一つをすべて触媒化し、エンジンによりリン被毒処理及びシャーシによるエンジン評価をする手間と時間を省くことができ、リン捕集材の開発を促進することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のリン捕集材は、ガソリンエンジンなどの内燃機関から排出されるリン化合物が夾雑する排気ガスの中で、特に窒素酸化物(NOx)の浄化性能に優れるので、自動車排気ガス浄化触媒として使用できる。ただし、本発明は自動車用途に限定されるものではなく、ボイラーのような固定源燃焼装置など、リン化合物が夾雑する排気ガス中での浄化技術にも広く適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5