特許第6371569号(P6371569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371569
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】収納室構造及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
   E04H1/02
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-80578(P2014-80578)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-200140(P2015-200140A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】早川 明日実
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−082863(JP,A)
【文献】 特開平07−011783(JP,A)
【文献】 特開平11−200496(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3179897(JP,U)
【文献】 特開2003−013617(JP,A)
【文献】 実開昭56−001953(JP,U)
【文献】 米国特許第05375380(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の廊下に隣接する収納室の壁の一部を構成し、前記廊下との間を区画する間仕切り壁と、
前記間仕切り壁において水平方向に沿った壁幅方向の一部に直接又は間接的に設けられた鏡部と、
前記間仕切り壁の壁幅方向の一部において前記鏡部の上方側又は側方側に設けられ、前記廊下から採光可能な採光窓と、
前記間仕切り壁における壁幅方向の他部に設けられた採光不能な壁部と、
前記壁部において少なくとも前記採光窓に隣接した部分が露出した状態で当該壁部の前に配置された収納棚と、
を備え、
前記間仕切り壁の壁幅方向及び上下方向で前記採光窓と前記収納棚とが重ならないように設定されている収納室構造。
【請求項2】
建物内の廊下に隣接する収納室の壁の一部を構成し、前記廊下との間を区画する間仕切り壁と、
前記間仕切り壁において水平方向に沿った壁幅方向の一部に設けられ、前記廊下から採光可能な採光窓と、
前記間仕切り壁における壁幅方向の他部に設けられた採光不能な壁部と、
前記壁部において少なくとも前記採光窓に隣接した部分が露出した状態で当該壁部の前に配置された収納棚と、
前記間仕切り壁以外の区画壁に直接又は間接的に設けられ、前記採光窓を通じて採光可能な鏡部と、
を備え、
前記間仕切り壁の壁幅方向及び上下方向で前記採光窓と前記収納棚とが重ならないように設定されている収納室構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の収納室構造が適用された建物。
【請求項4】
前記収納室に隣接して居室が設けられている請求項3に記載の建物。
【請求項5】
前記居室と前記収納室との間に出入可能な出入部が設けられている請求項4に記載の建物。
【請求項6】
前記廊下が吹き抜け部と繋がっている請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の建物。
【請求項7】
前記廊下が建物の外部に面して設けられている請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納室構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、洗面室に設けられた洗面台の背面にある壁の上部において、壁幅全体に亘って窓が設けられた技術が開示されている。これにより、洗面室内では光を十分に取り入れることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−172936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この先行技術では、壁幅全体に亘って窓が設けられているため、一部にクローゼットなどが設けられた収納室の場合、当該収納室内へ光が取り込まれ過ぎてしまうと、衣類等の褪色等の問題が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、同じ空間内において、化粧スペースでは光を取り入れることができ、収納スペースでは光が直接当らないようにすることができる収納室構造及び建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の収納室構造は、建物内の廊下に隣接する収納室の壁の一部を構成し、前記廊下との間を区画する間仕切り壁と、前記間仕切り壁において水平方向に沿った壁幅方向の一部に直接又は間接的に設けられた鏡部と、前記間仕切り壁の壁幅方向の一部において前記鏡部の上方側又は側方側に設けられ、前記廊下から採光可能な採光窓と、前記間仕切り壁における壁幅方向の他部に設けられた採光不能な壁部と、前記壁部において少なくとも前記採光窓に隣接した部分が露出した状態で当該壁部の前に配置された収納棚と、を備え、前記間仕切り壁の壁幅方向及び上下方向で前記採光窓と前記収納棚とが重ならないように設定されている。
【0007】
請求項1記載の本発明の収納室構造では、建物内の廊下に収納室が隣接している。この収納室の壁の一部を構成し当該廊下との間を区画する間仕切り壁において、水平方向に沿った壁幅方向の一部に鏡部が直接又は間接的に設けられている。
【0008】
ここで、間仕切り壁の壁幅方向の一部における鏡部の上方側又は側方側には、廊下からの採光が可能な採光窓が設けられている。さらに、間仕切り壁における壁幅方向の他部には、採光不能な壁部が設けられている。そして、当該壁部において少なくとも採光窓に隣接した部分が露出した状態で当該壁部の前に収納棚が配置されている。
【0009】
つまり、本発明では、間仕切り壁において壁幅方向の一部に採光窓が設けられ、壁幅方向の他部には採光窓が設けられていない。このため、収納室において、部分的に採光が可能となる。特に鏡部の上方側又は側方側において採光窓から採光されるため、化粧スペースでは十分に光を取り入れることができ、メイクなどを行う際に明るくて便利である。また、当該採光窓は廊下から採光されるため、建物の外壁に形成された採光窓から直接収納室内へ太陽光が入射される(直接光)場合と比較して、日差しが柔らかく、収納室内の壁や床などの褪色を抑制することができる。
【0010】
さらに、壁部において少なくとも採光窓に隣接した部分が露出した状態で当該壁部の前に収納棚が配置されるようにすることで、当該収納棚を採光窓から離すことができ、収納棚に光が直接当らないようにすることができる。また、本発明では、間仕切り壁の壁幅方向及び上下方向で採光窓と収納棚とが重ならないように設定されている。
【0011】
なお、間仕切り壁に鏡部が直接設けられているとは、当該間仕切り壁に鏡部が直接取付けられている場合を指し、また、間仕切り壁に鏡部が間接的に設けられているとは、当該間仕切り壁の前に洗面台や化粧台などが設けられている場合を指している。
【0012】
請求項2記載の本発明の収納室構造は、建物内の廊下に隣接する収納室の壁の一部を構成し、前記廊下との間を区画する間仕切り壁と、前記間仕切り壁において水平方向に沿った壁幅方向の一部に設けられ、前記廊下から採光可能な採光窓と、前記間仕切り壁における壁幅方向の他部に設けられた採光不能な壁部と、前記壁部において少なくとも前記採光窓に隣接した部分が露出した状態で当該壁部の前に配置された収納棚と、前記間仕切り壁以外の区画壁に直接又は間接的に設けられ、前記採光窓を通じて採光可能な鏡部と、を備え、前記間仕切り壁の壁幅方向及び上下方向で前記採光窓と前記収納棚とが重ならないように設定されている。
【0013】
請求項2記載の本発明の収納室構造では、建物内の廊下に収納室が隣接している。この収納室の壁の一部を構成し当該廊下との間を区画する間仕切り壁において、水平方向に沿った壁幅方向の一部には、廊下からの採光が可能な採光窓が設けられている。また、間仕切り壁における壁幅方向の他部には、採光不能な壁部が設けられている。
【0014】
そして、当該壁部において少なくとも採光窓に隣接した部分が露出した状態で当該壁部の前に収納棚が配置されている。また、間仕切り壁以外の区画壁には、直接又は間接的に鏡部が設けられており、当該鏡部は採光窓を通じて採光が可能とされている。
【0015】
つまり、本発明では、間仕切り壁において壁幅方向の一部に採光窓が設けられ、壁幅方向の他部には採光窓が設けられていない。このため、収納室において、部分的に採光が可能となる。また、採光窓は廊下から採光されるため、建物の外壁に形成された採光窓から直接収納室内へ太陽光が入射される(直接光)場合と比較して、日差しが柔らかく、収納室内の壁や床などの褪色を抑制することができる。
【0016】
さらに、壁部において少なくとも採光窓に隣接した部分が露出した状態で当該壁部の前に収納棚が配置されるようにすることで、当該収納棚を採光窓から離すことができ、収納棚に光が直接当らないようにすることができる。また、本発明では、間仕切り壁の壁幅方向及び上下方向で採光窓と収納棚とが重ならないように設定されている。
【0017】
なお、間仕切り壁以外の区画壁に鏡部が直接設けられているとは、当該区画壁に鏡部が直接取付けられている場合を指し、また、区画壁に鏡部が間接的に設けられているとは、当該区画壁の前に洗面台や化粧台などが設けられている場合を指している。
【0018】
請求項3記載の本発明の建物は、請求項1又は請求項2に記載の収納室構造が適用されている。
【0019】
例えば、収納室が建物の外部に面している場合、収納室において外壁側に採光窓を設けることによって、当該採光窓を通じて収納室内への採光が可能となる。しかし、収納室が建物の外部に面していない場合や防犯上の理由などにより収納室の外壁側に採光窓が設けられない場合、収納室への採光が問題となる。
【0020】
このため、請求項3記載の本発明の建物では、建物の外部に面していない収納室において、請求項1又は請求項2に記載の収納室構造が適用されることによって、当該収納室内への採光が可能となる。
【0021】
請求項4記載の本発明の建物は、請求項3に記載の建物において、前記収納室に隣接して居室が設けられている。
【0022】
請求項4記載の本発明の建物では、収納室に隣接して居室が設けられることによって、当該収納室をクローゼットとして利用することができ、設計プランの自由度が広がる。
【0023】
請求項5記載の本発明の建物は、請求項4に記載の建物において、前記居室と前記収納室との間に出入可能な出入部が設けられている。
【0024】
請求項5記載の本発明の建物では、居室と収納室との間に出入可能な出入部が設けられることによって、居室と収納室との間で直接行き来できるようになるため便利である。
【0025】
請求項6記載の本発明の建物は、請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の建物において、前記廊下が吹き抜け部と繋がっている。なお、ここでは、廊下に天井部が存在する場合と廊下が吹き抜け部の一部を成し天井部が存在しない場合とが含まれる。
【0026】
請求項6記載の本発明の建物では、廊下が吹き抜け部と繋がっているため、さらに廊下が明るくなり、収納室内へ自然光を取り入れやすくすることができる。
【0027】
請求項7記載の本発明の建物は、請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の建物において、前記廊下が建物の外部に面して設けられている。
【0028】
請求項7記載の本発明の建物では、廊下が建物の外部に面して設けられているため、外壁に窓部を設けることで、廊下が明るくなり、収納室内へ自然光を取り入れやすくすることができる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載の本発明に係る収納室構造は、同じ空間内において、化粧スペースでは光を取り入れることができ、収納スペースでは光が直接当らないようにすることができる、という優れた効果を有する。
【0030】
請求項2記載の本発明に係る収納室構造は、採光窓との関係で鏡部の配置において自由度が広がる、という優れた効果を有する。
【0031】
請求項3記載の本発明に係る建物は、建物の外部に面していない内部空間において、採光が可能となる、という優れた効果を有する。
【0032】
請求項4記載の本発明に係る建物は、設計プランの自由度が広がる、という優れた効果を有する。
【0033】
請求項5記載の本発明に係る建物は、生活動線がスムーズになる、という優れた効果を有する。
【0034】
請求項6記載の本発明に係る建物は、廊下が明るくなり、収納室内へ自然光を取り入れやすくすることができる、という優れた効果を有する。
【0035】
請求項7記載の本発明に係る建物は、外壁に窓部を設けることで廊下が明るくなり、収納室内へ自然光を取り入れやすくすることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本実施形態に係る住宅の一階部分の間取り図である。
図2】本実施形態に係る収納室構造が適用された収納室の正面図である。
図3】本実施形態に係る住宅の作用を説明するため収納室及び吹き抜け部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態に係る収納室構造が適用された建物について説明する。
【0038】
<建物の構成>
図1には、本実施形態に係る建物としての住宅10の1階部分12における間取り図が示されている。なお、図1に示した間取りは一例を示したものに過ぎず任意に変更可能とされる。
【0039】
図1に示されるように、この住宅10の1階部分12は、平面視で略矩形状を成している。但し、図面左側上部における外壁14Aの位置は、図面左側下部における外壁14Bの位置よりも外側(左側)に配置され、その分、居住空間16が広くなっている。
【0040】
図面下部側が住宅10の正面側となっているが、住宅10の正面右側は非居住空間17となっている。非居住空間17は外壁14によって居住空間16と区画されている。非居住空間17における左側はインナガレージ18とされ、インナガレージ18の奥方にはテラス20が設けられている。
【0041】
また、非居住空間17における右側には、玄関アプローチ部22が設けられている。玄関アプローチ部22には、居住空間16を区画する外壁14Cよりも壁厚が厚い外壁24が当該外壁14の端部から延出された状態で立設されており、玄関アプローチ部22を住宅10の外から目隠ししている。
【0042】
玄関アプローチ部22の奥方は居住空間16とされており、玄関ドア26を隔てて玄関28が設けられている。この玄関28は住宅10の外に面して住宅10の奥方まで繋がっており、外壁14には勝手口30が設けられている。また、玄関28の奥壁は外壁14Dとなっており、当該外壁14Dには窓部32が設けられている。この窓部32を通じて玄関28において通気が確保されると共に採光可能とされている。
【0043】
玄関28の奥行き方向の中央部には、一部が玄関28側へ張り出すようにして玄関ホール34が設けられている。この玄関ホール34の奥方、つまり、居住空間16の中央部には、テラス20に隣接して上階と繋がる吹き抜け部36が設けられており、玄関ホール34は当該吹き抜け部36と一体になって開放感が得られるようになっている。また、吹き抜け部36はテラス20にも隣接しており、さらに開放感が得られるようになっている。なお、吹き抜け部36には図示しない天窓等の窓部が設けられており、吹き抜け部36内は採光可能とされている。
【0044】
玄関ホール34から見て吹き抜け部36の右側には、上階へ繋がる階段38が設けられている。また、玄関ホール34から見て吹き抜け部36及び階段38の奥方には、玄関28と略平行に廊下40が設けられている。廊下40は平面視で略逆L字状を成しており、住宅10の中央部に設けられている。
【0045】
玄関ホール34から吹き抜け部36を抜けて廊下40の右側へ向かった突き当たりには、引き戸42を隔ててトイレ44が設けられている。廊下40の突き当たりを右に曲がった突き当たりには、引き戸46を隔ててサニタリールーム48が設けられており、当該サニタリールーム48の奥方には、開閉扉50を隔てて浴室52が設けられている。この浴室52の奥方が前述した玄関28となっている。
【0046】
トイレ44、サニタリールーム48及び浴室52は、住宅10の外に面してそれぞれ配置されており、トイレ44、サニタリールーム48及び浴室52の一部を構成する外壁14Dには、窓部54、56、58がそれぞれ設けられている。この窓部54、56、58を通じて、トイレ44、サニタリールーム48及び浴室52においてそれぞれ通気が確保されると共に採光可能とされている。
【0047】
玄関ホール34から吹き抜け部36を抜けて廊下40の左側へ向かった突き当たりには、開閉扉60を隔てて居室62が設けられている。この居室62はインナガレージ18に隣接して配置され、外壁14の2面(外壁14B、14E)が住宅10の外に面する角部屋となっている。
【0048】
廊下40に面して居室62の奥方には、収納室64、居室66が順に設けられている。居室62には、収納室64と繋がる出入口68が設けられており、引き戸70によって居室66と収納室64とが区画されている。また、居室66には、収納室64と繋がる出入口72が設けられており、引き戸42によって居室66と収納室64とが区画されている。
【0049】
(収納室構造の構成)
ここで、本発明の実施の形態に係る収納室構造74が適用された収納室64について説明する。
【0050】
図2には、収納室64の外壁14側から廊下40側へ向かって見た正面図が示されている。この図に示されるように、収納室64の奥壁が廊下40(図1参照)との間を区画する間仕切り壁76となっている。間仕切り壁76の右側には、間仕切り壁76の上部が露出した状態で、間仕切り壁76の前にクローゼット等の収納棚78が配置されている。
【0051】
一方、間仕切り壁76の左側には、間仕切り壁76の前に鏡部としての鏡台80が配置されている。また、間仕切り壁76の左側上部には、鏡台80の上方に位置して矩形状の採光窓82が設けられている。つまり、この採光窓82は、間仕切り壁76における水平方向に沿った壁幅に沿って設けられているが、収納棚78の上方までは延びてはいない。換言すると、この採光窓82は、鉛直方向で鏡台80の上方にのみに設けられている。
【0052】
図3には、採光窓82を通るようにして収納室64及び吹き抜け部36を切断したときの部分断面図が示されている。この図に示されるように、採光窓82は、廊下40からの採光が可能となっている。なお、この採光窓82は、ガラス等のはめ殺しタイプでも良いし、ガラス等が開閉可能なタイプでも良い。さらにはガラス等は存在せず、単に廊下40と連通する開口穴が形成されたものであってもよい。
【0053】
なお、間仕切り壁76の廊下40側には、居室62側から順に収納部92、手洗い用の洗面台94が設けられている。洗面台94は洗面ボール94A及び棚部94Bを備えており、洗面ボール94Aは、収納部92に隣接して設けられ、間仕切り壁76の壁幅方向の略中央部に配置されている。一方、棚部94Bは、洗面ボール94Aに隣接して設けられており、棚部94Bの上方に採光窓82が設けられ、当該棚部94Bは採光窓82を遮らない高さとなっている。
【0054】
<建物の作用・効果>
次に、本実施形態に係る建物としての住宅10の作用・効果について説明する。
【0055】
図2及び図3に示されるように、収納室64において、廊下40との間を区画する間仕切り壁76の左側に鏡台80が配置され、当該鏡台80の上方側に採光窓82が設けられている。この採光窓82によって、廊下40からの採光が可能となる。
【0056】
これにより、収納室64内が明るくなり、特に鏡台80に向かった状態で顔の正面側から光が入射されるため、化粧スペースではメイクなどを行う際に大変便利である。また、当該採光窓82は廊下40から採光されるため、例えば、図示はしないが、住宅の外壁に形成された窓部から直接収納室内へ太陽光が入射される(直接光)場合と比較して、日差しが柔らかく、収納室64内の壁や床などの褪色を抑制することができる。
【0057】
さらに本実施形態では、この採光窓82は、収納棚78の上方までは延びてはいない。つまり、間仕切り壁76の右側には採光窓82が設けられていない。したがって、本実施形態では、間仕切り壁76において、壁幅方向の一部に採光窓82が設けられ採光可能となっているが、壁幅方向の他部には採光窓82が設けられていないため採光不能となっている。
【0058】
例えば、収納棚78としてクローゼットなどが設けられた場合、当該収納室64内に光が取り込まれ過ぎてしまうと、クローゼット内の衣類等が褪色等してしまう可能性があるが、本実施形態における収納室64によれば、収納棚78が設けられた収納スペースでは光が直接当らないようにすることができるため、衣類等の褪色を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、収納棚78の上方は間仕切り壁76が露出している。つまり、当該収納棚78の上面78Aと収納室64の天井部84との間には隙間Hが設けられている。間仕切り壁76における壁幅方向の他部側は採光不能の壁部76Aとなっているため、収納室64の天井部84の高さまで収納棚78を設けることも可能であるが、間仕切り壁76の壁幅方向の一方側には採光窓82が設けられているため、当該採光窓82を通じて収納棚78は採光される可能性もある。このため、本実施形態では、収納棚78の上面78Aと収納室64の天井部84との間に隙間Hが設けられるようにすることで、収納室64が採光されないようにすることができ、収納棚78の褪色を抑制することができる。
【0060】
なお、収納棚78の褪色を抑制することができればよいということからすると、壁部76Aにおいて少なくとも採光窓82に隣接した隣接部76A1が露出した状態で当該壁部76Aの前に収納棚78が配置されていればよく、これにより、当該収納棚78を採光窓82から離すことができ、収納棚78に光が直接当らないようにすることができる。したがって、収納棚78の幅が図2に示したものよりも狭い場合は、隣接部76A1は露出した状態で、収納棚78の上面78Aと収納室64の天井部84との間に隙間Hが設けられない場合もあり得る。
【0061】
ところで、収納室64が住宅10の外に面している場合、図示はしないが、収納室64の外壁14側に採光窓を設けることによって、当該採光窓を通じて収納室64内への採光が可能となる。しかし、収納室64が住宅10の外に面していない場合や防犯上の理由などにより収納室64の外壁14側に採光窓が設けられない場合、当該収納室64への採光が問題となる。
【0062】
このため、本実施形態では、収納室64において、廊下40との間を区画する間仕切り壁76の一部に採光窓82を設けることによって、廊下40からの採光を可能にしている。これにより、当該収納室64は住宅10の外に面していない場所に配置することも可能になり、住宅10における設計プランをさらに広げることができる。
【0063】
例えば、図1に示されるように、収納室64に隣接して居室62が設けられることによって、当該収納室64をクローゼットとして利用することができ、上述したように、収納室64内に収納棚78を配置することができる。
【0064】
そして、本実施形態では、さらに居室62、66と収納室64との間に出入口68、72がそれぞれ設けられている。これにより、居室62と収納室64、居室66と収納室64との間で直接行き来できるため便利である。すなわち、生活動線がスムーズになる。
【0065】
また、本実施形態では、図3に示されるように、廊下40は吹き抜け部36と繋がっているため、廊下40が明るくなり、その分、収納室64内へ自然光を取り入れやすくなる。なお、ここでは、廊下40に天井部86が存在しているが、廊下40が吹き抜け部36の一部を成し当該天井部86が存在しない場合であっても勿論良い。廊下40に天井部86が設けられていない場合、廊下40はさらに明るくなるため、収納室64内へ自然光をさらに取り入れやすくすることができる。
【0066】
(その他の実施形態)
なお、以下の変形例については図示を省略している。
【0067】
(1)本実施形態では、図1及び図2に示されるように、収納室64と廊下40との間を区画する間仕切り壁76の前に鏡台80が配置されているが、鏡台80に代えて洗面台が配置されてもよい。また、鏡台80は当該間仕切り壁76に直接はめ込まれた状態であってもよい。
【0068】
(2)また、本実施形態では、鏡台80の上方側に採光窓82が間仕切り壁76の壁幅方向に沿って設けられているが、当該採光窓82は鏡台80の側方側に設けられてもよい。この場合、間仕切り壁76の高さ方向に沿って窓部は設けられることになる。
【0069】
(3)また、ここでは、採光窓82は矩形状を成しているが、矩形状に限るものではなく、丸状であってもよい。また、間仕切り壁76の壁幅方向の一部に採光窓82が設けられていれば良いため、当該採光窓82は一つに限るものではなく、採光窓の大きさを小さくして当該採光窓が複数設けられていてもよい。
【0070】
(4)さらに、本実施形態では、間仕切り壁76の前に鏡台80が設けられているが、当該鏡台80が採光可能となっていればよいため、これに限るものではない。例えば、収納室64における他の区画壁88、90及び外壁14Bの前に鏡台80が配置されていてもよい。間仕切り壁76の前に鏡台80が設けられた方がよいが、これに限定しないことにより、設計プランの自由度をさらに広げることができる。
【0071】
(5)また、本実施形態では、居室62、66には、収納室64と繋がる出入口68、72がそれぞれ設けられているが、何れか一方の居室62、66のみに出入口が設けられるようにしてもよい。
【0072】
(6)さらに、本実施形態では、廊下40は住宅10の中央部に設けられているが、住宅10の外に面して設けられるようにしてもよい。この場合、外壁14に開口部を設けることで、当該廊下40をさらに明るくすることができ、収納室64内へ自然光を取り入れやすくすることができる。
【0073】
以上、本実施形態では、一般住宅に対して適用させて説明したが、他の用途に本発明に係る建物を用いてもよい。例えば、公共施設として利用することもできる。
【0074】
また、上記構成は一例であり、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
10 住宅(建物)
36 吹き抜け部
40 廊下
62 居室
64 収納室
66 居室
68 出入口
72 出入口
74 収納室構造
76 間仕切り壁
76A 壁部
76A1 隣接部(採光窓に隣接した部分)
78 収納棚
80 鏡台(鏡部)
82 採光窓
88 区画壁
90 区画壁
図1
図2
図3