(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、X線検査装置においては、X線発生器から放射状にX線が照射されることによる拡大効果があるため、複数のX線ラインセンサ間での検出タイミングの時間差は、搬送面から高い位置では小さく、搬送面に近い位置では大きくなり、一定ではない。したがって、被検査物の所定高さの部位に最適な遅延時間は、X線の拡大率に基づいて決定することができる。
【0008】
しかしながら、従来のX線検査装置は、被検査物中の特定の部位の高さに対して検出タイミングの遅延時間を最適値に設定すると、他の高さの部位においては、遅延時間が適切でなくなるため異物検査性能や形状検査性能が低下してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、被検査物の高さの影響によらず高感度に異物検査や形状検査を行うことができるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るX線検査装置は、搬送面(2a)上に順次搬入される被検査物(W)を検査空間を通過させて搬出する搬送部(2)と、前記検査空間内で前記搬送面上を搬送される前記被検査物にX線を照射するX線発生器(9)と、前記被検査物を透過するX線を検出しそれに応じた検出信号を出力する検出素子を前記搬送面の幅方向に複数有し、前記被検査物の搬送方向に所定間隔で並設されるとともに前記X線発生器から所定距離だけ離隔して複数配置されるX線ラインセンサ(50、60)と、下流側の前記X線ラインセンサ(60)の検出タイミングを、上流側に隣接する前記X線ラインセンサ(50)の検出タイミングに対して遅延させるタイミング遅延部(44)と、前記搬送面が所定搬送速度で駆動されるときの前記搬送面からの所定高さにおいて、下流側の前記X線ラインセンサの検出タイミングと、上流側に隣接する前記X線ラインセンサの検出タイミングとが前記被検査物に対して一致するよう、前記タイミング遅延部が用いる遅延時間を算出して設定する遅延時間算出部(45)と、前記複数のX線ラインセンサからの検出信号を合成して前記被検査物に対応する合成画像として出力する合成部(46)と、前記合成部が出力する合成画像に基づいて前記被検査物の良否を判定する判定部(48)と、を備え、前記判定部は、前記遅延時間算出部で設定した前記遅延時間に対応する
前記所定高さと前記被検査物の高さとの差によって生じる前記下流側と前記上流側の前記X線ラインセンサの検出タイミングの差が、前記検出素子の露光時間以内であることを条件として、前記合成画像に基づいて前記被検査物の良否判定を行うことを特徴とする。
【0011】
この構成により、遅延時間算出部で設定した遅延時間に対応する高さと被検査物の高さの差によって生じる下流側と上流側のX線ラインセンサの検出タイミングの差が、検出素子の露光時間以内であるときに、合成画像に基づいた被検査物の良否判定が行われる。
【0012】
このため、上流側と下流側とのX線ラインセンサを被検査物が通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが、検出素子の搬送方向の素子長以内に収まる被検査物に対して、合成画像による合否判定が行われる。
【0013】
したがって、合成画像上の画像ずれがX線ラインセンサの分解能以下に収まり、画像ずれによる影響が抑制され、合成画像上で被検査物のエッジが不明瞭になったり、微小な異物のコントラストが低下してしまう被検査物が除外された合成画像に対して判定が行われる。この結果、高感度に異物検査や形状検査を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係るX線検査装置は、前記被検査物の高さを取得する被検査物高さ取得部を備え、前記判定部は、前記遅延時間算出部
で設定した前記遅延時間に対応する前記所定高さと前記被検査物高さ取得部が取得した前記被検査物の高さとの差によって生じる前記下流側と前記上流側の前記X線ラインセンサの検出タイミングの差が、前記検出素子の露光時間より長いとき、前記被検査物を不良と判定するとともに検査性能不良であることを報知することを特徴とする。
【0015】
この構成により、遅延時間算出部で遅延時間を設定した高さと被検査物高さ取得部で取得した被検査物の高さの差によって生じる下流側と上流側のX線ラインセンサの検出タイミングの差が、検出素子の露光時間よりも長いとき、その被検査物を不良と判定し、合成画像による検査不良ではなく検査性能不良であることを報知する。
【0016】
このため、上流側と下流側とのX線ラインセンサを被検査物が通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが正確に算出され、さらに、合成画像による良否判定結果の検査不良と合成画像によらない検査性能不良とを区別することができる。
【0017】
また、本発明に係るX線検査装置は、前記搬送面の上方に設けられ、前記被検査物に当接することで前記被検査物が前記検査空間に搬入されることを規制する搬入規制部材を備え、前記搬送面から前記搬入規制部材までの高さは、前記遅延時間算出部で設定した前記遅延時間に対応する
前記所定高さと
前記被検査物に当接せずに前記検査空間に搬入可能な前記被検査物の最大高さとの差によって生じる前記下流側と前記上流側の前記X線ラインセンサの検出タイミングの差が、前記検出素子の露光時間以内となる高さに、設定されることを特徴とする。
【0018】
この構成により、搬入規制部材の高さでの下流側と上流側のX線ラインセンサの検出タイミングの差を、検出素子の露光時間以内に収めることができる。
【0019】
このため、例えば、搬入規制部材の下方を通過する被検査物に対しては、上流側と下流側とのX線ラインセンサを被検査物が通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが、検出素子の搬送方向の素子長以内に収まるので、被検査物の全ての高さ部位で高感度に異物検査や形状検査を行うことができる。
【0020】
また、本発明に係るX線検査装置は、前記搬送面上で最適となるように前記遅延時間算出部により前記遅延時間が設定されている場合に、前記被検査物の高さをh3、複数の前記X線ラインセンサから前記X線発生器までの高さをH2、下流側と上流側の前記X線ラインセンサの間隔をd、前記検出素子の素子長をsとしたとき、前記判定部は、前記被検査物の高さh3が、h3<(H2*s)/dを満たすことを条件として、前記合成画像に基づいて前記被検査物の良否判定を行うことを特徴とする。
【0021】
この構成により、上流側と下流側とのX線ラインセンサを被検査物が通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが、検出素子の搬送方向の素子長以内に収まる被検査物に対して、合成画像による合否判定が行われるので、高感度に異物検査や形状検査を行うことができる。
【0022】
また、本発明に係るX線検査装置は、前記被検査物の高さの中間値が最適となるように前記遅延時間算出部により前記遅延時間が設定されている場合に、前記被検査物の高さをh3、複数の前記X線ラインセンサから前記X線発生器までの高さをH2、下流側と上流側の前記X線ラインセンサの間隔をd、前記検出素子の素子長をsとしたとき、前記判定部は、前記被検査物の高さh3が、h3<2(H2*s)/dを満たすことを条件として、前記合成画像に基づいて前記被検査物の良否判定を行うことを特徴とする。
【0023】
この構成により、上流側と下流側とのX線ラインセンサを被検査物が通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが、検出素子の搬送方向の素子長以内に収まる被検査物に対して、合成画像による合否判定が行われるので、高感度に異物検査や形状検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、被検査物の高さの影響によらず高感度に異物検査や形状検査を行うことができるX線検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず構成について説明する。
図1に示すように、X線検査装置1は、搬送部2と検出部3とを筐体4の内部に備え、表示器5を筐体4の前面上部に備えている。
【0027】
また、筐体4には搬入口カバー17および搬出口カバー18を備えており、搬入口カバー17に搬入口7が形成されるとともに、搬出口カバー18に搬出口8が形成されている。
【0028】
搬送部2は、筐体4に対して水平に配置されたベルトコンベアの搬送面(ベルト面)2a上で、被検査物Wを所定間隔をおいて順次搬送するようになっている。搬送部2は、
図1に示す駆動モータ6の駆動により予め設定された搬送速度で搬入口7から搬入された被検査物Wを搬出口8側(図中X方向)に向けて搬送するようになっている。筐体4内部において搬送面2a上を搬入口7から搬出口8まで貫通する空間は搬送路21を形成している。
【0029】
検出部3は、搬送路21途中の検査空間22の上方(図中Z方向)に所定高さに離隔して配置されたX線発生源としてのX線発生器9と、このX線発生器9と搬送部2内に対向して配置されたX線検出器10とを備えている。
【0030】
検出部3は、搬送路21の途中の検査空間22において、順次搬送される被検査物Wに対し、X線発生器9によりX線を照射するとともに、被検査物Wを透過するX線をX線検出器10により検出するようになっている。
【0031】
X線発生器9は、円筒状のX線管12と、このX線管12を絶縁油に浸漬した状態で収納する金属製の箱体11とを備えており、X線管12の陰極からの電子ビームを陽極のターゲットに照射させてX線を生成するようになっている。
【0032】
X線管12は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向(X方向)となるよう箱体11内に配置されている。X線管12により生成されたX線は、下方のX線検出器10に向けて、図示しないスリットにより略三角形状のスクリーン状となって搬送方向(X方向)を横切るように照射されるようになっている。
【0033】
ここで、X線管12の陽極と陰極との間に流す電流(管電流)に比例して、X線管12が発生するX線の強度は変化する。また、X線管12の陽極と陰極との間に印加する電圧(管電圧)が高くなるに連れて、X線管12が発生するX線の波長が短くなりX線の透過力が強くなる。このため、X線管12の管電流および管電圧は、検出対象とする異物および被検査物Wの種類や搬送速度に応じて調整されるようになっている。
【0034】
図2に示すように、搬送路21内の天井部21aには、搬送方向(X方向)に沿って複数個所にX線遮蔽用の遮蔽カーテン16が吊り下げ配置されている。遮蔽カーテン16は、X線を遮蔽する鉛粉を混入したゴムシートをのれん状(上部が繋がっており下部が帯状に分割された状態)に加工したものから構成されており、検査空間22から搬送路21を介してX線が筐体4の外部に漏えいすることを防止するようになっている。
【0035】
遮蔽カーテン16は、本実施形態では、搬入口7と検査空間22との間、および検査空間22と搬出口8との間にそれぞれ2枚ずつ設けられており、1つの遮蔽カーテン16が被検査物Wと接触して弾性変形して隙間が生じた場合でも、他の遮蔽カーテン16がX線を遮蔽することで、漏えい基準量を超えることなくX線の漏えいを防止できるようになっている。搬送路21における遮蔽カーテン16により囲まれた内側の空間は検査空間22を構成している。
【0036】
X線検出器10は、
図3(a)、
図3(b)に示すように、搬送面2aの幅方向(Y方向)、すなわち、搬送面2a上でX方向に直交する主走査方向に直線状に延在する複数のX線ラインセンサ50、60を搬送面2aの下方に備えている。X線ラインセンサ50はX方向上流側に配置され、X線ラインセンサ60はX方向下流側に配置されている。X線ラインセンサ50、60は、同じエネルギーを検出するシングルエナジー、または、X線を一方が高エネルギーで検出し他方が低エネルギーで検出するデュアルエナジーセンサーとして構成されている。
【0037】
X線ラインセンサ50は、複数の検出素子51をY方向にそれぞれ直線状に接続したものから構成されている。X線ラインセンサ60は、複数の検出素子61をY方向にそれぞれ直線状に接続したものから構成されている。
【0038】
各検出素子51、61は、それぞれ受光素子としてのフォトダイオード(図示せず)と、フォトダイオード上に設けられたシンチレータ(図示せず)とから構成されている。
【0039】
各検出素子51、61は、X線発生器9から被検査物Wに対してX線が照射されているとき、被検査物Wを透過してくるX線をシンチレータで受けて光に変換するようになっている。
【0040】
また、各検出素子51、61は、シンチレータで変換された光をフォトダイオードで受光し、受光した光を電気信号に変換して出力するようになっている。
【0041】
X線検出器10はA/D変換部41を備えており、このA/D変換部41は、X線ラインセンサ50、60からの検出信号(輝度値データ)を画像にして異物を検出するためのデジタルデータに変換した濃度データを検出データとして出力するようになっている。
【0042】
ここで、X線検出器10がA/D変換部41を備える代わりに、制御部40がA/D変換部41を備えるようにしてもよい。すなわち、X線検出器10から制御部40への出力を、デジタルデータに変換された後の濃度データとする代わりに、デジタルデータに変換される前の輝度値データをX線検出器10の側で出力し、制御部40の側で輝度値データをデジタルデータである濃度データに変換するように構成してもよい。
【0043】
図2に示すように、搬送路21の上部空間には被検査物高さ測定センサ81が設けられており、この被検査物高さ測定センサ81は、搬送面2a上を搬送される被検査物Wの高さを非接触で測定するようになっている。
【0044】
被検査物高さ測定センサ81は、
図4に示すように、複数のレーザ光束を照射して反射光を受光することにより、被検査物Wの高さを非接触で測定するようになっており、搬送面2aの上方(本実施形態では、搬送面2aの搬送方向上流部の上方)に被検査物Wと接触しないよう十分な間隔を隔てて配置されている。被検査物高さ測定センサ81としてこのようなレーザ光による2次元変位センサを用いることができ、この2次元センサを用いた場合、被検査物Wの高さだけでなく、検査空間22を通過する被検査物Wの高さ、幅、形状および搬送面2a上の位置等を測定することができる。
【0045】
また、
図2に示すように、X線検査装置1は制御部40を備え、この制御部40は、X線検出器10からの検出信号に基づいて被検査物Wの良否判定を行うようになっている。また、制御部40は、被検査物Wの良否判定の他に、X線検査装置1全体の制御を行うようになっている。
【0046】
制御部40は、一時記憶部42と、合成部46と、判定部48とを備え、一時記憶部42に記憶されたX線ラインセンサ50、60からの検出データを合成部46で合成し、合成画像に基づいて判定部48で被検査物Wの良否を判定し、判定結果を表示器5により表示するようになっている。
【0047】
また、本実施形態では、制御部40は、タイミング遅延部44と、遅延時間算出部45とを備えており、遅延時間算出部45により算出および設定された遅延時間を用いて、タイミング遅延部44が、X線ラインセンサ50に対するX線ラインセンサ60の検出タイミングを調整するようになっている。
【0048】
一時記憶部42は、X線ラインセンサ50、60からの検出データ(濃度データ)を一時的に記憶するようになっており、データを高速に記憶および読み出しが可能な半導体メモリ等のバッファから構成されている。
【0049】
合成部46は、X線ラインセンサ50、60の検出データを一時記憶部42から読み出すとともに、読み出した検出データを合成して被検査物Wに対応する画像データとして出力するようになっている。
【0050】
判定部48は、合成部46で合成された濃度データに対して被検査物Wと異物との判別を行って異物の混入の有無を判定するようになっている、表示器5は、判定部48による判定結果を表示するようになっている。判定部48は、合成部46で合成された画像データ10dm(濃度データ)に基づいて、被検査物Wの中から異物を検出し、異物の混入の有無を判定するようになっている。
【0051】
本実施形態では、判定部48は、遅延時間算出部45で設定した遅延時間に対応する高さと被検査物Wの高さh3との差によって生じる下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の検出タイミングの差が、検出素子51、61の露光時間以内であることを条件として、合成画像に基づいて被検査物Wの良否判定を行うようになっている。
【0052】
また、判定部48は、遅延時間算出部45により遅延時間を設定した高さと被検査物高さ測定センサ81が取得した被検査物Wの高さh3との差によって生じる下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の検出タイミングの差が、検出素子51、61の露光時間より長いとき、被検査物Wを不良と判定するとともに検査性能不良であることを表示器5に表示したり、装置外部への信号、音、光等を出力することで、検査性能不良であることを報知するようになっている。
【0053】
タイミング遅延部44は、下流側のX線ラインセンサ60の検出タイミングを、上流側に隣接するX線ラインセンサ50の検出タイミングに対して、遅延時間算出部45で算出された遅延時間を用いて遅延させるようになっている。ここで、X線ラインセンサ50、60の検出タイミングとは、X線ラインセンサ50、60の蓄積(蓄光)開始のタイミングである。
【0054】
遅延時間算出部45は、タイミング遅延部44が用いる遅延時間を算出および設定するようになっている。遅延時間算出部45は、X線ラインセンサ50、60およびX線発生器9の配置と、搬送部2の搬送速度とに基づいて、所定の高さ(例えば、搬送面2a上)において、下流側のX線ラインセンサ60の検出タイミングと、上流側に隣接するX線ラインセンサ50の検出タイミングとが一致するよう、遅延時間を算出するようになっている。
【0055】
ここで、X線ラインセンサ50、60およびX線発生器9の配置とは、
図5(a)に示すように、X線ラインセンサ50とX線ラインセンサ60との間隔d、および、X線発生器9と搬送面2aとの距離H1、および、X線発生器9とX線ラインセンサ50、60との距離H2のことである。
【0056】
換言すると、X線ラインセンサ50、60およびX線発生器9の配置とは、X線検査装置1の構成に関する既知の値である。なお、X線ラインセンサ50とX線ラインセンサ60との間隔dと、X線発生器9とX線ラインセンサ50、60との距離H2に代えて、X線発生器9から照射されるX線の拡大率を用いてもよい。
【0057】
遅延時間算出部45は、搬送面2aの高さにおいて、または、搬入口7の高さの中間高さにおいて、下流側のX線ラインセンサ60の検出タイミングと、上流側に隣接するX線ラインセンサ50の検出タイミングとが一致するよう、タイミング遅延部44が用いる遅延時間を算出するようになっている。
【0058】
遅延時間tは、X線ラインセンサ50、60を被検査物Wが通過するのに要する時間と等しい値が最適値となる。X線ラインセンサ50、60が設けられた平面で最適となる遅延時間tは、搬送面2aの移動速度(被検査物Wの移動速度)をvとしたとき、t=d/vの数式から求めることができる。
【0059】
また、搬送面2a上で最適となる遅延時間t0は、X線の拡大率を勘案して、以下に示す式(1)から求めることができる。
【数1】
【0060】
また、搬送面2aからの所定高さhにおいて最適となる遅延時間t1は、X線の拡大率を勘案して、以下に示す式(2)から求めることができる。
【数2】
【0061】
タイミング遅延部44は、遅延時間算出部45により算出および設定された遅延時間を用いて、
図5(b)に示すように、下流側のX線ラインセンサ60の検出タイミングを、上流側に隣接するX線ラインセンサ50の検出タイミングに対して遅延させている。
【0062】
本実施形態では、
図5(a)に示すように、搬入口カバー17に形成された搬入口7は、高さh2に設定されている。したがって、被検査物Wの高さh3が搬入口7の高さh2以上であるとき、この被検査物Wは搬入口カバー17に当接するため搬入口7を通過することができない。このため、搬入口7を通過して検査空間22に搬送され得る被検査物Wの最大高さはh2となる。このように、搬入口カバー17は、被検査物Wに当接することで被検査物Wが検査空間22に搬入されることを規制する搬入規制部材として機能している。なお、搬入口カバー17の高さh2は、搬送路21内の天井部21aの高さh1(通過高さ)より低く設定されている。
【0063】
ここで、搬送面2a上で最適となる遅延時間t0と、搬送面2aからの所定高さhにおいて最適となる遅延時間t1との差△tは、△t=t0−t1である。この数式に式(1)のt0、および式(2)のt1を代入すると、H1が消えて、△t=h/H2*d/vとなる。
【0064】
このため、搬送面2a上で最適となるように遅延時間t0を設定した場合、搬送面2aからの所定高さhの部位では、△t=h/H2*d/vの検出タイミング差が生じる。この検出タイミング差△tは、合成画像上の被検査物Wの画像ずれ量σに換算すると、σ=v△t=hd/H2となる。
【0065】
したがって、画像ずれ量σが検出素子51、61の素子長s以内に収まる(σ<s)ためには、s>hd/H2の数式を満たすように各部を設定すればよい。この数式を満たすような搬入口7の高さh2は、以下の式(3)で示される。
【数3】
【0066】
搬入口7の高さh2を式(3)のように設定することで、合成画像上の画像ずれがX線ラインセンサの分解能以下に収まり、画像ずれによる影響が抑制される。
【0067】
本実施形態では、搬送面2a上で最適となるように遅延時間t0が設定されている場合に、搬入口カバー17に形成される搬入口7の高さh2は、検出素子51、61の素子長をsとしたとき、以下の式(4)の関係を満たすように設定されている。
【数4】
【0068】
すなわち、搬入口7の高さh2は、搬送面2a上で最適となるように遅延時間が設定されている場合に、搬入口7の上端の高さでのX線ラインセンサ50、60の検出タイミングの差が、検出素子51、61の露光時間以内となる高さに、設定されている。
【0069】
ここで、検出素子51、61の露光時間とは、X線ラインセンサ50、60が搬送方向と直交する主走査方向に1スキャンするときの検出素子51、61がX線を検出する時間のことである。
【0070】
また、搬送面2aと搬入口7の上端の中間の高さh2/2で最適となるように遅延時間が設定されている場合、搬入口7の上端の高さh2は、以下の式(5)の関係を満たすように設定されている。
【数5】
【0071】
この場合、搬入口7の高さh2は、搬入口7の上端の高さでのX線ラインセンサ50、60の検出タイミングの差が、検出素子51、61の露光時間以内となる高さに、設定されることになる。
【0072】
次に動作を説明する。被検査物Wの高さh3が搬入口カバー17の搬入口7の高さh2より大きい場合、被検査物Wは、搬入口カバー17に当接するため、搬入口7から検査空間22に搬入されることが規制される。被検査物Wの高さh3が搬入口カバー17の搬入口7の高さh2より小さい場合、被検査物Wは、搬入口7から検査空間22に搬入されることが許容される。
【0073】
まず、搬入口7を通過した被検査物Wに対して、制御部40は、所定搬送速度vで搬送部2を駆動して被検査物Wを搬送するとともに、予め設定された強度でX線発生器9から被検査物WにX線を照射する。
【0074】
次いで、遅延時間算出部45は、X線ラインセンサ50、60およびX線発生器9の配置と、搬送部2の搬送速度とに基づいて、搬送面2aの高さに最適な遅延時間、または、搬送面2aと搬入口7の上端の中間の高さに最適な遅延時間を算出し設定する。
【0075】
タイミング遅延部44は、下流側のX線ラインセンサ60の検出タイミングを、上流側に隣接するX線ラインセンサ50の検出タイミングに対して、遅延時間算出部45で算出および設定された遅延時間だけ遅延させる。
【0076】
次いで、制御部40は、X線検出器10から出力されるX線ラインセンサ50の濃度データとX線ラインセンサ60の濃度データとを一時記憶部42に記憶する。
【0077】
次いで、制御部40は、合成部46により、
図6(a)に示すように、X線ラインセンサ50、60の濃度データの合成を行って、被検査物Wの形状に対応する画像データとして出力する。
【0078】
図6(a)において、タイミング遅延部44により検出タイミングが調整されたX線ラインセンサ50、60からの濃度データ50d、60dは、合成部46により合成(重ね合わせ)されるとともに被検査物Wの形状に対応する画像データ10dm(濃度データ)として出力されている。
【0079】
本実施形態では、高さh2が式(4)を満たす搬入口7を通過した被検査物Wに対して、搬送面2a上で最適となるように遅延時間が設定されている場合、合成画像上の画像ずれが素子長s以下となるため、
図6(a)のように、合成済みの画像データ10dmにおいて濃度データ50dと濃度データ60dの境界が一致し、画像ずれが防止される。
【0080】
また、本実施形態では、高さh2が式(5)を満たす搬入口7を通過した被検査物Wに対して、搬送面2aと搬入口7の上端の中間の高さh2/2で最適となるように遅延時間が設定されている場合も、合成画像上の画像ずれが素子長s以下となるため、
図6(a)のように、合成済みの画像データ10dmにおいて濃度データ50dと濃度データ60dの境界が一致し、画像ずれが防止される。
【0081】
次いで、制御部40は、判定部48により、合成部46で合成された画像データ10dmに基づいて、被検査物Wの中から異物を検出し、異物の混入の有無を判定し、合成部46で合成された画像データとともに表示器5に表示する。
【0082】
ここで、上記の2種類の遅延時間における各条件を満たさないように搬入口7の高さh2が設定されている場合は、遅延時間が最適値に設定されていない高さにおいて合成画像上の画像ずれが1画素以上になることがある。
【0083】
この場合、合成画像上の画素ずれが素子長s以上になってしまい、
図6(b)に示すように、合成部46が出力する画像データ10dmは、X線ラインセンサ50の濃度データ50dに基づく被検査物Wの画像の境界と、X線ラインセンサ60の濃度データ60dに基づく被検査物Wの画像の境界とが一致しないものとなる。このような合成画像上の画像ズレが1画素以上となるとき、検査性能不良として判定し、判定結果が検査性能不良であることを表示器5に表示する。
【0084】
なお、X線ラインセンサ50、60が配置された面での素子長sは、X線が下方に向かって拡大する拡大効果により、搬入口7の上端の高さにおいては1つの素子の受け持ち範囲が細くなるため、素子長sより小さい見かけ上の素子長s´になる。このため、合成画像上の画素ずれが見かけ上の素子長s´以内になるように搬入口7の高さを設定することで、更に高感度で被検査物Wを検査することができる。
【0085】
具体的には、搬送面2aから所定高さhの部位での見かけ上の素子長s´1は、以下の式(6)から求まる。
【数6】
【0086】
また、搬送面2a上での見かけ上の素子長s´0は、以下の式(7)から求まる。
【数7】
【0087】
また、搬送面2a上で最適になるように遅延時間t0が設定されている場合、所定高さhの部位での画像ずれ△pは、以下の式(8)から求まる。
【数8】
【0088】
よって、画像ずれ△pが1素子以内に制限されるためには、以下の式(9)を満たすように、搬入口7の上端の高さh2を設定すればよい。
【数9】
【0089】
この式(9)を、搬入口7の高さh2を左辺にして変形すると、h2は、以下の式(10)で表される。
【数10】
【0090】
したがって、搬入口7の高さh2を、式(10)を満たすように設定することで、画像ずれ△pが1素子以内に制限されるため、更に高感度で被検査物Wを検査することができる。
【0091】
また、X線の照射方向は鉛直下方向のみに限定せず、左右方向、鉛直上方向であってもよい。つまり、X線源(X線発生器9)とX線ラインセンサ50、60を搬送面2aの上方と下方にそれぞれ配置してX線を上方から下方に向かって照射する構成だけでなく、X線源とX線ラインセンサ50、60を搬送面2aの下方と上方にそれぞれ配置してX線を下方から上方に向かって照射したり、X線を搬送面2aの幅方向一端側と他端側に配置してX線を横向きに一端側から他端側に向かって照射するように構成してもよい。
【0092】
以上のように、本実施形態に係るX線検査装置1は、判定部48は、遅延時間算出部45で設定した遅延時間に対応する高さと被検査物Wの高さh3との差によって生じる下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の検出タイミングの差が、検出素子51、61の露光時間以内であることを条件として、合成画像に基づいて被検査物Wの良否判定を行う。
【0093】
この構成により、遅延時間算出部45で設定した遅延時間に対応する高さと被検査物Wの高さh3の差によって生じる下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の検出タイミングの差が、検出素子51、61の露光時間以内であるときに、合成画像に基づいた被検査物Wの良否判定が行われる。
【0094】
このため、上流側と下流側とのX線ラインセンサ50、60を被検査物Wが通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが、検出素子51、61の搬送方向の素子長s以内に収まる被検査物Wに対して、合成画像による合否判定が行われる。
【0095】
したがって、合成画像上の画像ずれがX線ラインセンサ50、60の分解能以下に収まり、画像ずれによる影響が抑制され、合成画像上で被検査物Wのエッジが不明瞭になったり、微小な異物のコントラストが低下してしまう被検査物Wが除外された合成画像に対して判定が行われる。この結果、高感度に異物検査や形状検査を行うことができる。
【0096】
また、本実施形態に係るX線検査装置1は、被検査物Wの高さを取得する被検査物高さ測定センサ81を備え、判定部48は、遅延時間算出部45により遅延時間を設定した高さと被検査物高さ測定センサ81が取得した被検査物Wの高さh3との差によって生じる下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の検出タイミングの差が、検出素子51、61の露光時間より長いとき、被検査物Wを不良と判定するとともに検査性能不良であることを報知する。
【0097】
この構成により、遅延時間算出部45で遅延時間を設定した高さと被検査物高さ測定センサ81で取得した被検査物Wの高さh3の差によって生じる下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の検出タイミングの差が、検出素子51、61の露光時間よりも長いとき、その被検査物Wを不良と判定し、合成画像による検査不良ではなく検査性能不良であることを報知する。
【0098】
このため、上流側と下流側とのX線ラインセンサ50、60を被検査物Wが通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが正確に算出され、さらに、合成画像による良否判定結果の検査不良と合成画像によらない検査性能不良とを区別することができる。
【0099】
また、本実施形態に係るX線検査装置1は、搬送面2aの上方に設けられ、被検査物Wに当接することで被検査物Wが検査空間22に搬入されることを規制する搬入口カバー17を備え、搬送面2aから搬入口カバー17までの高さは、遅延時間算出部45で設定した遅延時間に対応する高さとの差によって生じる下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の検出タイミングの差が、検出素子51、61の露光時間以内となる高さに、設定される。
【0100】
この構成により、搬入口カバー17の高さh2での下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の検出タイミングの差を、検出素子51、61の露光時間以内に収めることができる。
【0101】
このため、例えば、搬入口カバー17の下方を通過する被検査物Wに対しては、上流側と下流側とのX線ラインセンサ50、60を被検査物Wが通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが、検出素子51、61の搬送方向の素子長s以内に収まるので、被検査物Wの全ての高さ部位で高感度に異物検査や形状検査を行うことができる。
【0102】
また、本実施形態に係るX線検査装置1は、搬送面2a上で最適となるように遅延時間算出部45により遅延時間が設定されている場合に、被検査物Wの高さをh3、複数のX線ラインセンサ50、60からX線発生器9までの高さをH2、下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の間隔をd、検出素子51、61の素子長をsとしたとき、判定部48は、被検査物Wの高さh3が、h3<(H2*s)/dを満たすことを条件として、合成画像に基づいて被検査物Wの良否判定を行う。
【0103】
この構成により、上流側と下流側とのX線ラインセンサ50、60を被検査物Wが通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが、検出素子51、61の搬送方向の素子長s以内に収まる被検査物Wに対して、合成画像による合否判定が行われるので、高感度に異物検査や形状検査を行うことができる。
【0104】
また、本実施形態に係るX線検査装置1は、被検査物Wの高さの中間値が最適となるように遅延時間算出部45により遅延時間が設定されている場合に、被検査物Wの高さをh3、複数のX線ラインセンサ50、60からX線発生器9までの高さをH2、下流側と上流側のX線ラインセンサ60、50の間隔をd、検出素子51、61の素子長をsとしたとき、判定部48は、被検査物Wの高さh3が、h3<2(H2*s)/dを満たすことを条件として、合成画像に基づいて被検査物Wの良否判定を行う。
【0105】
この構成により、上流側と下流側とのX線ラインセンサを被検査物Wが通過する際の時間差に基づく合成画像上の画像ずれが、検出素子51、61の搬送方向の素子長s以内に収まる被検査物Wに対して、合成画像による合否判定が行われるので、高感度に異物検査や形状検査を行うことができる。