特許第6371607号(P6371607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371607ケーブル接続構造、集合ケーブル、集合ケーブルの製造方法およびケーブル接続構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371607
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】ケーブル接続構造、集合ケーブル、集合ケーブルの製造方法およびケーブル接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/03 20060101AFI20180730BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20180730BHJP
   H01R 9/053 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   H01R9/03 Z
   H02G1/14
   H01R9/053
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-137138(P2014-137138)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-15266(P2016-15266A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】関戸 孝典
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−258052(JP,A)
【文献】 特開2011−023134(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/108852(WO,A1)
【文献】 特開平9−090237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/03− 9/053
H01R 12/50−12/69
H02G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を絶縁体からなるジャケットで被覆した複数のケーブルを固定した集合ケーブルであって、
導電性の芯線と、前記芯線の外周を被覆する絶縁体とからなり、先端側に芯線が露出された芯線露出部をそれぞれ有する複数のケーブルと、
有機溶剤またはアルカリに不溶な不溶性樹脂からなり、前記複数のケーブルの芯線露出部を固定する第1のケーブル固定部と、
有機溶剤またはアルカリに溶解する可溶性樹脂からなり、前記複数のケーブルの基端側であって、前記芯線がジャケットにより被覆された芯線被覆部を固定する第2のケーブル固定部と、
を備え、前記第1のケーブル固定部の前記第2のケーブル固定部と接する面と対向する面に複数の前記芯線の端面が露出することを特徴とする集合ケーブル。
【請求項2】
前記第2のケーブル固定部の前記ケーブル軸方向の長さは、前記第1のケーブル固定部の前記ケーブル軸方向の長さより長いことを特徴とする請求項に記載の集合ケーブル。
【請求項3】
前記第1のケーブル固定部は、前記ケーブル先端の芯線露出部と共に前記ジャケットにより被覆された芯線被覆部の一部も固定することを特徴とする請求項1または2に記載の集合ケーブル。
【請求項4】
芯線を絶縁体からなるジャケットで被覆した複数のケーブルを固定した集合ケーブルの製造方法であって、
複数の前記ケーブル先端の芯線露出部を、有機溶剤またはアルカリに不溶な不溶性樹脂からなる第1のケーブル固定部により固定する第1の固定工程と、
前記複数のケーブルの基端側であって、前記芯線がジャケットにより被覆された芯線被覆部を、有機溶剤またはアルカリに溶解する可溶性樹脂からなる第2のケーブル固定部により固定する第2の固定工程と、
前記第1のケーブル固定部の所望の位置で前記ケーブルの軸方向に垂直に切断して、前記芯線を露出させる切断工程と、
を含むことを特徴とする集合ケーブルの製造方法。
【請求項5】
前記第1の固定工程は、前記第1のケーブル固定部により前記ケーブル先端の芯線露出部と共に前記ジャケットにより被覆された芯線被覆部の一部も固定することを特徴とする請求項に記載の集合ケーブルの製造方法。
【請求項6】
芯線を絶縁体からなるジャケットで被覆した複数のケーブルを固定した集合ケーブルを実装用部材に接続したケーブル接続構造の製造方法であって、
複数の前記ケーブル先端の芯線露出部を、有機溶剤またはアルカリに不溶な不溶性樹脂からなる第1のケーブル固定部により固定する第1の固定工程と、
前記複数のケーブルの基端側であって、前記芯線がジャケットにより被覆された芯線被覆部を、有機溶剤またはアルカリに溶解する可溶性樹脂からなる第2のケーブル固定部により固定する第2の固定工程と、
前記第1のケーブル固定部の所望の位置で前記ケーブルの軸方向に垂直に切断して、前記芯線断面を露出させる切断工程と、
前記第1のケーブル固定部および前記第2のケーブル固定部を治具で固定し、前記第1のケーブル固定部の芯線が露出した端面を、実装装置に固定された実装用部材の外部接続電極が形成された実装面と対向させて、前記芯線と前記外部接続電極とを導電性材料により接続する接続工程と、
前記芯線と前記外部接続電極と前記導電性材料の周囲に補強樹脂を配置する補強工程と、
有機溶剤により前記第2のケーブル固定部を溶解して除去する除去工程と、
を含むことを特徴とするケーブル接続構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続構造、集合ケーブル、集合ケーブルの製造方法およびケーブル接続構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用および工業用の内視鏡が広く用いられている。医療用の内視鏡としては、例えば、体内への挿入部の先端にCCD等の撮像素子を内蔵した撮像装置を備えたものがある。この挿入部を体内に深く挿入することにより、病変部を観察することができ、さらに、必要に応じて処置具を併用することにより、体内の検査や治療をすることもできる。
【0003】
このような内視鏡においては、画像をモニタに映し出すために、撮像素子が撮像した画像情報を電気信号に変換して信号処理装置に伝送し、この信号処理装置において信号処理を行う。内視鏡内の撮像素子と信号処理装置とは、画像信号の伝送、クロック信号の伝送、撮像素子への駆動電源の供給等のため、複数本のケーブルを束ねた集合ケーブルによって接続されている。
【0004】
集合ケーブルと基板等とを一括して接続する技術として、複数のケーブルをケーブル固定部によって固定し、該複数のケーブル内の接続端部を含む接続端面が形成されるとともに、前記接続端部表面を覆う導電体層が設けられた集合ケーブルに関する技術が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−23134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、基板と集合ケーブルとを実装装置または治具等で固定し、基板上の電極と集合ケーブルの接続端部の位置合わせを行った後、前記電極に前記接続端部を接続する。集合ケーブルを治具により固定する際には、接続時の荷重に耐えうる固定力と、実装装置に固定された基板面に対し、略平行に集合ケーブル接続端面を配置する精度が必要であるため、硬質部である集合ケーブルのケーブル固定部を治具により把持固定している。治具によりケーブル固定部を把持するためには、ケーブル固定部は、ある程度の長さ、例えば、3mm程度の長さが必要なため、硬質部分であるケーブル固定部長をこれ以上短くすることは困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基板と集合ケーブルとを精度よく接続できるとともに、小型化が可能なケーブル接続構造、集合ケーブルおよびケーブル接続構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるケーブル接続構造は、芯線を絶縁体からなるジャケットで被覆した複数のケーブルを固定した集合ケーブルを実装用部材に接続したケーブル接続構造であって、前記実装用部材は、複数の前記芯線を接続する複数の外部接続電極を備え、前記集合ケーブルは、複数の前記ケーブル先端の芯線露出部が、有機溶剤またはアルカリに不溶な不溶性樹脂からなる第1のケーブル固定部により固定され、前記第1のケーブル固定部の端面に露出する複数の前記芯線と、複数の前記外部接続電極とを導電性材料により接続してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる集合ケーブルは、芯線を絶縁体からなるジャケットで被覆した複数のケーブルを固定した集合ケーブルであって、導電性の芯線と、前記芯線の外周を被覆する絶縁体とからなり、先端側に芯線が露出された芯線露出部をそれぞれ有する複数のケーブルと、有機溶剤またはアルカリに不溶な不溶性樹脂からなり、前記複数のケーブルの芯線露出部を固定する第1のケーブル固定部と、有機溶剤またはアルカリに溶解する可溶性樹脂からなり、前記複数のケーブルの基端側であって、前記芯線がジャケットにより被覆された芯線被覆部を固定する第2のケーブル固定部と、を備え、前記第1のケーブル固定部の前記第2のケーブル固定部と接する面と対向する面に複数の前記芯線の端面が露出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる集合ケーブルは、上記発明において、前記第2のケーブル固定部の前記ケーブル軸方向の長さは、前記第1のケーブル固定部の前記ケーブル軸方向の長さより長いことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる集合ケーブルは、上記発明において、前記第1のケーブル固定部は、前記ケーブル先端の芯線露出部と共に前記ジャケットにより被覆された芯線被覆部の一部も固定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる集合ケーブルの製造方法は、芯線を絶縁体からなるジャケットで被覆した複数のケーブルを固定した集合ケーブルの製造方法であって、複数の前記ケーブル先端の芯線露出部を、有機溶剤またはアルカリに不溶な不溶性樹脂からなる第1のケーブル固定部により固定する第1の固定工程と、前記複数のケーブルの基端側であって、前記芯線がジャケットにより被覆された芯線被覆部を、有機溶剤またはアルカリに溶解する可溶性樹脂からなる第2のケーブル固定部により固定する第2の固定工程と、前記第1のケーブル固定部の所望の位置で前記ケーブルの軸方向に垂直に切断して、前記芯線を露出させる切断工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる集合ケーブルの製造方法は、上記発明において、前記第1の固定工程は、前記第1のケーブル固定部により前記ケーブル先端の芯線露出部と共に前記ジャケットにより被覆された芯線被覆部の一部も固定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかるケーブル接続構造の製造方法は、芯線を絶縁体からなるジャケットで被覆した複数のケーブルを固定した集合ケーブルを実装用部材に接続したケーブル接続構造の製造方法であって、複数の前記ケーブル先端の芯線露出部を、有機溶剤またはアルカリに不溶な不溶性樹脂からなる第1のケーブル固定部により固定する第1の固定工程と、前記複数のケーブルの基端側であって、前記芯線がジャケットにより被覆された芯線被覆部を、有機溶剤またはアルカリに溶解する可溶性樹脂からなる第2のケーブル固定部により固定する第2の固定工程と、前記第1のケーブル固定部の所望の位置で前記ケーブルの軸方向に垂直に切断して、前記芯線断面を露出させる切断工程と、前記第1のケーブル固定部および前記第2のケーブル固定部を治具で固定し、前記第1のケーブル固定部の芯線が露出した端面を、前記実装装置に固定された実装用部材の外部接続電極が形成された実装面と対向させて、前記芯線と前記外部接続電極とを導電性材料により接続する接続工程と、前記芯線と前記外部接続電極と前記導電性材料の周囲に補強樹脂を配置する補強工程と、有機溶剤により前記第2のケーブル固定部を溶解して除去する除去工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、実装用部材の外部接続電極とケーブルの芯線とを精度よく接続できるとともに、ケーブル接続構造の硬質部長を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態にかかるケーブル接続構造の斜視図である。
図2図2は、図1に示すケーブル接続構造の断面図である。
図3図3は、本実施の形態のケーブル接続構造に使用する集合ケーブルの斜視図である。
図4図4は、図3の集合ケーブルの断面図である。
図5図5は、本実施の形態にかかる集合ケーブルの製造工程のフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施の形態にかかるケーブル接続構造の製造工程のフローチャートである。
図7図7は、実装用部材と集合ケーブルとの接続工程を説明する斜視図である。
図8図8は、実装用部材と集合ケーブルとの接続工程を説明する断面図である。
図9図9は、本実施の形態の変形例にかかる集合ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、各部材の比率などは、現実と異なることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
まず、実施の形態にかかるケーブル接続構造について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるケーブル接続構造の斜視図である。図2は、図1に示すケーブル接続構造の断面図である。図3は、本実施の形態のケーブル接続構造に使用する集合ケーブルの斜視図である。図4は、図3の集合ケーブルの断面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態にかかるケーブル接続構造100は、ケーブル1を4本固定する集合ケーブル10と、集合ケーブル10と接続する実装用部材20とを備える。
【0020】
ケーブル1は、導電性の芯線2と、芯線2の外周を被覆する絶縁体からなるジャケット3とからなる。ケーブル1の先端側は、ジャケット3を所定の長さストリップして、芯線2が露出した芯線露出部7を形成している(図4参照)。
【0021】
芯線露出部7の周囲は、有機溶剤またはアルカリに不溶な不溶性樹脂からなる第1のケーブル固定部4により固定されている。第1のケーブル固定部4は、芯線2が露出した芯線露出部7の全体を覆うように固定することが好ましい。第1のケーブル固定部4に芯線露出部7が覆われていない場合、ショート等の恐れがあるためである。第1のケーブル固定部4は、実装用部材20との接続の際に安定した保持を可能とするため角柱状とするか、ケーブル接続部をできるだけ小型にするために、集合ケーブル10の全体を束ねて被覆した集合ジャケット(不図示)の直径以下の円柱状とすることが好ましい。
【0022】
第1のケーブル固定部4の材料として使用する不溶性樹脂は、有機溶剤またはアルカリに不溶な樹脂である。第1のケーブル固定部4の材料として使用する不溶性樹脂は、すべての有機溶剤またはアルカリに不溶である必要はなく、後述する第2のケーブル固定部を溶解する溶剤として使用する有機溶剤またはアルカリに不溶であればよい。また、実装用部材20との接続時の荷重に耐えうる固定力、および位置精度を担保する観点から硬度が高いものが好ましい。不溶性樹脂としては、モールド樹脂として使用されるエポキシ樹脂等を好適に使用することができる。モールド用のエポキシ樹脂は、ガラス転移温度が140〜200℃と高いため、実装用部材20の加熱による接合の際の熱変形を抑制することができる。また、第1のケーブル固定部4の材料として使用する不溶性樹脂は、後述する実装用部材と接続する際の熱により第1のケーブル固定部4が膨張し、芯線2の断面位置が変化して接続不良となる場合があるため、不溶性樹脂の熱膨張係数は、できるだけ小さいものを選択することが好ましい。
【0023】
実装用部材20は、平板状の基板であり、芯線2が接続される外部接続電極21を形成される。実装用部材20は、セラミック、ガラエポ、ガラス、シリコン等から形成され、集合ケーブル10が接続される実装面を有していれば、立体基板であってもよい。
【0024】
外部接続電極21上には、はんだバンプ等の導電性材料22が形成されている。はんだバンプは、ペースト印刷、ペーストディスペンス、溶融ハンダ液滴吹付、マウント等により外部接続電極21上にはんだ材料を供給し、実装用部材20を加熱することにより形成することができる。
【0025】
芯線2と外部接続電極21との接続部周辺には、補強樹脂23が供給される。補強樹脂23も、有機溶剤またはアルカリに不溶な不溶性樹脂から選択されることが好ましい。
なお、芯線2と外部接続電極21の接続後に、実装用部材20や集合ケーブル10などが温度変化し、それに伴う熱膨張が生じた際、熱応力を生じ接続が破壊する場合があるため、実装用部材20や補強樹脂23やケーブル固定部4は熱膨張係数が略同じであることが望ましい。
【0026】
次に、本実施の形態にかかる集合ケーブルについて説明する。実装用部材20に接続される前の集合ケーブル10は、図3および4に示すように、有機溶剤またはアルカリに溶解する可溶性樹脂からなり、複数のケーブル1の基端側であって、芯線2がジャケット3により被覆された芯線被覆部8を固定する第2のケーブル固定部5を備える。第2のケーブル固定部5は、第1のケーブル固定部4と同様に、実装用部材20との接続の際に安定した保持を可能とするため角柱状、または円柱状であることが好ましい。第1のケーブル固定部4の形状と第2のケーブル固定部5の形状は異なってもよい。また、第1のケーブル固定部4の第2のケーブル固定部5と接する面と対向する面には、複数の芯線2の端面が露出する。
【0027】
本実施の形態のケーブル固定部は、第1のケーブル固定部4と第2のケーブル固定部5からなり、第1のケーブル固定部4と第2のケーブル固定部5とで硬質部6を構成する。治具により集合ケーブル10を把持する際、第1のケーブル固定部4と第2のケーブル固定部5のケーブル1の軸方向と平行な側面が把持される。硬質部6の長さ、すなわち、第1のケーブル固定部4と第2のケーブル固定部5のケーブル1の軸方向の長さの和(R1+R2)が、所定の長さ以上でなければ、接続時の荷重に耐えうる固定力と、集合ケーブル10の接続端面の位置精度(x、y、θ)を保持することができない。したがって、第1のケーブル固定部4と第2のケーブル固定部5のケーブル1の軸方向の長さの和(R1+R2)は、3〜10mm程度とすることが好ましい。
【0028】
第1のケーブル固定部4の軸方向の長さ(R1)は、第2のケーブル固定部5の軸方向の長さ(R2)より短いことが好ましい。第1のケーブル固定部4の軸方向の長さ(R1)を第2のケーブル固定部5の軸方向の長さ(R2)より短くすることにより、ケーブル接続構造100の硬質部長の長さを短くすることができる。ケーブル接続構造100の硬質部長の長さは、第1のケーブル固定部4の軸方向の長さ(R1)に起因するため、第1のケーブル固定部4の軸方向の長さ(R1)は短いほうが好ましいが、短すぎると治具により把持した際の圧力や加熱により、変形しやすくなる。したがって、第1のケーブル固定部4の軸方向の長さ(R1)は、0.5〜3mm程度とすることが好ましい。
【0029】
第2のケーブル固定部5の材料として使用する可溶性樹脂は、有機溶剤またはアルカリに可溶な樹脂である。第2のケーブル固定部5の材料として使用する可溶性樹脂は、すべての有機溶剤またはアルカリに可溶である必要はなく、第1のケーブル固定部4を溶解せず、第2のケーブル固定部5を溶解する有機溶剤またはアルカリにのみ溶解する材料であればよい。また、実装用部材20との接続時の荷重に耐えうる固定力、および位置精度を担保する観点から硬度が高いものが好ましい。可溶性樹脂としては、フォトレジスト、特にエポキシ樹脂を主原料とする永久レジストを好適に使用することができる。エポキシ樹脂を主原料とする永久レジストは、ガラス転移温度が200℃以上と高いだけでなく、硬度も高いため、実装用部材20の加熱による接合の際の熱変形を抑制することができる。
【0030】
第2のケーブル固定部5の材料である可溶性樹脂は、熱膨張係数が、第1のケーブル固定部4の材料である不溶性樹脂の熱膨張係数と近いものを使用することが好ましい。実装用部材20を加熱して集合ケーブル10を接続する際、熱膨張係数の差が大きい場合、治具による把持姿勢の変化が大きくなり、接続精度が低下するおそれがあるためである。
【0031】
また、第2のケーブル固定部5の材料である可溶性樹脂は、熱膨張係数が、ケーブル1のジャケット3に使用する絶縁体材料の熱膨張係数と近いものを使用することが好ましい。実装用部材20を加熱して集合ケーブル10を接続する際、熱膨張係数の差が大きい場合、熱応力が発生し、ケーブル1の変形による接続精度の低下や、第2のケーブル固定部5とケーブル1のジャケット3の剥離が発生するおそれがあるためである。第2のケーブル固定部5の材料として使用する可溶性樹脂の熱膨張係数は、2〜25×10-5/℃であり、好ましくは2〜10×10-5/℃である。
【0032】
なお、ケーブル1のジャケット3がフッ素系樹脂等である場合、ジャケット3の表面に表面処理剤を塗布等することによりエッチングして、第2のケーブル固定部5の密着性を向上することが好ましい。
【0033】
次に、図5図8を参照して、本実施の形態にかかる集合ケーブル10およびケーブル接続構造100の製造工程について説明する。図5は、本発明の実施の形態にかかる集合ケーブルの製造工程のフローチャートである。図6は、本発明の実施の形態にかかるケーブル接続構造の製造工程のフローチャートである。図7は、実装用部材と集合ケーブルとの接続工程を説明する斜視図である。図8は、実装用部材と集合ケーブルとの接続工程を説明する断面図である。
【0034】
集合ケーブル10の製造は、まず、ケーブル1の端部のジャケット3をストリップして芯線2を露出させた芯線露出部7を形成する(ステップS1)。
【0035】
芯線露出部7を形成したケーブル1を配列部材にセットする(ステップS2)。配列部材へのケーブル1のセットは、ケーブル1の芯線露出部7がたわまないように、引張応力を加えて行うことが好ましい。また、配列部材にはケーブル1のうち芯線2をセットする方が芯線位置精度を向上できるため好ましい。
【0036】
芯線露出部7を第1のケーブル固定部4により固定する(ステップS3)。第1のケーブル固定部4は、芯線露出部7の周囲に取り付けた型枠内に不溶性樹脂を充填し、脱泡した後、硬化させて形成する。
【0037】
第1のケーブル固定部4の形成後(ステップS3)、芯線被覆部8の表面に例えばテトラエッチ液などの薬剤を塗布して表面処理する(ステップS4)。ジャケット3がフッ素系樹脂である場合、薬剤塗布により表面をエッチングすることにより、樹脂被着性を向上できる。
【0038】
その後、表面処理した芯線被覆部8を第2のケーブル固定部5により固定する(ステップS5)。第2のケーブル固定部5は、芯線被覆部8の周囲に取り付けた型枠内に可溶性樹脂を充填し、脱泡した後、硬化させて形成する。
【0039】
第2のケーブル固定部5の形成後(ステップS5)、第1のケーブル固定部4を切断し、端面に芯線2の断面を露出させて接続面を形成する(ステップS6)。なお、第1のケーブル固定部4の接続端面に露出する上下または左右間の芯線2のピッチは、上下または左右間のケーブル1のピッチと同等の長さである。
【0040】
上記のようにして集合ケーブル10を製造できるが、ケーブル1を配列部材にセットした後、ジャケット3をストリップして芯線露出部7を形成してもよい。また、ジャケット3の材料がフッ素樹脂でない場合は、ステップS4の表面処理を省略することができる。
【0041】
ケーブル接続構造100の製造は、まず、集合ケーブル10と実装用部材20を実装装置にセットする(ステップS11)。図7および8に示すように、集合ケーブル10は、実装装置のステージが備える治具31により固定される。治具31は、集合ケーブル10のケーブル1の軸方向と平行な側面、すなわち、第1のケーブル固定部4と第2のケーブル固定部5のケーブル1の軸方向と平行な側面を、両側から挟み込んで把持する。実装用部材20は、実装装置のヘッド部30により固定される。ヘッド部30は、実装用部材20の実装面の裏面側を吸着により把持固定する。
【0042】
集合ケーブル10と実装用部材20を実装装置にセットした後(ステップS11)、集合ケーブル10の芯線2の位置と、実装用部材20の外部接続電極21の位置を位置合わせする(ステップS12)。位置合わせは、二視野光学系等を用いて行えばよい。
【0043】
位置合わせ後、集合ケーブル10の芯線2と、実装用部材20の外部接続電極21上に形成されたはんだバンプ等の導電性材料22とを当接させる(ステップS13)。芯線2と導電性材料22との当接は、実装装置のヘッド部30を降下、またはステージを上昇させて行えばよい。
【0044】
当接後、導電性材料22を溶融して芯線2と外部接続電極21とを接続する(ステップS14)。ヘッド部30およびステージの加熱部により実装用部材20を加熱して導電性材料22を溶融させる。なお、ヘッド部30およびステージの加熱部による実装用部材20の加熱温度は、第1のケーブル固定部4の材料である不溶性樹脂、および第2のケーブル固定部5の材料である可溶性樹脂のガラス転移点以下の温度とする方が望ましい。ガラス転移点以上の温度に加熱した場合、第1のケーブル固定部4および第2のケーブル固定部5が変形し、治具31による把持姿勢が崩れるおそれがあるからである。また、ヘッド部30の加熱温度は、ステージの加熱温度より大きくすることが好ましい。ステージ温度はケーブル固定部を把持している治具31の温度に顕著に影響を与えるため、ステージの加熱温度を上げすぎると、上述したとおり第1のケーブル固定部4および第2のケーブル固定部5が変形し、治具31による集合ケーブル10の把持姿勢が崩れるおそれがあるためである。
【0045】
接続後、接続部周辺を補強樹脂23で強化する(ステップS15)。芯線2と外部接続電極21との接続後、ケーブル接続構造を実装装置から取り出し、導電性材料22により接続された芯線2と外部接続電極21との接続部周辺に補強樹脂23を充填し、硬化させることにより、接続部周辺を強化する。
【0046】
その後、第2のケーブル固定部5を除去する(ステップS16)。補強樹脂23で補強したケーブル接続構造体を、第2のケーブル固定部5の材料である可溶性樹脂を溶解する有機溶剤またはアルカリに浸漬して、第2のケーブル固定部5を除去する。
【0047】
以上のようにして、本実施の形態のケーブル接続構造100を製造することができる。 本実施の形態のケーブル接続構造100によれば、実装用部材20の外部接続電極21とケーブル1の芯線2とを精度よく接続できるとともに、ケーブル接続構造体100の硬質長を低減することができる。なお、本実施の形態では、4本のケーブル1を固定する集合ケーブルについて説明したが、ケーブル1の固定本数はこれに限定されるものではない。
【0048】
また、第1のケーブル固定部4は、図9に示すようにジャケット3の一部まで覆うように配置しても良い。図9は、本実施の形態の変形例にかかる集合ケーブルの断面図である。本実施の形態の変形例にかかる集合ケーブル10Aにおいて、第1のケーブル固定部4Aは、ケーブル1先端の芯線露出部7を固定すると共にジャケット3により被覆された芯線被覆部8の一部も固定する。第1のケーブル固定部4Aがケーブル1先端の芯線露出部7のみを固定すると、ケーブル1の芯線2とジャケット3の間に微細な隙間がある場合、第2のケーブル固定部5を除去する際の洗浄液が毛細管現象でこの隙間に浸入し、洗浄液が芯線2にダメージを与える恐れがある。変形例にかかる集合ケーブル10Aでは、第1のケーブル固定部4Aがジャケット3で被覆された芯線被覆部8の一部も固定するため、芯線2とジャケット3との微細な隙間からの洗浄液の侵入を防止し、芯線2へのダメージを防ぐ事ができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ケーブル
2 芯線
3 ジャケット
4 第1のケーブル固定部
5 第2のケーブル固定部
6 硬質部
7 芯線露出部
8 芯線被覆部
10、10A 集合ケーブル
20 実装用部材
21 外部接続電極
22 導電性材料
23 補強樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9