特許第6371608号(P6371608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371608
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】ギアードモータおよび自動開閉ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/17 20060101AFI20180730BHJP
   F16H 1/02 20060101ALI20180730BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   F16H55/17 A
   F16H55/17 Z
   F16H1/02
   H02K7/116
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-137229(P2014-137229)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-14436(P2016-14436A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】石水 昭夫
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−219076(JP,A)
【文献】 特開平09−113638(JP,A)
【文献】 特開2013−044351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/17
F16H 1/02
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
該モータの回転を伝達する複数の歯車と、
を有し、
前記複数の歯車には、回転方向の一方方向に付勢するアシストバネが接続されたアシスト歯車が含まれており、
前記アシスト歯車は、外周面に歯が形成された金属製の筒体と、該筒体に連結された樹脂製の軸体と、を備え、
前記筒体には、前記アシストバネの一方の端部が係合する可動側バネ係合部が形成されており、前記可動側バネ係合部は、前記円筒体において軸線方向の少なくとも一方の端面で開口する係合穴からなり、
前記歯は、前記円筒体のうち、角度範囲が360°未満の第1円弧部の外周面に形成されており、前記円筒体のうち、前記歯が形成されていない第2円弧部に前記可動側バネ係合部が形成されており、前記第2円弧部において、前記可動側バネ係合部が形成されている角度範囲は、周方向で隣り合う個所より径方向の厚さが厚くなっており、
前記軸体において前記円筒体の内側に位置する部分の外周面には径方向に突出した凹部が周方向の複数個所に形成され、
前記円筒体の内周面には、前記凹部に嵌る凸部が形成され、
前記第2円弧部において、前記可動側バネ係合部が形成されている角度範囲の内周は、周方向で前記凸部に挟まれた個所より径方向内側に位置することを特徴とするギアードモータ。
【請求項2】
前記第2円弧部の周方向の少なくとも一方の端部は、前記アシスト歯車の回転範囲を規制する回転規制部になっており、
前記可動側バネ係合部、前記歯および前記回転規制部は、軸線方向で重なり、かつ、半径距離が重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のギアードモータ。
【請求項3】
モータと、
該モータの回転を伝達する複数の歯車と、
を有し、
前記複数の歯車には、回転方向の一方方向に付勢するアシストバネが接続されたアシスト歯車が含まれており、
前記アシスト歯車は、外周面に歯が形成された金属製の筒体と、該筒体に連結された樹脂製の軸体と、を備え、
前記筒体には、前記アシストバネの一方の端部が係合する可動側バネ係合部が形成されており、
前記アシスト歯車は、前記筒体をインサート成形してなり、
前記軸体において前記筒体から突出している部分のうち、前記可動側バネ係合部に対して軸線方向で隣り合う部分は、前記可動側バネ係合部より径方向の内側に位置することを特徴とするギアードモータ。
【請求項4】
前記アシスト歯車は、前記モータの回転を出力する出力軸であり、
前記複数の歯車のうち、前記アシスト歯車と前記モータとの間に配置された歯車は、減速輪列を構成していることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のギアードモータ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のギアードモータを備えた自動開閉ユニットであって、
前記出力軸には蓋材が連結されていることを特徴とする自動開閉ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力軸にアシストバネを設けたギアードモータ、および当該ギアードモータを備えた自動開閉ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋式トイレの便蓋や洗濯機の蓋等を自動開閉する自動開閉ユニットでは、ギアードモータの出力軸に蓋材を取り付けて、蓋体の駆動を行う。その際、蓋材に加わる重力と抗する方向の付勢力を発揮するアシストバネを設けることが提案されている(特許文献1)。例えば、特許文献1に記載のギアードモータでは、全体が樹脂製の出力軸にアシストバネを設けた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−84923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、アシストバネが樹脂製の出力軸に当接している構成を採用すると、長期間使用しているうちに、出力軸においてアシストバネの端部が当接している個所が変形し、アシストバネの端部が変化してしまう。かかる変化が発生すると、アシストバネの付勢力が低下し、最悪の場合、モータの駆動では、蓋材(出力軸)を駆動できなくなる。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、アシストバネが接続されたアシスト歯車に対して、アシストバネを長期間にわたって安定した状態で接続させておくことのできるギアードモータおよび自動開閉ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るギアードモータは、モータと、該モータの回転を伝達する複数の歯車と、を有し、前記複数の歯車には、回転方向の一方方向に付勢するアシストバネが接続されたアシスト歯車が含まれており、前記アシスト歯車は、外周面に歯が形成された金属製の筒体と、該筒体に連結された樹脂製の軸体と、を備え、前記筒体には、前記アシストバネの一方の端部が係合する可動側バネ係合部が形成されており、前記可動側バネ係合部は、前記円筒体において軸線方向の少なくとも一方の端面で開口する係合穴からなり、前記歯は、前記円筒体のうち、角度範囲が360°未満の第1円弧部の外周面に形成されており、前記円筒体のうち、前記歯が形成されていない第2円弧部に前記可動側バネ係合部が形成されており、前記第2円弧部において、前記可動側バネ係合部が形成されている角度範囲は、周方向で隣り合う個所より径方向の厚さが厚くなっており、前記軸体において前記円筒体の内側に位置する部分の外周面には径方向に突出した凹部が周方向の複数個所に形成され、前記円筒体の内周面には、前記凹部に嵌る凸部が形成され、前記第2円弧部において、前記可動側バネ係合部が形成されている角度範囲の内周は、周方向で前記凸部に挟まれた個所より径方向内側に位置することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るギアードモータにおいて、アシストバネが接続されたアシスト歯車は、外周面に歯が形成された金属製の筒体と、筒体に連結された樹脂製の軸体とを備え、金属製の筒体にアシストバネの一方の端部が係合する可動側バネ係合部が形成されている。このため、長期間使用しても、出力軸においてアシストバネの端部が当接している個所が
変形することがないので、アシストバネを安定した状態で接続させておくことができる。それ故、アシストバネの付勢力が変化しにくい。また、アシスト歯車において、軸体が樹脂製であるため、軽量化やコストの低減等を図ることができるとともに、種々の形状を実現できる等の利点がある。
【0008】
また、本発明では、前記可動側バネ係合部は、前記筒体において軸線方向の少なくとも一方の端面で開口する係合穴からなる。従って、アシストバネの端部を可動側バネ係合部(係合穴)に係合させることができる。また、筒体が金属製であるため、可動側バネ係合部が係合穴であっても、係合穴周辺は十分な強度を有する。
【0009】
さらに、本発明では、前記歯は、前記筒体のうち、角度範囲が360°未満の第1円弧部の外周面に形成されており、前記筒体のうち、前記歯が形成されていない第2円弧部に前記可動側バネ係合部が形成されている。従って、歯の存在にかかわらず、サイズ等が適正な可動側バネ係合部を設けることができる。加えて、本発明では、前記第2円弧部において、前記可動側バネ係合部が形成されている角度範囲は、周方向で隣り合う個所より径方向の厚さが厚いため、可動側バネ係合部が係合穴であっても、係合穴周辺に十分な肉厚を確保することができる。従って、筒体を焼結等により形成するのに適している。また、本発明では、前記軸体において前記筒体の内側に位置する部分の外周面には径方向に突出した凹部が周方向の複数個所に形成され、前記円筒体の内周面には、前記凹部に嵌る凸部が形成され、前記第2円弧部において、前記可動側バネ係合部が形成されている角度範囲の内周は、周方向で前記凸部に挟まれた個所より径方向内側に位置する。従って、可動側バネ係合部が係合穴であっても、係合穴周辺に十分な肉厚を確保することができる。従って、筒体を焼結等により形成するのに適している。
【0010】
本発明において、前記第2円弧部の周方向の少なくとも一方の端部は、前記アシスト歯車の回転範囲を規制する回転規制部になっており、前記可動側バネ係合部、前記歯および前記回転規制部は、軸線方向で重なり、かつ、半径距離が重なる位置に設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、可動側バネ係合部や回転規制部を筒体に設けても、筒体が金属製であるため、歯の変形等が発生しにくい。
【0011】
次に、本発明は、モータと、該モータの回転を伝達する複数の歯車と、を有し、前記複数の歯車には、回転方向の一方方向に付勢するアシストバネが接続されたアシスト歯車が含まれており、前記アシスト歯車は、外周面に歯が形成された金属製の筒体と、該筒体に連結された樹脂製の軸体と、を備え、前記筒体には、前記アシストバネの一方の端部が係合する可動側バネ係合部が形成されており、前記アシスト歯車は、前記筒体をインサート成形してなり、前記軸体において前記筒体から突出している部分のうち、前記可動側バネ係合部に対して軸線方向で隣り合う部分は、前記可動側バネ係合部より径方向の内側に位置することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るギアードモータにおいて、アシストバネが接続されたアシスト歯車は、外周面に歯が形成された金属製の筒体と、筒体に連結された樹脂製の軸体とを備え、金属製の筒体にアシストバネの一方の端部が係合する可動側バネ係合部が形成されている。このため、長期間使用しても、出力軸においてアシストバネの端部が当接している個所が変形することがないので、アシストバネを安定した状態で接続させておくことができる。それ故、アシストバネの付勢力が変化しにくい。また、アシスト歯車において、軸体が樹脂製であるため、軽量化やコストの低減等を図ることができるとともに、種々の形状を実現できる等の利点がある。また、本発明では、アシスト歯車は、モータの回転を出力する出力軸であり、複数の歯車のうち、アシスト歯車とモータとの間に配置された歯車は、減速輪列を構成している。従って、アシスト歯車の回転角度範囲が狭いので、アシストバネを設けるのに適している。さらに、本発明では、アシスト歯車は、筒体をインサート成形してなる。従って、金属製の筒体と樹脂製の軸体とを備えたアシスト歯車を効率よく製造することができるので、製造コストを低減することができる。
【0013】
本発明において、前記アシスト歯車は、前記モータの回転を出力する出力軸であり、前記複数の歯車のうち、前記アシスト歯車と前記モータとの間に配置された歯車は、減速輪列を構成している構成を採用することができる。かかる構成によれば、アシスト歯車の回転角度範囲が狭いので、アシストバネを設けるのに適している。
【0016】
本発明を適用したギアードモータは自動開閉ユニット等に用いることができ、自動開閉ユニットでは、前記出力軸には蓋材が連結される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るギアードモータにおいて、アシストバネが接続されたアシスト歯車は、外周面に歯が形成された金属製の筒体と、筒体に連結された樹脂製の軸体とを備え、金属製の筒体にアシストバネの一方の端部が係合する可動側バネ係合部が形成されている。このため、長期間使用しても、出力軸においてアシストバネの端部が当接している個所が変形することがないので、アシストバネを安定した状態で接続させておくことができる。それ故、アシストバネの付勢力が変化しにくい。また、アシスト歯車において、軸体が樹脂製であるため、軽量化やコストの低減等を図ることができるとともに、種々の形状を実現できる等の利点がある。また、本発明に係るギアードモータにおいて、前記可動側バネ係合部は、前記筒体において軸線方向の少なくとも一方の端面で開口する係合穴からなるため、アシストバネの端部を可動側バネ係合部(係合穴)に係合させることができる。さらに、円筒体が金属製であるため、可動側バネ係合部が係合穴であっても、係合穴周辺は十分な強度を有する。また、前記歯は、前記円筒体のうち、角度範囲が360°未満の第1円弧部の外周面に形成されており、前記円筒体のうち、前記歯が形成されていない第2円弧部に前記可動側バネ係合部が形成されているため、歯の存在にかかわらず、サイズ等が適正な可動側バネ係合部を設けることができる。また、前記第2円弧部において、前記可動側バネ係合部が形成されている角度範囲は、周方向で隣り合う個所より径方向の厚さが厚いため、可動側バネ係合部が係合穴であっても、係合穴周辺に十分な肉厚を確保することができる。従って、筒体を焼結等により形成するのに適している。また、前記軸体において前記筒体の内側に位置する部分の外周面には径方向に突出した凹部が周方向の複数個所に形成され、前記円筒体の内周面には、前記凹部に嵌る凸部が形成され、前記第2円
弧部において、前記可動側バネ係合部が形成されている角度範囲の内周は、周方向で前記凸部に挟まれた個所より径方向内側に位置するため、可動側バネ係合部が係合穴であっても、係合穴周辺に十分な肉厚を確保することができる。従って、筒体を焼結等により形成するのに適している。あるいは、本発明に係るギアードモータにおいて、アシスト歯車は、モータの回転を出力する出力軸であり、複数の歯車のうち、アシスト歯車とモータとの間に配置された歯車は、減速輪列を構成しているため、アシスト歯車の回転角度範囲が狭いので、アシストバネを設けるのに適している。さらに、アシスト歯車は、筒体をインサート成形してなるため、金属製の筒体と樹脂製の軸体とを備えたアシスト歯車を効率よく製造することができるので、製造コストを低減することができる。

【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用したギアードモータを備えた自動開閉ユニットの説明図である。
図2】本発明を適用したギアードモータの内部構成を示す説明図である。
図3】本発明を適用したギアードモータに構成した輪列の説明図である。
図4】本発明を適用したギアードモータの輪列における各歯車の噛合関係を展開して模式的に示す説明図である。
図5】本発明を適用したギアードモータの輪列における支軸の支持構造を一方側からみた説明図である。
図6】本発明を適用したギアードモータの輪列における支軸の支持構造を他方側からみた説明図である。
図7】本発明を適用したギアードモータの輪列における支軸を支持する部分の説明図である。
図8】本発明を適用したギアードモータの出力軸の説明図である。
図9】本発明を適用した別のギアードモータにおける支持部材の位置決め構造を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明を適用したギアードモータおよび自動開閉ユニットを説明する。なお、以下の説明では、出力軸の回転中心軸線を軸線Lとして説明する。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したギアードモータ1を備えた自動開閉ユニット100の説明図であり、図1(a)、(b)は、ギアードモータ1を出力軸3が突出している側(軸線L方向の一方側L1)からみた斜視図、およびギアードモータ1を出力軸3が突出している側とは反対側(軸線L方向の他方側L2)からみた斜視図である。図2は、本発明を適用したギアードモータ1の内部構成を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)は、ギアードモータ1から第1ケース部材21およびカバー25を外した状態の分解斜視図、さらに第2ケース部材や検出部材91等の図示を省略した場合の斜視図、およびさらにアシストバネ70を外した状態の分解斜視図である。なお、本形態のギアードモータ1においてリード線95は3本が用いられているが、図2(a)には、リード線95を1本のみ図示してある。
【0021】
図1に示すように、本形態のギアードモータ1は、全体として略円筒状のケース2を有しており、ケース2から軸線L方向の一方側L1へは出力軸3の先端部301が突出している。先端部301の側面は、相対向する2つの平坦面が形成されている。ギアードモータ1を用いて自動開閉ユニット100を構成する場合、出力軸3の先端部301には、一点鎖線で示す蓋材10が連結される。蓋材10は、洋式トイレの便蓋や便座である。また、蓋材10は、洗濯機の蓋材であってもよい。
【0022】
かかる自動開閉ユニット100において、ギアードモータ1は、出力軸3を軸線L周りに回転させて蓋材10の開閉を行う。例えば、ギアードモータ1は、出力軸3を軸線L周りの一方方向R1に回転させて蓋材10を開方向に駆動する一方、出力軸3を軸線L周りの他方方向R2に回転させて蓋材10を閉方向に駆動する。本形態の自動開閉ユニット100において、蓋材10は、洋式トイレの便蓋や便座である。このため、自動開閉ユニット100は、出力軸3が水平となるように配置され、蓋材10は、水平な軸線周りに駆動される。
【0023】
本形態のギアードモータ1において、ケース2は、軸線L方向の一方側L1に向けて開口する第1ケース部材21と、第1ケース部材21に対して軸線L方向の一方側L1で他方側L2に向けて開口する第2ケース部材22とを有している。従って、第2ケース部材22の一方側L1の端面には出力軸3の先端部301を突出させる穴223が形成されている。本形態では、第2ケース部材22のフランジ部220に止められたネジ(図示せず)によって、第1ケース部材21と第2ケース部材22とが結合される。
【0024】
以下、軸線L方向の一方側L1については単に一方側L1として説明し、軸線L方向の他方側L2については単に他方側L2として説明する。
【0025】
図1および図2に示すように、第2ケース部材22は、円筒状の筒部221と、筒部221から径方向に突出した中空のセンサ支持部225とを有している、センサ支持部225の内部にはセンサ歯車97が配置され、センサ歯車97の一方側には、出力軸3の角度位置を検出する検出部材91やセンサ基板92が配置される。また、センサ支持部225には一方側L1からカバー25が被せられる。その際、カバー25の側面に形成された係合突起258に第2ケース部材22のフック228が係合し、カバー25が第2ケース部材22に固定される。この状態で、センサ歯車97、検出部材91およびセンサ基板92は、板状の保護部材27を介してカバー25によって一方側L1が覆われる。
【0026】
ケース2の内部には、出力軸3を回転駆動する駆動機構4が設けられている。駆動機構4は、正逆回転が可能なモータ40と、モータ40の回転を出力軸3に伝達する輪列50とを有しており、輪列50は、モータ40の回転を減速して出力軸3に伝達する減速輪列として構成されている。また、第2ケース部材22の筒部221の内側には、出力軸3の周りに捩じりコイルバネからなるアシストバネ70が配置されている。アシストバネ70の一方の端部71は出力軸3と係合し、アシストバネ70の他方の端部72は第2ケース部材22の側と係合している。アシストバネ70は、付勢力を発揮するように変形させた状態で組み込まれており、アシストバネ70は、図1に示す一方方向R1の付勢力を発揮する。かかる一方方向R1は、蓋材10を平伏状態から起立させる方向であり、蓋材10を重力に抗して回転させる方向である。従って、アシストバネ70は、駆動機構4による駆動を補助する。
【0027】
モータ40は、第1ケース部材21の内側にモータ軸(図示せず)を一方側L1に向けて配置され、モータ40に対して一方側L1では、第1ケース部材21の内側および第2ケース部材22の内側に輪列50が配置される。モータ40の他方側L2にはモータ基板48が配置され、モータ基板48の他方側には、ケース2の外部からモータ基板48を介してモータへの給電、およびケース2の外部への検出部材91での検出結果の出力を行う入出力部49が配置されている。本形態において、入出力部49はコネクタによって構成されており、第1ケース部材21の他方側L2の端部215には入出力部49(コネクタ)を他方側L2から覆うカバー部216が形成されている。本形態では、入出力部49がコネクタによって構成されていたが、後述するリード線95やモータ40に対する給電用のリード線の引き出し部として入出力部49が構成されていてもよい。
【0028】
(輪列50の概略構成)
図3は、本発明を適用したギアードモータ1に構成した輪列50の説明図であり、図3(a)、(b)、(c)は、輪列50等を軸線L方向の一方側L1からみた斜視図、出力軸3を外した状態を軸線L方向の一方側L1からみた分解斜視図、および出力軸3を外した状態を軸線L方向の他方側L2からみた斜視図である。図4は、本発明を適用したギアードモータ1の輪列50における各歯車の噛合関係を展開して模式的に示す説明図である。
【0029】
図2に示すように、本形態では、輪列50を配置するにあたって、第2ケース部材22において他方側L2に向く部分を輪列50に対する第1支持部材81として利用する。また、輪列50を配置するにあたって、第2ケース部材22(第1支持部材81)の他方側L2に第2支持部材82が配置され、第2支持部材82の他方側L2に第3支持部材83が配置される。第3支持部材83は、第1ケース部材21の内側に位置し、第2支持部材82は、第1ケース部材21と第2ケース部材22との間に保持される。また、第3支持部材83は、モータ40の固定部材として利用される。より具体的には、モータ40は、第3支持部材83に対してネジ409によって固定され、この状態で、モータ40のモータ軸(図示せず)は、第3支持部材83から一方側L1に突出する。
【0030】
また、第1支持部材81と第2支持部材82との間、第2支持部材82と第3支持部材83との間、および第1支持部材81と第3支持部材83との間に、歯車を支持する支軸を設ける。
【0031】
より具体的には、図3および図4に示すように、輪列50は、1番車51、2番車52、3番車53および4番車54を有しており、1番車51は、第3支持部材83と第2支持部材82とに両端が支持された第1支軸61(固定軸)によって回転可能に支持されている。かかる1番車51は、モータピニオン405に噛合する大径歯車511と、大径歯車511の一方側L1に同軸に形成された小径歯車512とを有している。2番車52は、第3支持部材83と第2支持部材82とに両端が支持された第2支軸62(固定軸)によって回転可能に支持されている。かかる2番車52は、1番車51の小径歯車512に噛合する大径歯車521と、大径歯車521の一方側L1に同軸に形成された小径歯車522とを有している。
【0032】
3番車53は、第3支持部材83と第1支持部材81とに両端が支持された第3支軸63(固定軸)によって回転可能に支持されている。かかる3番車53は、2番車52の小径歯車522に噛合する大径歯車531と、大径歯車531の一方側L1に同軸に形成された小径歯車532とを有している。本形態では、3番車53は、大径歯車531と小径歯車532とが同軸に配置された別部材によって構成されており、大径歯車531を構成する部材と小径歯車532を構成する部材との間には、リング状のクラッチ部材が配置されている。このため、大径歯車531と小径歯車532との間に大きな負荷が加わった際、大径歯車531を構成する部材と小径歯車532を構成する部材とが空周りする。従って、例えば、モータ40が輪列50を介して出力軸3を駆動している途中で、図1に示す蓋材10が手動で操作される等、出力軸3に過大な外力が加わった場合でも、輪列50が損傷しない。
【0033】
4番車54は、第2支持部材82と第1支持部材81とに両端が支持された第4支軸64(固定軸)によって回転可能に支持されている。かかる4番車54は、3番車53の小径歯車532に噛合する大径歯車541と、大径歯車541の一方側L1に同軸に形成された小径歯車542とを有している。また、小径歯車542には、出力軸3の歯353が噛合している。
【0034】
(支持部材の位置決め構造)
このように輪列50を支持するにあたっては、第1支持部材81、第2支持部材82および第3支持部材83を軸線Lに対して直交する方向で正確に位置決めする必要がある。そこで、本形態では、第1支持部材81、第2支持部材82および第3支持部材83のうち、第1支持部材81または第2支持部材82は、他の2つの支持部材を軸線方向に対して直交する方向の位置決めを行う位置決め部を備えている。本形態において、第1支持部材81は、他の2つの支持部材(第2支持部材82および第3支持部材83)を軸線Lに
対して直交する方向の位置決めを行う位置決め部を備えている。
【0035】
より具体的には、図4に示すように、第1支持部材81は、他方側L2に向かって突出する2本の位置決め突起815、816が形成されている。また、第2支持部材82は、位置決め突起815、816が各々貫通する位置決め穴825、826が形成されており、第3支持部材83には、位置決め突起815、816のうち、第2支持部材82の位置決め穴825、826を貫通し端部が嵌る位置決め穴835、836が形成されている。
【0036】
このため、第2支持部材82および第3支持部材83は、第1支持部材81を基準に軸線L方向に対して直交する方向に正確に位置決めされている。
【0037】
(支持部材の詳細構成)
図5は、本発明を適用したギアードモータ1の輪列50における支軸の支持構造を一方側L1からみた説明図であり、図5(a)、(b)は、第3支持部材83を外した状態を軸線L方向の一方側L1からみた分解斜視図、さらに第2支持部材82を外した状態を軸線L方向の一方側L1からみた分解斜視図である。図6は、本発明を適用したギアードモータ1の輪列50における支軸の支持構造を他方側L2からみた説明図であり、図6(a)、(b)は、第3支持部材83を外した状態を軸線L方向の他方側L2からみた分解斜視図、さらに第2支持部材82を外した状態を軸線L方向の他方側L2からみた分解斜視図である。なお、図5および図6では、歯車の図示を省略してある。
【0038】
図7は、本発明を適用したギアードモータ1の輪列50における支軸を支持する部分の説明図である。図7において、図7(a)、(b)、(c)、(d)は、輪列50が第2支持部材82に支持されている様子を軸線L方向の一方側L1からみた平面図、第3支持部材83を軸線L方向の一方側L1からみた平面図、第2支持部材82を軸線L方向の一方側L1からみた平面図、および第3支持部材83(第2ケース部材22)を軸線L方向の一方側L1からみた平面図である。図7において、図7(e)、(f)、(g)、(h)は、第3支持部材83を軸線L方向の他方側L2からみた底面図、第2支持部材82を軸線L方向の他方側L2からみた底面図、第3支持部材83(第2ケース部材22)を軸線L方向の他方側L2からみた底面図、および輪列50が第2支持部材82に支持されている様子を軸線L方向の他方側L2からみた底面図である。
【0039】
図5図6および図7に示すように、第3支持部材83は、略円形の底板部831を有しており、底板部831の外周縁において周方向の離間する位置からは隔壁832、833、834が一方側L1に突出している。第3支持部材83において、隔壁832と隔壁833との間は切り欠き838aになっており、隔壁833と隔壁834との間は切り欠き838bになっている。
【0040】
隔壁832、833、834のうち、隔壁834は、一方側L1の端部に扇形形状をもって径方向外側に突出した板状の突出部834jを有しており、第3支持部材83を第1ケース部材21に収容した際、第1ケース部材21の内周壁210に形成した段部(図示せず)が他方側L2から当接するとともに、段部に形成した突起が突出部834jに形成した穴834kに嵌る。このようにして、第1ケース部材21と第3支持部材83との軸線L方向の位置決めが行われる。
【0041】
隔壁832および隔壁833は、隔壁834より一方側L1に突出しており、隔壁832の一方側L1の端面および隔壁833の一方側L1の端面は、第2支持部材82の他方側L2の面に当接する。隔壁832の一方側L1の端面には、図4を参照して説明した位置決め穴835が形成され、隔壁833の一方側L1の端面には、図4を参照して説明した位置決め穴836が形成されている。隔壁832および隔壁833において、位置決め
穴835、836が形成されている部分は、径方向外側に突出した円筒部835a、836aになっており、第3支持部材83を第1ケース部材21に収容した際、第1ケース部材21の内周壁210が円筒部835a、836aに径方向外側から当接する。このようにして、第1ケース部材21と第3支持部材83との軸線Lに直交する方向の位置決めが行われる。
【0042】
第3支持部材83において、底板部831には、第1支軸61の他方側L2の端部61aを支持する軸穴831aと、第2支軸62の他方側L2の端部62aを支持する軸穴831bとが形成されている。また、第3支持部材83において、隔壁834の一方側L1の端面には第3支軸63の他方側L2の端部63aを支持する軸穴831cが形成されている。
【0043】
このようにして第2支軸62および第3支軸63を支持した結果、2番車52の大径歯車521の一部は、軸線L方向からみたとき、切り欠き838a内に位置し、2番車52の大径歯車521の一部は、軸線L方向からみたとき、切り欠き838a内に位置し、1番車51の大径歯車511の一部は、軸線L方向からみたとき、切り欠き838b内に位置する。また、3番車53の大径歯車531の一部は、突出部834jより径方向外側にわずかに張り出すが、第1ケース部材21の内周壁210には接触しない。
【0044】
第2支持部材82において、略矩形の本体部821には、3番車53の小径歯車532を貫通させる半円状の切り欠きからなる貫通部822が形成されており、かかる貫通部822を第3支軸63が通っている。また、本体部821の他方側L2の面には、第1支軸61の一方側L1の端部61bを支持する軸穴821aと、第2支軸62の一方側L1の端部62bを支持する軸穴821bとが形成されている。また、本体部821の一方側L1の面には、第4支軸64の他方側L2の端部64aを支持する軸穴821dが形成されている。
【0045】
また、第2支持部材82において、略矩形の本体部821には、図4を参照して説明した位置決め穴825、826が貫通穴として形成されている。
【0046】
さらに、第2支持部材82の外縁には、本体部821の湾曲部821sに沿うように延在したフック状突起829が形成されており、フック状突起829の先端は、径方向内側に屈曲している。かかるフック状突起829と湾曲部821sとによって囲まれた部分が、後述するリード線位置決め部829aとして利用される。
【0047】
本体部821の一方側L1の面には、出力軸3を回転可能に支持する軸部827が形成されており、かかる軸部827は、本体部821の一方側L1の面から突出する凸部828から一方側L1に突出している。凸部828の外周縁には、4番車54の大径歯車541との干渉を避けるための円弧状の切り欠き828aが形成されている。
【0048】
第2ケース部材22において、他方側L2に向く部分(第1支持部材81)には、第3支軸63の一方側L1の端部61bを支持する軸穴81cと、第4支軸64の一方側L1の端部64bを支持する軸穴81dとが形成されている。また、第1支持部材81には、図4を参照して説明した位置決め突起815、816が形成されている。
【0049】
さらに、第2ケース部材22(第1支持部材81)において、図2に示すアシストバネ70の他方の端部72が係合する溝状の凹部からなる固定側バネ係合部814(図7(g)参照)が形成されている。
【0050】
本形態では、図5図7等を参照して説明したように、3つの支持部材(第1支持部材
81、第2支持部材82、および第3支持部材83を軸線L方向に配置し、第1支持部材81と第2支持部材82との間や、第1支持部材81と第3支持部材83との間等を利用して輪列50を構成する歯車(1番車51、2番車52、3番車53、および4番車54)を配置する。このため、平歯車によって、十分な減速比を有する輪列50を構成することができるとともに、軸線L方向からみたとき、輪列50が占有する面積が狭い。また、第1支持部材81、第2支持部材82、および第3支持部材83は、第1支持部材81に設けた位置決め突起815、816(位置決め部)を基準に位置決めされるため、支持部材相互の位置精度が高い。特に、本形態では、第1支持部材81が位置決め突起815、816(位置決め部)を備えているため、大きく離間した第1支持部材81と第3支持部材83との間でも第3支軸63の傾きが発生しにくい。それ故、3番車53が2番車52や4番車54が適正に噛合するので、大きな異音(ノイズ)が発生しにくい。
【0051】
また、本形態の輪列50は、他の歯車の軸に対して軸線L方向で重なる歯車を含んでいる。例えば、本形態では、1番車51の第1支軸61に対して4番車54が軸線L方向で重なっている。このため、軸線L方向からみたときに輪列50が占有する面積を狭くすることができる。
【0052】
また、第1支持部材81には、アシストバネ70の端部72が係合する固定側バネ係合部814が設けられている。このため、ギアードモータ1を組み立てる際、第1支持部材81に出力軸3およびアシストバネ70を設けておき、出力側から順に歯車を噛合させながら、第1支持部材81に対して第2支持部材82や第3支持部材83を順次、組み付けていくことができる。
【0053】
(出力軸3の構成)
図8は、本発明を適用したギアードモータ1の出力軸3の説明図であり、図8(a)、(b)、(c)、(d)は、出力軸3を一方側L1からみた斜視図、出力軸3を分解した様子を一方側L1からみた分解斜視図、出力軸3を他方側L2からみた斜視図、および出力軸3の筒体35を一方側L1からみた平面図である。
【0054】
図2および図8に示すように、出力軸3は、回転方向の一方方向R1に付勢するアシストバネ70が接続されたアシスト歯車になっている。本形態において、出力軸3は、外周面に歯353が形成された金属製の筒体35と、筒体35に連結された樹脂製の軸体30とを備えている。本形態において、筒体35は、アシストバネ70が周りに配置される大径部306と、大径部306の先端側(一方側L1)に設けられた先端部301とを備えており、大径部306と先端部301との間には、2本の環状のリブ302で挟まれた周溝304が形成されている。本形態において、筒体35は焼結部材である。
【0055】
また、筒体35には、アシストバネ70の一方の端部71が係合する可動側バネ係合部355が形成されている。本形態において、可動側バネ係合部355は、筒体35において軸線L方向の少なくとも一方の端面で開口する係合穴からなり、可動側バネ係合部355(係合穴)は、筒体35において、少なくとも軸線L方向において大径部306が位置する側(一方側L1)で開口している。本形態において、可動側バネ係合部355は、筒体35を軸線L方向で貫通する係合穴になっており、筒体35の軸線L方向の一方側L1の端面および他方側L2の端面の双方で開口している。
【0056】
本形態において、歯353は、筒体35のうち、角度範囲が360°未満の第1円弧部358の外周面に形成されており、筒体35のうち、歯353が形成されていない第2円弧部357に可動側バネ係合部355が形成されている。
【0057】
第2円弧部357の周方向の少なくとも一方の端部は、4番車54の小径歯車542の
歯と干渉して出力軸3の回転範囲を規制する回転規制部になっており、本形態において、第2円弧部357の周方向の両方の端部が回転規制部357a、357bになっている。ここで、筒体35では、可動側バネ係合部355、歯353および回転規制部357a、357bは、軸線L方向で重なっている。すなわち、可動側バネ係合部355、歯353および回転規制部357a、357bの軸線L方向における形成範囲は、軸線Lに対して直交する方向からみたとき重なっている。本形態では、可動側バネ係合部355、歯353および回転規制部357a、357bは、筒体35の軸線L方向の全体にわたって形成されているため、可動側バネ係合部355、歯353および回転規制部357a、357bは、軸線L方向で完全に重なっている。また、可動側バネ係合部355、歯353および回転規制部357a、357bの径方向における形成範囲は、半径距離が重なっている。
【0058】
また、第2円弧部357において、可動側バネ係合部355が形成されている角度範囲は、周方向で隣り合う個所より径方向の厚さが厚い。具体的には、筒体35は、円筒体であることから、筒体35と軸体30との空周りを防止することを目的に、軸体30において筒体35の内側に位置する部分の外周面には径方向に突出した凹部307が周方向の複数個所に形成され、筒体35の内周面には、凹部307に嵌る凸部359が形成されており、可動側バネ係合部355が形成されている角度範囲の内周は、周方向で凸部359に挟まれた個所より径方向内側に位置する。本形態において、凸部359および凹部307は軸線L方向に延在するように形成されている。なお、軸体30において、凹部307が形成されている領域の軸線L方向の両側は、大径部306より径方向外側に突出したフランジ部308、309になっている。
【0059】
かかる出力軸3は、筒体35をインサート成形してなる。このため、軸体30において筒体35から突出している部分のうち、可動側バネ係合部355に対して軸線L方向で隣り合う部分は、可動側バネ係合部355より径方向の内側に位置する。より具体的には、軸体30において可動側バネ係合部355と同一の角度位置に位置する部分では、フランジ部308、309および大径部306に直線状の逃がし部308a、309aおよび平坦な逃がし部306aが形成されており、かかる逃がし部306a、308a、309aは、可動側バネ係合部355より径方向の内側に位置する。従って、インサート成形する際、大径部306およびフランジ部308、309を形成しようとする樹脂が可動側バネ係合部355に流れ込みにくい。
【0060】
このように本形態では、アシストバネ70が接続された出力軸3(アシスト歯車)は、外周面に歯353が形成された金属製の筒体35と、筒体35に連結された樹脂製の軸体30とを備え、金属製の筒体35にアシストバネ70の端部71が係合する可動側バネ係合部355が形成されている。このため、長期間使用しても、出力軸3においてアシストバネ70の端部71が当接している個所が変形することがないので、アシストバネ70を安定した状態で接続させておくことができる。それ故、アシストバネ70の付勢力が変化しにくい。また、軸体30が樹脂製であるため、軽量化やコストの低減等を図ることができるとともに、種々の形状を実現できる等の利点がある。
【0061】
また、本形態において、筒体35が金属製であるため、可動側バネ係合部355が係合穴であっても、係合穴周辺は十分な強度を有する。
【0062】
また、可動側バネ係合部355は、歯353が形成されていない第2円弧部357に形成されているため、歯353の大きさや形状等にかかわらず、サイズ等が適正な可動側バネ係合部355を設けることができる。
【0063】
また、可動側バネ係合部355、歯353および回転規制部357a、357bは、軸
線L方向で重なり、かつ、半径距離が重なる位置に設けられているが、筒体35が金属製であるため、歯353の変形等が発生しにくい。
【0064】
さらに、第2円弧部357において、可動側バネ係合部355が形成されている角度範囲は、周方向で隣り合う個所より径方向の厚さが厚いため、可動側バネ係合部355が係合穴であっても、係合穴周辺に十分な肉厚を確保することができる。従って、筒体35を焼結等により形成するのに適している。
【0065】
また、複数の歯車のいずれをアシストバネ70が接続されたアシスト歯車としてもよい。但し、本形態では、出力軸3をアシストバネ70が接続されたアシスト歯車としてある。このため、アシスト歯車の回転角度範囲が狭いので、アシストバネ70を設けるのに適している。
【0066】
(リード線95の構成)
図2等に示すように、本形態では、モータ40に対して軸線L方向の一方側L1の輪列50が配置され、第2ケース部材22のセンサ支持部225には、輪列50に対して軸線L方向の一方側で出力軸3の角度位置を検出する検出部材91が配置されている。本形態において、検出部材91は、ポテンショメータであり、4番車54の小径歯車542に噛合するセンサ歯車97の軸96が検出部材91に連結されている。従って、センサ歯車97の角度位置を検出部材91によって検出すれば、出力軸3の角度位置を検出することができる。
【0067】
本形態では、軸96の他方側L2の端部は、センサ支持部225の内側に形成された支持板(図示せず)に回転可能に支持されている。また、図5に示すように、センサ支持部225には、センサ歯車97を配置する穴227が形成されているとともに、穴227の周りは、センサ基板92を支持する受け部229が形成されている。また、受け部229にはセンサ基板92を位置決めする凸部229aが形成されている。
【0068】
ここで、ケース2の外部からモータ基板48を介してモータ40への給電、およびケース2の外部への検出部材91での検出結果の出力を行う入出力部49(コネクタ)は、モータ40に対して他方側L2が構成されているため、検出部材91が搭載されたセンサ基板92から入出力部49には複数本のリード線95を延在させる必要がある。そこで、本形態では、輪列50とケース2(第1ケース部材21)との間を通る際、第3支持部材83に形成した隔壁832とケース2(第1ケース部材21)との間を通って複数本のリード線95を延在させる。このため、輪列50と複数本のリード線95との間には隔壁832が介在することになる。ここで、隔壁832と第1ケース部材21との間隔は、リード線95において隔壁832と第1ケース部材21との間以外に位置する部分の外径寸法より狭い。このため、リード線95は、隔壁832と第1ケース部材21との間に保持されるので、リード線95が不用意に動かない。すなわち、リード線95は、芯線の周りが可撓性の絶縁層で覆われており、図2(a)に示すように、リード線95を配置した後、第1ケース部材21を被せると、隔壁832と第1ケース部材21との間で、リード線95の絶縁層が変形し、隔壁832とケース2との間に保持される。
【0069】
このように本形態では、輪列50を挟んで反対側にモータ40および検出部材91を配置してあるが、モータ40および検出部材91に対する入出力部49を1個所に設けてある。このため、外部との電気的な接続が容易である。この場合、リード線95は、輪列50とケース2との間を通ることになるが、リード線95と輪列50との間には隔壁832が介在するため、リード線95と輪列50に用いた歯車との接触が発生しにくい。
【0070】
また、リード線95は、隔壁832とケース2との間に保持されているため、リード線
95が不用意に動かないので、リード線95と輪列50に用いた歯車との接触が発生しにくい。
【0071】
また、隔壁832は、モータ40、および輪列50を支持する第3支持部材83に設けられているため、隔壁832を設けるために部材を追加する必要がない。また、第3支持部材83には、ケース2に用いた第1ケース部材21が軸線L方向および径方向で部分的に当接している。このため、第3支持部材83とケース2(第1ケース部材21)との位置決めを行うことができるので、ケース2に対して所定の位置に隔壁832を設けることができる。
【0072】
また、本形態では、リード線95に対して周方向から離間する位置には、隔壁832と隔壁833との間には切り欠き838aが形成されており、軸線L方向からみたとき、2番車52の大径歯車521の一部は、切り欠き838a内に位置している。従って、隔壁832を設けた場合でも、隔壁832の切り欠き838aを歯車を配置する部位として利用するため、隔壁832を設けた場合でも、軸線Lに直交する方向のギアードモータ1のサイズの増大を最小限に止めることができる。
【0073】
この場合、リード線95と2番車52の大径歯車521とが接触するおそれが発生する。そこで、本形態では、第2支持部材82の外縁において、フック状突起829と湾曲部821sとによって囲まれたリード線位置決め部829aにリード線95を通すことによって、リード線95が切り欠き838aの側に移動することを防止している。
【0074】
ここで、フック状突起829は、第2支持部材82の外縁に沿って延在した凸部からなるため、リード線位置決め部829aの周方向の一方側(フック状突起829の先端側)が開放状態にある。従って、検出部材91の側にリード線95を接続した後、リード線位置決め部829aの周方向の一方側(フック状突起829の先端側)からリード線位置決め部829aの内側にリード線95を通すことができる。
【0075】
また、本形態では、ケース2では、軸線L方向においてリード線位置決め部829aから一方側L1には、第2ケース部材22の筒部221の外周面に径方向外側に突出する凸部226が形成されている。ここで、凸部226は、軸線L方向からみたとき、センサ基板92とリード線位置決め部829aとの間に位置し、それ故、軸線L方向からみたとき、センサ基板92とリード線位置決め部829aとの間には、凸部226の一方側L1に凸部226に起因する段部からなるガイド部226aが形成されている。従って、ガイド部226aは、リード線95を軸線L方向に対して交差する方向にガイドし、リード線95の弛みを抑制する。従って、リード線95が不要に移動しないので、切り欠き838a内に位置する2番車52の大径歯車521に接触しにくい。
【0076】
(他の実施の形態)
図9は、本発明を適用した別のギアードモータ1における支持部材の位置決め構造を模式的に示す説明図であり、図9(a)、(b)は変形例1の説明図、および変形例2の説明図である。
【0077】
上記実施の形態では、第1支持部材81に形成した共通の位置決め突起815、816によって第2支持部材82および第3支持部材83の位置決めを行ったが、図9(a)に示すように、第1支持部材81の位置決め突起815によって第1支持部材81と第2支持部材82との位置決めを行い、第1支持部材81の位置決め突起816によって第1支持部材81と第2支持部材82との位置決めを行ってもよい。
【0078】
また、上記実施の形態では、第1支持部材81を基準に第2支持部材82および第3支
持部材83の位置決めを行ったが、図9(b)に示すように、第2支持部材82を基準に第1支持部材81および第3支持部材83の位置決めを行ってもよい。具体的には、第2支持部材82の位置決め突起825eを第1支持部材81の位置決め穴815eに嵌めて第1支持部材81と第2支持部材82との位置決めを行い、第2支持部材82の位置決め突起825fを第3支持部材83の位置決め穴835fに嵌めて第2支持部材82と第3支持部材83との位置決めを行ってもよい。
【0079】
なお、上記実施の形態では、3つの支持部材において、軸線L方向の一方側L1から他方側L2に第1支持部材81、第2支持部材82および第3支持部材83が配置されている例であったが、軸線L方向の他方側L2から一方側L1に第1支持部材81、第2支持部材82および第3支持部材83が配置されている場合に、上記の位置決め構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1・・ギアードモータ、2・・ケース、3・・出力軸、4・・駆動機構、10・・蓋材、21・・第1ケース部材、22・・第2ケース部材、25・・カバー、30・・軸体、35・・筒体、40・・モータ、49・・入出力部、50・・輪列(減速輪列)、51・・1番車、52・・2番車、53・・3番車、54・・4番車、61・・第1支軸、62・・第2支軸、63・・第3支軸、64・・第4支軸、70・・アシストバネ、71、72・・アシストバネの端部、81・・第1支持部材、82・・第2支持部材、83・・第3支持部材、91・・検出部材、95・・リード線、100・・自動開閉ユニット、226a・・ガイド部、306a・・逃がし部、308a、309a・・逃がし部、353・・歯、355・・可動側バネ係合部、357・・第2円弧部、357a、357b・・回転規制部、358・・第1円弧部、359・・凸部、307・・凹部、814・・固定側バネ係合部、815、816・・位置決め突起、829・・フック状突起、829a・・リード線位置決め部、832・・隔壁、838a・・切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9