特許第6371621号(P6371621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371621
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】シートベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/26 20060101AFI20180730BHJP
   B60R 22/03 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B60R22/26
   B60R22/03
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-153322(P2014-153322)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-30496(P2016-30496A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】林 晃司
(72)【発明者】
【氏名】金子 善道
(72)【発明者】
【氏名】松崎 真
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−111294(JP,A)
【文献】 特開2010−179676(JP,A)
【文献】 特開2012−1208(JP,A)
【文献】 特開2010−162995(JP,A)
【文献】 実開昭63−131846(JP,U)
【文献】 特開2012−3911(JP,A)
【文献】 特表2013−513446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/26
B60R 22/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のシートの上下方向に延びる乗員拘束用のウェビングと、
前記シートの上部で前記ウェビングの中間部を長手方向に移動可能に案内する案内部材と、
駆動手段を構成し、先端に前記案内部材が設けられた棒状部材と、
前記駆動手段を構成し、前記棒状部材がシート前後方向へ移動可能に挿入される筒体と、
前記駆動手段を構成し、前記シートに着座した乗員の前記ウェビングの未装着状態で前記棒状部材をシート前側へ移動させ、前記ウェビングが乗員に装着されることによって前記棒状部材をシート後側へ移動させる駆動源と、
前記駆動手段を構成し、前記棒状部材と前記筒体との間に設けられて前記棒状部材の前記筒体に対するシート前側への移動によって前記棒状部材を前記筒体に対して回動させて案内部材における前記ウェビングの引出角度を乗員側へ向けると共に、前記棒状部材の前記筒体に対するシート後側への移動によって前記棒状部材を前記筒体に対してシート前側へ移動した際の回動方向とは反対方向へ回動させるガイド機構と、
を備えるシートベルト装置。
【請求項2】
前記案内部材は、前記駆動手段が備える単一の駆動源の駆動力によってシート前後方向へ移動される請求項に記載のシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート上部でウェビングが案内される案内部材を変位させることによってウェビングを引張りやすくするシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたシートベルト装置では、第1アームの先端に取付けられたリーチャヘッドの挿通孔にウェビングが挿通されており、第1アームがシート前方へ延出されると、リーチャヘッドが傾くように回動される。しかしながら、リーチャヘッドはウェビングの自重によって回動されるため、リーチャヘッドの回動角度が安定せず、ウェビングがバックル側へ引張りやすくならない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−111294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、ウェビングを装着する際にウェビングをバックル側へ引張りやすくできるシートベルト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のシートベルト装置は、車両用のシートの上下方向に延びる乗員拘束用のウェビングと、前記シートの上部で前記ウェビングの中間部を長手方向に移動可能に案内する案内部材と、駆動手段を構成し、先端に前記案内部材が設けられた棒状部材と、前記駆動手段を構成し、前記棒状部材がシート前後方向へ移動可能に挿入される筒体と、前記駆動手段を構成し、前記シートに着座した乗員の前記ウェビングの未装着状態で前記棒状部材をシート前側へ移動させ、前記ウェビングが乗員に装着されることによって前記棒状部材をシート後側へ移動させる駆動源と、前記駆動手段を構成し、前記棒状部材と前記筒体との間に設けられて前記棒状部材の前記筒体に対するシート前側への移動によって前記棒状部材を前記筒体に対して回動させて案内部材における前記ウェビングの引出角度を乗員側へ向けると共に、前記棒状部材の前記筒体に対するシート後側への移動によって前記棒状部材を前記筒体に対してシート前側へ移動した際の回動方向とは反対方向へ回動させるガイド機構と、を備えている。
【0006】
請求項1に記載のシートベルト装置によればシートに着座した乗員のウェビングの未装着状態では、駆動手段を構成する駆動源の駆動力によって棒状部材が筒体に対してシート前側へ移動される。このように、棒状部材が筒体に対してシート前側へ移動されると、棒状部材は、ガイド機構によって回動され、これによって、棒状部材に設けられた案内部材におけるウェビングの引出角度が乗員側へ向けられる。このため、案内部材の変位量が安定する。その結果、乗員はウェビングを引張りやすくなる。
また、本シートベルト装置では、乗員の身体にウェビングが装着されると、棒状部材が筒体に対してシート後側へ移動される。このように棒状部材が筒体に対してシート後側へ移動されると、棒状部材は、ガイド機構によって棒状部材が筒体に対してシート前側へ移動された際の棒状部材の回動方向とは反対方向へ回動される。これによって、案内部材が元の状態に戻されるため、ウェビングの装着状態が適切になる。
さらに、本シートベルト装置では、シートに着座した乗員のウェビングの未装着状態で案内部材がシート前側へ移動されるため、乗員はウェビングを掴みやすくなる。
また、本シートベルト装置では、筒体と棒状部材との間にガイド機構が設けられるので、駆動手段をコンパクトにできる。したがって、駆動手段の設置スペースを削減できる。
【0012】
請求項に記載のシートベルト装置は、請求項に記載のシートベルト装置において、前記案内部材は、前記駆動手段が備える単一の駆動源の駆動力によってシート前後方向へ移動される。
【0013】
請求項に記載のシートベルト装置では、案内部材が単一の駆動源の駆動力によってシート前側へ移動されて、案内部材におけるウェビングの引出角度が乗員側へ向けられる。このため、仮に、案内部材のシート前後方向の移動と、案内部材におけるウェビングの引出角度の変更とを別々の駆動源で行わせる場合に比べて、部品点数及びコストを削減できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係るシートベルト装置では、ウェビングを装着する際にウェビングをバックル側へ引張りやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係るシートベルト装置のウェビング巻取装置及びリーチャ装置とその周辺の構成を示す斜視図である。
図2】案内部材がシート前側に移動した状態を示す図1に対応する斜視図である。
図3図1に示されるリーチャ装置を中心に示す側断面図である。
図4】駆動手段の制御ブロック図である。
図5】(A)は筒体から棒状部材を抜取った状態を示す筒体、棒状部材、及び回動ガイドの拡大斜視図であり、(B)は棒状部材が筒体に収納された状態を示す筒体、棒状部材、及び回動ガイドの拡大斜視図である。
図6】本実施の形態に係るシートベルト装置及びこれが適用されたシートの正面図である。
図7】案内部材がシート前側に移動した状態を示す図6に対応する斜視図である。
図8図7に示される状態から乗員の身体にウェビングが装着されて案内部材が元の位置に戻った状態を示す図7に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施の形態を図1から図8に基づいて説明する。なお、各図において矢印FRはシート12の前側を示し、矢印LHはシート12に着座した乗員28から見て左側を示し、矢印UPはシート12の上側を示す。
【0019】
<本実施の形態の構成>
図1に示されるように、本実施の形態に係るシートベルト装置10は、車両の後部座席のベンチタイプのシート12における着座位置に対応して設けられている。なお、本実施の形態では、シートベルト装置10がシート12の右側の着座位置に対応しているものとして説明する。シートベルト装置10は、ウェビング巻取装置14を備えている。ウェビング巻取装置14はシート12のシートバック16の後側で車体に固定されるフレーム18を備えている。
【0020】
フレーム18はシート12の左右方向に対向する一対の側板20を備えており、一対の側板20の間にはスプール(図示省略)がシート12の左右方向を軸方向とする軸周りに回転可能に設けられている。スプールには乗員装着用のウェビング22の長手方向基端部が係止されており、スプールがウェビング巻取方向に回転されることによってウェビング22がスプールの外周部に巻取られて格納される。また、ウェビング巻取装置14は、スプールをウェビング巻取方向に付勢するぜんまいばね、車両緊急時にスプールのウェビング引出方向の回転を阻止するロック機構、車両緊急時にスプールを強制的にウェビング巻取方向へ回転させるプリテンショナ機構等が設けられている。
【0021】
ウェビング22は、フレーム18の上板24に形成されたスリット26を貫通してフレーム18の上側に引出されている。さらに、ウェビング22は、シート12における乗員28の着座位置の右側でシートバック16の上側を通り、更に、図6に示されるように、シートバック16の前面に沿ってシート12の下側へ引出されている。ウェビング22の先端側は、シート12の側方(右側)を通り、シート12のシートクッション30の下側で車体に固定されたアンカプレート32に連結されている。また、ウェビング22の中間部にはタング34がウェビング22の長手方向に移動可能に設けられている。具体的には、タング34にはスリットが形成されており、ウェビング22がタング34のスリットを貫通している。
【0022】
シート12における乗員28の着座位置の左側にはバックル36が設けられている。バックル36は、シートクッション30を上下に貫通するスリットに設けられ、バックル36の下端はシートクッション30の下側で車体に固定されている。図8に示されるように、乗員28の身体にウェビング22が掛回された状態でタング34がバックル36に挿入されることによって乗員28の身体にウェビング22が装着される。
【0023】
一方、図1に示されるように、シート12のシートバック16の上部にはリーチャ装置40が設けられている。図3に示されるように、リーチャ装置40はハウジング42を備えており、ハウジング42の内側におけるシートバック16よりも上側にはテレスコピック機構44が設けられている。テレスコピック機構44は円筒部材46、48及び棒状部材として駆動手段を構成するロッド50を備えている。
【0024】
円筒部材46、48及びロッド50の軸方向はシート12の前後方向に沿っている。円筒部材46はハウジング42に支持されており、その内側には筒体として駆動手段を構成する円筒部材48がシート12の前方へ移動可能に収容されている。円筒部材48の内側にはロッド50がシート12の前方へ移動可能に収容されており、ロッド50の前端には案内部材としてのリーチャヘッド52が固定されている。リーチャヘッド52における円筒部材46、48及びロッド50よりも上側には、シート12の前後方向に貫通した貫通孔54が形成されている。貫通孔54にはウェビング22が貫通されており、図1に示されるように、ウェビング22はリーチャヘッド52よりも前側でシートバック16の前面に沿って下側へ延びている。
【0025】
図3に示されるように、テレスコピック機構44の下側には駆動源として駆動手段を構成するモータ56が設けられており、モータ56の側方にはギヤボックス58が設けられている。ギヤボックス58には駆動手段を構成する減速ギヤ列が収容されており、モータ56の出力軸はギヤボックス58内の減速ギヤ列の入力ギヤに連結されている。また、リーチャ装置40は駆動手段を構成するピニオンギヤ60を備えている。ピニオンギヤ60はギヤボックス58内の減速ギヤ列の出力ギヤに連結されている。図3の一点鎖線の円A内のピニオンギヤ60及びフレキシブルラック70の拡大平面図に示されるように、モータ56の駆動力が減速ギヤ列を介してピニオンギヤ60に伝わることによって、ピニオンギヤ60が送出方向(図3の矢印B方向)又は引戻方向(図3の矢印C方向)へ回転される。
【0026】
図4に示されるように、モータ56は、制御装置62を介して車両に搭載されたバッテリー64に電気的に接続されている。制御装置62は、シート12の右側のドアの開閉に伴いON、OFFされるカーテシスイッチ66に電気的に接続されていると共に、バックル36に設けられたバックルスイッチ68に電気的に接続されている。車両のドアの開放と、その後のドアの閉止に応じたカーテシスイッチ66のON、OFFが制御装置62に入力されると、モータ56は制御装置62によって駆動され、これによって、ピニオンギヤ60が送出方向へ回転される。これに対して、タング34がバックル36に挿入されたことをバックルスイッチ68が検出すると、モータ56は制御装置62によって駆動され、これによって、ピニオンギヤ60が引戻方向へ回転される。
【0027】
また、図3に示されるように、リーチャ装置40は駆動力伝達部材として駆動手段を構成するフレキシブルラック70を備えている。フレキシブルラック70は、合成樹脂材によって撓曲可能な長尺状に形成されており、フレキシブルラック70の長手方向先端は、ロッド50の基端に固定されている。また、フレキシブルラック70の幅方向一側の側面にはラック歯が形成されており、フレキシブルラック70のラック歯はピニオンギヤ60に噛合っている。
【0028】
モータ56から出力された正転駆動力によってピニオンギヤ60が送出方向(図3の矢印B方向)へ回転されると、ロッド50がフレキシブルラック70によってシート12の前側へ押圧されて移動される。ロッド50が円筒部材48の先端から一定長さ延出されると、次いで、円筒部材48が円筒部材46の先端からシート12の前側へ延出される。これに対して、ピニオンギヤ60が引戻方向(図3の矢印C方向)へ回転されると、ロッド50がフレキシブルラック70によってシート12の後側へ引張られる。これによって、ロッド50が円筒部材48の内側へ収容されて、円筒部材48が円筒部材46の内側へ収容される。
【0029】
さらに、リーチャ装置40はリール72を備えている。リール72はギヤボックス58内の減速ギヤ列のギヤに連結されており、モータ56の駆動力によって引出方向(図3の矢印D方向)又は巻取方向(図3の矢印E方向)へ回転される。モータ56の駆動力によってピニオンギヤ60が送出方向へ回転されると、リール72は引出方向へ回転され、モータ56の駆動力によってピニオンギヤ60が引戻方向へ回転されると、リール72は巻取方向へ回転される。
【0030】
一方、図5に示されるように、テレスコピック機構44の円筒部材48にはガイド機構として駆動手段を構成する一対のガイド部74が形成されている。ガイド部74は円筒部材48の一部を円筒部材48の径方向内側へ変形させることによって円筒部材48の径方向内側へ突出するように形成されている。これらのガイド部74は、円筒部材48の中心軸線周りに螺旋形状に形成されており、ガイド部74は、シート12の前側へ変位するにしたがい円筒部材48の中心軸線周りに右周り方向に変位している。
【0031】
これに対して、テレスコピック機構44のロッド50の基端部にはガイド部74と共にガイド機構を構成するガイドピース76が設けられており、ガイドピース76は外径寸法がロッド50の外径寸法よりも大きく円筒部材48の内径寸法よりも小さな円筒形状とされている。ガイドピース76の外周部には一対の溝78が形成されており、一方の溝78に一対のガイド部74の一方が入り、他方の溝78に一対のガイド部74の他方が入っている。
【0032】
このため、ガイドピース76が円筒部材48の内側を円筒部材48の長手方向に移動されると、ガイドピース76は一対のガイド部74に案内されて円筒部材48の中心軸線周りに図2図5、及び図7の矢印F方向へ回動される。これによって、テレスコピック機構44のロッド50、ひいては、ロッド50の先端に固定されたリーチャヘッド52が円筒部材48の中心軸線周りに回動され、リーチャヘッド52の貫通孔54の乗員28側の端部(左側の端部)が反乗員28側の端部(右側の端部)に対して上昇される。
【0033】
<本実施の形態の作用、効果>
乗員28が乗車するために、車両のドアが開閉されて、乗員28がシート12に着座すると、ドアの開閉に伴うカーテシスイッチ66のON、OFFが制御装置62に入力される。これによって、モータ56が制御装置62によって駆動されると、モータ56の駆動力によってピニオンギヤ60が送出方向へ回転されると共に、リール72が引出方向へ回転される。これによって、フレキシブルラック70の先端側がシート12の前側へ移動されると、テレスコピック機構44のロッド50が円筒部材48に対してシート12の前側へ移動される。
【0034】
ロッド50が円筒部材48の先端から一定長さ延出されると、次いで、円筒部材48が円筒部材46の先端からシート12の前側へ延出される。このようにして、ロッド50や円筒部材48がシート12の前側へ延出されることによって、ロッド50の先端に固定されたリーチャヘッド52がシートバック16の上端よりもシート12の前側へ移動される。
【0035】
リーチャヘッド52の貫通孔54にはウェビング22がシート12の後側から貫通されて、シートバック16に沿ってシート12の下側へ延びている。このため、図2に示されるように、リーチャヘッド52がシートバック16の上端よりもシート12の前側へ移動されることによって、シートバック16の上端側ではウェビング22がシートバック16よりもシート12の前側へ移動される。これによって、シート12に着座した乗員28はウェビング22を装着するためにタング34を容易に掴むことができる。
【0036】
また、ロッド50が円筒部材48に対してシート12の前側へ移動されると、ガイドピース76が円筒部材48のガイド部74に案内されて円筒部材48の中心軸線周りに図2及び図7の矢印F方向へ回動される。これによって、リーチャヘッド52の貫通孔54の乗員28側の端部(左側の端部)が反乗員28側の端部(右側の端部)に対して上昇される。このようにリーチャヘッド52の貫通孔54が傾けられることによって、リーチャヘッド52からのウェビング22の引出角度が変更される。これによって、ウェビング22がシート12の前側で且つシート12の左下側へ引張られた際にウェビング22がリーチャヘッド52の貫通孔54の内周部から受ける抵抗を軽減できる。このため、乗員28はタング34と共にウェビング22をバックル36側へ引出すことができ、ウェビング22を容易に装着できる。
【0037】
次に、タング34がバックル36に挿入され、これがバックルスイッチ68によって検出されると、モータ56が制御装置62によって逆転駆動される。これによって、ピニオンギヤ60が引戻方向へ回転されると共に、リール72が巻取方向へ回転される。これによって、フレキシブルラック70の先端側がシート12の後側へ移動されると、テレスコピック機構44のロッド50がフレキシブルラック70によってシート12の後側へ引張られて円筒部材48内に収納されて円筒部材48が円筒部材46に収納される。このようにして、リーチャヘッド52がロッド50や円筒部材48と共に元の状態に戻ると、ウェビング22が乗員28の身体にフィットするように装着される。
【0038】
また、ロッド50が円筒部材48に収納される際には、ガイドピース76が円筒部材48のガイド部74に案内されて円筒部材48の中心軸線周りに図2及び図7の矢印F方向とは反対方向へ回動される。これによって、リーチャヘッド52の貫通孔54の乗員28側の端部(左側の端部)が反乗員28側の端部(右側の端部)に対して下降されて、図8に示されるように、リーチャヘッド52が元の状態に戻る。これによって、ウェビング22を乗員28の身体に適切に装着できる。
【0039】
このように、本実施の形態では、ロッド50がモータ56の駆動力によってシート12の前後方向へ移動されることによって、リーチャヘッド52がロッド50と共に回動される。このため、仮に、リーチャヘッド52のシート12の前後方向の移動と、リーチャヘッド52の回動とを別々のモータで行わせる場合に比べて、部品点数及びコストを削減できる。
【0040】
また、リーチャヘッド52の回動角度は、ロッド50の円筒部材48に対するシート12の前後方向の移動量で決まるため、リーチャヘッド52の回動角度、ひいては、リーチャヘッド52の貫通孔54の傾きを安定させることができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、シートベルト装置10がシート12における右側の着座位置に対応しているものとして説明した。しかしながら、シートベルト装置10がシート12における左側や中央の着座位置にも対応して設けられる。但し、このような場合には、ウェビング巻取装置14やリーチャ装置40、更に、バックル36等の配置位置が着座位置に対して左右反対になることもあり、また、リーチャヘッド52の回動方向が反対になることもある。
【0042】
また、本実施の形態は、車両の後部座席としてのシート12用のシートベルト装置10に本発明を適用した。しかしながら、運転席や助手席等の他の座席に本発明を適用してもよい。
【0043】
さらに、本実施の形態では、リール72とピニオンギヤ60とが同じモータ56の駆動力で回転する構成であった。しかしながら、例えば、リール72が渦巻きばね等の付勢手段の付勢力によって巻取方向へ付勢され、モータ56の駆動力で回転するピニオンギヤ60が付勢手段の付勢力に抗してフレキシブルラック70をリール72から引出す構成としてもよい。すなわち、ピニオンギヤ60を回転させるためのモータ56の駆動力とは別の駆動力でリール72を回転させる構成としてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、フレキシブルラック70の基端側はリール72に巻取られる構成であったが、リール72等のフレキシブルラック70の基端側を巻取る巻取手段や、フレキシブルラック70の基端側を格納する格納手段を設けない構成としてもよい。
【0045】
さらに、本実施の形態では、フレキシブルラック70の先端がロッド50の基端に固定されて、ロッド50がフレキシブルラック70によって円筒部材48に対してシート12の前後方向へ移動される構成であった。しかしながら、例えば、ワイヤの先端をロッド50の基端に固定して、モータ56の駆動力によってワイヤの先端側をシート12の前後方向に移動させることによってロッド50がシート12の前後方向へ移動される構成としてもよく、ロッド50を円筒部材48に対して移動させるための構成はフレキシブルラック70に限定されるものではない。
【0046】
また、本実施の形態では、ロッド50がモータ56の駆動力によってシート12の前後方向へ移動されると共に円筒部材48の中心軸線周りに回転される構成であった。しかしながら、ロッド50をシート12の前後方向へ移動させるための駆動源と、ロッド50を円筒部材48の中心軸線周りに回転させるための駆動源とが別であってもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、リーチャヘッド52がシート12の前後方向に移動されるリーチャ装置40に本発明を適用したが、例えば、シートバック16の上部に設けられてウェビング22が貫通配置されるベルトガイドをモータ等の駆動手段の駆動力で回動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 シートベルト装置
12 シート
22 ウェビング
48 円筒部材(筒体、駆動手段)
50 ロッド(棒状部材、駆動手段)
52 リーチャヘッド(案内部材)
56 モータ(駆動源、駆動手段)
70 フレキシブルラック(駆動力伝達部材、駆動手段)
74 ガイド部(ガイド機構、駆動手段)
76 ガイドピース(ガイド機構、駆動手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8