特許第6371622号(P6371622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371622
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】シートベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/26 20060101AFI20180730BHJP
   B60R 22/03 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B60R22/26
   B60R22/03
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-153323(P2014-153323)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-30497(P2016-30497A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】林 晃司
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 拓宏
(72)【発明者】
【氏名】金子 善道
(72)【発明者】
【氏名】松崎 真
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−131846(JP,U)
【文献】 実開昭64−29510(JP,U)
【文献】 特開2009−119583(JP,A)
【文献】 特開平11−347883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/26
B60R 22/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のシートの上下方向に延びる乗員拘束用のウェビングと、
基端部にブッシュが装着された筒状の筒体を含んで構成された径寸法が異なる複数のロッドを有し、小径の前記ロッドが大径の前記ロッドに対して長手方向へ移動されることによって伸縮されると共に、径寸法が最小の前記ロッドの先端側に前記ウェビングが支持されるテレスコピック機構と、
前記筒体の基端部と前記ブッシュとの間に設けられて前記筒体の基端部と前記ブッシュとによって挟持され、前記ロッドの移動により生ずる衝撃を吸収する緩衝部材と、
を備えるシートベルト装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は前記ロッドの基端部の内側に設けられて、当該ロッドに収容される被収容側の前記ロッドの基端部が前記緩衝部材に当接可能とされた請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項3】
前記緩衝部材は前記ロッドの基端部に設けられて、当該ロッドを収容する収容側の前記ロッドの先端部に前記緩衝部材が当接可能とされた請求項1又は請求項に記載のシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェビングが支持されるテレスコピック機構が伸縮されるシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレスコピック機構を構成する複数のロッドの伸縮によってウェビングのリーチャヘッドとの係合部分をシートの前後方向へ移動させるベルトリーチャを備えたシートベルト装置がある(一例として、下記特許文献1を参照)。このようなテレスコピック機構は、大径のロッドの内側から小径のロッドが延出されると、小径のロッドの基端部が大径のロッドの先端部に当接される。ここで、ロッド同士が当接された際には衝突音が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−111294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、テレスコピック機構におけるロッド同士の衝突音の発生を防止又は軽減できるシートベルト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のシートベルト装置は、車両用のシートの上下方向に延びる乗員拘束用のウェビングと、基端部にブッシュが装着された筒状の筒体を含んで構成された径寸法が異なる複数のロッドを有し、小径の前記ロッドが大径の前記ロッドに対して長手方向へ移動されることによって伸縮されると共に、径寸法が最小の前記ロッドの先端側に前記ウェビングが支持されるテレスコピック機構と、前記筒体の基端部と前記ブッシュとの間に設けられて前記筒体の基端部と前記ブッシュとによって挟持され、前記ロッドの移動により生ずる衝撃を吸収する緩衝部材と、を備えている。
【0006】
請求項1に記載のシートベルト装置では、テレスコピック機構のロッドの移動によって生ずるロッド同士の衝突音の発生を緩衝部材によって防止又は軽減できる。
【0008】
また、本シートベルト装置では、緩衝部材が筒体の基端とブッシュとによって挟持されるため、緩衝部材を固着させなくてもよく、緩衝部材を容易に取付けることができる。
【0009】
請求項に記載のシートベルト装置は、請求項1に記載のシートベルト装置において、前記緩衝部材は前記ロッドの基端部の内側に設けられて、当該ロッドに収容される被収容側の前記ロッドの基端部が前記緩衝部材に当接可能とされている。
【0010】
請求項に記載のシートベルト装置では、ロッドに被収容側のロッドが収容された際に生じる衝撃音を防止又は軽減できる。
【0011】
請求項に記載のシートベルト装置は、請求項1又は請求項に記載のシートベルト装置において、前記緩衝部材は前記ロッドの基端部に設けられて、当該ロッドを収容する収容側のロッドの先端部に前記緩衝部材が当接可能とされている。
【0012】
請求項に記載のシートベルト装置では、ロッドが収容側のロッドから延出された際に生じる衝撃音を防止又は軽減できる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係るシートベルト装置では、テレスコピック機構におけるロッド同士の衝突音の発生を防止又は軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係るシートベルト装置のテレスコピックにおける径寸法が最大のロッドの斜視図で、(A)は組付け前の分解斜視図を示し、(B)は組付け後の斜視図を示している。
図2】本実施の形態に係るシートベルト装置のテレスコピックにおける径寸法が最小のロッドの斜視図で、(A)は組付け前の分解斜視図を示し、(B)は組付け後の斜視図を示している。
図3】本実施の形態に係るシートベルト装置のリーチャ装置を中心に示す側断面図である。
図4図3の4−4線に沿ったリーチャ装置を中心に示す平断面図である。
図5】第3ロッドが第2ロッドから延出された状態の要部の平断面図である。
図6】第2ロッドが第1ロッドから延出された状態の要部の平断面図である。
図7】本実施の形態に係るシートベルト装置のウェビング巻取装置及びリーチャ装置とその周辺の構成を示す斜視図である。
図8】リーチャ装置の伸縮部材が延出された状態を示す図3に対応する斜視図である。
図9】本実施の形態に係るシートベルト装置及びこれが適用されたシートの正面図である。
図10】乗員の身体にウェビングが装着された状態を示す図9に対応する正面図である。
図11】駆動手段の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施の形態を図1から図11に基づいて説明する。なお、各図において矢印FRはシート12の前側を示し、矢印LHはシート12に着座した乗員28から見て左側を示し、矢印UPはシート12の上側を示す。
【0016】
<本実施の形態の構成>
図7に示されるように、本実施の形態に係るシートベルト装置10は、車両の後部座席のベンチタイプのシート12における着座位置に対応して設けられている。なお、本実施の形態では、シートベルト装置10がシート12の右側の着座位置に対応しているものとして説明する。シートベルト装置10は、ウェビング巻取装置14を備えている。ウェビング巻取装置14はシート12のシートバック16の後側で車体に固定されるフレーム18を備えている。
【0017】
フレーム18はシート12の左右方向に対向する一対の側板20を備えており、一対の側板20の間にはスプール(図示省略)がシート12の左右方向を軸方向とする軸周りに回転可能に設けられている。スプールには乗員装着用のウェビング22の長手方向基端部が係止されており、スプールがウェビング巻取方向に回転されることによってウェビング22がスプールの外周部に巻取られて格納される。また、ウェビング巻取装置14は、スプールをウェビング巻取方向に付勢するぜんまいばね、車両緊急時にスプールのウェビング引出方向の回転を阻止するロック機構、車両緊急時にスプールを強制的にウェビング巻取方向へ回転させるプリテンショナ機構等が設けられている。
【0018】
ウェビング22は、フレーム18の上板24に形成されたスリット26を貫通してフレーム18の上側に引出されている。さらに、ウェビング22は、シート12における乗員28の着座位置の右側でシートバック16の上側を通り、更に、図9に示されるように、シートバック16の前面に沿ってシート12の下側へ引出されている。ウェビング22の先端側は、シート12の側方(右側)を通り、シート12のシートクッション30の下側で車体に固定されたアンカプレート32に連結されている。また、ウェビング22の中間部にはタング34がウェビング22の長手方向に移動可能に設けられている。具体的には、タング34にはスリットが形成されており、ウェビング22がタング34のスリットを貫通している。
【0019】
シート12における乗員28の着座位置の左側にはバックル36が設けられている。バックル36は、シートクッション30を上下に貫通するスリットに設けられ、バックル36の下端はシートクッション30の下側で車体に固定されている。図10に示されるように、乗員28の身体にウェビング22が掛回された状態でタング34がバックル36に挿入されることによって乗員28の身体にウェビング22が装着される。
【0020】
一方、図7に示されるように、シート12のシートバック16の上部にはリーチャ装置40が設けられている。図3及び図4に示されるように、リーチャ装置40はハウジング42を備えており、ハウジング42の内側におけるシートバック16よりも上側にはテレスコピック機構44が設けられている。テレスコピック機構44は、ロッドとしての第1ロッド92、第2ロッド94、及び第3ロッド96を備えている。
【0021】
図3に示されるように、第1ロッド92はハウジング42の内側に設けられており、図示しない保持部材によってハウジング42内で保持されている。また、図1に示されるように、第1ロッド92は筒体98を備えている。筒体98には一対のガイド部100が形成されている(図1では一方のガイド部100のみが図示されている)。ガイド部100は筒体98の一部を径方向内側へプレス成形することによって形成されており、ガイド部100は、筒体98の内側では筒体98の径方向内側へ向けて突出され、筒体98の外面では凹んでいる。一対のガイド部100は筒体98の径方向に互いに対向するように形成されていると共に、筒体98の軸方向に長手とされている。筒体98の前端部近傍には円筒形状又はリング状のストッパピース102が挿入されており、更に、筒体98の前端部はストッパピース102の前端に沿って径方向内側へ絞られている。
【0022】
筒体98の後端部には、ゴムやゴム程度の弾性を有する合成樹脂材によって形成された緩衝部材104が設けられている。緩衝部材104は緩衝部106を備えている。緩衝部106は厚さ方向が筒体98の軸方向に沿った板状とされており、その中央側には矩形の貫通孔108が形成されている。緩衝部106の外周部には一対の連結片110が形成されている。一対の連結片110は筒体98の径方向に互いに対向しており、緩衝部106から筒体98の後側へ向けて延出されている。連結片110の後端には取付部112が形成されている。取付部112はリング状に形成されており、取付部112の外周形状は筒体98の外周形状と略同一とされている。緩衝部106及び連結片110が筒体98の後端から筒体98の内側に挿入されて、連結片110が筒体98の後端部に係止されると共に、取付部112が筒体98の後端に当接される。
【0023】
また、筒体98の後端部にはブッシュ114が設けられている。ブッシュ114は、緩衝部材104よりも硬質の合成樹脂材によって形成されている。ブッシュ114は挿入部116を備えている。挿入部116は筒体98の後端から筒体98に挿入され、この状態で、筒体98が部分的に径方向内側へ絞られることによってブッシュ114の挿入部116が緩衝部材104の連結片110と共に筒体98の後端部に係止される。
【0024】
挿入部116の後端には挟持部118が形成されている。挟持部118は外周形状が筒体98の外周形状と略同一か又は筒体98の外周形状よりも僅かに大きく設定されている。ブッシュ114の挿入部116が筒体98の後端から挿入されて挿入部116が緩衝部材104の連結片110に係止されると共に、緩衝部材104の取付部112がブッシュ114の挟持部118と筒体98の後端とによって挟持される。また、ブッシュ114には断面矩形の貫通孔120が筒体98の軸方向に貫通形成されている。
【0025】
第2ロッド94は筒体98、ストッパピース102、緩衝部材104、及びブッシュ114を備えており、基本的には第1ロッド92と同じ構成であるが、筒体98、ストッパピース102、緩衝部材104、及びブッシュ114の径寸法が第1ロッド92の筒体98、ストッパピース102、緩衝部材104、及びブッシュ114の径寸法よりも小さく設定されており、第2ロッド94は第1ロッド92の筒体98内に挿入される。
【0026】
また、第2ロッド94のブッシュ114の凹溝114Aには、径方向外側から第1ロッド92の筒体98のガイド部100が嵌っており、これによって、第2ロッド94は、第1ロッド92の中心軸線周りの第1ロッド92に対する回転が阻止又は制限されている。さらに、第2ロッド94の緩衝部材104は取付部112に代わる緩衝部122(図4及び図5(B)参照)を備えている。緩衝部122の外周形状は、第2ロッド94の筒体98の外周形状よりも大きく、第1ロッド92の筒体98の外周形状よりも小さく設定されており、筒体98の軸方向に第1ロッド92の筒体98内のストッパピース102と対向している。
【0027】
一方、図2に示されるように、第3ロッド96は筒体124を備えている。筒体124は第2ロッド94の筒体98よりも径寸法が小さな筒状に形成されている。筒体124には一対のガイド部126が筒体124の一部を径方向内側へプレス成形することによって形成されている。ガイド部126は筒体124の外面にて凹んでいると共に、筒体124の軸方向に長手とされている。
【0028】
一方、筒体124の後端部には、ゴムやゴム程度の弾性を有する合成樹脂材によって形成された緩衝部材128が設けられている。緩衝部材128は一対の対向片130を備えている。一対の対向片130は筒体124の径方向に互いに対向しており、一対の対向片130の間には矩形ピース132が配置される。一対の対向片130の後端にはリング状の緩衝部134が形成されている。緩衝部134の外周形状は、第3ロッド96の筒体124の外周形状よりも大きく、第2ロッド94の筒体98の外周形状よりも小さく設定されている。このため、一対の対向片130が筒体98の後端から挿入されて筒体98に係止されると、緩衝部134が筒体124の外周部よりも径方向外側へ延出されて、緩衝部134が筒体124の軸方向に第2ロッド94の筒体124内のストッパピース102と対向される。
【0029】
また、筒体124の後端部にはブッシュ136が設けられている。ブッシュ136は、緩衝部材128よりも硬質の合成樹脂材によって形成されている。ブッシュ136は挿入部138を備えている。挿入部138は筒体124の後端から筒体124に挿入され、この状態で、筒体124が部分的に径方向内側へ絞られることによってブッシュ136の挿入部138が緩衝部材128の対向片130と共に筒体124の後端部に係止される。
【0030】
挿入部138の後端には挟持部140が形成されている。挟持部140の外周形状は、緩衝部材128の緩衝部134の外周形状よりも大きく、第2ロッド94の筒体98の内周形状よりも小さく設定されている。ブッシュ136の挿入部138が筒体124の後端から挿入されると、緩衝部材128の緩衝部134がブッシュ136の挟持部140と筒体124の後端とによって挟持される。また、ブッシュ136には貫通孔142が筒体124の軸方向に貫通形成されている。この貫通孔142の断面形状は、第1ロッド92及び第2ロッド94のブッシュ114に形成された貫通孔120よりも小さな円形とされている。
【0031】
ブッシュ136の挟持部140には凹溝140Aが形成されており、第2ロッド94の筒体98のガイド部100が径方向外側から嵌っている。これによって、第3ロッド96は、第2ロッド94の中心軸線周りの第2ロッド94に対する回転が阻止又は制限されている。
【0032】
筒体124の前端部にはリーチャヘッド52の挿入部52Aが挿入されて固定されている。図3に示されるように、リーチャヘッド52における第1〜第3ロッド92〜96よりも上側には、シート12の前後方向に貫通した貫通孔54が形成されている。貫通孔54にはウェビング22が貫通されており、図7に示されるように、ウェビング22はリーチャヘッド52よりも前側でシートバック16の前面に沿って下側へ延びている。
【0033】
図3に示されるように、テレスコピック機構44の下側には駆動手段としてのモータ56が設けられており、モータ56の側方にはギヤボックス58が設けられている。ギヤボックス58には駆動力伝機構を構成する減速ギヤ列が収容されており、モータ56の出力軸はギヤボックス58内の減速ギヤ列の入力ギヤに連結されている。また、図3及び図4に示されるように、リーチャ装置40はギヤボックス58内の減速ギヤ列と共に駆動力伝達機構を構成するピニオンギヤ60を備えている。ピニオンギヤ60はギヤボックス58内の減速ギヤ列の出力ギヤに連結されている。図4に示されるように、モータ56の駆動力が減速ギヤ列を介してピニオンギヤ60に伝わることによって、ピニオンギヤ60が送出方向(図4の矢印B方向)又は引戻方向(図4の矢印C方向)へ回転される。
【0034】
図11に示されるように、モータ56は、制御装置62を介して車両に搭載されたバッテリー64に電気的に接続されている。制御装置62は、シート12の右側のドアの開閉に伴いON、OFFされるカーテシスイッチ66に電気的に接続されていると共に、バックル36に設けられたバックルスイッチ68に電気的に接続されている。車両のドアの開放と、その後のドアの閉止に応じたカーテシスイッチ66のON、OFFが制御装置62に入力されると、モータ56は制御装置62によって駆動され、これによって、ピニオンギヤ60が送出方向へ回転される。これに対して、タング34がバックル36に挿入されたことをバックルスイッチ68が検出すると、モータ56は制御装置62によって駆動され、これによって、ピニオンギヤ60が引戻方向へ回転される。
【0035】
また、図3及び図4に示されるように、リーチャ装置40は、駆動力伝達部材としてギヤボックス58内の減速ギヤ列やピニオンギヤ60と共に駆動力伝達機構を構成するフレキシブルラック70を備えている。フレキシブルラック70は、合成樹脂材によって撓曲可能な長尺状に形成されており、フレキシブルラック70の長手方向先端側は、第1ロッド92及び第2ロッド94の各ブッシュ114の貫通孔120及び緩衝部材104の貫通孔108を貫通している。
【0036】
また、フレキシブルラック70の先端からは断面円形の棒状部144が延出されている。棒状部144は、第3ロッド96のブッシュ136に形成された貫通孔142を貫通して、矩形ピース132に形成された孔部146に挿入されている。フレキシブルラック70の棒状部144は、矩形ピース132の孔部146に挿入された状態で矩形ピース132がかしめられることによって矩形ピース132に保持されている。
【0037】
また、図4に示されるように、フレキシブルラック70の幅方向一側の側面にはラック歯が形成されており、フレキシブルラック70のラック歯はピニオンギヤ60に噛合っている。モータ56から出力された駆動力によってピニオンギヤ60が送出方向(図4の矢印B方向)へ回転されると、第3ロッド96がフレキシブルラック70によってシート12の前側へ押圧されて移動される。第3ロッド96が第2ロッド94の先端から一定長さ延出されると、次いで、第2ロッド94が第1ロッド92の先端からシート12の前側へ延出される。これに対して、ピニオンギヤ60が引戻方向(図4の矢印C方向)へ回転されると、第3ロッド96がフレキシブルラック70によってシート12の後側へ引張られる。これによって、第3ロッド96が第2ロッド94の内側へ収容されて、第2ロッド94が第1ロッド92の内側へ収容される。
【0038】
さらに、図3に示されるように、リーチャ装置40はリール72を備えている。リール72はギヤボックス58内の減速ギヤ列のギヤに連結されており、モータ56の駆動力によって引出方向(図3の矢印D方向)又は巻取方向(図3の矢印E方向)へ回転される。モータ56の駆動力によってピニオンギヤ60が送出方向へ回転されると、リール72は引出方向へ回転され、モータ56の駆動力によってピニオンギヤ60が引戻方向へ回転されると、リール72は巻取方向へ回転される。
【0039】
<本実施の形態の作用、効果>
乗員28が乗車するために、車両のドアが開閉されて、乗員28がシート12に着座すると、ドアの開閉に伴うカーテシスイッチ66のON、OFFが制御装置62に入力される。これによって、モータ56が制御装置62によって駆動されると、モータ56の駆動力によってピニオンギヤ60が送出方向へ回転されると共に、リール72が引出方向へ回転される。これによって、フレキシブルラック70の先端側がシート12の前側へ移動されると、テレスコピック機構44の第3ロッド96が第2ロッド94に対してシート12の前側へ移動される。
【0040】
第3ロッド96が第2ロッド94の先端から一定長さ延出されると、第3ロッド96の緩衝部材128の緩衝部134が第2ロッド94のストッパピース102に当接される。この状態で、第3ロッド96がフレキシブルラック70に押圧されてシート12の前側へ移動されると、第2ロッド94が第1ロッド92の先端からシート12の前側へ延出される。このようにして、第3ロッド96や第2ロッド94がシート12の前側へ第2ロッド94が第1ロッド92の先端から一定長さ延出されると、第2ロッド94の緩衝部材104の緩衝部122が第1ロッド92のストッパピース102に当接される。このテレスコピック機構44の延出状態では、第3ロッド96の先端に固定されたリーチャヘッド52がシートバック16の上端よりもシート12の前側へ移動される。
【0041】
リーチャヘッド52の貫通孔54にはウェビング22がシート12の後側から貫通されて、シートバック16に沿ってシート12の下側へ延びている。このため、図8に示されるように、リーチャヘッド52がシートバック16の上端よりもシート12の前側へ移動されることによって、シートバック16の上端側ではウェビング22がシートバック16よりもシート12の前側へ移動される。これによって、シート12に着座した乗員28はウェビング22を装着するためにタング34を容易に掴むことができる。
【0042】
ここで、図5に示されるように、第3ロッド96が第2ロッド94から一定長さ延出されて、第3ロッド96の第2ロッド94に対するシート12の前方への移動が阻止された際には、第3ロッド96の緩衝部材128の緩衝部134が第2ロッド94のストッパピース102に当接される。このため、第3ロッド96のブッシュ136が第2ロッド94のストッパピース102に直接衝突することがなく、しかも、緩衝部材128はゴムやゴム程度の弾性を有する合成樹脂材によって形成されている。このため、第2ロッド94からの第3ロッド96の延出が阻止された際の衝撃は緩衝部材128の緩衝部134によって吸収され、これによって、衝突音の発生を防止又は軽減できる。また、図6に示されるように、第2ロッド94が第1ロッド92から一定長さ延出されていると、第2ロッド94の第1ロッド92に対するシート12の前方への移動が阻止される。このときの衝撃が緩衝部材104の緩衝部122によって吸収され、これによって、衝突音の発生を防止又は軽減できる。
【0043】
次に、タング34がバックル36に挿入され、これがバックルスイッチ68によって検出されると、モータ56が制御装置62によって逆転駆動される。これによって、ピニオンギヤ60が引戻方向へ回転されると共に、リール72が巻取方向へ回転される。これによって、フレキシブルラック70の先端側がシート12の後側へ移動されると、テレスコピック機構44の第3ロッド96がフレキシブルラック70によってシート12の後側へ引張られて第2ロッド94内に収納されて第2ロッド94が第1ロッド92に収納される。このようにして、リーチャヘッド52が第3ロッド96や第2ロッド94と共に元の状態に戻ると、図10に示されるように、ウェビング22が乗員28の身体にフィットするように装着される。
【0044】
ここで、図4に示されるように、第3ロッド96が第2ロッド94に収容され、第3ロッド96のブッシュ136の後端が第2ロッド94の緩衝部材104の緩衝部106に当接されると、第3ロッド96の第2ロッド94に対するシート12の後方への移動が阻止される。このように、第3ロッド96のブッシュ136の後端が第2ロッド94のブッシュ114に直接衝突することがなく、しかも、第3ロッド96のブッシュ136の後端が第2ロッド94の緩衝部材104の緩衝部106に衝突した際の衝撃は、緩衝部106に吸収される。これによって、衝突音の発生を防止又は軽減できる。
【0045】
また、第2ロッド94が第1ロッド92に収容されて第2ロッド94のシート12の後方への移動が阻止された場合も、第2ロッド94のブッシュ114の後端が第1ロッド92のブッシュ114に直接衝突することがない。しかも、第2ロッド94のブッシュ114の後端が第1ロッド92の緩衝部材104の緩衝部106に衝突した際の衝撃は、緩衝部106に吸収されるため、衝突音の発生を防止又は軽減できる。
【0046】
しかも、本実施の形態に係るシートベルト装置10のリーチャ装置40は、シート12のシートバック16の上部に設けられ、第1、第2ロッド94、96は、乗員28の耳の近傍で移動する。このため、乗員28の耳の近傍で衝突音の発生を防止又は軽減できることによって、衝突音の発生で乗員28に与える不快感等を効果的に防止又は軽減できる。
【0047】
さらに、第2ロッド94の緩衝部材104の緩衝部122は、第1ロッド92の筒体98の内周形状よりも小さく設定されている。このため、第2ロッド94の筒体98が第1ロッド92の筒体98から延出される際に、緩衝部材104の緩衝部122が、第1ロッド92の筒体98と第2ロッド94のブッシュ114の挟持部118とに挟まれることがない。このため、第2ロッド94は第1ロッド92から円滑に延出できる。また、第3ロッド96の緩衝部材128の緩衝部134も、第2ロッド94の筒体98の内周形状よりも小さく設定されている。このため、第2ロッド94の筒体98と第3ロッド96のブッシュ136の挟持部140とに挟まれることがなく、第3ロッド96は第2ロッド94から円滑に延出できる。
【0048】
さらに、第1ロッド92の緩衝部材104は、緩衝部106や一対の連結片110が筒体98の後端から筒体98に挿入され、この状態で、緩衝部材104の取付部112が第1ロッド92の後端とブッシュ114の挟持部118とに挟持されることによって取付けられる。このため、緩衝部材104を接着剤等によって筒体98やブッシュ114に固着しなくてもよく、緩衝部材104の取付けが容易になる。また、第2ロッド94の緩衝部材104や、第3ロッド96の緩衝部材128も同様に容易に取付けることができる。
【0049】
また、第2ロッド94の緩衝部材104は、第2ロッド94が第1ロッド92から延出された際に第1ロッド92の筒体98の前端部に当接される緩衝部122と、第3ロッド96が第2ロッド94に収容された際に第3ロッド96のブッシュ136が当接される緩衝部106とを備えている。このため、第2ロッド94が第1ロッド92から延出された際の衝突音と、第3ロッド96が第2ロッド94に収容された際の衝突音とを1つの緩衝部材104で防止又は軽減できる。
【0050】
なお、本実施の形態は、第1〜第3ロッド92〜96の基端部に緩衝部材104、128を設けた構成であったが、第1〜第3ロッド92〜96における緩衝部材の設置位置は、例えば、第1〜第3ロッド92〜96内のストッパピース102の後側等であってもよく、緩衝部材の設置位置は特に限定されるものではない。
【0051】
また、本実施の形態では、緩衝部材104、128を第1〜第3ロッド92〜96の後端とブッシュ114、136とで挟持する構成であったが、例えば、緩衝部材を第1〜第3ロッド92〜96の後端から圧入して固定する構成であってもよいし、緩衝部材を第1〜第3ロッド92〜96の後端部の内側やブッシュ114、136に接着剤等で固着してもよく、緩衝部材の固定構造に関して特に限定されるものではない。
【0052】
さらに、本実施の形態は、車両の後部座席としてのシート12用のシートベルト装置10に本発明を適用した。しかしながら、運転席や助手席等の他の座席に本発明を適用してもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、リール72とピニオンギヤ60とが同じモータ56の駆動力で回転する構成であった。しかしながら、例えば、リール72が渦巻きばね等の付勢手段の付勢力によって巻取方向へ付勢され、モータ56の駆動力で回転するピニオンギヤ60が付勢手段の付勢力に抗してフレキシブルラック70をリール72から引出す構成としてもよい。すなわち、ピニオンギヤ60を回転させるためのモータ56の駆動力とは別の駆動力でリール72を回転させる構成としてもよい。
【0054】
さらに、本実施の形態では、フレキシブルラック70の基端側はリール72に巻取られる構成であったが、リール72等のフレキシブルラック70の基端側を巻取る巻取手段や、フレキシブルラック70の基端側を格納する格納手段を設けない構成としてもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、フレキシブルラック70の先端が第3ロッド96の基端に固定されて、第3ロッド96がフレキシブルラック70によって第2ロッド94に対してシート12の前後方向へ移動される構成であった。しかしながら、例えば、ワイヤの先端を第3ロッド96の基端に固定して、モータ56の駆動力によってワイヤの先端側をシート12の前後方向に移動させることによって第3ロッド96がシート12の前後方向へ移動される構成としてもよく、第3ロッド96を第2ロッド94に対して移動させるための構成はフレキシブルラック70に限定されるものではない。
【0056】
また、本実施の形態では、緩衝部材104、128とブッシュ114、136とを別体で構成した。しかしながら、例えば、緩衝部材とブッシュとを2色成形等によって一体成形して1つの部品として構成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 シートベルト装置
12 シート
44 テレスコピック機構
92 ロッド
94 ロッド
96 ロッド
98 筒体
104 緩衝部材
114 ブッシュ
124 筒体
128 緩衝部材
136 ブッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11