(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る表示媒体および表示装置の実施形態について説明する。
【0024】
<表示用分散液>
本実施形態に係る表示用分散液は、分散媒と、前記分散媒中に分散され且つ前記分散媒中に形成された電界に応じて前記分散媒中を移動する、1種以上の粒子群と、を有する。
【0025】
ここで、本実施形態に係る表示用分散液では、上記1種以上の粒子群として、1種の粒子群のみを含んでもよいし、2種以上の粒子群を含んでもよい。尚、粒子群における「種」とは、色および分散媒中での移動が開始される閾値電圧の少なくとも一方が異なることを指し、通常は色および閾値電圧の両方が異なる。
本実施形態に係る表示用分散液に含まれる、電界に応じて分散媒中を移動する1種以上の粒子群は、何れも正極または負極に帯電されている。また、正極または負極に帯電された粒子群を少なくとも含む表示用分散液中には、該粒子群とは反対の極性に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン、所謂カウンターイオンが存在する。
【0026】
本実施形態では、前記1種以上の粒子群のうちの1種の粒子群(a)の総電荷量が、粒子群(a)とは反対の極性に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きい。
【0027】
表示用分散液は、
図1Aに示されるように、通常一対の基板20、22に挟まれる領域に封入されて用いられる。尚、
図1Aにおいて、基板20、22はそれぞれ分散媒50と接する表面に表面層21、23を備える。該一対の基板20、22に電圧を印加して基板間に電界を形成し、分散媒50に分散された粒子群34(
図1Aでは正帯電)を一対の基板20、22の何れかの表面に移動させることで画像の表示を行う。尚、基板表面に移動させ付着された粒子群34には、電圧を解除した後においても基板表面に持続的に保持される性質、即ちメモリ性が求められる。
【0028】
分散媒50中には粒子群34の総電荷量と等価で極性が反対のイオン(カウンターイオン、
図1Aでは負帯電)35が存在し、このカウンターイオン35が緩和拡散すると、粒子群34と基板20との付着力が失われ、画像が保持されないことがあった。
具体的には、基板20、22間に電圧を印加すると、粒子群34とカウンターイオン35はそれぞれ対向する基板20、22に移動して付着する。電圧を切った際、粒子群34は粒子群自身の電荷によって形成されたポテンシャル井戸に落ち込む形となり、
図1Aに示す通り基板20への付着力が働く。一方、カウンターイオン35はイオンの形態であって微小なため、ブラウン運動等によりカウンターイオン35の電荷によって形成されたポテンシャル井戸から容易に脱する(
図1B参照)。ポテンシャル井戸から脱したカウンターイオン35は、粒子群34との間に形成される内部電位の勾配によって粒子群34の方に緩和移動する。カウンターイオン35の緩和移動にともなって基板20、22間の内部電位分布が変化し、粒子群34近傍の電位ピークが低下し、電位ピークの低下がある点を超えると粒子群34近傍のポテンシャル井戸が消失し、その結果
図1Cに示す通り、粒子群34と基板20との付着力が失われることがあった。
【0029】
これに対し本実施形態では、表示用分散液に含まれる粒子群のうちの1種の粒子群(a)の総電荷量が、該粒子群(a)とは反対の極性に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きい。
粒子群の総電荷量と等価のカウンターイオンを有する分散媒を用いた場合に、初期位置(即ち対向する基板の一方に粒子群を、もう一方にカウンターイオンを有する状態)から、徐々にカウンターイオンが拡散移動した際の、粒子重心位置での内部電界を計算したところ、カウンターイオンが100%拡散したときに粒子群の基板との付着力が失われることがわかった。従って、分散媒中を自由に移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量を、粒子群の総電荷量よりも小さくすることで、優れたメモリ性が得られるものと考えられる。
【0030】
・粒子群を1種有する場合
本実施形態に係る表示用分散液が、電界に応じて分散媒中を移動する粒子群として1種の粒子群(1a)のみを含有する場合、該粒子群(1a)の総電荷量が粒子群(1a)とは反対の極性に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きい。これにより、粒子群(1a)の優れたメモリ性が得られる。
尚、前記粒子群(1a)の総電荷量を1とした場合に、該粒子群(1a)とは反対の極性に帯電され分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量は0.8以下であることが好ましく、更には0.6以下であることがより好ましい。
粒子群(1a)の極性は、正帯電であっても負帯電であってもよい。
【0031】
・同極性の粒子群を2種以上有する場合
本実施形態に係る表示用分散液が、電界に応じて分散媒中を移動する粒子群として同極性に帯電した粒子群(2a)および粒子群(2b)を含有する場合、少なくとも1種の粒子群(2a)の総電荷量が、これらの粒子群とは反対の極性に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きい。これにより、少なくとも粒子群(2a)について優れたメモリ性が得られる。
尚、前記粒子群(2a)の総電荷量を1とした場合における、該粒子群(2a)とは反対の極性に帯電され分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量の好ましい範囲は、前記粒子群(1a)の場合と同じである。
粒子群(2a)および(2b)の極性は、正帯電であっても負帯電であってもよい。
【0032】
尚、前記粒子群(2a)が、粒子群(2a)および粒子群(2b)の中で最も表面電荷密度が小さい粒子群であることが好ましい。表面電荷密度は、帯電している電荷量の指標であり、つまり閾値の指標である。表面電荷密度、即ち閾値の異なる複数種の粒子群が存在する系では、最も表面電荷密度の小さい粒子群のメモリ性が得られにくい。そこで、カウンターイオンの総電荷量を、最も表面電荷密度の小さい粒子群の総電荷量より小さくすることで、分散液中に含まれる全ての粒子群に対して優れたメモリ性が得られる。
【0033】
尚、粒子群の表面電荷密度は以下の方法により測定される。
電極間に外部電圧を印加し、粒子群を一方の基板からもう一方の基板まで移動させる。このとき電極間に流れる電流を電流計により測定し、検出された電流の積算値から粒子群の総電荷量を算出する。粒子群の総電荷量を系内の粒子の個数で割ることで粒子1個あたりの帯電量を求め、さらに粒子の表面積で割ることで粒子の表面電荷密度を算出する。
また、系内に複数種の粒子群が存在する場合は、以下の方法で各粒子の電荷量を求める。各粒子群の閾値は異なっているため、電極間に印加する電圧パルスの大きさ、あるいは長さを調整することで、ある粒子群のみを移動させる。例えば、最も閾値の小さい粒子群(2a)のみが移動する電圧を印加して粒子群(2a)を移動させ、このとき検出された電流から粒子群(2a)の表面電荷密度を求める。続いて、2番目に閾値の小さい粒子群(2b)が移動する電圧を印加して粒子群(2b)を移動させ、このとき検出された電流から粒子群(2b)の表面電荷密度を求める。この手順を繰り返すことで、系内の全ての粒子群の表面電荷密度がそれぞれ測定される。
【0034】
また、前記粒子群(2a)が、粒子群(2a)および粒子群(2b)の中で最も体積平均粒子径が大きい粒子群であることが好ましい。粒子径の異なる複数種の粒子群が存在する系では、最も体積平均粒子径が大きい粒子群のメモリ性が得られにくい。そこで、カウンターイオンの総電荷量を、最も体積平均粒子径が大きい粒子群の総電荷量より小さくすることで、粒子径が大きい粒子群に対して優れたメモリ性が得られる。
【0035】
尚、粒子群の体積平均粒子径は以下の方法により測定される。
粒子群の体積平均粒子径(一次粒径)は、コールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で測定する。この時、測定は粒子群を電解質水溶液(アイソトン水溶液、ベックマン−コールター社製)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
測定法としては、分散剤として界面活性剤、望ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5質量%水溶液2ml中に、測定試料を0.5乃至50mg加え、これを前記電解液100乃至150ml中に添加する。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で1分間分散処理を行い、粒子群の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000である。
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を体積平均粒子径(一次粒径)と定義する。
【0036】
尚、同極性の粒子群を3種以上有する場合も、少なくとも1種の粒子群(a)の総電荷量が、これらの粒子群とは反対の極性に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きいことにより、少なくとも該粒子群(a)について優れたメモリ性が得られる。また、粒子群(a)が3種以上の粒子群の中でも最も表面電荷密度が小さい粒子群であることが好ましい。更に、粒子群(a)が3種以上の粒子群の中でも最も体積平均粒子径が大きい粒子群であることが好ましい。
【0037】
・異極性の粒子群をそれぞれ1種以上ずつ有する場合
本実施形態に係る表示用分散液が、電界に応じて分散媒中を移動する粒子群として正帯電粒子群(a
+)および負帯電粒子群(a
−)を含有する場合、少なくとも1種の粒子群(例えば正帯電粒子群(a
+))の総電荷量が、該粒子群とは反対の極性(例えば負極性)に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きい。これにより、少なくとも上記粒子群(例えば正帯電粒子群(a
+))について優れたメモリ性が得られる。
尚、前記粒子群(a
+)または(a
−)の総電荷量を1とした場合における、該粒子群((a
+)または(a
−))とは反対の極性に帯電され分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量の好ましい範囲は、前記粒子群(1a)の場合と同じである。
【0038】
更には、正帯電粒子群(a
+)の総電荷量が負極に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きく、且つ負帯電粒子群(a
−)の総電荷量が正極に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きいことがより好ましい。これにより、正負両極の粒子群について優れたメモリ性が得られる。
【0039】
尚、正帯電粒子群として2種以上の粒子群を含んでもよく、その場合2種以上の正帯電粒子群のうちの1種の正帯電粒子群について、負極に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きいとの要件を満たすことが好ましい。
また、負帯電粒子群についても、同じく2種以上の粒子群を含んでもよく、その場合2種以上の負帯電粒子群のうちの1種の負帯電粒子群について、正極に帯電され且つ分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きいとの要件を満たすことが好ましい。
【0040】
更に、正帯電粒子群として2種以上の粒子群を含む場合、前記正帯電粒子群(a
+)が2種以上の正帯電粒子群のうち最も表面電荷密度が小さい粒子群であることが好ましい。また、負帯電粒子群として2種以上の粒子群を含む場合、前記負帯電粒子群(a
−)が2種以上の負帯電粒子群のうち最も表面電荷密度が小さい粒子群であることが好ましい。
【0041】
更に、正帯電粒子群として2種以上の粒子群を含む場合、前記正帯電粒子群(a
+)が2種以上の正帯電粒子群のうち最も体積平均粒子径が大きい粒子群であることが好ましい。また、負帯電粒子群として2種以上の粒子群を含む場合、前記負帯電粒子群(a
−)が2種以上の負帯電粒子群のうち最も体積平均粒子径が大きい粒子群であることが好ましい。
【0042】
・分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量の測定
分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量は、粒子群を電圧印加によって基板表面に移動させた後に、電極間を短絡し、電極間に流れる電流を観測することで測定される。分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)は粒子群との内部電位差によって移動し、その際に電極間に電流が流れる。その電流値を時間積分した値が、分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量となる。
粒子群の電荷量と分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量とが等しい場合、全ての分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)が他方の基板側に移動した際に検出される電荷量が、系の総電荷量の50%となる。
【0043】
・分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量の制御方法
分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量を制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の2通りの方法が挙げられる。
【0044】
(1)表示分散液中に正帯電粒子群および負帯電粒子群を含む場合において、表示分散液中含まれる正帯電のカウンターイオンと負帯電のカウンターイオンとを結合させ、除去する方法が挙げられる。
図2Aに示すごとく、帯電極性の異なる正帯電粒子群34+と負帯電粒子群34−とが系内に存在するとき、総電荷量が各粒子群と等しく且つ極性が異なるカウンターイオン、即ち負帯電のカウンターイオン35−および正帯電のカウンターイオン35+が存在する。このカウンターイオンを正負で対になるよう結合させ、電気的に中和して除去することで、
図2Bに示すごとく、系内のカウンターイオンを低減し得る。尚、正帯電粒子群34+と負帯電粒子群34−との総電荷量(絶対値)が異なる場合でも、総電荷量が大きい粒子群(
図2Aでは負帯電粒子群34−)に対応するカウンターイオン(
図2Aでは負帯電のカウンターイオン35+)も低減し得る。
【0045】
尚、正帯電のカウンターイオンと負帯電のカウンターイオンとを結合させ除去する方法としては、表示分散液を攪拌して正帯電のカウンターイオンと負帯電のカウンターイオンとを結合させ、更に必要により遠心分離を施して中和されたカウンターイオンを浮上させて除去する方法が挙げられる。
また、カウンターイオンと粒子群との解離性を上げることで、結果として極性の異なるカウンターイオン同士を結合させる方法が挙げられる。具体的には、カウンターイオンの大きさ(粒径)を大きくする程、カウンターイオンと粒子群との解離性は上がる傾向にある。
【0046】
(2)表示媒体において一対の基板で挟まれる領域に封入された表示用分散液において、表示媒体の分散媒と接する面の少なくとも1つの面に、分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)を補足する表面層を設ける方法が挙げられる。分散媒と接する面としては、一対の基板における分散媒と接する面や、更に一対の基板で挟まれる前記領域を面方向に複数に区画する区画壁を有する場合であれば、該区画壁における分散媒と接する面が挙げられる。上記表面層の詳細な構成については後述する。
【0047】
次いで、本実施形態に係る表示用分散液について、該表示用分散液を用いた表示媒体および表示装置の構成も併せて説明する
【0048】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明するが、作用・機能が同じ働きを担う部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する場合がある。
【0049】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
図4Aおよび
図4Bは、第1実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【0050】
第1実施形態に係る表示装置10は、
図3に示すように、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18と、を含んで構成されている。
【0051】
表示媒体12は、画像表示面とされる表示基板20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板22、これらの基板間を定められた間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との基板間を複数のセルに区画する区画壁(間隙部材)24、各セル内に封入された粒子群34を含んで構成されている。また、粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する浮遊粒子群(不図示)を含んで構成されていてもよい。
【0052】
上記セルとは、表示基板20と、背面基板22と、区画壁(間隙部材)24と、によって囲まれた領域を示している。このセル中には、分散媒50が封入されている。粒子群34(詳細後述)は、複数の粒子から構成されており、この分散媒50中に分散され、セル内に形成された電界強度に応じて表示基板20と背面基板22との基板間を移動する。尚、浮遊粒子群を有する場合には該浮遊粒子群間隙を通じて移動する。
【0053】
なお、本実施形態では、1つのセル内に封入されている粒子群34は、定められた色を有すると共に、正または負に帯電処理されて予め調製されているものとして説明する。
【0054】
なお、この表示媒体12に画像を表示したときの各画素に対応するように区画壁(間隙部材)24を設け、各画素に対応するようにセルを形成することで、表示媒体12を、画素毎の表示をし得るよう構成してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、説明を簡易化するために、1つのセルに注目した図を用いて本実施形態を説明する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0056】
・基板
まず、一対の基板について説明する。表示基板20は、支持基板38上に、表面電極40を積層した構成となっている。背面基板22は、支持基板44上に、背面電極46を積層した構成となっている。
【0057】
表示基板20、または表示基板20と背面基板22との双方は、透光性を有している。ここで、本実施形態における透光性とは、可視光の透過率が60%以上であることを示している。
【0058】
支持基板38および支持基板44としては、ガラスや、プラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0059】
表面電極40および背面電極46には、インジウム、スズ、カドミウム、アンチモン等の酸化物、ITO等の複合酸化物、金、銀、銅、ニッケル等の金属、ポリピロールやポリチオフェン等の有機材料等が使用される。これらは単層膜、混合膜あるいは複合膜として使用され、蒸着法、スパッタリング法、塗布法等で形成される。また、その厚さは、蒸着法、スパッタリング法によれば、通常100Å以上2000Å以下である。背面電極46および表面電極40は、従来の液晶表示媒体またはプリント基板のエッチング等従来公知の手段により、所望のパターン、例えば、マトリックス状、またはパッシブマトリックス駆動を行い得るストライプ状に形成してもよい。
【0060】
また、表面電極40を支持基板38に埋め込んでもよい。また、背面電極46を支持基板44に埋め込んでもよい。この場合、支持基板38および支持基板44の材料を粒子群34の各粒子の組成等に応じて選択する。
【0061】
なお、背面電極46および表面電極40各々を表示基板20および背面基板22と分離させ、表示媒体12の外部に配置してもよい。
【0062】
なお、上記では、表示基板20と背面基板22の双方に電極(表面電極40および背面電極46)を備える場合を説明したが、何れか一方にだけ設けて、アクティブマトリクス駆動させるよう構成してもよい。
【0063】
また、アクティブマトリックス駆動を行い得る構成とするために、支持基板38および支持基板44は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)を備えていてもよい。配線の積層化および部品実装が容易であることから、TFTは表示基板ではなく背面基板22に形成することが望ましい。
【0064】
・表面層
本実施形態では、分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量を求められる範囲に制御する観点から、分散媒と接する面、つまり表示基板20、背面基板22、および区画壁24における分散媒と接する面の少なくとも1つの面に、分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)を補足する表面層を設けることが好ましい。
【0065】
図3では、表示基板20と背面基板22の対向面に、各々、表面層21および表面層23が設けられている。また、区画壁(間隙部材)24の表面(セル内側表面)にも、表面層25が設けられている。
【0066】
なお、本実施形態では、表示基板20と背面基板22の対向面の双方に表面層(表面層21および表面層23各々)が設けられている場合を説明するが、表示基板20と背面基板22の対向面の何れか一方にのみ設けられた構成であってもよく、少なくとも表示基板20側の対向面に表面層21が設けられた構成であることが望ましい。また、区画壁(間隙部材)24の表面(セル内側表面)にも表面層25を設けることが望ましい。つまり、少なくとも表示基板20の対向面に表面層を設けることがよいが、一対の基板および区画壁(間隙部材)の全て(即ち、これらで囲まれるセル内壁)に表面層が配設されていることが最もよい。
【0067】
分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)を補足する表面層としては、例えば以下の材料を含む表面層が挙げられる。
【0068】
(負帯電イオン(アニオン)をトラップする構造を有する表面層)
負帯電イオン(アニオン)をトラップし得る材料としては、アミド、ポルフィリン、ペプチド、(チオ)ウレア、ルイス酸(例えばフェニルボロン酸)、カルバメート、ハロゲン、共役構造(π結合)が挙げられる。
尚、負帯電イオン(アニオン)がトラップされるメカニズムとしては、上記材料がそれぞれもっている空軌道に負帯電イオンが捕獲されるものと考えられる。
【0069】
上記に列挙されたものの中でも、負帯電イオン(アニオン)をトラップする構造としては、特にルイス酸、ウレアが好ましい。
【0070】
(正帯電イオン(カチオン)をトラップする構造を有する表面層)
正帯電イオン(カチオン)をトラップし得る材料としては、エーテル、共役構造(π結合)、フェノール、チオール、チオアニソール、トリイソプロピルシランが挙げられる。
尚、正帯電イオン(カチオン)がトラップされるメカニズムとしては、水素結合、疎水性相互作用、π−π相互作用、およびこれらを組み合わせた多点相互作用によるものと考えられる。
【0071】
上記に列挙されたものの中でも、正帯電イオン(カチオン)をトラップする構造としては、特にエーテルが好ましい。
【0072】
尚、共役構造(π結合)を有する材料を表面層に用いることにより、負帯電イオン(アニオン)および正帯電イオン(カチオン)をトラップする構造を有する表面層となる。
【0073】
前記表面層の形成は、以下のようにして行われる。
負帯電イオンまたは正帯電イオンをトラップし得る材料を溶媒に溶解し、基板上にスピンコーター、ディップコーター等により塗布する。その後、溶媒を乾燥させることにより前記表面層を形成する。負帯電イオン、または正帯電イオンをトラップし得る材料を溶媒に溶解する際、表面層の強度を高めるために、架橋剤を添加することも有効である。
【0074】
表面層の厚みとしては、望ましくは0.001μm以上10μm以下、より望ましくは0.01μm以上1μm以下である。
【0075】
・区画壁(間隙部材)
次に、区画壁(間隙部材)について説明する。表示基板20と背面基板22との基板間の隙を保持するための区画壁(間隙部材)24は、表示基板20の透光性を損なわないよう形成され、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化樹脂、ゴム、金属等で形成される。
【0076】
区画壁(間隙部材)24は表示基板20および背面基板22の何れか一方と一体化されてもよい。この場合には、支持基板38または支持基板44をエッチングするエッチング処理、レーザー加工処理、予め作製した型を使用してプレス加工処理または印刷処理等を行うことによって作製する。
この場合、区画壁(間隙部材)24は、表示基板20側、背面基板22側のいずれか、または双方に作製する。
【0077】
区画壁(間隙部材)24は有色でも無色でもよいが、表示媒体12に表示される表示画像に悪影響を及ぼさないよう無色透明であることが望ましく、その場合には、例えば、ポリスチレンやポリエステルやアクリルなどの透明樹脂等が使用される。
【0078】
また、粒子状の区画壁(間隙部材)24もまた透明であることが望ましく、ポリスチレン、ポリエステルまたはアクリル等の透明樹脂粒子の他、ガラス粒子も使用される。
【0079】
なお、「透明」とは、可視光に対して、透過率60%以上有することを示している。
【0080】
・分散媒
次に、分散媒について説明する。粒子群34が分散される分散媒50としては、絶縁性液体であることが望ましい。ここで、「絶縁性」とは、体積固有抵抗が10
11Ωcm以上であることを示している。以下同義である。
【0081】
上記絶縁性液体として具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジククロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、アルコール類、エーテル類、エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用される。これらの中でも、シリコーンオイルを適用することがよい。
【0082】
また、下記体積抵抗値となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も、分散媒50として好適に使用される。該体積抵抗値としては、10
3Ωcm以上であることが望ましく、10
7Ωcm以上10
19Ωcm以下であることがより好適であり、さらに10
10Ωcm以上10
19Ωcm以下であることがよりよい。
【0083】
なお、絶縁性液体には、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加してもよいが、上記で示した特定の体積抵抗値の範囲となるよう添加することが望ましい。
【0084】
また、絶縁性液体には、帯電制御剤として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、金属石鹸、アルキルリン酸エステル類、コハク酸イミド類等を添加して使用してもよい。
【0085】
イオン性および非イオン性の界面活性剤としては、より具体的には以下が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸等がある。カチオン界面活性剤としては、第一級ないし第三級のアミン塩、第四級アンモニウム塩等があげられる。これら帯電制御剤は、粒子固形分に対して0.01質量%以上20質量%以下が望ましく、特に0.05質量%以上10質量%以下の範囲が望ましい。
【0086】
なお、分散媒50は、前記絶縁性液体と共に高分子樹脂を併用してもよい。この高分子樹脂としては、高分子ゲル、高分子ポリマー等であることも望ましい。
【0087】
この高分子樹脂としては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等の天然高分子由来の高分子ゲルが挙げられる他、合成高分子の場合にはほとんどすべての高分子ゲルが挙げられる。
【0088】
更に、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、およびアミドの官能基を繰り返し単位中に含む高分子等が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドやこれら高分子を含む共重合体が挙げられる。これら中でも、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド等が望ましく用いられる。
【0089】
また、この分散媒50に下記着色剤を混合することで、表示媒体12に粒子群34の色とは異なる色を表示させてもよい。例えば、着色剤として白色を示す着色剤を混合することにより、粒子群34の色が黒色の場合には、表示媒体12において白色と黒色とが表示される。
【0090】
この分散媒50に混合する着色剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして挙げられる。
【0091】
分散媒50はその中で粒子群34が移動することから、分散媒50の粘度が定められた値以上であると、背面基板22および表示基板20への力のばらつきが大きく、電界に対する粒子移動の閾値がとれないことから、分散媒50の粘度についても、調整することがよい。
【0092】
分散媒50の粘度は、温度20℃の環境下において、0.1mPa・s以上100mPa・s以下であることが粒子の移動速度、すなわち、表示速度の観点から望ましく、0.1mPa・s以上50mPa・s以下であることがより望ましく、0.1mPa・s以上20mPa・s以下であることが更に望ましい。
【0093】
分散媒50の粘度の調整は、分散媒の分子量、構造、組成等を調整することによって行われる。なお、この粘度の測定には、東京計器製B−8L型粘度計を用いる。
【0094】
・粒子群
次に、粒子群について説明する。粒子群34は、複数の粒子から構成され、各粒子は正または負に帯電されており、表面電極40と背面電極46との電極間に(すなわち、表示基板20と背面基板22と基板間に)、定められた電圧が印加されて表示基板20と背面基板22との基板間に定められた電界強度以上の電界が形成されることで分散媒50中を移動するものである。
表示媒体12における表示色の変化は、この粒子群34を構成する各粒子の分散媒50中の移動によって生じる。
【0095】
この粒子群34の各粒子としては、ガラスビーズ、アルミナ、酸化チタン等の絶縁性の金属酸化物粒子等、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂粒子、これらの樹脂粒子の表面に着色剤を固定したもの、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂中に着色剤を含有する粒子、およびプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子等が挙げられる。
【0096】
粒子の製造に使用される熱可塑性樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体あるいは共重合体が例示される。
【0097】
また、粒子の製造に使用される熱硬化性樹脂としては、ジビニルベンゼンを主成分とする架橋共重合体や架橋ポリメチルメタクリレート等の架橋樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0098】
着色剤としては、有機若しくは無機の顔料や、油溶性染料等が使用され、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして例示される。
【0099】
粒子の樹脂には、帯電制御剤を混合してもよい。帯電制御剤としては、電子写真用トナー材料に使用される公知のものが使用され、例えば、セチルピリジルクロライド、BONTRON P−51、BONTRON P−53、BONTRON E−84、BONTRON E−81(以上、オリエント化学工業社製)等の第4級アンモニウム塩、サリチル酸系金属錯体、フェノール系縮合物、テトラフェニル系化合物、酸化金属粒子、各種カップリング剤により表面処理された酸化金属粒子が挙げられる。
【0100】
粒子の内部や表面には、磁性材料を混合してもよい。磁性材料はカラーコートした無機磁性材料や有機磁性材料が使用される。また、透明な磁性材料、特に透明有機磁性材料がより望ましい。
着色した磁性粉として、例えば、特開2003−131420号公報記載の小径着色磁性粉を用いてもよい。核となる磁性粒子と該磁性粒子表面上に積層された着色層とを備えたものが用いられる。そして、着色層としては、顔料等により磁性粉を不透過に着色する等選定して差し支えないが、例えば光干渉薄膜を用いるのが望ましい。この光干渉薄膜とは、SiO
2やTiO
2等の無彩色材料を光の波長と同等な厚みを有する薄膜にしたものであり、薄膜内の光干渉により光を波長選択的に反射するものである。
【0101】
粒子の表面には、外添剤を付着させてもよい。外添剤の色は、粒子の色に影響を与えないよう、透明であることが望ましい。
【0102】
外添剤としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物等の無機粒子が用いられる。粒子の帯電性、流動性、および環境依存性等を調整するために、これらをカップリング剤やシリコーンオイルで表面処理してもよい。
【0103】
カップリング剤には、アミノシラン系カップリング剤、アミノチタン系カップリング剤、ニトリル系カップリング剤等の正帯電性のものと、窒素原子を含まない(窒素以外の原子で構成される)シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、エポキシシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤等の負帯電性のものがある。また、シリコーンオイルには、アミノ変性シリコーンオイル等の正帯電性のものと、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α−メチルスルホン変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等の負帯電性のものが挙げられる。これらは外添剤の求められる抵抗に応じて選択される。
【0104】
上記外添剤の中では、よく知られている疎水性シリカや疎水性酸化チタンが望ましく、特に特開平10−3177号公報記載のTiO(OH)
2と、シランカップリング剤等のシラン化合物との反応で得られるチタン化合物が好適である。シラン化合物としてはクロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤のいずれのタイプを使用してもよい。このチタン化合物は、湿式工程の中で作製されるTiO(OH)
2にシラン化合物あるいはシリコーンオイルを反応、乾燥させて作製される。
【0105】
外添剤の一次粒子は、一般的には1nm以上100nm以下であり、5nm以上50nm以下であることがより良いが、これに限定されない。
【0106】
外添剤と粒子の配合比は粒子の粒径と外添剤の粒径の兼ね合いから調整される。一般的には、外添剤の量は、粒子100質量部に対して、0.01質量部以上3質量部以下、また0.05質量部以上1質量部以下であることがより良い。
【0107】
外添剤は、複数種類の粒子の何れか1種にだけ添加してもよいし、複数種または全種類の粒子へ添加してもよい。全粒子の表面に外添剤を添加する場合は、粒子表面に外添剤を衝撃力で打込んだり、粒子表面を加熱して外添剤を粒子表面に強固に固着したりすることが望ましい。
【0108】
粒子群34を作製する方法としては、従来公知のどの方法を用いてもよい。例えば、特開平7−325434号公報記載のごとく、樹脂、顔料および帯電制御剤を定められた混合比になるよう計量し、樹脂を加熱溶融させた後に顔料を添加して混合、分散させ、冷却した後、ジェットミル、ハンマーミル、ターボミル等の粉砕機を用いて粒子を調製し、得られた粒子をその後分散媒に分散する方法が使用される。
また、懸濁重合、乳化重合、分散重合等の重合法やコアセルベーション、メルトディスパージョン、エマルジョン凝集法で帯電制御剤を粒子中に含有させた粒子を調製し、その後分散媒に分散して粒子分散媒を作製してもよい。
さらにまた、樹脂が可塑化し得るものであり、分散媒が沸騰せず、且つ、樹脂、帯電制御剤および着色剤の少なくとも一方の分解点よりも低温で、前記の樹脂、着色剤、帯電制御剤および分散媒の原材料を分散および混錬する適当な装置を用いる方法がある。具体的には、流星型ミキサー、ニーダー等で顔料と樹脂、帯電制御剤を分散媒中で加熱溶融し、樹脂の溶媒溶解度の温度依存性を利用して、溶融混合物を攪拌しながら冷却し、凝固/析出させて粒子を作製する。
【0109】
さらにまた、分散および混練のための粒状メデイアを装備した適当な容器、例えばアトライター、加熱したボールミル等の加熱された振動ミル中に上記の原材料を投入し、この容器を望ましい温度範囲、例えば80℃以上160℃以下で分散および混練する方法を使用してもよい。粒状メデイアとしては、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼、アルミナ、ジルコニア、シリカ等が望ましく用いられる。この方法によって粒子を作製するには、あらかじめ流動状態にした原材料をさらに粒状メデイアによって容器内に分散させた後、分散媒を冷却して分散媒から着色剤を含む樹脂を沈殿させる。粒状メデイアは冷却中および冷却後にも引き続き運動状態を保ちながら、剪断や衝撃を発生させ粒子径を小さくする。
【0110】
粒子群34の含有量(セル中の全質量に対する含有量(質量%))は、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、セルの厚さ(すなわち、表示基板20と背面基板22との基板間の距離)により含有量を調整することが、表示媒体12としては有効である。即ち、所望の色相を得るために、セルが厚くなるほど含有量は少なくなり、セルが薄くなるほど含有量は多くなる。一般的には、0.01質量%以上50質量%以下である。
【0111】
・浮遊粒子群
次に、浮遊粒子群について説明する。浮遊粒子群は、帯電されていない粒子群であり、粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する着色粒子から構成され、粒子群34とは異なる色を表示する反射部材として機能するものである。
【0112】
浮遊粒子群は、具体的には、例えば、粒子群34の色とは異なる色に着色されており、粒子群34による色とは異なる色を表示媒体12に表示させるための部材である。本実施形態では、浮遊粒子群は白色である場合を説明するが、この色に限定されることはない。
【0113】
浮遊粒子群は、例えば、酸化チタンや酸化ケイ素、酸化亜鉛などの白色顔料を、ポリスチレンやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PMMA、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド縮合物などに分散した粒子が使用される。また、着色部材を構成する粒子として、白色以外の粒子を適用する場合、例えば、所望の色の顔料、あるいは染料を内包した前記した樹脂粒子を使用してもよい。顔料や染料は、例えばRGBやYMC色であれば、印刷インキやカラートナーに使用されている一般的な顔料あるいは染料を使用してもよい。
【0114】
浮遊粒子群を基板間へ封入するには、例えば、インクジェット法などにより行う。
【0115】
表示媒体12における上記セルの大きさとしては、表示媒体12の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な画像を表示し得る表示媒体12が作製され、通常、表示媒体12の表示基板20の板面方向の長さが10μm以上1mm以下である。
【0116】
上記表示基板20および背面基板22を、区画壁(間隙部材)24を介して互いに固定するには、ボルトとナットの組み合わせ、クランプ、クリップ、基板固定用の枠等の固定手段を使用する。また、接着剤、熱溶融、超音波接合等の固定手段を使用してもよい。
【0117】
こうして構成される表示媒体12は、例えば、画像の保存および書換えを行い得る掲示板、回覧版、電子黒板、広告、看板、点滅標識、電子ペーパー、電子新聞、電子書籍、および複写機・プリンタと共用するドキュメントシート等に使用する。
【0118】
上記に示した、本実施形態に係る表示装置10は、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18とを含んで構成されている(
図3参照)。
【0119】
電圧印加部16は、表面電極40および背面電極46に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、表面電極40および背面電極46の双方が、電圧印加部16に電気的に接続されている場合を説明するが、表面電極40および背面電極46の一方が、接地されており、他方が電圧印加部16に接続された構成であってもよい。
【0120】
電圧印加部16は、制御部18に信号を授受し得るよう接続されている。
【0121】
制御部18は、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、装置全体を制御する制御プログラム等の各種プログラムが予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、を含むマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。
【0122】
電圧印加部16は、表面電極40および背面電極46に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部18の制御に応じた電圧を表面電極40および背面電極46間に印加する。
【0123】
次に、表示装置10の作用を説明する。この作用は制御部18の動作に従って説明する。
【0124】
ここで、表示媒体12に封入されている粒子群34は、黒色であり且つ負極性に帯電されている場合を説明する。また、分散媒50は透明であり、浮遊粒子群が白色であるものとして説明する。すなわち、本実施形態では、表示媒体12は、粒子群34の移動によって黒色または白色を表示する場合を説明する。
【0125】
まず、電圧を、定められた時間、表面電極40が負極となり背面電極46が正極となるよう印加することを示す初期動作信号を、電圧印加部16へ出力する。基板間に負極で且つ濃度変動が終了する閾値電圧以上の電圧が印加されると、負極に帯電している粒子群34を構成する粒子が背面基板22側へと移動して、背面基板22に到る(
図4A参照)。
このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、浮遊粒子群の色としての白色として視認される。
【0126】
この定められた時間は、初期動作における電圧印加における電圧印加時間を示す情報として、予め制御部18内の図示を省略するROM等のメモリ等に記憶しておけばよい。そして、処理実行のときに、この定められた時間を示す情報を読み取ればよい。
【0127】
次に、表面電極40と背面電極46との電極間に、基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を正極とし背面電極46を負極として電圧を印加すると、
図4Bに示すごとく、粒子群34は表示基板20側へと移動して表示基板20側に到達し、粒子群34による黒表示がなされる。
【0128】
こうして、本実施形態に係る表示装置10では、粒子群34が表示基板20または背面基板22に到達して、付着することで表示が行われる。
【0129】
そして、表示基板20、背面基板22、および区画壁24における分散媒と接する面の少なくとも1つの面に、分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)を補足する表面層21、23、および25の少なくとも1つを有することで、分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)が捕捉され、粒子群34の総電荷量が、粒子群34とは反対の極性に帯電され分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きいとの構成が達成される。その結果、メモリ性に優れた表示媒体が実現される。
【0130】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
図6は、第2実施形態に係る表示装置における、印加する電圧と粒子の移動量(表示濃度)との関係を模式的に示す線図である。
図7は、第2実施形態に係る表示装置における、表示媒体の基板間へ印加する電圧態様と、粒子の移動態様との関係を模式的に示す説明図である。
【0131】
第2実施形態に係る表示装置10は、2種類以上の粒子群を適用した形態である。なお、2種類以上の粒子群は、全て同じ極性で帯電されている。そして、同じ極性で帯電される2種類以上の粒子群のうちの1種の粒子群の総電荷量が、これらの粒子群とは反対の極性に帯電され分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きいとの構成を有する。
【0132】
本実施形態に係る表示装置10は、
図5に示すごとく、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18と、を含んで構成されている。
なお、本実施形態に係る表示装置10は、上記第1実施形態で説明した表示装置10と略同一の構成であるため、同一構成には同一符号を付与して詳細な説明を省略する。
【0133】
表示媒体12は、画像表示面とされる表示基板20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板22、これらの基板間を定められた間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との基板間を複数のセルに区画する区画壁(間隙部材)24、各セル内に封入された粒子群34を含んで構成されている。また、粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する浮遊粒子群(不図示)を含んで構成されていてもよい。
表示基板20および背面基板22の対向面は、第1実施形態に記載のごとく帯電処理されており、この対向面上には、表面層21および表面層23各々が設けられ、また区画壁24の分散媒50に接する面上には、表面層25が設けられている。
【0134】
本実施形態では、粒子群34として、互いに色の異なる複数種の粒子群34が分散媒50に分散されている。
【0135】
なお、本実施形態では3種類の粒子群34として、イエロー色のイエロー粒子群34Y、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、およびシアン色のシアン粒子群34Cが分散されているとして説明するが、3種類に限られない。
この複数種類の粒子群34は、基板間を電気泳動する粒子群であり、電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が各色の粒子群でそれぞれ異なる。すなわち、各色の粒子群34(イエロー粒子群34Y、マゼンタ粒子群34M、およびシアン粒子群34C)は、色毎に各色の粒子群34を移動させるために必要な電圧範囲を有し、当該電圧範囲がそれぞれ異なる。
【0136】
この電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が異なる複数種の粒子群34の各粒子としては、上記第1実施形態で説明した粒子群34を構成する材料の内の、例えば、帯電制御剤や磁性粉の量、粒子を構成する樹脂の種類や濃度等を換える等して、帯電量の異なる粒子を含む粒子分散液をそれぞれ作製し、これを混合することで得られる。
【0137】
ここで、上述のごとく、本実施形態に係る表示媒体12には3種類の粒子群34として、互いに色の異なるイエロー粒子群34Y、マゼンタ粒子群34M、およびシアン粒子群34Cが分散されており、これらの複数種類の粒子群34は、電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が各色の粒子群でそれぞれ異なる。
【0138】
なお、本実施形態では、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、シアン色のシアン粒子群34C、およびイエロー色のイエロー粒子群34Yの3色の粒子群各々が移動を開始するときの電圧の絶対値として、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34Mが|Vtm|、シアン色のシアン粒子群34Cが|Vtc|、イエロー色のイエロー粒子群34Yが|Vty|であるとして説明する。また、各色粒子群34のゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、シアン色のシアン粒子群34C、およびイエロー色のイエロー粒子群34Yの3色の粒子群各々をほぼ全て移動させるための最大電圧の絶対値として、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34Mが|Vdm|、シアン色のシアン粒子群34Cが|Vdc|、イエロー色のイエロー粒子群34Yが|Vdy|であるとして説明する。
【0139】
なお、以下で説明するVtc、−Vtc、Vdc、−Vdc、Vtm、−Vtm、Vdm、−Vdm、Vty、−Vty、Vdy、および−Vdyの絶対値は、|Vtc|<|Vdc|<|Vtm|<|Vdm|<|Vty|<|Vdy|の関係であるとして説明する。
【0140】
具体的には、
図6に示すごとく、例えば、3種類の粒子群34は、全て同極性に帯電された状態で分散媒50内に分散され、シアン粒子群34Cを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vtc≦Vc≦Vdc|(VtcからVdcの間の値の絶対値)、マゼンタ粒子群34Mを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vtm≦Vm≦Vdm|(VtmからVdmの間の値の絶対値)、およびイエロー粒子群34Yを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vty≦Vy≦Vdy|(VtyからVdyの間の値の絶対値)が、この順で重複することなく、大きくなるよう設定されている。
【0141】
また、各色の粒子群34を独立駆動するために、シアン粒子群34Cをほぼ全て移動させるための最大電圧の絶対値|Vdc|が、マゼンタ粒子群34Mを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vtm≦Vm≦Vdm|(VtmからVdmの間の値の絶対値)、およびイエロー粒子群34Yを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vty≦Vy≦Vdy|(VtyからVdyの間の値の絶対値)よりも小さく設定されている。また、マゼンタ粒子群34Mをほぼ全て移動させるための最大電圧の絶対値|Vdm|が、イエロー粒子群34Yを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vty≦Vy≦Vdy|(VtyからVdyの間の値の絶対値)よりも小さく設定されている。
【0142】
即ち、本実施形態では、各色の粒子群34を移動させるために必要な電圧範囲が重ならないよう設定することによって、各色の粒子群34を独立駆動している。
【0143】
なお、「粒子群34を移動させるために必要な電圧範囲」とは、粒子が移動開始するために必要な電圧と移動開始からさらに電圧および電圧印加時間を増加させても、表示濃度の変化が生じなくなり、表示濃度が飽和するまでの電圧範囲を示す。
また、「粒子群34をほぼ全て移動させるために必要な最大電圧」とは上記の移動開始からさらに電圧および電圧印加時間を増加させても、表示濃度の変化が生じなくなり、表示濃度が飽和する電圧を示す。
また、「ほぼ全て」とは、各色の粒子群34の特性ばらつきがあるため、一部の粒子群34の特性が表示特性に寄与しない程に異なるものがあることを表す。すなわち上述した移動開始からさらに電圧および電圧印加時間を増加させても、表示濃度の変化が生じなくなり、表示濃度が飽和した状態である。
また、「表示濃度」は、表示面側における色濃度を光学濃度(Optical Density=0D)の反射濃度計X−rite社の反射濃度計で測定しながら、表示面側と背面側との間に電圧を印加して且つこの電圧を測定濃度が増加する方向に徐々に変化(印加電圧を増加または減少)させて、単位電圧あたりの濃度変化が飽和し、且つその状態で電圧および電圧印加時間を増加させても濃度変化が生じず、濃度が飽和したときの濃度を示している。
【0144】
そして、本実施形態に係る表示媒体12では、表示基板20と背面基板22との基板間に0Vから電圧を印加して除々に印加電圧の電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vtcを超えると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの移動により表示濃度に変化が現れ始める。さらに、電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vdcとなると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0145】
さらに電圧値を上昇させて、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が+Vtmを超えると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が現れ始める。さらに電圧値を上昇させて、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が+Vdmとなると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0146】
さらに、電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vtyを超えると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動による表示濃度の変化が現れ始める。さらに電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vdyとなると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0147】
反対に、表示基板20と背面基板22との基板間に0Vからマイナス極の電圧を印加して除々に電圧の絶対値を上昇させ、基板間に印加された電圧−Vtcの絶対値を超えると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの基板間の移動により表示濃度に変化が現れ始める。さらに、電圧値の絶対値を上昇させ、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が−Vdc以上となると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0148】
さらに電圧値の絶対値を上昇させてマイナス極の電圧を印加し、表示基板20と背面基板22との基板間に印加される電圧が−Vtmの絶対値を超えると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が現れ始める。さらに電圧値の絶対値を上昇させて、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が−Vdmとなると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0149】
さらに電圧値の絶対値を上昇させてマイナス極の電圧を印加し、表示基板20と背面基板22との基板間に印加される電圧が−Vtyの絶対値を超えると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動により表示濃度に変化が現れ始める。さらに電圧値の絶対値を上昇させて、基板間に印加された電圧が−Vdyとなると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0150】
すなわち、本実施形態では、
図6に示すごとく、基板間に印加される電圧が−Vtcから+Vtcの範囲内(電圧範囲|Vtc|以下)となる電圧が表示基板20と背面基板22との基板間に印加された場合には、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程の粒子群34(シアン粒子群34C、マゼンタ粒子群34M、およびイエロー粒子群34Y)の粒子の移動は生じていないといえる。そして、基板間に、電圧+Vtcおよび電圧−Vtcの絶対値より高い電圧が印加されると、3色の粒子群34の内のシアン粒子群34Cについて表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程の粒子の移動が生じはじめて表示濃度に変化が生じはじめ、電圧−Vdcおよび電圧Vdcの絶対値|Vdc|以上の電圧が印加されると、単位電圧あたりの表示濃度に変化は生じなくなる。
【0151】
さらに、基板間に印加される電圧が−Vtmから+Vtmの範囲内(電圧範囲|Vtm|以下)となる電圧が表示基板20と背面基板22との基板間に印加された場合には、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程のマゼンタ粒子群34Mおよびイエロー粒子群34Yの粒子の移動は生じていないといえる。そして、基板間に、電圧+Vtmおよび電圧−Vtmの絶対値より高い電圧が印加されると、マゼンタ粒子群34Mおよびイエロー粒子群34Yの内のマゼンタ粒子群34Mについて、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程の粒子の移動が生じはじめて単位電圧あたりの表示濃度に変化が生じはじめ、電圧−Vdmおよび電圧Vdmの絶対値|Vdm|以上の電圧が印加されると、表示濃度に変化は生じなくなる。
【0152】
さらに、基板間に印加する電圧が−Vtyから+Vtyの範囲内(電圧範囲|Vty|以下)となる電圧が表示基板20と背面基板22との基板間に印加された場合には、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程のイエロー粒子群34Yの粒子の移動は生じていないといえる。そして、基板間に、電圧+Vtyおよび電圧−Vtyの絶対値より高い電圧が印加されると、イエロー粒子群34Yについて、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程の粒子の移動が生じ始めて表示濃度に変化が生じはじめ、電圧−Vdyおよび電圧Vdyの絶対値|Vdy|以上の電圧が印加されると、表示濃度に変化は生じなくなる。
【0153】
次に、
図7を参照して、表示媒体12に画像を表示するときの粒子移動のメカニズムを説明する。
【0154】
例えば、表示媒体12に、複数種類の粒子群34として、
図6を用いて説明したイエロー粒子群34Y、マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34Cが封入されているとして説明する。
【0155】
また、以下では、イエロー粒子群34Yを構成する粒子が移動開始するために必要な電圧の絶対値より大きく、且つイエロー粒子群34Yの上記最大電圧以下で基板間に印加する電圧を「大電圧」と称し、マゼンタ粒子群34Mを構成する粒子が移動開始するために必要な電圧の絶対値より大きく、且つマゼンタ粒子群34Mの上記最大電圧以下で基板間に印加する電圧を「中電圧」と称し、シアン粒子群34Cを構成する粒子が移動開始するために必要な電圧の絶対値より大きく、且つシアン粒子群34Cの上記最大電圧以下で基板間に印加する電圧を「小電圧」と称して説明する。
【0156】
また、表示基板20側に背面基板22側より高い電圧を基板間に印加する場合には、各々の電圧を、「+大電圧」、「+中電圧」、および「+小電圧」各々と称する。また、背面基板22側に表示基板20側より高い電圧を基板間に印加する場合には、各々の電圧を、「−大電圧」、「−中電圧」、および「−小電圧」各々と称して説明する。
【0157】
図7(A)に示すごとく、初期状態では全ての粒子群としてのマゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、およびイエロー粒子群34Yの全てが背面基板22側に位置されるとすると(白色表示状態)、この初期状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+大電圧」を印加させると、全ての粒子群として、マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、およびイエロー粒子群34Yが表示基板20側に移動する。この状態で、電圧印加を解除しても、各粒子群各々は表示基板20側に付着したまま移動せずに、マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、およびイエロー粒子群34Yによる減色混合(マゼンタと、シアンと、イエロー色の減色混合)により黒色を表示したままの状態となる。(
図7(B)参照)。
【0158】
次に、
図7(B)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−中電圧」を印加させると、全ての色の粒子群34の内、マゼンタ粒子群34Mと、シアン粒子群34Cと、が背面基板22側に移動する。このため、表示基板20側にはイエロー粒子群34Yのみが付着した状態となることから、イエロー色表示がなされる(
図7(C)参照)。
【0159】
さらに、
図7(C)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+小電圧」を印加させると、背面基板22側に移動したマゼンタ粒子群34Mおよびシアン粒子群34Cの内、シアン粒子群34Cが表示基板20側に移動する。このため、表示基板20側には、イエロー粒子群34Yおよびシアン粒子群34Cが付着した状態となり、イエローとシアンとの減色混合による緑色が表示される(
図7(D)参照)。
【0160】
また、上記
図7(B)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−小電圧」を印加させると、全ての粒子群34の内、シアン粒子群34Cが背面基板22側に移動する。このため、表示基板20側にはイエロー粒子群34Yとマゼンタ粒子群34Mが付着した状態となることから、シアンとマゼンタの加色混合による赤色表示がなされる(
図7(I)参照)。
【0161】
一方、
図7(A)に示す上記初期状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+中電圧」を印加させると、全ての粒子群34(マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、およびイエロー粒子群34Y)の内、マゼンタ粒子群34Mとシアン粒子群34Cとが表示基板20側に移動する。このため、表示基板20側には、マゼンタ粒子群34Mとシアン粒子群34Cとが付着するので、マゼンタとシアンの減色混合による青色が表示される(
図7(E)参照)。
【0162】
この
図7(E)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−小電圧」を印加させると、表示基板20側に付着しているマゼンタ粒子群34Mとシアン粒子群34Cの内の、シアン粒子群34Cが背面基板22側に移動する。
このため、表示基板20側には、マゼンタ粒子群34Mのみが付着した状態となるので、マゼンタ色が表示される(
図7(F)参照)。
【0163】
この
図7(F)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−大電圧」を印加させると、表示基板20側に付着しているマゼンタ粒子群34Mが背面基板22側に移動する。
このため、表示基板20側には、何も付着しない状態となるため、浮遊粒子群の色としての白色が表示される(
図7(G)参照)。
【0164】
また、上記
図7(A)に示す上記初期状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+小電圧」を印加させると、全ての粒子群34(マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、およびイエロー粒子群34Y)の内、シアン粒子群34Cが表示基板20側に移動する。このため、表示基板20側には、シアン粒子群34Cが付着するので、シアン色が表示される(
図7(H)参照)。
【0165】
さらに、上記
図7(I)に示す状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−大電圧」を印加させると、
図7(G)に示すごとく全ての粒子群34が背面基板22側に移動して白色表示がなされる。
同様に、上記
図7(D)に示す状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−大電圧」を印加させると、
図7(G)に示すごとく全ての粒子群34が背面基板22側に移動して白色表示がなされる。
【0166】
本実施形態では、各粒子群34に応じた電圧を基板間に印加することで、当該電圧による電界に応じて選択的に所望の粒子を移動させるので、所望の色以外の色の粒子が分散媒50中を移動することが抑制され、所望の色以外の色が混じる混色が抑制されて、カラー表示がなされる。なお、各粒子群34は、互いに電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が異なれば、互いに電界に応じて移動するために必要な電圧範囲が重なっていても、鮮明なカラー表示が実現されるが、当該電圧範囲が互いに異なるほうが、より混色を抑制してカラー表示が実現される。
【0167】
また、シアン、マゼンタ、イエローの3色の粒子群34を分散媒50中に分散することによって、シアン、マゼンタ、イエロー、青色、赤色、緑色、および黒色を表示するとともに、白色の浮遊粒子群によって白色を表示し、特定のカラー表示を行うことが実現される。
【0168】
こうして、本実施形態に係る表示装置10でも、上記第1実施形態で説明した表示装置10に示すごとく、粒子群34が表示基板20または背面基板22に到達して、付着することで表示が行われる。
【0169】
そして、表示基板20、背面基板22、および区画壁24における分散媒と接する面の少なくとも1つの面に、分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)を補足する表面層21、23、および25の少なくとも1つを有することで、分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)が捕捉され、粒子群34のうちの1種の粒子群の総電荷量が、粒子群34とは反対の極性に帯電され分散媒中を移動し得るイオン(カウンターイオン)の総電荷量より大きいとの構成が達成される。その結果、メモリ性に優れた表示媒体が実現される。
【実施例】
【0170】
以下に本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0171】
[測定方法]
−粒子(粒子群)の体積平均一次粒径の測定−
粒子の体積平均一次粒径は、コールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で測定した。この時、測定は粒子を電解質水溶液(アイソトン水溶液、ベックマン−コールター社製)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
測定法としては、分散剤として界面活性剤、望ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に、測定試料を0.5乃至50mg加え、これを前記電解液100乃至150ml中に添加する。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で1分間分散処理を行い、粒子の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000である。
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を体積平均一次粒径と定義する。
【0172】
−粒子(粒子群)に含まれる樹脂のガラス転移温度の測定−
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(島津製作所製のDSC−50)を用い、JIS 7121−1987に準拠して測定した。この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の溶融温度を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。
粒子をそのままアルミニウム製パンに入れ、粒子の入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行った。
測定により得られたDSC曲線の吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度をもってガラス転移温度とした。
【0173】
[着色浮遊粒子群(1)(白色(W)粒子群(1))の調製]
1)コア粒子の作製
−連続相の調製−
以下の材料を混合し、ラジカル溶液重合(55℃/6時間)にて高分子分散剤E1を合成した。
・サイラプレーンFM−0711(JNC社製、重量平均分子量Mn=1,000):36g
・メタクリル酸(アルドリッチ社製):0.35g
・シリコーンオイルKF−96L−2CS(信越化学工業社製):40g
・重合開始剤V−65(和光純薬工業社製):0.06g
重合反溶成分が3gになるようにシリコーンオイルKF−96L−2cs(信越化学工業社製)を用いて希釈し、高分子分散剤E1を含む溶液A1(連続相)を調製した。
【0174】
−分散相の調製−
スチレンアクリル系樹脂X−1202L(星光PMC社製)10g、二酸化チタンTTO−55A(石原産業社製)10g、および蒸留水90gを混合したものにジルコニアビーズを加え、ロッキングミルで1時間分散処理を行い、溶液B1(分散相)とした。
【0175】
−乳化および液中乾燥工程−
溶液A1(連続相)80gと、溶液B1(分散相)20gとを混合して、オムニホモジナイザーGLH−115を用いて20,000rpmで10分間乳化を行い乳化液を調製した。
次に、得られた乳化液をナスフラスコに入れ、攪拌しながらエバポレーターにて65℃、10mPaに加熱減圧することで水を除去し、二酸化チタン粒子がシリコーンオイル中に分散された粒子分散液を得た。得られた分散液を遠心分離を用いて沈降させ、上澄みを除去し、トルエンを加えて粒子固形分濃度20質量%となるように調製し、粒子トルエン分散液C1を得た。
【0176】
2)シェル化工程
−シェル樹脂の合成−
・スチレン(和光純薬工業社製):70g
・サイラプレーンFM−0721(JNC社製、重量平均分子量Mw=5000):25g
・メタクリル酸(東京化成工業社製):5g
・ラウロイルパーオキサイド(アルドリッチ社製):1g
・トルエン(関東化学社製):100g
上記組成で各材料を混合し、75℃で6時間加熱した後、イソプロピルアルコール(関東化学社製)中に滴下し、再沈殿法により精製し、白色の固体(シェル樹脂)を得た。得られたシェル樹脂の重量平均分子量Mw=30000であった。
【0177】
−シェル化工程−
酸化チタン粒子分散液の作製
・シェル樹脂:10g
・粒子トルエン分散液C1(粒子固形分濃度20質量%):50g
上記組成で各材料を混合し、それにシリコーンオイルKF−96L−2cs(信越化学工業社製)を200g滴下しシェル樹脂を析出させた。その後、エバポレーターを用いて60℃、20mbar下でトルエンを除去することで、シェル樹脂で被覆された酸化チタンよりなる、着色浮遊粒子群(1)(白色(W)粒子群(1))の分散液を得た。
【0178】
[シアン(C)粒子群の調製]
1)コア粒子の作製
−分散相の調製−
下記成分を60℃に加温しながら混合し、インク固形分濃度が15質量%、乾燥後の顔料濃度が50質量%となるように分散相を調製した。
・スチレンアクリル系ポリマーX345(星光PMC社製):7.2g
・シアン顔料PB15:3の水分散液Emacol SF Blue H524F(山陽色素社製、固形分26質量%):18.8g
・蒸留水:24.1g
【0179】
−連続相の調製−
下記成分を混合して連続相を準備した。
・界面活性剤KF−6028(信越化学工業社製):3.5g
・シリコーンオイルKF−96L−2cs(信越化学工業社製):346.5g
【0180】
−粒子作製−
上記分散相50gと、上記連続相350gと、を混合し内歯式卓上分散機ROBOMICS(特殊機化工業社製)を用い回転数10,000rpm、温度30℃で10分間乳化を行った。その結果、乳化液滴径が2μmの乳化液を得た。これをロータリーエバポレーターを用いて真空度20mbar、水浴温度40℃で18時間乾燥を行った。
得られた粒子懸濁液を6,000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、シリコーンオイルKF−96L−2csを用いて再分散させる洗浄工程を3回繰り返した。こうしてコア粒子6gを得た。SEM画像解析した結果、平均粒径は0.6μmであった。
【0181】
2)シェル形成(コアセルベーション法)
−シェル樹脂の合成−
下記成分を混合し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。
・サイラプレーンFM−0721(JNC社製):50g
・ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA/アルドリッチ社製):32g
・フェノキシ基を含むモノマーAMP−10G(新中村化学社製):18g
・ブロックイソシアネート基を含むモノマー・カレンズMOI−BP(昭和電工社製):2g
・イソプロピルアルコール(関東化学社製):200g
・重合開始剤AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アルドリッチ社製):0.2g
生成物をシクロヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥しシェル樹脂を得た。このシェル樹脂2gをt−ブタノール溶媒20gに溶解し、シェル樹脂溶液を作製した。
【0182】
−シェル樹脂による粒子被覆−
上記コア粒子1gを200mLのナスフラスコに取り、シリコーンオイルKF−96L−2csを15g加え、超音波を加えながら攪拌分散した。これに、t−ブタノール7.5g、上記シェル樹脂溶液22g、シリコーンオイルKF−96L−2cs12.5gを順次加えた。投入速度は全て2mL/sとした。上記ナスフラスコをロータリーエバポレーターに接続し、真空度20mbar、水浴温度50℃で1時間、t−ブタノール除去を行った。
これをさらに攪拌しながらオイルバス中で加温した。まず100℃で1時間加温し、残留水分と残留するt−ブタノールを除いた後、続けて130℃で1.5時間の加熱を行い、ブロックイソシアネート基のブロック基を脱離させ、シェル材料の架橋反応を行った。
冷却後、得られた粒子懸濁液を6,000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、シリコーンオイルKF−96L−2csを用いて再分散させる洗浄工程を3回繰り返した。こうしてシアン(C)粒子群0.6gを得た。
【0183】
[赤色(R)粒子群の調製]
−分散液A−1Aの調製−
下記成分を混合し、10mmΦのジルコニアボールにてボールミル粉砕を20時間実施して分散液A−1Aを調製した。
・メタクリル酸メチル(アルドリッチ社製):53質量部
・メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル(アルドリッチ社製):0.3質量部
・赤色顔料Red3090(山陽色素社製):1.5質量部
【0184】
−分散液A−1Bの調製−
下記成分を混合し、上記分散液A−1Aに記載の方法によりボールミルにて粉砕して炭酸カルシウム分散液A−1Bを調製した。
・炭酸カルシウム:40質量部
・水:60質量部
【0185】
−混合液A−1Cの調製−
下記成分を混合し、超音波機で脱気を10分間行い、ついで乳化機で攪拌して混合液A−1Cを調製した。
・炭酸カルシウム分散液A−1B:4g
・20%食塩水:60g
【0186】
−着色粒子の調製−
下記成分を混合後、超音波機で脱気を10分行った。
・分散液A−1A:20g
・ジメタクリル酸エチレングリコール:0.6g
・重合開始剤V601(Dimethyl2,2’−azobis(2−methylpropionate):和光純薬工業社製):0.2g
これを前記混合液A−1Cに加え、乳化機で乳化を実施した。次にこの乳化液をフラスコにいれ、減圧脱気を充分行い、窒素ガスで封入した。次に65℃で15時間反応させ粒子を調製した。冷却後、粒子を濾過し、得られた粒子粉をイオン交換水中に分散させ、塩酸水で炭酸カルシウムを分解させ、ろ過を行った。充分な蒸留水で洗浄し、目開き:5μm、15μmのナイロン篩にかけ、粒度を揃えた。得られた粒子(赤色粒子)は、体積平均一次粒径9μmであった。
【0187】
−シェル形成−
サイラプレーンFM−0711(JNC社製、重量平均分子量Mw=1000)95質量部、グリシジルメタクリレート(和光純薬工業社製)2質量部、メタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)3質量部を、イソプロピルアルコール(IPA)300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル)1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行った。その後、シリコーンオイルKF−96L−2cs(信越化学工業社製)を300質量部加えた後、IPAを減圧除去することにより、シェル剤とした。
その後、上記で得られた赤色粒子を2質量部、前記シェル剤を25質量部、トリエチルアミンを0.01質量部の割合で混合し、100℃の温度で5時間攪拌した。その後、遠心沈降により溶媒を除去し、更に減圧乾燥させ、表面処理を施した赤色(R)粒子群を得た。
得られた赤色粒子群の体積平均粒径は9μmであった。
【0188】
[シアン・赤・白混合液(表示用分散液)の調製]
上記白色(W)粒子群(1)と、シアン(C)粒子群と、赤色(R)粒子群と、を固形分でC粒子群が0.1g、R粒子群が1.0g、W粒子群が2.0gとなるように秤量・混合し、液量が10gとなるようにシリコーンオイルKF−96L−2cs(信越化学工業社製)を加え、超音波攪拌して表示用分散液を得た。
【0189】
<実施例1>
(表面層および表示媒体の作製)
−アニオントラップ表面層形成用塗布液A1の調製−
リービッヒ冷却管付き100ml三口フラスコにフェニルボロン酸(アルドリッチ社製)1.16質量部とTHF(和光純薬工業社製)4.5質量部とを入れ溶解させた。ここに、n−ヘキサン(和光純薬工業社製)5.1質量部とカルビノール変性シリコーンX−22−4039(信越化学工業社製)20質量部、モレキュラーシーブス(和光純薬工業社製)6質量部を加え、加熱還流を2時間行った。放冷後、モレキュラーシーブスを除去し、硫酸ナトリウム(東京化成社製)による脱水を行った。その後、溶媒を除去することによりアニオントラップ表面層形成用塗布液A1を得た。
【0190】
−表示媒体の作製−
以下のごとく、表示媒体を作製した。
厚さ0.7mmのガラスからなる支持基板上に電極としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜した。
【0191】
その後、KBM−9659(信越化学工業社製)/イソプロパノール(和光純薬工業社製)溶液(20質量%)、アニオントラップ表面層形成用塗布液A1/シリコーンオイルKF−96L−1cs(信越化学工業社製)溶液(10質量%)をそれぞれ調製し、質量比25/75となるよう混合した。
この混合液を用い、前記ITO基板上にスピンコーターで塗布し、100℃で30分間乾燥することにより、アニオントラップ表面層を形成した基板を得た。この表面層の膜厚は100nmであった。また、この表面層の形成された基板を表面層の形成された側から光学濃度計X−Rite MODEL 404(X−Rite社製)にて測定したところ、L
*値は93を示した。
【0192】
尚、実施例における上記光学濃度計を用いた測定では、測定対象領域内の任意の箇所10点について測定した測定結果の平均値を、光学濃度計による測定結果として示す。
【0193】
こうして作製した表面層付きITO基板を2枚用意し、表示基板および背面基板とし、50μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとし、表示基板および背面基板の互いの表面層が形成された面を対向させて背面基板上に表示基板を重ね合わせて、クリップにて固定した。
その後、前記表示用分散液を2枚の表面層付きITO基板間の間隙に注入し、評価用表示媒体セルを作製した。
【0194】
−メモリ性評価試験−
作製した評価用表示媒体セルを用いて、表示基板(そのITO電極)がプラス、背面基板(そのITO電極)がマイナスとなるよう、基板間(そのITO電極間)に20Vの電圧を印加した。これにより、正帯電のシアン粒子群と赤色粒子群は背面基板側面に泳動し、表示基板側からは白色粒子群の色(白色)が観察された。
次に、表示基板(そのITO電極)がマイナス、背面基板(そのITO電極)がプラスとなるよう、基板間(そのITO電極間)に20Vの電圧を印加した。これにより、正帯電のシアン粒子群と赤色粒子群は表示基板側面に泳動し、表示基板側からはシアン粒子群と赤色粒子群の混合した色(黒色)が観察された。
その後、上記の操作を30回連続して行い、表示基板(そのITO電極)がマイナス、背面基板(そのITO電極)がプラスとなるよう20Vの電圧を15秒間印加し、電圧をOFFした。これにより、正帯電のシアン粒子群と赤色粒子群は表示基板側面に泳動し、表示基板側からはシアン粒子群と赤色粒子群の混合した色(黒色)が観察された。
【0195】
この状態で2日間静置したのち、表示基板側からの観察を行ったところ、表示面は黒色が観察された。更に、一対の基板を剥がし、背面基板の表面層の形成された側から光学濃度計X−Rite MODEL 404(X−Rite社製)にてL
*値を測定したところ93であった。即ち、シアン粒子群、赤色粒子群ともに、表示基板側面に保持されていたこと(メモリ性があること)がわかった。
【0196】
<実施例2>
[着色浮遊粒子群(2)(白色(W)粒子群(2))分散液の調製]
還流冷却管を取り付けた100ml三口フラスコに、2−ビニルナフタレン(新日鉄住金化学社製)を5質量部、シリコーンマクロマFM−0721(JNC社製)を5質量部、開始剤として過酸化ラウロイル(和光純薬社工業製)を0.3質量部、シリコーンオイルKF−96L−1cs(信越化学工業社製)を20質量部加え、窒素ガスによるバブリングを15分間行った後、窒素雰囲気下にて65℃、24時間の重合を行い、白色粒子を得た。
得られた白色粒子をシリコーンオイルにて固形分濃度40質量%に調製し、白色(W)粒子群(2)分散液とした。このとき、白色粒子の粒子径は450nmであった。
【0197】
[マゼンタ(M)粒子群の調製]
シリコーン変性ポリマーKP−545(信越化学工業社製)4質量部をジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF−96L−2cs)96質量部に溶解して溶液Xを調製した。
次に、スチレンアクリル系ポリマー(ジメチルエタノールアミン中和)10質量部、水分散顔料溶液(BASF社製ユニスパース・マゼンタ色、顔料濃度20質量%)5質量部、純水85質量部を混合して溶液Yを調製した。
得られた溶液Xと溶液Yとを混合し、超音波破砕機(エスエムテー社製UH−600S)にて分散・乳化を行った。
次に、この懸濁液を減圧(2KPa)、加熱(70℃)して水分を除去し、濃度を調整することにより、シリコーンオイル中にマゼンタ顔料を含んだ泳動粒子(マゼンタ(M)粒子群)が分散したシリコーンオイル分散液(粒子固形分5質量%)を得た。
【0198】
[シアン・マゼンタ・白混合液(表示用分散液)の調製]
上記白色(W)粒子群(2)と、シアン(C)粒子群と、マゼンタ(M)粒子群と、を固形分でC粒子群が0.1g、M粒子群が0.1g、W粒子群が2.0gとなるように秤量・混合し、液量が10gとなるようにシリコーンオイルKF−96L−2cs(信越化学工業社製)を加え、超音波攪拌して表示用分散液を得た。
【0199】
[表示用分散液の遠心分離処理]
得られた表示用分散液にシリコーンオイルKF−96L−2cs(信越化学工業社製)を30g加え、卓上型遠心分離機CN−2060(アズワン社製)を用い5,500rpmの回転数で20分間の遠心分離を行い、その後、上澄みを除去した。以上の操作を3回行い、液量が10gとなるよう調製した。
【0200】
−表示媒体の作製−
厚さ0.7mmのガラスからなる支持基板上に電極としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜した。その後、ITO上にサイトップCTL−809M(旭硝子社製)を用いて、厚さ100nmの薄膜をスピンコーターによって形成し、サイトップ表面層が形成された基板を作製した。
【0201】
こうして作製したサイトップ表面層付きITO基板を2枚用意し、表示基板および背面基板とし、50μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとし、表示基板および背面基板の互いの表面層が形成された面を対向させて背面基板上に表示基板を重ね合わせて、クリップにて固定した。
その後、前記表示用分散液を2枚のサイトップ表面層付きITO基板間の間隙に注入し、評価用表示媒体セルを作製した。
【0202】
−メモリ性評価試験−
作製した評価用表示媒体セルを用いて、表示基板(そのITO電極)がプラス、背面基板(そのITO電極)がマイナスとなるよう、基板間(そのITO電極間)に20Vの電圧を印加した。これにより、正帯電のシアン粒子群は背面基板側面に泳動し、負帯電のマゼンタ粒子群は表示基板側面に泳動し、表示基板側からはマゼンタ粒子群の色(マゼンタ色)が観察された。
次に、表示基板(そのITO電極)がマイナス、背面基板(そのITO電極)がプラスとなるよう、基板間(そのITO電極間)に20Vの電圧を印加した。これにより、正帯電のシアン粒子群は表示基板側面に泳動し、負帯電のマゼンタ粒子群は背面基板側面に泳動し、表示基板側からはシアン粒子群の色(シアン色)が観察された。
その後、上記の操作を30回連続して行い、表示基板(そのITO電極)がプラス、背面基板(そのITO電極)がマイナスとなるよう20Vの電圧を15秒間印加し、電圧をOFFした。これにより、表示基板側からはマゼンタ粒子群の色(マゼンタ色)が観察された。
【0203】
この状態で2日間静置したのち、表示基板側からの観察を行ったところ、電圧OFFのときと同じマゼンタ色が観察された。更に、背面基板側から観察を行ったところ、シアン色が観察された。即ち、マゼンタ粒子群は表示基板側面に保持されていたこと(メモリ性があること)がわかった。
【0204】
<比較例1>
実施例1において、アニオントラップ表面層形成用塗布液A1の代わりにカルビノール変性シリコーンX−22−4039(信越化学工業社製)を用いたこと以外は、全て実施例1に記載の方法により表示媒体セルを作製した。
【0205】
即ち、以下の方法により表面層を形成して表示媒体セルを作製した。
KBM−9659(信越化学工業社製)/イソプロパノール(和光純薬工業社製)溶液(20質量%)、カルビノール変性シリコーンX−22−4039(信越化学工業社製)/シリコーンオイルKF−96L−1cs(信越化学工業社製)溶液(10質量%)をそれぞれ調製し、質量比25/75となるように混合した。
この混合液を用い、前記ITO基板上にスピンコーターで塗布し、100℃で30分間乾燥することにより、比較例用表面層を形成した基板を得た。この表面層の膜厚は100nmであった。また、この表面層の形成された基板を表面層の形成された側から光学濃度計X−Rite MODEL 404(X−Rite社製)にて測定したところ、L
*値は94を示した。
その後、実施例1と同様にして、評価用表示媒体セルを作製した。
【0206】
−メモリ性評価試験−
作製した評価用表示媒体セルを用いて、表示基板(そのITO電極)がプラス、背面基板(そのITO電極)がマイナスとなるよう、基板間(そのITO電極間)に20Vの電圧を印加した。これにより、正帯電のシアン粒子群と赤色粒子群は背面基板側面に泳動し、表示基板側からは白色粒子群の色(白色)が観察された。
次に、表示基板(そのITO電極)がマイナス、背面基板(そのITO電極)がプラスとなるよう、基板間(そのITO電極間)に20Vの電圧を印加した。これにより、正帯電のシアン粒子群と赤色粒子群は表示基板側面に泳動し、表示基板側からはシアン粒子群と赤色粒子群の混合した色(黒色)が観察された。
その後、上記の操作を30回連続して行い、表示基板(そのITO電極)がマイナス、背面基板(そのITO電極)がプラスとなるよう20Vの電圧を15秒間印加し、電圧をOFFした。これにより、正帯電のシアン粒子群と赤色粒子群は表示基板側面に泳動し、表示基板側面からはシアン粒子群と赤色粒子群の混合した色(黒色)が観察された。
【0207】
この状態で2日間静置したのち、表示基板側からの観察を行ったところ、表示面は薄いシアン色が観察された。更に、一対の基板を剥がし、背面基板の表面層の形成された側から光学濃度計X−Rite MODEL 404(X−Rite社製)にてL
*値を測定したところ25であった。即ち、ほとんどの赤色粒子群と多くのシアン粒子群が背面基板側面へ移動(落下)したこと(メモリ性がないこと)が分かった。
【0208】
<比較例2>
実施例2において、遠心分離を行っていない表示用分散液を用いた以外は、全て実施例2と同様にして評価用表示媒体セルを作製し、実施例2と同様にメモリ性評価試験を行った。
その結果、2日間静置したのち、表示基板側からの観察を行ったところ、薄いマゼンタ色が観察された。更に、背面基板側から観察を行ったところ、青色が観察された。即ち、表示基板側面に泳動していたマゼンタ粒子群が、2日間静置したのちに背面基板側面に移動(落下)し、表示基板側面に保持されていなかったこと(メモリ性がないこと)がわかった。
【0209】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、メモリ性が改善していることがわかる。