特許第6371636号(P6371636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371636
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/70 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
   E06B1/70 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-164365(P2014-164365)
(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公開番号】特開2016-40436(P2016-40436A)
(43)【公開日】2016年3月24日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】北尾 貢
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05822934(US,A)
【文献】 特開2010−248699(JP,A)
【文献】 特開2003−176671(JP,A)
【文献】 特開2009−144509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00−1/70
E06B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝が開口して形成された見付け片部を有した枠材と、前記溝を塞ぐ溝塞ぎ材とを備え、
前記溝は、前記見付け片部から前記枠材の見込み方向に延びた見込み片部と、前記見込み片部から垂下した垂下片部と、前記垂下片部から前記見付け片部に向かって下方に傾斜して延びた傾斜片部とによって形成され、
前記溝塞ぎ材は、溝塞ぎ本体と、前記溝塞ぎ本体を保持する保持体とを備え、
前記溝塞ぎ本体は、溝塞ぎ片部と、前記溝塞ぎ片部から建具の見込み方向に延びているとともに係合凹部が形成された係合片部と、前記係合片部の前記垂下片部側に設けられた当接片部とを有して構成され、
前記溝塞ぎ片部の高さ寸法は、前記溝の開口の高さ寸法と同じとされ、
前記溝塞ぎ片部から前記当接片部までの見込み幅寸法は、前記溝の開口から前記垂下片部までの見込み幅寸法と同じとされ、
前記保持体は、前記係合凹部に対して高さ位置調整可能に係合する係合部材と、前記係合部材を前記見込み片部に固定する固定具とを備えて構成され、
前記溝塞ぎ本体が前記保持体に保持された状態において、前記係合部材は、前記係合凹部に係合して前記溝塞ぎ本体の見込み方向の移動を規制し、前記溝塞ぎ片部は、前記見付け片部に沿って位置し、前記当接片部は、前記垂下片部に当接する
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記固定具は、固定ビスによって構成され、
前記係合凹部には、前記当接片部側に位置する前記固定ビスの面に当接する当接面が形成される
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項に記載の建具において、
前記当接面は、前記当接片部側から前記溝塞ぎ片部側に向かって下方に傾斜して形成される
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内外を仕切るビル用サッシや屋内空間の間仕切りとして使用される建具であって、枠材に排水溝が形成された建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具として、例えば、左右の縦枠部材間に分割方立を配置し、この分割方立と縦枠部材との間に上枠部材、無目、下枠部材を架け渡して構成された枠体の内部に四枚の固定ガラス板を備え、下枠部材には排水溝の開口が屋外側に露呈して設けられ、この排水溝から下枠部材内に浸入した水などを排水する建具が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載の建具は、スーパーマーケットやホームセンター等の店舗において屋内外を仕切るショップフロントやストアフロントなどのビル用サッシとして用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5069721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の建具は、前述したように屋内外を仕切るビル用サッシとして使用されるのが一般的であるが、例えば、屋内空間の間仕切りとして使用したいとのニーズもある。この建具を間仕切りとして使用する場合には、例えば、排水溝が設けられた下枠部材の見付け面をフラットな形状としたものが意匠的観点から望まれることがある。
また、建具をショップフロントやストアフロントなどのビル用サッシとして使用する場合であっても、下枠部材の見付け面をフラットな形状とすることが望まれることもあり得る。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の建具では、排水溝の開口が下枠部材の見付け面に露呈して設けられているため、この建具をそのまま間仕切りなどとして使用しても、排水溝の開口が露呈する下枠部材の見付け面は、フラットな形状とはならない。
そこで、本発明者は、例えば図6に示すように、排水溝に溝塞ぎ材を設けることによって、排水溝を目隠しし、下枠部材の見付け面をフラットな形状にすることを検討した。
【0006】
図6は、溝塞ぎ材201が排水溝202に設けられた下枠部材203を示す縦断面図である。排水溝202は、下枠部材203の見付け片部204に開口しており、見付け片部204から下枠部材203の見込み方向に延びた見込み片部205と、見込み片部205から垂下した垂下片部206と、垂下片部206から見付け片部204に向かって斜め下方に傾斜して延びた傾斜片部207とによって形成されている。排水溝202の開口上側に位置する見付け片部204の部分は、見込み片部205よりも下方に突出した突出部209として形成されている。
【0007】
溝塞ぎ材201は、見付け方向に延びた溝塞ぎ片部221と、溝塞ぎ片部221から見込み方向に延びた取付片部222と、取付片部222の先端に設けられた当接片部223とを有して構成されており、溝塞ぎ片部221と取付片部222との連続部分には、突出部209に当接する段部が形成されている。
図6において、前記溝塞ぎ材201の段部の高さ寸法は、突出部209の下部先端から見込み片部205の下面までの突出部209の高さ寸法H1と同じである。当接片部223の高さ寸法は、垂下片部206の高さ寸法H2と同じである。また、溝塞ぎ片部221の高さ寸法は、排水溝202の開口の高さ寸法H3と同じであり、溝塞ぎ材201の見込み幅寸法は、見付け片部204の表面から垂下片部206の見付け片部204側の面までの見込み幅寸法Wと同じである。
上記各寸法に設定されているため、溝塞ぎ材201をその当接片部223側から排水溝202の開口に挿入でき、当接片部223を垂下片部206に当接し、取付片部222を見込み片部205に沿って配置し、溝塞ぎ片部221を見付け片部204に沿った状態で排水溝202の開口に配置し、ビス224によって取付片部222を見込み片部205に取り付けることで、溝塞ぎ材201によって排水溝202の開口をフラットに塞ぐことができる。
【0008】
しかし、下枠部材203の各高さ寸法H1,H2が変化した場合には、溝塞ぎ材201を取付不良なく取り付けることが困難である。例えば図7に示すように、高さ寸法H1,H2が図6に示す高さ寸法H1,H2よりも大きい場合には、取付片部222の取り付け作業において、取付片部222をビス224により見込み片部205側に引きよせると、溝塞ぎ材201の当接片部223側は上昇するが、溝塞ぎ材201の溝塞ぎ片部221側は突出部209に当接して上昇が規制されてしまう。これにより、溝塞ぎ材201が斜めに傾くいわゆる転びが発生し、見付け方向に延びた溝塞ぎ片部221が斜めになるため排水溝202の開口をフラットに塞ぐことが困難である。
また、このような溝塞ぎ材201の取付不良は、下枠部材203への取り付けに限らず、排水溝202などの各種の溝が設けられた縦枠部材や幅木、無目などの各枠材に対しても同様に生じるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、枠材に設けられた様々な寸法の溝をフラットに塞ぐことのできる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の建具は、溝が開口して形成された見付け片部を有した枠材と、前記溝を塞ぐ溝塞ぎ材とを備え、前記溝は、前記見付け片部から前記枠材の見込み方向に延びた見込み片部と、前記見込み片部から垂下した垂下片部と、前記垂下片部から前記見付け片部に向かって下方に傾斜して延びた傾斜片部とによって形成され、前記溝塞ぎ材は、溝塞ぎ本体と、前記溝塞ぎ本体を保持する保持体とを備え、前記溝塞ぎ本体は、溝塞ぎ片部と、前記溝塞ぎ片部から建具の見込み方向に延びているとともに係合凹部が形成された係合片部と、前記係合片部の前記垂下片部側に設けられた当接片部とを有して構成され、前記溝塞ぎ片部の高さ寸法は、前記溝の開口の高さ寸法と同じとされ、前記溝塞ぎ片部から前記当接片部までの見込み幅寸法は、前記溝の開口から前記垂下片部までの見込み幅寸法と同じとされ、前記保持体は、前記係合凹部に対して高さ位置調整可能に係合する係合部材と、前記係合部材を前記見込み片部に固定する固定具とを備えて構成され、前記溝塞ぎ本体が前記保持体に保持された状態において、前記係合部材は、前記係合凹部に係合して前記溝塞ぎ本体の見込み方向の移動を規制し、前記溝塞ぎ片部は、前記見付け片部に沿って位置し、前記当接片部は、前記垂下片部に当接することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、係合部材が係合凹部に対して高さ位置調整可能に係合するので、溝塞ぎ本体の高さ位置は枠材に対して変位可能であり、図7に示す溝塞ぎ材201のように、ビス224によって取付片部222を見込み片部205に引き寄せることで転びなどの取付不良が発生することがなくなる。このため、溝の開口上側に位置する見付け片部の部分の寸法であって見込み片部から下方へ突出した突出高さ寸法や垂下片部の高さ寸法が互いに異なる様々な枠材に対して、共通の溝塞ぎ材を取付不良なく取り付けることができる。また、様々な枠材に対応して専用の溝塞ぎ材を設計、製造する必要をなくしてコストダウンを図れる。
さらに、溝塞ぎ片部の高さ寸法は、溝の開口の高さ寸法と同じとされ、溝塞ぎ片部から当接片部までの見込み幅寸法は、溝の開口から垂下片部までの見込み幅寸法と同じとされるため、溝塞ぎ本体が保持体に保持されるとともに、当接片部が垂下片部に当接した状態では、溝塞ぎ片部は枠材の見付け片部に沿って配置される。これにより、溝塞ぎ材によって溝の開口をフラットに塞ぐことができる。
【0013】
本発明の建具では、前記固定具は、固定ビスによって構成され、前記係合凹部には、前記当接片部側に位置する前記固定ビスの面に当接する当接面が形成されることが好ましい。
このような構成によれば、係合凹部の当接面が、係合部材を固定する固定ビスの当接片部側の面に当接することで、溝塞ぎ本体の見込み方向のガタツキを抑制できる。
【0014】
本発明の建具では、前記当接面は、前記当接片部側から前記溝塞ぎ片部側に向かって下方に傾斜して形成されることが好ましい。
このような構成によれば、係合凹部の当接面が、当接片部側から溝塞ぎ片部側に向かって下方に傾斜して形成されるため、固定ビスの当接片部側の面が当接面に当接した状態で、固定ビスが係合部材にねじ込まれていくにつれ、当接面は当接片部側に向かって徐々に押し付けられる。これにより、当接片部を垂下片部に徐々に強く押し当てることができて溝塞ぎ本体をより精確に配置できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、枠材に設けられた様々な寸法の溝をフラットに塞ぐことのできる建具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る建具を示す縦断面図。
図2】前記実施形態に係る建具の要部を示す分解斜視図。
図3】前記実施形態に係る建具の要部を示す縦断面図。
図4】前記実施形態に係る建具の溝塞ぎ材を主に示す説明図。
図5】前記実施形態に係る建具の溝塞ぎ材の設置状態を示す説明図。
図6】従来の実施形態に係る建具の要部を示す縦断面図。
図7】従来の実施形態に係る建具の要部を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、本実施形態に係る建具であるサッシ1は、屋内において間仕切りとして使用されるものであり、上枠2、下枠3、左右の縦枠4を枠組みし、左右の縦枠4間に無目5を設けて構成された枠体6と、枠体6内に設けられる二枚の面材7とを備えている。
【0018】
枠体6を構成する枠材である上枠2、下枠3、左右の縦枠4、無目5は、アルミ製の押出し形材によって形成されている。下枠3には、サッシ1の室外側に露呈する排水溝30が形成されており、この排水溝30には、溝塞ぎ材50が設けられている。
二枚の面材7は、本実施形態では単板ガラスによってそれぞれ形成されているが、これに限られず、複層ガラスによって形成されていてもよく、また、金属製、樹脂製、木製などの各種の壁材(パネル)によって形成されていてもよい。上部の面材7は、上枠2、左右の縦枠4および無目5にバックアップ材、シール材を介して保持されている。下部の面材7は、下枠3、左右の縦枠4および無目5にバックアップ材、シール材を介して保持されている。
【0019】
下枠3は、下枠本体3Aと、押縁3Bとを備えて構成されている。
下枠本体3Aは、図2,3に示すように、室外見付け片部11(見付け片部)と、見込み片部12,13と、室内見付け片部14と、凹溝形成部15と、傾斜片部16とを有して構成されている。
押縁3Bは、図1,3に示すように、断面コ字形状に形成され、室外見付け片部11の上端および見込み片部12に形成された係合爪に係合し、面材7の室外面に当接するバックアップ材、シール材を介して当該面材7の室外面を押さえている。
【0020】
室外見付け片部11は見込み片部12および傾斜片部16と連続している。見込み片部12の室内端部は室内見付け片部14に連続している。
見込み片部12と傾斜片部16との間に位置する室外見付け片部11の部分には、排水溝30の開口が形成されており、この開口上側に位置する室外見付け片部11の部分は、見込み片部12から突出高さ寸法H1をもって下方に突出した突出部111として形成されている。また、下枠3の見込み方向における見込み片部12の中間位置には、凹溝形成部15が設けられている。
なお、室外見付け片部11および室内見付け片部14の下部は見込み片部13に連続している。
【0021】
凹溝形成部15よりも室外側に位置する見込み片部12の室外部分には、孔122が形成されており、この孔122に後述する固定ビス65が挿通される。また、凹溝形成部15よりも室内側に位置する見込み片部12の室内部分は、室内側から室外側に向かって下方に傾斜して形成されている。
なお、見込み片部12上には、セッティングブロック17が設置されており、セッティングブロック17上には、面材7が載置されている。
【0022】
凹溝形成部15は、垂下片部151,152と、底部153とを有して構成されている。垂下片部151,152は、見込み片部12から垂下して形成されており、下枠3の見込み方向において互いに離間して位置している。底部153は垂下片部151,152の下端に連続している。また、垂下片部151から見込み片部12の室外部分までにわたって、排水用の孔154が形成されている。
傾斜片部16の室内端部は、垂下片部151の下端に連続している。傾斜片部16は、垂下片部151から室外見付け片部11に向かって斜め下方に傾斜して延びている。
【0023】
室内見付け片部14の上端には、室外側に延出した支え部141が形成されている。支え部141の先端には、バックアップ材、シール材が設けられており、これらが面材7の室内面に当接することで面材7の室内面を支える構成とされている。また、支え部141の中間位置には、排水口142が形成されている。なお、排水口142には水の逆流防止用の排水部品143(図1参照)が設けられているが、この排水部品143の構成は省略されてもよい。
【0024】
排水溝30は、凹溝形成部15よりも室外側に位置する見込み片部12の室外部分と、垂下片部151と、傾斜片部16とによって形成されており、図2に示すように下枠3の長手方向に沿って延びている。
【0025】
溝塞ぎ材50は、図4に示すように、アルミ製の押出し形材によって形成された溝塞ぎ本体51と、溝塞ぎ本体51を保持する保持体61とを備えて構成されている。
溝塞ぎ本体51は、見付け方向に延びた溝塞ぎ片部52と、係合片部53と、当接片部54とを有し、図2に示すように排水溝30の長手方向に沿って延びて形成されている。
溝塞ぎ片部52は、室外見付け片部11に沿って設けられている。係合片部53は、溝塞ぎ片部52に連続しており、下枠3の見込み方向に延びて形成されている。当接片部54は、係合片部53の室内端部から垂下して設けられている。
【0026】
係合片部53には、後述する裏板62と係合する係合凹部55が形成されている。係合凹部55は、上凹部56と、下凹部57とを有して構成されている。
上凹部56は、見込み片部12から下方に延びた一対の側面と、当該一対の側面の下部に連続した底面とによって形成されている。上凹部56の当接片部54側の側面は、裏板62に当接する当接面561として形成されている。
下凹部57は、上凹部56の底面から下方に延びた一対の側面と、当該一対の側面の下部に連続した底面とによって形成されている。下凹部57の一対の側面は、傾斜面571,572を有している。当接片部54側に位置する傾斜面571は、当接片部54側から溝塞ぎ片部52側に向かって斜め下方に傾斜している。溝塞ぎ片部52側に位置する傾斜面572は、溝塞ぎ片部52側から当接片部54側に向かって斜め下方に傾斜している。傾斜面571を有した側面は、固定ビス65の当接片部54側の面に当接する当接面573として形成されている。
【0027】
図4において、溝塞ぎ片部52の室外面から当接片部54の室内面までの見込み幅寸法は(溝塞ぎ本体51の見込み幅寸法)、排水溝30の開口から垂下片部151の室外面までの見込み幅寸法W(排水溝30の見込み幅寸法)と同じである。当接片部54の高さ寸法は、垂下片部151の室外面の高さ寸法H2よりも小さい。また、溝塞ぎ片部52の高さ寸法は、排水溝30の開口の高さ寸法H3と同じである。
【0028】
保持体61は、係合部材である裏板62と、固定具である固定ビス65と、補助ビス66とを備えて構成されている。裏板62は、図2に示すように、下枠3の長手方向の両端部に配置されており、固定ビス65は、裏板62に対応した位置に配置されている。補助ビス66は、両裏板62間に配置されている。なお、見込み片部12の各孔122には、固定ビス65が挿通可能な孔と、補助ビス66が螺合可能な孔とが含まれている。
【0029】
裏板62は、平面視矩形状に形成されており、固定ビス65に螺合するビス孔63が形成されている。
固定ビス65は、見込み片部12の孔122に挿通され、裏板62のビス孔63に螺合おり、その先端部は裏板62から下方に突き出ている。固定ビス65の径寸法は、下凹部57の一対の側面同士の離間寸法とおなじかまたは若干小さくされている。このため、固定ビス65の先端部は、下凹部57に配置され、当接面573に当接している。
補助ビス66は、固定ビス65と同様に形成されており、見込み片部12の孔122に螺合している。補助ビス66の先端部は、下凹部57に配置されており、補助ビス66の当接片部54側の面は、当接面573に当接している。
【0030】
裏板62の厚さ寸法は、上凹部56の深さ寸法と同じかまたは若干小さく形成されている。裏板62の見込み幅寸法は、上凹部56の一対の側面同士の離間寸法と同じかまたは若干小さくされている。このため、裏板62は、上凹部56に対して高さ位置調整可能に係合している。
【0031】
ビス孔63の中心軸から裏板62の周縁64の第一位置までの長さ寸法であって下枠3の見込み方向に交差する方向における長さ寸法L1(図2参照)は、ビス孔63の中心軸から裏板62の周縁64の第二位置までの長さ寸法であって下枠3の見込み方向における長さ寸法L2(図4参照)よりも長い。
このため、裏板62の周縁64の第二位置を上凹部56の当接面561に対向して配置した場合には、固定ビス65をねじ込む際に裏板62に加わる回転力を利用して、裏板62の周縁64の第一位置側で当接面561を当接片部54側に向かって押すことができる。
【0032】
[溝塞ぎ材の設置]
以下、溝塞ぎ材50の設置について説明する。
先ず、上凹部56に各裏板62を配置した溝塞ぎ本体51を、当接片部54側から排水溝30に挿入する。
当接片部54が垂下片部151に当接するまで溝塞ぎ本体51を排水溝30に挿入した後、各固定ビス65を各孔122に挿通し、各裏板62のビス孔63に螺合し、各固定ビス65の当接片部54側の面を下凹部57の当接面573に当接させ、溝塞ぎ片部52の室外面を室外見付け片部11の室外面に沿って面一に配置する。裏板62は、固定ビス65によって見込み片部12に固定されることで、係合凹部55に対して高さ位置調整可能に係合した状態となり、溝塞ぎ本体51の見込み方向の移動を規制する。補助ビス66は対応の孔122に適宜螺合し、当接面573に当接させる。このようにして、溝塞ぎ材50を排水溝30に設置し、溝塞ぎ片部52によって排水溝30の開口をフラットに塞ぐ。
【0033】
ここで、図4に示す下枠3の突出部111の高さ寸法H1は、図5(A)に示す高さ寸法H1よりも大きく、図5(B)に示す高さ寸法H1よりも小さい。図4に示す下枠3の垂下片部151の高さ寸法H2は、図5(A)に示す高さ寸法H2よりも大きく、図5(B)に示す高さ寸法H2よりも小さい。図4図5(A)、図5(B)に示す排水溝30の開口の高さ寸法H3は互いに同じである。図4図5(A)、図5(B)に示す排水溝30の見込み幅寸法Wは互いに同じである。なお、図5(A)においては、垂下片部151の高さ寸法H2は、当接片部54の高さ寸法と同じである。
【0034】
図4に示す排水溝30に溝塞ぎ材50を設けた場合には、裏板62は、当接面561に当接した状態のまま上凹部56から部分的に突出している。固定ビス65の当接片部54側の面は、下凹部57の当接面573に当接している。固定ビス65の先端は、下凹部57の底面から離間している。当接片部54は、垂下片部151の下部側に当接している。係合片部53は、見込み片部12から離間している。
【0035】
図5(A)に示す排水溝30に溝塞ぎ材50を設けた場合には、裏板62は、当接面561に当接した状態のまま上凹部56内に収められている。固定ビス65の当接片部54側の面は、下凹部57の当接面573に当接している。固定ビス65の先端は、下凹部57の底面に当接している。当接片部54は、垂下片部151の全体に当接している。係合片部53は、見込み片部12に当接している。
【0036】
図5(B)に示す排水溝30に溝塞ぎ材50を設けた場合には、裏板62は、当接面561に当接した状態のまま上凹部56から部分的に大きく突出している。固定ビス65の当接片部54側の面は、下凹部57の当接面573に当接している。固定ビス65の先端は、下凹部57の底面から離間している。当接片部54は、垂下片部151の下部側に当接している。係合片部53は、見込み片部12から離間している。
【0037】
[本実施形態の効果]
(1)裏板62が係合凹部55に対して高さ位置調整可能に係合するので、溝塞ぎ本体51の高さ位置は下枠3に対して変位可能である。従って、図7に示す溝塞ぎ材201のように、ビス224によって取付片部222を見込み片部205に引き寄せることで転びなどの取付不良が発生することがなくなる。このため、突出部111の高さ寸法H1や垂下片部151の高さ寸法H2が互いに異なる様々な下枠3に対して、共通の溝塞ぎ材50を取付不良なく取り付けることができる。また、様々な下枠3に対応して専用の溝塞ぎ材を設計、製造する必要をなくしてサッシ1のコストダウンを図れる。
さらに、溝塞ぎ片部52の高さ寸法は、排水溝30の開口の高さ寸法H3と同じとされ、溝塞ぎ片部52から当接片部54までの見込み幅寸法は、排水溝30の開口から垂下片部151までの見込み幅寸法Wと同じとされるため、溝塞ぎ本体51が保持体61に保持されるとともに、当接片部54が垂下片部151に当接した状態では、溝塞ぎ片部52は下枠3の室外見付け片部11に沿って配置される。これにより、溝塞ぎ材50によって排水溝30の開口をフラットに塞ぐことができる。
(2)裏板62の長さ寸法L1は、長さ寸法L2よりも長いため、裏板62の周縁64の第二位置を係合凹部55の当接片部54側の面に対向して配置した状態で固定ビス65を回転してビス孔63に螺合した際に、固定ビス65から裏板62に伝達される回転力を利用して、裏板62の周縁64の第一位置を係合凹部55の当接片部54側の面に押し付けることができる。これにより、当接片部54を垂下片部151に押し当てることができ、溝塞ぎ材50を所定位置に配置できる。
また、例えば、固定ビス65などが挿通、螺合される各孔122,63の見込み位置に多少の製作誤差があったとしても、前述したように当接片部54を垂下片部151に押し当てることで、溝塞ぎ材50を所定位置に配置できる。
【0038】
(3)下凹部57の当接面573が、裏板62を固定する固定ビス65の当接片部54側の面に当接することで、溝塞ぎ本体51の見込み方向のガタツキを抑制できる。
(4)当接面573が、当接片部54側から溝塞ぎ片部52側に向かって下方に傾斜した傾斜面571を有するため、固定ビス65の当接片部54側の面が傾斜面571に当接した状態で、固定ビス65がねじ込まれていくにつれ、傾斜面571は当接片部54側に向かって徐々に押し付けられる。これにより、当接片部54を垂下片部151に徐々に強く押し当てることができ、溝塞ぎ本体51をより精確に配置できる。
【0039】
[変形例]
なお、本発明は以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、裏板62は、平面視矩形状に形成されているが、これに限定されず、例えば、平面視において正方形などの各種の方形状に形成されていてもよく、また、楕円形状に形成されていてもよい。さらに、裏板62は、平面視において真円形状に形成されていてもよく、この場合、ビス孔63の中心は、偏心した位置にあるのが好ましい。
【0040】
前記実施形態では、下凹部57の当接面573は傾斜面571を有しているが、この傾斜面571の構成を省略して構成されていてもよい。また、当接面573の全面が傾斜した傾斜面571として形成されていてもよい。
【0041】
前記実施形態では、係合凹部55は、上凹部56と下凹部57とによって形成されているが、これに限定されず、例えば、固定ビス65が裏板62の下方に突き出ることのない程度の長さ寸法を有して形成されている場合には、下凹部57の構成を省略してもよい。
また、係合凹部55は、下凹部57の代わりに、固定ビス65が挿通可能な抜け孔(図示省略)を有していてもよい。
【0042】
前記実施形態では、サッシ1は、屋内において間仕切りなどとして使用されるものであるとして説明したが、これに限定されず、例えば、ショップフロントやストアフロントなどのビル用サッシとしても使用してもよい。
サッシ1を、屋内外を仕切るビル用サッシとして使用する場合には、溝塞ぎ片部52に孔、切欠きなどの小さな排水口(図示省略)を形成して、排水溝30からの排水機能を確保してもよい。
なお、排水溝30からの排水は次の通り行われる。排水口142から入り込んだ水は、見込み片部12の傾斜した室内部分に案内されて凹溝形成部15によって形成された凹溝に案内され、この凹溝に入り込んだ水は孔154を通り、傾斜片部16の上面をつたって排水溝30の開口から室外側へ排水される。
【0043】
前記実施形態では、枠体6は、上枠2、下枠3、左右の縦枠4および無目5によって構成され、この枠体6によって二枚の面材7を保持しているが、これに限定されない。例えば、上枠2、下枠3、左右の縦枠4、無目5および方立によって枠体が構成され、この枠体によって四枚の面材7を保持していてもよく、また、枠体6から無目5の構成を省略し、一枚の面材7を保持していてもよい。
【0044】
前記実施形態では、溝塞ぎ材50は、下枠3に形成された排水溝30に設けられているが、これに限定されない。例えば、排水溝30などの各種の溝が幅木、無目、方立、縦枠などの各種の枠材に形成されている場合には、これら枠材に形成された排水溝30に対して、溝塞ぎ材50を設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…サッシ、2…上枠、3…下枠、3A…下枠本体、3B…押縁、4…縦枠、5…無目、6…枠体、7…面材、11…室外見付け片部、12,13,205…見込み片部、14…室内見付け片部、15…凹溝形成部、16,207…傾斜片部、17…セッティングブロック、30,202…排水溝、50,201…溝塞ぎ材、51…溝塞ぎ本体、52,221…溝塞ぎ片部、53…係合片部、54,223…当接片部、55…係合凹部、56…上凹部、57…下凹部、61…保持体、62…裏板、63…ビス孔、64…周縁、65…固定ビス、66…補助ビス、111,209…突出部、122,154…孔、141…支え部、142…排水口、143…排水部品、151,152,206…垂下片部、153…底部、204…見付け片部、222…取付片部、224…ビス、561,573…当接面、571,572…傾斜面、H1,H2…高さ寸法、L1,L2…長さ寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7