(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開路型の油圧ポンプ及び方向切換弁を使用する従来の高圧発生装置では、以下のような問題がある。
すなわち、ウォータージェット切断用途においては、高圧発生装置は連続的に被加圧流体を吐出する。高圧発生装置の吐出時には、方向切換弁の圧力損失が大きい状態で油圧発生装置が運転される。高圧側流体の吐出停止の際には、複動型駆動シリンダが停止するため、低圧側流体である作動油の圧力損失が0となる。そして、方向切換弁の圧力損失分は、作動油の油圧の一時的な異常上昇として現れる。この作動油の油圧の一時的な異常上昇は、増圧機の増圧比に従って高圧側流体の吐出圧に反映される。ここで、増圧比は、高圧側の被加圧流体の圧力と低圧側の作動油との圧力比であり、通常は数十倍である。即ち、高圧側流体の連続吐出の停止時には、方向切換弁の圧力損失の数十倍の圧力分、圧力が一時的に上昇する。このため、連続吐出停止時には、過大な圧力上昇が発生してしまう。
【0005】
ウォータージェット切断用途においては、複動型増圧機の方向切換により、高圧回路の脈動が発生する。方向切換弁による圧力損失抑制を目的として弁の大型化を図ると、方向切換弁の応答性が低下する。増圧機のストローク端において、シリンダ内の加圧工程からチェック弁よりも下流側へ被加圧流体が供給されない。すると、増圧機の進行方向が切替わるまで被加圧流体の供給が止まり、圧力降下が発生する。この圧力降下は、増圧機進行方向切換時間、アキュームレータ容積及び吐出量で定まるところ、作動流体の応答性低下は、被加圧流体の圧力波形を悪化させる。被加圧流体の噴流、すなわちウォータージェットの流量は圧力に依存する。従って、作動流体の回路の応答性低下は、ウォータージェットの品質を低下する。
【0006】
開回路型の油圧ポンプで複動型増圧機を駆動する高圧発生装置には、油圧発生装置の方向切換弁が必要不可欠である。ところが、方向切換弁の圧力損失により、機械効率が低下する。
【0007】
本発明は、被加圧流体の圧力波形の変動を縮小し、かつ、機械効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明は、被加圧流体を吐出する増圧機を有する超高圧発生装置であって、前記増圧機は、作動媒体により駆動するピストンによって区画される第1室及び第2室を有する複動型駆動シリンダと、前記被加圧流体を吐出する高圧シリンダと、この高圧シリンダ内部を前記ピストンと共に往復動するプランジャと、を備え、前記作動媒体の吸入吐出口である第1ポートおよび第2ポートを有する閉回路作動媒体ポンプと、前記閉回路作動媒体ポンプを駆動する駆動源と、前記第1室と前記第1ポートを連通する第1の作動媒体流路と、前記第2室と前記第2ポートを連通する第2の作動媒体流路と、前記作動媒体を貯留する作動媒体タンクと、前記第1の作動媒体流路と前記第2の作動媒体流路との間に設けられ、前記作動媒体タンクと連通しており、前記作動媒体タンクから前記作動媒体を供給する供給回路と、前記第1の作動媒体流路と前記第2の作動媒体流路との間に設けられた選択回路と、前記選択回路と前記作動媒体タンクとを連通しており、前記作動媒体タンクへ前記作動媒体を回収する回収回路と、
前記被加圧流体を貯留する貯留槽と、この貯留槽に前記被加圧流体を供給する供給口と、前記作動媒体を冷却する熱交換器と、を備え、前記閉回路作動媒体ポンプは、前記第1ポートおよび前記第2ポートを介してそれぞれ前記第1室および前記第2室に対して前記作動媒体を吸入および吐出して前記増圧機を駆動
し、前記供給口から供給された前記被加圧流体が前記熱交換器を通り、前記熱交換器を通過した前記被加圧流体が前記貯留槽に供給されることを特徴とする。
【0009】
上記構成の高圧発生装置によれば、閉回路作動媒体ポンプを利用することにより、増圧機の押し込まれる側から作動媒体を吸引し、押し込む側に加圧して戻すことで、第1室及び第2室に供給する作動媒体の流れ方向を切り換える方向切換弁を設ける必要がないため、方向切換弁の圧力損失によって発生する吐出停止時における高圧側流体、すなわち被加圧流体圧力の異常昇圧が解消される。
つまり、本発明によれば、被加圧流体を連続吐出する場合において、閉回路作動媒体ポンプの流れ方向を反転させたときに、圧縮工程にあった第1室又は第2室のいずれか一方の圧力がほぼ0MPaとなり、その直後に反対側の室内が加圧される。また、複動型駆動シリンダの進行方向切換時には作動媒体の圧力が一時的に消滅するため、進行方向切換時に異常な圧力上昇が生じない。これらの作用により、高圧側流体の圧力変動が非常に小さい、安定した圧力波形を得ることができる。
また、上記構成の高圧発生装置によれば、増圧機の複動型駆動シリンダ内を満たしている作動媒体を直接閉回路作動媒体ポンプにより駆動するため、増圧機の応答速度が速い。このため、被加圧流体の圧力波形が安定する。
従って、本発明の超高圧発生装置によりウォータージェット噴流を形成する際には、安定した噴流を得ることができる。
【0010】
複動型駆動シリンダの第1室又は第2室には、作動媒体が充てんされている。増圧機の方向を切替える際には、それまで加圧されていた第1室又は第2室のいずれか一方が供給側となり、それまで供給側であった他方が加圧される。この増圧機の方向切換時には、両回転可能駆動源が閉回路加圧装置の慣性力に反して逆回転し、供給側の室から作動流体を吸入する。このとき、被加圧流体の圧縮率に応じて、それまで加圧されていた高圧シリンダ内の被加圧流体が膨張し、ピストンを押し戻すため、駆動系の負担を小さくすることができる。
また、作動媒体を冷却する冷却液を被加圧流体として再利用するため、超高圧発生装置が必要とする被加圧流体量を減少できる。
【0011】
本発明は、前記閉回路作動媒体ポンプが固定容量式斜板アキシャルポンプであり、前記駆動源が両回転可能駆動源であることが好ましい。
上記構成の超高圧発生装置によれば、閉回路作動媒体ポンプの信頼性が向上する。
【0012】
本発明は、前記閉回路作動媒体ポンプが、傾転角を正負方向に逆転可能な可変容量式斜板アキシャルポンプであってもよい。このような構成では、駆動源として一方回転駆動源を適用することができる。
【0013】
本発明は、好ましくは、前記駆動源がサーボモータであり、前記増圧機から吐出した前記被加圧流体の圧力を計測する圧力検出装置と、この圧力検出装置の検出圧力に応じて前記サーボモータの回転数を制御する制御装置と、を備えることができる。
【0014】
上記構成の超高圧発生装置によれば、圧力検出装置により検出した被加圧流体の圧力に応じて閉回路作動媒体ポンプの流量及び圧力を制御する。運転時に適切な作動媒体の圧力を閉回路作動媒体ポンプにより生ずることができるため、被加圧流体の圧力波形が安定する。
【0015】
上記構成によれば、本発明の超高圧発生装置は、作動媒体の圧力を調整するためのリリーフ回路を設ける必要がないため、リリーフ回路の熱損失がなくなり、高い機械効率を得ることができる。リリーフ回路の熱損失分を回収する必要がないため、冷却水量を大幅に削減することができる。
【0016】
上記構成の超高圧発生装置を連続吐出型の高圧発生装置に利用する場合において、被加圧流体の吐出を停止するときは、閉回路作動媒体ポンプが圧力を保持するようにサーボモータが回転を保持する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る超高圧発生装置は、被加圧流体の圧力波形の変動を縮小し、かつ、機械効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照して本発明の実施形態の超高圧発生装置70について説明する。超高圧発生装置70の作動媒体F1は作動油であり、被加圧流体F2は水である。超高圧発生装置70は、連続的に超高圧水を吐出する、ウォータージェット切断に好適である。
【0022】
本実施形態の超高圧発生装置70は、被加圧流体F2を連続吐出して超高圧を発生する装置であって、作動媒体F1により駆動するピストン43により区画される、第1室41及び第2室42を有する複動型駆動シリンダ44と、高圧シリンダ451、452内部をピストン43と共に往復動するプランジャ461、462と、を備える増圧機40と、吸入吐出口である第1ポート111および第2ポート112を有する閉回路作動媒体ポンプ11と、前記閉回路作動媒体ポンプ11を駆動する両回転可能駆動源12と、第1室41と第1ポート111を連通する第1の作動媒体流路32と、第2室42と前記第2ポート112を連通する第2の作動媒体流路33と、を備えている。
【0023】
閉回路作動媒体ポンプ11は、固定容量式斜板アキシャルポンプであり、駆動源が両回転可能駆動源12であるサーボモータで構成されている。
【0024】
超高圧発生装置70は、増圧機40から吐出した被加圧流体F2の圧力を計測する圧力検出装置53と、圧力検出装置53の検出圧力に応じて両回転可能駆動源12の回転数を制御する制御装置15と、を更に備えている。
【0025】
超高圧発生装置70は、被加圧流体F2を供給する供給口68と、作動媒体F1を冷却する熱交換器30と、被加圧流体F2を貯留する貯留槽69とを備えている。供給口68から供給された被加圧流体F2が熱交換器30を通り、熱交換器30を通過した被加圧流体F2が貯留槽69に供給される。
【0026】
ピストン43の断面積と高圧シリンダ451,452の断面積比が増圧比である。被加圧流体F2の圧力は作動媒体F1の圧力の増圧比倍に加圧される。増圧比は、数十倍である。増圧機40のプランジャ461、462は、複動型駆動シリンダ44によって、高圧シリンダ451、452の内部を左右に往復する。高圧シリンダ451、452の先端には吸入弁48と吐出弁47がそれぞれ一組配設されている。作動媒体F1が第1室41を加圧すると、複動型駆動シリンダ44のピストン43が図の右方向へ移動する。このとき、高圧シリンダ451には被加圧流体F2が吸入弁48から流入する。また、高圧シリンダ452内部からは被加圧流体F2が吐出弁47を通り吐出する。ピストン43が図面上の右方向へ移動(右行)し、右行端付近に達すると、右行端検出装置492がピストン43を検知し、ピストン43は移動方向を図の左方向へ切替える。複動型駆動シリンダ44が図面上の左方向へ移動(左行)すると、前述の動作の左右逆の動作をする。同様に左行端検出装置491は、ピストン43が左行端付近に到達したことを検知する。複動型駆動シリンダ44が往復することにより、連続的に被加圧流体F2が吐出される。
ここで、左行端検出装置491、右行端検出装置492は近接スイッチ、リミットスイッチその他の検出装置が利用できる。近接スイッチを利用した場合には、増圧機40内に各検出装置491、492を設置できるため、構造を簡略化できる。
【0027】
なお、吸入弁48及び吐出弁47はチェック弁であるが、1組のチェック弁に替えて方向流量調整弁を利用することができる。また、連続吐出型でない1ショット型の超高圧発生装置の場合には、吐出弁47が不要である。
【0028】
閉回路作動媒体ポンプ11は、固定容量式斜板アキシャルピストンポンプである。第1ポート111と第1室41、第2ポート112と第2室42はそれぞれ第1の作動媒体流路32および第2の作動媒体流路33で直結されている。即ち、増圧機40のピストン43が右行する際には、閉回路作動媒体ポンプ11は、第2室42内部の作動媒体F1を第1室41へ向けて所定の圧力に加圧して送液する。増圧機40のピストン43が左行する際には、逆に、第1室41内部の作動媒体F1を第2室42へ向けて送液する。閉回路作動媒体ポンプ11は、回転数を制御することで圧力及び流量を制御する。両回転可能駆動源12がサーボモータであるため、両回転可能駆動源12は、回転数を自在に制御することができ、その出力軸が回転しない様に角度を維持することができる。また、閉回路作動媒体ポンプ11は、固定容量式斜板アキシャルポンプと両回転可能なサーボモータの組合せを利用することにより、作動媒体F1の圧力及び流量を制御でき、作動媒体F1の圧力を維持したまま流量を0にすることができる。さらに、固定容量式斜板アキシャルポンプを利用することにより、信頼性が向上する。
【0029】
なお、閉回路作動媒体ポンプ11と両回転可能駆動源12との組合せに替えて、傾転角を正負に逆転できる可変容量型アキシャルプランジャポンプと一方回転駆動源を利用することができる。傾転角を逆転できる可変容量型プランジャポンプは、傾転角を逆転することで2つのポートの吸入側と吐出側とを切替えることができ、閉回路作動媒体ポンプとして利用できる。
【0030】
次に示す作動媒体F1の回路はバルブブロック20内に設けられている。バルブブロック20と増圧機40との間、及びバルブブロック20と閉回路作動媒体ポンプ11との間の配管はゴムホース321、321、331、331で接続される。各構成要素間をゴムホース321、321、331、331で接続することにより、それぞれの要素で発生する振動を吸収し、超高圧発生装置70の耐久性を向上できるほか、組立性および保守性を向上できる。
【0031】
バルブブロック20には、作動媒体の温度を検出する温度検出装置28が備えられる。温度検出装置28は、作動媒体F1の温度が異常上昇した場合、警告を発する。温度検出装置28がバルブブロック20に取付けられており、作動媒体F1と直接接触しないため、温度検出装置28は作動媒体F1の圧力変動等によってダメージを受けにくい。
なお破損の問題がない場合には、温度検出装置28は、供給回路21又は選択開路26に接続することができる。
【0032】
第1の作動媒体流路32と第2の作動媒体流路33は、1組のチェック弁26a、26bを含む選択回路26で接続される。選択開路26のチェック弁26a、26bは作動媒体流路32、33を上流側として設置されている。選択回路26には作動媒体F1の圧力を検知する圧力検出装置27が設けられる。選択回路26により、圧力検出装置27は、第1の作動媒体流路32と第2の作動媒体流路33の圧力が高いいずれか一方の流路の圧力を検知できる。このため、圧力を検知する機能を単純な構成で実現できる。圧力検出装置27は、作動媒体F1の圧力が正常範囲にない場合に、異常を発することができる。
【0033】
第1の作動媒体流路32と第2の作動媒体流路33は、作動媒体流路32,33を下流側とするように一組のチェック弁21a、21bを備える供給回路21で接続される。供給回路21は、チェック弁21aと21bの間と作動媒体タンク31とを連通している。作動媒体タンク31は内圧が掛けられている。作動油である作動媒体F1は、非圧縮性流体であるが、加圧により若干圧縮される。増圧機40の第1室41又は第2室42の内の、供給側の一方は通常0MPa付近の圧力となり、他方は設定圧となる。すると、圧縮工程側である第1室41又は第2室42のいずれか一方及び配管内に存在する作動媒体F1の体積によって、系内に蓄積される作動媒体F1の総量が変化する。供給回路21は、この作動媒体F1の総量を調整する役割を持つ。作動媒体タンク31は、作動媒体F1の総量を調整する機能を有するだけで良いため、小型化できる。作動媒体タンク31は薄肉のガス用アキュームレータと同等品であるため、作動媒体F1の放熱機能を有する。
【0034】
増圧機40運転用の電磁弁22aおよび絞り22bを備える均圧回路22は、第1の作動媒体流路32と第2の作動媒体流路33を接続する。電磁弁22aは、閉回路作動媒体ポンプ11が回転する前に均圧回路22を遮断し、閉回路作動媒体ポンプ11が回転を停止した際に均圧回路22を開路する。均圧回路22が開路すると、第1の作動媒体流路32と第2の作動媒体流路33の圧力が同一になり、増圧機の運転が停止する。電磁弁22aは、常時開の弁であるため、非常時に電源供給が止まると均圧回路22を開くため、安全回路として作用する。絞り22bは均圧回路22が開路した際に、急激な圧力変化により油圧機器が衝撃圧を受けて破損することを防止する。また、系内の作動媒体F1の総量が多い場合には、電磁弁22aの開閉により、作動媒体F1の圧力が振動する可能性がある。しかし、本実施例の作動媒体F1の総量が少量であるため大きな圧力振動が発生せず、絞り22bは必ずしも必要ではない。
なお、他に安全を担保する措置が設けられている場合、均圧回路22は必ずしも必要ではない。
【0035】
回収回路34は、選択開路26と作動媒体タンク31とを連通する。回収回路34には、安全弁25と流量調整弁24が並列に接続され、これらとフィルタ29及び熱交換器30が直列に接続されている。安全弁25は、閉回路作動媒体ポンプ11のサーボ系の制御が暴走した場合に、作動媒体F1の圧力を設定値以下に保つ作用を備えている。安全弁25は、この作用により、超高圧発生装置70を圧力の急激な上昇から守る。流量調整弁24は、高圧に加圧された作動媒体F1が選択回路26から回収回路34を介して作動媒体タンク31へ回収される量を調整する。上述のように、作動媒体タンク31は、増圧機40のピストン43の往復に従って、系内の作動媒体F1量を調整する。回収回路34は、作動媒体タンク31へ必要な作動媒体F1を供給する作用を持つ。作動媒体F1が作動媒体タンク31へ回収される際に、作動媒体F1は、フィルタ29によりろ過され、熱交換器30により冷却される。上述のように、増圧機40内のピストン43の進行方向切換に応じて、供給回路21を介して作動媒体F1が作動媒体タンク31から供給され、選択回路26から作動媒体F1が作動媒体タンク31へ戻されるため、増圧機40の動作に応じて一定量の作動媒体F1が作動媒体タンク31を通して回路内を流動する。従って、作動媒体F1は常に熱交換器30によって冷却され、作動媒体F1の温度が一定に保持される。
【0036】
回収回路34から回収される作動媒体F1は、閉回路作動媒体ポンプ11が昇圧した作動媒体F1のリークである。リークは機械効率を悪化させるところ、回収回路34に流量調整弁24が設けられているため、このリーク量を適正に調整し、機械効率の過剰な低下を防止することができる。
また、流量調整弁24が回収回路34に設けられているため、熱交換器30へ流入する作動媒体F1の流量を規定量に設定することができる。超高圧発生装置70においては、熱交換器30の冷却媒体は、被加圧流体F2であり、その全量を熱交換器30に流すため、熱交換器30による回収熱量が過大になるおそれがある。しかし、熱交換器30へ流す高温側の作動媒体F1の流量を適切に絞ることで、その回収熱量を制御することができる。
【0037】
なお、安全弁25は、圧力の異常上昇に対してその他の安全策が施されている場合には、取り外しても良い。系内で発生する熱量が少なく、外部からの空冷により十分に作動媒体F1を冷却できる場合には、熱交換器30は不要である。
作動媒体ポンプ11からのリーク量が、作動媒体タンク31からの作動媒体の供給量を補うことができる場合、流量調整弁24および流量調整弁を接続する配管を取り外すことができる。安全弁25及び流量調整弁24が取り外すことができる場合、回収回路34は不要である。この場合には、作動媒体ポンプ11からのリークにより、供給すべき作動媒体が全て賄われる。
【0038】
被加圧流体F2は、被加圧流体F2の供給口68から供給され、熱交換器30を通り、フィルタ67でろ過されたのち、貯留槽69に貯留される。貯留槽69への供給はボールタップ66により行われ、貯留槽69の液面が上限に達すると供給が停止される。
【0039】
なお、フィルタ67と熱交換器30の順序は前後できる。
【0040】
渦流ポンプ65は、貯留槽69の底部から被加圧流体F2を吸入し、増圧機40の吸入弁48、48へ供給路60を通して被加圧流体F2を供給する。
【0041】
供給路60には安全弁63が配設される。安全弁63は被加圧流体F2の吐出を停止した際に、渦流ポンプ65の吐出口が全閉することを防止し、渦流ポンプ65の破損を予防する効果を有する。また、吸入弁48がリークした場合に、超高圧に加圧された被加圧流体F2が供給路60へ流入する。安全弁63はこの非常時に装置の破損を防止する機能を有する。
【0042】
供給路60にはパッキン冷却水を供給するための電磁弁61が配設される。パッキン冷却水は、電磁弁61を開いた時に、絞り62を介して、高圧シリンダ451、452とプランジャ461、462の間をシールするパッキン(不図示)へ流れ、パッキンを冷却する。供給圧力検知用の圧力スイッチ64は、供給路60に配設される。圧力スイッチ64は、被加圧流体F2の供給圧が吸入弁48のクラッキング圧力を超え、増圧機40に供給されていることを監視する。
なお、圧力スイッチ64は圧力検出装置に置換えることができる。
【0043】
吐出弁47、47は、アキュームレータ51を介して吐出配管56により、吐出口55と連通している。アキュームレータ51内部には、フィルタ52が設けられている。フィルタ52は、アキュームレータ51内部に配設される為、フィルタ52の内外に超高圧が作用するため、フィルタ52は通常の圧力区分のフィルタを利用することができる。
【0044】
吐出口55から吐出される超高圧の被加圧流体F2は開閉弁58を介してノズル59から噴出する。超高圧の被加圧流体F2の圧力を検出する圧力検出装置53が、吐出配管56に配設される。
【0045】
制御装置15は、増圧機40内のピストン43の位置、圧力検出装置53が検出した被加圧流体F2の圧力に応じて、閉回路作動媒体ポンプ11の圧力及び流量、並びに増圧機40の進行方向を制御する。圧力フィードバックは、圧力の上昇具合に対して割出される。圧力制御には、ロバスト性が高い現代制御、例えば適応制御が適している。
【0046】
上述のように構成された超高圧発生装置70が発生する被加圧流体F2の圧力波形W1を
図2に示す。
図2の横軸は経過時間、縦軸は圧力を示す。現実の吐出圧力に基づき閉回路作動媒体ポンプ11の圧力及び流量を調整し、適切にプランジャ461、462の速度が定められるため、被加圧流体F2の圧力波形W1は設定圧力Pに沿ってほぼ直線状となる。増圧機40のピストン43の進行方向の切替と同時に、一定時間の間隔で、圧力が一時低下する。
【0047】
連続吐出が停止している期間中、閉回路作動媒体ポンプ11の回転が停止し、両回転可能駆動源12によってその回転が保持される。このため、閉回路作動媒体ポンプ11の加圧側の作動媒体F1が流動しない。作動媒体F1が流動しないため、第1と第2の作動媒体流路(32,33)内の圧力損失がなくなり、作動媒体F1の圧力がわずかに上昇する。超高圧に加圧されている被加圧流体F2の圧力は、作動媒体F1の圧力の増圧比倍となるため、作動媒体F1の圧力上昇の増圧比倍だけ増加(ΔP)する。圧力フィードバックにより閉回路作動媒体ポンプ11の回転数を制御するため、ΔPは極小化する。連続吐出を再開すると、被加圧流体F2の圧力は、再び設定圧力付近で安定した圧力を示す。
【0048】
600MPaクラスの圧力を発生する超高圧発生装置においては、30倍近くの増圧比を必要とする。圧力が高くなればなるほど増圧比を大きくする必要があるところ、増圧比が大きくなれば、吐出停止時の圧力上昇量も大きくなる。また、圧力が非常に高い場合、超高圧流体により、圧力配管内に大きな内部応力が発生する。圧力は振動するため、圧力配管の材質、厚み、内面仕上げに大きな制約が出る。超高圧流体の圧力上昇及び圧力振動は、超高圧発生装置及び圧力配管系に過大な負荷をかける。
超高圧配管に用いられる配管、弁、ホース、継手その他の配管器具には過大な内部応力が発生する。本実施形態の超高圧発生装置70によれば、圧力振動が非常に低くなるため、配管器具の寿命を伸長することができる。このため、特に高い圧力を発生する超高圧発生装置に特に好適である。
【0049】
本実施形態の超高圧発生装置70は、閉回路作動媒体ポンプ11を圧力検出装置53で検出した圧力に応じて制御するため、吐出圧力を設定圧力P付近に一定に保つことができる。吐出圧力が一定値に安定しているため、ノズル59から噴出する被加圧流体F2の噴流の流速、及び流量が安定する。また、圧力波形が安定するため、アキュームレータ51の容量を縮小できる。アキュームレータ51は、圧力容器であるため、その内部に非常に大きな内部応力が発生する。この内部応力は、アキュームレータの内径の2乗に比例して増加する。また、アキュームレータ内部に蓄積されるエネルギは内部容積に比例する。従って、特に600MPaを超える超高圧を発生する超高圧発生装置では、大容積のアキュームレータ製造は非常に困難な技術的課題をもつ。超高圧発生装置70は、圧力波形が安定するので、アキュームレータ容積を小型化できるため、特に高い圧力を発生する超高圧発生装置に特に好適である。
【0050】
超高圧発生装置70は、複動型駆動シリンダ44の両側にプランジャ461、462及び高圧シリンダ451、452を備えているため、ピストン43の進行方向を切替える際に、直前まで圧縮工程にあった高圧シリンダ451、452内の超高圧である被加圧流体F2の圧力が、プランジャ461、462を介してピストン43に作用する。このとき、高圧シリンダ451、452内の被加圧流体F2がその膨張率により膨張する。さらに、作動媒体F1はわずかに圧縮されるため、圧縮された作動媒体F1が切換時に膨張する。これらの作用により、増圧機40のピストン43の進行方向が切替わる際に、直前まで加圧されていた作動媒体F1が閉回路作動媒体ポンプ11へ流れ込む。閉回路作動媒体ポンプ11及び両回転可能駆動源12には、回転方向が切替わる際に大きな負荷が加わるところ、上述の作用により、この際の閉回路作動媒体ポンプ11に作用する負荷が軽減される効果がある。
【0051】
超高圧発生装置70は、従来技術におけるリリーフ弁27(特許文献1の
図1参照)、方向切換弁3(同図参照)を備えていないため、機械効率が向上する。機械効率が高いため、超高圧発生装置70から発生する排熱が少ない。そのため、作動媒体F1を冷却する冷却水量を大幅に削減することができる。必要な冷却水量が小さいため、超高圧発生装置70は、被加圧流体F2の吐出量を冷却水量と一致させ、かつ、供給された被加圧流体F2を一旦冷却水として使用することができる。また、必要とする被加圧流体F2の流量が小さいため、貯留槽69を小型化することができる。
【0052】
超高圧発生装置70は、機械効率が大幅に向上するため、構成する機械要素が小さくなる。また、構成が簡潔になる。このため、機械全体を小型化することができる。
【0053】
以上の説明においては、本発明の実施形態に係る超高圧発生装置70について説明したが、本発明の構成が上記構成に限定される意味ではない。例えば、両回転可能駆動源12としては、サーボモータに限らず、トルク、回転数を制御可能で、回転を保持する機能を備えるものであればよい。
また、均圧回路22、電磁弁22a、絞り22b、絞り24、及び安全弁25を取り除き、替りに電磁式圧力逃がし弁を回収回路34に設けることができる。この場合、増圧機40の運転が停止したときに電磁式圧力逃がし弁を開弁し、作動媒体流路32、33内の圧力を低下させる。増圧機40の運転を開始する際に、電磁式圧力逃がし弁を閉弁する。
本発明の実施形態に係る超高圧発生装置70は、ウォータージェット用途に限定されることなく、圧力疲労破壊試験装置、ハイドロフォーミングに利用可能である。