【0016】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)本発明では、計測対象の試料を保持し回転させる回転軸(以下:スピンドル)を揺動運動が可能な強度部材(以下:アーム)で保持する。スピンドルを駆動するモータの回転中心とアームの揺動中心は同軸上に配置し、モータとスピンドルはベルトや歯車にて動力伝達を行なう。尚、アームは測定機本体とバネ等により締結され、アームのセンタリングを行なうとともにアームの揺動を妨げないものとする。
(2)また、モータ若しくはスピンドルには、モータ若しくはスピンドルの角度を検出するロータリーエンコーダが装着される。ロータリーエンコーダから得られた矩形波パルス信号からパルスの数を数えて回転角度を検出するとともに、構造上の規定パルス間隔(角度)とパルスの時間間隔から角速度を演算する。
(3)尚、本発明で用いるモータはサーボモータ(ロータリーエンコーダを内蔵し、自らの角速度を検出し、決められた角速度を維持する能力を有するモータ)では無く、加えた電力量に応じて生じる回転トルクによって、成り行き的な角速度が得られる安価かつ一般的なモータを用いることができる。
【実施例】
【0017】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0018】
図1に示すように、当該実施例に係る回転アンバランス測定装置11は、測定試料である回転体(回転試料)51における回転アンバランス(重心オフセット)の円周上位置及び大きさを測定するために用いられる装置であって、ベース12上に垂直方向に立設された中心軸(揺動軸)21と、この中心軸21を中心として揺動作動するよう中心軸21に取り付けられた揺動機構部31とを備え、この後者の揺動機構部31として、中心軸21に対し揺動可能に組み付けられた揺動アーム32と、中心軸21の上方であってかつ中心軸21と同軸上に配置されるとともに揺動アーム32に取り付けられた回転駆動源33と、揺動アーム32の揺動端又は揺動端近傍に回転可能に設けられた回転体保持軸(スピンドル)34(
図3参照)と、回転駆動源33の駆動力(回転トルク)を回転体保持軸34に伝達する駆動力伝達部(トルク伝達部)35とが設けられている。
【0019】
回転駆動源33は、具体的には回転モータよりなり、上向きの駆動軸33aを備え、この駆動軸33aに駆動プーリ36が取り付けられている。回転体保持軸34は揺動アーム32の揺動端又は揺動端近傍に対し上向きに突出するよう配置されるとともに揺動アーム32よって回転可能に支持され、その上端部に従動プーリ37が取り付けられている。また、回転体保持軸34はその上端部に直接又は図示しない回転テーブルなどを介して、回転体51を同軸的にかつ着脱可能に装着する。
【0020】
駆動プーリ36及び従動プーリ37は無端状の駆動ベルト38で連結され、これらにより上記駆動力伝達部35が設定されている。したがって回転駆動源33が駆動するとその駆動力が駆動プーリ36、駆動ベルト38及び従動プーリ37を経由して回転体保持軸34に伝達され、回転体保持軸34及びこれに保持された回転体51が同時回転する。駆動力伝達部35はベルトではなく歯車などによる駆動力伝達構造であっても良い。
【0021】
また、ベース12の側面立ち上がり部13上端及び回転駆動源33の駆動軸33a上端に位置して、回転駆動源33の駆動軸33aの回転位置を測定するためのロータリーエンコーダよりなる測定部41が設けられている。このロータリーエンコーダよりなる測定部41は、回転駆動源33の駆動軸33aの回転に伴ってパルス信号を発生し、発生するパルス信号の時間間隔から回転駆動源33の駆動軸33aの角速度及び角速度変動波形を算出し、角速度変動波形における極大ピーク発生時のパルス発生回数から回転駆動源33の駆動軸33aの回転位置を算出し、この駆動軸33aの回転位置から回転体51における回転アンバランスの円周上位置を算出するとともに、その一方で、角速度変動波形における極大ピークの大きさから回転体51における回転アンバランスの大きさを算出するものである。
【0022】
また、揺動アーム32の一方の側方に位置して、揺動アーム32の初動位置を規定するための弾性要素よりなるアーム初動位置規定部43が設けられている。弾性要素は具体的にはコイルばねよりなり、コイルばねはその一端を揺動アーム32に連結されるとともに他端をベース12の図示しない側面立ち上がり部に連結されている。
【0023】
回転体51は具体的には、自動車等車両に装着するクランクプーリ等のプーリ製品とされ、又はダイナミックダンパ若しくはトーショナルダンパ等のダンパ製品などとされる。
【0024】
上記構成を備える回転アンバランス測定装置11は、以下のように作動する。
【0025】
(1)例えば
図2に示すような、大量生産する工業製品である回転体51には、重心のオフセット(位置ずれ)rが僅かに発生する。Pはアンバランス位置を示している。回転中心0に対して重心オフセットrが発生すると、回転体51を回転させたとき、重心オフセット方向に遠心力Fが発生する。ここで、遠心力Fは角速度(回転数)wの二乗で大きくなるため、自動車エンジンなどの高速で回転する機器では振れ回り振動や破損を防止するため、回転体51のアンバランスを規定値以下に抑える必要がある。
遠心力:F=m・r・w
2
m:質量(kg)
r:重心オフセット(m)
w:角速度(rad/s)
【0026】
(2)回転駆動源33の起動により回転する回転体保持軸34が計測対象試料である回転体51を回転させると、回転体51の回転アンバランスによる遠心力によって揺動アーム32に揺動運動が発生する。この揺動アーム32の揺動運動において、回転駆動源33の回転方向と同一方向に揺動アーム32が移動した瞬間は回転駆動源33の角速度が瞬間的に増速する。一方、揺動アーム32が回転駆動源33の回転方向と逆向きに動いた瞬間は回転駆動源33の角速度が瞬間的に減速する。したがって揺動アーム32の揺動運動によって回転駆動源33が角速度変動(回転変動)する。回転体51の回転アンバランスが大きければ揺動アーム32を揺動させる起振力が大きくなり回転駆動源33の回転変動も大きくなる。一方、回転体51の回転アンバランスが小さければ揺動アーム32を揺動させる起振力が小さくなり回転駆動源33の回転変動も小さくなる。
【0027】
(3)上記構成の回転アンバランス測定装置11では、ロータリーエンコーダ1つよりなる測定部41で回転アンバランスの位置(角度)とアンバランス量を検出する。揺動アーム32は振り子の等時性によって揺動振動における共振周波数が規定される。回転駆動源33の回転数すなわち加振周波数によってアンバランス遠心力とアーム揺動起動力の位相角が変化する。
【0028】
回転駆動源33の回転数(起振周波数又は加振周波数)が揺動アーム32の揺動共振周波数よりも小さい場合、回転体51の遠心力ベクトルFと揺動アーム32を揺動させる起振力ベクトルF2の位相角はほぼ同一(ゼロ度)若しくは90度未満となる(起振力F2が遠心力Fから90度未満遅れる、
図3参照、矢印Sは揺動アームの揺動方向を示している、矢印Tは回転体51の回転方向を示している)。回転駆動源33の回転数と揺動アーム32の共振周波数が一致した場合、揺動起振力F2は遠心力Fから90度遅れる(
図4参照)。回転駆動源33の回転数が揺動アーム32の共振周波数より高い場合、起振力ベクトルF2は遠心力ベクトルFより90度を超え180度以下の位相角となる(
図5参照)。本発明では、揺動アーム32の揺動共振周波数よりも回転駆動源33の回転数すなわち加振周波数を明らかに高くし、遠心力ベクトルFに対する起振力ベクトルF2の位相角が180度であるとして説明する(回転体51が軽く小さい場合、回転数を高めて遠心力を大きくしたほうが計測速度が高いため)。
【0029】
ロータリーエンコーダよりなる測定部41は、回転駆動源33の回転に応じてパルス信号を発生する。パルスの時間間隔が長ければ回転駆動源33の回転数(角速度)は遅く、パルスの時間間隔が短ければ回転駆動源33の回転数(角速度)は速いことを示す。すなわちパルスの時間間隔から回転駆動源33の角速度を算出することができる。一方、パルス発生回数を数えることで、回転駆動源33の位置(角度)を導くことができる。
【0030】
当測定装置11が静止し揺動アーム32が初動位置にある状態のロータリーエンコーダ位置をゼロ角度とし、当測定装置11稼働中の回転駆動源33の角速度変動波形(
図6参照)で極大ピークとなった瞬間のパルスが何個目であるかで、その瞬間の回転駆動源33の位置を把握することができる。このときの回転駆動源33の位置から180度位相が遅れた角度が計測対象試料である回転体51のアンバランス位置Pであり、角速度変動波形の極大ピークの大きさがアンバランス量を表すことになる(
図6のグラフ図はアナログ的な線図に見えるが、実際は離散数値(1パルス:1データ)の集合体である。したがって横軸時間secは回転駆動源33の絶対角度deg(進行角度の累積)とみなすことができ、よって波形と回転駆動源33の角度の関係からアンバランス角度を特定することができる)。
【0031】
尚、実際はこのようなアナログ的な演算ではなくFFT等の計測機器を組み込むか、若しくは制御・演算マイコンにフーリエ変換などのプログラムを設定入力し、周波数分析によるアンバランス解析を実施する。