特許第6371677号(P6371677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371677
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】フカセ釣りの為の船体安定方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/48 20060101AFI20180730BHJP
   A01K 91/06 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B63B21/48
   A01K91/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-224202(P2014-224202)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-88248(P2016-88248A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】514281027
【氏名又は名称】田家 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】田家 義明
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3146001(JP,U)
【文献】 特開平1−127480(JP,A)
【文献】 実開昭48−64994(JP,U)
【文献】 実開昭48−64995(JP,U)
【文献】 特開2001−112379(JP,A)
【文献】 米国特許第4481900(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/48
A01K 91/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の釣りポイントの潮上において、船首側に錨を繋げて当該錨を海底に投げ込むことにより船首を潮上に向けさせた上で、
船尾側に、凹面底部に潮抜き孔を備えた傘状乃至はパラシュート状乃至は椀状の抵抗体を凹面が潮上を向くように取り付けて海中に投げ込むことにより、船体が横風を受けた場合でも船体が風下方向に流れるのを防止する
ことを特徴とするフカセ釣りの為の船体安定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記潮抜き孔の大きさが調整可能とされている
ことを特徴とするフカセ釣りの為の船体安定方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記抵抗体は、布材で構成されると共に、前記潮抜き孔近傍に引き上げロープが取り付けられている
ことを特徴とするフカセ釣りの為の船体安定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣りの分野に関し、特に詳しくは船を使ってフカセ釣りを行う際の船体の安定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「フカセ釣り」とは、もともとは、仕掛けに「浮き」を使用せずにハリ、糸、更にはエサ等の重さを利用し、潮の流れに乗せて仕掛けを海中に漂わせる(フカセる)ことによって魚を誘引する釣り手法のことである。その後、仕掛けの一部に「浮き」を利用する浮きフカセ釣りが広がり、現在「フカセ釣り」といえば、従来からの「完全フカセ釣り」と「浮きフカセ釣り」の両方を意味する言葉として、釣りユーザーに親しまれているところである(特許文献1参照)。
【0003】
例えばこの「フカセ釣り」は、釣り船を使って船釣りとして行う場合もあり、その場合は図4に示した態様で行われる。図4(a)は、船を使ってフカセ釣りを行っている状況を横方向から捉えた図であり、同図(b)は、上方から捉えた図である。
【0004】
船でフカセ釣りを行う場合、魚が居ると思われる場所(以下「釣りポイント30」という。)の潮上に船体10を置き、そこから釣りポイント30の位置する潮下側に、釣竿18と釣糸20を使用して仕掛22を潮に乗せて海中に漂わせて(フカセて)行われる。この時、船首側には錨12が錨用ロープ14によって繋がれており、その錨12が海底に投げ込まれて船体が潮に流されて移動しないようにされている。このように錨12で固定しておかないと、仕掛22が漂う位置が釣りポイント30から外れてしまい、所望の釣果が得られないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4039976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、錨12を海底に投げ込む事によって、潮の流れ方向に対しては船体10を固定する事ができるが、船体10に対して一定程度以上の横風が吹いた場合は問題が生じていた。即ち、図5に示しているように、一定程度以上の横風が船体10に当たると、その横風によって、船体10は錨12が投げ込まれている点を中心に回転するように潮の流れに対して横方向に移動させられるので、仕掛22が漂う位置が釣りポイント30から外れてしまうのである。
【0007】
そこで本発明は、船でフカセ釣りを行う場合において、船体が横風を受けた場合でも、船体の横流れを防止することができる船体の安定方法を提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく、本願発明は、所望の釣りポイントの潮上において、船首側に錨を繋げて当該錨を海底に投げ込むことにより船首を潮上に向けさせた上で、船尾側に、凹面底部に潮抜き孔を備えた傘状乃至はパラシュート状乃至は椀状の抵抗体を凹面が潮上を向くように取り付けて海中に投げ込むことにより、船体が横風を受けた場合でも船体が風下方向に流れるのを防止している。
【0009】
船尾側に上記のような形状の抵抗体を上記のような態様で取り付けて海中に投げ込む事によって、当該抵抗体が潮の流れを受け、船尾を潮下側に引っ張る力が発揮される。即ち、船首側の錨と船尾側の抵抗体によって、潮上側と潮下側の両方から船体が引っ張られた状態となるので、船体が横風を受けた場合でも、船体が横流れするのを防止することができるのである。また、傘状乃至はパラシュート状乃至は椀状の抵抗体の凹面底部には、潮抜き孔が形成されているので、この潮抜き孔を介して常にある程度の海水が抜けるので、潮の流れの中で、当該抵抗体が傾いたり揺れたり等不安定になることが少なく、凹面を安定的に潮上側に向かせ、その結果として安定して船尾側を引っ張ることが可能となっている。
【0010】
また、潮抜き孔の大きさを調整可能に構成してもよい。
【0011】
このように構成すれば、潮の流れの速さに応じて潮抜き孔から抜ける海水の量を調整することができるので、船尾側から船体を引っ張る力を調整し、潮の流れの変化に柔軟に対応することが可能となる。
【0012】
また、抵抗体を、布材で構成すると共に、潮抜き孔近傍に引き上げロープが取り付ける構成を採用することが望ましい。
【0013】
このような構成を採用することによって、抵抗体の引き上げが容易となっている。即ち、海水を受けて引っ張られている状態の抵抗体にはかなりの引っ張り力が働いているので、人力で引き上げるのは大変な作業となる。しかし抵抗体を布材で構成した上で、潮抜き孔の近傍に引き上げロープを取り付けておくことによって、このロープを引っ張ることで、恰も傘が強風を受けて反り返るように、潮下方向に凹面を向けたような形状から更に傘が閉じたような形状となるので、人力でも容易に引き上げることが可能となっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明を適用することで、船でフカセ釣りを行う場合において、船体が横風を受けた場合でも、船体の横流れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】船を使ってフカセ釣りを行う際に、本発明に係る船体の安定方法を用いて船体を安定させている状態を示した図であって、(a)は横方向から捉えた図、図(b)は上方から捉えた図である。
図2】本発明に係る船体の安定方法に用いる抵抗体の一例を示した概略構成図であって、(a)が正面図、(b)が側面図である。
図3】抵抗体に備わる潮抜き孔の開閉状態を示した図であって、(a)が開いている状態を示した図、(b)が閉じている状態を示した図である。
図4】船を使ってフカセ釣りを行っている状況を示した図であって、(a)は横方向から捉えた図、図(b)は上方から捉えた図である。
図5図4(b)に相当する図であって、横風により船体が風下に流された状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である船体安定方法について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0017】
〈本発明に係る船体安定方法に使用する抵抗体の構造〉
本発明に係る船体安定方法を実施するにあたって、必要となる道具は錨12と抵抗体100の2点である。錨12に関しては、従来から広く一般に用いられているものをそのまま利用すればよいので、構造等の説明は省略する。もちろん、船体の大きさ等に合わせて、錨12の種類や大きさは適切なものを選択すればよい。
【0018】
本発明に係る船体安定方法に使用する抵抗体として、図2にその一例を示している。ここで示している抵抗体は、略傘型に形成されており、傘でいうところの「露先」の部分に細めのロープで構成されたステー122が繋がれており、そのステー122が複数纏められて抵抗用ロープ120に繋がっている。
【0019】
抵抗体100は、図2(a)に示しているように、正面視すると中央に円形の穴(潮抜き孔112)が形成された略八角形に形成される。それぞれの頂点部分から潮抜き孔112に向かって直線的に補強部材106が縫い付けられて補強されている。この補強部材106は基布102の両面側に備わっており、正面視中央の潮抜き孔112の部分と外周端の部分のそれぞれで少し飛び出すように、且つ両面側の補強部材106が繋がって輪状(リング状)となるように構成されている。その結果、潮抜き孔112側には8つの調整ロープ挿通輪108が形成され、外周側には8つのステー係止輪104が形成される。
【0020】
調整ロープ挿通輪108には、調整ロープ110が挿通されている。図3に示しているように、この調整ロープ110の長さを調整することによって、潮抜き孔112の大きさ(広がり具合)を調整することが可能となっている。一方、外周側のステー係止輪104には、それぞれ一本のステーが繋がれている。
【0021】
なお、基布102は、本実施形態ではポリアミド合成繊維(例えばナイロン(登録商標))によって構成されている。
【0022】
〈本発明に係る船体安定方法の手順〉
最初に、釣りを行いたい釣りポイント30を決定し、その釣りポイント30の潮上に船体10を移動させる。その位置で、船首側から錨12を海底に投げ込み、船体10が潮の流れに乗って潮下に移動しないように係留する。
【0023】
その後、船尾側から抵抗体100を海中に向かって投げ入れる。船尾から抵抗体迄の距離(即ち抵抗体用ロープ120の長さ)は、取り付ける船体の大きさや潮の流れ等によって適宜調整すればよいが、あまり長くしてしまうと釣りの仕掛22と絡まる等の問題が生じやすくなるため、可能な限り短めに設定するのが望ましい。投げ入れられた抵抗体100は、潮の流れを受けて傘状に広がると共に、受けた水流によって船尾を潮下側に引っ張り続ける。
【0024】
このように、本願発明は、所望の釣りポイント30の潮上において、船首側に錨12を繋げて当該錨12を海底に投げ込むことにより船首を潮上に向けさせた上で、船尾側に、凹面底部に潮抜き孔112を備えた抵抗体100を凹面が潮上を向くように取り付けて海中に投げ込むことにより、船体10が横風を受けた場合でも船体が風下方向に流れるのを防止するのである。
【0025】
船尾側に上記のような形状の抵抗体100を上記のような態様で取り付けて海中に投げ込む事によって、当該抵抗体100が潮の流れを受け、船尾を潮下側に引っ張る力が発揮される。即ち、船首側の錨12と船尾側の抵抗体100によって、潮上側と潮下側の両方から船体10が引っ張られた状態となるので、船体10が横風を受けた場合でも、船体10が横流れするのを防止することができるのである。また、抵抗体100の凹面底部には、潮抜き孔112が形成されているので、この潮抜き孔112を介して常にある程度の海水が抜けるので、潮の流れの中で、当該抵抗体100が傾いたり揺れたり等不安定になることが少なく、凹面を安定的に潮上側に向かせ、その結果として安定して船尾側を引っ張ることが可能となっている。
【0026】
また、潮抜き孔112の大きさは調整可能とされているので、潮の流れの速さに応じてこの潮抜き孔112から抜ける海水の量を調整することができる。即ち、船尾側から船体を引っ張る力を調整し、潮の流れの変化に柔軟に対応することが可能となっているのである。
【0027】
また、図示はしていないが、潮抜き孔112近傍に引き上げロープ(ステー112や抵抗体用ロープ112とは別のロープ)が取り付けられている。
【0028】
このような構成を採用することによって、抵抗体100の引き上げが容易となっている。即ち、海水を受けて引っ張られている状態の抵抗体100にはかなりの引っ張り力が働いているので、人力で引き上げるのは大変な作業となる。しかし抵抗体100をポリアミド合成繊維等の布材で構成した上で、潮抜き孔112の近傍に引き上げロープを取り付けておくことによって、このロープを引っ張ることで、恰も傘が強風を受けて反り返るように、潮下方向に凹面を向けたような形状から更に傘が閉じたような形状となるので、人力でも容易に引き上げることが可能となっている。この効果は、潮抜き孔112が形成されており、この潮抜き孔112から海水が抜けることが可能であり且つこの潮抜き孔112の近傍に引き上げロープを取り付けているからこそ実現できる効果である。潮抜き孔112が形成されていない場合は、同じ位置に引き上げロープを取り付けても、引き上げるにあたって相当の力が必要となる。
【0029】
〈その他の構成例〉
なお上記では、抵抗体100は、ポリアミド合成繊維で構成された傘状の部材として構成されているが、この形状に限定されるものではない。その他にもパラシュート形状、椀型等のいわゆる全体が凹形に構成され、効率よく海水の抵抗を受けることができる形状である限り、広く採用することが可能である。
【0030】
また、布材のように柔軟性を有する素材でなくともよく、全体又はその一部を、樹脂や木材更には金属等で構成することを除外する趣旨ではない。
【0031】
また、上記行った説明では、船尾に1つの抵抗体が備わっていたが、必要に応じて複数の抵抗体を利用してもよい。この時複数の抵抗体を直接的に配置したり、並列的に配置することも自由である。
【符号の説明】
【0032】
10・・・船体
12・・・錨
14・・・錨用ロープ
16・・・釣り人
18・・・釣竿
20・・・釣糸
22・・・仕掛け
30・・・釣りポイント
100・・・抵抗体
102・・・基布
104・・・ステー係止輪
106・・・補強部材
108・・・調整ロープ挿通輪
110・・・調整ロープ
112・・・潮抜き孔
120・・・抵抗体用ロープ
122・・・ステー
図1
図2
図3
図4
図5