(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリイソシアナート(ii)に含まれるイソシアナト基とポリオール(i)および多価(メタ)アクリレート(iii)に含まれる水酸基とのモル比(NCO/OH)が0.1〜10である請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のプライマー組成物は、少なくともポリオール(i)、ポリイソシアナート化合物(ii)および水酸基と(メタ)アクリロイル基を2個以上とを有する多価(メタ)アクリレート化合物(iii)から得られる組成物である。
【0031】
[(i)ポリオール]
本発明で用いる(i)成分 ポリオール(以下、ポリオール(i)ともいう。)は、水酸基を、1分子あたり平均2個以上含むもののことをいう。水酸基はポリオール(i)の主鎖、側鎖のいずれに含まれていてもよい。ポリオールの主鎖は重合体により形成されていてもよく、この場合主鎖を形成する重合体は、例えば、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合などの結合部位を介して構造単位が結合した重合体であってもよく、また、炭素−炭素二重結合を有する化合物(例えば(メタ)アクリレート)の付加重合によりその構造単位が連結した重合体であってもよい。また、上記重合体としては、複数の結合部位(例えば、エステル結合とエーテル結合)を介してその構造単位が結合した重合体であってもよいし、結合部位を介してその構造単位が結合した連鎖部分と付加重合によりその構造単位が連結した連鎖部分の両方を有する重合体であってもよい。また、結合部位を介してその構造単位が結合した連鎖部分同士、付加重合によりその構造単位が連結した連鎖分同士、結合部位を介してその構造単位が結合した連鎖部分と付加重合によりその構造単位が連結した連鎖部分とが、他の結合(例えば、マイケル付加により形成される結合)を介して結合していてもよい。
【0032】
ポリオールの主鎖となるこれら重合体の中でも、ウレタン結合を介して構造単位が結合した重合体、エステル結合を介して構造単位が結合した重合体、付加重合により構造単位が結合した重合体、ウレタン結合およびエステル結合を介して構造単位が結合した重合体、ウレタン結合および/またはエステル結合を介して構造単位が結合した連鎖部分と付加重合により構造単位が結合した連鎖部分とを有する重合体が比較的好ましい。
【0033】
上記ポリオール(i)が有する1分子あたりの水酸基の平均値は、2〜100の範囲が好ましく、2〜30の範囲がより好ましく、2〜10の範囲がさらに好ましい。なお、複数のポリオールの混合物を上記ポリオール(i)として用いる場合には、その混合物の水酸基の平均値が上記範囲を満たすことが望ましい。なお、ポリオール(i)1分子あたりの水酸基の数は、その化学式が明らかな化合物の場合はその化学式中に含まれる水酸基数と同一であり、化学式が明らかでない場合は、JIS K0070に記載の方法に従い測定したポリオールの水酸基価を重量あたりの水酸基のモル数(mol/g)に換算し、この値とゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)から求めた平均分子量(標準ポリスチレン基準)(g/mol)との積により求められる。
【0034】
上記ポリオール(i)の分子量は、通常1,000〜3,000,000の範囲にあり、好ましくは2,000〜300,000の範囲、より好ましくは3,000〜100,000の範囲である。
上記ポリオール(i)の中でも、下記一般式(1)示される化合物が好ましい。
【0035】
【化19】
上記式(1)中、A
1は一般式(100)または(200)で示される基を表し、A
2は一般式(300)または(400)で示される基を表し、A
3は一般式(500)または(600)で示される基を表し、複数あるA
1、A
2およびA
3は同一でも異なっていてもよく、n1およびn2はそれぞれ独立して0〜10の整数を表し、複数あるn1は同一でも異なっていてもよい。
【0037】
【化21】
上記式(200)中、n100は1〜5の整数を表す。上記n100としては、1〜3の整数が好ましい。
【0039】
【化23】
上記式(400)中、n200は1〜10の整数を表す。上記n200としては、3〜7の整数が好ましい。
【0040】
【化24】
上記式(500)中、n300は1〜5の整数を表す。上記n300としては、4〜5の整数が好ましい。
【0041】
【化25】
上記ポリオール(i)として市販品を用いることもでき、ポリオール(i)の市販品としては、例えば、タケラック
TME−550、タケラック
TME−550A、タケラック
TME−551T、タケラック
TME−553、タケラック
TMA−2789、タケラック
TMA−310、タケラック
TMA−315(以上、三井化学製)等のポリウレタンポリオール;
タケラック
TMU−21、タケラック
TMU−24、タケラック
TMU−25、タケラック
TMU−27、タケラック
TMU−53、タケラック
TMU−253、タケラック
TMU−502、タケラック
TMU−118A、オレスター
TMC−1000、オレスター
TMC−1066(以上、三井化学製)等のポリエステルポリオール;
タケラック
TMUA−702、タケラック
TMUA−902、タケラック
TMUA−906(以上、三井化学製)等の(メタ)アクリルポリオール;などが挙げられる。
上記ポリオール(i)は、1種単独であるいは2種以上混合して使用できる。
【0042】
[(ii) ポリイソシアナート]
本発明で用いる(ii)成分 ポリイソシアナート(以下、ポリイソシアナート(ii)ともいう。)は、1分子あたり2個以上のイソシアナト基を有する化合物である。
上記ポリイソシアナート(ii)としては、例えば、2,4−トルイレンジイソシアナート、2,6−トルイレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、1,5−ペンタメチレンジイソシアナート、ノルボルナンジイソシアナトメチル、キシリレンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナトメチル等のポリイソシアナート単量体などが挙げられる。
【0043】
また、上記ポリイソシアナート(ii)として、上述したようなポリイソシアナート単量体のイソシアヌレート体、ビュレット体、アロファネート体も用いることができ、また、ポリイソシアナート単量体と活性水素化合物とのアダクト体も用いることができる。
【0044】
上記ポリイソシアナート(ii)として市販品を用いることもでき、ポリイソシアナート(ii)の市販品としては、例えばタケネート
TMA−10、タケネート
TMD−110N、タケネート
TMD−120N、タケネート
TMD−127N、タケネート
TMD−140N、タケネート
TMD−140N、タケネート
TMD−160N、タケネート
TMD−170N、タケネート
TMD−170NH、オレスター
TMNP1100、タケネート
TMD−178N、オレスター
TMNP1200(以上、三井化学製)等の無黄変ポリイソシアナート:
タケネート
TMD−204、オレスター
TMP3300、タケネート
TMD−212L、タケネート
TMD−215、タケネート
TMD−217、タケネート
TMD−218、タケネート
TMD−219、タケネート
TMD−268、タケネート
TMD−251N(以上、三井化学製)等の速乾性ポリイソシアナート;
タケネート
TMB−830、タケネート
TMB−815、タケネート
TMB−820NSU、タケネート
TMB−842N、タケネート
TMB−846N、タケネート
TMB−870N、タケネート
TMB−874N、タケネート
TMB−882N(以上、三井化学製)等のブロック型のポリイソシアナート;などが挙げられる。
上記ポリイソシアナート(ii)は、1種単独であるいは2種以上混合して使用できる。
【0045】
[(iii) 水酸基を有する多価(メタ)アクリレート]
本発明で用いる(iii)成分 水酸基と2個以上の(メタ)アクリレート基を有する多価(メタ)アクリレート(以下、多価(メタ)アクリレート(iii)ともいう。)は、1分子あたり1個以上の水酸基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。なお、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルおよびメタクリルロイルの総称である。
【0046】
多価(メタ)アクリレート(iii)の1分子内あたりの水酸基数は、通常1〜100の範囲であり、好ましくは1〜10の範囲、より好ましくは1〜5の範囲である。水酸基が1未満、例えばゼロである場合、基材と塗膜、特に(メタ)アクリル系樹脂からなる塗膜とを、強力に接着することができない。一方、1分子あたりの水酸基数が大きすぎる場合、上述のポリイソシアナート(ii)と混合した際に、水酸基とイソシアナト基との反応によるウレタン結合の生成密度が高くなりすぎて、凝集を起こしやすくなり、その結果不溶物が生成しやすいため、プライマー組成物の塗布が困難になる場合がある。
【0047】
多価(メタ)アクリレート(iii)1分子あたりの水酸基数は、その化学式が明らかな化合物の場合はその化学式中に含まれる水酸基数と同一であり、多価(メタ)アクリレート(iii)が例えば重合体であるなど化学式が必ずしも明確でない場合には、重量あたりのOHmol量により求められる。なお、化学式が明らかでない場合は、JIS K0070に記載の方法に従い測定したポリオールの水酸基価を重量あたりの水酸基のモル数(mol/g)に換算し、この値とGPCで求めた平均分子量(標準ポリスチレン基準)(g/mol)の積により求められる。
【0048】
多価(メタ)アクリレート(iii)1分子あたりの(メタ)アクリロイル基の数は、通常2〜100の範囲であり、好ましくは2〜10の範囲、より好ましくは2〜5の範囲である。
【0049】
多価(メタ)アクリレート(iii)1分子あたりの(メタ)アクリロイル基の数が2未満(例えば1個)の場合は、本発明のプライマー組成物を硬化することにより形成されるプライマー層上に形成される塗膜との接着性が十分ではなく、特に高温多湿下での耐久性が低下してしまう。
【0050】
そして、多価(メタ)アクリレート(iii)1分子あたりの(メタ)アクリロイル基の数が大きくなると、本発明のプライマー組成物の硬化物から形成されるプライマー層上に設けられる塗膜(例えば(メタ)アクリル系樹脂からなる塗膜)を塗膜用組成物から形成する際に、塗膜用組成物中に含まれる(メタ)アクリロイル基と反応する重合性基(例えば(メタ)アクリロイル基)との反応性が高まり、プライマー層と塗膜とが強固に接着しやすくなる。一方、1分子あたりの(メタ)アクリレート基の数が大きくなりすぎると、プライマー層での(メタ)アクリロイル基に由来する架橋密度が高くなりすぎるため、プライマー層がもろくなる場合、プライマー層を硬化により形成する際の硬化収縮が大きくなり過ぎるためプライマーと基材との接着性が低下する場合などがある。
【0051】
上記多価(メタ)アクリレート(iii)の中でも、下記一般式(2)〜(5)で示される化合物が好ましい。
【0052】
【化26】
式(2)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、水酸基、メチロール基、(メタ)アクリロイルオキシ基または(メタ)アクリロイルオキシメチル基を表し、R
3は水素原子またはメチル基を表し、R
2が複数ある場合これらの基は同一でも異なっていてもよく、複数あるR
3は同一でも異なっていてもよく、*、**は結合手を表し、*と**とが結合し、n3は0〜4の整数を表し、n4は0または1を表し、複数あるn4は同一でも異なっていてもよく、aは1〜6の整数を表し、bは2〜7の整数を表し、かつa+bは式(2)中の*の総数と**の総数とが同一となる3〜7の整数である。
【0053】
上記R
3としては、本発明で得られるプライマー層と塗膜(例えば(メタ)アクリル系樹脂からなる塗膜)との反応性が高くなる点から、水素原子が好ましい。
上記n3としては、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましい。
上記aとしては、1〜5の整数が好ましい。上記bとしては、2〜6の整数が好ましい。
【0054】
上記n3、aおよびbの組み合わせとしては、n3が0〜3の整数、aが1〜4の整数、bが2〜5の整数を表し、かつa+bは式(2)中の*の総数と**の総数とが同一となる3〜6の整数であることが好ましく、n3が0〜1の整数、aが1〜2の整数、bが2〜3の整数を表し、かつa+bは式(2)中の*の総数と**の総数とが同一となる3〜4の整数であることが好ましい。
【0055】
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(5−(メタ)アクリロイルオキシ−4−ヒドロキシ−2−オキサペンチル)プロパン、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパン骨格を有する多価(メタ)アクリレート;
ペンタエリスルトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、2,2,2−トリス(5−(メタ)アクリロイルオキシ−4−ヒドロキシ−2−オキサペンチル)エタノール、テトラキス(5−(メタ)アクリロイルオキシ−4−ヒドロキシ−2−オキサペンチル)メタン等のペンタエリスリトール骨格を有する多価(メタ)アクリレート:
ジペンタエリスルトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール骨格を有する多価(メタ)アクリレート:等が挙げられる。
【0056】
【化27】
式(3)中、R
3は水素原子またはメチル基を表し、R
5およびR
6はそれぞれ独立して水酸基またはO**を表し、R
5が複数ある場合これらの基は同一でも異なっていてもよく、n5は0〜4の整数を表し、n6は0または1を表すが、R
5およびR
6がいずれもO**の場合はn6は1であり、*、**は結合手を表し、*と**とが結合し、a2は0〜5の整数を表し、b2は2〜7の整数を表し、かつa2+b2は式(3)中の*の総数と**の総数とが同一となる2〜7の整数である。
【0057】
上記n5としては、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましい。
上記R
3としては、本発明で得られるプライマー層と塗膜(例えば(メタ)アクリル系樹脂からなる塗膜)との反応性が高くなる点から、水素原子が好ましい。
【0058】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、グリセリン−1,3−ジ(メタ)アクリレート、グリセリン−1,2−ジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロパン、1,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−3−ヒドロキシプロパン、1,2,3−トリス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)プロパン等のグリセリン骨格を有する多価(メタ)アクリレート;
ジグリセリン−1,7−ジ(メタ)アクリレート、ジグリセリン−1,2−ジ(メタ)アクリレート、ジグリセリン−1,6−ジ(メタ)アクリレート、ジグリセリン−2,6−ジ(メタ)アクリレート、ジグリセリン−1,2,6−トリ(メタ)アクリレート、ジグリセリン−1,2,7−トリ(メタ)アクリレート、ジグリセリン−1,6,7−トリ(メタ)アクリレート等のグリセリン骨格を有する多価(メタ)アクリレート;
トリグリセリン−1,11−ジ(メタ)アクリレート、トリグリセリン−1,6,11−トリ(メタ)アクリレート、トリグリセリン−1,2,6,11−テトラ(メタ)アクリレート等のトリグリセリン骨格を有する多価(メタ)アクリレート;
等が挙げられる。
【0059】
【化28】
式(4)中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R
7〜R
10はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、R
9およびR
10が複数ある場合これらの基は同一でも異なっていてもよく、n7は0〜10の整数を表す。
【0060】
上記n7としては、0〜5の整数が好ましく、0〜3の整数がより好ましい。
上記R
3およびR
4としては、本発明で得られるプライマー層と塗膜(例えば(メタ)アクリル系樹脂からなる塗膜)との反応性が高くなる点から、水素原子が好ましい。
【0061】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、1,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)エタン、1,5−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−3−オキサペンタン、1,8−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−3,6−ジオキサオクタン、1,11−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−3,6,9−トリオキウンデカン等のエチレングリコール骨格を有する多価(メタ)アクリレート;
1,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)プロパン、1,5−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−1,4−ジメチル−3−オキサペンタン、1,8−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサオクタン、1,11−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−1,4,7,10−テトラメチル−3,6,9−トリオキウンデカン等のプロピレングリコール骨格を有する多価(メタ)アクリレート;
1,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)ブタン、1,5−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−1,4−ジエチル−3−オキサペンタン、1,8−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−1,4,7−トリエチル−3,6−ジオキサオクタン、1,11−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)−1,4,7,10−テトラエチル−3,6,9−トリオキウンデカン等の1,2−ブチレングリコール骨格を有する多価(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0062】
【化29】
式(5)中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、A
4は下記一般式(700)〜(1300)で示される基のいずれかを表す。
【0063】
【化30】
式(700)中、n400は1〜10の整数を表すが、1〜5の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。
【0066】
【化33】
式(1000)中、n500およびn600はそれぞれ独立して0または1を表す。
【0068】
【化35】
式(1200)中、n700およびn800はそれぞれ独立して0または1を表す。
【0069】
【化36】
式(1300)中、R
11〜R
16はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、R
11、R
12、R
13およびR
14が複数ある場合これらの基は同一でも異なっていてもよく、n900およびn1000はそれぞれ独立して0〜10の整数を表す。
【0070】
上記R
11〜R
16としては、それぞれ独立して水素原子またはメチル基が好ましい。
上記n900およびn1000としては、それぞれ独立して、0〜5の整数が好ましく、0〜3の整数がより好ましい。
【0071】
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、1,3−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)ブタン、1,6−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)ヘキサン、1,8−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)オクタン、1,10−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)デカン、1,12−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)ドデカン等の中心構造(700)を含む多価(メタ)アクリレート;
2,2−ジメチル−1,3−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)プロパンの中心構造(800)を含む多価(メタ)アクリレート;
1,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピル)ヘキサヒドロフタル酸エステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピル)ヘキサヒドロフタル酸エステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピル)ヘキサヒドロフタル酸エステル等の中心構造(900)を含む多価(メタ)アクリレート;
1,3−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシ-2−オキサペンチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(4−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシ-2−オキサペンチル)シクロヘキサン等の中心構造(1000)を含む多価(メタ)アクリレート;
1,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピル)フタル酸エステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピル)フタル酸エステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピル)フタル酸エステル等の中心構造(1100)を含む多価(メタ)アクリレート;
1,3−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシ-2−オキサペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシ-2−オキサペンチル)ベンゼン等の中心構造(1200)を含む多価(メタ)アクリレート;
ビスフェノールF−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルエーテル)、ビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ-プロピルエーテル)、ビスフェノールA−ビス(5−ヒドロキシ−6−(メタ)アクリロイルオキシ-3−オキサヘキシルエーテル)、ビスフェノールA−ビス(11−ヒドロキシ−12−(メタ)アクリロイルオキシ-3,6,9−トリオキサドデシルエーテル)、ビスフェノールA−ビス(2−メチル−5−ヒドロキシ−6−(メタ)アクリロイルオキシ-3−オキサヘキシルエーテル)、ビスフェノールA−ビス(2−エチル−5−ヒドロキシ−6−(メタ)アクリロイルオキシ-3−オキサヘキシルエーテル)等の中心構造(1300)を含む多価(メタ)アクリレート;
等が挙げられる。
上記多価(メタ)アクリレート(iii)は、1種単独であるいは2種以上混合して使用できる。
【0072】
[プライマー組成物]
本発明のプライマー組成物は、上述したポリオール(i)、ポリイソシアナート(ii)および多価(メタ)アクリレート(iii)を必須成分として含む。
ポリオール(i)/ポリイソシアナート(ii)/多価(メタ)アクリレート(iii)の配合比は、所望の目的などに応じて適切に設定できる。
【0073】
ポリイソシアナート(ii)に含まれるイソシアナト基(NCO基)とポリオール(i)および多価(メタ)アクリレート(iii)に含まれる水酸基(OH基)とのモル比(NCO/OH)は、通常0.1〜10の範囲、好ましくは0.1〜5の範囲、より好ましくは0.3〜3の範囲、さらに好ましくは0.5〜1.5の範囲である。上記モル比が、上述の範囲にあると、高温多湿下での密着保持性により優れる傾向になる。
【0074】
また、ポリオール(i)およびポリイソシアナート(ii)の合計重量(100重量%)に対する、ポリイソシアナート(ii)の重量の割合は、通常1〜99重量%の範囲、好ましくは10〜70重量%の範囲、より好ましくは20〜50重量%の範囲である。
【0075】
本発明のプライマー組成物は、上述の必須成分以外に、さらに他の成分が含まれていてもよい。
本発明のプライマー組成物には、塗工性を向上させる等の目的で溶剤を含まれていてもよい。該溶剤としては、ポリオール(i)、ポリイソシアナート(ii)および多価(メタ)アクリレート(iii)に対する溶解度が高く、基材を著しく浸さない溶剤が望ましい。
【0076】
上記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;
ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;
t−ブタノール等のイソシアナト基と反応しないアルコール;
酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、エチレングリコールジアセテート等のエステル、
アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン(メチルプロピルケトン)、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;
アセトニトリル等のニトリル;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤:等が挙げられる。
【0077】
これら溶剤は、1種単独であるいは2種以上混合して使用できる。
本発明のプライマー組成物には、ポリオール(i)および多価(メタ)アクリレート(iii)に含まれる水酸基とポリイソシアナート(ii)に含まれるイソシアナト基との反応性を向上させる等の目的で触媒が含まれてもよい。
【0078】
上記触媒としては、金属化合物、3級アミン、ホスフィンなどのウレタン化触媒が例示できる。これら触媒の中でも、金属化合物および3級アミンが好ましく用いられる傾向にある。触媒として用い得る金属化合物は、錫化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などに大別される。なお、ジルコニウム化合物は、近年、安全性の面から注目され始めている。
【0079】
触媒として用い得る上記錫化合物としては、例えば、ジ−n−オクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジ−n−オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、テトラ−n−オクチル錫、ジ−n−オクチル錫ジクロリド、ジ−n−オクチル錫オキサイド等のオクチル錫系化合物:
ジ−n−ブチル錫ビス(イソブチルチオグリコレート)、ジ−n−ブチル錫−3−メルカプトプロピオネートポリマー、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレート、テトラ−n−ブチル錫、ジ−n−ブチル錫ジクロリド、ジ−n−ブチル錫オキサイド等のブチル錫系化合物:
ジ−n−メチル錫ビス(イソメチルチオグリコレート)、ジ−n−メチル錫−3−メルカプトプロピオネートポリマー、ジ−n−メチル錫ジマレート、ジ−n−メチル錫ジラウレート、テトラ−n−メチル錫、ジ−n−メチル錫ジクロリド、ジ−n−メチル錫オキサイド等のメチル錫系化合物:
酸化錫などの無機系錫化合物:などが挙げられる。
【0080】
触媒として用い得る上記チタン化合物としては、例えば、テトラ(メトキシ)チタン、テトラ(エトキシ)チタン、テトラ(n−プロポキシ)チタン、テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n−ブトキシ)チタン、チタンアセチルアセトナート、チタンアセト酢酸エチレート、ステアリン酸チタン、塩化チタンなどが挙げられる。
【0081】
触媒として用い得る上記ジルコニウム化合物としては、例えば、テトラ(n−プロポキシ)ジルコニウム、テトラ(イソプロポキシ)ジルコニウム、テトラ(n−ブトキシ)ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセト酢酸エチレート、ステアリン酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムなどが挙げられる。
これら触媒は、1種単独であるいは2種以上混合して使用できる。
【0082】
本発明のプライマー組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでいてもよい。該添加剤としては、例えば、充填材、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、ラジカル補足剤、酸化防止剤、重合禁止剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、金属不活性化剤、貯蔵安定性向上剤、顔料、染料、香料、バインダー、レベリング剤、タレ防止材などが挙げられる。
【0083】
上記充填材としては、例えば、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、ケイソウ土、白土、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、酸化チタン、酸化セリウム、炭酸マグネシウム、石英粉末、アルミニウムなどの金属片または金属微粉末等が挙げられる。
これら添加剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0084】
[塗布方法および使用方法]
本発明のプライマー組成物は、基材と塗膜との接着性を向上させるプライマーとして好適に使用できる。本発明のプライマー組成物から得られる層は、例えば基材表面の少なくとも一方の側に本発明のプライマー組成物を塗布するなどの方法で形成することができる。
【0085】
本発明で用いる基材としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、ポリ(チオ)ウレア樹脂、および(チオ)エポキシ樹脂等の有機材料からなる基材;
鉄、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、金、銀、銅等の金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス、セメント、スレート、大理石および御影石等の石材、モルタル等の無機材料からなる基材;
ガラス繊維および炭酸カルシウムの無機材料と不飽和ポリエステル樹脂などの有機材料とを複合化したSMC(シート・モールディング・コンパウンド)等の複合材料からなる基材;
有機材料からなる基材、無機材料からなる基材、および複合材料からなる基材から選ばれる少なくとも2種の基材を積層したラミネート基材、上記基材の表面をさらに金属メッキした基材、上記基材の表面に塗料が塗られた塗装基材等が挙げられる。
【0086】
上記基材の中でも、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックスなどの無機材料からその表面部分が形成されている基材(例えば、無機材料からなる基材、ラミネート基材のうち最外層の基材が無機材料からなる基材、金属メッキ基材など)の場合には、少なくともプライマー層を形成する側の、無機材料からなる基材表面部分を事前に洗浄し、表面の付着物を除去しておくことが、上記基材表面とプライマー層との接着性の向上させる点から好ましい。
【0087】
また、その他の基材を用いる場合でも本発明のプライマーと上記基材表面との接着性を、充分に確保するためには、表面の汚染物を除去することが好ましい。
上記基材などの表面の汚染度を簡便に測定する方法として、例えば、水接触角の測定が挙げられる。上記基材の表面の水接触角は、基材本来の水接触角から±10°の範囲が好ましく、±5°の範囲がより好ましい。
【0088】
さらに、接着性の強化等のために、上記基材は表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理、酸素ガスまたは窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理;酸化剤などによる酸化処理;イトロ処理、リン酸亜鉛水溶液処理、酸またはアルカリなどによるエッチング処理などの化学的処理;などが挙げられる。
【0089】
上記基材にプライマー組成物を塗布する方法としては、例えば、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤーバー法、バーコーター法、ブレード法、ロールコーティング法、スピンコート法、ディッピング法、その他公知のコーティング方法が挙げられる。
【0090】
基材に塗布されたプライマー組成物では、ポリオール(i)および多価(メタ)アクリレート(iii)に含まれる水酸基と、ポリイソシアナート(ii)に含まれるイソシアナト基とが反応(ウレタン化反応)し、条件によっては多価(メタ)アクリレート(iii)に含まれる(メタ)アクリロイル基同士の架橋反応も進行し、プライマー組成物の硬化物からなるプライマー層が基材上に形成される。
【0091】
このとき、プライマー層から(メタ)アクリレート基が消失すると、プライマー層とその上に形成された塗膜との接着性が低下するため好ましくない。そのため、硬化後に形成されたプライマー層中に残存する(iii)成分由来の(メタ)アクリレート基の残存率(混合直後の(メタ)アクリレート量を100とした場合の割合)として、好ましくは1〜100%の範囲であり、さらに好ましくは10〜100%の範囲、最も好ましくは20〜100%の範囲にすることが望ましい。
【0092】
ウレタン化反応は、室温でも進行するが、通常、加熱により加速(硬化時間が短縮)される。一方で、上記(iii)成分の(メタ)アクリレート基の重合反応も、通常は室温以上、少なくとも40℃以上から重合反応が進行する傾向にある。ウレタン化反応を進行させつつ(メタ)アクリレート基が残存をさせるためのプライマーの硬化条件としては、おおよそ0〜200℃の温度範囲で0.01〜240時間の範囲であり、好ましくは20〜150℃で0.05〜100時間の範囲、さらに好ましくは40〜120℃で0.1〜20時間の範囲である。
【0093】
プライマー組成物の硬化は、大気下でも窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、酸素の存在下では(メタ)アクリレート基の重合反応が阻害されることから大気下の方が好ましい。
また、プライマー組成物の加熱硬化は、加圧下、または減圧下で行ってもよいが、常圧下が簡便で好ましい。
【0094】
本プライマー層の硬化方法として、熱単独以外に、熱と放射線を併用してもよいが、この(メタ)アクリレート基の重合反応は、一般的に、熱よりも紫外線等の放射線の方が容易に進行するため、熱単独による硬化の方が好ましい。
【0095】
上記プライマー層の厚みは、その目的に応じて適切に定められるが、通常0.001〜100μmの範囲、好ましくは0.01〜30μmの範囲、より好ましくは0.1〜10μmの範囲である。
【0096】
なお、プライマー層は基材の片方の表面のみに形成されていてもよいが、基材の両面に形成されていてもよい。
このように、基材表面の少なくとも一方側にプライマー層が設けられた積層体は、さらにそのプライマー層の上に塗膜が設けられていることが好ましい。
【0097】
基材表面の少なくとも一方側に設けられた上記プライマー層の上に、塗料を塗布し、該塗料から脱溶媒、あるいは該塗料を重合するなどして塗膜が設けられる。
上記塗料を塗布する方法としては、上述したプライマー組成物を塗布する方法と同様の方法が挙げられる。
【0098】
上記塗料としては、例えば、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料、ポリエステル(アルキド)系塗料、不飽和ポリエステル(アルキド)系塗料、メラミン系塗料、シリコーン系塗料、シロキサン系塗料、(メタ)アクリル系塗料、およびこれらの混合物が挙げられる。これら塗料の中でも、上記プライマー層との反応性に優れる点から(メタ)アクリル系塗料が好ましい。上記(メタ)アクリル系塗料は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む塗料である。
【0099】
プライマー層の上に(メタ)アクリル系塗料を塗布し、この塗料中の(メタ)アクリロイル基同士の架橋反応をさせることにより、プライマー層上に塗膜を形成することができる(以下、(メタ)アクリル系塗料から形成された塗膜を(メタ)アクリル系塗膜ともいう。)。
【0100】
上記(メタ)アクリル系塗料に含まれる少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルチオ基を有する化合物、少なくとも1つの(メタ)アクリルアミド基を有する化合物などに大別される。これら化合物の中でも、重合反応性に富み、着色が少なく、かつ臭気が弱いという点から、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が好ましい。
【0101】
少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性コハク酸(メタ)アクリレート(新中村化学「NKエステル A−SA」など)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート(東亞合成「TO−1534」など)、モノ{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレートカリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートカリウム塩などの1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}エタン、1,2−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}プロパン、1,3−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}プロパン、1,4−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}プタン、1,6−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}ヘキサン ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル}エーテル、1,2−ポリプロピレングリコール−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル}エーテル、1,2−ポリプロピレングリコール−ビス{(メタ)アクリロイル−ポリ(オキシエチレン)}エーテル、1,3−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ポリブチレングリコール−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル}エーテル、ビス{2−(メタ)アクリロイルチオ−エチル}スルフィド、ビス{5−(メタ)アクリロイルチオ−3−チアペンチル}スルフィド、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−エチル}燐酸、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル}燐酸、ビス{4−(メタ)アクリロイルオキシ−ブチル}燐酸、ビス{6−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキシル}燐酸、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス{(メタ)アクリロイルオキシ−メチル}シクロヘキサン、ビス{7−(メタ)アクリロイルオキシ−2,5−ジオキサヘプチル}シクロヘキサン、ビス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)−メチル}シクロヘキサン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2−プロペノイックアシッド{2−(1,1,−ジメチル−2−{(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ}エチル)−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル}メチルエステル(日本化薬社製,商品名「KAYARAD R−604」)、N,N´,N“−トリス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−エチル}イソシアヌレート、キシリレンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス{7−(メタ)アクリロイルオキシ−2,5−ジオキサヘプチル}ベンゼン、ビス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)−メチル}ベンゼン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス{(メタ)アクリロイル−オキシエチル}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイル−オキシプロピル}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイル−ポリ(オキシエチレン)}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイル−ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルーオキシエチル}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−オキシプロピル}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−ポリ(オキシエチレン)}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイル−オキシエチル−オキシプロピル}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)}ビスフェノールA、ナフタレンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−オキシ}ナフタレン、9,9−フルオレンジオールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ)}フルオレン、9,9−ビス{3−フェニル−4−(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}フルオレン、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート(新中村化学製,商品名「NKオリゴ EA−6320,EA−7120,EA−7420」)、グリセリン−1,3−ジ(メタ)アクリレート、1−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシ−プロパン、2,6,10−トリヒドロキシ−4,8−ジオキサウンデカン−1,11−ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(日本化薬「カヤラッド HX−220」など)、ポリエステルジ(メタ)アクリレート(第一工業薬品「ニューフロンティア R−2201」など)、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート(共栄社化学「エポキシエステル 80−MFA」など)、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート(日本化薬「カヤラッド「R−604」」、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(東亞合成「アロニックス M−210」など)、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート(ナガセ化成「DA−721」)、エピクロルヒドリン変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート(ナガセ化成「DA−722」)、ビス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸、2,2−ビス{((メタ)アクリロイルオキシメチル)}プロピオン酸−3−スルホプロピルエステル ナトリウム塩、2,2−ビス{((メタ)アクリロイルオキシメチル)}プロピオン酸−3−スルホプロピルエステル カリウム塩、2,2−ビス{((メタ)アクリロイルオキシメチル)}酪酸−3−スルホプロピルエステル ナトリウム塩、2,2−ビス{((メタ)アクリロイルオキシメチル)}酪酸−3−スルホプロピルエステル カリウム塩などの2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物;
【0102】
1,2,3−トリス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−オキシ}プロパン、1,2,3−トリス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}プロパン、1,2,3−トリス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}プロパン、1,2,3−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}プロパン、1,2,3−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}エーテル、トリメチロールプロパン−トリス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}エーテル、トリメチロールプロパン−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、トリメチロールプロパン−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}エーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}エーテル、ペンタエリスリトール−テトラキス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}エーテル、ペンタエリスリトール−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ペンタエリスリトール−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}エーテル、ジトリメチロールプロパン−テトラキス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}エーテル、ジトリメチロールプロパン−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ジトリメチロールプロパン−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}エーテル、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(新中村化学工業NKエステル A−9530)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(新中村化学工業NKエステル A−DPH)、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}エーテル、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}エーテル、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}エーテル、EO(エチレンオキシド)変性グリセリントリ(メタ)アクリレート(第一工業製薬「ニューフロンティア GE−3A」など)、PO(プロピレンオキシド)変性グリセリントリ(メタ)アクリレート(日本化薬「カヤラッド GPO(プロピレンオキシド)−303」など)、エピクロルヒドリン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート(ナガセ化成「デナコールアクリレート DA−314」など)、EO(エチレンオキシド)変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(サートマー「SR−494」、新中村化学工業NKエステル ATM−35Eなど)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(日本化薬「カヤラッド DPCA−30」など)、トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}イソシアヌレート(新中村化学工業 A−9300−1CL)、トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸などの3つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる水酸基含有(メタ)アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、m−キシリレンジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トリレンジイソシアナート、ペンタメチレンジイソシアナートから選ばれるイソシアナート(ここで、イソシアナートは、トリメチロールプロパン付加体、イソシアヌレート体、ビウレット体、アロファネート体であってもうよい)との反応生成物、新中村化学工業「U−2PPA」、新中村化学工業「U−6HA」、新中村化学工業「U−6LPA」、新中村化学工業「UA−32P」、新中村化学工業「UA−NDP」、新中村化学工業「U−108A」、新中村化学工業「UA−511」、新中村化学工業「UA−4200」、新中村化学工業「UA−340P」、新中村化学工業「UA−160TM」、新中村化学工業「UA−6200」、新中村化学工業「U−108」、新中村化学工業「UA−122P」、新中村化学工業「UA−512」、新中村化学工業「UA−W2A」、新中村化学工業「UA−7000」、新中村化学工業「UA−7200」、東亞合成「M−1200」、東亞合成「M−1600」、東亞合成「M−1960」などのウレタン(メタ)アクリレート化合物;
東亞合成「アロニックス M−6200」,東亞合成「アロニックス M−6500」,東亞合成「アロニックス M−7100」,東亞合成「アロニックス M−8030」,東亞合成「アロニックス M−8530」,東亞合成「アロニックス M−8560」,東亞合成「アロニックス M−9050」,ダイセルUCB「Ebcryl80」,BASF「Laromer PE56F」、三菱レーヨン「ダイヤビーム UK−4003」、日立化成「ヒタロイド 7831」などのポリエステル(メタ)アクリレート化合物;などが挙げられる。
【0103】
少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用できる。
塗膜の親水性を向上させる観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、親水基を有していることが好ましく、中でもアニオン性親水基を有していることがより好ましい。さらに、上記親水基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン基等が挙げられ、この中でも、スルホン基が特に好ましい。
【0104】
親水基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物(以下、親水性(メタ)アクリレート(I)とも称する。)の一例としては、たとえば下記一般式(6)で示される化合物が挙げられる。
[X]
s[M1]
l[M2]
m (6)
上記一般式(6)中、sは1または2を表し、lは1または2を表し、mは0または1を表し、かつs=l+mを満たし、M1およびM2はそれぞれ独立して水素イオン、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、またはアルカリ土類金属イオンを表し、M1とM2とは互いに異なるものであり、Xは下記一般式(7)〜(10)で示される親水基を含む基である。
【0105】
上記アンモニウムイオンとしては、アンモニア、1級アミン、2級アミン、3級アミンによるアンモニウムイオンが挙げられ、これらの中では、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等によるアンモニウムイオンが好ましい。
【0106】
アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオンが挙げられ、アルカリ土類金属イオンとしては、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン等が挙げられる。
【0107】
水素イオン、アミン類によるアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、またはアルカリ土類金属イオンの中では、1価のアルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、またはルビジウムイオンであればさらに好ましい。
【0111】
【化40】
上記式(7)〜(10)中、JおよびJ’は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、Jが複数ある場合これらは同一でも異なっていてもよく、Rは、炭素数1〜600、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜20の2価の有機基を表し、n10は0または1を表す。
【0112】
上記Rとなる2価の有機基としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基等の2価の炭化水素基、2価のエーテル結合含有基、2価のエステル結合含有基などが挙げられる。
【0113】
上述したように、親水性(メタ)アクリレート(I)では親水基としてスルホン基を有することが好ましいためXとしては一般式(10)で示される基が好ましいが、一般式(10)で示される基の具体例としては、下記一般式(10−1)〜(10−3)で示される基が挙げられる。
【0116】
【化43】
上記式(10−1)〜(10−3)中、Jは水素原子またはメチル基を表し、R
101及びR
102は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、R
103は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、R
104およびR
105はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、tおよびuはそれぞれ1〜6の整数を表し、qは1〜10の整数を表し、tが2以上の場合、R
101同士、R
102同士は互いに同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、R
101同士、R
102同士は互いに同一でも異なっていてもよい。上記R
101及びR
102としては、合成の容易さから水素原子が好ましい。上記tおよびuとしては、合成の容易さから2〜4が好ましい。
【0117】
上記式(10−1)〜(10−3)で基Xが示される親水性(メタ)アクリレート(I)の中でも、2−スルホニルエチル(メタ)アクリレート、3−スルホニルプロピル(メタ)アクリレート、4−スルホニルブチル(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)プロピオン酸−3−スルホプロピルエステル、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)プロピオン酸−3−スルホプロピルエステル、およびそれらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0118】
また、基Xが上記式(10−1)〜(10−3)で示される親水性(メタ)アクリレート(I)の分子量は、好ましくは168〜18,000、より好ましくは180〜1,000、さらに好ましくは200〜500である。
なお、上記式(6)で示される親水性(メタ)アクリレート(I)は、1種単独であるいは2種以上組み合わせて使用できる。
【0119】
塗料が上記(メタ)アクリル系塗料を含む塗料を硬化させてプライマー上に設けられた(メタ)アクリル系塗膜は、プライマー層側(底部)から塗膜の表面(プライマー側と反対側の上部)に向かって、上記のアクリレートに由来するスルホン酸基等の親水基(典型的にはアニオン性親水基)の濃度が、高くなっている塗膜(親水基が傾斜した塗膜)であることが好ましい。このような塗膜の中でも、プライマー層とは反対側の表面における親水基(典型的にはアニオン性親水基)の濃度(Sa)が、該表面から膜厚1/2の深さにおける親水基(典型的にはアニオン性親水基)の濃度(Da)よりも高いことが好ましい。上記濃度比Sa/Daは、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましい。上限に特に制限はないが、通常は20以下である。なお、親水基の濃度は、塗膜を物理的に削りだしてサンプルを得、得られたサンプルの樹脂組成比を、例えば、FI−IR分光法またはTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)などにより測定することにより確認できる。
【0120】
このような親水基(典型的にはアニオン性親水基)が傾斜した塗膜傾斜塗膜は、種々の手段によって形成されるが、例えば、基Xが上記式(10)、好ましくは (10−1)〜(10−3)で示される親水性(メタ)アクリレート(I)と架橋重合性化合物である1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価(メタ)アクリレート(II)とを含む(メタ)アクリル系塗料を塗布し、必要に応じて該塗料に含まれる溶媒などを除去した後、加熱、放射線(例えば紫外線)などにより、塗料を重合することにより形成することができる。ただし多価(メタ)アクリレート(II)には、上記式(6)で示され、Xが式(9)、式(10−3)で示される化合物は含まれない。
【0121】
親水性(メタ)アクリレート(I):多価(メタ)アクリレート(II)の混合比率は、重量比で、例えば80:20〜0.1:99.9の範囲、好ましくは50:50〜0.2:99.8の範囲、より好ましくは30:70〜0.3:99.7の範囲、さらに好ましくは20:80〜0.4:99.6の範囲である。
【0122】
1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価(メタ)アクリレート(II)の中でも、1分子内に1個以上の水酸基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1分子内に1個以上のエーテル結合若しくはチオエーテル結合と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1分子内に1個以上の脂肪族または芳香族の環構造と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1分子内に1個以上のヘテロ環構造と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物等が好ましい。具体的な多価(メタ)アクリレート(II)としては、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物として上述した化合物のうち、2つまたは3つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、および該化合物として例示した化合物と同様なものが挙げられる。
【0123】
Xが上記式(10)、好ましくは式(10−1)〜(10−3)で表される式(6)で示される化合物と、多価(メタ)アクリレート(II)とが含まれる(メタ)アクリル系塗料は、本発明のプライマー上に塗布される塗料として特に好適に用いられる。
【0124】
プライマー層の上に、上記(メタ)アクリル系塗料を塗布して重合することにより、プライマー層の上に(メタ)アクリル系塗料が硬化した(メタ)アクリル系塗膜が形成される。(メタ)アクリル系塗料の重合方法は、特に制限はなく、例えば使用する開始剤などに応じて適切に選択できるが、通常、加熱、放射線、または加熱および放射線を用いて重合できる。
【0125】
熱により(メタ)アクリル系塗料を重合する場合、重合温度は、通常0〜300℃の範囲であるが、好ましくは室温〜200℃の範囲、より好ましくは40〜180℃の範囲であり、重合時間は、通常0.02〜200時間の範囲であるが、好ましくは0.1〜8.0時間の範囲、より好ましくは0.3〜4.0時間の範囲である。
【0126】
加熱により(メタ)アクリル系塗料を重合(硬化)する場合は、通常、熱重合開始剤が添加される。熱重合開始剤としては、例えば、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;
イソブチリルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;
トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、t−ヌチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;
α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,4,4−トリメチルペンニルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等のアルキルパーエステル;
ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)等のパーカボネート;等が挙げられる。
【0127】
これら熱重合開始剤の添加量は、(メタ)アクリル系塗料に含まれる少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計量に対して、通常0.01〜20重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。
【0128】
また、加熱により重合させる場合の雰囲気は、酸素による重合阻害を受ける可能性のある大気下よりも、不活性ガス雰囲気または真空下の方が好ましい傾向にある。
放射線により重合(硬化)する場合、使用する放射線としては、例えば、波長領域が0.0001〜800nm範囲のエネルギー線が挙げられる。上記放射線は、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線、可視光等に分類されているが、塗料の組成に応じて適切に選択して使用できる。これら放射線の中でも紫外線が好ましい。紫外線を用いる場合、紫外線の出力ピークは、好ましくは200〜450nmの範囲、より好ましくは210〜445nmの範囲、さらに好ましくは220〜430nm範囲、特に好ましくは230〜400nmの範囲である。上記出力ピークの範囲の紫外線を用いた場合には、重合時の黄変及び熱変形等の不具合が少なく、且つ紫外線吸収剤を添加した場合も比較的に短時間で重合を完結できる。また紫外線を用いる場合、紫外線ランプの種類としては、通常の有電極UV(紫外線)ランプよりも、赤外線が少なく照度が高い無電極UV(紫外線)ランプの方が好ましい。さらに、上記(メタ)アクリル系塗料に紫外線吸収剤またはヒンダードアミン系安定剤が含まれる場合には、出力特性で240〜270nmにピーク強度を持つ紫外線ランプを用いたほうが好ましい傾向にある。
【0129】
放射線、例えば紫外線により(メタ)アクリル系塗料を重合する場合は、紫外線ラジカル重合開始剤、紫外線カチオン重合開始剤などの紫外線重合開始剤が添加される。塗料が(メタ)アクリレー系塗料の場合、紫外線ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる傾向にある。
【0130】
紫外線ラジカル重合開始剤としては、例えば、イルガキュアー127(BASF社)、イルガキュアー651(BASF社)、イルガキュアー184(BASF社)、ダロキュアー1173(BASF社)、イルガキュアー500(BASF社)、イルガキュアー2959(BASF社)、イルガキュアー754(BASF社)、ダロキュアーMBF(BASF社)、イルガキュアー907(BASF社)、イルガキュアー369(BASF社)、イルガキュアー379(BASF社)、イルガキュアー819(BASF社)、イルガキュアー1800(BASF社)、イルガキュアー1870(BASF社)、イルガキュアーOX01(BASF社)、イルガキュアーOX02(BASF社)、イルガキュアーEHA(BASF社)、ダロキュアーTPO(BASF社)、ダロキュアー4265(BASF社)、ダロキュアー1173(BASF社)、エサキュアーワン(ランベルティー社)、エサキュアーKT55(ランベルティー社)、エサキュアーKTO46(ランベルティー社)などが挙げられる。
【0131】
紫外線カチオン重合開始剤としては、例えば、イルガキュアー784(BASF社)、イルガキュアー250(BASF社)、CYRAURE UV169990(ユニオンカーバイト社)、サイエンド SI−110(三菱化学社)、サイエンド SI−100L(三菱化学社)、サイエンド SI−80L(三菱化学社)、サイエンド SI−60L(三菱化学社)、アデカオプトマーSP−172(旭電化社)、アデカオプトマーSP−170(旭電化社)、アデカオプトマーSP−152(旭電化社)、アデカオプトマーSP−150(旭電化社)等が挙げられる。
【0132】
紫外線重合開始剤の添加量は、(メタ)アクリル系塗料に含まれる少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計量に対して、通常0.01〜20重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲、より好ましくは0.5〜5wt%の範囲である。
【0133】
上記(メタ)アクリル系塗料は、溶解性の調整、粘度調整、およびレベリング性の確保などの目的で、さらに必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤としては、例えば、ヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶剤;メチレンクロライド、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤;メタノール、エタノール、IPA(イソプロパノール)、n−ブタノール、メトキシエタノールなどのアルコール;アセトニトリル、DMF、DMSOなどの非プロトン性極性溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;水、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0134】
上記(メタ)アクリル系塗料には、さらにその他の添加剤が含まれていてもよい。上記添加剤としては、重合促進剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、触媒、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、ラジカル補足剤、酸化防止剤、重合禁止剤、色素、金属不活性化剤、貯蔵安定性向上剤、顔料、染料、香料、充填材(フィラー)、バインダーなどが挙げられる。上記添加剤は、本発明のプライマー組成物を硬化物からなるプライマー層との接着性、および(メタ)アクリル系塗料の性能を損なわない範囲で加えることができる。なお、(メタ)アクリル系塗料が硬化した塗膜の親水性や接着性を劣化させないという観点からは、(メタ)アクリル系塗料の中に親水性や接着性を劣化させるような添加材が含まれていない方が好ましい。例えば、コロイダルシリカ等の充填剤、開始剤、触媒、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)以外の添加剤は含まれない方が好ましい傾向にある。
【0135】
このようにして、基材表面の少なくとも一方側に設けられたプライマー層の上に、塗料が硬化した塗膜が形成され、基材の少なくとも一方の側に、プライマー層、塗膜、例えば(メタ)アクリル系塗膜の順に設けられた積層体が得られる。
【0136】
上記一連の操作により、本発明のプライマー組成物から形成されるプライマー層を介して、上記基材と塗料から形成される塗膜層、例えば(メタ)アクリル系塗料を硬化して得られた塗膜とが、強固に接着される。このように強固に塗膜が基材に接着される理由は、まず、本発明のプライマー組成物に含まれるポリオール(i)とポリイソシアナート(ii)からウレタン樹脂が形成されるとともに、これら成分が各種基材表面と反応もしくは強力な相互作用を形成することにより、プライマー層と基材が強固に接着し、プライマー層と塗膜とは、本発明のプライマー組成物に含まれる多価(メタ)アクリレート(iii)に由来する(メタ)アクリロイル基が、塗膜を形成する際に塗料に含まれる官能基などと反応または相互作用することにより、強固に接着するためと考えられる。特に、塗膜が(メタ)アクリル系塗料を重合することにより得られる(メタ)アクリル系塗膜の場合、塗膜を形成する際に塗料に含まれる(メタ)アクリロイル基とプライマー層に含まれる多価(メタ)アクリレート(iii)に由来する(メタ)アクリロイル基が反応して炭素−炭素共有結合を形成するため、プライマー層と塗膜層をより一層強固に接着するためと考えられる。
【0137】
このようにして、基材表面の少なくとも一方側に、プライマー組成物の硬化物からなるプライマー層、塗料を硬化等させて得られる塗膜の順に設けられた積層体、好ましくは基材表面の少なくとも一方側に、プライマー組成物の硬化物からなるプライマー層、(メタ)アクリル系塗膜の順に設けられた積層体が得られる。この積層体は、フィルム、シート、他の形状の成型体のいずれであってもよい。例えば、上記積層体は、基材の上にプライマー層と(メタ)アクリル系塗膜などが積層された被覆体として好ましく用いられる。
【0138】
また、本発明の積層体は、目的に応じて、プライマー層上の、塗料が硬化した塗膜表面をコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理、酸素ガスもしくは窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、酸化剤などによる酸化処理、酸またはアルカリなどによるエッチング処理などの化学的処理などで表面処理を施したり、ITOおよびシリカなどの無基材料を積層したり、他塗料をさらにコーティングして樹脂などの有基材料をさらに積層したりしてもよい。
【0139】
本発明により得られる積層体は、例えば、ボディー、ホイール、外装材、及び内装材などの自動車、船舶、航空機に代表される輸送機器用材;外壁材、内壁材、床材、家具材、浴室用材、洗面化粧室用材、シンク、換気扇、レンジ周辺部材などのキッチン用資材、トイレ用資材、配管用材、などの建築材及び住宅資材;高速道路などに設置される遮音板などの建設用材;衣服、布及び繊維などの衣料用材;窓材、鏡、光学フィルム、光ディスク、コンタクトレンズ、ゴーグル、反射フィルム、及び反射板などの透明材;眼鏡、サングラス、カメラ、レンズ、デンチャー等の歯科材料、反射防止フィルム、表示装置(タッチパネル、フラットパネル、電子ペーパーなどのディスプレイ装置)材料、投影装置材料、及びシールドなどの光学系材;ランプ用材及びライト用材などの照明用材;冷却および熱交換用のフィンなどの産業資材;電化製品用材、配線用材などの電気・電子材料;インクジェット記録版、印刷・印字用プライマーなどの印刷材料;化粧品容器などの日用品用材などの多くの用途に用いることができる。
【実施例】
【0140】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
本発明において、プライマー構成成分の評価は下記のようにして行った。
【0141】
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量MwはGPC(ポリスチレン換算)により分析した。
(測定条件)
* 装置: 昭和電工(株) Shodex GPC−101
* 検出器: RI−71S
* カラム: 昭和電工(株) GPC KF804L(Φ8.0mm×300mm)×3本
* 測定温度: 40℃
* 溶離液: THF(テトラヒドロフラン)
* 流速: 1.0ml/min.
なお、本発明において塗膜および積層体の物性評価は、下記のようにして行った。
【0142】
<水接触角の測定>
協和界面科学社製の水接触角測定装置CA−V型を用いて、1サンプルについて3箇所測定し、これら値の平均値を水接触角の値とした。
【0143】
<密着性の評価>
JISK5600−5−6に従い、カッターを用いて積層膜に縦横方向にそれぞれ2mm間隔で6本ずつ切れ込みを入れることで25マスの碁盤目を作り、ニチバン社のセロテープ(CT−24)を碁盤目が形成された積層膜に貼り、剥離試験により評価した。
【0144】
<アニオン性親水基の濃度比の測定>
図1に示す試料調製の通り、基材10の上に、プライマー層60、塗膜層20の順に形成してなるサンプルを斜めに切断し、飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を用いて、塗膜層20の外表面におけるスルホン酸濃度(Sa)と、プライマー層60に接する界面と前記外表面との中間地点におけるスルホン酸濃度(Da)とを測定し、その値から外気に接する膜の外表面と膜の内表面と外表面との中間地点のスルホン濃度比で表される塗膜の傾斜度(Sa/Da)を求めた。
【0145】
(分析装置と測定条件)
TOF−SIMS; ION・TOF社製 TOF−SIMS 5
1次イオン; Bi
3 2+ (加速電圧25kV)
測定面積; 300〜340μm角
測定には帯電補正用電子銃を使用
【0146】
(試料調製等)
図1に示す通りに、基材10の表面にプライマー層60、塗膜層20の順に各層が設けられたサンプルを切削方向30に向かって、精密斜め切削を行った後、10mm×10mm程度の大きさに切り出し、測定面にメッシュを当て、サンプルホルダーに固定し、外気と接する塗膜層表面40および膜の内部である塗膜層内部50(膜厚1/2の地点)で飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を用いてスルホン酸濃度を測定した。
【0147】
(評価)
評価は以下の計算式で行った。尚、各測定点のイオン濃度は、相対強度(トータル検出イオンに対する)を用いた。
傾斜度Sa/Da(スルホン酸濃度比,傾斜度)=塗膜層表面40でのスルホン酸濃度/塗膜層20の膜厚1/2の地点(塗膜層内部50の地点)でのスルホン酸濃度
【0148】
[製造例1]
((メタ)アクリル系塗料1の調製)
まず、3−スルホプロピルアクリレート・カリウム塩 1.4g、安定剤としてナイロスタッブ S−EED(クラリアント・ジャパン(株)) 0.1g、ペレックスTR(花王(株))0.1g、水0.6gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMと略す。) 120gを混合し溶液を作製した。得られた溶液に、紫外線ラジカル重合開始剤としてダロキュアー1173(BASF社) 3.0g、NKエステル「A−BPE−10」(新中村化学工業(株)) 7.9g、NKオリゴ「EA−5721」(新中村化学工業(株)) 15.7g 、およびNKオリゴ「U−15HA」(新中村化学工業(株)) 54.9gを加えて混合し、固形分NV=40wt%の均一な「(メタ)アクリル系塗料1」を得た。
【0149】
[製造例2]
((メタ)アクリル系塗料2の調製)
まず、3−スルホプロピルアクリレート・カリウム塩 2.5g、2,2,−ビス(アクリロイルオキシメチル)プロピオン酸−3−スルホプロピルエステル・カリウム塩 1.0g、安定剤としてナイロスタッブ S−EED(クラリアント・ジャパン(株)) 0.1g、1,2,3−トリス(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)プロパン(以下GHAと略す。) 19.3g、およびメチルセルソルブ(以下EGMと略す。)150.0gを混合し溶液を作製した。得られた溶液に、紫外線ラジカル重合開始剤としてダロキュア1173(BASF社) 3.0g、熱重合開始剤としてパーロイルTCP(日油(株)) 1.0g、NKエステル「A−BPE−10」 (新中村化学工業(株))38.6g、およびNKオリゴ「UA−1100H」(新中村化学工業(株)) 38.6gを加えて、混合し、固形分濃度40wt%の均一な「(メタ)アクリル系塗料2」を得た。
【0150】
[実施例1]
(プライマー溶液1の製造)
イソフタル酸330.69g、セバシン酸402.56g、ネオペンチオルグルコール359.31g、およびエチレングルコール71.38g、酢酸亜鉛0.3gを窒素気流下180〜220℃でエステル化反応させ、所定量の水およびグリコールを留出させ、ポリエステルポリオール(数平均分子量:Mn=2500、水酸基含有量0.80 mmol/g)(以下、プレポリマー1と称する。)を得た。得られたプレポリマー1の 138.1g、ヘキサメチレンジイソシアナート7.3g、酢酸エチル146.2g、触媒としてジオクチル錫ジラウリレート0.1gの混合液を70℃で3時間反応させた後、ジエチレングリコール0.65gを加えてさらに30分反応させることにより、ポリオール(i)であるポリエステルポリウレタンポリオール(以下、ポリオール1と称する。)を含む溶液(固形分濃度50%、重量平均分子量:Mw=26000、溶液中の水酸基含有量 0.12mmol/g)100gを得た。得られたポリオール1を含む溶液100g、ポリイソシアナート(ii)として1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート付加体(以下、ポリイソシアナート1と称する。)(イソシアナト基含有量4.93mmol/g)4.0g、および多価(メタ)アクリレート(iii)としてDPHA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートの混合物、水酸基含有量0.64 mmol/g) 10.0g、ウレタン化反応の触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.4g、溶剤として酢酸エチル75.2gとを混合し、固形分濃度34.0wt%の均一な溶液(以下、プライマー溶液1と称する。)を得た。
【0151】
(基材の選択)
ポリカーボネート(銘柄 PC1600:タキロン社製)の板(厚み:2mm、大きさ100mm×100mm)をそのまま使用した。
【0152】
(塗布試験および評価結果)
ポリカーボネート板の表面に、プライマー溶液1をバーコーター#5で塗布し、100℃のオーブンで30分間加熱することで膜厚約2μmのプライマー層を設けた。
【0153】
得られたプライマー層を有するポリカーボネート板上に、製造例1で得た(メタ)アクリル系塗料1をバーコーター#16で塗布し、70℃の温風乾燥機で3分間保持して脱溶剤した後、UVコンベアー(無電極放電ランプ Hバルブ,照度500mW/cm
2:フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製)の中を、コンベアー速度10m/min(積算光量170mJ/cm
2)で通過させ、プライマー層上に、(メタ)アクリル系塗膜を設けた。得られた(メタ)アクリル系塗膜の、プライマー層に接する塗膜底部または塗膜の表面から膜厚1/2の地点のスルホン酸基の濃度と比較して、塗膜上部(表面)の濃度は高くなっており、スルホン酸基の濃度が塗膜表面に向かって高くなっているアニオン性親水基が傾斜している塗膜が得られていた。この(メタ)アクリル系塗膜の膜厚は約9μmでタックもなく、硬く光沢に優れた積層体が得られた。得られた積層体の表面を水洗し、乾燥した後の表面の水接触角は5〜10°であった。
得られた積層体に対し、上述の密着性試験を実施した。結果を表1に掲載する。
【0154】
[実施例2]
表1の記載に従って、多価(メタ)アクリレート(iii)であるDPHAの添加量および溶剤である酢酸エチルの添加量を変更する以外は実施例1と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表1に掲載する。
【0155】
[比較例1]
表1の記載に従って、多価(メタ)アクリレート(iii)であるDPHAを添加せずに、溶剤である酢酸エチルの添加量を変更する以外は実施例1と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表1に掲載する。
【0156】
【表1】
【0157】
[実施例3]
(プライマー溶液2の製造)
実施例1で作製したプレポリマー1 138.1g、イソホロンジイソシアナート 8.1g、酢酸エチル 147.1g、触媒としてジオクチル錫ジラウリレート 0.2gの混合液を80℃で4時間反応させた後、ジエチレングリコール0.65gを加えてさらに30分反応させることにより、ポリオール(i)であるポリエステルポリウレタンポリオール(以下、ポリオール2と称する。)を含む溶液(固形分濃度50%、重量平均分子量:Mw=18000、溶液中の水酸基含有量0.17mmol/g)100gを得た。得られたポリオール2を含む溶液 100g、ポリイソシアナート(ii)であるポリイソシアナート1 8.0g、および多価(メタ)アクリレート(iii)成分であるDPHA 20.0g、ウレタン化反応の触媒であるジオクチル錫ジラウレート 0.4g、溶剤である酢酸エチル 96.2gを混合し、固形分濃度30wt%の均一な溶液(以下、プライマー溶液2と称する。)を得た。
【0158】
(塗布試験および評価結果)
実施例1と同様に、ポリカーボネート板上にプライマー層および(メタ)アクリル系塗膜を設けた積層体を作製し、試験を行った。結果を表2に掲載する。
【0159】
[実施例4]
表2の記載に従って、多価(メタ)アクリレート(iii)であるDPHAの添加量および溶剤である酢酸エチルの添加量を変更する以外は、実施例3と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表2に掲載する。
【0160】
[比較例2]
表2の記載に従って、多価(メタ)アクリレート(iii)であるDPHAを添加せずに、溶剤である酢酸エチルの添加量を変更する以外は実施例3と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表2に掲載する。
【0161】
【表2】
【0162】
[実施例5]
(プライマー溶液3の製造)
実施例1で作製したプレポリマー1 138.1g、イソホロンジイソシアナート 9.6g、酢酸エチル 148.6g、触媒としてジオクチル錫ジラウリレート 0.2gの混合液を80℃で4時間反応させた後、ジエチレングリコール0.65gを加えてさらに30分反応させることにより、ポリオール(i)であるポリエステルポリウレタンポリオール(以下、ポリオール3と称する。)を含む溶液(固形分濃度50%、重量平均分子量:Mw=18000、溶液中の水酸基含有量0.12mmol/g)88.8gを得た。ポリオール3を含む溶液88.8g、ポリイソシアナート(ii)であるm−キシリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加体(以下、ポリイソシアナート2と称する。)を含む溶液(固形分75%、溶液中のイソシアナト基含有量2.73mmol/g、) 11.3g、および多価(メタ)アクリレート(iii)成分であるPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレートとテトラアクリレートの混合物、水酸基含有量2.01mmol/g) 20.0g、溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PMAcと称する。) 121.7g、および酢酸n-ブチル 486.9gを混合し、固形分濃度10wt%の均一な溶液(以下、プライマー溶液3と称する。)を得た。
【0163】
(基材の選択および洗浄)
不飽和ポリエステル樹脂、硬化剤、増粘剤、内部離型剤、および充填材などを混合した樹脂ペーストを加熱成型した日東紡績(株)製のSMC(Sheet Molding Compound)板(厚み:5mm、大きさ100mm×100mm)を基材として使用した。SMC板は使用前にその表面を、イソプロパノールを含ませたコットン・バージンウエスで拭き取り洗浄した。
【0164】
(塗布試験および評価結果)
洗浄したSMC板表面に、プライマー溶液3をスプレーガンで塗布し、120℃のオーブンで20分間加熱し5μmのプライマー層を形成させた。
【0165】
得られたプライマー層を有するSMC板をオーブンで60℃に加熱し、加熱されたSMC板のプライマー層の上に、製造例2で得た(メタ)アクリル系塗料2をスプレーガンで塗布し、60℃の温風乾燥機で5分間保持して脱溶剤した後、UVコンベアー(無電極放電ランプ Hバルブ,照度500mW/cm
2:フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製)の中を、コンベアー速度10m/min(積算光量170mJ/cm
2)で通過させ、プライマー層上に、(メタ)アクリル系塗膜を設けた。得られた(メタ)アクリル系塗膜の、プライマー層に接する塗膜底部または塗膜の表面から膜厚1/2の地点のスルホン酸基の濃度と比較して、塗膜上部(表面)の濃度は高くなっており、スルホン酸基の濃度が塗膜表面に向かって高くなっているアニオン性親水基が傾斜している塗膜が得られていた。この(メタ)アクリル系塗膜の膜厚は約20μmでタックもなく、硬く光沢に優れた積層体が得られた。得られた積層体の表面を水洗し、乾燥した後の表面の水接触角は5〜10°であった。なお、積層体の最上層(メタ)アクリル系塗膜のスルホン酸の傾斜度(Sa/Da=塗膜層表面40でのスルホン酸濃度/塗膜層20の膜厚1/2の地点)は約2であった。結果を表3に掲載する。
【0166】
[実施例6〜8]
表3の記載に従って、多価(メタ)アクリレート(iii)であるPETAの添加量と溶剤の添加量とを変更する以外は、実施例5と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表3に掲載する。
【0167】
[比較例3]
表3の記載に従って、多価(メタ)アクリレート(iii)であるPETAを添加せずに、溶剤である酢酸エチルの添加量を変更する以外は実施例5と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表3に掲載する。
【0168】
【表3】
【0169】
【化44】
【0170】
[実施例9〜11]
表4の記載に従って、ポリイソシアナート(ii)をポリイソシアナート2からヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート体(以下、ポリイソシアナート3と称する。)(イソシアナト基含有量5.39mmol/g)に、多価(メタ)アクリレート(iii)をPETAから1,2,3−トリス(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシ-プロピルオキシ)プロパン(以下、GHAと称する。)(水酸基含有量6.30mmol/g)に変更し、さらにウレタン化反応の触媒としてテトラオクチル錫を添加する以外は、実施例5と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験した。結果を表4に掲載する。
【0171】
[比較例4]
表4の記載に従って、多価(メタ)アクリレート(iii)であるPETAを添加せずに、溶剤である酢酸エチルの添加量を変更する以外は実施例5と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表4に掲載する。
【0172】
【表4】
【0173】
【化45】
【0174】
[実施例12]
ポリオール(i)であるポリオール3 20.0g、ポリイソシアナート(ii)であるポリイソシアナート3 2.8g、および多価(メタ)アクリレート(iii)であるトリグリセリン−1,11−ジアクリレート(以下TGDAと称する。)(水酸基含有量8.62mmol/g) 2.0g、溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 20.0gと酢酸ブチル 104.0g、およびウレタン化触媒であるテトラオクチル錫 0.1gを混合し、固形分濃度10wt%の均一な溶液(以下、プライマー溶液4と称する。)を得た。プライマー溶液3を、得られたプライマー溶液4に変更する以外は、実施例5と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表5に掲載する。
【0175】
〔実施例13〜18、〕
表5の記載に従って、多価(メタ)アクリレート(iii)の種類を変更する以外は実施例12と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表5に掲載する。
【0176】
[比較例5]
表5の記載に従って、多価(メタ)アクリレート(iii)であるGDAをモノ(メタ)アクリレートである4−HBAに変更する以外は、実施例12と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表5に掲載する。比較例5の結果より、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物では、多価(メタ)アクリレート(iii)を用いた場合と比較して、十分な効果が得られないことが分かった。
【0177】
【表5】
【0178】
【化46】
【0179】
[実施例19]
塗料を(メタ)アクリル系塗料2からモメンティブ社のハードコート剤「UVHC1101」30.0gおよび溶剤であるメトキシエタノール70.0gからなる塗料(固形分濃度30wt%、以下(メタ)アクリル系塗料3と称する。)に変更する以外は、実施例12と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表6に掲載する。
【0180】
【表6】
【0181】
[実施例20〜23]
表7の記載に従って、基材をSMC板から他の基材に変更する以外は、実施例12と同様にプライマー組成物の作製、積層体の作製、および試験を行った。結果を表7に掲載する。
【0182】
【表7】