特許第6371759号(P6371759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371759
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
   F16J15/18 A
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-508359(P2015-508359)
(86)(22)【出願日】2014年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2014057295
(87)【国際公開番号】WO2014156819
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-65526(P2013-65526)
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(72)【発明者】
【氏名】八子 長人
(72)【発明者】
【氏名】品田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】深田 純
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−146855(JP,U)
【文献】 特開平09−159023(JP,A)
【文献】 実開昭54−131649(JP,U)
【文献】 特開平11−037293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の外側部材の内周面に対向する環状の内側部材の外周面に設けられたシールリング溝に組合せシールリングを装着して、前記外側部材と前記内側部材の間のオイルをシールするシール装置であって、前記組合せシールリングは、外周面が外側部材の内周面と摺接するエンドレスタイプの樹脂リングと、前記樹脂リングの内周面に形成された溝に配置され、前記樹脂リングを外周側に押圧するコイルエキスパンダを含み、前記組合せシールリングの内周側が前記シールリング溝の溝底と離間しており、前記オイルが加圧されたとき、前記コイルエキスパンダが配置される前記樹脂リングの側面が前記シールリング溝の一側壁にのみ接していることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシール装置において、前記樹脂リングがフッ素系の樹脂材料からなることを特徴とするシール装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシール装置において、前記樹脂リングの内径が前記内側部材の径の95〜99.5%の範囲にあることを特徴とするシール装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のシール装置において、前記コイルエキスパンダの全体が前記樹脂リングの前記溝に収容されることを特徴とするシール装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のシール装置において、前記コイルエキスパンダが前記樹脂リングの前記溝から突出しないことを特徴とするシール装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のシール装置において、前記樹脂リングの前記溝の開口幅が前記樹脂リングの幅h1の60%以下であることを特徴とするシール装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のシール装置において、前記樹脂リングの内周面に形成された前記溝の断面が半円形状からなる溝底を有するU字形状であることを特徴とするシール装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のシール装置において、前記樹脂リングの内周面に形成された前記溝の断面が略矩形形状であることを特徴とするシール装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のシール装置において、前記樹脂リングの内周面に形成された前記溝の断面が前記樹脂リングの内周面側に溝幅の拡がる略台形形状であることを特徴とするシール装置。
【請求項10】
環状の外側部材の内周面に対向する環状の内側部材の外周面に設けられたシールリング溝に組合せシールリングを装着して、前記外側部材と前記内側部材の間のオイルをシールするシール装置であって、前記組合せシールリングは、外周面が外側部材の内周面と摺接するエンドレスタイプの樹脂リングと、前記樹脂リングの内周面に形成された溝に配置され、前記樹脂リングを外周側に押圧するコイルエキスパンダを含み、前記シール装置が-30℃から120℃の温度の熱履歴を受けても前記シールリング溝の側壁とのシールを損なわないように、前記樹脂リングの前記溝の開口幅が前記樹脂リングの幅h1の60%以下であり、前記組合せシールリングの内周側が前記シールリング溝の溝底と離間したことを特徴とするシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式の無段変速機(Continuously Variable Transmission、CVT)やコンプレッサー等に用いられる往復摺動するシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、CVTにおいては、一対のプーリーを駆動側及び被駆動側の回転軸に装着し、両プーリー間にエンドレスベルトを架け渡して両回転軸同士を連結する。駆動側プーリーは可動シーブ及び固定シーブを有し、被駆動側プーリーも可動シーブ及び固定シーブを有している。また、両プーリーの可動シーブ側には駆動側オイル室及び被駆動側オイル室が設けられており、各オイル室に供給された作動圧によって両プーリーの可動シーブが軸方向に移動し、すなわち、両プーリーの溝幅が可変され、変速制御が行われる。シールリングは、環状の内側部材(例えば、オイル室を可動シーブの背面側で形成する隔壁部材)の外周面に設けられたシールリング溝に装着され、オイルポンプから供給されるオイルの圧力をシールリングの側面と内周面で受け、反対側の側面と外周面とでシールリング溝の側面と外側部材(例えば、可動シーブの筒状部)の内周面とをシールする機能を有している。内側部材と外側部材はプーリーの溝幅を変えるためシールリングを介して摺動する。すなわち、シールリングはその外周面が外側部材の内周面に対し軸方向に摺動する。
【0003】
シールリングのシール性に関しては、エンジンの高性能化に対応した耐久性や信頼性の向上、さらには省エネを目的としたオイルポンプのコンパクト化や軽量化、より精密な電子制御実現のためのオイル漏れ量の安定など厳しい仕様が要求されてきている。極論をいえば、エンジンの停止したオイルポンプの作動しない状況、すなわち、シールリングにオイル圧がかからない状況においても、オイル漏れのないことが要求されている。
【0004】
オイル漏れ量をゼロにするためには、例えば、図8に示すように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の合口のないエンドレスタイプのシールリングと合成ゴム製のO-リングを組合せれば、オイル圧のかからない状況においてもオイル漏れ量をゼロにすることができる。
【0005】
しかし、上記のシールリングは、CVTの組立工程における効率という観点で次のような難点が多い。O-リングと、PTFEシールリングの両方を別々に内側部材の端部から拡径して溝に組付けるという作業を2度必要とし、また、外側部材への挿入前のPTFEシールリングの縮径が、内側のO-リングの存在により容易ではなく、組立工程において効率が著しく低下する。
【0006】
合口のないシールリングの内側部材の溝への組付け性を改善する試みは、特開2008−190643及び特開2008−190650において行われている。特開2008−190643には、エンドレスタイプのシールリングの内周側に軸方向へ斜めに延びる複数の突条を設け、これらの突条の先端をシール溝の底に接触させる構成が開示され、シール溝の溝縁を乗り越えさせる際に各突条を周方向に倒すように変形させて、シール溝への組み付けを容易にできるとしている。また、特開2008−190650には、外周部が樹脂材料で形成され、内周部が弾性材料で形成されたシールリングにおいて、樹脂材料で形成された外周部を薄肉とするように、弾性材料で形成された内周部を外周部の内側に食い込ませた構成が開示され、この構成により、変形抵抗の大きい外周部の断面積を小さくし、変形しやすい弾性材料で形成された内周部の断面積を大きくして、組み付け性を改善するとしている。
【0007】
しかしながら、特開2008−190643のシールリングも特開2008−190650のシールリングもシールリングの内周面をシール溝の底に接触させる設計であるため、内側部材の溝への組付けがたとえ容易となっても、外側部材に挿入する際の組付け抵抗が大きく、特殊な治具を考案する必要があり、まだまだ課題の多いのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、CVTの組立工程の効率を低下させることなく組付けを可能とするシールリングの構造を有し、且つ、エンジンの停止したオイルポンプの作動しない状況、すなわち、シールリングにオイル圧がかからない状況においても、オイル漏れのないシール装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、基本的に、オイル漏れ量ゼロを目指し、合口のないエンドレスタイプの樹脂リングを使用する。従って、組付け性と外側部材とのシール性が問題となるのであるが、本発明者達は、鋭意研究の結果、シールリングをシールリング溝の溝底から離間させ、且つ、シールリングに張力を付与するためコイルエキスパンダを使用することにより効率の良い組み付けを可能とし、シールリングにオイル圧のかからない状況においても、オイル漏れのないシール装置を提供できることに想到した。
【0010】
すなわち、本発明のシール装置は、環状の外側部材の内周面に対向する環状の内側部材の外周面に設けられたシールリング溝に組合せシールリングを装着して、前記外側部材と前記内側部材の間のオイルをシールするシール装置であって、前記組合せシールリングは、外周面が外側部材の内周面と摺接するエンドレスタイプの樹脂リングと、前記樹脂リングの内周面に形成された溝に配置され、前記樹脂リングを外周側に押圧するコイルエキスパンダを含み、前記組合せシールリングの内周側が前記シールリング溝の溝底と離間しており、前記オイルが加圧されたとき、前記コイルエキスパンダが配置される前記樹脂リングの側面が前記シールリング溝の一側壁にのみ接していることを特徴とする。前記樹脂リングはフッ素系の樹脂材料からなることが好ましい。また、前記樹脂リングの内径は前記内側部材の径の95〜99.5%の範囲にあることが好ましい。
【0011】
さらに、前記コイルエキスパンダの全体が前記樹脂リングの前記溝に収容されることが好ましい。言い換えれば、前記コイルエキスパンダが前記樹脂リングの前記溝から突出しないことが好ましい。
【0012】
さらに、前記樹脂リングの前記溝の開口幅は前記樹脂リングの幅h1の60%以下であることが好ましい。
【0013】
また、前記樹脂リングの内周面に形成された前記溝の断面は、半円形状からなる溝底を有するU字形状、略矩形形状、又は前記樹脂リングの内周面側に溝幅の拡がる略台形形状であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のシール装置は、環状の外側部材の内周面に対向する環状の内側部材の外周面に設けられたシールリング溝に組合せシールリングを装着して、前記外側部材と前記内側部材の間のオイルをシールするシール装置であって、前記組合せシールリングは、外周面が外側部材の内周面と摺接するエンドレスタイプの樹脂リングと、前記樹脂リングの内周面に形成された溝に配置され、前記樹脂リングを外周側に押圧するコイルエキスパンダを含み、前記シール装置が-30℃から120℃の温度の熱履歴を受けても前記シールリング溝の側壁とのシールを損なわないように、前記樹脂リングの前記溝の開口幅が前記樹脂リングの幅h1の60%以下であり、前記組合せシールリングの内周側が前記シールリング溝の溝底と離間したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシール装置は、合口のないエンドレスタイプの樹脂リングを使用するが、その内周側がシールリング溝の溝底と離間しているため、シールリング溝に装着する際に拡径量を低く抑えることができ装着が容易になる。また、樹脂リングを外周側に押圧するコイルエキスパンダを樹脂リング内周面に形成された溝に配置することにより、樹脂リングにオイル圧がかからない状況においてもオイル漏れを回避することが可能となる。さらに、コイルエキスパンダが樹脂リングの溝内に完全に収容されれば、外周部材に挿入する際の組付け抵抗も殆どなく、手押しにより簡単に挿入することができる。もちろん、樹脂リングのシールリング溝への装着も、コイルエキスパンダを樹脂リングの溝にセットした状態で行えば、1度の組み付け作業で行うことが可能となり、CVT組立工程の効率化に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のシール装置の一例を示す断面図である。
図2】本発明の組合せシールリングの一例を示す断面図である。
図3】本発明の組合せシールリングの別の一例を示す断面図である。
図4】本発明の組合せシールリングのさらに別の一例を示す断面図である。
図5】本発明の組合せシールリングのさらに別の一例を示す断面図である。
図6】本発明の組合せシールリングのさらに別の一例を示す断面図である。
図7】オイル漏れ試験機の概念図である。
図8】合口のないPTFEシールリングと合成ゴム性のO-リングを組合せた従来のシール装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明のシール装置の一実施態様を示す断面図である。組合せシールリングは、摺動性の良好な合口のないエンドレスタイプの樹脂リング1と、樹脂リング1の内周面に形成された溝6に配置され樹脂リング1を外周側に押圧するコイルエキスパンダ2により構成され、内側部材3のシールリング溝5に装着されている。溝6は断面が半円形状からなる溝底を有するU字形状をしており、樹脂リング1の外周面12は外側部材4の内周面13に接し、樹脂リング1の側面10はシールリング溝5の側壁11に接している。図示していないオイルポンプが作動し、オイル14が加圧されたときは、樹脂リング1はシールリング溝の側壁11と外側部材4の内周面13に押圧され、十分なシール性を示す。オイルポンプの作動が止まっても、樹脂リング1の外周面12と側面10はそれぞれ外側部材4の内周面13とシールリング溝5の側壁11に接した状態で留まり、コイルエキスパンダ2の作用により樹脂リング1は外側部材4の内周面13に押圧され続ける。このコイルエキスパンダ2の押圧作用により、本発明のシール装置は、オイル圧がかからない状況においてもオイル漏れを回避することが可能となる。また、樹脂リング1の内周面9は内側部材3のシールリング溝5の溝底7と離間しており、コイルエキスパンダ2を含む組合せシールリングとしても、その内周側はシールリング溝5の溝底7と離間している。樹脂リング1やコイルエキスパンダ2のシールリング溝5への装着の際の樹脂リング1やコイルエキスパンダ2の拡径の程度を小さくでき、良好な装着性を確保できる。もちろん、組合せシールリングを装着した内側部材3を外側部材4に組付ける際も、組合せシールリングの内周側とシールリング溝5の溝底7とが離間しているため、組合せシールリングの縮径が容易となり、良好な組付け性を示すことが可能となる。
【0018】
本発明に用いる樹脂リングには、優れた摺動特性、耐熱性等を有するPTFEやポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などをカーボン又は炭素繊維等で強化したいわゆるエンジニアリングプラスチックが好ましく用いられる。特に、フッ素系の樹脂材料は室温で数%の弾性変形を示すので、合口のないエンドレスタイプのリングの拡径には好ましく使用できる。例えば、樹脂リングの内径(φd)が内側部材の径(φD)の95%以上の範囲にあれば、樹脂リングを塑性変形することなく拡径することが可能となり好ましい。但し、シールリング溝の側壁とのシール性を考慮すると99.5%以下であることが好ましい。このようなフッ素系の樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(2フッ化)(PVDF)等があげられる。
【0019】
本発明の組合せシールリングに使用するコイルエキスパンダには、JIS SWPA77の炭素鋼線、SWOSC-Vのシリコンクロム鋼オイルテンパ線や、SUS304のオーステナイト系ステンレス鋼線などが好ましく用いられる。組合せシールリングとして所定の張力が適切に作用するように全長を調整することが好ましい。また、コイルエキスパンダを樹脂リングの内周面の溝に収納したときに、完全に収納されるようにすること、すなわち、コイルエキスパンダが樹脂リングの溝から突出しないような大きさとすることが好ましい。そのような構成とすることにより、外周部材に挿入する際の組付け抵抗も殆どなく、手押しにより簡単に挿入することができ、また、内周部材のシールリング溝への装着の際も、コイルエキスパンダを樹脂リングの溝にセットした状態で行えば、1度の組付け作業で行うことが可能となるからである。もちろん、図2に示すように、コイルエキスパンダが樹脂リングの溝から一部突出していたとしても、コイルエキスパンダとシールリング溝の溝底との間隔が一定量離間していれば、組付け性を損なうものではない。
【0020】
CVT用のシールリングは、CVTオイルの温度に依存して熱履歴を受ける。寒冷地の使用や突発的な温度上昇等を考慮すると、-30℃から120℃の温度を経験する。フッ素系の樹脂リングがそのような熱履歴を受けた場合、樹脂リングの溝の側壁の厚さが薄いと熱変形の影響が出てシールリング溝側壁とのシールを損なう虞が生じる。その観点では、樹脂リングの溝の開口幅(w)は樹脂リングの幅(h1)の60%以下であることが好ましい。50%以下であればより好ましく、45%以下であればさらに好ましい。もちろん、図3に示すように、開口幅(w)が樹脂リングの幅(h1)の60%を超えていても極端な熱履歴を経験しなければ良好に使用できる。
【0021】
樹脂リングの摺動は、その外周面が外側部材の内周面に対し、軸方向に摺動する。摺動部の当たり面を確保し、且つ摩擦力を小さくするには、樹脂リングの断面の外周が円弧状であることが好ましい。外周が円弧状を示す実施態様を図4に示す。
【0022】
また、樹脂リングの内周面に形成され、コイルエキスパンダを収納する溝6は、その断面が半円形状からなる溝底を有するU字系状であることが好ましいが、図5に示されるような略矩形形状でも、図6に示されるような内周面側に溝幅の拡がる略台形形状でもよい。本発明において、溝形状は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1
カーボンを複合したPTFE樹脂を用いて、合口のないエンドレスタイプの樹脂リングを作製した。ここで、樹脂リングの外径(呼び径)は114.5 mm、厚さ(径方向幅a1)は2.3 mm、幅(軸方向幅h1)は2.6 mmとした。得られた樹脂リングに、図1に示すような、断面が半径0.6 mmの半円形状からなる溝底を有するU字形状の溝を形成した。また、線径0.4 mmのSWOSC-V材を用いて、巻径φ1.1 mm、自由状態のピッチ1.1 mm、樹脂リングと組合せた時の張力10 Nのコイルエキスパンダを製作した。
【0024】
漏れ試験
漏れ試験は、図7にその概略を示す漏れ試験機を用いて行った。作製した組合せシールリングは、内側部材3に設けられたシールリング溝5に装着され、外側部材4に挿入される。漏れ試験器の内側部材3の径はφ113.4 mm、外側部材4の内径はφ114.7 mm、シールリング溝の溝底径は φ107.9 mm、溝幅は2.8 mmである。試験は、まず、バルブ15を開けてオイルを導入、オイル室の油圧を1 MPaまで上げ、バルブ17を開けてエアーを抜いて再び閉じた後、バルブ15を閉じて内部を密閉し、その後バルブ17を開けて大気圧(0 MPa)まで圧力を下げて、オイル排出口19からの漏れ量を測定した。続いて、120℃で一定時間保持し、その後-30℃まで下げる熱履歴を与えた後、同様に漏れ量を測定した。熱履歴は、バルブ15と16を開け、オイルを循環しながら昇温又は降温することによって与えた。実施例1の組合せシールリングは、熱履歴前も熱履歴後も漏れは全く生じなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8