(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
本発明の一実施形態に係る歯付ベルト及びこれを用いたベルト伝動装置について以下に説明する。
【0016】
−歯付ベルトの構成−
図1(a)、(b)は、それぞれ本発明の一実施形態に係る歯付ベルトを示す断面図及び斜視図であり、
図1(c)は、当該歯付ベルトにおいて、背部を透視して心体の配置を示す平面図である。
図1(a)は、歯付ベルトの長手方向(周方向)に沿ったベルト厚み方向の断面を示している。
【0017】
図1(a)〜(c)に示すように、本実施形態に係る歯付ベルト1は、例えば無端状の背部5と、背部5の一方の面上に、周方向(歯付ベルト1及び背部5の長手方向)に所定の間隔を開けて複数設けられた歯部7と、背部5に埋め込まれ、伸縮性を有する心体3とを備えている。
【0018】
背部5及び歯部7は、同一又は相異なる種類のゴムで構成されている。背部5及び歯部7の構成材料は、例えば、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ポリウレタン(ミラブルウレタンを含む)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)シリコーンゴム、及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)のうちから選ばれた少なくとも1種であってもよい。なお、糊状に溶かされたゴム材料と、且つゴムシートとを用いて成形することができる材料であれば、ベルト材料はこれらに限られない。
【0019】
心体3は、ベルトの周方向に沿って配置され、輪状となっている。心体3は、背部5内において、実質的にストレートに延びているが、ベルト厚み方向に若干波打って埋め込まれていてもよい。歯付ベルト1において、心体3の、ベルト厚み方向における、最も歯部7に近い位置と最もベルト背面に近い位置との差(すなわち、波打ち量)は0.5mm以内に収まっている。
【0020】
また、本実施形態の歯付ベルト1は、ばね定数が0.5N(0.5%・10mm幅)以上250N(0.5%・10mm幅)以下となっていることが好ましい。
【0021】
また、心体3は、複数の歯部7の間に位置する歯底部9において、歯部7の構成材料であるゴムに覆われており、露出していない。歯底部9は、実質的に平坦面又は曲面を有している。
【0022】
なお、歯付ベルト1の上記のばね定数は、
図2に示すような測定装置を用いた引張り試験によって求められる。具体的には、直径が共に7mm程度の第1のプーリ(固定プーリ)4と第2のプーリ(移動プーリ)6との間に幅10mmの歯付ベルト2を巻き掛けて下方に荷重をかけ、0.5%伸び時の荷重(N)をロードセル8を用いて測定することにより、ばね定数が求められる。
【0023】
従来の歯付ベルトでは、ベルト及びプーリの歯ピッチを一定に保つ必要があるため、ガラス繊維やアラミド繊維等の高弾性率の心線が用いられている。これらの心線材料のばね定数は、1000N/(100%・30mm幅)以上となっている。
【0024】
これに対し、本実施形態の歯付ベルト1における心体3は、少なくともベルトの周方向に伸縮性を有する編布又は不織布で構成されていることが好ましい。特に、心体3を構成する編布又は不織布の伸縮性は、ベルト走行方向における伸張のばね定数が50N/(100%・30mm幅)以下であることが好ましい。当該編布又は不織布のばね定数が0.1N(100%・30mm幅)以上50N/(100%・30mm幅)以下であればより好ましい。
【0025】
なお、編布又は不織布の上記のばね定数は、
図2に示すような測定装置を用いた引張り試験によって求められる。具体的には、直径が共に7mm程度の第1のプーリ4と第2のプーリ6との間に幅30mmの編布を巻き掛けて下方に荷重をかけ、100%伸び時の荷重(N)をロードセル8を用いて測定することにより、ばね定数が求められる。不織布の場合も同様の方法でばね定数が測定される。
【0026】
心体3が編布で構成されている場合、当該編布は、ウーリーナイロン糸、ポリウレタン糸とポリエステル糸とを用いたカバーリング糸及びポリウレタン糸のうち少なくとも1つを有していてもよい。心体3が不織布で構成されている場合、当該不織布は、不織布に加工できる種々の繊維で構成されていればよく、例えば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維及びナイロン繊維のうち少なくとも1つを有していてもよい。
【0027】
この編布又は不織布は、伸縮方向をベルト周方向に一致させた状態で背部5に埋め込まれていることが好ましい。
【0028】
本実施形態の歯付ベルト1の歯数は特に限定されないが、例えば40〜670程度であってよい。歯部7の高さは、例えば0.51mm以上5.30mm以下程度であってもよい。また、背厚み(背部5の厚み)は、例えば0.55mm以上5.00mm以下程度であってもよい。歯のピッチ(歯部7のベルト進行方向の中心から隣接する歯部7のベルト進行の中心までの距離)は、例えば1.0mm以上14.0mm以下程度であってもよい。歯付ベルト1のベルト幅は、例えば2.0mm以上200mm以下であってもよい。歯付ベルト1は無端の輪状であるが、これに限られない。
【0029】
なお、以上で説明したのは本実施形態の歯付ベルトの構成例に過ぎず、構成材料や背部5の厚み、歯部7の形状(逆台形等)、歯高さ、心体3を構成する編布の編み方等、種々の構成要素は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0030】
−ベルト伝動装置の構成−
図3は、本発明の一実施形態に係るベルト伝動装置を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係るベルト伝動装置10は、軸17を有する駆動プーリ13と、軸15を有する従動プーリ11と、
図1(a)〜(c)に示す歯付ベルト1とを少なくとも備えている。駆動プーリ13及び従動プーリ11にはそれぞれ歯付ベルト1の複数の歯部7と噛み合わせ可能な歯(図示せず)が形成されている。
【0031】
駆動プーリ13にはフランジが設けられていなくてもよく、一般的な歯付プーリであってもよい。あるいは、駆動プーリ13はクラウンプーリであってもよい。
【0032】
このベルト伝動装置10は、プリンタ等のOA機器、各種情報機器、家電機器、その他一般産業用機器等、広範囲に利用される。紙や紙幣等の搬送に用いられる場合には、ベルト伝動装置10を2つ設け、2つの歯付ベルト1の背面同士を対向させるように配置する。
【0033】
−歯付ベルトの製造−
以下、本実施形態に係る歯付ベルトの製造方法の一例を記述する。
【0034】
まず、歯部に対応した形状の凹部(以下、金型の「歯部」とも表記)が形成された内金型(金型)に、糊状のゴム材料を塗布して当該凹部を埋める。
【0035】
次いで、内金型の外周に、背部の材料となる、少なくとも1層のゴムシート(第1のゴムシート)を巻き付ける。このとき、ゴムシートの巻き始め部と巻き終わり部を突き合わせる。
【0036】
次に、伸縮性を有し、自然状態での周長が前記金型の周長よりも短い輪状の編布又は同形状の不織布を引き延ばした状態で、前記第1のゴムシートの外側に被せる。この際の、編布又は不織布の好ましい伸縮倍率(すなわち、(金型の周長)/(編布又は不織布の自然状態での周長))は、例えば1.6倍以上2.0倍以下である。言い換えれば、自然状態での心体の周長は、金型の周長の50%以上62.5%以下であることが好ましい。
【0037】
編布は、例えば筒編み製の編布が所定幅の輪切りにされたものであり、心体として用いられる。この工程において、編布の伸縮方向は、内金型の周方向と一致させておくことで、ベルトの弾性力を適度な範囲に調節することが容易となるので好ましい。なお、本工程で用いられる編布又は不織布は、ゴムとの接着性を向上させるため、接着剤によるディップ処理が事前に施されていてもよい。
【0038】
次いで、内金型の外周(第1のゴムシート及び編布の外側)に、少なくとも1層のゴムシート(第2のゴムシート)を巻き付ける。
【0039】
次に、内金型から熱及び圧力を加えてゴムを加硫又は架橋させることにより、円筒状のベルト成形体を成形する。なお、成形温度は、120℃〜150℃、成形圧力は0.4MPa〜0.5MPa程度とする。
【0040】
次に、金型を取り外し、ベルト成形体を取り出す。この後、必要に応じてベルトの背面を研磨して背部を所望の厚さにしてもよい。続いて、カッター装置を用いて、このベルト成形体を所定幅で輪切りにする。これにより、本実施形態に係る歯付ベルトが作製できる。
【0041】
−歯付ベルトの効果−
本実施形態の歯付ベルトによれば、伸縮性を有する編布又は不織布を心体として用いているので、糸状の心体を用いる場合に比べて広い範囲の軸間距離に対応することができ、取り付けも容易になる。言い換えれば、ベルト長さと軸間距離が多少ずれた場合であっても、適度な張力を維持しつつ、ベルトの歯とプーリの歯との咬合を良好に保つことができる。このため、本実施形態の歯付ベルトは、軸間距離が固定された機器に好ましく使用され、機構の簡素化とこれに伴うコストダウンに大きく寄与することができる。
【0042】
また、本実施形態の歯付ベルトでは、ばね定数を、0.5N(0.5%・10mm幅)以上250N(0.5%・10mm幅)以下にすることができるので、1種類のベルトで軸間距離が異なる機器に広く対応することが可能であり、機器への取り付けも容易になっている。なお、歯付ベルトのばね定数が0.5N(0.5%・10mm幅)を下回ると使用時のベルトの伸びが大きくなりすぎてベルトとプーリの歯との噛み合わせが困難となる。また、歯付ベルトのばね定数が250N(0.5%・10mm幅)を超えると、機器へのベルトの取り付けが容易に行いにくくなる。
【0043】
また、本実施形態の歯付ベルトでは、心体のベルト厚み方向の波打ちが小さく、心体の、ベルト厚み方向における、最も歯部に近い位置と最もベルト背面に近い位置との差が0.5mm以内に収まっている。このため、心体の波打ちが大きい場合に比べて部分ごと、あるいは製品ごとでの伸長率の変動を小さくすることができる。
【0044】
また、本実施形態の歯付ベルトでは、歯底部に心体が露出しないので、心体の摩耗が防がれ、長期間張力を維持することが可能となる。
【0045】
ここで、ガラス心線を用いた歯付ベルトの場合、シート状のゴムを、歯を形成した金型に巻き付け、ベルト背面側から熱および圧力をかけて歯を形成する。しかし、本実施形態の歯付ベルト1に用いられる編布又は不織布は、心線より剛性が小さく柔らかいため、上記製造方法では、編布がゴムの流れによって歯部に落ち込み、波打った状態で成形されてしまう。その結果、ベルトの弾性率にばらつきが生じる。
【0046】
これに対し、本実施形態の製造方法では、あらかじめ歯部7および歯底部9にゴム材料を成形することにより、編布又は不織布の歯部7への落ち込みを低減することができる。さらに、本実施形態の製造方法では、編布又は不織布の周長よりも周長が長い内金型に編布又は不織布を適度に伸長させた状態で被せているので、編布又は不織布の波打ちを大幅に低減することが可能となっている。
【0047】
図4(a)は、本実施形態に係る歯付ベルト1とプーリ(ここでは駆動プーリ13)との噛み合わせ部分を拡大して示す側面図であり、(b)は、従来の歯付ベルト101とプーリ13との噛み合わせ部分を拡大して示す側面図である。
【0048】
図4(b)に示す従来の歯付ベルト101は、特許文献1に記載された歯付ベルトである。従来の歯付ベルト101では、その製法上、心体3のうち三角ノーズ又は凸状支えに支えられていた部分が歯底部109に露出する。また、歯底部109の底面形状は、心体3の露出部分に向かって凹んで(
図4(b)、(c)では上に凸)いる。
【0049】
このため、
図4(b)、(c)に示す従来の歯付ベルト101では、側面視において、プーリ13(の歯19)に巻き付く部分全体の形状は多角形状となりやすく、歯ピッチごとのベルト速度の変動(すなわち変動ムラ)が大きくなる。
【0050】
また、心体3が露出することで、プーリ13との間に摩擦が生じ、ベルト寿命が短縮する可能性がある。また、従来の方法では、心体3を支えている部分で編布又は不織布に折れ曲がりが発生しやすくなるので、ベルトの弾性率にばらつきが生じる可能性もある。
【0051】
これに対し、
図4(a)に示す本実施形態の歯付ベルト1では、ベルトの弾性率が安定しており、且つ適度な弾性率を有しており、歯底部9の形状も平坦面又は曲面となっている。このため、本実施形態の歯付ベルト1では、心体3を歯底部9の全体で支えられ、
図4(b)、(c)に示す従来のベルトに比べてより円形に近い形でプーリ13に巻き付き、駆動時の速度の変動を小さく抑えることができる。
【0052】
OA機器や搬送装置では、紙、紙幣、カードなどの送り精度が要求されることから、ベルトの速度変動(速度ムラ)が小さいことが要求される。従って、本実施形態の歯付ベルト1は、OA機器や搬送装置に好ましく用いられ、従来の歯付ベルト101に比べて搬送装置等の搬送精度を大きく向上させることができる。また、心体3の摩耗が防がれ、ベルト寿命を長くすることができる。
【0053】
また、本実施形態の歯付ベルト1で心体3として用いられる編布又は不織布には、片寄り性がほとんどない。そのため、歯付ベルト1の片寄り性がほとんどなく、フランジ付きのプーリを用いなくてもプーリから歯付ベルト1が脱落しにくくなっている。
【0054】
ただし、装置によっては、軸、プーリの平衡度に若干のズレ(ミスアライメント)があり、その影響によりベルトが蛇行し、プーリが脱落するおそれがある。その場合には、プーリからの脱落を防止するクラウン形状のプーリを本実施形態の歯付ベルト1と共に用いることが望ましい。
【0055】
このように、本実施形態の歯付ベルト1は、フランジレスプーリ、あるいはクラウンプーリと共に使用することができるので、プーリの構造を簡素化することができ、機器のコストダウンに寄与することができる。
【0056】
また、ベルト背面搬送に本実施形態の歯付ベルト1を用いる場合には、駆動プーリ又は従動プーリとしてフランジレスプーリあるいはベルト背面位置よりも低いフランジを有するプーリを用いることで、プーリとの巻き付き部でも容易に紙等(搬送対象物)を搬送することができる。
【0057】
ベルトの脱落を防止する目的で使用するプーリフランジの外径は、ベルトの背面位置よりも外側にあることが一般的である。このため、プーリの巻き付き部で紙葉類を搬送する際は、ベルトの背面位置よりもフランジ外径を小さくすることで、ベルト背面での搬送を実現できる。しかし、この場合、ある一定のベルト背面厚みを持たせる必要がある。この結果、ベルトの背厚みが厚くなり、ベルトの曲げロスが大きくなる。
【0058】
本実施形態の歯付ベルト1の場合、原則としてフランジ付きプーリを必要としないので、ベルトの背厚みを厚くする必要がなく、背面搬送を行う際にもベルトを薄くすることができ、ベルトの曲げロスが小さくできる。この結果、ベルトの動力損失を低減でき、省エネルギーを実現できる。また、ベルトを薄くすることで、屈曲性および柔軟性を向上できるので、コンパクトな小プーリに適用することもできる。
【実施例】
【0059】
<歯付ベルトの準備>
上述の製造方法に従って、実施例1、2に係る歯付ベルトを製造した。内金型の歯部には、ゴム材料として糊状のウレタンゴム材料とカーボンブラックと可塑剤等をメチルエチルケトン(MEK)で溶かした液を用い、ゴムシートとして、厚みが0.33mmのシート状のミラブルウレタンを所定の枚数用いた。
【0060】
また、心体材料となる編布は、ポリエステル仮撚糸を横編機を用いて筒編みした後、シートゴム材料のミラブルウレタンをMEKに溶かした液でディッピング処理することで作製した。
【0061】
また、比較例1、2に係る歯付ベルトを製造した。内金型の歯部を糊状のゴム材料で埋めることなく、内金型の外側にゴムシートを巻き付けた他は、実施例1、2の歯付ベルトと同様の方法で作製した。ただし、用いたゴムシートの枚数は、後述の通りとした。
【0062】
<編布の波打ち量測定>
実施例及び比較例に係る歯付ベルトに負荷をかけない状態で、歯先から歯底までの長さ(すなわち、歯高さ)、歯先から編布(心体)の下端までの距離、歯先から編布の上端までの距離、歯先から背面までの距離(総厚み)をそれぞれ測定した。
【0063】
編布の波打ち量は、(歯先から編布の上端までの距離)−(歯先から編布の下端までの距離)によって求めた。ここで、編布の下端とは、1本の歯付ベルトにおいて、編布の厚み方向の位置が最も下になっている部分の下端を意味し、編布の上端は、1本の歯付ベルトにおいて、編布の厚み方向の位置が最も上になっている部分の上端を意味する。なお、この測定は、光学顕微鏡(協和光学工業製)を用いて100倍に拡大した各歯付ベルトの縦断面の写真を用いて行った。
【0064】
<噛み合い歯数の測定>
図5は、歯付ベルト用のベルト検尺機26を示す図である。本測定で用いられるベルト検尺機26は、位置が固定され、回転が可能な固定プーリ27と、固定プーリ27の下方に配置され、回転が可能な移動プーリ29と、ロードセル28とを備えている。
【0065】
この固定プーリ27と移動プーリ29との間に被験体となる歯付ベルトを巻き掛けた状態で、移動プーリ29に所定の荷重をかけ、ベルトを回転させた。軸にかかる軸荷重は、ロードセル28によって検出される。ベルトの張力は、Tp=FS/2・1/sin(θ/2) ・・・(1)により求めた。ここで、FSはベルトの軸荷重である。
【0066】
上記条件下で、被検体の歯付ベルトについて、軸荷重を変化させてベルトが巻き付いている移動プーリ29の歯数を測定した。噛み合いの良否の判定は、光学顕微鏡を用いた拡大観察によって行った。
【0067】
なお、固定プーリ27及び移動プーリ29の直径は19.40mmとし、プーリの歯数は共に30歯とした。
【0068】
<測定される歯付ベルト>
−実施例1−
上述の方法に従って、実施例1に係る歯付ベルトを作製した。ベルトを成形する際には、糊状のウレタン材料で内金型の歯部を埋めた後、2層のゴムシート、編布、3層のゴムシートを順に内金型に巻き付けた。心体として用いる編布の、内金型にセットする前の周長は180mm、内金型の周長は324.5mmとした。ベルトの歯数は160歯、ベルト幅は10mm、周長は325.12mmとした。本実施例の歯付ベルトについて、編布の波打ち量測定と、噛み合い歯数の測定を行った。
【0069】
−実施例2−
上述の方法に従って、実施例2に係る歯付ベルトを作製した。ベルトを成形する際には、糊状のウレタン材料で内金型の歯部を埋めた後、2層のゴムシート、編布、2層のゴムシートを順に内金型に巻き付けた。心体として用いる編布の、内金型にセットする前の周長は180mm、内金型の周長は324.5mmとした。ベルトの歯数は160歯、ベルト幅は10mm、周長は325.12mmとした。本実施例の歯付ベルトについて、編布の波打ち量測定を行った。
【0070】
−比較例1−
上述の方法に従って、比較例1に係る歯付ベルトを作製した。ベルトを成形する際には、内金型の歯部を埋めることなく、1層のゴムシート、編布、3層のゴムシートを順に内金型に巻き付けた。心体として用いる編布の、内金型にセットする前の周長は180mm、内金型の周長は324.5mmとした。ベルトの歯数は160歯、ベルト幅は10mm、周長は325.12mmとした。本比較例の歯付ベルトについて、編布の波打ち量測定を行った。
【0071】
−比較例2−
上述の方法に従って、比較例2に係る歯付ベルトを作製した。ベルトを成形する際には、内金型の歯部を埋めることなく、2層のゴムシート、編布、3層のゴムシートを順に内金型に巻き付けた。心体として用いる編布の、内金型にセットする前の周長は180mm、内金型の周長は324.5mmとした。ベルトの歯数は160歯、ベルト幅は10mm、周長は325.12mmとした。本比較例の歯付ベルトについて、噛み合い歯数の測定を行った。
【0072】
<測定結果>
表1に、実施例1、2及び比較例1に係る歯付ベルトについての各測定値を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1、2の測定結果から、上述の実施形態で説明した方法によって、編布の波打ち量を少なくとも0.5mm以内(それぞれ0.311mm、0.345mm)に抑えることができることが確認できた。また、編布は背部内に埋め込まれ、歯部の内部への落ち込みは見られなかった(図示せず)。
【0075】
これに対し、比較例1に係る歯付ベルトでは、編布の波打ち量は0.574mmと、0.5mmを超えていた。比較例1に係る歯付ベルトでは、編布の一部が歯部内に落ち込んでいた。
【0076】
また、実施例1及び比較例2の歯付ベルトについて、ベルトと噛み合うプーリの歯数を測定した結果を表2及び
図6に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2に示す通り、表2及び
図6の縦軸に示す「バックラッシがゼロとなる噛み合い歯数」は、バックラッシが無く、プーリの歯とベルトが良好に噛み合っていることを示す。本測定では、プーリの歯数が30歯であるので、ベルトとプーリが最も良好に噛み合っている状態では、「バックラッシがゼロとなる噛み合い歯数」=15歯となる。逆に、バックラッシがゼロとなる噛み合い歯数が少ないことは、ベルトとプーリの歯の噛み合わせが不良であることを意味する。
【0079】
表2及び
図6に示すように、実施例1の歯付ベルトでは、ベルト張力が3〜5.5Nと広い範囲で14歯以上がベルトと適正に噛み合わされていた。これに対し、比較例2の歯付ベルトでは、噛み合わせが適正となる範囲が著しく狭くなっていた。
【0080】
これは、編布がストレートな状態により近い実施例1の歯付ベルトの方が、比較例2の歯付ベルトに比べて荷重によるベルトの変動量が小さいこと、実施例1の歯付ベルトでは、及びピッチラインディファレンシャル(PLD)や荷重変動量の部位ごと、製品ごとのバラツキが小さいことによると推定される。
【0081】
以上のように、本実施例に係る歯付ベルトでは、軸間距離が異なる機器であっても幅広い範囲で適正に噛み合わせることが可能になることが確認できた。