特許第6371768号(P6371768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371768インダカテロールおよび薬学的に許容されるその塩の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371768
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】インダカテロールおよび薬学的に許容されるその塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/26 20060101AFI20180730BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALN20180730BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20180730BHJP
   A61P 11/06 20060101ALN20180730BHJP
   A61P 9/14 20060101ALN20180730BHJP
【FI】
   C07D215/26CSP
   !A61K31/4704
   !A61P43/00 111
   !A61P11/06
   !A61P9/14
【請求項の数】18
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-532366(P2015-532366)
(86)(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公表番号】特表2015-529231(P2015-529231A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】EP2013068618
(87)【国際公開番号】WO2014044566
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2016年9月7日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2012/003961
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513003633
【氏名又は名称】クリスタル ファーマ,エセ.ア.ウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ボンデ−ラルセン,アントニオ ロレンテ
(72)【発明者】
【氏名】サインツ,ヨランダ フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】レトゥエルト,ヘスス イグレシアス
(72)【発明者】
【氏名】ニエト,ハビエル ガージョ
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−514739(JP,A)
【文献】 特表2006−519206(JP,A)
【文献】 特表2003−501417(JP,A)
【文献】 特表2009−534436(JP,A)
【文献】 特表2005−533868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 201/00 − 521/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩の製造方法であって、
式Iの化合物と式IIの2−アミノ−5,6−ジエチルインダンとを反応させて式IIIの化合物を得ること、および
式IIIの化合物をインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩に変換すること
を含む方法。
【化1】
(式中、Rは保護基であり、Rは弱アルカリ性条件下で安定な保護基であり、Xは、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲンである。)
【請求項2】
式IIIの化合物からインダカテロールへの変換が、
酸を加えて保護基Rを除去することによって、式IIIの化合物を式IVの化合物に変換すること、
酸HAを加えること、
【化2】
および
式IVの化合物をインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩に変換することによって行われ、酸HAが安息香酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、塩酸、臭化水素酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸およびカンファースルホン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水と水混和性有機溶媒との存在下で式IVの保護されたインダカテロールの酸塩を沈殿させること、および
沈殿させた式IVの保護されたインダカテロールの酸塩をインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩に変換することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【化3】
【請求項4】
前記水混和性有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式IVの化合物からインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩への変換が、
a)式IVの化合物を中和すること、保護基Rを除去して溶液または懸濁液中でインダカテロール遊離塩基を得ること、任意でインダカテロール遊離塩基を固体状態で単離すること、および任意で酸をインダカテロール遊離塩基に加えることによりインダカテロールの薬学的に許容される塩を得ること、
b)保護基Rを除去して式V
【化4】
の化合物を得ること、式Vの化合物を中和して溶液または懸濁液中でインダカテロール遊離塩基を得ること、任意でインダカテロール遊離塩基を固体状態で単離すること、および任意で酸をインダカテロール遊離塩基に加えることによりインダカテロールの薬学的に許容される塩を得ること、または
c)保護基Rを除去して式Vの化合物を得ること、および式Vの化合物を酸と直接反応させてインダカテロールの薬学的に許容される塩を得ること
によって行われる、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項6】
が、C1〜6アルキル、C6〜20アリール、C1〜6アルコキシ、C2〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、ベンゾシクロアルキル、C3〜6シクロアルキル−C1〜6アルキル、C6〜20アリール−C1〜6アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール−C1〜6アルキル、ハロ−C1〜6アルキル、および置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
がベンジルまたはt−ブチルジメチルシリルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
がベンジルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
が、隣接する酸素と共にアセタール、エーテル、シリルエーテルまたはエステルを形成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
が、隣接する酸素と共にアセタールを形成する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
が、1−(n−ブトキシ)−エチルおよびテトラヒドロ−ピラン−2−イルからなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
が1−(n−ブトキシ)−エチルである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記酸HAが、L−酒石酸、ジベンゾイル−L−酒石酸、マンデル酸、コハク酸および安息香酸からなる群から選択される、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
保護基Rの除去に用いられる前記酸が、酒石酸、コハク酸および安息香酸からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
Xが塩素または臭素であり、
式Iの化合物と式IIの化合物とを反応させる前記工程において、ヨウ化物塩を反応に加える、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Xが臭素またはヨウ素である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
Xが臭素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
最終生成物がインダカテロールマレイン酸塩である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダカテロールおよび薬学的に許容されるその塩を製造するための新規かつ改良された方法ならびにインダカテロールを製造するための中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
インダカテロール(INN)として知られている5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシエチル]−8−ヒドロキシ−(1H)−キノリン−2−オンおよびその塩は、強力な気管支拡張活性を有する選択的βアドレナリン受容体作動薬である。インダカテロールは喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に特に有用であり、マレイン酸塩として市販されている。
【0003】
以下の工程によるインダカテロールの製造方法は、WO00/75114およびWO2004/076422において初めて報告された。
【化1】
【0004】
インダノールアミンとキノロンエポキシドとの縮合により所望の生成物が得られるが、相当量の不純物が常に生成する。その中でも最も多くを占めるのは二量体不純物であり、これは得られた所望の生成物にキノロンエポキシドがもう一つ結合することによって生成する。また、キノロンエポキシドの第二級炭素にインダノールアミンが結合することによって異性体も形成される。
【0005】
さらに、キノロンエポキシドの開環には、110℃以上の温度で数時間反応させる(WO00/75114の実施例21)という高エネルギー条件が必要とされるが、これが不純物の生成を助長している。
【0006】
上記のWO2004/076422に開示されている上記の反応混合物の精製方法では、まず酒石酸や安息香酸などの酸と塩を形成させ、水素化した後、最終的にマレイン酸塩を形成させている。しかし、この方法の最終的な総収率はわずか49%である。
【0007】
酒石酸塩や安息香酸塩などの不純物が最終生成物中に存在するのは、あらかじめ中和してインダカテロール塩基を形成させずに、酒石酸塩や安息香酸塩をマレイン酸塩に変換していることが原因であることが明らかとなっている。さらに上記のWO2004/076422では、インダカテロール遊離塩基は有機溶媒中で不安定であることから、インダカテロール遊離塩基を経由した方法は実施不可能であることが開示されている。また、上記のWO00/75114では、インダカテロール遊離塩基を経由した方法が開示されているが、インダカテロール遊離塩基の固体状態での単離は達成されていない。
【0008】
さらに、上記のWO2004/076422では、対応するα−ハロアセチル化合物からキノロンエポキシドを得る方法が開示されており、この方法では、オキサザボロリジン化合物などのキラル触媒の存在下で還元を行い、α−ハロヒドロキシ化合物を経由させてキノロンエポキシドを得ている。
【0009】
WO2007/124898およびWO2004/013578では、8−(ベンジルオキシ)−5−[(1R)−2−ブロモ−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル]キノリン−2(1H)−オンおよび8−(ベンジルオキシ)−5−[(1R)−2−ブロモ−1−{テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル−オキシ}エチル]キノリン−2(1H)−オンがそれぞれ開示されている。しかしこれらの文献にはインダカテロールの製造は記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、当技術分野において公知の方法に付随する一部またはすべての問題を解決できる、インダカテロールおよびその塩を得るための改良された方法の開発が必要とされている。より具体的には、高い収率を達成し、かつ/または二量体不純物もしくは位置異性体不純物の形態の不純物および/もしくは薬学的に許容される所望の塩以外の塩をわずかしか生成しない、インダカテロールおよび薬学的に許容されるその塩を得るための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において本発明は、インダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩の製造方法であって、好ましくは塩基の存在下において、式Iの化合物と式IIの2−アミノ−5,6−ジエチルインダンとを反応させて式IIIの化合物を得ること、および式IIIの化合物をインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩に変換することを含む方法に関する。
【化2】
(式中、Rは保護基であり、Rは弱アルカリ性条件下で安定な保護基であり、Xは、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲンである。)
【0012】
この方法では、先行技術の方法に用いられていたエポキシ化合物の使用を避けているため、例えばWO2004/076422に記載されているような、当技術分野で公知の方法に付随する二量体や位置異性体の形成が起こらない。これによって、式IIIの化合物、この方法において次いで生成しうる中間体、および最終生成物を精製することが容易となる。さらに、本発明の方法は、当技術分野で公知の方法よりも温和な反応条件を用いているため、70%を超える収率を得ることができ、場合によっては80%を超える収率を達成することができる。
【0013】
は、フェノール基を保護するための保護基として当技術分野で周知の保護基である。Rは弱アルカリ性条件下で安定な保護基である。
【0014】
本発明のさらなる態様は、式IIIの化合物またはその塩の製造方法であって、式Iの化合物と式IIの2−アミノ−5,6−ジエチルインダンとを反応させて式IIIの化合物を得ることを特徴とする方法に関する。必要に応じ、酸を加えて式IIIの化合物をその塩に変換してもよい。
【0015】
別の一態様において本発明は、インダカテロールの薬学的に許容される塩の製造方法であって、インダカテロールを得ること、得られたインダカテロールを固体状態で単離すること、単離したインダカテロールをマレイン酸などの適切な酸と反応させることを特徴とする方法に関する。
【0016】
本発明のまた別の態様は、式Iの化合物に関する。本発明のさらに別の態様は、式IIIの化合物に関する。本発明のさらなる態様は、固体状態のインダカテロール遊離塩基に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書において、「C6〜20アリール」とは、6〜20個の炭素原子を有し置換基を有していてもよい、その全部または一部が芳香族炭素環からなる環または環系を意味し、例えばフェニル、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、アントラシル、フェナントラシル、ピレニル、ベンゾピレニル、フルオレニル、キサンテニルなどが挙げられる。中でもフェニルが好ましい。
【0018】
本明細書において、「C1〜6アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルなどが挙げられる。
【0019】
本明細書において、「C1〜6アルコキシ」とは、C1〜6アルキル−オキシを意味し、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、iso−ペントキシ、neo−ペントキシ、n−ヘキソキシなどが挙げられる。
【0020】
本明細書において、「C2〜6アルケニル」とは、2〜6個の炭素原子を有し、1つの不飽和結合を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。該アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルが挙げられる。
【0021】
本明細書において、「C3〜6シクロアルキル」とは、3〜6個の炭素原子を有する環状炭化水素基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0022】
本明細書において、「ヘテロアリール」とは、1個以上の炭素原子が窒素原子(=N−または−NH−)、硫黄原子および/または酸素原子などのヘテロ原子で置換された、その全部または一部が芳香族炭素環からなる環または環系を意味する。このようなヘテロアリール基としては、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、クマリル、フリル、チエニル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾオキソゾリル、フタラジニル、フタラニル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキノリル、アクリジニル、カルバゾリル、ジベンザゼピニル、インドリル、ベンゾピラゾリル、フェノキサゾニル、フェニルピロリルおよびN−フェニルピロリルが挙げられる。
【0023】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、置換対象となる基が、置換基で1回〜数回、好ましくは1〜3回置換されていてもよいことを意味し、該置換基は、ヒドロキシ(不飽和炭素原子に結合している場合、互変異性のケト型で存在していてもよい)、C1〜6アルコキシ、C2〜6アルケニルオキシ、カルボキシ、オキソ(ケト官能基またはアルデヒド官能基を形成する)、C1〜6アルコキシカルボニル、C1〜6アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールアミノ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノまたはジ(C1〜6アルキル)アミノ、カルバモイル、モノまたはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニル、アミノ−C1〜6アルキル−アミノカルボニル、モノまたはジ(C1〜6アルキル)アミノ−C1〜6アルキル−アミノカルボニル、C1〜6アルキルカルボニルアミノ、シアノ、グアニジノ、カルバミド、C1〜6アルキル−スルホニル−アミノ、アリール−スルホニル−アミノ、ヘテロアリール−スルホニル−アミノ、C1〜6アルカノイルオキシ、C1〜6アルキル−スルホニル、C1〜6アルキル−スルフィニル、C1〜6アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、C1〜6アルキルチオおよびハロゲンから選択される。
【0024】
本明細書において、「弱アルカリ性条件」とは、塩基である式IIの化合物を式Iの化合物に加えたときに生じる状態を言い、これは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの別の塩基の存在下であることが好ましい。
【0025】
方法
一態様において本発明は、インダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩の製造方法であって、好ましくは塩基の存在下において、式Iの化合物と式IIの2−アミノ−5,6−ジエチルインダンとを反応させて式IIIの化合物を得ること、および式IIIの化合物をインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩に変換することを含む方法に関する。
【化3】
(式中、Rは保護基であり、Rは弱アルカリ性条件下で安定な保護基であり、Xは、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲンである。)
【0026】
一実施形態において、式IIIの化合物からインダカテロールへの変換は、酸、好ましくは酸の水溶液を加えて保護基Rを除去することによって式IIIの化合物を式IVの化合物に変換し、酸HAを加えて化合物(IV)を塩として単離精製し、
【化4】
次いで式IVの化合物をインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩に変換することによって行われる。式IVの化合物をインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩に変換する方法は、例えばWO2004/076422に開示されている。
【0027】
別の態様において本発明は、インダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩の製造方法であって、水と水混和性有機溶媒との存在下で式IVの保護されたインダカテロールの酸塩を沈殿させること、および沈殿させた式IVの保護されたインダカテロールの酸塩をインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩に変換することを含む方法に関する。
【化5】
(式中、Rは本明細書において定義された保護基であり、Aは本明細書において定義された酸HAの対イオンである。)
【0028】
一実施形態において、式Iの保護されたインダカテロールを酸HAと反応させることによって、保護されたインダカテロールの酸塩をin situで生成させる。
【化6】
【0029】
さらなる一実施形態において、式IVの化合物からインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩への変換は、
a)式IVの化合物を中和すること、保護基Rを除去して溶液または懸濁液中でインダカテロール遊離塩基を得ること、任意でインダカテロール遊離塩基を固体状態で単離すること、および任意でマレイン酸などの適切な酸をインダカテロール遊離塩基に加えることによりインダカテロールの薬学的に許容される塩を得ること、
b)保護基Rを除去して式V
【化7】
の化合物を得ること、式Vの化合物を中和して溶液または懸濁液中でインダカテロール遊離塩基を得ること、任意でインダカテロール遊離塩基を固体状態で単離すること、および任意でマレイン酸などの適切な酸をインダカテロール遊離塩基に加えることによりインダカテロールの薬学的に許容される塩を得ること、または
c)保護基Rを除去して式Vの化合物を得ること、および式Vの化合物をマレイン酸などの適切な酸と直接反応させてインダカテロールの薬学的に許容される塩を得ること
によって行われる。
【0030】
式IIIの化合物
式IIIの化合物は、遊離塩基として単離してもよく、保護基Rを除去せずに酸付加塩を形成させてから単離してもよく、あるいは単離せずにインダカテロールまたは薬学的に許容されるその塩の製造(例えば式IVの化合物を経由した製造方法)にそのまま用いてもよい。
【0031】
保護基R
は、フェノール基を保護するための保護基として当技術分野で周知の保護基である。当業者であれば、式Iの化合物などのキノロン誘導体の8位の水酸基にどのような保護基が適しているのかを理解しているであろう。このような適切な保護基は、例えばWO00/75114やWO2004/076422に記載されている。
【0032】
さらに具体的には、一実施形態において、Rは、C1〜6アルキル、C6〜20アリール、C1〜6アルコキシ、C2〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、ベンゾシクロアルキル、C3〜6シクロアルキル−C1〜6アルキル、C6〜20アリール−C1〜6アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール−C1〜6アルキル、ハロ−C1〜6アルキル、および置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される。別の一実施形態において、Rはベンジルまたはt−ブチルジメチルシリルである。さらに別の一実施形態において、Rはベンジルである。
【0033】
保護基R
は、弱アルカリ性条件下で安定であり、Rが開裂しない条件下で選択的に開裂させることができる保護基である。これらの条件を満たす保護基としては様々な種類のものがあり、例えば、隣接する酸素原子と共にアセタールを形成する保護基、隣接する酸素と共にエーテルを形成する保護基、隣接する酸素と共にシリルエーテル基を形成する保護基、隣接する酸素と共にエステルを形成する保護基などが挙げられるが、これらに限定されない。従って、一実施形態において、Rは隣接する酸素と共にアセタール、エーテル、シリルエーテルまたはエステルを形成する。別の一実施形態において、Rは隣接する酸素と共にアセタール、エーテルまたはシリルエーテルを形成する。さらに別の一実施形態において、Rは隣接する酸素と共にアセタールまたはエーテルを形成する。さらなる一実施形態において、Rは隣接する酸素と共にアセタールを形成する。
【0034】
好適なアセタール保護基としては、1−(n−ブトキシ)−エチルアセタールおよびテトラヒドロ−ピラン−2−イルアセタールが挙げられる。従って、一実施形態において、Rは1−(n−ブトキシ)−エチルまたはテトラヒドロ−ピラン−2−イルであり、例えば1−(n−ブトキシ)−エチルである。好適なエーテル保護基としては、ベンジルエーテル、メトキシメチル(MOM)エーテル、メチルチオメチル(MTM)エーテルおよびベンジルオキシメチルエーテルが挙げられる。従って、別の一実施形態において、Rはベンジル、メトキシメチル、メチルチオメチルまたはベンジルオキシメチルであり、例えばベンジルである。好適なシリルエーテル保護基としては、トリメチルシリルエーテルおよびtert−ブチルジメチルシリルエーテルが挙げられる。従って、さらに別の一実施形態において、Rはトリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルである。好適なエステル保護基としては、ピバロイルエステルおよびアセテートエステルが挙げられる。従って、さらに別の一実施形態において、Rはピバロイルまたはアセテートである。
【0035】
さらなる一実施形態において、Rは、1−(n−ブトキシ)−エチル、メトキシメチル、ベンジルおよびテトラヒドロ−ピラン−2−イルからなる群から選択され、例えば1−(n−ブトキシ)−エチル、メトキシメチルおよびテトラヒドロ−ピラン−2−イルからなる群から選択される。さらなる一実施形態において、Rは1−(n−ブトキシ)−エチルであり、Rはベンジルである。
【0036】
保護基Rの除去方法
保護基Rは、本明細書において定義された種々の保護基Rを除去するための当技術分野で公知の方法によって、式IIIの化合物から除去することができる。Rが隣接する酸素原子と共にアセタールを形成する場合、好ましくは水の存在下において、中程度の酸〜強酸と反応させてRを除去してもよい。好適な酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
が隣接する酸素原子と共にエーテル、シリルエーテルまたはエステルを形成する場合、アセタール保護基の除去について例示した酸をRの除去に好適に使用することができる。Rが隣接する酸素原子と共にエーテル、シリルエーテルまたはエステルを形成した場合、Rの除去に好適な他の試薬としては、塩基の水溶液、ルイス酸、パラジウム触媒または白金触媒による水素化(ベンジルエーテルの場合)、Dowexなどの樹脂、チオフェノールなどのチオール類およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
化合物Iと化合物IIとの反応に使用可能な塩基
式IIIの化合物を形成させるための化合物Iと化合物IIとの反応には、第一級アミンおよび第二級アミンを除いて、いかなる有機塩基または無機塩基を使用してもよい。この反応に使用できる有機塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)が挙げられる。また、この反応に使用できる無機塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。塩基の存在下において式Iの化合物と式IIの化合物との反応を行う場合、式IIの2−アミノ−5,6−ジエチルインダンを塩酸塩などの酸付加塩の形態で反応混合物に加えてもよい。
【0039】
酸HA
式IIIの化合物から保護基Rを除去することにより得られた生成物を酸HAと反応させることによって、式IIIの化合物を精製して式IVの塩を得る。好適な酸HAとしては、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、塩酸、臭化水素酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸およびカンファースルホン酸が挙げられる。
【0040】
一実施形態において、酸HAは、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、コハク酸および安息香酸からなる群から選択される。別の一実施形態において、酸HAは、酒石酸、コハク酸および安息香酸からなる群から選択される。
【0041】
別の一実施形態において、酸HAは、L−酒石酸およびジベンゾイル−L−酒石酸からなる群から選択される。
【0042】
水と水混和性有機溶媒との混合物
水混和性有機溶媒単独でなく、水と水混和性有機溶媒との混合物を用いると、最終生成物のエナンチオマー純度が高くなることが明らかとなった。一実施形態において、水混和性有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリルおよびこれらの混合物からなる群から選択される。さらなる一実施形態において、水混和性有機溶媒は、アセトン、エタノールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
ハロゲンX
ハロゲンは通常、式Iの化合物と式IIの化合物との反応のようなS2反応において良好な脱離基として働く。一実施形態において、Xは塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される。別の一実施形態において、Xは臭素またはヨウ素である。さらに別の一実施形態において、Xは臭素である。
【0044】
さらなる一実施形態において、Xは臭素または塩素であり、ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムなどのヨウ素塩の存在下で化合物Iと化合物IIとの反応を行い、in situでヨウ素基を生成させる。
【0045】
式Iの出発化合物
式Iの化合物は、式VI
【化8】
で表される水酸基が保護されていない対応する化合物から得てもよく、より具体的には、式Iの化合物は、アルコールと反応させた場合に本明細書で定義されたアセタール保護基、エーテル保護基、シリルエーテル保護基またはエステル保護基を形成することができる当技術分野で公知の試薬と式VIの化合物とを反応させることによって得てもよい。例えばアセタール保護基を形成させる場合、より具体的にはRが1−(n−ブトキシ)−エチルまたはテトラヒドロ−ピラン−2−イルである場合、式VIの化合物とブチル−ビニルエーテルまたはジヒドロ−ピラン−2−イルとをそれぞれ反応させてもよい。
【0046】
式VIの化合物は、対応するハロアセチル化合物をキラル触媒を用いて還元することによって製造してもよい。この方法に好適なキラル触媒は、WO2004/076422およびWO2005/123684に開示されており、これらの文献はその内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
薬学的に許容される塩
薬学的に許容されるインダカテロールの酸付加塩は、当業者であれば容易に選択することができるであろう。Bergeらの「Pharmaceutical Salts」, Journal of Pharmaceutical Sciences, vol.66, no.1, 1 January 1977, pages 1-19には、薬学的に許容される酸付加塩として使用可能な塩の例示が記載されている。薬学的に許容される酸付加塩として特に注目されるべきものはマレイン酸塩である。
【0048】
インダカテロール塩基を経由する方法
上述したように、有機溶媒中でインダカテロール遊離塩基が不安定であることは当技術分野においてよく知られている。従って、インダカテロール遊離塩基を経由してインダカテロールの薬学的に許容される塩を製造することは、工業規模では不可能とされている。しかし、インダカテロール遊離塩基を固体状態で単離することによって、インダカテロール遊離塩基を経由してインダカテロールの薬学的に許容される塩を実際に工業規模で製造できることが明らかとなった。さらにこの方法では、8位が保護された1つのインダカテロールの塩をインダカテロールの薬学的に許容される塩に直接変換するため、当技術分野で公知の方法に付随する不純物が形成されない。WO2004/076422の実施例2を再現し、酢酸を溶媒として用いて式IVの安息香酸塩を水素化し、マレイン酸を加えることで該塩のアニオンをマレイン酸に交換した。得られた固体をろ過、洗浄、真空乾燥して、インダカテロールマレイン酸塩を得たが、不純物であるインダカテロール酢酸塩が共存していることがNMR測定より明らかとなった(比較例9)。
【0049】
従って、別の一態様において本発明は、インダカテロールの薬学的に許容される塩の製造方法であって、インダカテロールを得ること、得られたインダカテロールを固体状態で単離すること、および単離したインダカテロールをマレイン酸などの適切な酸と反応させることを特徴とする方法に関する。本明細書に開示されているような、または当技術分野において公知のインダカテロール遊離塩基を得ることができる。
【0050】
使用可能な反応条件
式IIIの化合物の生成
本発明の反応は、様々な有機溶媒中において行うことができる。使用できる有機溶媒としては、アセトニトリル、ブタノンおよびジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられ、特にアセトニトリルおよびブタノンである。式Iの化合物と式IIの化合物との反応においては、少量の溶媒を用いると有利であることが明らかとなった。反応は、70〜110℃の温度範囲、例えば85℃の温度で、2〜10時間の反応時間、例えば4〜5時間で行うと有利である。さらに、式IIの2−アミノ−5,6−ジエチルインダンをその酸付加塩として加える場合、炭酸カリウムなどの炭酸塩を反応混合物に加えると有利である。
【0051】
保護基Rの除去
1−(n−ブトキシ)−エチルなどの保護基Rを式IIIの化合物から除去するために酸の水溶液を用いる場合、塩酸などの酸の水溶液を過剰量、例えば2〜6等量加え、室温〜還流温度で保護基が完全に除去されるまで反応させると有利であり、例えば1−(n−ブトキシ)−エチル保護基を除去する場合には1〜3時間反応させる。
【0052】
式IVの化合物の生成
保護基Rを除去した後、さらに多くの量の水をジクロロメタンなどの適切な溶媒と共に加えてもよく、この方法が有利である。脱保護した化合物をpH9〜11で中和後、分かれた相を分離してもよい。分離後、式IVの化合物を沈殿させるのに適した溶媒に溶媒交換してもよい。使用可能な溶媒は、酢酸エチル、イソプロパノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルであり、これまでのところ酢酸エチル、イソプロパノールおよびエタノールがより好ましいことが分かっている。溶媒を交換後、酸HAを加えて、沈殿により式IVの化合物を形成させてもよい。安息香酸塩、コハク酸塩および酒石酸塩を沈殿させるのに特に有用な溶媒としては、酢酸エチルが挙げられる。酢酸エチル中で酒石酸塩を沈殿させた場合、式IVの塩は65〜80%の収率と93%を超える純度で得ることができ、また、イソプロパノールまたはエタノール中でコハク酸塩または酒石酸塩を沈殿させた場合、式IVの塩は60〜75%の収率と99%を超える純度で得ることができる。当技術分野で知られている二量体や位置異性体などの不純物は存在せず、塩基分子に対する競合が発生しないため、酢酸エチルを用いてより大量の沈殿をより容易に生じさせることができる。
【0053】
インダカテロール塩基の生成
の除去前に、式IVの化合物を中和してもよい。中和は、ジクロロメタン、水およびソーダを添加することによって好適に行うことができる。Rを水素化により除去する場合、水素化は周囲温度で高圧水素を用いて好適に行うことができる。さらにこの方法では、メタノールとジクロロメタンとの混合物が溶媒として好適に使用される。水素化が終了した後、触媒を除き、ジクロロメタンを留去してメタノールのみを溶媒として残し、冷却することによってインダカテロールを沈殿させる。別法として、メタノール/ジクロロメタン混合溶媒をイソプロパノールに交換し、冷却することによって、インダカテロール塩基の沈殿が純度>99%で得られる。
【0054】
沈殿させたインダカテロール塩基は白色固体であり、周囲温度で長期間保存することができる。インダカテロール塩基を溶解して、マレイン酸塩などの薬学的に許容される塩を製造するために使用してもよい。マレイン酸の添加に適した溶媒はイソプロパノールである。別法として、上記の反応から得られた、メタノールとジクロロメタンの混合溶媒に溶解したインダカテロール塩基をそのまま使用して、溶媒をイソプロパノールに交換した後、マレイン酸を加えることによってマレイン酸塩として沈殿させてもよい。
【0055】
中間化合物
本発明の方法には、インダカテロールの製造においてこれまで使用されてこなかった新規中間体が含まれている。従って、本発明のさらなる一態様は、式Iの化合物であって、Rがベンジルであり、かつXがBrである場合、Rがtert−ブチル(ジメチル)シリル、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルのいずれでもない化合物に関する。
【0056】
さらに本発明の別の一態様は、式IIIの化合物またはその塩に関する。
【0057】
本発明のさらなる一態様は、固体状態のインダカテロール遊離塩基に関する。一実施形態において、該インダカテロール遊離塩基は結晶形態である。別の一実施形態において、該インダカテロール遊離塩基は非晶質形態である。
【実施例】
【0058】
実施例1 式VIのα−ハロヒドロキシ化合物の保護
【化9】
フラスコにテトラヒドロフラン(THF)5mLとトルエン5mLとを入れる。混合物を撹拌しながら、p−トルエンスルホン酸(0.15mmol)とモレキュラーシーブとを加え、30分間撹拌を続ける。ブチル−ビニルエーテル6mmolと8−(フェニルメトキシ)−5−((R)−2−ブロモ−1−ヒドロキシ−エチル)−(1H)−キノリン−2−オン3mmolとを加える。反応が終了するまで混合物を20〜25℃で撹拌し、ろ過後、ろ液を蒸留して溶媒を除去する。生成物は、50%:50%のジアステレオマー混合物からなる油状物質として定量的収率で得られる。
【0059】
1H-NMR (DMSO-d6, δ), 50:50のジアステレオマー混合物: 0.61 and 0.82 (3H, t, J=7.2 Hz, CH3-Pr-O), 1.12 and 1.22 (3H, d, J=5.6 Hz, acetalic CH3), 0.90-1.40 (4H, m, CH2 + CH2), 3.20-3.80 (4H, m, CH2-OAr + CH2-Br), 4.51 and 4.82 (1H, q, J=5.6 Hz, acetalic CH), 5.18 and 5.24 (1H, dd, J=4.0, 8.0 Hz, CH-O-acetal), 6.56 and 6.58 (1H, d, J=10.0 Hz, H4), 7.00-7.57 (7H, m), 8.17 and 8.23 (1H, d, J=10.0 Hz, H3), 10.71 (1H, s, NH)
【0060】
13C-NMR (DMSO-d6, δ), 50:50のジアステレオアイソマー混合物: 13.5 and 13.7 CH3), 18.5 and 18.8 (CH2), 19.9 and 20.0 (acetalic CH3), 30.9 and 31.4 (CH2), 36.8 and 37.3 (CH2), 63.7 and 64.2 (CH2-Br), 69.8 and 69.9 (CH2-OAr), 73.8 and 75.1 (CH-O), 97.5 and 100.4 (acetalic CH), 111.8 (CH), 116.9 and 117.2 (C), 121.2 and 122.4 (CH), 122.3 and 122.6 (CH), 127.7 and 127.8 (C), 127.8 and 127.9 (CH), 128.2 and 128.3 (CH), 128.8 and 129.1 (C), 129.4 and 129.6 (C), 136.1 and 136.5 (CH), 136.5 and 136.6 (C), 144.0 and 144.2 (C), 160.7 and 160.8 (C=O).
【0061】
実施例2 式VIのα−ハロヒドロキシ化合物の保護
【化10】
8−(フェニルメトキシ)−5−((R)−2−クロロ−1−ヒドロキシ−エチル)−(1H)−キノリン−2−オン(0.74g)、ジクロロメタン(15mL)および4−ジメチルアミノピリジン(0.89g)を混合し、この混合物を20〜25℃で撹拌しながら塩化ピバロイル(0.72g)を加え、出発原料が目視できなくなるまで反応物を撹拌する。水(22mL)を加え、相を分離する。
【0062】
有機相を1M HCl(22mL)、次いで水(22mL)で洗浄する。溶媒を除去後、アセトンから残渣を結晶化し、生成物0.82gを得る。
【0063】
1H-NMR (DMSO-d6, δ): 1.13 (9H, s, CH3), 3.92 (1H, dd, J= 4.0, 12.0 Hz, CH2-Br), 4.00 (1H, dd, J= 8.4, 12.0 Hz, CH2-Cl), 5.28 (2H, s, Ph-CH2-O), 6.25 (1H, dd, J= 4.0, 8.4 Hz, CH-OPiv), 6.59 (1H, d, J= 10.0 Hz, H4), 7.15 (1H, d, J= 8.4 Hz, H6), 7.20 (1H, d, J= 8.4 Hz, H7), 7.27-7.30 (1H, m, Ph), 7.33-7.37 (2H, m, Ph), 7.54-7.56 (2H, m, Ph), 8.18 (1H, d, J= 10.0 Hz, H3), 10.77 (1H, s, NH).
【0064】
13C-NMR (DMSO-d6, δ): 26.7 (3 x CH3), 38.3 (C), 46.4 (CH2-Cl), 69.8 (CH2-Ph), 71.3 (CH-OPiv), 111.9 (CH), 116.8 (C), 120.5 (CH), 122.9(CH), 126.0 (C), 127.8 (2 x CH), 127.9 (CH), 128.3 (2 x CH), 129.5 (C), 136.0 (C), 136.5 (CH), 144.5 (C), 160.7 (CON), 176.2 (COO).
【0065】
実施例3 式IVの化合物の製造
【化11】
フラスコにTHF2.5mLとトルエン2.5mLとを入れる。混合物を撹拌しながら、p−トルエンスルホン酸(5mg)とモレキュラーシーブ(0.2g)とを加え、30分間撹拌を続ける。ブチル−ビニルエーテル1.5mLと8−(フェニルメトキシ)−5−((R)−2−ブロモ−1−ヒドロキシ−エチル)−(1H)−キノリン−2−オン2gとを加える。反応が終了するまで混合物を20〜25℃で撹拌する。ジイソプロピルエチルアミン0.015mLを加え、混合物をろ過後、溶媒を留去する。
【0066】
残渣をジメチルホルムアミド(DMF)6mLに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン1.9mL、ヨウ化ナトリウム1.2gおよび2−アミノ−5,6−ジエチルインダン1.5gを加え、混合物を100℃まで加熱する。反応終了後、混合物を20〜25℃に冷却し、濃塩酸0.4mLと水0.4mLを加え、混合物を30分間撹拌する。
【0067】
HPLC分析から、予想される生成物が75%の純度で得られ、二量体不純物や位置異性体不純物を含んでいないことが分かる。
【0068】
上記の混合物を撹拌しながら、水20mL、塩化メチレン20mLおよび6N NaOH3mLを加える。有機相を分離し、水20mLで洗浄する。有機相を蒸留し、溶媒を酢酸エチルに交換して、最終容量を100mLとする。混合物を70℃まで加熱し、L−酒石酸0.8gを加え、70℃で30分間撹拌を続ける。混合物を20〜25℃までゆっくり冷却し、ろ過後、酢酸エチル8mLで洗浄して、8−(フェニルメトキシ)−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−(1H)−キノリン−2−オン酒石酸塩を68%の収率で得る。HPLC分析による生成物の純度は>95%である。
【0069】
実施例4 式IVの化合物の製造
【化12】
フラスコにTHF19mLとトルエン19mLとを入れる。p−トルエンスルホン酸(75mg)とモレキュラーシーブ(1.5g)とを加え、混合物を30分間撹拌する。ブチル−ビニルエーテル11.2mLと8−(フェニルメトキシ)−5−((R)−2−ブロモ−1−ヒドロキシ−エチル)−(1H)−キノリン−2−オン15gとを加える。反応が終了するまで混合物を20〜25℃で撹拌する。ジイソプロピルエチルアミン0.1mLを加え、混合物をろ過後、溶媒を留去する。
【0070】
残渣をブタノン40mLに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン14.5mL、ヨウ化ナトリウム9gおよび2−アミノ−5,6−ジエチルインダン11.3gを加え、混合物を90〜100℃まで加熱する。反応終了後、混合物を20〜25℃に冷却し、濃塩酸3mLと水3mLとを加え、混合物を30分間撹拌する。
【0071】
HPLC分析から、予想される生成物が84%の純度で得られ、二量体不純物や位置異性体不純物を含んでいないことが分かる。
【0072】
上記の混合物を撹拌しながら、水150mL、塩化メチレン150mLおよび6N NaOH22.5mLを加える。有機相を分離し、水10mLで洗浄する。有機相を蒸留し、溶媒をイソプロピルアルコールに交換し、最終容量を300mLとする。混合物を70℃まで加熱し、安息香酸4.9gを加え、70℃で30分間撹拌を続ける。混合物を20〜25℃までゆっくり冷却し、ろ過後、イソプロパノール30mLで洗浄して、8−(フェニルメトキシ)−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−(1H)−キノリン−2−オン安息香酸塩を59%の収率で得る。HPLC分析による生成物の純度は>99%である。
【0073】
実施例5 式IVの化合物の製造
【化13】
フラスコにTHF7.5mLとトルエン7.5mLとを入れる。p−トルエンスルホン酸(30mg)とモレキュラーシーブ(0.6g)とを加え、混合物を30分間撹拌する。ブチル−ビニルエーテル4.5mLと8−(フェニルメトキシ)−5−((R)−2−ブロモ−1−ヒドロキシ−エチル)−(1H)−キノリン−2−オン6gとを加える。反応が終了するまで混合物を20〜25℃で撹拌する。ジイソプロピルエチルアミン0.040mLを加え、混合物をろ過後、溶媒を留去する。
【0074】
残渣をアセトニトリル(ACN)18mLに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン5.8mL、ヨウ化ナトリウム3.6gおよび2−アミノ−5,6−ジエチルインダン4.5gを加え、混合物を80〜90℃まで加熱する。反応終了後、混合物を20〜25℃に冷却し、濃塩酸1.2mLと水1.2mLとを加え、混合物を30分間撹拌する。HPLC分析から、予想される生成物が89%の純度で得られ、二量体不純物や位置異性体不純物を含んでいないことが分かる。
【0075】
上記の混合物を撹拌しながら、水60mL、塩化メチレン60mLおよび6N NaOH9mLを加える。有機相を分離し、水60mLで洗浄する。有機相を蒸留し、溶媒をイソプロピルアルコールに交換して、最終容量を120mLとする。混合物を70℃まで加熱し、コハク酸1.9gを加え、70℃で30分間撹拌を続ける。混合物を20〜25℃までゆっくり冷却し、ろ過後、イソプロパノール12mLで洗浄して、8−(フェニルメトキシ)−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−(1H)−キノリン−2−オンコハク酸塩を56%の収率で得る。HPLC分析による生成物の純度は>99%である。
【0076】
実施例6 EtOH/水による精製
【化14】
8−(フェニルメトキシ)−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−(1H)−キノリン−2−オン2.0gに、35mL/gのEtOHと5mL/gの水との混合物を加え、還流温度まで加熱する。還流温度に達したところで、5mL/gの上記のEtOH/水混合溶媒に溶解した安息香酸(1.2eq.)を加える。還流温度を30分間維持する。その後、20〜25℃まで混合物を一晩かけてゆっくり冷却する。得られた懸濁液をろ過して白色固体を得、真空乾燥する。白色固体をHPLC分析してクロマトグラフ純度を求め、またキラルHPLC分析によりエナンチオマー純度を求める。白色固体生成物に含まれるエナンチオマー不純物の割合は0.05%未満である。他の不純物は検出されない。
【0077】
実施例7 アセトン/水による精製
【化15】
8−(フェニルメトキシ)−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−(1H)−キノリン−2−オン2.0gに、35mL/gのアセトンと1mL/gの水との混合物を加え、還流温度まで加熱する。還流温度に達したところで、5mL/gの上記のアセトン/水混合溶媒に溶解したジベンゾイル−L−酒石酸一水和物(1.2eq.)を加える。還流温度を30分間維持する。その後、20〜25℃まで混合物を一晩かけてゆっくり冷却する。得られた懸濁液をろ過して白色固体を得、真空乾燥する。白色固体をHPLC分析してクロマトグラフ純度を求め、またキラルHPLC分析によりエナンチオマー純度を求める。白色固体生成物に含まれるエナンチオマー不純物の割合は0.05%未満である。他の不純物は検出されない。
【0078】
実施例8 EtOH/水による精製
【化16】
8−(フェニルメトキシ)−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−(1H)−キノリン−2−オン2.0gに、35mL/gのEtOHと5mL/gの水との混合物を加え、還流温度まで加熱する。還流温度に達したところで、5mL/gの上記のEtOH/水混合溶媒に溶解したL−酒石酸(1.2eq.)を加える。還流温度を30分間維持する。その後、20〜25℃まで混合物を一晩かけてゆっくり冷却する。得られた懸濁液をろ過して白色固体を得、真空乾燥する。白色固体をHPLC分析してクロマトグラフ純度を求め、またキラルHPLC分析によりエナンチオマー純度を求める。白色固体生成物に含まれるエナンチオマー不純物の割合は0.06%未満である。他の不純物は検出されない。
【0079】
実施例9 保護されたベンジルインダカテロールの合成
【化17】
別の反応器中において、炭酸ナトリウム(0.57kg/kg、2等量)を水(13L/kg)に溶解した溶液を調製する。この炭酸塩溶液を、実施例1で得られる生成物溶液に加え、ジエチルインダノールアミンHCl(0.72kg/kg、1.2等量)を加える。容量が13L/kgになるまで混合物を大気圧下で加熱蒸留する。水(3L/kg)を加え、容量が13L/kgになるまで混合物を大気圧下で蒸留する。反応系を還流下に置き、20時間還流する。
【0080】
反応終了後、混合物を20〜25℃に冷却し、塩化メチレン(15L/kg)を加える。混合物を撹拌、デカントし、水相を塩化メチレン(5L/kg)で抽出する。有機相を水(5L/kg)で洗浄する。
【0081】
実施例10 インダカテロールマレイン酸塩の製造
【化18】
ジクロロメタン560mL、水560mLおよび6N 水酸化ナトリウム水溶液30mLの混合物を撹拌しながら、8−(フェニルメトキシ)−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−(1H)−キノリン−2−オン酒石酸塩28gを溶解する。相を分離し、有機相を水280mLで洗浄する。
【0082】
有機相を蒸留して最終容量を140mLとし、メタノール420mLとPd/C(5%〜50%含水品)4.2gとを加える。反応系を窒素パージし、次いで0.3barの高圧で水素パージし、反応が終了するまで撹拌する。
【0083】
触媒をろ過により除き、溶媒をイソプロパノールに交換して最終容量を950mLに調整する。得られた溶液を70〜80℃まで加熱した後、温度を70〜80℃に維持しながら、イソプロパノール140mLに溶解したマレイン酸5.4gを加えた。混合物を70〜80℃で30分間撹拌後、20〜25℃までゆっくり冷却する。得られた懸濁液をろ過し、固体残渣をイソプロパノール90mLで洗浄後、乾燥してインダカテロールマレイン酸塩18gを得る(収率:79%)。HPLC分析による生成物の純度は99.6%である。
【0084】
実施例11 固体状態のインダカテロール遊離塩基の単離
【化19】
ジクロロメタン20mL、水20mLおよび6N水酸化ナトリウム水溶液1mLの混合物を撹拌しながら、8−(フェニルメトキシ)−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−(1H)−キノリン−2−オン酒石酸塩1gを溶解する。相を分離し、有機相を水10mLで洗浄する。
【0085】
有機相を蒸留して最終容量を5mLとし、メタノール15mLとPd/C(5%〜50%含水品)0.15gとを加える。反応系を窒素パージし、次いで0.3barの高圧で水素パージし、反応が終了するまで撹拌する。
【0086】
触媒をろ過により除き、溶媒をイソプロパノールに交換して最終容量を8mLに調整する。得られた懸濁液を0〜5℃に冷却後、ろ過する。固体残渣をイソプロパノールで洗浄した後、乾燥してインダカテロール遊離塩基0.47g(77%)を得る。HPLC分析による純度は99.6%である。
【0087】
インダカテロール遊離塩基試料を20〜25℃で保存し、1か月後に分析しても純度は全く低下しない。
【0088】
実施例12 インダカテロール遊離塩基からのマレイン酸塩の製造
【化20】
固体のインダカテロール0.47gをイソプロパノール20mLに懸濁し、70〜80℃まで加熱する。温度を70〜80℃に維持しながら、イソプロパノール5mLに溶解したマレイン酸0.15gを加える。混合物を0〜5℃に冷却し、生成した固体をろ過すると、インダカテロールマレイン酸塩0.52gが99.7%の純度で得られる。
【0089】
比較例13 インダカテロールマレイン酸塩への直接変換
8−(フェニルメトキシ)−5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−(1H)−キノリン−2−オン安息香酸塩(4g)を酢酸(40mL)に溶解する。Pd/C(5%、50%湿潤品、0.6g)を加え、生成物を水素雰囲気下で水素化する。反応が終了すれば、触媒をろ過により除き、ろ液を容量が8mLになるまで減圧蒸留する。
【0090】
エタノール(40mL)を加え、混合物を50℃まで加熱する。エタノール2.4mLに溶解したマレイン酸1.2gを加え、混合物にインダカテロールマレイン酸塩を種結晶として加えた後、0〜5℃までゆっくり冷却する。固体をろ過し、エタノール5mLおよびイソプロパノール3mLで洗浄して、インダカテロールマレイン酸塩6.0gを得る。
【0091】
得られた固体のH−NMR分析を行うと、酢酸に帰属されるδ1.88(400MHz、DMSO−d)のピークの積分値から2〜4%の酢酸の存在が明らかとなる。