(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1本体は、濾過膜の入側面に対応する位置に形成されて試料が流入される入側空間と、前記入側空間と連結された試料注入のための注入口と、前記注入口と前記入側空間を連結して試料を移送する案内部と、を含む、請求項1に記載の粒子濾過装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、粒子を分離することは、液体などの試料に含まれている特定の大きさの固体を分離することであり、多様な産業に応用されている技術である。このうち特に濾過は、濾過媒体の両面に圧力差を加えて濾過流体を通過させて濾過媒体の気孔より大きい粒子を媒体表面に堆積させる技術である。濾過は、簡単に適用が可能であり、エネルギー消費が少なく、小さい空間を活用して適用可能であるため、医療、化学、環境および食品工業など全般的な分野で活用されている。
【0003】
例えば、前記濾過技術を活用して生体試料を分離し、これを活用して各種の生化学検査を行う研究事例が報告されている。
【0004】
疾病を有している患者の生体流体内には基本的な血液細胞だけでなく、各種疾病の指標になり得る生体粒子が存在する。このような生体分子を選択的に分離し検出して患者の状態を診断し、個人オーダーメード型治療に活用することができる。
【0005】
このうち代表的な例としては、血中腫瘍細胞(Circulating tumor cell、以下「CTC」という)の選択的な分離を活用した癌診断である。CTCは、転移性癌患者の血液内に分布する癌細胞であり、原発癌組織から落ち出て血流に沿って移動中、他の組織に浸透することによって癌転移の誘発に核心的な役割を果たす細胞である。患者の血液内に存在するCTCの個数は、癌の進行程度と密接な関連があると知られている。したがって、これを捕獲して数字を数えることは癌の進行状態をモニターできる重要な生体指標になり得る。
【0006】
しかし、CTCは、血液に存在する他の血球細胞と比較した時、血球1億個当り一個の比率でその数が非常に希薄である。したがって、CTCを重要な生体指標として活用するためには非常に精密且つ正確な細胞分離技術が要求される。
【0007】
現在まで知られているCTC分離方法は、大部分CTC表面に発現されている生体分子と特異的に結合する抗体を活用する方法である。この抗体を磁性ビードや特定の表面にコーティングし、ここに血液を流れ出して磁性ビード表面や特定表面にCTCが結合するようにする方式である。しかし、前記従来の構造はCTCの表面に発現する生体分子の種類が多様であり、その量も不均一で限界があるという事例が最近報告されている。
【0008】
前述した限界点を克服するために、マイクロチップ上に細胞の物理的特徴による分離方法を接続した事例も多数紹介されている。例えば、癌細胞と血球細胞の大きさの差により細胞を捕獲および検出する技術と関連した代表的な先行技術文献としては、特許文献1があり、具体的には、標的生体粒子または細胞の分離のための濾過モジュールを含む濾過システムとこれを用いた細胞の濾過方法に関する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、試料から粒子の分離時間を短縮することができ、分離効率を高めることができる粒子濾過装置および粒子濾過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態の粒子濾過装置は、試料を濾過して粒子を分離する濾過膜と、前記濾過膜の入側面に連結され、前記濾過膜の入側面に試料を供給する第1本体と、前記濾過膜の出側面に連結され、前記濾過膜を経て粒子が分離された透過液が収容される第2本体と、を含み、前記第2本体と前記濾過膜の出側面の間に透過液が予め収容された構造であってもよい。
【0012】
前記第2本体と濾過膜の出側面の間に予め収容される透過液は、濾過膜の出側面に接するように収容されてもよい。
【0013】
前記透過液は、濾過膜を経て濾過された濾過物と同一成分の溶液であってもよい。
【0014】
前記第1本体は、濾過膜の入側面に対応する位置に形成されて試料が流入される入側空間と、前記入側空間と連結されて試料注入のための注入口と、前記注入口と前記入側空間を連結して試料を移送する案内部と、を含むことができる。
【0015】
前記第1本体と第2本体の間に形成され、前記案内部と連結され、前記注入口と連通されて前記注入口から注入された試料が収容される試料空間を含むことができる。
【0016】
前記第2本体は、濾過膜の出側面に対応する位置に形成されて透過液が収容される出側空間を含むことができる。
【0017】
前記第1本体と第2本体の間に形成され、前記出側空間に連結されて濾過膜を経た濾過物が貯蔵される濾過物貯蔵部をさらに含むことができる。
【0018】
前記第2本体は、出側空間と前記濾過物貯蔵部を連結する流路が形成されてもよい。
【0019】
前記第1本体は、前記案内部と連結される換気口がさらに形成されてもよい。
【0020】
前記第1本体と前記第2本体は、中心を基準に回転可能にディスク形状の構造体から形成され、前記濾過膜は、前記第2本体の中心から半径方向に離隔して位置してもよい。
【0021】
前記注入口は、前記第1本体の中心と前記濾過膜の間に位置してもよい。
【0022】
前記案内部は、試料移動方向に沿って前記試料空間から入側空間に向かうほど半径方向に幅が漸次に狭くなるように形成されてもよい。
【0023】
前記濾過膜は、10nm〜30cm直径の気孔を有する構造であってもよい。
【0024】
前記濾過膜は、生体細胞、無機材料粒子、有機材料粒子を濾過する構造であってもよい。
本実施形態の粒子分離方法は、透過液を粒子濾過装置の出側空間に注入する段階と、試料を前記粒子濾過装置に注入する段階と、遠心力を発生させて前記試料を前記粒子濾過装置の濾過膜に案内する段階と、前記濾過膜を通じて前記試料を濾過させて粒子を分離する段階と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0025】
このように本実施形態によれば、試料濾過前に濾過膜の出側面全面が透過液により予め接触されており、濾過膜の気孔が小さくて毛細管圧力が大きくても試料がより迅速且つ容易に濾過膜の気孔を通過することができるようになる。そこで、粒子分離に所要される時間をより短縮することができるようになる。
【0026】
また、より低い圧力下でも試料の濾過が行われるようになる。
【0027】
また、濾過膜の全面にかけて均一に試料が濾過膜を通過することによって、濾過膜の活用面積を最大限広げて濾過効率を高めることができるようになる。
【0028】
また、分離された粒子を本体内で直ちに染色したり粒子を溶解して検出溶液の形態で製造することができるため、本体を解体することもなく、粒子を検出することができるという長所がある。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものに過ぎず、本発明を限定する意図ではない。ここで使用される単数の形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を含むという時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含む可能性があることを意味する。また、図面に表示された各構成の大きさおよび厚さは説明の便宜のために任意に示したものであり、本発明は必ず図示されたものに限定されるのではない。
【0031】
以下、図面を参照して本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施形態を説明する。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に理解することができるように、後述する実施形態は本発明の概念と範囲を逸脱しない限度内で多様な形態に変形することができる。したがって、本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0032】
以下、本発明において「〜上に」という用語は、対象部材の上または下に位置することを意味し、必ず重力方向を基準に上部に位置することを意味するものではない。
【0033】
以下、本実施形態は、粒子分離のための試料として、希少細胞粒子が含まれている全血(whole blood)を生体試料として、生体試料に含まれている希少細胞粒子である血中腫瘍細胞(CTC)を濾過分離することを例に挙げて説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものでなく、多様な試料から粒子を濾過方式で分離する全ての技術に適用可能であるといえる。
【0034】
図1と
図2は、本実施形態による粒子濾過装置の外形を示しており、
図3は、
図1のA−A’線断面を示している。
【0035】
本実施形態による粒子濾過装置10は、生体試料を濾過することができる濾過膜100と、濾過膜100の上部に配置される第1本体200と、濾過膜100が付着され、第1本体200下側に結合する第2本体300とを含む。
【0036】
前記第1本体200は、濾過膜100の入側面に連結されて濾過膜の入側面に生体試料を供給する。また、前記第2本体300は、濾過膜100の出側面に連結されて濾過膜を経て粒子が分離された濾過物を収容する。
【0037】
本実施形態の粒子濾過装置は、前記第2本体と前記濾過膜の出側面の間に透過液(
図3の315参照)が予め収容された構造からなっている。そこで、濾過膜の入側面に流入した試料がより小さい圧力下でも濾過膜の微細な気孔を容易に通過できるようになる。したがって、より迅速に試料を濾過して粒子を分離することができるようになる。これについてはより詳細に後述する。
【0038】
ここで、濾過膜の入側面とは、濾過膜の両面のうち、濾過膜に形成された気孔の入口が位置した面であって、生体試料が接する面を意味し、濾過膜の出側面とは、入側面の反対側面であって、濾過膜に形成された気孔の出口が位置した面を意味する。本実施形態の場合、
図3に示されているように、z軸方向に沿って濾過膜の上面が入側面をなして第1本体が濾過膜上部に配置され、反対側である下面が出側面をなして第2本体が濾過膜下部に配置される。また、生体試料または試料は粒子を含んでいる状態を意味し、生体試料または試料が濾過膜を経ながら粒子が分離された状態の溶液を濾過物という。
【0039】
前記濾過膜100は、粒子分離のために多数の気孔が形成され、多様な大きさの粒子分離のために3nm〜30cmの多様な大きさの気孔が形成され得る。本実施形態で前記濾過膜100は、全血試料内に存在する血中腫瘍細胞を捕獲することができるように気孔の直径が5μm乃至10μmに形成され得る。ただし、これは第2本体300に濾過膜100を付着する時に発生し得る誤差を含むものであり、微細気孔の直径が必ずこれに制限されるわけではなく、分離しようとする粒子の大きさに応じて直径が多様に形成され得る。
【0040】
濾過膜100は、生体細胞や無機材料粒子または有機材料粒子などを濾過することができるように多様な素材で形成され得る。例えば、本実施形態の濾過膜100は、生体試料に適用することができるように生物学的に不活性である素材で形成され得る。濾過膜は同時に光学的透過性を備えた素材で形成され得る。これによって、前記濾過膜100を第2本体300から分離することなく、光学検出器を用いて希少細胞を検出することができる。
【0041】
濾過膜100は、前記第2本体300との接着が容易になるように前記第2本体300と同一の素材で形成され得る。例えば、第2本体300および濾過膜100が共にポリカーボネート素材で形成された場合、第2本体300と濾過膜100が結合されるエッジ部位に少量のアセトンを投与して接着部位を化学的に溶解することによって濾過膜100を第2本体300に接着させることができる。これによって、第2本体300に濾過膜100設置時に発生し得るしわ現象や不完全な設置による希少細胞の漏れを防止することができる効果がある。
【0042】
ただし、濾過膜と第2本体間の接着方法が必ず化学的接着方法に限定されるのでなく、熱接着(thermal bonding)、紫外線樹脂接着(UV resin bonding)、超音波接着(ultrasonic bonding)などの多様な接着方式を通じて濾過膜100が第2本体300に非可逆的に接着され得る。
【0043】
第1本体200と第2本体300は、中心を基準に回転可能にディスク形状の構造体で形成され得る。本実施形態による粒子分離装置10は、第1本体200と第2本体300が順次に積層されたディスク構造体であってもよい。
【0044】
濾過膜100は、第2本体200の中心から半径方向で離隔して位置することができる。第1本体200と第2本体300は、同一の直径を有するように形成され得る。
【0045】
また、本実施形態の粒子濾過装置10には、中心部に回転軸が設置され得るように第1本体200と第2本体300の中心を同時に貫く中空が形成され得る。
【0046】
前記第1本体200と第2本体300は、表面が生物学的に不活性であると同時に光学的透過性を備えた素材、例えば、ポリスチレン(polysrene、PS)、ポリジメチルシロキサン(poly dimethyl siloxane、PDMS)、ポリメチルメタクリレート(poly methlmethacrylate、PMMA)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、多環式オレフィン(polycclic olefins)、ポリイミド(polyimide)ポリウレタン(polyurethanes)などの素材であってもよい。
【0047】
これによって、第1本体200内部に生体試料が注入される場合、前記生体試料が第1本体200および第2本体300と反応せず、生物学的安定性を確保できると同時に、分離された希少細胞を粒子濾過装置10外部に排出させることなく、光学検出器を通じて第1本体200および第2本体300を透過して検出可能な長所がある。
【0048】
前記第1本体200は、濾過膜100の入側面に対応する位置に形成されて生体試料が濾過膜に流入される入側空間311と、前記入側空間311と連結されて試料注入のための注入口211と、前記注入口と前記入側空間を連結して試料を移送する案内部230とを含む。
【0049】
注入口211は、第1本体200を貫通して形成され得る。そこで、前記注入口211を通じて第1本体200の内部に希少細胞の分離のための生体試料が注入され得る。また、注入口211は、
図2に示されているように、複数が第1本体200の中心を基準に円周方向に沿って間隔をおいて形成され得る。これによって、第1本体200の多くの方向で生体試料の注入が可能である。
【0050】
注入口211は、第1本体200の中心と濾過膜100の間に位置することができる。これによって、第1本体200および第2本体300が回転する場合、注入口211を通じて注入された生体試料が遠心力を通じて濾過膜100に容易に移動することができる。
【0051】
前記第1本体200には、注入口211と共に換気口212が形成され得る。換気口212は、第1本体200を貫通して形成され得る。この時、換気口212は、
図1に示されているように、第1本体200上に注入口211と隣接するように形成され得る。これによって、注入口211に生体試料の注入時、本体200内部に存在していた空気を第1本体200外部に円滑に排出させることができる。
【0052】
前記第1本体200の内部には、注入口211と連結される案内部230が形成され得る。前記案内部230は、注入口211と前記濾過膜上部の入側空間311の間を連結する。案内部230は、注入口211を通じて第1本体200内部に注入された生体試料を入側空間に移動させて濾過膜100の入側面に案内する。
【0053】
案内部230は、複数が第1本体200の円周方向に沿って間隔をおいて形成され得る。また、案内部230は、
図2に示されているように、注入口211を基準に第1本体200中心の反対方向に形成され得る。これによって、粒子濾過装置10の回転時に生体試料が遠心力により一層迅速に第1本体200の半径方向に案内され得る。
【0054】
前記第1本体200は、内部に注入口211を通じて第1本体内部に注入された生体試料が収容される試料空間を形成する。本実施形態で前記試料空間は、案内部と連結された生体試料収容空間と理解することができる。
【0055】
そのために、前記案内部230は、試料空間として作用する第1部分231と、生体試料移動通路として作用する第2部分232とを含む。そこで、注入口211を通じて注入された生体試料は、試料空間を形成する第1部分231に収容され、第1部分231と連結された第2部分232を通じて濾過膜に移動する。
【0056】
第1部分231は、
図1と
図2に示されているように、第1本体200の中心を基準に前記第1本体200の半径方向に幅が漸次に広くなるように形成され得る。これによって、注入口211を経て第1部分231に流入した生体試料の流体抵抗を最小化させることができる。第1部分231は、断面が第1本体200の中心を基準に円弧形状で形成されるか、必ずこのような形状に制限されるのではない。
【0057】
前記第1部分231は、第1重板220 を貫通して形成されるが, 第1本体200の中心を基準に第1部分231の端部から前記第1本体200の半径方向外側に幅が漸次に狭くなるように形成され得る。これによって、第1部分231を経て第2部分232に案内された生体試料を第1本体200の中心を基準に第2部分232の端部に集め易い。
【0058】
第2部分232の端部に移動した生体試料は、第2部分の端部と連結された入側空間311に移動する。前記入側空間311は、第2部分と連結され、濾過膜100の入側面上部に形成される空間と理解することができる。
【0059】
第2部分232を通じて移動した生体試料は、入側空間311に収容されて濾過膜の入側面全面に接触する。入側空間311に案内されてきた生体試料が
図3の矢印方向に沿って濾過膜を通じて濾過される。
【0060】
濾過膜100を経た濾過物は、濾過膜100の出側面に設けられた出側空間312に移動する。
【0061】
図4に示されているように、前記第2本体300には、濾過膜の出側面に対応する位置に濾過膜を経た透過液が収容される出側空間312が形成される。前記出側空間312は、第2本体300で濾過膜の出側面下に形成される空間と理解することができる。
【0062】
本実施形態の粒子濾過装置10は、前記出側空間312に生体試料を濾過させる前に予め透過液315が収容された構造からなっている。
【0063】
前記透過液315は、生体試料から粒子が分離された状態と同一の溶液、つまり、濾過膜を通じて濾過されて出た濾過物と同一の溶液であってもよい。または、前記透過液は、分離対象粒子がなく、生体試料や透過液に影響を与えない溶液であって、濾過膜の出側面で濾過膜気孔の毛細管圧力を減らすことができる溶液であれば全て適用可能である。
【0064】
透過液315は、例えば、粒子濾過装置の製造のために第1本体と第2本体を組み立てる時、第2本体の出側空間に予め収容させることができる。または、第2本体に出側空間と連結され、開閉可能な別途の注入口を形成して、粒子濾過装置の製造後、前記注入口を通じて出側空間に透過液を注入することができる。
【0065】
前記出側空間312に予め収容される透過液315は、濾過膜100の出側面に接するように収容され得る。そこで、出側空間内に透過液が完全に満たされて濾過膜の出側面全体が透過液と接した状態となる。前記構造以外に、前記出側空間に若干の透過液だけが収容されて、濾過膜の出側面に透過液が接しないことがある。このような構造の場合、必要時や使用時に粒子濾過装置を揺さぶって出側空間内に収容された透過液を濾過膜の出側面全体に接触させることによって、同一の作用効果を得ることができる。
【0066】
図4は、本実施形態による透過液の作用効果を説明するための概略的な図面である。
【0067】
図4に示されているように、濾過膜100の出側面に面する出側空間312に粒子を含まない透過液315を満たすと、透過液が濾過膜の気孔Pに対して迎え水として作用するようになる。
【0068】
濾過膜を用いた粒子分離は、基本的に濾過膜両面の間の圧力差を用いて濾過を行う。濾過時に試料の水溶液は濾過膜の気孔を通過し、気孔より大きい粒子は濾過膜の気孔を通過できずに濾過膜の入側面表面に堆積する。
【0069】
試料の水溶液が濾過膜の気孔を通過するためには、気孔出口で表面張力と関連した毛細管圧力を克服しなければならない。このような毛細管圧力は、表面張力に比例し、気孔の大きさに反比例する。したがって、気孔が非常に小さい濾過膜を用いた濾過工程であるほど、試料の水溶液が気孔を通過するためには非常に大きい圧力が必要となる。
【0070】
図4で、比較例は、迎え水の原理を用いていないものであり、濾過膜の出側面に位置した出側空間に透過液なしに試料を濾過させた状態を示している。
【0071】
比較例のように透過液がない状態では、濾過膜100の入側面に流入した試料は、濾過膜の気孔Pにかかった毛細管圧力により試料の水溶液が気孔を通過できず、特定部分Rの気孔の間に水溶液が毛細管の力を克服して流れるようになると、この特定部分Rだけに水溶液が濾過される。そこで、水溶液が流れる特定部分で流体の流れ抵抗が顕著に減少して、試料は継続して特定部分だけに流れるようになり、この部分だけで濾過が行われるようになる。したがって、水溶液が流れる特定部分だけに粒子分離が行われるようになる。結果的に、比較例の場合、濾過膜全面で濾過が行われず、特定部分Rの面積だけが粒子分離に活用される。
【0072】
このように、濾過膜面積全体が濾過に活用されないことによって、濾過に要する時間が多くかかり、濾過効率が落ちるようになる。
【0073】
図4で実施例は、言及したとおり、迎え水原理を用いたものであり、濾過膜の出側面の出側空間312に予め透過液315を満たして試料を濾過させた状態を示している。
【0074】
実施例のように濾過膜100の出側空間312に透過液315が満たされると、濾過膜の出側面は透過液に接触した状態となる。この状態で濾過膜の入側面に流入した試料の水溶液は、濾過膜気孔Pの出口に接触している透過液315の凝集力により毛細管力の克服なしに直ちに気孔を通過して円滑に流れるようになる。前記透過液は、濾過膜の出側面全面に接触しているため、試料の水溶液は濾過膜の入側面全面で気孔を通過して流れるようになる。
【0075】
そこで、濾過膜100の全面でより小さい流れ抵抗により試料の水溶液が気孔を通過しながら濾過が行われるようになる。したがって、濾過膜全面で濾過が行われることによって、濾過膜全体が濾過に活用されて濾過時間および濾過効率を大きく向上させることができるようになる。また、濾過膜の気孔が小さい場合にも、より小さい圧力で濾過が行われるようになる。
【0076】
本実施形態の粒子濾過装置10は、第1本体200と第2本体300の間に形成され、濾過膜100を経て濾過された濾過物が貯蔵される濾過物貯蔵部400を含むことができる。濾過物貯蔵部400は、第1本体200と第2本体300の結合によりその間に形成される粒子濾過装置10内部の空間であってもよいが、必ずこのような構成に制限されるわけではない。
【0077】
濾過物貯蔵部400は、濾過膜100を基準に第1本体200中心の反対方向に形成される。濾過物貯蔵部400は、
図1に示されているように、複数が粒子濾過装置10内部に円弧形状に形成され得る。
【0078】
この時、流路330が出側空間311と濾過物貯蔵部400の間に形成されて濾過膜100を通過した濾過物を濾過物貯蔵部400に供給することができる。流路330の幅と高さは濾過物が通過できるものの、濾過物が再び濾過膜100方向に逆流するのを防止することができるようにそれぞれ1mm以下に形成されるか、必ずこのような数値に制限されるわけではない。
【0079】
図5は、本実施形態により迎え水の原理活用有無に応じた濾過膜周辺の溶液流れをシミュレーションした結果を示している。
【0080】
図5で、実施例は、迎え水原理を適用して濾過膜の出側面に透過液を満たし、溶液流れをシミュレーションした結果であり、比較例は、迎え水原理を用いないものであって、濾過膜の出側面に透過液がない状態で溶液の流れをシミュレーションした結果である。
【0081】
比較例の場合、注入口を通じて一定の圧力が加えられた時、溶液は入側空間を満たすようになり、濾過膜の気孔出口で毛細管の力を受けるようになる。注入口に加えられる圧力が毛細管の力より小さい時には、濾過膜の気孔を克服することができず、これによって溶液は流れずに閉じ込められるようになる。気孔を克服するために毛細管の力より大きい圧力を注入口に加える時、濾過膜内に一部の気孔部分を通過して溶液が流れるようになり、溶液はこの流れ通路だけを活用して流れるようになることを示している。
【0082】
しかし、実施例のように迎え水が出側空間に存在する場合には、入側空間の溶液は気孔出口の毛細管の力を克服せず、迎え水と当接して流れるようになる。そこで、遥かに低い圧力でも溶液が流れることができる。
【0083】
また、
図5のグラフのように、溶液が流れる時、濾過膜通過前後の圧力差を計算すると、比較例のように迎え水なしに濾過膜の一部分を通じて溶液が流れる場合、低い流れ面積により遥かに大きい圧力差を示す。これは生体物質の濾過時に安定性を阻害することができる。これとは逆に、実施例のように迎え水の適用時には、濾過膜の全面的を通じて遥かに低い圧力差で流れることができるようになり、安定した物質濾過を行うことができる。
【0084】
以上では本発明の第1実施形態による粒子濾過装置10の構成について説明した。以下では本発明の第1実施形態による粒子濾過装置10を用いた粒子濾過方法を説明する。
【0085】
図6は、本実施形態による粒子濾過装置を用いた粒子濾過方法を示すフローチャートである。
【0086】
図6を参照すれば、本実施形態による粒子濾過装置10を用いた粒子濾過方法は、粒子濾過装置の出側空間内に透過液を予め注入する段階(S100)と、生体試料が粒子濾過装置内部に注入される段階(S110)と、遠心力を発生させて生体試料を濾過膜100に案内する段階(S120)と、濾過膜100を通じて生体試料を濾過させて粒子を分離させる段階(S130)とを含むことができる。
【0087】
透過液注入段階(S100)では、試料に対する濾過前に濾過膜の出側面に面する出側空間内に透過液が注入される。本実施形態では生体試料として血中腫瘍細胞が含まれている全血試料を使用して、濾過膜を通じて血中腫瘍細胞粒子を分離するようになるため、透過液は全血試料で血中腫瘍細胞が除去された状態の水溶液であってもよい。透過液は濾過膜の出側面に接した状態となる。
【0088】
生体試料注入段階(S110)では、注入口211を通じて粒子濾過装置10内部に生体試料が注入される。前記注入された生体試料は、案内部230に血中腫瘍細胞を含む状態で存在するようになる。
【0089】
案内段階(S120)では、前記案内部230に存在する生体試料を濾過膜100に案内する過程を経る。この時、本実施形態では生体試料の迅速な案内のために粒子濾過装置10を回転させて遠心力を発生させることができる。このような方法により生体試料は濾過膜上部の入側空間内に位置するようになる。
【0090】
濾過段階(S130)では、前記濾過膜100に案内された生体試料が濾過される過程を経る。生体試料は、濾過膜の入側面と出側面の間の圧力差により濾過膜を経ながら濾過が行われる。この時、分子大きさが大きい血中腫瘍細胞2は、濾過膜100の気孔を通過することができずに濾過膜の入側面に残留するようになり、残りは濾過膜の気孔を通過して濾過膜の出側面に設けられた出側空間に移動する。
【0091】
この過程で、前記出側空間に予め満たされている透過液が濾過膜の気孔出口で試料に対して凝集力を加えて、試料が毛細管の力の克服なしにも容易に濾過膜の気孔を通過できるようになる。濾過段階で濾過膜を通過した濾過物は流路330に沿って濾過物貯蔵部400に移動するようになる。
【0092】
実験例1
図7は、本実施形態による粒子濾過装置の粒子分離実験結果を比較して示す写真である。
本実験では、気孔大きさが8μmである濾過膜を備えた粒子濾過装置に試料として10μmの粒子を含む水溶液を注入して濾過を施した。
【0093】
図7で、比較例と実施例は共に同一な構造の粒子濾過装置であり、単に実施例は濾過膜の出側面の出側空間に透過液が予め注入された状態であり、比較例は透過液がない状態である。
【0094】
図7の比較例の写真に示されているように、透過液による迎え水原理を適用せずに濾過を行った結果、濾過膜の特定部分だけが濾過に活用されている。そこで、濾過膜を拡大してみた時、水流のように水溶液が流れた部分だけに粒子が堆積していることを確認することができる。
【0095】
図7の実施例は、透過液による迎え水原理を適用して濾過を行った時の写真を示している。実施例の場合、比較例とは異なり、特定部分に水流のような流れが形成されず、濾過膜の全面的が円滑に濾過に活用されていることが分かる。その結果、濾過膜の拡大観察時に濾過膜の全面的で均一に粒子が堆積していることを確認することができる。
【0096】
このような実験を通じて、同一の構造の粒子濾過装置において濾過膜の出側面側に透過液を予め注入する場合、濾過膜全面を通じて濾過が均一に行われることが分かる。
【0097】
図8は、本実施形態により迎え水原理を活用して実際の蛍光粒子を分離実験した結果を示している。
【0098】
図8で、比較例と実施例は共に同一の構造の粒子濾過装置であり、単に実施例は濾過膜の出側面の出側空間に透過液が予め注入された状態であり、比較例は透過液がない状態である。
【0099】
実際の蛍光粒子を分離実験した結果、実施例のように迎え水原理を活用した濾過膜では全面的を通じて均一に溶液が濾過されるため、全面的に均一に濾過された粒子が分布していることを確認することができる。これに対して、比較例のように迎え水なしに濾過した場合には、濾過膜の部分的な面積を通じた流体流れにより下段部の一部分だけが濾過に活用されることを観察することができる。粒子濾過後の結果で、濾過に活用される面積と活用されない面積における明確な結果の差を確認することができる。
【0100】
また、
図8のグラフのように、濾過膜の上段部を零点とし、各位置での蛍光強さを測定した結果、迎え水原理が適用された実施例の場合には、全面的で均一な蛍光強さの分布を示す反面、迎え水原理が適用されなかった比較例では、濾過膜の下段部だけに集中的に蛍光粒子が分離された結果を確認することができる。
【0101】
実験例2
図9と
図10は、本実施形態による粒子濾過装置を通じてCTCの分離実験結果を示すグラフである。
【0102】
図9は、人工的に注入されたCTC個数と実際の粒子濾過装置を通じて分離されたCTC個数との相関関係を示しており、
図10は、分離効率を示している。
【0103】
図9と
図10で、比較例と実施例は共に同一の構造の粒子濾過装置を使用しており、単に実施例は濾過膜の出側面の出側空間に透過液が予め注入された状態であり、比較例は透過液がない状態でCTC分離実験を施した。
【0104】
実施例と比較例は共に人工的に計算された個数だけCTCを試料に入れて当該試料サンプルを粒子濾過装置に注入して濾過膜を通じて濾過した。濾過完了後、濾過膜に捕獲されたCTCの個数を集計して比較した。
【0105】
図9に示したように、実施例の場合、比較例と比較して遥かに多くの個数のCTCが捕獲されたことを確認することができる。また、
図10に示したように、実施例のように迎え水原理を適用した時、CTCの分離効率が95%で、比較例の54%と比較して非常に向上したことが分かる。
【0106】
図11は、本実施形態による粒子濾過装置を活用した実際の癌患者サンプルのCTC分離結果を示すグラフである。
【0107】
図11で、実施例は、言及したとおり、迎え水原理が適用された粒子濾過装置に対する分離結果を示しており、比較例は、現在商品化されている迎え水原理が適用されていないCTC分離キットに対する結果を示している。
【0108】
図11に示されているように、分離実験の結果、同一の患者サンプルを用いたにもかかわらず、大部分の患者サンプルで比較例より実施例による粒子濾過装置でより多いCTCが検出された。これによって、比較例に比べて迎え水原理を活用した実施例がより広い面積で安定的にCTCを分離できることが分かる。
【0109】
また、CTC分離後の以降の遺伝子診断工程のためには、阻害剤として作用し得る白血球を最大限に除去しなければならない。実施例の場合、比較例より遥かに少ない数の白血球がフィルターに残っており、白血球の除去でも高い効果が得られることを確認することができる。
【0110】
このような実験を通じて、同一の構造の粒子濾過装置において濾過膜の出側面側に透過液を予め注入する場合、粒子分離効率をより高めることができることが分かる。
以上では、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。