特許第6371884号(P6371884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371884
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】記録媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20180730BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   H01L21/302 201B
   H05H1/46 A
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-85770(P2017-85770)
(22)【出願日】2017年4月25日
(62)【分割の表示】特願2014-544366(P2014-544366)の分割
【原出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2017-135414(P2017-135414A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2017年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-242602(P2012-242602)
(32)【優先日】2012年11月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-266577(P2012-266577)
(32)【優先日】2012年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227294
【氏名又は名称】キヤノンアネルバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】小平 吉三
(72)【発明者】
【氏名】中川 行人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 資三
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−216653(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/090127(WO,A1)
【文献】 特表2003−514389(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/115131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ発生室と、
基板を処理する処理室と、
前記処理室と前記プラズマ発生室との間に設けられ、前記プラズマ発生室からイオンを引き出しイオンビームを形成するためのグリッドと、
前記プラズマ発生室に放電用ガスを導入するためのガス導入部と、
前記処理室内を排気するための排気手段と、
前記処理室内に設けられた基板を載置するための基板ホルダと、
前記基板の処理が行われる前の面内膜厚分布の測定結果が入力される制御装置と、
前記プラズマ発生室の外部であって、前記プラズマ発生室の前記グリッドと対向する天井部に設けられた電磁コイルと、を備え
前記電磁コイルは、前記天井部の外周に設けられた外側コイルと、前記天井部の内周に設けられた内側コイルとを有し、
前記制御装置は、前記外側コイルの電流値と、前記内側コイルの電流値とを、独立して電流値が制御可能である外側コイル接続電源と内側コイル接続電源とを備えたイオンビームエッチング装置の前記制御装置を制御する制御プログラムが格納された記録媒体であって、
前記制御プログラムは、
前記基板を化学的機械研磨により研磨するCMP工程で生じた前記基板面内の膜厚分布を補正するために、前記イオンビームエッチング装置において、前記CMP工程後の前記基板に対してイオンビームエッチング処理を行うIBE工程の際に、
前記基板面内の中心部よりも外周部のエッチング量が小さくなるように、前記外側コイル接続電源から前記外側コイルに流す電流値と前記内側コイル接続電源から前記内側コイルに流す電流値の制御を実行することを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記内側コイルは前記プラズマ発生室の中心において、前記プラズマ発生室から前記基板に向かう方向と反対方向の磁場を形成し、前記外側コイルは前記プラズマ発生室から前記基板に向かう方向と同方向の磁場を形成することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法とこれに用いるイオンビームエッチング装置及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属−絶縁膜(酸化膜)−半導体電界効果トランジスタ(Metal−insulator(oxide)−semiconductor field effect transistor:MISFET或いはMOSFET)は、半導体装置の基本的な素子である。MOSFETを応用したCMOS(Complementary metal−oxide−semiconductor)回路は、消費電力が少なく、また微細化や高集積化が容易で高速動作が可能であることから、多くのLSIを構成するデバイスとして広く用いられている。
【0003】
従来、MOSFETのゲート絶縁膜にはシリコンの熱酸化膜(SiO2)或いは酸化シリコンを熱やプラズマ中で窒化した膜(SiON)が広く用いられてきた。また、ゲート電極としては、燐(P)或いは砒素(As)をドープしたn型ポリシリコン層及びホウ素(B)をドープしたp型ポリシリコン層がそれぞれ広く用いられてきた。
【0004】
しかし、スケーリング則に従って、ゲート絶縁膜の薄膜化やゲート長の縮小化を行う場合には、SiO2膜或いはSiON膜の薄膜化に伴ったゲートリーク電流の増大や信頼性の低下が生じる。また、ゲート電極に形成された空乏層によるゲート容量の低下などが生じるため、ゲート絶縁膜に高誘電率を持つ絶縁材料(高誘電体膜)を用いる方法及びゲート電極に金属材料を用いる方法が提案されている。
【0005】
高誘電体膜材料としては例えばハフニウム系の化合物などがあり、中でも酸化ハフニウム(HfO2)は高い誘電率を持ちながら、電子移動度及びホール移動度の劣化が抑制できる点で有望な材料である。しかしながら、ソース及びドレインの活性化アニール処理などの高温処理工程を行うことによってキャリア移動度劣化などの特性劣化が生じる問題がある。
【0006】
そこで、ゲート絶縁膜及びゲート電極形成後に上記したソース及びドレインの高温処理工程を施す従来の製造方法に対して、高温処理を行った後にゲート絶縁膜及びゲート電極を形成する製造方法が提案されている。ここで、前者の製造方法で形成されたトランジスタ構成をゲートファースト構造、後者の製造方法で形成されたトランジスタ構成をゲートラスト構造と称する。
【0007】
例えば特許文献1には、nチャネルMOSFETをゲートファースト構造とし、pチャネルMOSFETをゲートラスト構造としたCMOS回路が開示されている。係るCMOS回路は、先ず、nチャネルMOSFET及びpチャネルMOSFETの両方をゲートファースト構造で形成した後、pチャネルMOSFETのみゲート電極を除去して新たに導電層を堆積させてゲートラスト構造のMOSFETを形成している。係る工程においては、それぞれのゲート電極材料を選択することにより、nチャネルMOSFET、pチャネルMOSFETのそれぞれに適切な仕事関数(Work Function:WF)のゲート電極を形成することができる。
【0008】
特許文献1に開示されたCMOS回路のゲートラスト構造のpチャネルMOSFETのゲート電極を形成するにあたり、先ず化学的機械研磨(CMP)に対するストッパ膜を形成し、先に形成したゲートファースト構造のpチャネルMOSFETのゲート電極と該ゲート電極上のCMPストッパ膜を除去して開口部を形成し、該開口部に窒化チタンとアルミニウムを充填する。その後、上記CMPストッパ膜まで余剰な窒化チタンとアルミニウム膜をCMP工程で研磨して除去している。
【0009】
また、特許文献1のCMOS回路では、引張応力や圧縮応力のシリコン窒化膜(ストレスライナー膜)をソース及びドレイン上に形成することにより、トランジスタのチャネル領域の応力を変調し、キャリアの移動度を向上させている。
【0010】
特許文献2には、SiC等の硬い基板表面をCMP処理により平坦化した後、基板表面にアルゴンのガスクラスター照射と窒素のガスクラスター照射を施すことにより、CMP処理後の研磨キズを取り除いて平坦化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−4455号公報
【特許文献2】特開2011−246761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示された発明における、上記CMP工程においては、基板面内において研磨量の差が生じ易い。一般には基板面内の中心部では研磨量が小さく、基板面内の外周部では研磨量が大きくなる。即ち研磨後の基板面内の膜厚は、中心が厚く、周辺が薄くなる傾向にある。このようなCMP工程における研磨量の差は、製造された半導体装置の歩留まりを悪化させる。
【0013】
特許文献2に開示された発明においては、CMP処理により生じた基板面内の微小な研磨キズをガスクラスターイオンビームエッチングにより平坦化しているが、係る方法では、CMP処理により生じた基板中心部と周辺部との研磨量の差を解消するには至らない。
【0014】
本発明は上述した課題を解決するために成されたものであり、半導体装置の製造工程においてCMPにより生じた基板面内の膜厚分布を簡便に補正し、基板面内において均一な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために本発明は、プラズマ発生室と、
基板を処理する処理室と、
前記処理室と前記プラズマ発生室との間に設けられ、前記プラズマ発生室からイオンを引き出しイオンビームを形成するためのグリッドと、
前記プラズマ発生室に放電用ガスを導入するためのガス導入部と、
前記処理室内を排気するための排気手段と、
前記処理室内に設けられた基板を載置するための基板ホルダと、
前記基板の処理が行われる前の面内膜厚分布の測定結果が入力される制御装置と、
前記プラズマ発生室の外部であって、前記プラズマ発生室の前記グリッドと対向する天井部に設けられた電磁コイルと、を備え
前記電磁コイルは、前記天井部の外周に設けられた外側コイルと、前記天井部の内周に設けられた内側コイルとを有し、
前記制御装置は、前記外側コイルの電流値と、前記内側コイルの電流値とを、独立して電流値が制御可能である外側コイル接続電源と内側コイル接続電源とを備えたイオンビームエッチング装置の前記制御装置を制御する制御プログラムが格納された記録媒体であって、
前記制御プログラムは、
前記基板を化学的機械研磨により研磨するCMP工程で生じた前記基板面内の膜厚分布を補正するために、前記イオンビームエッチング装置において、前記CMP工程後の前記基板に対してイオンビームエッチング処理を行うIBE工程の際に、
前記基板面内の中心部よりも外周部のエッチング量が小さくなるように、前記外側コイル接続電源から前記外側コイルに流す電流値と前記内側コイル接続電源から前記内側コイルに流す電流値の制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、CMP工程の後にエッチングレートに分布を設けたイオンビームエッチング処理を行うことによって、CMPにより生じた基板面内の膜厚分布を簡便に補正することが可能となる。よって、本発明によれば、基板面内で均一な半導体装置を製造することが可能となり、半導体装置の製造歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のイオンビームエッチング装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2図1のイオンビームエッチング装置におけるプラズマ発生室近傍の構成を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態によるゲートラスト構造の電界効果トランジスタの製造プロセスの一部を説明するための断面模式図である。
図4】本発明のイオンビームエッチング装置において、プラズマ発生室に設けられた外側コイルと内側コイルの電流値を変化させた場合の、基板面内の位置によるエッチングレートの違いを示す図である。
図5】本発明のイオンビームエッチング装置のプラズマ発生室に設けられた電磁コイルに流す電流の向き及び永久磁石の磁極を示す断面模式図である。
図6】本発明の第2の実施形態においてグリッドに用いる電極の平面模式図である。
図7】本発明の第3の実施形態におけるイオンビームエッチング装置のグリッドの構成を示す断面模式図である。
図8】本発明の第4の実施形態におけるイオンビーム入射角とエッチングレートとの関係を示す図である。
図9】本発明に用いられる制御装置の説明図である。
図10】本発明の第5の実施形態によるゲートラスト構造の電界効果トランジスタの製造プロセスの一部を説明するための断面模式図である。
図11】本発明に用いられる膜厚測定装置の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。尚、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0020】
(第1の実施形態)
図1に本実施形態に係るイオンビームエッチング(IBE)装置の概略図を示す。IBE装置は、処理室101と、該処理室101内にイオンビームを照射するように設けられたイオンビーム発生装置100とを備える。イオンビーム発生装置100と処理室101とは連結されており、イオンビーム発生装置100から発生されたイオンビームは処理室101内に導入される。
【0021】
処理室101内には、基板111を保持可能な基板ホルダ110がイオンビーム発生装置100から照射されたイオンビームが入射されるように設けられており、基板111が静電吸着(Electrostatic chuck:ESC)電極112上に載置される。また、処理室101には排気手段103が設置されている。処理室101内にはニュートラライザ(不図示)が設けられており、該ニュートラライザによりイオンビーム発生装置100から導入されたイオンビームを電気的に中和することができる。よって、電気的に中和されたイオンビームを基板111に照射することができ、該基板111のチャージアップが防止される。基板ホルダ110は、イオンビームに対して任意に傾斜することができる。また、基板ホルダ110は、基板111をその面内方向に回転(自転)できる構造となっている。
【0022】
イオンビーム発生装置100は、プラズマ発生室102を備えている。放電チャンバとしての該プラズマ発生室102は、中空部及び開口を有する部材としてのベルジャ104を有しており、該中空部である内部空間102aが、プラズマ放電が生成される放電空間となる。本実施形態では、図1に示すように、例えば石英からなるベルジャ104を、例えばステンレス等からなる処理室101に取り付けることにより、処理室101とプラズマ発生室102とが連結されている。即ち、処理室101に形成された開口とベルジャ104の開口(プラズマ発生室102の開口102b)とが重なるようにベルジャ104を処理室101に設けている。
【0023】
上記内部空間102aは開口102bを介して外部と連通しており、内部空間102aで生成されたイオンは開口102bから引き出される。また、プラズマ発生室102には、ガス導入部105が設けられており、該ガス導入部105によりプラズマ発生室102内の内部空間にエッチングガスが導入される。また、整合器107に接続され、高周波(RF)場を生成するためのRFアンテナ108が、内部空間にプラズマ放電を生成するようにプラズマ発生室102の周囲に配置されている。ベルジャ104の天井部(グリッド109の対向側)には電磁コイル106が設けられている。このような構成において、ガス導入部105から放電用ガスを導入し、RFアンテナ108に高周波を印加することでプラズマ発生室102内に放電用ガスのプラズマを発生させることができる。RFアンテナ108の外周には永久磁石118がさらに設けられている。
【0024】
本実施形態では、図1に示すように、処理室101とプラズマ発生室102とを連結しているが、イオンビーム発生装置100は、処理室101とプラズマ発生室102との境界に設けられた、内部空間102aにて発生したプラズマからイオンを引き出すための引き出し手段としてのグリッド109をさらに備えている。本実施形態では、該グリッド109に直流電圧を印加し、プラズマ発生室102内のイオンをビームとして引き出し、引き出されたイオンビームを基板111に照射することで基板111の処理が行われる。尚、グリッド109は図1においては不図示の締結部材により装置に取り付けられ、不図示の連結部により各電極が連結されている。
【0025】
グリッド109は、プラズマ発生室102のイオン放出側に形成された開口102bに設けられる。グリッド109は少なくとも3つの電極を備え、各電極は内部空間102aにて発生したイオンを通過させるためのイオン通過孔を多数有する。これらグリッド109の構成要素である少なくとも3つの電極は、開口102bにおいて、内部空間102aから開口102bの外側に向かって、即ち、グリッド109から引き出されたイオンビームの進行方向に沿って、内部空間102aからのイオンがイオン通過孔を通過してプラズマ発生室102の外部へと放出されるように、互いに離間して配列されている。即ち、上記少なくとも3つの電極のそれぞれは板状の電極であり、これら少なくとも3つの電極のうち、最も内部空間102a側の電極が開口102bにおける放電空間を区画する部材として機能し、各電極のイオン通過孔が形成された面が対向している。
【0026】
本発明においてグリッドとは、複数の電極及び該複数の電極の各々を固定し連結する固定部材、電極間の絶縁材等を備えた電極アセンブリを言う。
【0027】
本実施形態では、グリッド109は、プラズマ発生室102と処理室101との連結部分であるこれら2つの境界において、プラズマ発生室102の側から、第1電極115(プラズマ側グリッド)、第2電極116、第3電極117(基板側グリッド)を備えている。第1電極115に形成されたイオン通過孔の各々、第2電極116に形成されたイオン通過孔の各々、及び第3電極117に形成されたイオン通過孔の各々が対向するように、第1電極115、第2電極116、及び第3電極117はプラズマ発生室102から処理室101に向かう方向Pに配列されている。通常、第1電極115〜第3電極117の各点におけるイオン通過孔は直径が等しく、それぞれのイオン通過孔が重なって配置される。各電極は固定部材120により連結され、処理装置に固定される。
【0028】
本実施形態においては第1電極115、第2電極116は不図示の電源に接続され、各電極の電位を制御可能である。第3電極117は接地されている。第3電極117に電源を接続して、電位を制御してもよい。
【0029】
第1電極115は、プラズマ発生室102の開口102bにおいて最も内部空間102a側(最もプラズマ発生室102側)に設けられており、開口102bにおいて、内部空間102aを区画する部材としても機能する。第2電極116は、第1電極115よりも第1電極115から第3電極117への配列方向Pに沿った、内部空間102aの外側(第1電極115よりも処理室101側)に設けられている。第3電極117は、第2電極116よりも第1電極115から上記配列方向Pに沿った、内部空間102aの外側に設けられた電極であって、グリッド109の構成要素としての電極のうち、上記配列方向Pに沿ったプラズマ発生室102の最も外側に設けられた電極、即ち、最も処理室101側に設けられた電極である。
【0030】
図2において上述したイオンビーム発生装置100におけるプラズマ発生室102近傍についてより詳細に説明する。
【0031】
プラズマ発生室102の外部であって、ベルジャ104の天井部に設けられた電磁コイル106は、内周部分に取り付けられた環状の内側コイル106aと、外周部分に取り付けられた環状の外側コイル106bとから構成される。内側コイル106a及び外側コイル106bはそれぞれ不図示の電源に接続され、各々のコイルに流す電流値を相互に独立して制御可能に構成される。尚、ベルジャ104の天井部とは、プラズマ発生室102を構成するベルジャ104においてグリッド109と対向する部分を言う。
【0032】
本発明の半導体装置の製造方法の一例として、図3を用いてゲートラスト構造の電界効果トランジスタ(FET)を有する半導体装置の製造に係るプロセスを説明する。係るプロセスは、例えば、特許文献1に開示されたCMOS回路のpチャネルMOSFETの製造プロセスに適用される。図3(a)において201はn型ウェル、202はゲート電極の両側部における基板中に導電性不純物を導入して作製されたp型ソース及びp型ドレイン、203はNiSi膜からなる高融点金属シリサイド膜、204は基板に所定の応力を印加するためのSiNからなるストレスライナー膜、205はSiO2などからなる絶縁膜、206はSiNからなるCMPストッパ膜である。207、208、209はサイドウォール絶縁膜であり、207はSiN、208はSiO2、209はSiNから構成されている。
【0033】
次に図3(b)に示されるように、トレンチ200の内壁及びCMPストッパ膜206上にゲート絶縁膜210が形成される。ゲート絶縁膜210は比誘電率が少なくとも8.0より大きな誘電率を持つ絶縁材料により形成されることが好ましい。次いで、ゲート絶縁膜210の上にTiNからなる拡散防止膜211、アルミニウム(Al)からなる導電膜212が形成される。これらの膜はスパッタリング法などで形成される。導電膜212としては、Alの他に銅(Cu)やタングステン(W)などを好ましく用いることができる。
【0034】
その後、従来は、図3(c)に示されるように、CMPストッパ膜206上に形成された導電膜212と拡散防止膜211とゲート絶縁膜210とをCMP工程によって除去し、トレンチ内に導電膜212からなるゲート電極が形成されていた。
【0035】
このCMP工程において、一般に基板面内の中心部よりも外周部の方が研磨速度が速く、基板面内の中心部と外周部において研磨後に膜厚に差が生じてしまう。具体的には、CMPストッパ膜206上に膜厚分布を有するゲート絶縁膜210が残留する。これはCMPに用いるスラリの粒径、基板面内の各点における単位面積当たりの加圧及び研磨パッドの動作等によるものと考えられる。この基板面内の膜厚分布はゲート電極のゲートしきい値電圧(Vt)に影響し、FETの素子特性のばらつきの原因となる。
【0036】
本発明はこのようなCMP工程において生じる基板面内の膜厚分布、特に基板の直径方向に生じる膜厚分布をIBE工程によって補正するものであり、図3に示したFETの製造プロセスにおいては、CMP工程によってゲート絶縁膜210が露出する、或いは露出直前まで研磨を行い、その後、IBE工程によってゲート絶縁膜210をエッチングする。このIBE工程において、基板面内方向においてエッチングレートを異ならせることによって、ゲート絶縁膜210の膜厚分布を補正しながらエッチングを行い、膜厚分布を解消することができる。本発明において、「膜厚分布を補正する」とは、IBE工程後に基板の膜厚分布が解消していることを意味する。よって、膜厚分布が解消されれば、IBE工程によって膜厚分布を有する膜を全て除去しなくてもよいが、膜厚分布を有する膜を全て除去し、さらに必要に応じてその下層の膜まで除去しても構わない。
【0037】
従って、図3のFETの製造プロセスにおいては、IBE工程において、少なくともゲート絶縁膜210の膜厚分布を解消すれば良く、IBE工程によって、膜厚の均一なゲート絶縁膜210を残しても、ゲート絶縁膜210を全て除去してもよく、さらにはCMPストッパ膜206の一部或いは全部を除去しても構わない。
【0038】
本発明に係るIBE装置は、プラズマ発生室102の外部であり前記プラズマ発生室102のグリッド109と対向する天井部の外周に設けられた外側コイル106bと、前記天井部の内周に設けられた内側コイル106aとを備え、各々独立して電流値を制御可能である。この2つのコイルの各々の電流値を制御することで、プラズマ発生室102内のプラズマ密度の面内分布を調整することが可能となる。プラズマ発生室102内のプラズマ密度を変化させると、各点におけるプラズマ密度に応じてグリッド109から引き出されるイオンビーム量も変化する。即ち、プラズマ密度が高い点では引き出されるイオンビーム量も大きくなり、プラズマ密度が低い点では引き出されるイオンビーム量も小さくなる。
【0039】
本発明では、プラズマ発生室102内において基板111面内の中心部に対向する位置ではプラズマ密度分布を高くし、プラズマ発生室102内において基板111面内の外周部に対向する位置ではプラズマ密度分布を低くする。これにより基板111面内の中心部のイオンビームによるエッチングレートを基板111面内の外周部よりも大きくし、CMP工程で生じた基板111面内の膜厚分布を補正してエッチングを行う。
【0040】
通常、プラズマ発生室102内において基板111面内方向で均一なプラズマ密度分布を得るためには、内側コイル106aと外側コイル106bに流す電流を同一とする。これに対し、本実施形態では中央部のエッチングレートを大きくするために、外側コイル106bの電流値を内側コイル106aに対して大きくする。
【0041】
図4に、内側コイル106aと外側コイル106bに流す電流を変化させた時の、基板111の各点におけるエッチングレートの変化を示す。エッチング対象としてSiO2を用いた。図4の縦軸はエッチングレートを、横軸は基板111面内の中心部を0として、該中心部から半径方向の距離を示す。また、各プロットを結ぶ線に示す数値は内側コイル106a及び外側コイル106bに流す電流値を示しており、数値の左側が内側コイル106aに流す電流、数値の右側が外側コイル106bに流す電流を示している。図4から分かるように、内側コイル106aと外側コイル106bに流す電流値が等しい場合(50/50)、基板111中心部と基板111外周部におけるエッチングレートはほぼ等しいが、外側コイル106bに流す電流を増加させた場合(50/60)には、基板111中心部におけるエッチングレートが上昇していく。
【0042】
尚、この時の他の条件としては以下の通りである。エッチングガスとしてArガスを用い、プラズマ発生室2内に流すArガスの流量を20sccmとした。第1電極115に印加する電圧は200V、第1電極115に流れる電流は400mAになるように設定した。グリッド109から引き出されたイオンビームは、試料表面に対して垂直に入射するように設定した。イオンビームの照射と同時にニュートラライザから基板111に向けて電子を放出した。ニュートラライザは、ホローカソード型の陰極でプラズマを生成し、陽極との電位差により電子を引き出した。
【0043】
内側コイル106a及び外側コイル106bに流す電流の向きについて図5を用いて説明する。内側コイル106aはプラズマ発生室102の中心において、プラズマ発生室102から基板111に向かう方向と反対方向の磁場を形成し、外側コイルはプラズマ発生室102から基板111に向かう方向と同方向の磁場を形成する。また永久磁石118はプラズマ発生室102側がN極となるように設けられている。
【0044】
プラズマ発生室102内で放電を開始した後に、上述したようにプラズマ発生室102内にプラズマ密度分布を形成してイオンビームを引き出し、基板111に照射する。このIBE工程により、CMP工程後の基板111上の膜を数nm〜数十nmの厚さでエッチングすることで、基板111面内における膜厚分布を補正することができ、その結果、基板111に形成されたFETのVtのばらつきを低減することができる。
【0045】
(第2の参考実施形態)
第1の実施形態では、CMP工程後の基板面内の膜厚分布をプラズマ発生室102内のプラズマ密度を調整することで補正した。これに対して本実施形態では、グリッド109におけるイオン通過孔の開口密度をグリッドの面内で異ならせることで基板面内の膜厚分布の補正を行う。
【0046】
グリッド109に形成されるイオン通過孔は、その数が多いほど、もしくはイオン通過孔の直径が大きいほど、多くのイオンビームが引き出される。従って、グリッド109のイオン通過孔の開口密度を、基板111中心部と対向する位置においては大きく、基板111面内の外周部に対向する位置では小さくすることで基板111面内の中心部と外周部のエッチングレートを異ならせることができる。
【0047】
尚、本発明においてグリッド109のイオン通過孔とは、第1電極115、第2電極116及び第3電極117を含む電極アセンブリであるグリッド109のイオン通過孔を言う。例えば、第1電極115と第2電極116のイオン通過孔が同じ直径で同じ位置に形成されており、第3電極117のイオン通過孔が同じ位置に形成されているが、その直径が他の電極に対して小さい場合を考える。この時グリッド109のイオン通過孔は実質的に第3電極117のイオン通過孔により規定される。反対に第2電極116と第3電極117のイオン通過孔が同じ直径で同じ位置に形成されており、第1電極115のイオン通過孔が同じ位置に形成されているが直径が他の電極に対して小さい場合は、グリッド109のイオン通過孔は実質的に第1電極115のイオン通過孔により規定される。
【0048】
イオン通過孔の開口密度とは、グリッド109の各点における、電極部分に対するイオン通過孔の面積の割合を言う。イオン通過孔の開口密度が周辺に比べて中心部の方が大きい例としては以下の態様がある。1つ目は、中心部と外周部でイオン通過孔の直径が等しく、中心部と外周部では単位面積当たりのイオン通過孔の数が中心部の方が多い場合である。2つ目は中心部と外周部では単位面積当たりのイオン通過孔の数が等しく、中心部と外周部ではイオン通過孔の直径が中心部の方が大きい場合である。3つ目はこれらの両方の条件を備える場合である。尚、イオン通過孔は通常、円形であるため、面積の大小は直径の大小で示されるが、本発明においてイオン通過孔は円形には限定されない。
【0049】
CMP工程後の基板面内の膜厚分布は一定の再現性があるため、本実施形態のようにグリッド109のイオン通過孔を該膜厚分布を補正するように調整することが可能である。
【0050】
図6に本実施形態のグリッド109の構成例を示す。図6は第1電極115及び第1電極115に形成されたイオン通過孔を示す。第2電極116及び第3電極117にも同様のイオン通過孔が形成され、各点におけるイオン通過孔が重なるように第1電極115〜第3電極117が組み立てられる。図6に示す第1電極115は中心部と外周部でイオン通過孔115aの数が異なる。具体的には、イオン通過孔115aの直径は同じであるが、イオン通過孔115aが形成されている間隔が外周部では中心部の1.5倍となっている。
【0051】
このような図6に示す形態に限らず、例えばグリッド109の中心部から外周部にかけて段階的にイオン通過孔の開口密度を変化させていってもよい。
【0052】
(第3の参考実施形態)
上述した第2の参考実施形態では、グリッド109におけるイオン通過孔の開口密度をグリッドの面内で変化させることで基板111面内の膜厚分布の補正を行った。本実施形態も第2の参考実施形態と同様にグリッド109におけるイオン通過孔の開口密度をグリッド109の面内で異ならせるが、加えてグリッド109におけるイオン通過孔の開口密度を変化させる機構を備えることを要旨とする。
【0053】
図7は本実施形態に係るIBE装置を説明するための図であり、本実施形態の要旨を説明するためにプラズマ発生室102周辺を拡大して図示し、上記実施形態で述べた構成と同様のものは一部記載を省略している。
【0054】
固定部材123は第1電極115と第2電極116を連結し、処理室101の内壁に固定している。支持部材121は第3電極117を、第1電極115と第2電極116から独立して支持している。回転駆動部122は第3電極117を面内で回転させるための装置であり、支持部材121上に設けられる。第3電極117を回転させるための機構としては、例えば第3電極117の外縁に鋸溝が形成されており、回転駆動部122のギアと嵌合し、該ギアが回転駆動部122のモータによって回転可能に構成される。
【0055】
第3電極117を面内において周方向に回転させると、第1電極115と第2電極116とのイオン通過孔の位置ずれは、中心部においては大きくないが、外周部に行くほど大きくなる。即ち外周部に行くほど、グリッド109のイオン通過孔の開口密度が低下する。従ってグリッド109から引き出されるイオンビームも、基板111面内の外周部に対向する位置よりも基板111面内の中心部に対向する位置の方が多くなり、基板111面内の外周部よりも中心部でエッチングレートが大きくなる。
【0056】
本実施形態によれば、所望のプロセスに応じて第3電極117を回転させることで、基板111面内の外周部と中心部とのエッチングレートの割合を適宜変更することが可能となる。また後述するCMP工程後の膜厚測定結果を受けての制御によって、より均一な加工が可能となる。尚、回転させる電極としては、IBE工程後の基板111面内の膜厚分布及びイオンビーム特性の観点から第3電極117が望ましいが、第1電極115及び第2電極116を回転させることでも基板111面内の膜厚分布の補正を行うことが可能である。
【0057】
(第4の実施形態)
本発明の要旨はCMP工程後に存在する基板111面内の膜厚分布をIBE工程により補正することであるが、IBEは対象とする物質によってエッチングレートが異なる。上述したとおり、図3に示したFETの製造プロセスにおいては、CMP工程によりゲート絶縁膜210が露出するまで加工した後にIBE工程を行ってゲート絶縁膜210をエッチングするが、この時、SiO2からなるゲート絶縁膜210やSiNからなるCMPストッパ膜206といった構成材料がSi系化合物からなる膜は、TiNなどのTi系化合物からなる拡散防止膜211よりもエッチングレートが大きい。そのため、IBE工程後にトレンチ(図3(a)中の200)内の拡散防止膜211がゲート絶縁膜210やCMPストッパ膜206よりも突出する恐れがある。このような導電性の突起部は、その後に例えばSiNからなるキャップ膜を成膜し、高融点金属シリサイド膜へのコンタクトプラグを形成する際に、コンタクトプラグ形成ポイントの位置ズレが生じた際の隣接するコンタクトプラグとの接触等の問題を引き起こす可能性がある。
【0058】
図8に各物質のIBE工程におけるイオンビーム入射角とエッチングレートの関係を示す。なお、被エッチング材に垂直方向にイオンビームが入射した際の入射角度を0度としている。例えば入射角45度においてSiO2は約145Å/minであるのに対してTiNは約60Å/minである。
【0059】
このためIBE工程を行う際に、ゲート絶縁膜210であるSiO2が削れやすい。特にIBE工程においては、CMP工程で生じた基板111面内の膜厚分布以外にも、面粗さを補正するためにある程度の傾きをもって基板111にイオンビームを入射させることが望ましい。しかし、図8によると、平坦化のために好ましい45度以上の角度になると、SiO2とTiNのエッチングレートの差も大きくなってしまう。
【0060】
本実施形態ではこのようなゲート絶縁膜210とTi系金属のエッチングレートの差を低減し、CMP工程により生じた基板111面内の膜厚分布を補正するにあたっての自由度を向上させることを目的とする。
【0061】
上述した実施形態のいずれも、プラズマ発生室102内には不活性ガスを導入して放電させ、不活性ガスのイオンを引き出していた。これに対して本実施形態ではプラズマ発生室102内に、不活性ガスに加えて塩素(Cl2)含有ガスを導入する。SiO2とTiNでは、TiNの方がCl2ガスとの反応性が高いため、不活性ガスとCl2ガスとの混合ガスを用いて塩素イオンを含んだイオンビームを基板111に照射することで、TiNのエッチングレートを向上させることができ、トレンチ内での拡散防止膜211の突出を防止することができる。
【0062】
TiNからなる拡散防止膜211を設けない場合や該拡散防止膜211にSiO2に対して選択的にエッチング可能な材料を用いる場合は、SiO2と導電膜212とのエッチング選択性を得るためにArとO2の混合ガス、もしくはArとN2の混合ガスを用いてIBE工程を行ってもよい。
【0063】
次に、本発明に係る実施形態を実行するために用いられる制御装置について図9を用いて説明する。
【0064】
本発明に係るIBE装置を動作させるための制御装置301は主制御部(不図示)及び記憶装置(不図示)を備え、本発明に係る種々の基板処理プロセスを実行する制御プログラムが格納されている。例えば、制御プログラムは、マスクROMとして実装される。或いは、ハードディスクドライブ(HDD)などにより構成される記憶装置に、外部の記録媒体やネットワークを介して制御プログラムをインストールすることも可能である。
【0065】
制御装置301の主制御部は、内側コイル106aや外側コイル106bに接続された電源302,303、放電用電力を印加する電源304、第1電極115や第2電極116に接続された電源305,306や、基板ホルダ110、排気手段、ガス導入系の駆動機構307,308,309、及びゲートバルブ310等とそれぞれ電気的に接続されている。このように本発明に係るIBE装置の各要素と接続することでIBE装置の動作を管理し、制御できるように構成されている。
【0066】
(第5の実施形態)
本実施形態について図10を用いて説明する。本実施形態では、図3に示したFETの製造プロセスにおいて、図10(a)に示すようにCMPストッパ膜206の下にハードマスク213が挿入されている。
【0067】
第4の実施形態で述べたように、CMP工程後のIBE工程で基板111面内におけるゲート絶縁膜210の膜厚分布を補正する際に、トレンチ内に形成されているTiNからなる拡散防止膜211とその外部のSi系化合物、具体的にはSiO2からなるゲート絶縁膜210やSiNからなるCMPストッパ膜206とではイオンビームによるエッチングレートが大きく異なり、IBE工程後に拡散防止膜211が突出する恐れがある。
【0068】
そこで、本実施形態では、CMPストッパ膜206の下層にTi系化合物よりもエッチングレートが小さい材料からなるハードマスク213を設けておく。ハードマスク213は例えばAl23やカーボン膜などから構成され、イオンビームを照射した際のエッチングレートがTi系化合物よりも小さい材料が用いられる。
【0069】
本実施形態では、ハードマスク213を設けることにより、IBE工程においてCMPストッパ膜206が除去されてハードマスク213が露出すると、トレンチ内に残されたTiNからなる拡散防止膜211が選択的にエッチングされ、図10(b)に示すように、隣接するトレンチ内のゲート絶縁膜210や絶縁膜205よりも突出するのが防止される。よって、SiNからなるキャップ膜214を成膜した際にも、図10(c)に示すように拡散防止膜211が突出せずに平坦な表面が得られ、上記した隣接するコンタクトプラグ間での接触等の問題が回避される。
【0070】
ハードマスク213は、コンタクトプラグ間の絶縁を採るために絶縁材で構成されることが望ましいが、炭素膜などの導電性膜で構成し、IBE工程による膜厚分布補正の際もしくは補正後に除去するようにしてもよい。
【0071】
さらにゲート絶縁膜210と導電膜212とのエッチング選択性を得るためにArとO2の混合ガス、もしくはArとN2の混合ガスを用いてIBE工程を行ってもよい。
【0072】
(第6の実施形態)
本実施形態では、CMP工程後に基板面内の膜厚分布を測定し、その後のIBE工程における膜厚分布補正の強度を調整することを特徴とする。即ち、本実施形態は、第1の実施形態、第3の参考実施形態もしくは第4の実施形態において、CMP工程後にゲート絶縁膜210の膜厚分布の測定を行い、その測定結果に応じて、IBE工程を制御することを特徴とする。
【0073】
CMP工程後の膜厚測定は、ゲート絶縁膜210の膜厚を、図11に示す光学式計測装置を用いることで行う。膜厚計測装置は検出光学系400、光学系移動部500、ステージ部600、膜厚計測処理部(不図示)で構成される。
【0074】
ステージ部600は基板604を載置する回転ステージ601、回転ステ−ジ601の特定位置の通過を検出する光電センサ602、回転ステージ601を回転する駆動モータ603から構成される。CMP工程後の基板604表面の分光波形を検出する検出光学系400は対物レンズ401、ハーフミラー402、結像レンズ403、リレーレンズ404、空間フィルタ405、視野絞り406、照明光源407、分光器408から構成される。
【0075】
照明光源407はキセノンランプ又はハロゲンランプ等の白色照明光源で白色照明光をハーフミラー402、対物レンズ401を介して基板604に照射する。基板604からの反射光は対物レンズ401、ハーフミラー402、結像レンズ403、リレーレンズ404、空間フィルタ405、視野絞り406、を介して分光器408に導かれる。
【0076】
分光器408で分光された分光波形は電気信号として不図示の膜厚計測処理部に入力され、膜厚を算出して基板604面内の膜厚分布を求める。光学系移動部500は光学系移動ガイド501、駆動モータ502で構成され、検出光学系400を回転ステージ601の半径方向に移動することによって基板604全面の分光波形を検出する。膜厚計測処理部における周波数・位相解析処理部では波形補正された分光波形の横軸を波長の逆数に変換し、分光波形の周波数・位相解析を行う。その解析結果に基づいて膜厚算出を行う。
【0077】
上述した膜厚計測装置により、CMP工程後の基板面内の膜厚分布を求め、該測定結果を図9の制御装置301に入力し、該測定結果に応じてIBE工程を制御することでより精度良く基板面内の膜厚分布を補正することが可能となる。
【0078】
該測定結果に応じて制御を行うIBE工程におけるパラメータとしては以下の態様が挙げられる。
【0079】
第1の実施形態においては外側コイル106b及び内側コイル106aに流す電流値、第3の参考実施形態においては第3電極117の電極板面内の回転量、第4の実施形態においてはCl2ガスの導入量である。また各実施形態においてグリッド109を構成する各電極に印加する電圧を制御してもよい。
【0080】
以上、上述した実施形態では全てCMP工程後の基板面内の膜厚分布は、基板面内の中心部の膜厚が外周部より厚い場合であった。本発明はこれに限らず、基板面内の中心部の膜厚が外周部より薄い場合にも適用可能である。例えばCMP工程において中心部のパッド圧力を高くして研磨した場合や、予め中心部のみを研磨した後に基板全体を研磨した場合などである。
【0081】
このような場合は基板111面内の外周部におけるエッチングレートが、基板111面内の中心部よりも高くなるようにIBE工程を行う。上述した第1実施形態においては基板111面内の外周部に対向する位置における、プラズマ発生室102内のプラズマ密度を、基板111面内の中心部に対向する位置よりも大きくすることで達成可能である。また、第2の参考実施形態では基板111面内の外周部に対向する位置のグリッド109のイオン通過孔の開口密度を、基板111面内の中心部に対向する位置よりも大きくすることで達成可能である。
【0082】
以上、ゲートラスト構造のFETの製造において、CMP工程によってゲート絶縁膜に膜厚分布が生じる場合を例に挙げて本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、CMP工程によって膜厚分布が生じる場合であれば、いかなる半導体装置の製造方法にも好ましく適用される。
【符号の説明】
【0083】
101:イオンビーム発生装置、101:処理室、102:プラズマ発生室、102a:プラズマ発生室の内部空間、102b:プラズマ発生室の開口、103:排気手段、104:ベルジャ、105:ガス導入部、106:電磁コイル、106a:内側コイル、106b:外側コイル、107:整合器、108:RFアンテナ、109:グリッド、110:基板ホルダ、111:基板、112:ESC電極、115:第1電極、115a:イオン通過孔、116:第2電極、117:第3電極、118:永久磁石、120:固定部材、121:支持部材、122:回転駆動部、123:固定部材、200:トレンチ、201:n型ウェル、202:p型ソース領域又はp型ドレイン領域、203:高融点金属シリサイド膜、204:ストレスライナー膜、205:絶縁膜、206:CMPストッパ膜、207:SiN膜、208:SiO2膜、209:SiN膜、210:ゲート絶縁膜、211:拡散防止膜、212:導電膜、213:ハードマスク、214:キャップ膜、301:制御装置、302:外側コイル接続電源、303:内側コイル接続電源、304:放電用電源、305:第1電極接続電源、306:第2電極接続電源、307:基板ホルダ駆動機構、308:排気手段、309:ガス導入系、310:ゲートバルブ、400:検出光学系、401:対物レンズ、402:ハーフミラー、403:結像レンズ、404:リレーレンズ、405:空間フィルタ、406:視野絞り、407:照明光源、408:分光器、500:光学系移動部、501:光学系移動ガイド、502:駆動モータ、600:ステージ部、601:回転ステージ、602:光電センサ、603:駆動モータ、604:基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11