【実施例】
【0038】
実験とその結果
特に銘記さなない限り、すべての反応は、示されたスケールとフルクトースとホウ酸との間のモル比で、最初にフルクトースを20〜25℃の温度で水中に溶解させることによって行われた。次に、固体ホウ酸を選択されたモル比で添加し、その混合物を連続攪拌しながら90分間、20〜25℃の温度で反応させる。所望の場合、次に、CaCO
3を前記ホウ酸のモル濃度の50%の量、30分間、三回の等量のバッチで、連続的に攪拌しながら添加する(例えば、1molのホウ酸が使用された場合には、0.5molのCaCO
3が使用された)。前記反応のpHは、典型的には、中性からゆるやかな酸性であって、大半の場合、6.0未満のpHである。
【0039】
液体状態
11B,
13C及び
1H NMRを5mmのVarian ATB Probeを備えるVarian Mercury 300MVP NMR分析で、それぞれ、96.14MHz(
11B)、 75.36 MHz(
13C)及び299.67MHz(
1H)の共振周波数で行った。
11Bスペクトルは、45度のチップ角バルス幅、0.2秒の緩和遅延(relaxation delay)、80msの収集時間(acquisition time)、100kHzのスペクトル幅で得られた8Kポイントで得られ、1024パルスを平均化した。データは65Kポイントにゼロフィリング(zero filled)した。
13CNMRは、30度のチップ角バルス幅、5秒の緩和遅延、0.96秒の収集時間、25kHzのスペクトル幅で得られた24Kポイントで得られ、10〜12,000パルスを平均化した。データは131Kポイントにゼロフィリングした。
1H NMRスペクトルは、30度のチップ角バルス幅、2秒の緩和遅延、4.448秒の収集時間、7.2kHzのスペクトル幅で得られた32Kポイントで得られ、128パルスを平均化された。データは131Kポイントにゼロフィリングした。データは、
11B及び
13C実験の収集中では、プロトンの逆ゲーテッド デカップリング(inverse gated decoupling)によって定量化的に得られた。すべてのサンプルはD
2O(Cambridge Isotope Laboratories)中に溶解された。溶解後、サンプルに対してpH調節は行わなかった。
【0040】
固体状態
13C(50.30 MHz)及び
11B(64.17 MHz) NMRスペクトルをDoty Scientific 7mm Supersonic CP-MASプローブを備えるVarian Unity Plus-200 NMR上で得た。約6kHzのマジック角回転(magic angle spinning (MAS))速度を使用した。
13C NMRデータは、最初、プロトン上での磁化を準備し、次に、スピンロックされた磁化を
13C核へ移すクロスポーラリゼーションを使用して得た。この実験の利点は、それが、同じサンプル中の
13C核のT1よりも遥かに短いサンプル中のプロトンのスピン格子緩和率(T1)で行われることにある。このように、前記ポーラリゼーション転移から
13Cシグナルのの重要なエンハンスメントを得て、より短いパルス反復速度でパルスすることができる。フルクトホウ酸カルシウム錯体での
13C CP-MAS実験を、1msの可変振幅接触時間、3秒の緩和時間、及び25.6msの収集時間で行い、1Kポイントが40kHzのスペクトルで得られ、4096パルスを平均化した。これらの収集パラメータに対する例外は、純粋な結晶フルクトースに使用されたものであった。
11B NMRスペクトルを、MASで、サンプルをNMRプローブ中で静止したままにして収集した。これらの実験は、中心遷移選択的パルス幅、0.2秒の緩和時間で収集され、10.2msの収集時間、100kHzのスペクトル幅で1Kポイントが獲得された。
【0041】
サンプルは、Duratech TCOM乾燥浴システム(+/−0.1℃に温度を保持することができる)中、又は、予め、正確に計量されたフルクトホウ酸カルシウムをステアリン酸マグネシウム又はマルトデキストリンと混合することによって作製された較正基準として、熱的に処理され、それらを受け取った後に直接的に観察された。固体状態NMRのサンプルを、それらを前記MASロータに投入した後、Sartorius GD-503-NTEP微量天秤上で0.1mg直近まで計量した。
【0042】
最初の研究では、
図2A及び2Bに図示されているように、フルクトースの比較でホウ酸のモルが大幅に上回ることがホウ素炭水化物錯体の形成全体にとって有利であることが示されていた。より具体的には、
図2Aは、フルクトースとホウ酸との間のモル比を低下させながら、小スケールの反応量のアリコート(例えば2ml)がスポットされたTLCプレートからの光学密度計示度を図示している。前方から後方にレーンを読むと、最初のレーンはフルクトースコントロールであり、それに続く10のレーンは、10:1(フルクトース対ホウ酸)から始まり1:1(フルクトース対ホウ酸)への減少を反映している。容易にわかるように、等モル比(最後のレーンを参照)で明確な量の総錯体形成が始まる。同様に、
図2Bは、ホウ酸とフルクトースとの間のモル比を増加させながら、小スケールの反応量のアリコート(例えば2ml)がスポットされたTLCプレートからの光学密度計示度を図示している。ここでも、前方から後方にレーンを読むと、最初のレーンはフルクトースコントロールであり、それに続く10のレーンは、1:1(フルクトース対ホウ酸)から始まり1:10(フルクトース対ホウ酸)への増加を反映している。容易にわかるように、1:2のモル比(フルクトース対ホウ酸)が総錯体形成にとって明確に有利であり、1:5のモル比(フルクトース対ホウ酸)でほぼ定量的である。従って、観察された条件下で、ホウ酸のモル過剰によって総ホウ素炭水化物錯体収率の形成がもたらされた。
【0043】
反応条件と生成物組成とに関して更に詳しく調べるべく、本発明者等は、種々の生産スケールと、炭水化物(例えばフルクトース)とホウ酸との間の種々のモル比で多くの実験を行った。極めて予想外なことに、本発明者等は、特定の生成物組成が、少なくとも、炭水化物(例えばフルクトース)とホウ酸との間のモル比、及び/又は、前記生産スケールとによって実質的に影響を受けることを見出した。
図2A及び2Bのデータによって示唆されているように、ホウ素炭水化物錯体の総収率を増大させるためにホウ酸対炭水化物高い比で使用するという当業者のアプローチとは反対に、本発明者等は炭水化物とホウ酸との間の適当なモル比を選択することによって、未反応ホウ酸の量と小さくしながら、ジ錯体の高い収率を得ることが可能であることを発見した。
【0044】
例えば、本発明者等は、炭水化物(ここでは、フルクトース)とホウ酸との間のモル比を、200mlの生産スケールで、等モル比から3:1超過のフルクトース対ホウ酸の比較的大きな範囲に渡って変化させた。注目すべきことに、定量化的
11B NMR分析に基づき、また、下記の表1にはっきりと見られるように、モル比を増大させる(1.0:1から2.4:1の範囲)につれて未反応ホウ酸の量は大幅に減少し、その後、更にモル比を増大させるにつれて(2.6:1から3.0:1の範囲)、緩やかに増加した。従って、少なくとも1.8:1〜2.6:1の範囲にわたる炭水化物(ここではフルクトース)とホウ酸との間のモル比における増大が未反応ホウ酸の量を減少させるという予想外の技術的作用をもたらしたことが理解される。反対に、ジ錯体の量は、200mlの生産スケールで、等モル比から3:1超過のフルクトース対ホウ酸の比較的大きな範囲に渡って、恐らくは、飽和作用が約1.8:1のモル比での始まることを伴い、炭水化物(ここではフルクトース)とホウ酸との間のモル比の増大の関数として増加した。これにより、特に高いジ錯体含有量を有する組成物を、1.6:1又は1.8:1以上のモル比で得ることができた。従って、1.6:1又は1.8:1から始まる炭水化物(ここではフルクトース)とホウ酸との間のモル比の増大が、ジエステルの量を増大させるといいう予想外の技術的作用をもたらした。注目すべきことに、フルクトースとホウ酸との間のモル比の増大は、反応によって作り出されるジエステルの量には影響を与えなかった。
【0045】
図3Aは、炭水化物(ここではフルクトース)とホウ酸との間のモル比の増大の関数としてのジ錯体の収率の劇的な増大を例示している。ジエステル対未反応ホウ酸の比が
図3Bに例示され、ここでは、その比の最適範囲は1.8:1〜2.6.1である。
【0046】
【表1】
【0047】
注目すべきことに、
13C NMR分析は、更に、炭水化物(ここでは、フルクトース)対ホウ酸のモル比の増大が、下記の表2から理解されるように、最も有意には、アルファ-フルクトフラノース形態において、中程度には、ベータ-フルクトフラノース形態において、そして、ベータ−フルクトピラノース形態においては無視できるか又はゼロ程度に、総錯体(ジ錯体とモノ錯体)の形成を減少させることも示した。又、アルファ−フルクトフラノース形態とベータ−フルクトフラノース形態に対する総錯体における最も顕著な減少は、1.6:1又は1.8:1の比で始まり、このことは、同程度の比でのジエステル形成の特異的な増加に対する反対傾向であるように思える。このように、1.6:1又は1.8:1以上の炭水化物(ここではフルクトース)対ホウ酸のモル比の増加は、アルファ−フルクトフラノース形態と、ある程度にはベータ−フルクトフラノース形態との総錯体を減少させるという驚くべき技術的作用を有するものであった。
図3Cは、表2の結果のグラフ表示である。
【0048】
【表2】
【0049】
同様に、
13C NMR分析は、炭水化物(ここではフルクトース)対ホウ酸のモル比の増加が、下記の表3から理解されるように、ベータ−フルクトピラノース形態において特に有意に、ベータ−フルクトフラノース形態において中程度にアルファ−フルクトフラノース形態において無視できるか又はゼロ程度に、未反応炭水化物(ここではフルクトース)を増大することも明らかにした。ここでも再び、または、ベータ−フルクトピラノース形態とベータ-フルクトフラノース形態に対する未反応の炭水化物における最も顕著な減少は、1.6:1又は1.8:1で始まった。従って、1.6:1又は1.8:1以上の炭水化物(ここではフルクトース)対ホウ酸のモル比の増加は、
図3Dにも図示されているように、ベータ−フルクトピラノース形態とベータ−フルクトフラノース形態とに関して未反応炭水化物の前記予想外の技術的作用を有するものであった。
【0050】
【表3】
【0051】
下記の表4は、フルクトース錯体化の収率が、炭水化物対ホウ酸比のモル比の増大に対して逆の関係にあることを示している。特筆すべきことに、錯体における総フルクトースの収率と、特定収率(遊離総フルクトースと比較した錯体中の総フルクトース)は、ジ錯体形成の収率に対する反対作用で炭水化物対ホウ酸比のモル比の増大とともに減少した。このように、比較的高い総錯体収率での高い特定のジ錯体収率を有する種々の組成物が、点検的には、反応が炭水化物対ホウ酸比のモル比が1.6〜2.4:1以上で行われる場合に、達成されることが理解される。表4の選択された結果が、
図3Eと3Fとに例示されている。
【0052】
【表4】
【0053】
下記の表5に図示されているように、そのような傾向は、又、生産スケールを200mlから1,000mlまで、5,000mlまで、2,000Lさえまで増大された場合にも当てはまることが観察された。そして、表5の選択された結果が
図4A及び4Bのグラフに図示されている。
【0054】
【表5】
【0055】
表6は、更に、種々のモル比及び生産スケールにおける遊離フルクトースに対する錯体中の総フルクトースの収率に関する実験データを提供している。
【0056】
【表6】
【0057】
生成量のスケールアップ中の更に別の予想外の結果において、本発明者等は、生産スケールが、所与のモル比に関し、未反応ホウ酸の量とジエステル形成の収率との両方に対して大きな影響を及ぼすことを発見した。要するに、また、表7のデータから理解されるように、フルクトース対ホウ酸の所与のモル比における生産スケールの増大によって、ジ錯体の収率が増大したのに対して、フルクトース対ホウ酸の所与のモル比での生産スケールの同じ増加は、未反応ホウ酸を減少させた。別の観点から見ると、又、その他すべてのパラメータを同じとすると、本発明者等は、生産スケールの増加がジ錯体収率を増大させるとともに、未反応ホウ素を減少されるのに対して、モノエステルには実質的に影響を及ぼさないことを発見した。
図5Aは、未反応ホウ酸に関するこの傾向を例示し、
図5Bは、ジエステル形成に関するその傾向を図示し、そして
図5Cは、モノエステル収率に関する結果を示している。従って、スケールアップ(その他すべてのパラメータは同じとする)は、ジ錯体の収率を増大し、未反応ホウ酸の量を減少させるというかなり予想外の技術的作用を有するものであった。
【0058】
【表7】
【0059】
特筆すべきことに、又、
図5Dから容易に理解されるように、ホウ酸に対するジエステル比前記スケール依存増加は、特定の範囲のモル比に関して顕著であったのに対して、その他のモル比に関してはそれほど顕著でなかった。より具体的にはホウ酸に対するジエステル比の前記スケール依存増加は、下記の表8にも反映されているように、1.8:1〜2.2:1のモル比範囲において特に顕著であった。
【0060】
【表8】
【0061】
特筆すべきことに、モノエステルに対するジエステル比は、
図5Eに反映され、また、下記の表9の結果に反映されているように、生産スケールの増加によって実質的に影響を受けなかった。
【0062】
【表9】
【0063】
種々の生産スケールに関するpH値例は、下記の表10から理解されるように、(軽度)酸性範囲、一般的には7未満、6.5未満の多くのケースにおいて、又、6以下の大半のケースにおいて、酸性度が実質的に均一であることを示している。
【0064】
【表10】
【0065】
本発明者等は、更に、最終反応から少なくとも水を除去することが生成物組成に更に影響を及ぼすか否かを調べた。驚くべきことに、本発明者等は、乾燥(例えば、凍結乾燥(FD)や噴霧乾燥(SD))によって、水の除去法の種類に対して実質的に独立的に、ジ錯体対ホウ酸比が更に劇的に増大することを発見した。リストされた生産スケールでの単一のモル比2:1(フルクトース対ホウ酸)を使用した下記の表11に選択されたデータ例が示されている。水の除去(すなわち、約2.2〜3.5wtの乾燥比で)に先立って元の量に対してD
2Oによって再構築を行った。
【0066】
【表11】
【0067】
図6Aは、各生産量に対する乾燥法の関数としてのホウ酸に対するジ錯体の比の変化を示し、下記の表12と
図6Bは、それぞれの乾燥法に関する生産量の関数としてのホウ酸に対するジ錯体の比の変化を示している。
【0068】
【表12】
【0069】
従って、水の除去、特に、液体組成物の乾燥は、ジ錯体の大幅な増加とそれと同時の未反応ホウ酸の減少とを伴う、未反応ホウ酸に対するジ錯体の比を大幅に増大するという予想外の技術的作用を有する。
【0070】
いくつかの実施例において、本発明のいくつかの実施例を説明しクレームするために使用される、成分、濃度、反応条件等の特性を表す数字は、いくつかのケースにおいて「約」という用語によって修飾されるものと理解される。従って、いくつかの実施例において、記載の説明及び添付の請求項に示される数値パラメータは、特定の実施例によって達成されるべき所望の特性に応じて変化しうる近似であると理解されなければならない。いくつかの実施例において、前記数値パラメータは、記載の有意桁に鑑みて、また、通常の丸め法を適用することによって解釈されなければならない。本発明のいくつかの実施例の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似ではあるが、特定の具体例に記載される数値は可能な限り正確なものとして報告されている。本発明のいくつかの実施例において提供される数値は、それらそれぞれのテスト測定において見られる標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を含みうるものである。特に銘記されない限り、ここに記載のすべての範囲は、それらの終点を含むものとして解釈さなければならず、開放端部 (open-ended)範囲は、市販的に実用的な値のみを含むものと解釈されなければならない。同様に、すべての値のリストは、特に銘記されない限り、中間値を含むものと解釈されなければならない。
【0071】
ここでの値範囲の記載は、単に、その範囲内に属する各別々の値に個別に言及する簡略法として作用することを意図するものに過ぎない。特に銘記されない限り、各個別の値は、あたかも個別に記載されているかのように明細書に組み込まれる。ここに記載されるすべての方法は、特に銘記されない限り、或いは、特に文脈から矛盾の無い限り、任意の適当な順序で行うことができる。ここでのいくつかの実施例に関して提供される、すべての具体例又は例示的な用語(「等」等)は、本発明をより良く例示することのみを意図するものであって、その他にクレームされる本発明の範囲に対する限定を提供するものではない。明細書中におけるいかなる文言も、本発明の実施のために必須であるクレームされていない要素を示すものではない。
【0072】
尚、ここでの発明の概念から逸脱することなく既に記載しもの以外のその他多数の改造が可能であることは当業者にとって明白であろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されているもの以外に限定されるものではない。特に、「有する(含む)」”comprises”, “comprising”というような用語は、要素、成分、又は工程を非限定的に記載するものであって、記載されもの以外の、要素、成分、又は工程が明示的に記載されない他の要素とともに、存在、利用又は組み合わせ可能であることを示している。A, B, C…及びNから成るグループから選択される少なくとも一つの何かについて言及する場合、そのテクストは、A無しでN有り、やBとN、等の一つの要素のみを要件とするものと解釈されなければならない。