特許第6371907号(P6371907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371907ホウ素炭水化物錯体の改善された組成物と方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371907
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】ホウ素炭水化物錯体の改善された組成物と方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20180730BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20180730BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20180730BHJP
   C07H 23/00 20060101ALI20180730BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20180730BHJP
【FI】
   C07F5/02 C
   A61K31/69
   A61P3/02
   C07H23/00
   A23L33/10
【請求項の数】18
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-522803(P2017-522803)
(86)(22)【出願日】2014年9月15日
(65)【公表番号】特表2017-532355(P2017-532355A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2014055702
(87)【国際公開番号】WO2016032543
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年4月26日
(31)【優先権主張番号】14/473,870
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517071335
【氏名又は名称】ヴィディエフ・フューチャースーティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VDF FUTURECEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,ジョン・エム
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−518882(JP,A)
【文献】 特表2003−514023(JP,A)
【文献】 米国特許第06080425(US,A)
【文献】 米国特許第05985842(US,A)
【文献】 米国特許第06924269(US,B1)
【文献】 特開昭55−145692(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02016446(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/02
A23L 33/10
A61K 31/69
A61P 3/02
C07H 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも65wt%の量でフルクトホウ酸錯体を含む組成物を製造する方法であって、ここで、前記フルクトホウ酸錯体は、ジ錯体とモノ錯体とを含み、前記組成物は、更に、ホウ酸を含み、そして、前記ジ錯体と前記ホウ酸は少なくとも10:1の重量比で含まれるものにおいて、前記方法は、
少なくとも1.8:1のフルクトースと前記ホウ酸との間のモル比を選択する工程、
少なくとも1000mlの反応のための予備スケールを選択する工程、そして、
前記フルクトースを前記ホウ酸と前記モル比及びスケールで反応させて前記フルクトース錯体を形成する工程と、場合によって、カチオンを添加することによって前記フルクトース錯体の塩を形成する工程、を有する、方法。
【請求項2】
前記フルクトースと前記ホウ酸との間の前記モル比は、1.8:1と2.4:1の間である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応のための前記予備スケールは、少なくとも5,000mlである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジ錯体と前記ホウ酸とは、少なくとも15:1の前記重量比で存在する請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カチオンは、カルシウムカチオン又はマグネシウムカチオンである請求項1〜の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物は、6.0未満のpHを有する請求項1〜の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも12:1重量比でのフルクトホウ酸ジ錯体対ホウ酸を有するフルクトホウ酸錯体を含む組成物を製造する方法であって、前記方法は、
少なくとも1.8:1のフルクトースとホウ酸との間のモル比を選択する工程、
少なくとも5000mlの反応のための予備スケールを選択する工程、
前記フルクトースを、前記ホウ酸と、酸性pHでカチオンを含む化合物と、前記モル比及びスケールで反応させて、フルクトース錯体を形成する工程、を有し、ここで、前記フルクトース錯体は前記カチオンと塩を形成する、方法。
【請求項8】
前記フルクトホウ酸錯体は、前記組成物中において少なくとも60wt%の量で存在する請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸性pHは、6.0未満のpHである請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記カチオンを含む化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、又は、アルカリ土類金属炭酸塩である請求項7〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
液体組成物であって、以下を有する、
複数のフルクトホウ酸錯体とホウ酸、
ここで、前記フルクトホウ酸錯体はジ錯体とモノ錯体との混合物であり、そして、
ここで、前記ジ錯体は、少なくとも85wt%の量で、前記液体組成物中に存在し、前記ホウ酸は前記液体組成物の6.8 wt%以下を構成し、そして、
ここで、未反応フルクトースに対するフルクトホウ酸錯体のモル比は少なくとも1に対して1.3である、液体組成物。
【請求項12】
前記混合物中の前記ジ錯体対前記モノ錯体のモル比は、10:1と12:1の間である請求項11に記載の液体組成物。
【請求項13】
前記ジ錯体は、前記組成物中において少なくとも87.50wt%の量で存在する請求項11又は請求項12に記載の液体組成物。
【請求項14】
前記ジ錯体は、前記組成物中において少なくとも88.50wt%の量で存在する請求項11又は請求項12に記載の液体組成物。
【請求項15】
前記未反応ホウ酸は、前記組成物中において6wt%未満の量で存在する請求項11〜14の何れか一項に記載の液体組成物。
【請求項16】
前記未反応ホウ酸は、前記組成物中において5wt%未満の量で存在する請求項11〜15の何れか一項に記載の液体組成物。
【請求項17】
フルクトホウ酸ジ錯体と、フルクトホウ酸モノ錯体とホウ酸とを含む液体組成物であって、ここで、前記フルクトホウ酸ジ錯体と前記フルクトホウ酸モノ錯体との間のモル比は少なくとも10:1であり、ここで、前記ホウ酸は前記組成物中において6.8wt%以下の量で存在し、そして、ここで、未反応フルクトースに対する総フルクトホウ酸錯体のモル比は1に対して少なくとも1.5である、液体組成物。
【請求項18】
6.0未満のpHを有する請求項17に記載の液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、ホウ素炭水化物錯体(borocarbohydratecomplex)、特に、改善されたパラメータを有するそのような錯体のための組成物とその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
背景の説明には本発明の理解に役立つ情報が含まれる。但し、このことは、ここに提供される情報が従来技術である、若しくは、ここに請求される発明に対して関連性を有するものであるとか、ここに具体的又は暗示的に参照される刊行物が従来技術であるということ自認するものではない。
【0003】
長年、フルクトホウ酸カルシウム(calcium fructoborate、CF)は、多くの潜在的医療及び治療用途を有する栄養サプリメントとして注目されてきた。例えばCFは、有効な酸化防止剤(非特許文献1:Scorei等、Biological Trace Element Research 107, no.2, (2005), 127-34)であり、ガンに対して有効であり(非特許文献2:Scorei及びPopa 2010, Anti-Cancer Agents in Medicinal Chemistry 10, no. 4, (2010年5月1日))、また、関節炎に関連する炎症を低減するのに比較的効果的な性質(モダリティー)を有する(非特許文献3:Scorei等、Biological Trace Element Research 144, no.1-3, (2011年12月), 253-63)ことが示されてきた。CFは、また、皮膚の治療におけるその利用(特許文献1:米国特許第6080425号)と毛の成長速度を低減する試みにおけるその利用(特許文献2:米国特許弟5985842号)も報告されている。
【0004】
ここに示されるすべての刊行物は、あたかも個々の刊行物又は特許出願が具体的かつ個別的に参考文献として組み込まれるのとかの如く、ここに参考文献として合体される。合体される参考文献における用語の定義又は利用法がここに提供される用語の定義と一致しない、若しくは相反するものである場合は、ここに提供されるその用語の定義が適用され、参考文献中のその用語の定義は適用されない。
【0005】
CFの合成は、いくつかのソースに記載されているが、その一例は、特許文献3:米国特許第6924269号に見られるものであって、ここでは、10 mlの水中で0.62 gのホウ酸を3.60 gのフルクトースと反応させ、その後、二酸化炭素放出下で1 gの炭酸カルシウムによって中和している。このような処理は少なくとも理論上では概念的に単純に見えるが、より詳しく見ると相当な複雑さを含むものであると認識されるべきである。第一に、市販利用可能なフルクトースとしては、そのそれぞれが、アノマー炭素原子においてそれぞれの立体異性の立体配置を備え、それによって各α及びβ型をもたらす5員の複素環(フラノース)、6員(ピラノース)複素環を有する多数の異性体が存在する。更に、フルクトースは、鎖状形としても存在しうる。更に複雑なことに、ホウ酸分子は、糖分子の二種類のヒドロキシ基とジエステル錯体結合を形成する。フルクトースは5つのヒドロキシ基(それらのうちの複数が隣接位置にある)を有するので、フルクトースの各立体異性体と多くのエステル生成物が形成可能である。更に、第1の糖分子によるエステル化後のホウ酸中に残るヒドロキシ基によって、様々な位置において第2の糖分子と更に別のジエステル錯体結合が形成されうる。フルクトースの立体異性体の具体例が図1のパネルAに示され、モノ錯体の具体例が図1のパネルBに示され、ジ錯体の具体例が図1のパネルCに示されている。従って、当然のことながら、ホウ素炭水化物錯体の反応力学及び具体的生成物形成に関しては非常に僅かな情報しか知られていない。
【0006】
例えば、非特許文献4:Edwards等(Journal of Food Research 3, no. 3 (2014年5月15日))は、フルクトホウ酸錯体のNMR分析と、それらの立体異性体の分布をそれらの安定性データと共に報告しており、非特許文献5:Makkee等(Recueil Des TravauxChimiques Des Pays-Bas 104 no.9(2010年9月2日)は、種々の形態の形成を特徴付ける試みとして選択された反応条件下での小規模のサッカリドとのホウ酸塩錯体(borate complex)の調製のための選択された方法を記載している。しかしながら、ジ錯体としてCFを提供するものとして記載された条件のすべて又はそれらの大半には、非常に低い収率及び/又は一般的に望ましいものではないホウ酸の残留量が大きいという欠点があった。例えば、非特許文献5:Makkee等は、大きな(5:1又は10:1)フルクトース対ホウ素モル比を利用する高pHの反応は前記ジ錯体に有利でありうるが、CF-ジ錯体の収率は非常に悪く、過剰量の遊離フルクトースが残り、それによって必要な生成物の大幅な希釈が起こる、ということを示した。他方、フルクトース対ホウ素モル比を下げた場合は、同時にジ錯体のモノ錯体に対する損失を伴いながら、遊離ホウ酸含有量がほとんど指数関数的に増大した。残留ホウ酸は、その潜在的な毒性と、生物分子とのその他の可能な干渉(例えば、ホウ酸は、ある種の酵素(例えば、ウレアーゼ、又はRhoファミリーのGTP-結合タンパク質に対してインヒビターとして作用することが知られている)とから非常の望ましくないものである。ジ錯体は生物学的に最も関連性が高く従って最も望ましい形態のCFであることが推測されていることから、このような具体的なガイダンスが欠如していることは特に残念なことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6080425号
【特許文献2】米国特許弟5985842号
【特許文献3】米国特許第6924269号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Scorei等、Biological Trace Element Research 107, no.2, (2005), 127-34
【非特許文献2】Scorei及びPopa、2010, Anti-Cancer Agents in Medicinal Chemistry 10, no. 4, (2010年5月1日)
【非特許文献3】Scorei等、Biological Trace Element Research 144, no.1-3, (2011年12月), 253-63
【非特許文献4】Edwards等、Journal of Food Research 3, no. 3, (2014年5月15日)
【非特許文献5】Makkee等、Recueil Des TravauxChimiques Des Pays-Bas, 104, no.9, (2010年9月2日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、CFとその他の炭水化物錯体は当該技術において周知ではあるが、ジ錯体フルクトホウ酸カルシウム又はその他のホウ素炭水化物錯体の高い収率をもたらす方法が未だ求められている。別の観点からみると、生成物中の残留遊離ホウ酸が少ない(例えば、≦10wt%)、フルクトホウ酸カルシウム又はその他のホウ素炭水化物錯体を含む組成物を提供する方法が求められている。同様に、生成物中に多量(例えば、≧30wt%)のフルクトース、又は、他の炭水化物が残留することのない、フルクトホウ酸カルシウム又はその他のホウ素炭水化物錯体を含む組成物を提供する方法も求められている。最後に、更に別の観点からみると、少なくとも10:1、より好ましくは少なくとも15:1、最も好ましくは少なくとも20:1のジ錯体対遊離ホウ酸比を有する組成物を提供する方法も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、組成物を含む種々のホウ素炭水化物錯体含有組成物と、それらの製造方法とに関する。本発明の課題の特筆すべき態様において、前記ホウ素炭水化物錯体含有組成物は、ジ錯体の含有量が非常に高く、未反応ホウ酸の含有量が非常に低く、極めて高い収率で得られる。
【0011】
本発明の一態様において、本発明者等は、少なくとも65wt%の量でホウ素炭水化物錯体含む組成物を製造する方法を提供し、ここで、前記ホウ素炭水化物錯体は、ジ錯体とモノ錯体とを含み、前記組成物は、更に、ホウ酸を含み、そして、前記ジ錯体と前記ホウ酸は少なくとも10:1のモル比で含まれる。特に提案される方法は、少なくとも1.8:1の炭水化物とホウ酸との間のモル比を選択する工程と、少なくとも1000mlの反応のための予備スケール(preparative scale)を選択する工程、とを有する。次に、前記炭水化物を前記ホウ酸と前記比及びスケールで反応させて前記炭水化物錯体を形成する。大半の実施例において、カチオンを添加することによって前記炭水化物錯体の塩を形成する。
【0012】
いくつかの態様において、前記反応工程によって、前記炭水化物錯体は70wt%の量で形成され、及び/又は、前記炭水化物とホウ酸との間の前記モル比は、1.8:1と2.4:1の間であり、及び/又は、前記反応用の前記予備スケールは、少なくとも5,000mlである。従って、前記ジ錯体と前記ホウ酸とが、少なくとも15:1の比又は少なくとも20:1の比で存在することも提案される。最も典型的には、前記組成物は液体組成物であり、及び/又は、前記炭水化物はフルクトースであり、及び/又は、前記カチオンは、カルシウムカチオン又はマグネシウムカチオンである。前記組成物が6.0未満のpHを有することも提案される。
【0013】
異なる観点から見ると、本発明者等は、更に、少なくとも5:1のホウ素炭水化物ジ錯体対ホウ酸比を有するホウ酸炭水化物錯体を含む組成物を製造する方法を提案する。そのような方法において、少なくとも1.6:1の炭水化物とホウ酸の間のモル比が選択され、少なくとも200mlの反応のための予備スケールが選択される。次に、前記炭水化物を、前記ホウ酸と、酸性pHでカチオンを含む化合物と、前記比率及びスケールで反応させて、前記炭水化物錯体を形成し、ここで前記炭水化物錯体は前記カチオンと塩を形成する。
【0014】
大半の態様において、前記炭水化物と前記ホウ酸との間の前記モル比は、1.8:1〜2.4:1であり、及び/又は、前記反応のための前記予備スケールは、少なくとも1,000mlであり、及び/又は、前記酸性pHは6.0未満のpHである。最も一般的には、前記ホウ素炭水化物錯体は、前記組成物中、少なくとも60wt%の量で存在し、及び/又は、前記ホウ素炭水化物ジ錯体対ホウ酸比は少なくとも10:1である。カチオンを含む前記化合物は、多くの実施例においては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、又はアルカリ土類金属炭酸塩であり、及び/又は、前記炭水化物はフルクトースである。
【0015】
従って、本発明者等は、更に、少なくとも65wt%のホウ素炭水化物錯体を含む組成物を形成するべく第1反応スケールを有する予備反応においてジ錯体の含有量を増大させる方法を提供し、ここで、前記ホウ素炭水化物錯体はジ錯体とモノ錯体との混合物である。このような方法は、典型的には、少なくとも1.4:1の炭水化物とホウ酸との間のモル比を選択する工程と、前記第1反応スケール(例えば少なくとも200ml)を第2反応スケールに増大させる工程と、前記比で前記炭水化物を前記ホウ酸とを前記第2スケール(例えば、少なくとも1,000ml)で反応させ、それによって、前記第1反応スケールとの比較において、前記第2反応スケールで前記ジ錯体の含有量を増大させる工程とを有する。
【0016】
好適実施例において、前記炭水化物はフルクトースであり、及び/又は、前記第1反応スケールを前記第2反応スケールに増大する工程は、更に、前記第1反応スケールとの比較において前記第2反応スケールにおける未反応ホウ酸を低減する。大半の実施例において、前記炭水化物と前記ホウ酸との間の前記モル比は1.8:1〜2.4:1である。所望の場合、前記組成物から水を除去することができる(例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって)。
【0017】
従って、異なる観点から見ると、そしてホウ素炭水化物錯体とホウ酸とを含む組成物を製造する方法で、前記ホウ素炭水化物錯体がジ錯体とモノ錯体との混合物である方法において、その改良は、酸性pHで、かつ、少なくとも1.8:1の炭水化物とホウ酸との間のモル比で、炭水化物とホウ酸とを反応させる工程を有し、ここで、前記反応工程は、少なくとも1,000mlの予備スケールで行われ、それによって、少なくとも10:1のジ錯体対残留ホウ酸比を達成する。
【0018】
最も典型的には、前記炭水化物はフルクトースであり、及び/又は、前記pHは6.0未満であり、及び/又は、前記炭水化物と前記ホウ酸との間の前記モル比は、1.8:1〜2.4:1である。従って、ジ錯体対残留ホウ酸比は少なくとも15:1、又は少なくとも20:1である。前と同様に、そのような改良は、前記組成物から水を除去する工程を含むことができる。
【0019】
本発明の更に別の態様において、15wt%以下のホウ酸含有量を有する組成物を製造する方法が提案され、ここで、前記組成物は、少なくとも70wt%のホウ素炭水化物錯体を含み、前記ホウ素炭水化物錯体は、ジ錯体とモノ錯体との混合物である。このような方法は、炭水化物がモルでホウ酸よりも多くなるように炭水化物とホウ酸との間のモル比を選択する工程と、少なくとも1,000mlの反応のための予備スケールを選択する工程と、酸性pHにおいて前記炭水化物と前記ホウ酸とを反応させ、それによって、15wt%以下のホウ酸含有量を有する組成物を作り出す工程、とを有する。
【0020】
そのような方法において、前記組成物中の前記ホウ酸の含有量は、10wt%以下、又は、5wt%以下であり、及び/又は、前記炭水化物とホウ酸との間の前記モル比は1.6:1〜2.2:1であり、及び/又は、前記酸性pHは6.0以下のpHである。
【0021】
最後に、本発明者等は、更に、複数のホウ素炭水化物錯体とホウ酸とを含む液体組成物を提案し、ここで、前記ホウ素炭水化物錯体はジ錯体とモノ錯体との混合物であり、前記ジ錯体は、前記組成物中において少なくとも75wt%の量で存在し、前記ホウ酸は前記組成物の13wt%未満を構成する。
【0022】
最も一般的には、前記混合物中の前記ジ錯体対前記モノ錯体の比は10:1〜12:1であり、及び/又は、前記ジ錯体は前記組成物中において少なくとも80wt%、又は、少なくとも85wt%の量で存在し、他方、前記組成物中、未反応ホウ酸は、10wt%未満、又は、5.0wt%未満の量で存在する。
【0023】
異なる観点から見ると、本発明者等は、酸性pHを有し、ホウ素炭水化物ジ錯体とホウ酸とを含む液体組成物を提案し、ここで、前記ホウ素炭水化物ジ錯体とホウ酸とは、少なくとも10:1の比で存在する。そのような組成物の前記酸性pHは、6.0未満のpHであり、及び/又は、前記ホウ素炭水化物ジ錯体とホウ酸とは、少なくとも15:1、又は少なくとも20:1の比率で存在し、他方、未反応ホウ酸は、10wt%未満又は5.0wt%未満の量で存在する。更に、そのような組成物において前記ホウ素炭水化物ジ錯体は、少なくとも80wt%の量で存在することも提案される。
【0024】
本発明の更に別の態様において、本発明者等は、更に、ホウ素炭水化物ジ錯体、ホウ素炭水化物モノ錯体、及びホウ酸を含む液体組成物を提案し、ここで、前記ホウ素炭水化物ジ錯体と前記ホウ素炭水化物モノ錯体との間の比は少なくとも10:1であり、前記ホウ酸は、10wt%以下の量で前記組成物中に存在する。
【0025】
そのような組成物中の前記ホウ素炭水化物ジ錯体と前記ホウ素炭水化物モノ錯体との間の前記比は少なくとも15:1、又は少なくとも20:1であり、及び/又は、前記ホウ素炭水化物ジ錯体と前記ホウ素炭水化物モノ錯体との間の前記比は少なくとも25:1であり、他方、更に別の態様において、前記ホウ酸は、前記組成物中に、7.5wt%以下、又は、5.0wt%未満の量で存在する。最も典型的には、前記液体組成物は、6.0未満のpHを有する。
【0026】
従って、本発明者等は、更に、炭水化物と、ホウ酸と、ホウ素炭水化物錯体とを含む酸性pHを有する液体反応混合物を提案し、ここで、前記ホウ素炭水化物錯体はジ錯体とモノ錯体との混合物であり、前記ジ錯体と前記ホウ酸とは少なくとも5:1の比で存在し、前記炭水化物に対する前記ホウ素炭水化物錯体の比は1.5〜4.5である。最も典型的には、前記炭水化物に対する前記ホウ素炭水化物錯体の比率は2.0〜3.5であり、及び/又は、前記pHは6.0未満であり、前記液体反応混合物は少なくとも200mlの量を有する。
【0027】
更に、本発明者等は、ホウ素炭水化物ジ錯体と未反応ホウ酸とを含む組成物を提案し、ここで、前記ホウ素炭水化物ジ錯体とホウ酸とは、前記組成物中において、液体形態では少なくとも10:1、乾燥形態では少なくとも20:1の比で存在する。そのような組成物において、前記ホウ素炭水化物ジ錯体と前記ホウ酸とは、前記組成物中において、液体形態では少なくとも15:1、乾燥形態では少なくとも22:1の比で存在し、及び/又は、前記ホウ酸は、前記組成物中において、10wt%未満、又は5.0wt%未満の量で存在する。
【0028】
上記観点から、(a)少なくとも1.6:1の炭水化物とホウ酸との間のモル比を選択する工程と、(b)少なくとも1,000mlの反応のための予備スケールを選択する工程と、(c)前記炭水化物との前記ホウ酸とを酸性pHで反応させ、それによって少なくとも5:1の比でホウ素炭水化物ジ錯体とホウ酸とを含む組成物を得る工程、を有する方法によって作られる、ホウ素炭水化物錯体を含む組成物も提案される。
【0029】
最も典型的には、前記炭水化物と前記ホウ酸との間の前記モル比は1.8:1〜2.2:1であり、及び/又は、前記酸性pHは6.0未満のpHであり、及び/又は、前記組成物は、ホウ素炭水化物ジ錯体とホウ酸とを少なくとも10:1、又は、少なくとも15:1の比で含む。
【0030】
本発明の様々な課題、特徴、態様及び利点は、類似の番号によって類似の部材が示された添付の図面を参照して、以下の好適実施例の詳細説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】フルクトース(パネルA)、フルクトホウ酸塩モノ錯体(パネルB)及びフルクトホウ酸塩ジ錯体(パネルC)の例示的立体異性体形態を図示している。
図2A図2A及び2Bは、TLCトラックのデンシトメトリー示度のグラフを図示している。図2Aのトラックは、モル比が1:10から1:1の範囲のフルクトースとホウ酸との間の個別の反応を示す。
図2B図2A及び2Bは、TLCトラックのデンシトメトリー示度のグラフを図示している。図2Bのトラックは、モル比が1:1から10.1の範囲のフルクトースとホウ酸との間の個別の反応を示している。
図3A図3A〜3Fは、200mlのスケールと、1:1〜3:1のフルクトース対ホウ酸のモル比での選択された生成物パラメータの結果例を示す。図3Aは、モル比の関数としてのジ錯体(「ジエステル」)の形成をリストする。
図3B図3A〜3Fは、200mlのスケールと、1:1〜3:1のフルクトース対ホウ酸のモル比での選択された生成物パラメータの結果例を示す。図3Bは、モル比の関数としてのジ錯体対未反応ホウ酸の比を示す。
図3C図3A〜3Fは、200mlのスケールと、1:1〜3:1のフルクトース対ホウ酸のモル比での選択された生成物パラメータの結果例を示す。図3Cは、モル比の関数としてのフルクトホウ酸塩錯体中の立体異性体性に関する組成物情報を図示する。
図3D図3A〜3Fは、200mlのスケールと、1:1〜3:1のフルクトース対ホウ酸のモル比での選択された生成物パラメータの結果例を示す。図3Dは、モル比の関数としての未反応フルクトースの立体異性体性に関する対応の組成物情報を示す折れ線グラフである。
図3E図3A〜3Fは、200mlのスケールと、1:1〜3:1のフルクトース対ホウ酸のモル比での選択された生成物パラメータの結果例を示す。図3Eは、モル比の関数としての未反応フルクトースとの比較での総フルクトース錯体(モノ及びジ錯体)の収率を示す。
図3F図3A〜3Fは、200mlのスケールと、1:1〜3:1のフルクトース対ホウ酸のモル比での選択された生成物パラメータの結果例を示す。図3Fは、モル比の関数としての総フルクトース錯体対未反応フルクトースの比を示す折れ線グラフである。
図4A図4A〜4Bは、5,000mlのスケールと、1.4:1〜2.2:1のフルクトース対ホウ酸のモル比の選択された生成物パラメータの結果例を示す。図4Aは、モル比の関数としての未反応フルクトースと比較での総フルクトース錯体(モノ及びジ錯体)の収率を示す。
図4B図4A〜4Bは、5,000mlのスケールと、1.4:1〜2.2:1のフルクトース対ホウ酸のモル比の選択された生成物パラメータの結果例を示す。図4Bは、モル比の関数としての総フルクトース錯体対未反応フルクトースの比を示す折れ線グラフである。
図5A図5A〜5Eは、増大する生産スケールと、フルクトース対ホウ酸の可変モル比での選択された生成物パラメータの結果例を示している。図5Aは、予めセットされたモル比範囲における同じモル比でのスケールアップの結果としての遊離(未反応)ホウ酸の減少を示す折れ線グラフである。
図5B図5A〜5Eは、増大する生産スケールと、フルクトース対ホウ酸の可変モル比での選択された生成物パラメータの結果例を示している。図5Bは、予めセットされたモル比範囲における同じモル比でのスケールアップの結果としてのジ錯体の増大を示す折れ線グラフである。
図5C図5A〜5Eは、増大する生産スケールと、フルクトース対ホウ酸の可変モル比での選択された生成物パラメータの結果例を示している。図5Cは、モノ錯体の量が、予めセットされたモル比範囲における同じモル比でのスケールアップによって実質的に影響されないことを示す折れ線グラフである。
図5D図5A〜5Eは、増大する生産スケールと、フルクトース対ホウ酸の可変モル比での選択された生成物パラメータの結果例を示している。図5Dは、スケールアップの結果としての遊離ホウ酸に対するジ錯体の比の増大と、フルクトースとホウ酸との間のモル比の関数としての同じ比での増大の悪化とを示す棒グラフである。
図5E図5A〜5Eは、増大する生産スケールと、フルクトース対ホウ酸の可変モル比での選択された生成物パラメータの結果例を示している。図5Eは、モノエステルに対するジ錯体の比がスケールアップとフルクトースとホウ酸との間のモル比とによって実質的に影響されないことを示す棒グラフである。
図6A図6A〜6Bは、フルクトースとホウ酸との間での固定されたモル比を使用して水を除去した後の再構築された組成物の選択された生成パラメータの結果例を示している。図6Aは、生産スケールの関数としての、液体、再構築凍結乾燥(FD)及び再構築噴霧乾燥(SD)形態における遊離ホウ酸に対するジ錯体の比を図示している。
図6B図6A〜6Bは、フルクトースとホウ酸との間での固定されたモル比を使用して水を除去した後の再構築された組成物の選択された生成パラメータの結果例を示している。図6Bは、状態(液体、再構築凍結乾燥(FD)及び再構築噴霧乾燥(SD))の関数としての種々の生産スケールでの遊離ホウ酸に対するジ錯体の比を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者等は、ジ錯体の含有量が非常に高く、未反応ホウ酸の含有量が非常に低く、未反応フルクトースの量が少なく、すべて収率が非常に高い、ホウ素炭水化物錯体含有組成物の製造を可能にする様々な方法と条件を見出した。
【0033】
例えば、本発明のいくつかの態様において、また、以下により詳細に説明するように、総炭水化物錯体を≧60wt%、≧65wt%、≧70wt%、又は≧75wt%の収率で作り出すことができた。本発明の他の態様において、また、以下により詳細に説明するように、未反応ホウ酸は、≦10wt%、≦8wt%、≦6wt%、又は、≦4wt%の量に限定された。本発明の更に別の態様において、及び、以下により詳細に説明するように、ジ錯体の収率は極めて高く、例えば、同様に後に詳述するように、ジ錯体対モノ錯体比は、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、又は少なくとも11:1であり、及び/又は、ジ錯体対未反応ホウ酸比は、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、又は少なくとも20:1、又は、少なくとも25:1であった。従って、本発明の更に別の態様において、総炭水化物錯体は、炭水化物の低い残留量、例えば、≦35wt%、≦30 wt%、≦25 wt%、又は、≦20 wt%の未反応炭水化物で、生産され得る。特に銘記されない限り、すべての百分率は、全反応生成物と未反応試薬とのトータルのwt%として示される。
【0034】
エステルを形成するホウ酸と炭水化物との一見単純な反応であるように見えるにも拘らず、本発明者等は、多くの反応パラメータが生成物形成の様々な側面、特に、ジ錯体の量、ホウ素炭水化物錯体の総収率、残留(未反応)ホウ酸に対して予想外の大きな影響を与えることを発見した。例えば、フルクトースに対するホウ酸のモル過剰は、一般に、錯体形成全体を増大させるが、これらのモル比率(molar population)を逆転させる(例えば、ホウ酸に対して僅かにモル過剰のフルクトースを使用することによって)と、見かけ上の飽和が約1.8の比から始まって、ジ錯体形成の最適な領域が得られる。更に予想外なことに、フルクトース対ホウ酸のモル比を増大させることによって(1:1〜3:1)、約2.2-2.4:1の比において遊離ホウ酸が最小となったが、錯体形成の収率の最大化(ここでは、フルクトース対ホウ酸比が低い方がよい)と遊離ホウ酸(ここでは、フルクトース対ホウ酸比が高い方がよい)との間にはバランス点が存在することが明らかになった。更に、本発明者等は、予想外なことに、その他においては同じ処理条件を使用した炭水化物対ホウ酸比の特定のモル比での反応の単純なスケールアップによって、未反応ホウ酸が減少するとともに、ジ錯体の収率が増大することを発見した(特に、炭水化物対ホウ酸のモル比が1.4:1〜2.2:1である場合)。奇妙なことに、モノ錯体の形成は実質的に影響を受けなかった。
【0035】
スケールアップに関する別の予想外の知見において、本発明者等は、フルクトース対ホウ酸のモル比が1.6:1未満(例えば1.4:1〜1.6:1)である場合にはジ錯体対遊離ホウ酸の比はスケールアップに対してほとんどまったく影響されず、フルクトース対遊離ホウ酸のモル比が1.8:1の時には僅かにのみ影響を受け、後に詳述するように、2.2:1での見かけ上の最適5Lスケールで大きな影響を受ける(2.0:1でほとんどリニア)ことも発見した。
【0036】
尚、下記の具体例は、炭水化物としてフルクトースに関して提供されるものであるが、ここでの使用、特に、栄養学的な許容可能な炭水化物用として、その他多数の炭水化物も好適であることが銘記される。従って、代替の炭水化物には、一般的に、様々なヘキソースと、ペントースが含まれ、これらは、アルドース又はケトース形態とすることができ、それらは、(環形状である場合)フラノース又はピラノース炭水化物として存在しうる。別の観点から見ると、適当な炭水化物は、種々の単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類を含み、これらすべては天然又は人工のものとすることができる。従って、炭水化物の具体例は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース等を含む。更に、炭水化物に対する代替化合物は、種々のポリオール、及び、特に、栄養学的及び/又は薬用的に許容可能なポリオール、更に、胚(germinal)又は1.3ジオール基を有するその他の栄養学的及び/又は薬用的に許容可能な化合物を含む。本発明を限定するものではないが、前記炭水化物は、単数又は複数の同位体原子(例えば、13C, 14C, 2H, 17O又は18O)を含むことも提案される。同様に、一般的に、前記ホウ素炭水化物錯体中のホウ素はホウ酸の形態として、最も一般的には、水溶液形態で提供されることが好ましい。但し、本発明のその他の態様において、ホウ素は、ホウ砂溶液、又は、ホウ酸として提供することができる。
【0037】
多くの実施例において、前記ホウ素炭水化物錯体の調製は、ホウ酸を含む溶液中でフルクトースを、その反応が完全に終了する、及び/又は、その反応混合物が透明になることができるのに十分な時間(例えば、少なくとも30分間、少なくとも60分間、又は、少なくとも90分間)反応させることに基づく。前記反応が完了した後、前記ホウ素炭水化物錯体は、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム)であるカチオン含有化合物で電荷中和される。最も典型的には、前記カチオン含有化合物は、ホウ酸のモル量の等量(ホウ酸に対して)又は10%、最も一般的には、ホウ酸のモル量の0.7〜0.3倍(例えば0.5倍)の量、添加される。前記カチオン含有化合物が水酸化物又は炭酸塩である場合、大半の態様において、前記カチオン含有化合物がゆっくりと (例えば、少なくとも10分間、少なくとも20分間、又は少なくとも30分間の時間にわたって)、かつ、適当な場合には複数のパッチで(例えば、少なくとも二回、少なくとも三回、又は、四回等で)添加されることが好ましい。次に、このようにして調製された液体組成物を、更に、その他の成分と組み合わせる、又は、単数又は複数の飲料と混ぜることができる。或いは、水を少なくとも部分的に除去して、その後に、栄養サプリメントとして使用したり、又は栄養サプリメントと混合することが可能な、濃縮物、又は、乾燥物(例えば、凍結乾燥や噴霧乾燥によって)を得ることも可能である。
【実施例】
【0038】
実験とその結果
特に銘記さなない限り、すべての反応は、示されたスケールとフルクトースとホウ酸との間のモル比で、最初にフルクトースを20〜25℃の温度で水中に溶解させることによって行われた。次に、固体ホウ酸を選択されたモル比で添加し、その混合物を連続攪拌しながら90分間、20〜25℃の温度で反応させる。所望の場合、次に、CaCO3を前記ホウ酸のモル濃度の50%の量、30分間、三回の等量のバッチで、連続的に攪拌しながら添加する(例えば、1molのホウ酸が使用された場合には、0.5molのCaCO3が使用された)。前記反応のpHは、典型的には、中性からゆるやかな酸性であって、大半の場合、6.0未満のpHである。
【0039】
液体状態11B, 13C及び1H NMRを5mmのVarian ATB Probeを備えるVarian Mercury 300MVP NMR分析で、それぞれ、96.14MHz(11B)、 75.36 MHz(13C)及び299.67MHz(1H)の共振周波数で行った。11Bスペクトルは、45度のチップ角バルス幅、0.2秒の緩和遅延(relaxation delay)、80msの収集時間(acquisition time)、100kHzのスペクトル幅で得られた8Kポイントで得られ、1024パルスを平均化した。データは65Kポイントにゼロフィリング(zero filled)した。13CNMRは、30度のチップ角バルス幅、5秒の緩和遅延、0.96秒の収集時間、25kHzのスペクトル幅で得られた24Kポイントで得られ、10〜12,000パルスを平均化した。データは131Kポイントにゼロフィリングした。1H NMRスペクトルは、30度のチップ角バルス幅、2秒の緩和遅延、4.448秒の収集時間、7.2kHzのスペクトル幅で得られた32Kポイントで得られ、128パルスを平均化された。データは131Kポイントにゼロフィリングした。データは、11B及び13C実験の収集中では、プロトンの逆ゲーテッド デカップリング(inverse gated decoupling)によって定量化的に得られた。すべてのサンプルはD2O(Cambridge Isotope Laboratories)中に溶解された。溶解後、サンプルに対してpH調節は行わなかった。
【0040】
固体状態13C(50.30 MHz)及び11B(64.17 MHz) NMRスペクトルをDoty Scientific 7mm Supersonic CP-MASプローブを備えるVarian Unity Plus-200 NMR上で得た。約6kHzのマジック角回転(magic angle spinning (MAS))速度を使用した。13C NMRデータは、最初、プロトン上での磁化を準備し、次に、スピンロックされた磁化を13C核へ移すクロスポーラリゼーションを使用して得た。この実験の利点は、それが、同じサンプル中の13C核のT1よりも遥かに短いサンプル中のプロトンのスピン格子緩和率(T1)で行われることにある。このように、前記ポーラリゼーション転移から13Cシグナルのの重要なエンハンスメントを得て、より短いパルス反復速度でパルスすることができる。フルクトホウ酸カルシウム錯体での13C CP-MAS実験を、1msの可変振幅接触時間、3秒の緩和時間、及び25.6msの収集時間で行い、1Kポイントが40kHzのスペクトルで得られ、4096パルスを平均化した。これらの収集パラメータに対する例外は、純粋な結晶フルクトースに使用されたものであった。11B NMRスペクトルを、MASで、サンプルをNMRプローブ中で静止したままにして収集した。これらの実験は、中心遷移選択的パルス幅、0.2秒の緩和時間で収集され、10.2msの収集時間、100kHzのスペクトル幅で1Kポイントが獲得された。
【0041】
サンプルは、Duratech TCOM乾燥浴システム(+/−0.1℃に温度を保持することができる)中、又は、予め、正確に計量されたフルクトホウ酸カルシウムをステアリン酸マグネシウム又はマルトデキストリンと混合することによって作製された較正基準として、熱的に処理され、それらを受け取った後に直接的に観察された。固体状態NMRのサンプルを、それらを前記MASロータに投入した後、Sartorius GD-503-NTEP微量天秤上で0.1mg直近まで計量した。
【0042】
最初の研究では、図2A及び2Bに図示されているように、フルクトースの比較でホウ酸のモルが大幅に上回ることがホウ素炭水化物錯体の形成全体にとって有利であることが示されていた。より具体的には、図2Aは、フルクトースとホウ酸との間のモル比を低下させながら、小スケールの反応量のアリコート(例えば2ml)がスポットされたTLCプレートからの光学密度計示度を図示している。前方から後方にレーンを読むと、最初のレーンはフルクトースコントロールであり、それに続く10のレーンは、10:1(フルクトース対ホウ酸)から始まり1:1(フルクトース対ホウ酸)への減少を反映している。容易にわかるように、等モル比(最後のレーンを参照)で明確な量の総錯体形成が始まる。同様に、図2Bは、ホウ酸とフルクトースとの間のモル比を増加させながら、小スケールの反応量のアリコート(例えば2ml)がスポットされたTLCプレートからの光学密度計示度を図示している。ここでも、前方から後方にレーンを読むと、最初のレーンはフルクトースコントロールであり、それに続く10のレーンは、1:1(フルクトース対ホウ酸)から始まり1:10(フルクトース対ホウ酸)への増加を反映している。容易にわかるように、1:2のモル比(フルクトース対ホウ酸)が総錯体形成にとって明確に有利であり、1:5のモル比(フルクトース対ホウ酸)でほぼ定量的である。従って、観察された条件下で、ホウ酸のモル過剰によって総ホウ素炭水化物錯体収率の形成がもたらされた。
【0043】
反応条件と生成物組成とに関して更に詳しく調べるべく、本発明者等は、種々の生産スケールと、炭水化物(例えばフルクトース)とホウ酸との間の種々のモル比で多くの実験を行った。極めて予想外なことに、本発明者等は、特定の生成物組成が、少なくとも、炭水化物(例えばフルクトース)とホウ酸との間のモル比、及び/又は、前記生産スケールとによって実質的に影響を受けることを見出した。図2A及び2Bのデータによって示唆されているように、ホウ素炭水化物錯体の総収率を増大させるためにホウ酸対炭水化物高い比で使用するという当業者のアプローチとは反対に、本発明者等は炭水化物とホウ酸との間の適当なモル比を選択することによって、未反応ホウ酸の量と小さくしながら、ジ錯体の高い収率を得ることが可能であることを発見した。
【0044】
例えば、本発明者等は、炭水化物(ここでは、フルクトース)とホウ酸との間のモル比を、200mlの生産スケールで、等モル比から3:1超過のフルクトース対ホウ酸の比較的大きな範囲に渡って変化させた。注目すべきことに、定量化的11B NMR分析に基づき、また、下記の表1にはっきりと見られるように、モル比を増大させる(1.0:1から2.4:1の範囲)につれて未反応ホウ酸の量は大幅に減少し、その後、更にモル比を増大させるにつれて(2.6:1から3.0:1の範囲)、緩やかに増加した。従って、少なくとも1.8:1〜2.6:1の範囲にわたる炭水化物(ここではフルクトース)とホウ酸との間のモル比における増大が未反応ホウ酸の量を減少させるという予想外の技術的作用をもたらしたことが理解される。反対に、ジ錯体の量は、200mlの生産スケールで、等モル比から3:1超過のフルクトース対ホウ酸の比較的大きな範囲に渡って、恐らくは、飽和作用が約1.8:1のモル比での始まることを伴い、炭水化物(ここではフルクトース)とホウ酸との間のモル比の増大の関数として増加した。これにより、特に高いジ錯体含有量を有する組成物を、1.6:1又は1.8:1以上のモル比で得ることができた。従って、1.6:1又は1.8:1から始まる炭水化物(ここではフルクトース)とホウ酸との間のモル比の増大が、ジエステルの量を増大させるといいう予想外の技術的作用をもたらした。注目すべきことに、フルクトースとホウ酸との間のモル比の増大は、反応によって作り出されるジエステルの量には影響を与えなかった。
【0045】
図3Aは、炭水化物(ここではフルクトース)とホウ酸との間のモル比の増大の関数としてのジ錯体の収率の劇的な増大を例示している。ジエステル対未反応ホウ酸の比が図3Bに例示され、ここでは、その比の最適範囲は1.8:1〜2.6.1である。
【0046】
【表1】
【0047】
注目すべきことに、13C NMR分析は、更に、炭水化物(ここでは、フルクトース)対ホウ酸のモル比の増大が、下記の表2から理解されるように、最も有意には、アルファ-フルクトフラノース形態において、中程度には、ベータ-フルクトフラノース形態において、そして、ベータ−フルクトピラノース形態においては無視できるか又はゼロ程度に、総錯体(ジ錯体とモノ錯体)の形成を減少させることも示した。又、アルファ−フルクトフラノース形態とベータ−フルクトフラノース形態に対する総錯体における最も顕著な減少は、1.6:1又は1.8:1の比で始まり、このことは、同程度の比でのジエステル形成の特異的な増加に対する反対傾向であるように思える。このように、1.6:1又は1.8:1以上の炭水化物(ここではフルクトース)対ホウ酸のモル比の増加は、アルファ−フルクトフラノース形態と、ある程度にはベータ−フルクトフラノース形態との総錯体を減少させるという驚くべき技術的作用を有するものであった。図3Cは、表2の結果のグラフ表示である。
【0048】
【表2】
【0049】
同様に、13C NMR分析は、炭水化物(ここではフルクトース)対ホウ酸のモル比の増加が、下記の表3から理解されるように、ベータ−フルクトピラノース形態において特に有意に、ベータ−フルクトフラノース形態において中程度にアルファ−フルクトフラノース形態において無視できるか又はゼロ程度に、未反応炭水化物(ここではフルクトース)を増大することも明らかにした。ここでも再び、または、ベータ−フルクトピラノース形態とベータ-フルクトフラノース形態に対する未反応の炭水化物における最も顕著な減少は、1.6:1又は1.8:1で始まった。従って、1.6:1又は1.8:1以上の炭水化物(ここではフルクトース)対ホウ酸のモル比の増加は、図3Dにも図示されているように、ベータ−フルクトピラノース形態とベータ−フルクトフラノース形態とに関して未反応炭水化物の前記予想外の技術的作用を有するものであった。
【0050】
【表3】
【0051】
下記の表4は、フルクトース錯体化の収率が、炭水化物対ホウ酸比のモル比の増大に対して逆の関係にあることを示している。特筆すべきことに、錯体における総フルクトースの収率と、特定収率(遊離総フルクトースと比較した錯体中の総フルクトース)は、ジ錯体形成の収率に対する反対作用で炭水化物対ホウ酸比のモル比の増大とともに減少した。このように、比較的高い総錯体収率での高い特定のジ錯体収率を有する種々の組成物が、点検的には、反応が炭水化物対ホウ酸比のモル比が1.6〜2.4:1以上で行われる場合に、達成されることが理解される。表4の選択された結果が、図3Eと3Fとに例示されている。
【0052】
【表4】
【0053】
下記の表5に図示されているように、そのような傾向は、又、生産スケールを200mlから1,000mlまで、5,000mlまで、2,000Lさえまで増大された場合にも当てはまることが観察された。そして、表5の選択された結果が図4A及び4Bのグラフに図示されている。
【0054】
【表5】
【0055】
表6は、更に、種々のモル比及び生産スケールにおける遊離フルクトースに対する錯体中の総フルクトースの収率に関する実験データを提供している。
【0056】
【表6】
【0057】
生成量のスケールアップ中の更に別の予想外の結果において、本発明者等は、生産スケールが、所与のモル比に関し、未反応ホウ酸の量とジエステル形成の収率との両方に対して大きな影響を及ぼすことを発見した。要するに、また、表7のデータから理解されるように、フルクトース対ホウ酸の所与のモル比における生産スケールの増大によって、ジ錯体の収率が増大したのに対して、フルクトース対ホウ酸の所与のモル比での生産スケールの同じ増加は、未反応ホウ酸を減少させた。別の観点から見ると、又、その他すべてのパラメータを同じとすると、本発明者等は、生産スケールの増加がジ錯体収率を増大させるとともに、未反応ホウ素を減少されるのに対して、モノエステルには実質的に影響を及ぼさないことを発見した。図5Aは、未反応ホウ酸に関するこの傾向を例示し、図5Bは、ジエステル形成に関するその傾向を図示し、そして図5Cは、モノエステル収率に関する結果を示している。従って、スケールアップ(その他すべてのパラメータは同じとする)は、ジ錯体の収率を増大し、未反応ホウ酸の量を減少させるというかなり予想外の技術的作用を有するものであった。
【0058】
【表7】
【0059】
特筆すべきことに、又、図5Dから容易に理解されるように、ホウ酸に対するジエステル比前記スケール依存増加は、特定の範囲のモル比に関して顕著であったのに対して、その他のモル比に関してはそれほど顕著でなかった。より具体的にはホウ酸に対するジエステル比の前記スケール依存増加は、下記の表8にも反映されているように、1.8:1〜2.2:1のモル比範囲において特に顕著であった。
【0060】
【表8】
【0061】
特筆すべきことに、モノエステルに対するジエステル比は、図5Eに反映され、また、下記の表9の結果に反映されているように、生産スケールの増加によって実質的に影響を受けなかった。
【0062】
【表9】
【0063】
種々の生産スケールに関するpH値例は、下記の表10から理解されるように、(軽度)酸性範囲、一般的には7未満、6.5未満の多くのケースにおいて、又、6以下の大半のケースにおいて、酸性度が実質的に均一であることを示している。
【0064】
【表10】
【0065】
本発明者等は、更に、最終反応から少なくとも水を除去することが生成物組成に更に影響を及ぼすか否かを調べた。驚くべきことに、本発明者等は、乾燥(例えば、凍結乾燥(FD)や噴霧乾燥(SD))によって、水の除去法の種類に対して実質的に独立的に、ジ錯体対ホウ酸比が更に劇的に増大することを発見した。リストされた生産スケールでの単一のモル比2:1(フルクトース対ホウ酸)を使用した下記の表11に選択されたデータ例が示されている。水の除去(すなわち、約2.2〜3.5wtの乾燥比で)に先立って元の量に対してD2Oによって再構築を行った。
【0066】
【表11】
【0067】
図6Aは、各生産量に対する乾燥法の関数としてのホウ酸に対するジ錯体の比の変化を示し、下記の表12と図6Bは、それぞれの乾燥法に関する生産量の関数としてのホウ酸に対するジ錯体の比の変化を示している。
【0068】
【表12】
【0069】
従って、水の除去、特に、液体組成物の乾燥は、ジ錯体の大幅な増加とそれと同時の未反応ホウ酸の減少とを伴う、未反応ホウ酸に対するジ錯体の比を大幅に増大するという予想外の技術的作用を有する。
【0070】
いくつかの実施例において、本発明のいくつかの実施例を説明しクレームするために使用される、成分、濃度、反応条件等の特性を表す数字は、いくつかのケースにおいて「約」という用語によって修飾されるものと理解される。従って、いくつかの実施例において、記載の説明及び添付の請求項に示される数値パラメータは、特定の実施例によって達成されるべき所望の特性に応じて変化しうる近似であると理解されなければならない。いくつかの実施例において、前記数値パラメータは、記載の有意桁に鑑みて、また、通常の丸め法を適用することによって解釈されなければならない。本発明のいくつかの実施例の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似ではあるが、特定の具体例に記載される数値は可能な限り正確なものとして報告されている。本発明のいくつかの実施例において提供される数値は、それらそれぞれのテスト測定において見られる標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を含みうるものである。特に銘記されない限り、ここに記載のすべての範囲は、それらの終点を含むものとして解釈さなければならず、開放端部 (open-ended)範囲は、市販的に実用的な値のみを含むものと解釈されなければならない。同様に、すべての値のリストは、特に銘記されない限り、中間値を含むものと解釈されなければならない。
【0071】
ここでの値範囲の記載は、単に、その範囲内に属する各別々の値に個別に言及する簡略法として作用することを意図するものに過ぎない。特に銘記されない限り、各個別の値は、あたかも個別に記載されているかのように明細書に組み込まれる。ここに記載されるすべての方法は、特に銘記されない限り、或いは、特に文脈から矛盾の無い限り、任意の適当な順序で行うことができる。ここでのいくつかの実施例に関して提供される、すべての具体例又は例示的な用語(「等」等)は、本発明をより良く例示することのみを意図するものであって、その他にクレームされる本発明の範囲に対する限定を提供するものではない。明細書中におけるいかなる文言も、本発明の実施のために必須であるクレームされていない要素を示すものではない。
【0072】
尚、ここでの発明の概念から逸脱することなく既に記載しもの以外のその他多数の改造が可能であることは当業者にとって明白であろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されているもの以外に限定されるものではない。特に、「有する(含む)」”comprises”, “comprising”というような用語は、要素、成分、又は工程を非限定的に記載するものであって、記載されもの以外の、要素、成分、又は工程が明示的に記載されない他の要素とともに、存在、利用又は組み合わせ可能であることを示している。A, B, C…及びNから成るグループから選択される少なくとも一つの何かについて言及する場合、そのテクストは、A無しでN有り、やBとN、等の一つの要素のみを要件とするものと解釈されなければならない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B