特許第6371910号(P6371910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6371910エスカレーターの総合検知システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371910
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】エスカレーターの総合検知システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20180730BHJP
   B66B 27/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B66B31/00 D
   B66B27/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-527967(P2017-527967)
(86)(22)【出願日】2015年11月3日
(65)【公表番号】特表2017-526596(P2017-526596A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】CN2015093649
(87)【国際公開番号】WO2016101708
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】201410834570.0
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517051201
【氏名又は名称】広東省特種設備検測研究院珠海検測院
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG INSPECTION AND RESEARCH INSTITUTE OF SPECIAL EQUIPMENT,ZHUHAI INSPECTION INSTITUTE
(73)【特許権者】
【識別番号】517051212
【氏名又は名称】珠海市安粤科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHUHAI ANYES TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戚 政武
(72)【発明者】
【氏名】梁 敏健
(72)【発明者】
【氏名】蘇 宇航
(72)【発明者】
【氏名】陳 英紅
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−173364(JP,A)
【文献】 特開2012−056722(JP,A)
【文献】 特開2007−153536(JP,A)
【文献】 特開2006−327811(JP,A)
【文献】 特開2004−352508(JP,A)
【文献】 実開昭50−091991(JP,U)
【文献】 中国実用新案第2690362(CN,Y)
【文献】 特開平10−279245(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201254423(CN,Y)
【文献】 特開2008−037602(JP,A)
【文献】 特開2010−235251(JP,A)
【文献】 特表2017−517463(JP,A)
【文献】 特開2007−217090(JP,A)
【文献】 特開2007−182315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00─31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御キャビネット(4)及び前記制御キャビネット(4)に制御可能なモーター(5)を含むエスカレーターの総合検知システムであって、
検知作業が行われる時、前記制御キャビネット(4)とモーター(5)の間に直列に接続され、エスカレーターを駆動して速度超過又は逆回転異常を模擬的に発生させる駆動装置(1)、
エスカレーターのステップ又は手すりベルトに取り付けられて、複数の速度信号の定量検知に用いられるセンサー、及び
前記駆動装置(1)及びセンサーに接続されて、検知項目の違いに応じて前記駆動装置(1)を制御するとともに、検知済みのデータ信号を収集、処理及び表示可能な操作装置(3)、を含むことを特徴とするエスカレーターの総合検知システム。
【請求項2】
前記駆動装置(1)は周波数変換技術を用い、モーター(5)の電源周波数と位相を変化させてエスカレーターの運動速度及び方向を変更することで、速度超過又は逆回転異常を模擬的に発生させることを特徴とする請求項1に記載のエスカレーターの総合検知システム。
【請求項3】
前記駆動装置(1)は、制御線を介して前記操作装置(3)に接続されるとともに、入力ポートと出力ポートとして航空機用コネクタを採用することを特徴とする請求項2に記載のエスカレーターの総合検知システム。
【請求項4】
前記操作装置(3)は、集積配置された速度超過保護検知モジュール、非操縦性逆回転保護検知モジュール、速度偏差検知モジュール、手すりベルト同期偏差検知モジュール、制動距離及び減速速度検知モジュールを含むことを特徴とする請求項1に記載のエスカレーターの総合検知システム。
【請求項5】
前記センサーは、同軸に接続されたゴムローラー(21)と回転エンコーダー(22)を含み、ホルダ(23)を介してエスカレーターにおける水平部分のスカート板又は水平部分のガラス壁の適切な位置に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のエスカレーターの総合検知システム。
【請求項6】
前記ホルダ(23)は吸盤(231)及び揺動アーム(232)を含み、吸盤(231)を介して前記センサーを吸着するように取り付けられ、揺動アーム(232)を調整することで前記センサーをエスカレーターにおける水平部分のステップ又は手すりベルトに密着させることを特徴とする請求項5に記載のエスカレーターの総合検知システム。
【請求項7】
前記操作装置(3)はハンドヘルド型操作装置であって、トリガー(31)が接続配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエスカレーターの総合検知システム。
【請求項8】
前記操作装置(3)は、データ記録モジュールを含むことを特徴とする請求項4に記載のエスカレーターの総合検知システム。
【請求項9】
エスカレーターの総合検知方法であって、
前記方法は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のエスカレーターの総合検知システムを用い、
駆動装置(1)を制御キャビネット(4)とモーター(5)の間に直列に接続する手順1と、
操作装置(3)の電源スイッチを押下してシステムを起動するとともに通信検知を実行し、通信が良好な場合には次の手順に進むシステム起動の手順と、
検知待ちのエスカレーターIDと、対応する測定待ちのデータ情報とをパラメータ設置オプションに入力するパラメータ設置の手順と、
具体的な機能試験を選択することで、駆動装置(1)がエスカレーターを模擬的に対応する試験動作状態で駆動するよう操作装置(3)により制御する試験選択の手順と、
ステップ又は手すりベルトにおける対応する測定待ちデータ情報を操作装置(3)によってリアルタイムに収集するとともに、データの処理、表示及び保存を実行する測定待ちデータ収集の手順と、
総合検知が完了するまで手順3を繰り返す手順と、を含むことを特徴とするエスカーターの総合検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターの総合検知システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活水準の向上に伴い、エスカレーターや動く歩道は時代の産物として様々な利便性をもたらしてきた。しかし、一方で多くの安全面での課題も発生しており、例えばエスカレーターや動く歩道の運転中の速度超過、逆回転、ステップの欠損といった問題により、人身事故の発生も一定数みられる。
【0003】
本発明では某都市を例に、試験期間中に39ブランド56種の型番のエスカレーター487台を検査した。このうち、速度超過による保護機能喪失は97台存在し、4ブランド13型番に及んだ。その不良率は19.9%であった。また、非操縦性逆回転による保護機能喪失は18台存在し、4ブランド6型番に及んだ。その不良率は3.7%であった。このように、複数のブランドのエスカレーターにシステム上のリスクが存在していた。ところが、従来のエスカレーターの総合検知手段には、汎用性や視認性に欠けるという欠点があった。特に、エスカレーターの速度超過及び非操縦性逆回転に関する保護機能の検知については、検知の不正確さ、検知不可能、定量検知不能等の問題が一貫して存在しており、これらの課題に対する技術は国内外を問わず未開発のままとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の問題を解消するために、本発明は、従来の検知手段における非汎用性、非視認性、低精度、定量検知不能といった欠点を補うとともに、実際の検知において、従来の方法では発見が困難であった多くの隠れた事故要因、ひいてはシステム上のリスクを発見するためのエスカレーターの総合検知システム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、技術的課題を解決するために以下の技術方案を採用した。即ち、エスカレーターの総合検知システムであって、前記エスカレーターは制御キャビネットとモーターを含み、前記検知システムは、前記制御キャビネットとモーターの間に直列に接続され、エスカレーターを駆動して速度超過又は逆回転異常を模擬的に発生させる駆動装置と、エスカレーターのステップ又は手すりベルトに取り付けられて、複数の速度信号の定量検知に用いられるセンサーと、前記駆動装置及びセンサーに接続されて、検知項目の違いに応じて前記駆動装置を制御するとともに、検知済みのデータ信号を収集、処理及び表示可能な操作装置と、を含む。
【0006】
前記技術方案の改良として、前記駆動装置は周波数変換技術を用い、モーターの電源周波数と位相を変化させてエスカレーターの運動速度及び方向を変更することで、速度超過又は逆回転異常を模擬的に発生させる。
【0007】
前記技術方案の改良として、前記駆動装置は制御線を介して前記操作装置に接続されるとともに、入力ポートと出力ポートとして航空機用コネクタを採用する。
【0008】
前記技術方案の改良として、前記操作装置は、集積配置された速度超過保護検知モジュール、非操縦性逆回転保護検知モジュール、速度偏差検知モジュール、手すりベルト同期偏差検知モジュール、制動距離及び減速速度検知モジュールを含む。
【0009】
前記技術方案の改良として、前記センサーは、同軸に接続されたゴムローラーと回転エンコーダーを含み、ホルダを介してエスカレーターにおける水平部分のスカート板又は水平部分のガラス壁の適切な位置に取り付けられる。
【0010】
前記技術方案の改良として、前記ホルダは吸盤及び揺動アームを含み、吸盤を介して前記センサーを吸着するように取り付けられ、揺動アームを調整することで前記センサーをエスカレーターにおける水平部分のステップ又は手すりベルトに密着させる。
【0011】
前記技術方案の改良として、前記操作装置はハンドヘルド型操作装置であって、トリガーが接続配置されている。
【0012】
エスカレーターの総合検知方法であって、操作装置の電源スイッチを押下してシステムを起動するとともに通信検知を実行し、通信が良好な場合には次の手順に進むシステム起動の手順1と、検知待ちのエスカレーター情報と、対応する測定待ちのデータ情報とをパラメータ設置オプションに入力するパラメータ設置の手順2と、具体的な機能試験を選択することで、駆動装置が対応する試験動作状態でエスカレーターを模擬的に駆動するよう操作装置により制御する試験選択の手順3と、ステップ又は手すりベルトにおける対応する測定待ちデータ情報を操作装置によってリアルタイムに収集するとともに、データの処理、表示及び保存を実行する測定待ちデータ収集の手順4と、総合検知が完了するまで手順3を繰り返す手順5と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、次のような有益な効果をもたらす。即ち、当該エスカレーターの総合検知システム及び方法は、自動制御、パワーエレクトロニクス、デジタル信号処理等の先進技術を集積しており、エスカレーターの正常運転時における想定外の速度超過、逆回転等の危険な動作状態を駆動装置でシミュレーションすることで、正確なサンプリング、検知及び判断が可能となる。よって、エスカレーターにおける速度超過及び非操縦性逆回転に関する保護機能の検知に長らく存在していた検知の不正確さ、検知不可能、定量検知不能といった問題を解決可能であり、国内外の技術的空白を補うものである。
【0014】
以下に、図面及び具体的実施例を組み合わせて本発明につき更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のシステム構造を示す図である。
図2】本発明におけるセンサーの取り付け状態を示す図である。
図3】本発明における駆動装置とモーターの接続状態を示す第1の図である。
図4】本発明における駆動装置とモーターの接続状態を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、本発明におけるエスカレーターの総合検知システムは、主としてハンドヘルド型操作装置、駆動装置1、センサー及びトリガー31からなり、現場での組み立てや使用がしやすく、スピーディーに操作できる。また、全検知過程を2名の検知専門要員が共同で行うことで、関連検知項目を10分以内に完了することができる。
【0017】
駆動装置1は、制御キャビネット4とモーター5の間に直列に接続される。駆動装置は周波数変換技術を用い、モーターの電源周波数と位相を変化させてエスカレーターの運動速度及び方向を変更することで、速度超過又は逆回転異常を模擬的に発生させる。センサーは、ステップ又は手すりベルトに吸着して取り付けられ、主として速度信号を収集して操作装置3に伝送することで、デジタル信号処理と表示を行う。本発明の核となる制御として、操作装置3は定量検知を行うため、検知項目やプログラムの違いに応じて駆動装置1を制御することで、モーター5及びエスカレーターに想定外の加速や逆回転といった危険な動作状態を模擬的に発生させる。なお、速度超過及び非操縦性逆回転に関する保護機能試験の実施に先立ち、エスカレーターの制御キャビネット4とモーター5の間の接続線は取り外しておく必要がある。
【0018】
当該総合検知システムの操作装置3には、速度超過保護検知モジュール、非操縦性逆回転保護検知モジュール、速度偏差検知モジュール、手すりベルト同期偏差検知モジュール、制動距離及び減速速度検知モジュール、データ記録モジュール等が集積されている。各モジュールは操作装置3の制御下で、速度超過保護機能試験、非操縦性逆回転保護試験、速度偏差検知試験、手すりベルト同期偏差検知試験、制動距離検知試験、制動減速速度検知試験及び付加制動装置試験などエスカレーター検知における複数の重要な試験をシステムに模擬的に実行させるべく、駆動装置1の動作をそれぞれ制御可能である。当該システムを利用すれば、エスカレーターにおける想定外の速度超過や非操縦性逆回転といった異常な動作状態をシミュレーション可能であり、これに対応する保護装置の動作状況や動作速度をリアルタイムで監視できる。よって、本発明のシステムは、速度超過及び逆回転事故の過程再現や、事故調査及び証拠収集の有力なツールとなり得る。
【0019】
システムの接続に関しては、まずトリガー31の接続線を用いて操作装置3を接続する。続いて、センサーの信号線を用いて操作装置3を接続し、制御線を用いて駆動装置1と操作装置3を接続する。なお、駆動装置1の入力ポートと出力ポートには航空機用コネクタを採用している。航空機用コネクタのプラグを挿入する際には、プラグとコンセントの互いに対応する係合溝の位置を付き合わせ、対向させてから挿入して係合リングを締め付ける。操作装置3はトリガー31に接続されて、制動距離検知や制動減速速度検知試験における急停止操作のような特殊な試験に用いられる。
【0020】
図2を参照すると、センサー取り付け時には、まずゴムローラー21と回転エンコーダー22を同軸に接続する。続いて、センサーとホルダ23を組み付け、ホルダ23の吸盤231をエスカレーターの水平部分における適切な位置に吸着させる。そして、ホルダ23の揺動アーム232を調整し、センサーのゴムローラー21をエスカレーターにおける水平部分のステップ又は手すりベルトに密着させる。エスカレーターと直接接触するゴムローラー21としては、基準直径20cm/個の耐摩耗性ゴムローラーを採用し、弾性軸継手を介して回転エンコーダー22と同軸に接続する。ゴムローラー21がエスカレーターとともに回転すると、回転エンコーダー22は同期して回転し、パルス信号を生成する。パルス信号が操作装置3に伝送されると、現時点で検知されたエスカレーターにおけるステップ又は手すりベルトの速度が得られる。センサーの取り付け完了後は、運動箇所との摩擦や絡み付きが生じないようセンサーの接続線を調整する必要がある。
【0021】
図3を参照すると、駆動装置1とモーター5の接続時には、駆動装置1の出力線U1,V1,W1とモーター5の入力線U,V,Wを接続するだけでよい。エスカレーターがスターデルタ始動方式の場合には、図4を参照して、駆動装置1の出力線U1,V1,W1とモーター5の入力線U1,V1,W1を接続し、モーター5の入力線U2,V2,W2を短絡させればよい。
【0022】
駆動装置1と制御キャビネット4の接続に関しては、エスカレーターの回路原理図から駆動方式を判断する必要がある。電源周波数駆動方式の場合には、エスカレーターの制御キャビネット4とモーター5を接続する接続線を取り外した後に、駆動装置1の3本の入力線とエスカレーターの制御キャビネットにおける出力端子U1,V1,W1をそれぞれ接続する(順不同)。また、周波数変換駆動式のエスカレーターの場合にも、エスカレーターの回路原理図から始動方式を判断する必要がある。全周波数変換始動方式の場合には、まずエスカレーターにおける制御キャビネット4の周波数変換器を出力無負荷状態とする必要がある。その後の配線方式は電源周波数駆動方式のエスカレーターと同様である。また、バイパス周波数変換始動方式の場合には、まず専門要員がエスカレーターを電源周波数始動方式に設定する必要がある。その後の配線方式は電源周波数駆動方式のエスカレーターと同様である。
【0023】
このほか、本発明は更に、上述したエスカレーターの総合検知システムを用いてエスカレーターの総合検知を実行するエスカレーターの総合検知方法を提供する。当該方法は、具体的に、操作装置3の電源スイッチを押下してシステムを起動するとともに通信検知を実行し、通信が良好な場合には次の手順に進むシステム起動の手順1と、検知待ちのエスカレーターIDと、対応する測定待ちのデータ情報とをパラメータ設置オプションに入力するパラメータ設置の手順2と、具体的な機能試験を選択することで、駆動装置1がエスカレーターを対応する試験動作状態で模擬的に駆動するよう操作装置3により制御する試験選択の手順3と、ステップ又は手すりベルトにおける対応する測定待ちデータ情報を操作装置3によってリアルタイムに収集するとともに、データの処理、表示及び保存を実行する測定待ちデータ収集の手順4と、総合検知が完了するまで手順3を繰り返す手順5と、を含む。
【0024】
以下に、具体的な試験を挙げて本発明の検知過程を説明する。
一、非操縦性逆回転保護機能試験の実施
操作装置3の電源スイッチを押下するとシステムが起動し、メインインターフェースに進む。そこで、手動で「通信検知」ボタンをクリックすると通信検知が開始する。パネルに「通信良好」と表示された場合、システムの通信が正常であることを示している。次に、「試験選択」ボタンをタップして試験を選択するが、選択に先立ちパラメータを設定する必要がある。パラメータ設定ダイアログボックスに検知待ちのエスカレーターIDと対応する測定待ちのデータ情報とを入力し、「次のエスカレーターを検知」ボタンを選択すると、試験機能選択インターフェースに進むとともに、現在のIDに基づいて新たにデータ記録が構築される。
【0025】
次に、手動で「逆回転試験」ボタンをタッチすると、非操縦性逆回転保護試験に進む。手動で「上り」ボタンをタッチし、キースイッチでエスカレーターを起動して上り運転状態としてから右下隅の「チェック完了。次に進む」ボタンをタップした後、安定運転状態となるのを待ってから手動で「逆回転」ボタンをタップする。すると、エスカレーターが非操縦性逆回転動作状態をシミュレーションし、これにより非操縦性逆回転保護機能の精度が検知可能となる。模擬的な非操縦性逆回転による危険な動作状態となったエスカレーターを均等減速し、エスカレーターの非操縦性逆回転保護装置が動作すると、操作装置3は自動的に動作速度を固定して表示する。このとき、「データ保存」ボタンをタップすることで、逆回転保護動作速度を保存できる。非操縦性逆回転保護装置が作動しない場合、エスカレーターは減速後に下りの安定運転状態となるまで反対方向に加速する。
【0026】
二、速度超過保護機能試験の実施
上記試験における冒頭の動作に従い、手動で「速度超過試験」ボタンをタップすると、速度超過保護機能試験に進む。手動で「下り」ボタンをタップし、キースイッチでエスカレーターを起動して下り運転状態としてから右下隅の「チェック完了。次に進む」ボタンをタップした後、安定運転状態となるのを待ってから「速度超過」ボタンをタップすると、速度超過保護機能試験が開始する。模擬的な速度超過による危険な動作状態となったエスカレーターを均等加速し、エスカレーターの速度超過保護スイッチを作動すると、操作装置3は自動的に動作速度を固定して表示する。このとき、「データ保存」ボタンをタップすることで、速度超過動作速度を保存できる。
【0027】
三、制動距離検知及び制動減速速度検知試験
上記試験における冒頭の動作に従い、手動で「エスカレーター制動試験」ボタンをタッチすると制動試験に入る。手動で「下り」ボタンをタップし、キースイッチでエスカレーターを起動して下り運転状態としてから「チェック完了。次に進む」ボタンをタップした後、安定運転状態となるのを待ってから、トリガー31を用いてエスカレーターの急停止ボタンを押下する。すると、エスカレーターは運転を停止し、操作装置3はパネルインターフェースに最大制動距離と最大制動減速速度データを固定表示する。このとき、「データ保存」ボタンをタップすることでデータを保存できる。
【0028】
四、記録の検索
検知したデータ記録を検索したい場合は、「記録検索」ボタンをタップすれば記録履歴検索インターフェースに進むことができる。操作装置3は最近検知したエスカレーターのデータをデフォルト表示するが、その他のエスカレーターデータを検索したい場合には、対応するID番号を入力すればよい。
【0029】
総括すると、本発明におけるエスカレーターの総合検知システムは、科学的で高精度であり、且つシステム集積度が高く設計されているため、広東省の地方基準であるDB44/T1137−2013「エスカレーター及び動く歩道における速度超過及び非操縦性逆回転に関する保護機能試験方法」の要件を満たしている。当該システムは、
1.汎用性が高く、電源周波数式エスカレーター及び周波数変換式エスカレーターに広く適用される。
2.検知方法と保護装置の型式に関連性がないため、従来の方法における検知の不正確さや検知不能といった欠点が解消される。
3.視覚的にリアルタイムで保護装置の動作速度を監視可能なため、精度のよい定量検知が実現できる。
4.産業用タッチパネルによる操作制御のため、操作が容易であり、ユーザーフレンドリーなインターフェースとなる。
5.検知データの記録履歴を保存及び検索可能である。
【0030】
なお、本システムを用いて検知する際には以下の点に注意が必要である。
検知過程でエスカレーターが正常に起動し得ないことに気付いた場合、駆動装置1のパイロットランプが黄色に点灯しているときは、駆動装置1の入力線と出力線の接続を検査する必要がある。一般的には入力欠相又は出力欠相が原因であり、再接続後に正常起動可能となる。
【0031】
検知過程でエスカレーターが起動するが、運転方向が設定値と反対であることに気付いた場合には、駆動装置1の出力線ポートを変更すればエスカレーターの運転方向を容易に調整可能である。
【0032】
取り外し、短絡、接続等の電気操作前には、まず主電源のスイッチを切り、帯電していないことをマルチメーターで測定のうえ確認してから行うようにする。
【0033】
なお、以上は本発明における好ましい実施例にすぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。同様の手段で本発明の技術的効果を達成可能なものは、いずれも本発明の保護の範囲に属するものと考える。
図1
図2
図3
図4