特許第6371916号(P6371916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371916
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】ヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 5/02 20060101AFI20180730BHJP
   E05D 7/04 20060101ALI20180730BHJP
   E05D 3/06 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   E05D5/02
   E05D7/04
   E05D3/06
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-547008(P2017-547008)
(86)(22)【出願日】2017年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2017023733
(87)【国際公開番号】WO2018012291
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2017年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-139595(P2016-139595)
(32)【優先日】2016年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】越川 伸市郎
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/057249(WO,A1)
【文献】 特表昭62−500601(JP,A)
【文献】 特開平06−050049(JP,A)
【文献】 米国特許第5206974(US,A)
【文献】 登録実用新案第3156516(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 5/02
E05D 3/06,3/14
E05D 7/04,7/12
F16C 11/04,11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材側の第1本体部と第2部材側の第2本体部とが回転連結部を介して回転可能に連結されたヒンジ装置であって、前記第1本体部が、
前記回転連結部と連なる本体部材と、
前記第1部材と前記本体部材との間に介在されるとともに、前記本体部材に対して連結軸のまわりに回転可能に連結された介在部材と、
前記本体部材及び前記介在部材のうち一方の部材に螺合され、かつ他方の部材に係止されることにより、前記本体部材と前記介在部材とを前記連結軸と直交する方向へ相対変位させる調節ネジと、
を備え、前記調節ネジが、前記他方の部材を貫通する首部と、前記首部の両端部に互いに対峙するように設けられた一対の挟持面を含み、
前記他方の部材が、前記一対の挟持面どうしの間に挟まれた被係止部を含み、前記被係止部の両側面には、それぞれ前記連結軸と平行に延びるとともに対面する挟持面と当接された尾根状の当接部と、前記連結軸と前記調節ネジとを結ぶ方向における前記当接部の側方に連なるとともに前記対面する挟持面との当たりを避ける逃げ部が形成されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記逃げ部が、対応する当接部から前記連結軸と前記調節ネジとを結ぶ方向へ遠ざかるにしたがって他方の当接部側へ傾く斜面になっていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記被係止部の両側面には、隆起部が形成され、前記隆起部の隆起頂面が前記斜面を構成し、前記隆起頂面の1の縁部が前記当接部を構成していることを特徴とする請求項2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記被係止部の厚みが、前記当接部から前記連結軸と前記調節ネジとを結ぶ方向へ遠ざかるにしたがって小さくなっていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
一方の挟持面と対面する当接部と、他方の挟持面と対面する当接部とが、前記連結軸と前記調節ネジとを結ぶ方向に離れていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
前記被係止部が、前記連結軸と平行な方向に離れて対峙するとともに互いの間に前記首部が通される一対の被係止板部を備え、各被係止板部の両側面に前記当接部及び逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項7】
前記挟持面が、前記調節ネジのネジ軸線と直交する平面状であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家具本体や建物壁などの第1部材に扉等の第2部材を回転可能に取り付けるためのヒンジ装置に関し、特に第2部材の第1部材に対する位置をスライド調節可能な調節機構を有するヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、2のヒンジ装置は、家具本体(第1部材)側の第1本体部と扉(第2部材)側の第2本体部とが回転連結部を介して回転可能に連結されている。第1本体部は、回転連結部と連なる本体部材と、家具本体と第1本体部との間に介在された介在部材とを含む。介在部材が家具本体に対して固定されている。調節ネジが、本体部材に係止されるとともに介在部材にねじ込まれている。調節ネジによって、本体部材が介在部材に対して相対変位される。ひいては、第2部材の第1部材に対する位置が調節される。調節ネジにおける本体部材との係止部は、本体部材を貫通する首部と、首部の両端部に設けられて本体部材を挟む一対の挟持面を含む。
特許文献1の挟持面は、互いに平行な平面になっている。
特許文献2の挟持面は、首部へ向かって縮径するテーパ面になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−5970号公報
【特許文献2】特開平10−37572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のヒンジ装置においては、一対の挟持面どうしの間隔が、本体部材の厚みよりも大きくなっている。このため、本体部材が介在部材に対して平行であるとき、本体部材がガタツキやすい。
【0005】
特許文献2のヒンジ装置においては、一対のテーパ状の挟持面によって本体部材を挟み付けることでガタツキを防止できる。また、調節ネジを回す際の抵抗が小さく操作性を改善できる。
しかし、テーパ状の挟持面と本体部材とは、ほぼ点接触であるために耐荷重性が低い。
本発明は、前記事情に鑑み、ヒンジ装置の位置調節機構において、調節ネジの操作性を確保し、かつガタツキを防止するだけでなく、耐荷重性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明は、第1部材側の第1本体部と第2部材側の第2本体部とが回転連結部を介して回転可能に連結されたヒンジ装置であって、前記第1本体部が、
前記回転連結部と連なる本体部材と、
前記第1部材と前記本体部材との間に介在されるとともに、前記本体部材に対して連結軸のまわりに回転可能に連結された介在部材と、
前記本体部材及び前記介在部材のうち一方の部材に螺合され、かつ他方の部材に係止されることにより、前記本体部材と前記介在部材とを前記連結軸と直交する方向へ相対変位させる調節ネジと、
を備え、前記調節ネジが、前記他方の部材を貫通する首部と、前記首部の両端部に互いに対峙するように設けられた一対の挟持面を含み、 前記他方の部材が、前記一対の挟持面どうしの間に挟まれた被係止部を含み、前記被係止部の両側面には、それぞれ前記連結軸と平行に延びるとともに対面する挟持面と当接された尾根状の当接部と、前記連結軸と前記調節ネジとを結ぶ方向における前記当接部の側方に連なるとともに前記対面する挟持面との当たりを避ける逃げ部が形成されていることを特徴とする。
これによって、挟持面と尾根状の当接部とをほぼ線接触させることができる。したがって、点接触(特許文献2)よりも耐荷重性を高めることができる。また、逃げ部によって調節ネジを回す際の抵抗を小さくでき、操作性を確保できる。更に、一対の当接部がそれぞれ対応する挟持面に当たることで、がたつきを防止できる。
【0007】
前記逃げ部が、対応する当接部から前記連結軸と前記調節ネジとを結ぶ方向へ遠ざかるにしたがって他方の当接部側へ傾く斜面になっていることが好ましい。
これによって、逃げ部と挟持面との当たりを確実に避けることができる。
【0008】
前記被係止部の両側面には、隆起部が形成され、前記隆起部の隆起頂面が前記斜面を構成し、前記隆起頂面の1の縁部が前記当接部を構成していることが好ましい。
隆起によって被係止部を厚肉にすることで、耐荷重性をより高めることができる。
【0009】
前記被係止部の厚みが、前記当接部から前記連結軸と前記調節ネジとを結ぶ方向へ遠ざかるにしたがって小さくなっていることが好ましい。
これによって、被係止部における当接部以外の部分(逃げ部)と挟持面との当たりを確実に避けることができる。かつ、挟持面と当たる部分を厚肉にすることで耐荷重性を高めることができる。
【0010】
一方の挟持面と対面する当接部と、他方の挟持面と対面する当接部とが、前記連結軸と前記調節ネジとを結ぶ方向に離れていることが好ましい。
これによって、調節ネジにより前記他方の部材を安定的に係止できる。
前記被係止部が、前記連結軸と平行な方向に離れて対峙するとともに互いの間に前記首部が通される一対の被係止板部を備え、各被係止板部の両側面に前記当接部及び逃げ部が形成されていることが好ましい。
前記挟持面は、前記調節ネジのネジ軸線と直交する平面状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒンジ装置の位置調節機構において、調節ネジの操作性を確保でき、かつガタツキを防止できるだけでなく、耐荷重性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るヒンジ装置を含む扉装置を閉状態で示す斜視図である。
図2図2(a)は、前記ヒンジ装置のヒンジ本体を開状態で示す背面図である。図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線に沿う、前記ヒンジ装置の断面図である。
図3図3は、前記ヒンジ装置のヒンジ本体と座金を分解して示す斜視図である。
図4図4は、前記ヒンジ本体の分解斜視図である。
図5図5(a)は、前記ヒンジ本体の一部分を示す、図5(b)のVa−Va線に沿う断面図である。図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線に沿う、前記ヒンジ本体の断面図である。
図6図6は、前記ヒンジ本体の調節ネジ及び介在部材の分解斜視図である。
図7図7は、前記介在部材の正面図である。
図8図8は、図7のVIII−VIII線に沿う断面図であり、調節ネジを二点鎖線にて示す。
図9図9は、図8の円部IXにおける当接部と挟持面との接触部分を示す拡大断面図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態を示し、図10(a)は、同図(b)のXa−Xa線に沿う、図8相当の断面図である。図10(b)は、同図(a)のXb−Xb線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、例えば家具等の躯体1(第1部材)と扉2(第2部材)とがヒンジ装置3を介して回転可能に連結されている。図1図3に示すように、ヒンジ装置3は、ヒンジ本体3aと、座金3bを備えている。座金3bが、躯体1に取付けられている。ヒンジ本体3aは、躯体1側の第1本体部4と、扉2側の第2本体部6を含む。第1本体部4が、座金3bに被さるように装着されている。第2本体部6が、扉2に取付けられている。第1本体部4と第2本体部6とが、回転連結部5を介して第3方向D(上下方向)まわりに回転可能に連結されている。
【0014】
図2(b)及び図4に示すように、回転連結部5は、第1アーム51と、第2アーム52を含む。アーム51,52と、後記本体部材10と、第2本体部6とによって四節リンクが構成されている。第1アーム51と後記本体部材10とを繋ぐ回転連結ピン53は、ガタ止め筒55に圧入されている。ガタ止め筒55の両端面が第1アーム51の軸受部51bに当接されている。これによって、第1アーム51ひいては扉2の第3方向Dへのガタツキが防止されている。
なお、回転連結部5にキャッチ機構を設けることで扉2を例えば閉方向へ付勢することにしてもよい。その場合、キャッチ機構によって前記第3方向Dへのガタツキを防止できるから、ガタ止め筒55を省略してもよい。
【0015】
図4及び図5に示すように、第1本体部4は、本体部材10と、介在部材30と、調節ネジ40を含む。本体部材10は、断面コ字状に形成されるとともに、第3方向Dと直交する第2方向D(前後方向)へ延びている。図2(b)に示すように、本体部材10の第2方向Dの前端部(図2(b)において左側)に回転連結部5が連なっている。
【0016】
図2(b)に示すように、本体部材10と、座金3bひいては躯体1との間に介在部材30が介在されている。図5及び図6に示すように、介在部材30は、断面コ字状に形成されるとともに第2方向Dへ延びている。図2(b)に示すように、介在部材30が座金3bに着脱可能に装着されている。介在部材30に本体部材10が被さっている。図5(a)及び図7に示すように、介在部材30の後端側部(図7において右側部)には、長穴33が形成されている。長穴33の長軸は、介在部材30の長手方向(第2方向D)へ向けられている。図5(a)に示すように、長穴33に、ピン状の連結軸13が通されている。連結軸13の軸線L13(連結軸線)は、本体部材10及び介在部材30の幅方向(図5(a)の紙面と直交する第3方向D)へ向けられている。連結軸13の両端部は、本体部材10に位置固定されている。介在部材30と本体部材10とが、連結軸13のまわりに相対回転可能、かつ第2方向Dへ相対スライド可能に連結されている。
【0017】
図4及び図5(a)に示すように、本体部材10と介在部材30との間には第2調節部材60が設けられている。第2調節部材60を回すことによって、本体部材10が、介在部材30に対して第2方向Dへ位置調節可能になっている。本体部材10と第2調節部材60との間には、ガタ止め板65が設けられている。ガタ止め板65は、概略四角形の板状になっており、中央部に圧入孔65cが形成されている。第2調節部材60の操作軸部61が、圧入孔65cに圧入されている。これによって、第2調節部材60が不用意に回らないようになっている。
【0018】
図5に示すように、第1本体部4における連結軸13から第2方向Dの前方(図5(a)において左方)に離れた位置に調節ネジ40が配置されている。調節ネジ40は、本体部材10(一方の部材)に螺合され、かつ介在部材30(他方の部材)に係止されている。調節ネジ40の軸線は、第1方向D(表裏方向)に沿うように向けられている。調節ネジ40を回すことによって、本体部材10が、介在部材30に対して連結軸13の周りに回転変位される。言い換えると、本体部材10と介在部材30とが、連結軸13と直交する方向へ相対変位される。これによって、本体部材10の前端部(図2(a)において左端部)が、介在部材30に対して第1方向Dに位置調節される。ひいては、扉2が躯体1に対して第1方向Dに位置調節される。なお、座金3bには、第3方向Dへの位置調節機構が組み込まれている。この結果、扉2が、躯体1に対して第1方向D、第2方向D、第3方向Dの三方向へ位置調節可能になっている。
【0019】
調節ネジ40を含む第1方向Dへの位置調節機構の詳細は以下の通りである。
図4に示すように、本体部材10には、第1ネジ穴14が貫通形成されている。図5に示すように、調節ネジ40のネジ部41が、第1ネジ穴14にねじ込まれている。図5及び図6に示すように、調節ネジ40におけるネジ部41よりもネジ軸線L40の先端側(図5において下側)の部分には、係止部44が設けられている。係止部44は、環状溝44cと、首部44bと、一対の挟持面44aを含む。調節ネジ40の前記先端側部分の外周部に環状溝44cが形成されることによって、その内側部が首部44bとなっている。首部44bは、ネジ部41よりも細い円柱状になっている。かつ、首部44bの両端部に一対の挟持面44a(環状溝44cの両側面)が形成されている。挟持面44aは、首部44bを巡る環状、かつ調節ネジ40のネジ軸線L40と直交する平面状になっている。一対の挟持面44aどうしが、ネジ軸線L40の方向に互いに対峙されている。
【0020】
図6及び図7に示すように、介在部材30の前側部(図7において左側)には、被係止部34及びスリット36が設けられている。スリット36は、縦スリット36aと、横スリット36bを有し、図7の紙面と直交する第1方向Dから見てT字状になっている。縦スリット36aは、介在部材30の長手方向(第2方向D)に延び、かつ介在部材30の前端縁(図7において左縁)に達している。縦スリット36aの幅は、首部44bの直径と略等しい。
【0021】
被係止部34における縦スリット36aを挟んで両側に、一対の被係止板部35が設けられている。つまり、被係止部34が、縦スリット36aによって一対の被係止板部35に分割されている。これら被係止板部35どうしが、第3方向D(連結軸13と平行な方向)に離れて対峙されている。
【0022】
図5に示すように、一対の被係止板部35どうし間の縦スリット36aに首部44bが通されている。ひいては、首部44bが、介在部材30(他方の部材)を貫通している。第2調節部材60による第2方向Dへの位置調節時には、首部44bが縦スリット36bに沿って摺動される。
調節ネジ40の一対の挟持面44aによって、一対の被係止板部35ひいては被係止部34が第1方向Dの表裏両側から挟まれている。
【0023】
図7及び図8に示すように、各被係止板部35は、隆起部35aと、側方部35f,35rとを有している。各被係止板部35(ひいては被係止部34)の第2方向Dの中央部における表裏両側面に、それぞれ隆起部35aが形成されている。隆起部35aは、一定の幅を有して、第3方向Dへ延びている。隆起部35aの幅(第2方向Dに沿う寸法)は、首部44bの直径よりも小さい。隆起部35aの長さ(第3方向Dに沿う寸法)は、挟持面44aの内外半径差と略等しいか、それよりも大きい。各隆起部35aにおける隆起頂面35bは、平面状になっている。表裏の隆起頂面35bどうしは、互いに平行になっている。
【0024】
図7及び図8に示すように、各被係止板部35(ひいては被係止部34)の両側面には、それぞれ尾根状の当接部35eが形成されている。詳しくは、表側(図8において上側)の隆起頂面35bにおける前側(図8において左)の縁(1の縁部)が、当接部35eとなっている。同様に、裏側(図8において下側)の隆起頂面35bにおける後側(図8において右)の縁(1の縁部)が、もう1つの当接部35eとなっている。第2方向D(連結軸13と調節ネジ40とを結ぶ方向)における各当接部35eの側方に隆起頂面35bが連なっている。当接部35eは、稜線状をなし、連結軸13と平行な第3方向Dへ延びている。当接部35eは、必ずしも尖っている必要はなく、Rになっていてもよい。
【0025】
図8に示すように、表側(図8において上側)の当接部35eと裏側(図8において下側)の当接部35eとの第1方向D図8において上下)に沿う離間距離は、首部44bの軸長と略等しい。また、表側の当接部35eと裏側の当接部35eとは、第2方向Dに離れている。
【0026】
表側(図8において上側)の当接部35eは、一方(図8において上側)の挟持面44aと対面して当接されている。裏側(図8において下側)の当接部35eは、他方(図8において下側)の挟持面44aと対面して当接されている。当接部35eと挟持面44aとの当たりは、ほぼ線接触になっている。
【0027】
図7及び図8に示すように、各隆起頂面35bは、対応する当接部35eから第2方向D(連結軸13と調節ネジ40とを結ぶ方向)へ遠ざかるにしたがって他方の当接部35e側へ傾く斜面になっている。これによって、隆起頂面35b(逃げ部)は、対面する挟持面44aとの当たりを避けている。
【0028】
隆起部35aよりも第2方向Dの前方(図8において左方)へ側方部35fが延びている。隆起部35aよりも第2方向Dの後方(図8において右方)へ側方部35rが延びている。
被係止板部35における隆起部35aが在る中央部分の厚みは相対的に大きく、側方部35f,35rの厚みは相対的に小さい。かつ、側方部35f,35rの厚みは、それぞれ隆起部35aひいては当接部35eから第2方向Dへ遠ざかるにしたがって連続的に小さくなっている。これによって、側方部35f,35rの表裏両側面(逃げ部)が、対面する挟持面44aとの当たりを避けている。
【0029】
ヒンジ装置3においては、一対の挟持面44aがそれぞれ当接部35eと当接されることで、本体部材10ひいては扉2の第1方向Dへのガタツキを防止できる。
しかも、当接部35eが線状であるために、挟持面44aと当接部35eとが線接触される。したがって、点接触(特許文献2)の場合よりも、ヒンジ装置3の耐荷重性を高めることができる。更に、被係止板部35における挟持面44aと当たる中央部分を厚肉にすることで耐荷重性を高めることができる。また、表側の当接部35eと裏側の当接部35eとが、第2方向Dに離れていることによって、調節ネジ40を介在部材30に安定的に係止できる。
【0030】
扉2を第1方向Dへ位置調節する際は、調節ネジ40をネジ軸線L40まわりに角度調節する。このとき、挟持面44aが当接部35e上を摺擦する。一方、当接部35eが線状であるために、挟持面44aと当接部35eとの接触面積を小さくできる。これによって、調節ネジ40を角度調節する際の調節ネジ40と介在部材30との間の摩擦抵抗を低減できる。
【0031】
図5において二点鎖線にて示すように、調節ネジ40の角度調節によって、本体部材10が介在部材30に対して連結軸線L13の周りに回転するように相対変位される。これに伴い、調節ネジ40のネジ軸線L40が本体部材10と一緒に回転変位される。ひいては、図9の二点鎖線にて示すように、挟持面44aが第3方向Dまわりに回転変位される。一方、当接部35eの側方に逃げ部35b,35r,35fを設けることによって、挟持面44aが介在部材30の当接部35e以外の部分と干渉するのを避けることができ、この結果、調節ネジ40がスムーズに回転変位でき、角度調節時の操作性を確保できる。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図10は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態は、被係止部の変形例に係る。図10(b)に示すように、被係止部34Bは、一対の円柱部37を含む。円柱部37の軸線L37は、第3方向Dへ向けられている。かつ、一対の円柱部37どうしが第3方向Dに対峙されている。図10(a)に示すように、円柱部37の直径は、調節ネジ40の一対の挟持面44aどうしの距離と実質的に等しい。
【0033】
一対の円柱部37が、一対の挟持面44aどうしの間に挟まれている。円柱部37の周面の上端部及び下端部が、それぞれ挟持面44aと当接されることによって、当接部37aとなっている。当接部37aは、第3方向Dひいては連結軸13(図2(a)参照)と平行に延びる尾根状になっている。円柱部37の周面における当接部37aを挟んで両側部は、挟持面44aとの当たりを避ける逃げ部37bとなっている。
【0034】
本発明は、前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、扉2が第1部材を構成し、躯体1が第2部材を構成していてもよい。本体部材10及び介在部材30を含む第1本体部4が扉2に設けられ、第2本体部6が躯体1に設けられていてもよい。
被係止部は、尾根状の当接部及び逃げ部を有していればよく、その形状は板状ないしは円柱状に限られず、楕円柱状等、種々の形状を適用可能である。
調節ネジ40が、介在部材30(一方の部材)に螺合され、かつ本体部材10(他方の部材)に係止されていてもよい。介在部材30に第1ネジ穴14が形成され、かつ本体部材10に被係止部34が形成されていてもよい。
回転連結部5による第1本体部と第2本体部との連結機構は、四節リンク機構に限られず、七節リンク機構であってもよく、1軸蝶番になっていてもよい。
連結軸13は、長いピン状に限られず、例えば一対の短いリベット状であってもよい。断面コ字状の本体部材10と断面コ字状の介在部材30との互いに近接する側板どうしが、リベット状の連結軸によって相対回転可能に連結されていてもよい。
実施形態において、第1方向Dが表裏方向(又は左右方向)へ向けられ、第2方向Dが前後方向へ向けられ、第3方向Dが上下方向へ向けられているのはあくまで例示であって、本発明がこれに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば家具の躯体や建物の壁と扉とを連結するヒンジ装置等に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
左右方向(第1方向)
前後方向(第2方向)
上下方向(第3方向)
1 躯体(第1部材)
2 扉(第2部材)
3 ヒンジ装置
4 第1本体部
5 回転連結部
6 第2本体部
10 本体部材
13 連結軸
30 介在部材
34,34B 被係止部
35 被係止板部
35a 隆起部
35e 当接部
35b 隆起頂面(逃げ部)
35r 後側の側方部(逃げ部)
35f 前側の側方部(逃げ部)
37 円柱部
37a 当接部
37b 逃げ部
40 調節ネジ
40 ネジ軸線
44 係止部
44a 挟持面
44b 首部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10