特許第6371917号(P6371917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371917
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】乗物投光装置用照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20180730BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20180730BHJP
   F21S 41/60 20180101ALI20180730BHJP
   F21V 7/06 20060101ALI20180730BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20180730BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180730BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20180730BHJP
【FI】
   B60Q1/14 Z
   F21S41/663
   F21S41/60
   F21V7/06
   F21W102:13
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】27
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-549811(P2017-549811)
(86)(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公表番号】特表2018-509342(P2018-509342A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】AT2016050067
(87)【国際公開番号】WO2016149721
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2017年11月17日
(31)【優先権主張番号】A50238/2015
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】タウト、ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】トマゼーティヒ、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フランク、ハイモ
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−227228(JP,A)
【文献】 特開2009−218155(JP,A)
【文献】 特開2005−141918(JP,A)
【文献】 特開2015−39927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
F21S 41/60
F21S 41/663
F21V 7/06
F21W 102/13
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物投光装置のための照明装置であって、
・第1光モジュール(105)、
・第2光モジュール(106)、
・第3光モジュール(107)
を含み、
・第1光モジュール(105)は乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第1全体配光パターン(A)を形成し、
・第2光モジュール(106)は乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第1部分配光パターン(F)を形成し、
・第3光モジュール(107)は乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第2部分配光パターン(Z)を形成し、
・第1及び第2光モジュール(105、106)の同時照明時、第1全体配光パターン(A)は第1部分配光パターン(F)と少なくとも部分的に重なり、その結果、第2全体配光パターン(AF)が形成され、
第1全体配光パターンは減光配光パターン(A)であり、
第1部分配光パターンは部分ハイビーム配光パターン(F)であり、
第2全体配光パターンはハイビーム配光パターン(AF)であり、
第2部分配光パターン(Z)は、hh線(hh)の完全に下方に位置し、かつ、減光配光パターン(A)の明暗境界線(10)の少なくとも1つの水平部分に下方から境を接し、かつ、少なくとも部分的にハイビーム配光パターン(AF)と重なり、
部分ハイビーム配光パターン(F)は、1又は複数のセグメント(30)から構成されかつ下側境界線(25)を有し、該下側境界線(25)は、少なくとも部分的に減光配光パターン(A)内に位置し、かつ、第2及び第3光モジュールの同時照明時、第2部分配光パターン(Z)と少なくとも部分的に重なり、
3つのすべての光モジュール(105、106、107)の同時活性化時、第3全体配光パターン(AF’)が形成される、
照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
第2全体配光パターン(AF)は、1つの定義された切断曲線(SL)に沿って記録された第1光強度推移曲線(5)によって特徴付けられる、
照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の照明装置において、
第3全体配光パターン(AF’)は、1つの定義された切断曲線(SL)に沿って記録された第2光強度推移曲線(6)によって特徴付けられる、
照明装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の照明装置において、
第1光強度推移曲線(5)及び第2光強度推移曲線(6)は夫々少なくとも2回連続的に微分可能である、
照明装置。
【請求項5】
請求項2〜4の何れかに記載の照明装置において、
切断曲線(SL)は直線である、
照明装置。
【請求項6】
請求項5に記載の照明装置において、
直線的な切断曲線(SL)は、vv線(vv)に平行に延在する、
照明装置。
【請求項7】
請求項2〜6の何れかに記載の照明装置において、
光強度値が単調に上昇している第1光強度推移曲線(5)の少なくとも1つの上昇領域(52、54)における最小曲率半径(r1)は、光強度値が単調に上昇している第2光強度推移曲線(6)の1つの上昇領域(62、64)における最小曲率半径(r2)よりも小さいか又は等しい、
照明装置。
【請求項8】
請求項2〜7の何れかに記載の照明装置において、
光強度値が単調に下降している第1光強度推移曲線(5)の少なくとも1つの下降領域(50)における最小曲率半径は、光強度値が単調に下降している第2光強度推移曲線(6)の1つの下降領域(60)における最小曲率半径よりも小さいか又は等しい、
照明装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)は、水平に延伸するストライプ状のセグメント(Z)を照明するよう構成及び/又は配置され、セグメント幅対セグメント高さの比は少なくとも2対1である、
照明装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)は、水平に延伸するストライプ状のセグメント(Z)を照明するよう構成及び/又は配置され、セグメント幅対セグメント高さの比は10対1である、
照明装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)は、水平に延伸するストライプ状のセグメント(Z)を照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメント(Z)は水平方向に凡そ−20°と凡そ+20°の間の領域に位置する、
照明装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)は、右側通行用に構成された乗物に組み込まれた状態において、水平に延伸するストライプ状のセグメント(Z)を照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメント(Z)は水平方向に凡そ−20°と凡そ+10°の間の領域に位置する、
照明装置。
【請求項13】
請求項1〜11の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)は、左側通行用に構成された乗物に組み込まれた状態において、水平に延伸するストライプ状のセグメント(Z)を照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメント(Z)は水平方向に凡そ−10°と凡そ+20°の間の領域に位置する、
照明装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)は、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントの水平方向の長さは20°〜40°の範囲である、
照明装置。
【請求項15】
請求項1〜14の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)は、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは垂直方向に凡そ−4.5°と凡そ0°の間の領域に位置する、
照明装置。
【請求項16】
請求項1〜15の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)は、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントの垂直方向の長さは0°〜4.5°の範囲である、
照明装置。
【請求項17】
請求項1〜16の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)は、少なくとも1つの光源と少なくとも1つの該少なくとも1つの光源に割り当てられた前置光学系及び/又は少なくとも1つの割り当てられた反射器を含む、
照明装置。
【請求項18】
請求項1〜17の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)に割り当てられる反射器は、フリーフォーム反射器として構成される、
照明装置。
【請求項19】
請求項1〜18の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)に配される光源は、1つ、2つ又は3つ以上のLEDから構成される、
照明装置。
【請求項20】
請求項1〜18の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)に配される光源は、レーザ光源として構成される、
照明装置。
【請求項21】
請求項1〜20の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)に配される光源は、予め設定された又は予め設定可能なスペクトル領域の光を放射する、
照明装置。
【請求項22】
請求項1〜21の何れかに記載の照明装置において、
第3光モジュール(107)に配される光源は、第1光モジュール(105)から及び/又は第2光モジュール(106)から放射される光の色に適合可能な色を有する光を放射する、
照明装置。
【請求項23】
請求項1〜22の何れかに記載の照明装置において、
第1光モジュール(105)、第2光モジュール(106)及び第3光モジュール(107)は、1つの乗物投光装置筐体(101)内に配設される、
照明装置。
【請求項24】
請求項1〜22の何れかに記載の照明装置において、
第1光モジュール(105)及び第2光モジュール(106)は、1つの乗物投光装置筐体(101)内に配設され、第3光モジュール(107)は追加光モジュール(121)として構成されかつ該乗物投光装置筐体(101)の外部に配設される、
照明装置。
【請求項25】
請求項1〜24の何れかに記載の照明装置において、
セグメント(30)は矩形に構成され、かつ、下側境界線(25)は直線状に延在する、
照明装置。
【請求項26】
請求項1〜25の何れかに記載の照明装置を少なくとも1つ有する乗物投光装置。
【請求項27】
請求項26に記載の乗物投光装置を少なくとも1つ有する乗物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物投光装置(自動車等の前照灯等)のための照明装置であって、第1光モジュール、第2光モジュール及び第3光モジュールを含み、第1光モジュールは乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第1全体配光パターンを形成し、第2光モジュールは乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第1部分配光パターンを形成し、第3光モジュールは乗物に組み込まれた状態において乗物(自動車両)の前方の領域に、予め設定可能な第2部分配光パターンを形成し、及び、第1及び第2光モジュールの同時照明時、第1全体配光パターンは第1部分配光パターンと少なくとも部分的に重なり、その結果、第2全体配光パターンが形成されるものに関する。
【0002】
更に、本発明は、少なくとも1つのそのような照明装置を有する乗物投光装置に関する。
【0003】
更に、本発明は、少なくとも1つのそのような乗物投光装置、有利には2つのそのような乗物投光装置を有する乗物(自動車両)に関する。
【背景技術】
【0004】
乗物投光装置の配光パターンは、法律上の規制に基づき、一連の条件を満たす必要がある。法律上の基準に加えて、例えば配光パターンの一様性に関する顧客の要求にもしばしば応じる必要がある。
【0005】
例えば、法律上の理由から、明るく完全に照明された配光パターン領域から減光された配光パターン領域への移行部は、不鮮明な明暗境界線(Hell-Dunkel-Grenzen)(HD境界線)として定義されているが、HD境界線は過度に鮮明にも過度にぼやけても形成されてはならない、即ち、HD境界線の最大鮮明度(Schaerfe)(HD境界線の硬度(Haertegrad)は測定値Gによって規定されている)は法律上予め定められている(ECE加盟国では、この測定値の下限も法律上規定されている)。HD境界線のそのようなぼやけは、運転者に対しHD境界線を「よりソフト」なものとして及び主観的により快適なものとして感じさせる。
【0006】
このHD境界線の鮮明度ないし不鮮明度の定量化は、HD境界線を垂直に切る交線に沿った勾配の最大値によって行われる。このために、0.1°刻みの測定点(複数)における照明強度の対数が計算され、その差が形成され、かくして、勾配関数が得られる。この関数の最大値は、HD境界線の勾配と称される。この定義は人間の明るさ知覚(感覚)を不正確にしか反映していないため、種々異なって知覚されるHD境界線が同じ測定勾配値を有することもあり得、或いは、HD境界線が同じに見える場合に、異なる勾配が測定されることもあり得る。
【0007】
他のテーマの1つは、セグメント化された配光パターンの形成である。それは、例えば動的な(ダイナミックな)配光パターンを形成する際に、例えば減光のない(blendfrei)ハイビーム(遠方照明)の場合に、使用される。専門用語では、しばしばいわゆるADBシステム(Adaptive Driving Beam:配光可変ヘッドランプ)といわれる。特殊な具体化例では、そのような動的配光パターンは、1又は複数の個別配光パターンから構築される。このために、例えば夫々1つの前置レンズが割り当てられた複数の個別光源によって、光像中に夫々1つの小セグメントが生成され、これらの光セグメントが重なり合って配光パターン全体を形成する。この場合、個々の光源をスイッチオフすることにより、光像中の個々のセグメントをスイッチオフすること、即ち照明しないことができる。これらの複数のセグメントは、通常、複数の行及び/又は複数の列に配置されている。
【0008】
法律上定められた全体配光パターンを生成するために複数の(異なる)光モジュールを使用することにより、個々の光モジュールによって生成される配光パターン(複数)間に不快なものとして感じられる鮮明な移行部が生じることが起こり得る。この移行部ないしいわゆる不均一性(ムラ)は、自動車両の前方領域において認識(知覚)される。従って、強度移行部に極めて大きな勾配を有する配光パターンを使用する場合、人間の眼はこれを極めてはっきりと知覚する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE 10 2009 053581 B3
【特許文献2】DE 10 2006 052749 A1
【特許文献3】DE 10 2008 036193 A1
【特許文献4】EP 2518397 A2
【特許文献5】DE 10 2007 052745 A1
【特許文献6】DE 10 2007 052742 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
勾配を小さくするための従来技術において既知のアプローチの1つは、光学系(レンズ径、レンズの焦点距離)が許す範囲内での、前置レンズの湾曲部の適合化である(例えばDE 10 2009 053581 B3参照)。このアプローチは、とりわけ、前置レンズを有する装置に適用される。そのような適合化は、例えば結像レンズの境界面に複数の微小構造体を使用することによって達成することが可能であり、従来技術から知られている。
【0011】
前置レンズの出射面の湾曲を変化することにより、例えばストライプ状の配光パターンの寸法が変化され、それによって、所定の光ビーム部分がより大きな面にわたって分配される。その結果、HD領域の幅が広がり、人間の眼は照明移行部をコントラストがより小さいものとして知覚する。しかしながら、このアプローチは限定的にしか利用することができない。例えば、更に後に参照されるセグメント化ハイビームパターンの下側領域における大きな勾配はこの手法では対処(処理)できない。
【0012】
従来技術において既知の他の1つのアプローチでは、移行部を均一化する(ムラをなくす)前置光学素子の(例えば(研磨)砂噴射による)粗面化が行われる。砂噴射のプロセスは、常に、器具又はレンズ表面に複数の異なる幾何学的形状を形成する。このため、不利なことに、製造する毎に外観が異なり、勾配値の(大抵は)小さな変動を引き起こす。
【0013】
従って、上記の解決策は何れも、一般的ではなく、特殊な場合にしか使用することができない(例えばDE 10 2006 052749 A1、DE 10 2008 036193 A1、EP 2518397 A2、DE 10 2007 052745 A1、DE 10 2007 052742 A1参照)。
【0014】
従来技術の上記の欠点は除去されることが望ましい。それゆえ、本発明の課題は、法律上の値(条件)を満たすと同時に、煩わしい(不快な)ものとしては知覚されない光像を実現可能にする照明装置を提供することである。
【0015】
なお、法律に合致する光強度値が達成されるためには、まず、照明装置から放射される光の強度が測定されなければならない。測定は、通常、照明装置から所定の距離のところに測定スクリーンが照明装置の光軸に対し直角をなして配置されて照明されることにより行われる。測定スクリーンには、特別な直交座標軸対−hh線(ライン)(水平線(ライン))及びvv線(ライン)(垂直線(ライン))−が定義(規定)される。測定スクリーンにおける点の位置は角度で与えられる。この場合、光強度値は2次元分布の形で記録(評価)され(求められ)、例えば等照度線ダイアグラムとして記述(描画)される(等照度線:Isoluxlinien)。光強度推移曲線は、所定の曲線に沿って切った等照度分布の断面を表すが、切断曲線は、通常、等照度線ダイアグラムにおいて縦軸(vv線)に平行に延伸する直線である。そのような光強度推移曲線は複数の異なる配光パターン(光分布)を比較する際に考慮(利用)される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一視点により、乗物投光装置のための照明装置が提供される。この照明装置は、
・第1光モジュール、
・第2光モジュール、
・第3光モジュール
を含み、
・第1光モジュールは乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第1全体配光パターンを形成し、
・第2光モジュールは乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第1部分配光パターンを形成し、
・第3光モジュールは乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第2部分配光パターンを形成し、
・第1及び第2光モジュールの同時照明時、第1全体配光パターンは第1部分配光パターンと少なくとも部分的に重なり、その結果、第2全体配光パターンが形成され、
第1全体配光パターンは減光配光パターンであり、
第1部分配光パターンは部分ハイビーム配光パターンであり、
第2全体配光パターンはハイビーム配光パターンであり、
第2部分配光パターンは、hh線の完全に下方に位置し、かつ、減光配光パターンの明暗境界線の少なくとも1つの水平部分に下方から境を接し、かつ、少なくとも部分的にハイビーム配光パターンと重なり、
部分ハイビーム配光パターンは、1又は複数のセグメントから構成されかつ下側境界線を有し、該下側境界線は、少なくとも部分的に減光配光パターン内に位置し、かつ、第2及び第3光モジュールの同時照明時、第2部分配光パターンと少なくとも部分的に重なり、
3つのすべての光モジュールの同時活性化(照明)時、第3全体配光パターンが形成される(基本構成)
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい一実施形態では、照明装置は、予め設定可能な第1部分配光パターンが少なくとも部分的に予め設定可能な第1全体配光パターン内に位置する下側境界線を有し、該下側境界線が、第2及び第3光モジュールの同時照明時、第2部分配光パターンと少なくとも部分的に重なるよう構成される。
【0018】
配光パターンを関連する光強度推移曲線によって記述することは好都合であることが(本発明により)判明した。かくして、本発明に応じ、第2全体配光パターンは、1つの定義(規定)された切断曲線に沿って記録(評価)された(求められた)第1光強度推移曲線によって特徴付けられる。
【0019】
この場合、第3全体配光パターンは、1つの定義(規定)された切断曲線に沿って記録(評価)された(求められた)第2光強度推移曲線によって特徴付けられると好都合である。
【0020】
かくして、本発明に応じ、第1全体配光パターンと第1部分配光パターンの重なりが、第1全体配光パターン、第1部分配光パターン及び第2部分配光パターンの重なりと比較される。この比較は、特徴付けられた光強度推移曲線(複数)を用いて実行され、該両者の曲線の曲率半径によって定量化されるが(定量化の尺度(基準:Mass)としての曲率半径の使用については後に説明する)、本発明に応じ、第1光強度推移曲線及び第2光強度推移曲線は夫々少なくとも2回連続的に微分可能(stetig differenzierbar)である。
【0021】
ここで指摘すべきことは、光強度推移曲線は補間(内挿)、例えばスプライン補間によって形成されることである。この補間では、補償曲線(Ausgleichskurven)の平滑性に対する所定の設定値(例えばスプライン補間の次数)、光強度推移曲線が満たす必要がある短い平滑特性を予め設定することができる。
【0022】
有利には、この場合、光強度曲線は、直線的な切断曲線(断面)に沿って記録(評価)される(求められる)。
【0023】
更に、直線的な切断曲線は等照度線ダイアグラムの縦軸に平行に延在すると、とりわけ有利である。
【0024】
光強度推移曲線(複数)を比較するためには、相応の尺度が必要である。この場合またもや指摘すべきことは、本発明の目標は配光パターンの不均一性の大きさを減少することにあることである。不均一性の大きさは、光強度値が所定の範囲内において変化する大きさの程度を反映している。これは、光強度推移曲線については、当該曲線が所定の期間内において上昇ないし下降する速さの程度を意味する。
【0025】
この強度変化度の尺度として、有利には、上昇ないし下降領域に沿った曲率半径の変化の程度を選択することができる。かくして、最小の曲率半径が大きい上昇ないし下降領域は、最小の曲率半径が小さい上昇ないし下降領域よりも「平坦(フラット)」に見える。従って、第1のケースでは、この領域における配光パターンはより快適なものとして感じされる。
【0026】
従って、光強度値が単調に上昇している第1光強度推移曲線の少なくとも1つの上昇領域における、有利にはすべての上昇領域における最小曲率半径が、光強度値が単調に上昇している第2光強度推移曲線の[少なくとも]1つの上昇領域における、有利にはすべての上昇領域における最小曲率半径よりも小さいか又は等しいと有利である。
【0027】
更に、光強度値が単調に下降している第1光強度推移曲線の少なくとも1つの下降領域における、有利にはすべての下降領域における最小曲率半径が、光強度値が単調に下降している第2光強度推移曲線の[少なくとも]1つの下降領域における、有利にはすべての下降領域における最小曲率半径よりも小さいか又は等しいよう構成することができる。
【0028】
第2部分配光パターン(第2部分光分布)の形状に関し、有利には、第3光モジュールは水平に延伸するストライプ状のセグメントを(隈なく)照明するよう構成及び/又は配置され、セグメント幅対セグメント高さの比は少なくとも2対1、有利には10対1である。
【0029】
更に、第3光モジュールは水平に延伸するストライプ状のセグメントを(隈なく)照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは水平(左右)方向に凡そ−20°と凡そ+20°の間の(枠内の)領域に位置することも可能である。
【0030】
更に、有利には、第3光モジュールは、乗物に組み込まれた状態において(但し、乗物は右側通行用に構成されている。)水平に延伸するストライプ状のセグメントを(隈なく)照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは水平(左右)方向に凡そ−20°と凡そ+10°の間の(枠内の)領域に位置する。
【0031】
更に、第3光モジュールは、乗物に組み込まれた状態において(但し、乗物は左側通行用に構成されている。)水平に延伸するストライプ状のセグメントを(隈なく)照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは水平(左右)方向に凡そ−10°と凡そ+20°の間の(枠内の)領域に位置するよう構成できる。
【0032】
第3光モジュールは、照明装置から所定の距離のところに垂直に配置された測定スクリーンにおいて水平に延伸するストライプ状のセグメントを(隈なく)照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントの水平(左右)方向の長さ(伸び)は20°〜40°の範囲、有利には30°であることも可能である。
【0033】
まとめると、第3光モジュールは、基本的に(凡そ)−20°と凡そ+20°の間(の(枠内の)領域)に位置しかつ20°〜40°(の範囲)、有利には30°の水平(左右)方向長さ(伸び)を有する水平角度領域において水平に延伸するストライプ状のセグメントを(隈なく)照明するが、これは道路交通システムに適合されることが可能であり、かくして、水平角度領域は、右側通行用車両の場合、凡そ−20°と凡そ+10°の間(の(枠内の)領域)に、左側通行用車両の場合、凡そ−10°と凡そ+20°の間(の(枠内の)領域)に位置するよう適合される。
【0034】
更に、有利には、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを(隈なく)照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは垂直(上下)方向に凡そ−4.5°と凡そ0°の間の(枠内の)領域に位置する。
【0035】
同様に、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを(隈なく)照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントの垂直(上下)方向の長さ(伸び)は0°〜4.5°の範囲、有利には3°〜4.5°の範囲であるよう構成できる。
【0036】
かくして、第3光モジュールは、凡そ0°から−4.5°の垂直角度領域にありかつその垂直(上下)方向長さ(伸び)が0°〜4.5°の間、有利には3°〜4.5°の間の範囲にある水平に延伸するストライプ状のセグメントを(隈なく)照明する。この場合、セグメントに対しては、hh線の完全に下方に位置するか又はこの線に下方から境を接する(接触する)ことが要求されている。
【0037】
上記の領域の目標を定めた照明に適した第3光モジュールの発展及び実施形態は種々存在する。
【0038】
この場合、第3光モジュールが少なくとも1つの光源と少なくとも1つの該少なくとも1つの光源に割り当てられた前置光学系(ないし前置レンズ:Vorsatzoptik)及び/又は少なくとも1つの割り当てられた反射器を含むと好都合であることが(本発明により)判明した。
【0039】
具体的一実施形態では、第3光モジュールに割り当てられる反射器はフリーフォーム反射器(Freiformreflektor)として、例えば放物面の基本形状を有するフリーフォーム反射器として構成されることは、原理的に可能である。
【0040】
更に、第3光モジュールに配される光源は、ランプとして、例えば欧州基準ECE規則37(ECE-R37)に応じた白熱灯又は欧州基準ECE規則99(ECE-R99)に応じたガス放電灯(Gasentladungslampe)として構成されると有利である。
【0041】
好ましい一実施形態では、第3光モジュールに配される光源は、1つ、2つ又は3つ以上のLEDから構成される。
【0042】
好ましい一実施形態では、第3光モジュールに配される光源は、レーザ光源として構成されることができる。
【0043】
更に、第3光モジュールに配される光源は、予め設定された又は予め設定可能なスペクトル領域の光を放射すると有利である。
【0044】
この場合、第3光モジュールに配される光源は、第1光モジュールから及び/又は第2光モジュールから放射される光の色に適合(調整)可能な色を有する光を放射すると好都合である。
【0045】
本発明の具体的一実施形態では、第1光モジュール、第2光モジュール及び第3光モジュールは1つの乗物投光装置筐体内に配設される。
【0046】
本発明の他の具体的一実施形態では、第1光モジュール及び第2光モジュールは1つの乗物投光装置筐体内に配設され、第3光モジュールは追加光モジュールとして構成されかつ該乗物投光装置筐体の外部に配設される。
【0047】
更に、第1全体配光パターンは減光配光パターンであることが可能である。
【0048】
更に、第1部分配光パターンは部分ハイビーム配光パターンであると有利である。
【0049】
更に、第1部分配光パターンは、1又は複数の、有利には矩形のセグメントから構成されかつ有利には直線状の下側境界線を有する部分ハイビーム配光パターンであることが可能である。
【0050】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を示す。
(形態1)上記基本構成参照。
(形態2)上記の照明装置において、第2全体配光パターンは、1つの定義された切断曲線に沿って記録された第1光強度推移曲線によって特徴付けられることが好ましい。
(形態3)上記の照明装置において、第3全体配光パターンは、1つの定義された切断曲線に沿って記録された第2光強度推移曲線によって特徴付けられることが好ましい。
(形態4)上記の照明装置において、第1光強度推移曲線及び第2光強度推移曲線は夫々少なくとも2回連続的に微分可能であることが好ましい。
(形態5)上記の照明装置において、切断曲線は直線であることが好ましい。
(形態6)上記の照明装置において、直線的な切断曲線は、vv線に平行に延在することが好ましい。
(形態7)上記の照明装置において、光強度値が単調に上昇している第1光強度推移曲線の少なくとも1つの上昇領域における最小曲率半径は、光強度値が単調に上昇している第2光強度推移曲線の1つの上昇領域における最小曲率半径よりも小さいか又は等しいことが好ましい。
(形態8)上記の照明装置において、光強度値が単調に下降している第1光強度推移曲線の少なくとも1つの下降領域における最小曲率半径は、光強度値が単調に下降している第2光強度推移曲線の1つの下降領域における最小曲率半径よりも小さいか又は等しいことが好ましい。
(形態9)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、セグメント幅対セグメント高さの比は少なくとも2対1であることが好ましい。
(形態10)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、セグメント幅対セグメント高さの比は10対1であることが好ましい。
(形態11)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは水平方向に凡そ−20°と凡そ+20°の間の領域に位置することが好ましい。
(形態12)上記の照明装置において、第3光モジュールは、右側通行用に構成された乗物に組み込まれた状態において、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは水平方向に凡そ−20°と凡そ+10°の間の領域に位置することが好ましい。
(形態13)上記の照明装置において、第3光モジュールは、左側通行用に構成された乗物に組み込まれた状態において、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは水平方向に凡そ−10°と凡そ+20°の間の領域に位置することが好ましい。
(形態14)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントの水平方向の長さは20°〜40°の範囲であることが好ましい。
(形態15)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは垂直方向に凡そ−4.5°と凡そ0°の間の領域に位置することが好ましい。
(形態16)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントの垂直方向の長さは0°〜4.5°の範囲であることが好ましい。
(形態17)上記の照明装置において、第3光モジュールは、少なくとも1つの光源と少なくとも1つの該少なくとも1つの光源に割り当てられた前置光学系及び/又は少なくとも1つの割り当てられた反射器を含むことが好ましい。
(形態18)上記の照明装置において、第3光モジュールに割り当てられる反射器は、フリーフォーム反射器として構成されることが好ましい。
(形態19)上記の照明装置において、第3光モジュールに配される光源は、1つ、2つ又は3つ以上のLEDから構成されることが好ましい。
(形態20)上記の照明装置において、第3光モジュールに配される光源は、レーザ光源として構成されることが好ましい。
(形態21)上記の照明装置において、第3光モジュールに配される光源は、予め設定された又は予め設定可能なスペクトル領域の光を放射することが好ましい。
(形態22)上記の照明装置において、第3光モジュールに配される光源は、第1光モジュールから及び/又は第2光モジュールから放射される光の色に適合可能な色を有する光を放射することが好ましい。
(形態23)上記の照明装置において、第1光モジュール、第2光モジュール及び第3光モジュールは、1つの乗物投光装置筐体内に配設されることが好ましい。
(形態24)上記の照明装置において、第1光モジュール及び第2光モジュールは、1つの乗物投光装置筐体内に配設され、第3光モジュールは追加光モジュールとして構成されかつ該乗物投光装置筐体の外部に配設されることが好ましい。
(形態25)上記の照明装置において、セグメントは矩形に構成され、かつ、下側境界線は直線状に延在することが好ましい。
(形態26)上記の何れかの照明装置を少なくとも1つ有する乗物投光装置も好ましい。
(形態27)上記の乗物投光装置を少なくとも1つ有する乗物も好ましい。
本発明は以下において図面を参照した好ましい非限定的な実施例(複数)を用いて更に詳細に説明される。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】第1全体配光パターンの一例。
図2】第1部分配光パターンの一例。
図3】第2部分配光パターンの一例。
図4】第2全体配光パターンの一例。
図5】定義された切断曲線(断面)に沿って記録(評価)された(求められた)第1光強度推移曲線の一例。
図6】本発明に応じた第3全体配光パターンの一例。
図7】定義された切断曲線(断面)に沿って記録(評価)された(求められた)第2光強度推移曲線の一例。
図8】第2全体配光パターンの等照度線ダイアグラムの一例。
図9】第3全体配光パターンの等照度線ダイアグラムの一例。
図10】本発明の第3光モジュールで照明する場合と本発明の第3光モジュールで照明しない場合について、H=0°で記録(評価)された(求められた)2つの光強度推移曲線の比較の一例。
図11a】照明する本発明の第3光モジュールを有する場合の勾配推移の一例。
図11b】照明する本発明の第3光モジュールを有しない場合の勾配推移の一例。
図12】(すべての)光モジュールが(1つの)筐体の内部に配設された乗物投光装置の一例。
図13】本発明の第3光モジュールが筐体の外部に配設された乗物投光装置の一例。
【実施例】
【0052】
まず、3つの基本的な配光パターンを模式的に示す図1図3を参照する。
【0053】
図1は、例えば図12及び図13に示した既知の光モジュール105により従来技術に応じて生成される典型的な第1全体配光パターンの一例、この場合は減光配光パターンAの形のもの、を模式的に示す。減光配光パターンは明暗境界線(Hell-Dunkel-Grenze)10を有するが、この明暗境界線10は、図示の場合右側通行の国において減光用光モジュールを使用するために典型的な非対称性を有する。
【0054】
図2は、垂直方向に延伸する複数の矩形状のセグメント30から構成されかつ下側境界線25を有するセグメント化された部分配光パターン−部分ハイビーム(遠方照明)配光パターンF−の一例を模式的に示す。なお、該下側境界線25において、この部分ハイビーム配光パターンの光強度は大きな勾配を有する。そのような部分配光パターンは、例えば図12及び図13に示した既知の光モジュール106によって従来技術に応じて生成できる。
【0055】
図3は、hh線の完全に下方に位置しかつ減光配光パターンAと重なっている部分配光パターンZの一例を模式的に示す。部分配光パターンZは、図6に示されているように、部分ハイビーム配光パターンFの下側エッジ25と部分的に重なっている。
【0056】
図4は、典型的な第2全体配光パターンAFを模式的に示す。図示の配光パターンAFは、図12及び図13に示した光モジュール105、106の同時照明によって生成されかつ減光配光パターンAと部分ハイビーム配光パターンFの重ね合わせとして生成するハイビーム配光パターンである。図4は、更に、縦軸(vv線)vvに平行に延在しかつ横軸(hh線)hhを凡そ−2.5°のところで切断する切断線SLを示す。
【0057】
図5は、修正されていない第2全体配光パターンAFを特徴付けかつ切断線SLに沿って記録(評価)された(求められた)光強度推移曲線5の一例を示す。光強度推移曲線5は、減光用光モジュール105とハイビーム用光モジュール106での同時照明の場合における、切断曲線SLの選択により設定される或る(1つの)パラメータに対する光強度値(単位はカンデラ[cd])の依存性を表している。図4の切断曲線SLはvv線に平行に延在しているため、図5のパラメータは、vv線に度(°)の単位で表した角度に等しい。光強度推移曲線5は、全体配光パターンAFのこの例では、平坦(フラット)部分54、急峻部分52及び移行領域55からなる上昇領域、最大値53及び下降領域50を有する。フラットな第1上昇領域54は小さな勾配を特徴とし、急峻な第2上昇領域52は大きな勾配を有する。移行領域55の形状は、勾配関数(不図示)がこの領域において変化する大きさの程度を反映している。この変化の尺度としては、移行領域55に沿った曲率半径r1が使用される。
【0058】
図6は、本発明に応じた第3全体配光パターンAF’の一例を模式的に示す。この配光パターンは、図12及び図13に示した光モジュール105、106及び107の同時照明によって生成されかつ減光配光パターンA、セグメント化部分ハイビーム配光パターンF及び本発明に応じた第2部分配光パターンZの重ね合わせとして生成する。図6は、更に、vv線に平行に延在しかつ横軸(hh線)を例えば凡そ−2.5°のところで切断する切断線(断面)SLを示す。図6における本発明に応じた第2部分配光パターンZの配置は、図3におけるその配置とは異なる。一方では、本発明に応じた部分配光パターンZが減光配光パターンに(完全に)含まれる(よう配置される)のではなく、該減光配光パターンと部分的に重なる(よう配置される)ことは十分に可能である。他方、部分配光パターンZは、本発明の好ましい一実施形態では、hh線に下方から接触する(hh線とその下側で境を接する)ことも可能である。
【0059】
図7は、同時に(一緒に)プロットした2つの光強度推移曲線5、6の一例を示す。第1光強度推移曲線5は、図5の説明において既にテーマとして取り扱われており、ここでは、修正されていない(第2)全体配光パターンAFと修正された(第3)全体配光パターンAF’の間の相違を説明するために点線でプロットされている。第2光強度推移曲線6(実線)は、修正された第3全体配光パターンAF’を特徴付けており、切断曲線SLに沿って記録(評価)されている(求められている)。第2光強度推移曲線6は、減光用光モジュール105とハイビーム用光モジュール106と本発明に応じた追加光モジュール107での同時照明の場合における、切断曲線SLの選択により設定される或る(1つの)パラメータに対する光強度値(単位はカンデラ[cd])の依存性を表している。図6の切断曲線SLはvv線に平行に延在しているため、図7のパラメータは、vv線に度(°)の単位で表した角度に等しい。第2光強度推移曲線6は、全体配光パターンAF’のこの例では、平坦(フラット)部分64、急峻部分62及び移行領域65からなる上昇領域、最大値63及び下降領域60を有する。なお、第2光強度推移曲線6の下降領域60は、第1光強度推移曲線5の下降領域50とほぼ完全に重なっている。この場合も、移行領域65に沿った曲率半径r2は、第3全体配光パターンAF’の勾配関数の変化の尺度を表す。第2光強度推移曲線6の移行領域65は第1光強度推移曲線5の移行領域55よりも湾曲の程度がより小さいため、移行領域65に沿った曲率半径r2の最小値は移行領域55に沿った曲率半径r1の最小値より大きい。このことは、移行65が移行55よりも「緩やか」であり、運転者にとって主観的により快適であることを明白に示している。
【0060】
図8及び図9は、典型的な修正されていない第2全体配光パターンAFと本発明に応じて修正された第3全体配光パターンAF’の間の上述の相違を明確に示している。これらの図は、夫々、光モジュールの光軸に対し垂直に(照明装置から)所定の距離を置いて(立てて)設置された測定スクリーンにおいて記録(評価)された(求められた)相応の配光パターンに対応する等照度線ダイアグラムを示す。各輪郭−いわゆる等照度線−は一群の点を描いており、これらの点における光強度は、この群のすべての点について等しい所定の光強度値を想定している。所定の切断線(断面)に沿って測定される輪郭間の距離は、勾配がこの切断線に沿って変化する大きさの程度を表している。図8において垂直線H=0°(vv線)に沿って測定した第2輪郭K2と第3輪郭K3間の距離及び第3輪郭K3と第4輪郭K4間の距離は、図9において垂直線H=0°(vv線)に沿って測定した第2輪郭K2’と第3輪郭K3’間の距離及び第3輪郭K3’と第4輪郭K4’間の距離よりも明らかに小さいが、これは勾配の減少を反映している。このため、本発明に応じた第3光モジュールによって生成される全体配光パターンAF’は、運転者にとって、典型的な全体配光パターンAFよりも快適に感じられる。
【0061】
相応の光強度推移曲線5、6並びにこれらに属する勾配関数は、図10並びに図11a及び図11bに記載されている。図11aにおける勾配の最小値の大きさは凡そ0.5であり、これは図11bにおける勾配の最小値の大きさ(凡そ0.25)よりも大きい。
【0062】
本発明に応じた第2部分配光パターンを生成するために、第3光モジュール107の種々の配置及び構成が可能である。有利には、第3光モジュール107には、図12及び図13に記載されているような反射器が配される。有利には、第3光モジュール107は、図12に記載されているように、第1光モジュール105及び第2光モジュール106と一緒に1つの(同じ)乗物投光装置(自動車前照灯)筐体101に配設されることができる。尤も、この全体構造は、個々の光モジュールのサイズによっては、ECE規則に反することもあり得る。従って、第3光モジュール107を乗物投光装置(自動車前照灯)筐体[111]の外部に配することも十分に可能である。この構造は図13に記載されている。
【0063】
本発明については、セグメント化された部分ハイビーム配光パターン(これのために本発明は格別に有利である。)に基づいて説明した。なぜなら、セグメント化された部分配光パターンは下側エッジ25を有するが、この下側エッジ25のところでは、全体ハイビーム配光パターンは格別に大きい勾配を有するからである。
【0064】
尤も、本発明は、セグメント化されていない部分ハイビーム配光パターンに関しても、原理的に、適用可能である。
以下に、本発明の実施の態様を付記する。
(態様1)乗物投光装置のための照明装置が提供される。該照明装置は、
・第1光モジュール、
・第2光モジュール、
・第3光モジュール
を含み、
・第1光モジュールは乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第1全体配光パターンを形成し、
・第2光モジュールは乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第1部分配光パターンを形成し、
・第3光モジュールは乗物に組み込まれた状態において乗物の前方の領域に、予め設定可能な第2部分配光パターンを形成し、
・第1及び第2光モジュールの同時照明時、第1全体配光パターンは第1部分配光パターンと少なくとも部分的に重なり、その結果、第2全体配光パターンが形成され、
第1全体配光パターンは減光配光パターンであり、
第1部分配光パターンは部分ハイビーム配光パターンであり、
第2全体配光パターンはハイビーム配光パターンであり、
第2部分配光パターンは、hh線の完全に下方に位置するか又はhh線に下方から境を接し、かつ、少なくとも部分的に第2ハイビーム配光パターンと重なり、
3つのすべての光モジュールの同時活性化時、第3全体配光パターンが形成される。
(態様2)上記の照明装置において、予め設定可能な第1部分配光パターンは、少なくとも部分的に予め設定可能な第1全体配光パターン内に位置する下側境界線を有し、該下側境界線は、第2及び第3光モジュールの同時照明時、第2部分配光パターンと少なくとも部分的に重なる。
(態様3)上記の照明装置において、第2全体配光パターンは、1つの定義された切断曲線に沿って記録された第1光強度推移曲線によって特徴付けられる。
(態様4)上記の照明装置において、第3全体配光パターンは、1つの定義された切断曲線に沿って記録された第2光強度推移曲線によって特徴付けられる。
(態様5)上記の照明装置において、第1光強度推移曲線及び第2光強度推移曲線は夫々少なくとも2回連続的に微分可能である。
(態様6)上記の照明装置において、切断曲線は直線である。
(態様7)上記の照明装置において、直線的な切断曲線は、vv線に平行に延在する。
(態様8)上記の照明装置において、光強度値が単調に上昇している第1光強度推移曲線の少なくとも1つの上昇領域における、有利にはすべての上昇領域における最小曲率半径は、光強度値が単調に上昇している第2光強度推移曲線の1つの上昇領域における、有利にはすべての上昇領域における最小曲率半径よりも小さいか又は等しい。
(態様9)上記の照明装置において、光強度値が単調に下降している第1光強度推移曲線の少なくとも1つの下降領域における、有利にはすべての下降領域における最小曲率半径は、光強度値が単調に下降している第2光強度推移曲線の1つの下降領域における、有利にはすべての下降領域における最小曲率半径よりも小さいか又は等しい。
(態様10)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、セグメント幅対セグメント高さの比は少なくとも2対1、有利には10対1である。
(態様11)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは水平方向に凡そ−20°と凡そ+20°の間の領域に位置する。
(態様12)上記の照明装置において、第3光モジュールは、右側通行用に構成された乗物に組み込まれた状態において、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは水平方向に凡そ−20°と凡そ+10°の間の領域に位置する。
(態様13)上記の照明装置において、第3光モジュールは、左側通行用に構成された乗物に組み込まれた状態において、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは水平方向に凡そ−10°と凡そ+20°の間の領域に位置する。
(態様14)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントの水平方向の長さは20°〜40°の範囲、有利には30°である。
(態様15)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントは垂直方向に凡そ−4.5°と凡そ0°の間の領域に位置する。
(態様16)上記の照明装置において、第3光モジュールは、水平に延伸するストライプ状のセグメントを照明するよう構成及び/又は配置され、該セグメントの垂直方向の長さは0°〜4.5°の範囲、有利には3°〜4.5°の範囲である。
(態様17)上記の照明装置において、第3光モジュールは、少なくとも1つの光源と少なくとも1つの該少なくとも1つの光源に割り当てられた前置光学系及び/又は少なくとも1つの割り当てられた反射器を含む。
(態様18)上記の照明装置において、第3光モジュールに割り当てられる反射器は、フリーフォーム反射器として、例えば放物面の基本形状を有するフリーフォーム反射器として構成される。
(態様19)上記の照明装置において、第3光モジュールに配される光源は、ランプとして、例えば欧州基準ECE規則37(ECE-R37)に応じた白熱灯又は欧州基準ECE規則99(ECE-R99)に応じたガス放電灯として、構成される。
(態様20)上記の照明装置において、第3光モジュールに配される光源は、1つ、2つ又は3つ以上のLEDから構成される。
(態様21)上記の照明装置において、第3光モジュールに配される光源は、レーザ光源として構成される。
(態様22)上記の照明装置において、第3光モジュールに配される光源は、予め設定された又は予め設定可能なスペクトル領域の光を放射する。
(態様23)上記の照明装置において、第3光モジュールに配される光源は、第1光モジュールから及び/又は第2光モジュールから放射される光の色に適合可能な色を有する光を放射する。
(態様24)上記の照明装置において、第1光モジュール、第2光モジュール及び第3光モジュールは、1つの乗物投光装置筐体内に配設される。
(態様25)上記の照明装置において、第1光モジュール及び第2光モジュールは、1つの乗物投光装置筐体内に配設され、第3光モジュールは追加光モジュールとして構成されかつ該乗物投光装置筐体の外部に配設される。
(態様26)上記の照明装置において、第1部分配光パターンは、1又は複数の、有利には矩形の、セグメントから構成されかつ、有利には直線状の、下側境界線を有する部分ハイビーム配光パターンである。
(態様27)上記の何れかの照明装置を少なくとも1つ有する乗物投光装置。
(態様28)上記の乗物投光装置を少なくとも1つ、有利には2つ有する乗物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13