(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の光学透明粘着シートは、熱硬化ポリウレタンで構成された光学透明粘着シートであって、上記熱硬化ポリウレタンは、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含有する熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物であり、上記ポリイソシアネート成分は、親水性ユニットを有するポリイソシアネート、及び、親水性ユニットを有さないポリイソシアネートの両方を含み、温度85℃、湿度85%の高温高湿環境下に3時間投入する試験を実施した場合に、吸湿率が3600ppm以下であることを特徴とする。なお、本明細書において、「光学透明粘着シート」とは、「光学透明粘着フィルム」と同義である。
【0021】
本発明の光学透明粘着シートは、温度85℃、湿度85%の高温高湿環境下に3時間投入する試験(以下、単に「高温高湿試験」ともいう)を実施した場合に、吸湿率が3600ppm以下である。本発明者らの検討によれば、上記高温高湿試験後の吸湿率が3600ppmを超えるものであると、環境中の水分を吸湿しやすいために、被着体との界面で、吸湿した水分のガス化が原因と予想される剥離(吸湿によるディレイバブル)が発生しやすくなる。例えば、雨季や高湿度環境における長期保存や、車載向けディスプレイ等の使用環境として想定される高温高湿度環境では、光学透明粘着シートとタッチパネルとの貼り合わせ界面等で剥離が起こってしまう。また、光学透明粘着シートとタッチパネルとの貼り合わせ界面に微小な異物が入ることがあり、そのような異物の周囲では気泡が大きくなり、剥離を引き起こしやすくなる。上記高温高湿試験後の吸湿率は、好ましくは0〜3600ppmであり、より好ましくは2600〜3200ppmである。上記高温高湿試験後の吸湿率が2600ppm未満であると、高温高湿に曝されたときに、光学透明粘着シートが白くなることがある。
【0022】
上記高温高湿試験後の吸湿率は、熱硬化ポリウレタンの原料である熱硬化性ポリウレタン組成物の組成及び/又は熱硬化条件を調整することによって制御できるものであり、例えば、α比、ポリイソシアネート成分中の親水性ユニットの量や種類(分子量)、親水性ユニットを有するポリイソシアネートと親水性ユニットを有さないポリイソシアネートの比率(例えば、モル比)、可塑剤の添加の有無や配合量、架橋温度等により制御できる。
【0023】
本発明の光学透明粘着シートは、85℃での貯蔵せん断弾性率(G’)が4×10
3Pa以上であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、85℃での貯蔵せん断弾性率を粘接着性の指標とすることが有効であり、85℃での貯蔵せん断弾性率が4×10
3Pa未満であると、85℃の高温環境下の粘着力が、常温環境下の粘着力よりも著しく低下するため、高温環境下において被着体からの剥離が生じやすくなる。その結果、吸湿によるディレイバブルの不良についても生じやすくなる。85℃での貯蔵せん断弾性率は、好ましくは4000〜100000Paであり、より好ましくは10000〜50000Paである。85℃での貯蔵せん断弾性率が100000Paを超えると、光学透明粘着シートが硬くなり過ぎ、被着体の表面に存在する段差(例えば、加飾部段差)への段差追従性が低下し、貼り合わせ不良となる可能性が高まる。
【0024】
上記85℃での貯蔵せん断弾性率は、熱硬化ポリウレタンの原料である熱硬化性ポリウレタン組成物の組成及び/又は熱硬化条件を調整することによって制御できるものであり、例えば、α比(ポリオール成分由来のOH基のモル数/ポリイソシアネート成分由来のNCO基のモル数)、ポリイソシアネート成分中の親水性ユニットの量や種類(分子量)、親水性ユニットを有するポリイソシアネートと親水性ユニットを有さないポリイソシアネートの比率(例えば、モル比)、可塑剤の添加の有無や配合量、架橋温度等により制御できる。
【0025】
本発明の光学透明粘着シートは、熱硬化ポリウレタンで構成されたものである。上記熱硬化ポリウレタンは、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含有するポリウレタン組成物を硬化させたものである。上記ポリウレタン組成物の硬化物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られ、下記式(A)に示した構造を有する。
【0027】
上記式(A)中、Rは、ポリイソシアネート成分のNCO基を除いた部位を表し、R’は、ポリオール成分のOH基を除いた部位を表し、nは、繰り返し単位数を表す。
【0028】
上記熱硬化ポリウレタンは、アクリル変性されていないことが好ましく、主鎖中にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等に由来する部位が含まれないことが好ましい。熱硬化ポリウレタンがアクリル変性されると、疎水化されるため、高温・高湿下において水分の凝集が生じやすくなる。この水分の凝集は、白化、発泡等を引き起こし、光学特性を損なうことがある。したがって、上記熱硬化ポリウレタンをアクリル変性されていないものとすることで、高温・高湿下において白化、発泡等による光学特性の低下を防止することができる。上記熱硬化ポリウレタンは、ポリオール成分に由来する単量体単位と、ポリイソシアネート成分に由来する単量体単位との合計量が、熱硬化ポリウレタン全体を構成する単量体単位の80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは、ポリオール成分に由来する単量体単位及びポリイソシアネート成分に由来する単量体単位のみからなる。
【0029】
ポリオール成分及びポリイソシアネート成分としては、いずれも常温(23℃)で液体のものを用いることができ、溶剤を用いずに熱硬化ポリウレタンを得ることができる。タッキファイヤー等の他の成分は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分のいずれかに添加することができ、好ましくは、ポリオール成分に添加される。このように、熱硬化性ポリウレタン組成物を用いて光学透明粘着シートを作製する場合、溶剤の除去が必要ないため、均一なシートを厚く形成することができる。このため、本発明の光学透明粘着シートを、表示パネルと透明導電膜を表層に有する透明部材(タッチパネル)との貼り合わせに用いる場合、ベゼルの段差を被覆することができる。また、熱硬化性ポリウレタン組成物を用いて得られた本発明の光学透明粘着シートは、厚く形成しても光学特性を維持することができるものであり、透明性(ヘイズ)の低下、色付き、発泡(被着体との界面での気泡の発生)を充分に抑制することができる。
【0030】
また、本発明の光学透明粘着シートは、熱硬化ポリウレタンで構成されたものであることから、柔軟であり、引っ張り応力が加わったときに、良く伸び、非常に千切れにくい。このため、糊残りすることなく、引き剥がすことが可能である。また、本発明の光学透明粘着シートは、柔軟であるとともに厚膜化できることから、耐衝撃性に優れ、透明導電膜を表層に有する透明部材とカバーパネルとの貼り合わせに用いることができ、更に他の部材を用いる場合には、表示パネル、又は、透明導電膜を表層に有する透明部材と、他の部材との貼り合わせにも用いることができる。更に、本発明の光学透明粘着シートは、熱硬化ポリウレタンで構成されたものであるため、誘電率が高く、従来のアクリル系樹脂組成物からなる光学透明粘着シートよりも高い静電容量が得られる。このため、本発明の光学透明粘着シートは、静電容量方式のタッチパネルの貼り合わせに好適に用いられる。
【0031】
[ポリオール成分]
上記ポリオール成分としては特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレントリオール、これらの共重合体等のポリアルキレングリコール、これらに側鎖を導入したり分岐構造を導入したりした誘導体、変成体、更にはこれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
上記ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ポリカプロテクトングリコール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオール、これらに側鎖を導入したり分岐構造を導入したりした誘導体、変成体、更にはこれらの混合物等が挙げられる。
【0034】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジアルキルカーボネートとジオールとの反応物が挙げられる。
【0035】
上記ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート;エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
上記ジオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。ジオールとしては、炭素数が4〜9の脂環族又は脂環族ジオールが好ましく、例えば、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオ−ル、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、及び、1,9−ノナンジオールを、単独で用いる又は2種類以上を併用することが好ましい。ジオールとしては、また、1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールとからなるコポリカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールとからなるコポリカーボネートジオールも好ましい。
【0037】
また、上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートグリコール、ポリカーボネートトリオール、ポリカーボネートテトラオール、これらに側鎖を導入したり分岐構造を導入したりした誘導体、変成体、更にはこれらの混合物等を用いることもできる。
【0038】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とグリコール成分とを脱水縮合させたものが挙げられる。
【0039】
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、等が挙げられる。
【0040】
グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;p−キシレンジオール等の芳香族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
【0041】
ポリエステルポリオールは、以上で例示したジカルボン酸及びグリコール成分によって形成される場合には、線状の分子構造を有するが、3価以上のエステル形成成分を用いた分枝状の分子構造を有するポリエステルであってもよい。ジカルボン酸とグリコール成分とは、モル比1.1〜1.3にて150〜300℃で反応させればよい。
【0042】
上記ポリオール成分の数平均分子量は、300以上、5000以下であることが好ましい。ポリオール成分の数平均分子量が300未満である場合には、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応が速過ぎて熱硬化ポリウレタンを均一なシートに成形することが困難になったり、熱硬化ポリウレタンの柔軟性が低下して脆くなったりすることがある。ポリオール成分の数平均分子量が5000を超える場合には、ポリオール成分の粘度が高くなり過ぎて熱硬化ポリウレタンを均一なシートに成形することが困難になったり、熱硬化ポリウレタンが結晶化して白濁したりする等の不具合が生じることがある。ポリオール成分の数平均分子量は、500以上、2000以下であることがより好ましい。
【0043】
上記ポリオール成分は、好ましくは、オレフィン骨格を有するものであり、すなわち主鎖がポリオレフィン又はその誘導体によって構成されたものである。オレフィン骨格を有するポリオール成分としては、例えば、1,2−ポリブタジエンポリオール、1,4−ポリブタジエンポリオール、1,2−ポリクロロプレンポリオール、1,4−ポリクロロプレンポリオール等のポリブタジエン系ポリオールや、ポリイソプレン系ポリオール、それらの二重結合を水素又はハロゲン等で飽和化したものが挙げられる。また、上記ポリオール成分は、ポリブタジエン系ポリオール等に、スチレン、エチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等のオレフィン化合物を共重合させたポリオールやその水添物であってもよい。上記ポリオール成分は、直鎖構造を有するものであってもよく、分岐構造を有するものであってもよい。オレフィン骨格を有するポリオール成分は、1種類のみ用いられてもよいし、2種類以上用いられてもよい。上記ポリオール成分は、オレフィン骨格を有するポリオール成分を80モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは、オレフィン骨格を有するポリオール成分のみからなる。
【0044】
上記オレフィン骨格を有するポリオール成分のうち公知のものとしては、例えば、出光興産社製の水酸基末端ポリイソプレンを水添して得られるポリオレフィンポリオール(「EPOL(エポール、登録商標)」、数平均分子量:2500)、日本曹達社製の両末端水酸基水素化ポリブタジエン(「GI−1000」、数平均分子量:1500)、三菱化学社製のポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマー(「ポリテール(登録商標)」)等が挙げられる。
【0045】
[ポリイソシアネート成分]
上記ポリイソシアネート成分は、親水性ユニット(親水基)を有するポリイソシアネート、及び、親水性ユニットを有さないポリイソシアネートの両方を含む。親水性ユニットを有するポリイソシアネートを用いる場合には、吸湿が生じやすいので、高温高湿試験後の吸湿率を調整することが特に重要となる。
【0046】
上記親水性ユニットは、溶解性パラメータ(SP値)が8.5MPa
1/2以上の構成単位を意味し、好ましくはSP値が9.0MPa
1/2以上の構成単位である。SP値は、Fedors法(R.F.Fedors: Polym.Eng.Sci.,14[2], 147−154(1974)参照)により算出することができる。また、Fedors法によるSP値の算出方法については、例えば、関西ペイント社発行の「塗料の研究 152号(2010年10月発行)」中の論文「添加剤の溶解性パラメータに関する考察」にも記載されている。また、親水性ユニットとは、イソシアヌレート構造やビウレット構造のようにイソシアネート基由来の構造とは異なるものであり、親水性の官能基をポリイソシアネートに付加して組み込んだ部分を意味する。
【0047】
上記親水性ユニットとしては、エチレンオキシドユニットが好適である。上記親水性ユニットが含まれることで、吸湿による白化を抑制する作用が得られる。上記エチレンオキシドユニットの含有量は、熱硬化性ポリウレタン組成物の全体に対して、0.1重量%以上、20重量%以下であることが好ましい。上記含有量が0.1重量%未満であると、充分に白化を抑制できないおそれがある。上記含有量が20重量%を超えると、低極性のオレフィン系ポリオール成分、タッキファイヤー、可塑剤等との相溶性が低下することによって、ヘイズ等の光学特性が低下するおそれがある。上記エチレンオキシドユニットの含有量は、0.1〜5重量%であることがより好ましい。上記含有量が5重量%を超えると、上記高温高湿環境での吸湿量が多くなりすぎるおそれがある。
【0048】
エチレンオキシドユニット以外の親水性ユニットとしては、例えば、カルボン酸基、カルボン酸のアルカリ金属塩基、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基等を含むユニットが挙げられる。さらに詳しくは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、スルホン酸基含有共重合体、スルホン酸基含有共重合体のアルカリ金属塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0049】
上記親水性ユニットを有するポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系ポリイソシアネートと、エチレンオキシドユニットを有するエーテル化合物とを反応させて得られる変性ポリイソシアネートが好適に用いられる。脂肪族系ポリイソシアネートを用いることにより、光学透明粘着シートの着色や変色がより発生しにくく、長期に渡って光学透明粘着シートの透明性をより確実に確保することができる。また、エチレンオキシドユニットを有するエーテル化合物を反応させた変性体とすることによって、ポリイソシアネート成分は、親水性部分(エチレンオキシドユニット)の作用によって白化を抑制することができ、疎水性部分(その他のユニット)の作用によって低極性のタッキファイヤー、可塑剤等との相溶性を発揮することができる。
【0050】
上記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、それらの変性体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート変性、アロファネート変性、及び/又は、ウレタン変性したもの等が挙げられる。
【0051】
上記エチレンオキシドユニットを有するエーテル化合物としては、例えば、アルコール類、フェノール類及び/又はアミン類のエチレンオキシド付加物が挙げられ、親水性を高める観点から、1分子当たり3個以上のエチレンオキシドユニットを有するものが好適に用いられる。
【0052】
上記アルコール類としては、例えば、1価アルコール類、2価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブチレンジオール、ペオペンチルグリコール等)、3価アルコール類(グリセリン、トリメチロールプロパン等)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
上記フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF等)、フェノール化合物のホルマリン低縮合物(ノボラック樹脂、レゾールの中間体)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
上記変性ポリイソシアネートの1分子当たりのイソシアネート基の数は、平均で2.0以上であることが好ましい。上記イソシアネート基の数が平均で2.0未満であると、架橋密度の低下により、熱硬化性ポリウレタン組成物が充分に硬化しないおそれがある。
【0055】
上記親水性ユニットを有さないポリイソシアネートとしては特に限定されないが、脂肪族系イソシアネートが好適に用いられ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI、下記化学式参照)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、それらの変性体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
上記親水性ユニットを有するポリイソシアネートと、上記親水性ユニットを有さないポリイソシアネートの配合比率は、白化防止と吸湿率低減の両立を図る観点から、好ましくは9:1〜1:9であり、より好ましくは7:3〜3:7である。
【0058】
ポリウレタン組成物は、α比(ポリオール成分由来のOH基のモル数/ポリイソシアネート成分由来のNCO基のモル数)が1以上であることが好ましい。α比が1未満である場合には、ポリイソシアネート成分の配合量が、ポリオール成分の配合量に対して過剰であるため、熱硬化ポリウレタンが硬くなり、光学透明粘着シートに要求される柔軟性を確保することが困難となる。光学透明粘着シートの柔軟性が低いと、特に、タッチパネル等の光学部材を貼り合わせる場合、貼り合わせ面に存在する凹凸及び段差を被覆することができない。また、光学透明粘着シートに要求される粘着力を確保することができないおそれがある。α比は、1.3<α<2.0を満たすことがより好ましい。α比が2.0以上である場合には、熱硬化性ポリウレタン組成物が充分に硬化しないことがある。
【0059】
[タッキファイヤー]
上記熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、タッキファイヤー(粘着付与剤)を含有してもよい。タッキファイヤーは、粘着力を向上するために添加される添加剤であり、通常、分子量が数百〜数千の無定型オリゴマーで、常温で液状又は固形の熱可塑性樹脂である。熱硬化性ポリウレタン組成物がタッキファイヤーを含有することで、熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物からなる光学透明粘着シートの粘着力を向上させることができる。
【0060】
上記タッキファイヤーとしては特に限定されず、例えば、石油樹脂系タッキファイヤー、炭化水素樹脂系タッキファイヤー、ロジン系タッキファイヤー、テルペン系タッキファイヤー等を含むものが挙げられる。これらは1種類のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
【0061】
上記タッキファイヤーとしては、上記オレフィン骨格を有するポリオール成分等との相溶性に優れることから、石油樹脂系タッキファイヤーが好適に用いられる。上記石油樹脂系タッキファイヤーの中でも、ジシクロペンタジエンと芳香族化合物の共重合体を水素添加して得られる水添石油樹脂が好適に用いられる。ジシクロペンタジエンは、C5留分から得られる。上記芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物との割合は特に限定されないが、重量基準で、ジシクロペンタジエン:ビニル芳香族化合物=70:30〜20:80であることが好ましく、60:40〜40:60であることがより好ましい。上記水添石油樹脂の好ましい軟化点は90〜160℃、好ましいビニル芳香族化合物単位含有量は35質量%以下、好ましい臭素価は0〜30g/100g、好ましい数平均分子量は500〜1100である。上記水添石油樹脂のうち公知のものとしては、例えば、出光興産社製の「アイマーブP−100」が挙げられる。
【0062】
上記タッキファイヤーとしては、上記オレフィン骨格を有するポリオール成分等との相溶性に優れることから、炭化水素樹脂系タッキファイヤーが好適に用いられる。上記炭化水素樹脂系タッキファイヤーの中でも、脂環族飽和炭化水素樹脂が好適に用いられる。上記脂環族飽和炭化水素樹脂のうち公知のものとしては、例えば、荒川化学工業社製の「アルコンP−100」が挙げられる。
【0063】
上記タッキファイヤーは、酸価が1mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が1mgKOH/g以下であれば、タッキファイヤーがポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応を阻害するのを充分に防止することができる。また、タッキファイヤーの軟化点は、80℃以上、120℃以下であることが好ましく、80℃以上、100℃以下であることがより好ましい。軟化点が80℃以上、120℃以下である場合には、タッキファイヤーをポリオール成分中に溶解させる際に、ポリオール成分が熱によって劣化してしまうのを充分に防止することができる。
【0064】
上記タッキファイヤーの含有量は、熱硬化性ポリウレタン組成物に対して、1重量%以上、20重量%以下であることが好ましい。タッキファイヤーの含有量が1重量%未満である場合には、光学透明粘着シートの粘着力を充分に向上できないことがあり、特に、高温・高湿下における粘着力が不充分になることがある。タッキファイヤーの含有量が20重量%を超える場合には、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応を阻害し、熱硬化ポリウレタン中にウレタン架橋が充分に形成されなくなることがある。その結果、高温・高湿下において光学透明粘着シートが溶解して形状が変化したり、タッキファイヤーが析出(ブリード)したりすることがある。また、ウレタン架橋を充分に形成するためにポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応時間を長くすると、生産性が低下する。
【0065】
[可塑剤]
上記熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、可塑剤を含有してもよい。可塑剤の添加により、低硬度化されることで、本発明の光学透明粘着シートの取り扱い性や段差追従性を向上することができる。なお、可塑剤の添加により粘着力は低下するおそれがあるが、本発明の光学透明粘着シートによれば、多少粘着力が低下しても充分な粘着力を確保できる。
【0066】
上記可塑剤としては、熱可塑性樹脂に柔軟性を付与するために用いられる化合物であれば特に限定されないが、相溶性及び耐候性の観点から、カルボン酸系可塑剤を含むことが好ましい。上記カルボン酸系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル(フタル酸系可塑剤)や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、ポリ−α−オレフィン等が挙げられる。これらは1種類のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。上記カルボン酸系可塑剤のうち公知のものとしては、例えば、BASF社製の「DINCH」、新日本理化社製の「サンソサイザーDUP」、イオネスオリゴマーズ社製の「Durasyn(登録商標)148」が挙げられる。
【0067】
[触媒]
上記熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、触媒を含有してもよい。触媒としては、ウレタン化反応に用いられる触媒であれば特に限定されず、例えば、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫、ジラウリル酸ジメチル錫、ジブチル錫オキシド、オクタン錫等の有機錫化合物;有機チタン化合物;有機ジルコニウム化合物;カルボン酸錫塩;カルボン酸ビスマス塩;トリエチレンジアミン等のアミン系触媒が挙げられる。
【0068】
上記触媒としては、非アミン系触媒が好ましい。アミン系触媒を用いる場合、光学透明粘着シートが変色しやすくなることがある。より好ましい触媒は、ジラウリル酸ジメチル錫である。
【0069】
上記触媒の添加量は、例えば、ポリオール成分、及び、ポリイソシアネート成分の合計量に対して、0.01重量%以上、0.1重量%以下である。
【0070】
上記熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、モノイソシアネート成分を含有してもよい。モノイソシアネート成分は、分子内に1個のイソシアネート基を有する化合物であり、その具体例としては、例えば、オクタデシルジイソシアネート(ODI)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)、イソシアン酸オクチル、イソシアン酸ヘプチル、3−イソシアナートプロピオン酸エチル、イソシアン酸シクロペンチル、イソシアン酸シクロヘキシル、2−メトキシエタンイソシアネート、イソシアナート酢酸エチル、イソシアナート酢酸ブチル、p−トルエンスルフォニルイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。なお、上記熱硬化性ポリウレタン組成物は、モノイソシアネート成分を含有しないものであることが好ましい。
【0071】
上記熱硬化性ポリウレタン組成物には、光学透明粘着シートの要求特性を阻害しない範囲で、必要に応じて、着色剤、安定剤、酸化防止剤、防徽剤、難燃剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0072】
本発明の光学透明粘着シートの厚みは、100μm以上、3000μm以下であることが好ましい。厚みが100μm未満である場合には、光学透明粘着シートの一方の面を光学部材の表面に貼り付けたときに、光学透明粘着シートによって光学部材の表面に存在する凹凸又は段差を被覆することができず、光学透明粘着シートの他方の面と他の光学部材の表面とを充分な粘着力で貼り合わせることができないことがある。また、光学透明粘着シートが厚いほど、吸湿量が多くなるため、吸湿によるディレイバブルが生じやすくなるが、厚みが3000μm以下であれば、本発明のように85℃での貯蔵せん断弾性率と高温高湿試験後の吸湿率とを調整することで、吸湿によるディレイバブルを充分に抑制できる。光学透明粘着シートの厚みのより好ましい下限は150μmであり、更に好ましい下限は250μmであり、より好ましい上限は2000μmである。また、光学透明粘着シートは、被着体の貼り付け面に存在する凹凸又は段差の高さに対して3倍以上の厚みを有することが好ましい。
【0073】
本発明の光学透明粘着シートは、180°剥離試験での粘着力が5N/25mm以上であることが好ましい。上記粘着力が5N/25mm未満である場合には、85℃での貯蔵せん断弾性率と高温高湿試験後の吸湿率を本発明の範囲内にしてもディレイバブルの発生を抑制することができないおそれがある。上記粘着力のより好ましい下限は7N/25mmであり、更に好ましい下限は10N/25mmであり、好ましい上限は15N/25mmである。上記粘着力が15N/25mm以下であれば、光学透明粘着シートをタッチパネル等の光学部材の貼り合わせに用いた場合に、糊残りなく剥がすことができるので、リワーク性に優れる。また、光学透明粘着シートの粘着力が大きくなり過ぎると、光学透明粘着シートと被着体との間に入った気泡を抜くのが困難になることがある。なお、180°剥離試験の試験方法の詳細については後述する。
【0074】
本発明の光学透明粘着シートのマイクロゴムA硬さは、0.5°以上、25°以下であることが好ましい。マイクロゴムA硬さが0.5°未満である場合には、使用時(光学部材への貼り付け時)の取り扱い性が悪く、光学透明粘着シートを変形させてしまうことがある。一方、マイクロゴムA硬さが25°を超える場合には、光学透明粘着シートの柔軟性が低く、光学部材に貼り付ける際に、光学部材の表面形状に追従することができず、空気を噛み込んでしまうことで、光学部材から剥がれる原因となることがある。また、光学透明粘着シートの柔軟性が低いと、特に、タッチパネル等の光学部材を貼り合わせる際に、ベゼルの段差を被覆することができないことがある。光学透明粘着シートのマイクロゴムA硬さのより好ましい上限は15°である。なお、マイクロゴムA硬さは、例えば、高分子計器社製のマイクロゴム硬度計「MD−1タイプA」を用いて測定することができる。マイクロゴム硬度計「MD−1タイプA」は、スプリング式ゴム硬度計(デュロメータ)A型の約1/5の縮小モデルとして、設計・製作された硬度計であり、測定対象物のサイズが薄くてもスプリング式ゴム硬度計A型の硬度と一致した測定値を取得することができる。
【0075】
本発明の光学透明粘着シートは、光学透明粘着シートとしての性能を確保するために、ヘイズが0.5%以下であることが好ましく、また、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。ヘイズ及び全光線透過率は、例えば、日本電色工業社製の濁度計「HazeMeter NDH2000」を用いて測定することができる。ヘイズは、JIS K 7136に準拠した方法で測定され、全光線透過率は、JIS K 7361−1に準拠した方法で測定される。
【0076】
本発明の光学透明粘着シートの両面には離型フィルムが貼り付けられてもよい。本発明の光学透明粘着シートと、上記光学透明粘着シートの一方の面を覆う第一の離型フィルムと、上記光学透明粘着シートの他方の面を覆う第二の離型フィルムとが積層されたものである積層体(以下、「本発明の積層体」ともいう)もまた、本発明の一態様である。第一及び第二の離型フィルムが貼り付けられることにより、本発明の光学透明粘着シートの表面を、被着体に貼り付ける直前まで保護することができる。これにより、粘着性の低下や、異物の付着を防止できる。また、被着体以外に貼りついてしまうことも防止できるので、本発明の光学透明粘着シートの取扱い性を向上することができる。
【0077】
上記第一及び第二の離型フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。第一の離型フィルムと第二の離型フィルムの材質や厚みは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
本発明の光学透明粘着シートと第一の離型フィルムとの貼り合わせ強度(剥離強度)と、本発明の光学透明粘着シートと第二の離型フィルムとの貼り合わせ強度は、互いに異なることが好ましい。貼り合わせ強度に差があることにより、本発明の積層体から第一及び第二の離型フィルムの一方(貼り合わせ強度が弱い方の離型フィルム)のみを剥離し、露出させた光学透明粘着シートの第一の面と第一の被着体を貼り合わせ、その後に、第一及び第二の離型フィルムの他方(貼り合わせ強度が強い方の離型フィルム)を剥離し、露出させた光学透明粘着シートの第二の面と第二の被着体を貼り合わせることが容易になる。第一の離型フィルムの本発明の光学透明粘着シートと接する側の表面、及び、第二の離型フィルムの本発明の光学透明粘着シートと接する側の表面のいずれか一方、又は、両方に、易剥離処理(離型処理)が施されていてもよい。易剥離処理としては、例えば、シリコーン処理が挙げられる。
【0079】
本発明の光学透明粘着シートの用途は特に限定されず、第一の被着体と、第二の被着体と、上記第一の被着体と上記第二の被着体とを接合する本発明の光学透明粘着シートとを備える貼り合わせ構造物もまた、本発明の一態様である。第一及び第二の被着体としては、例えば、表示パネル、タッチパネル、カバーパネル等の表示装置内の各種パネルや、偏光板、樹脂板、ガラス板等が挙げられる。本発明の光学透明粘着シートを用いて表示装置内の各種パネルを貼り合わせれば、表示装置内の空気層(エアギャップ)を無くすことができ、表示画面の視認性を向上することができる。本発明の貼り合わせ構造物としては、例えば、本発明の光学透明粘着シートと、表示パネルと、タッチパネルとを備えるタッチパネル付き表示装置が挙げられる。なお、偏光板の貼り合わせ面は、トリアセチルセルロース(TAC)等で構成され、樹脂板の貼り合わせ面は、ポリカーボネート等で構成されるが、本発明の光学透明粘着シートは、ガラスだけでなく、これらの樹脂に対しても良好な粘着性能を発揮できる。また、本発明の光学透明粘着シートをガラス板に貼り付ければ、ガラスの飛散を防止する効果が得られる。
【0080】
図1は、本発明の光学透明粘着シートを用いたタッチパネル付き表示装置(本発明のタッチパネル付き表示装置)の一例を模式的に示した断面図である。
図1に示す表示装置10では、表示パネル11、光学透明粘着シート12、タッチパネル(ITO透明導電膜付きガラス基板)13、光学透明粘着シート12、及び、透明カバーパネル14が順に積層されている。表示パネル11、タッチパネル13、及び、透明カバーパネル14の3つの光学部材は、2枚の本発明の光学透明粘着シート12により一体化されている。表示パネル11の種類は特に限定されず、例えば、液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル(有機ELパネル)等を用いることができる。タッチパネル13としては、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式等の検出方式のものが用いられる。
【0081】
表示パネル11は、表示面側に開口が設けられたベゼル(表示パネル11の筐体)11A内に収容されており、ベゼル11Aの開口の外縁には、ベゼル11Aの厚みに対応した段差が存在する。光学透明粘着シート12は、表示パネル11、及び、ベゼル11Aの表示面側を覆って貼り付けられており、ベゼル11Aの厚みに対応した段差を被覆している。光学透明粘着シート12には、ベゼル11Aの厚みによって形成される段差を被覆するために、段差部に追従することができる柔軟性と、ベゼル11Aの厚みよりも厚いことが求められる。このように、ベゼル11Aに収容された表示パネル11との貼り合わせに用いられる光学透明粘着シート12の厚みは、例えば、700μm以上であることが好ましい。本発明の光学透明粘着シートは、700μm以上の厚みであっても、充分な光学特性及び柔軟性を有するものであり、ベゼル11Aに収容された表示パネル11との貼り合わせに好適に用いることができる。
【0082】
このような表示装置では、本発明の光学透明粘着シートが用いられているため、種々の環境下で用いても、光学透明粘着シートの粘着力が低下しにくく、長期間に渡って光学部材を互いに密着させることができる。その結果、各光学部材と光学透明粘着シートとの間に空隙が発生しないので、界面反射の増加等による視認性の低下を防止することができる。本発明の光学透明粘着シートは、例えば、カーナビゲーション装置に組み込まれる表示装置等の車載用の表示装置や、スマートフォン等の携帯機器用の表示装置において用いることができる。
【0083】
本発明の光学透明粘着シートの製法は特に限定されず、例えば、熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した後、この組成物を従来公知の方法で熱硬化させつつ成形する方法が挙げられ、好ましくは、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を攪拌混合して熱硬化性ポリウレタン組成物を調製する工程と、熱硬化性ポリウレタン組成物を硬化する工程とを含む。
【0084】
製法の一例としては、まず、所定量のタッキファイヤーを、ポリオール成分に添加し、加温及び攪拌して溶解させることによって、マスターバッチを調製する。続いて、得られたマスターバッチ、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び、必要に応じて触媒等の他の成分を混合し、ミキサー等で攪拌することによって、液状又はゲル状の熱硬化性ポリウレタン組成物を得る。その後、即座に熱硬化性ポリウレタン組成物を成形装置に投入し、第一及び第二の離型フィルムによって挟んだ状態で熱硬化性ポリウレタン組成物を移動させながら架橋硬化させることで、熱硬化性ポリウレタン組成物が半硬化され、第一及び第二の離型フィルムと一体化されたシートを得る。その後、炉で一定時間架橋反応させることで、熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物からなる光学透明粘着シートが得られ、本発明の積層体が完成する。
【0085】
図2は、本発明の光学透明粘着シートの作製に用いる成形装置の一例を説明するための模式図である。
図2に示す成形装置20では、まず、硬化前の液状又はゲル状の熱硬化性ポリウレタン組成物23を、離間して配置された一対の成型ロール22から連続的に送り出される一対の離型フィルム(PETフィルム)21の間隙に流し込む。そして、一対の離型フィルム21の間隙に熱硬化性ポリウレタン組成物23を保持した状態で硬化反応(架橋反応)を進行させつつ、加熱装置24内に搬入する。加熱装置24内において、熱硬化性ポリウレタン組成物23は、一対の離型フィルム(PETフィルム)21間に保持された状態で熱硬化し、熱可塑性ポリウレタン組成物の硬化物からなる光学透明粘着シート12の成形が完了する。
【0086】
本発明の光学透明粘着シートの製法としては、硬化前の熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した後、各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレード等の汎用の成膜装置や成膜方法を用いるものであってもよい。また、遠心成形法を用いて本発明の光学透明粘着シートを作製してもよい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
(配合原料)
下記の実施例及び比較例において、熱硬化性ポリウレタン組成物を調製するために用いた配合原料は以下の通りである。
(A)ポリオール成分
・ポリオレフィンポリオール(出光興産社製の「EPOL(エポール、登録商標)」、数平均分子量:2500)
(B)ポリイソシアネート成分
・HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)モノマー
・HDI系ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート2760」)
・親水性ユニットを有する変性ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート4022」)
・IPDI(イソホロンジイソシアネート)系ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製の「デスモジュールI」)
(C)タッキファイヤー
・水添石油樹脂系タッキファイヤー(出光興産社製の「アイマーブP−100」)
(D)触媒
ジラウリル酸ジメチル錫(Momentive社製の「Fomrez catalyst UL−28」)
【0089】
なお、コロネート2760は、アロファネート変性HDIとHDIトリマーの混合物である。また、コロネート4022は、HDI及び/又はHDIモノマーを出発物質とするポリイソシアネートに対して、1分子当たり平均3個以上のエチレンオキシドユニットを有するエーテルポリオールを反応させて得られたものである。
【0090】
(実施例1)
まず、120℃に温調したポリオレフィンポリオールに、固形状の水添石油樹脂系タッキファイヤーを添加し、攪拌することによって、ポリオレフィンポリオール中にタッキファイヤーを溶解させたタッキファイヤーマスターバッチを得た。タッキファイヤーマスターバッチ中のタッキファイヤーの含有量は30重量%に調整した。
【0091】
次に、ポリオレフィンポリオール100重量部、HDI系ポリイソシアネート12.5重量部、IPDI系ポリイソシアネート6.3重量部、タッキファイヤーマスターバッチ150重量部、及び、触媒0.02重量部を、往復回転式撹拌機アジターを用いて攪拌混合し、α比=1.63の熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した。
【0092】
その後、得られた熱硬化性ポリウレタン組成物を
図2に示した成形装置20に注入した。そして、熱硬化性ポリウレタン組成物を一対の離型フィルム(表面に離型処理が施されたPETフィルム)21によって挟んだ状態で搬送しつつ、炉内温度70℃、炉内時間10分間の条件で架橋硬化させ、離型フィルム21付きのシートを得た。その後、70℃に調節した加熱装置24で12時間架橋反応させ、両面に離型フィルム21が設けられた、熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物からなる光学透明粘着シート12(以下では、「離型フィルム付き光学透明粘着シート」ともいう)を作製した。
【0093】
図3は、実施例1の離型フィルム付き光学透明粘着シートを模式的に示した断面図である。
図3に示すように、得られた離型フィルム付き光学透明粘着シートは、離型フィルム21、熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物からなる光学透明粘着シート12及び離型フィルム21が順に積層された積層体であった。光学透明粘着シート12の厚みは150μmであった。
【0094】
(実施例2〜25及び比較例1〜8)
下記表1〜3に示したように配合及びシート厚みを変更したことを除いて実施例1と同様にして、実施例2〜25及び比較例1〜8に係る離型フィルム付き光学透明粘着シートをそれぞれ作製した。
【0095】
(光学透明粘着シートの特性及び評価)
下記の方法により、実施例及び比較例で作製した光学透明粘着シートの物性確認や評価試験を行った。下記表1〜3に結果を示した。
【0096】
(1)高温高湿試験後の吸湿率
70℃に調節した加熱装置から温度25℃、湿度40%の環境下へ取り出し、直ちに離型フィルム付き光学透明粘着シートから両面の離型フィルムを剥離し、一方の面にガラス板が貼り付けられ、他方の面が露出した状態の光学透明粘着シートを、各実施例及び比較例につき、2つずつ準備した。そして、光学透明粘着シートを温度85℃、湿度85%の高温高湿環境に3時間暴露した。暴露の前後で各光学透明粘着シートの重量を測定し、以下の式から吸湿率を求めた。
吸湿率(ppm)=(暴露後重量−暴露前重量)/(暴露前重量)
なお、吸湿率は、ガラス板の重量を除いて、光学透明粘着シート単独の重量に基づいて算出した。
【0097】
(2)貯蔵せん断弾性率(G’)
アントンパール社(Anton Paar Germany GmbH)製の粘弾性測定装置「Physica MCR301」を用いて、光学透明粘着シートの貯蔵せん断弾性率を測定した。測定プレートは、PP12を用い、測定条件は、ひずみ0.1%、周波数1Hz、セル温度25℃〜100℃(昇温速度3℃/分)とした。下記表1〜3には、85℃における貯蔵せん断弾性率の測定値を記載した。
【0098】
(3)粘着力
下記の方法で180°剥離試験を行い、粘着力(N/25mm)を測定した。
図4は、実施例及び比較例の光学透明粘着シートの粘着力の評価方法を説明するための模式図である。まず、離型フィルム付き光学透明粘着シートを、長さ75mm×幅25mmに裁断し、試験片とした。この試験片の片面の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シート12側を、長さ75mm×幅25mmのスライドガラス31に貼り付け、圧力0.4MPaで30分間保持し、光学透明粘着シート12とスライドガラス31とを貼り合わせた。次に、スライドガラス31とは反対側の離型フィルムを剥離し、
図4(a)に示すように、光学透明粘着シート12のスライドガラス31とは反対側の面に、厚み125μmのPETシート(帝人デュポンフィルム社製の「メリネックス(登録商標)S」)32を貼り合わせた。
【0099】
図4(a)に示す積層体を、常温・常湿(温度23℃、湿度50%)下で12時間放置した後、
図4(b)に示すように、PETシート32を180°方向に引っ張り、光学透明粘着シート12をスライドガラス31との界面で剥離させ、スライドガラス31に対する光学透明粘着シート12の粘着力を測定した。なお、各実施例及び比較例に対して、2つの試験片を準備して測定した。得られた2つの測定値の平均値を、各実施例及び比較例における測定結果とした。
【0100】
(4)高温高湿放置後の光学特性
離型フィルム付き光学透明粘着シートの片面の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シート側をスライドガラス(ソーダガラス製)に貼り付け、圧力0.4Mpaで30分間保持し、光学透明粘着シートとスライドガラスとを貼り合わせた。その後、スライドガラスとは反対側の離型フィルムを剥離し、高温・高湿下(85℃、85%)で168時間放置した後、光学透明粘着シートの外観を目視で観察し、下記基準で判定した。
〇:白化の発生無し
×:白化の発生有り
【0101】
(5)高温高湿放置後のディレイバブル
離型フィルム付き光学透明粘着シートの片面の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シート中に飽和状態まで吸湿させるため、高温・高湿下(85℃、85%)で3時間放置した。次に、真空貼り合わせ機にて、カバーガラスと貼り合わせた。続いて、カバーガラスとは反対側の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シート中の水分を気化させるため、光学透明粘着シートをオーブンに入れ、高温・常湿下(95℃)に1日間放置した。なお、高温・常湿条件では、送風オーブンにより温度のみを95℃に設定し、湿度の設定はしなかった。オーブンから取り出したカバーガラスと光学透明粘着シートの界面を目視で観察し、下記基準で判定した。
〇:剥がれ(浮き)の発生無し
×:剥がれ(浮き)の発生有り
【0102】
(6)高温放置後の寸法安定性
離型フィルム付き光学透明粘着シートの片面の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シート側をスライドガラス(ソーダガラス製)に貼り付け、圧力0.4Mpaで30分間保持し、光学透明粘着シートとスライドガラスとを貼り合わせた。その後、常温・常湿の室内環境に24時間放置した。その後、光学透明粘着シートをオーブンに入れ、高温・常湿下(85℃)に300時間放置した。オーブンから取り出した光学透明粘着シートについて、シート形状の変化の有無を目視で確認し、下記基準で判定した。
〇:シート形状の変化無し
×:シート形状の変化有り
【0103】
(7)高温放置後の段差追従性
離型フィルム付き光学透明粘着シートの片面の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シートを、φ100〜200μmのガラスビーズを小さじ1杯散布したガラス板上に真空貼合機で貼り合せた。その後、ガラス板及び光学透明粘着シートを高温・常湿下(85℃)に1日間放置した。放置後のガラス板と光学透明粘着シートとの界面を、ビデオマイクロ計を用いて倍率100倍で観察した。観察結果について、下記基準で判定した。なお、下記「独泡」とは、ガラス板と光学透明粘着シートとの界面に発生した気泡であって、個々のガラスビーズの周囲に形成された点状のものを指す。また、下記「連泡」とは、複数の独泡同士がつながって形成された気泡を指す。
○:独泡及び連泡が発生していなかった
△:独泡が発生していた
×:連泡が発生していた
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
表1及び2から分かるように、実施例1〜25の光学透明粘着シートは、親水性ユニットを有する変性ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート4022」)と親水性ユニットを有さないポリイソシアネートとの混合物が用いられ、高温高湿試験後の吸湿率を3600ppm以下に調整されたものであった。このような実施例1〜25の光学透明粘着シートは、親水性が適度に制御されており、高温高湿放置後に白化やディレイバブルを生じなかった。また、実施例1〜25の光学透明粘着シートは、85℃での貯蔵せん断弾性率が4×10
3Pa以上に調整されたものであったので、高温放置後の寸法安定性及び段差追従性に優れていた。
【0108】
表3から分かるように、比較例1及び2の光学透明粘着シートは、親水性ユニットを有する変性ポリイソシアネートの配合比が高く、比較例3及び4の光学透明粘着シートは、親水性ユニットを有する変性ポリイソシアネートのみが用いられ、いずれも高温高湿試験後の吸湿率が3600ppmを超えるものであった。このため、比較例1〜4の光学透明粘着シートは、高温高湿放置後にディレイバブルを生じた。また、比較例1及び2の光学透明粘着シートは、親水性が強く、かつ85℃での貯蔵せん断弾性率が高いものであったため、高温放置後の段差追従性に劣るものであった。
【0109】
表3から分かるように、比較例5〜8の光学透明粘着シートは、親水性ユニットを有さない変性ポリイソシアネートのみが用いられたので、高温高湿放置後に白化を生じた。なお、比較例6及び7の光学透明粘着シートは、イソシアネート基が多過ぎたため、硬化不良によりシート化できなかった。
本発明は、柔軟性に優れ、厚膜化が可能な熱硬化ポリウレタンを用いて、高湿度環境中での保管により生じる白化及びディレイバブルの発生が抑制された光学透明粘着シートを提供する。本発明の光学透明粘着シートは、熱硬化ポリウレタンで構成された光学透明粘着シートであって、上記熱硬化ポリウレタンは、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含有する熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物であり、上記ポリイソシアネート成分は、親水性ユニットを有するポリイソシアネート、及び、親水性ユニットを有さないポリイソシアネートの両方を含み、温度85℃、湿度85%の高温高湿環境下に3時間投入する試験を実施した場合に、吸湿率が3600ppm以下である。