特許第6372057号(P6372057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6372057-トレーリングアーム取付部構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372057
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】トレーリングアーム取付部構造
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/00 20060101AFI20180806BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20180806BHJP
   B60G 9/04 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B60G7/00
   B62D25/20 F
   B60G9/04
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-142833(P2013-142833)
(22)【出願日】2013年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-13629(P2015-13629A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
(72)【発明者】
【氏名】真崎 義隆
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−131271(JP,A)
【文献】 実開平05−019075(JP,U)
【文献】 特開平9−76718(JP,A)
【文献】 特開2003−95142(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0048409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
B62D 17/00−25/08
25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部のリヤサスペンションを構成するトーションビームの車幅方向端部に連結されるトレーリングアームを車両に取り付けるトレーリングアーム取付部構造であって、
車両後部の床面を構成するリヤフロアパネルの下方で車両前後方向に延びるサイドメンバと、
前記サイドメンバの車両外側を車両前後方向に延びるサイドシルと、
前記サイドシルの後端に接合され前記トレーリングアームが取り付けられるサイドブラケットと、
前記サイドブラケットに接合されて該サイドブラケットを補強するブラケットリンフォースとを含み、
前記サイドシルは、車両内側の縦面と、該縦面の下端から屈曲して車両外側に向かって延びる下面とを備え、
前記ブラケットリンフォースは前記サイドシルの縦面から下面にかけて接触し、少なくとも該下面に接合される第1の部位を有し、
前記サイドメンバは、車両内側の内側面と、車両外側の外側面と、該内側面および外側面の下端同士つなぐ下側面とを有し、
当該トレーリングアーム取付部構造は、前記サイドメンバの内側面および下側面と前記ブラケットリンフォースの車両内側の面とに跨るブラケットブレースを更に含むことを特徴とするトレーリングアーム取付部構造。
【請求項2】
車両後部のリヤサスペンションを構成するトーションビームの車幅方向端部に連結されるトレーリングアームを車両に取り付けるトレーリングアーム取付部構造であって、
車両後部の床面を構成するリヤフロアパネルの下方で車両前後方向に延びるサイドメンバと、
前記サイドメンバの車両外側を車両前後方向に延びるサイドシルと、
前記サイドシルの後端に接合され前記トレーリングアームが取り付けられるサイドブラケットと、
前記サイドブラケットに接合されて該サイドブラケットを補強するブラケットリンフォースとを含み、
前記サイドシルは、車両内側の縦面と、該縦面の下端から屈曲して車両外側に向かって延びる下面とを備え、
前記ブラケットリンフォースは前記サイドシルの縦面から下面にかけて接触し、少なくとも該下面に接合される第1の部位を有し、
前記ブラケットリンフォースの前端は、車幅方向において前記サイドメンバと前記サイドシルとの間に位置することを特徴とするトレーリングアーム取付部構造。
【請求項3】
前記ブラケットリンフォースは、前記サイドメンバに沿って該サイドメンバに接合される第2の部位をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のトレーリングアーム取付部構造。
【請求項4】
前記サイドブラケットへの前記トレーリングアームの取付箇所と車幅方向で近接して前記サイドメンバ内に配置されるフロントブレースを更に含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のトレーリングアーム取付部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部のリヤサスペンションを構成するトーションビームの車幅方向端部に連結されるトレーリングアームを車両に取り付けるトレーリングアーム取付部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トレーリングアーム式サスペンションは車両のサスペンション形式の一種であり、これを採用している車両では、リヤサスペンションであるトーションビーム(クロスビームとも称される)の左右にトレーリングアームが連結される。そして、このトレーリングアームが車両に取り付けられることで、それを介してトーションビームが車両に支持される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−154971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両において、トレーリングアームの取付箇所には、トーションビームからの曲げ荷重や捩り荷重が他の箇所よりも多くかかる。このため、特許文献1のように、トレーリングアームの取付箇所にエクステンションを設定する等の手段により、その領域の剛性向上が図られている。特許文献1の技術によれば、トレーリングアームの取付箇所において高い剛性が得られるが、より高い剛性が得られるよう現在も改良が続けられている。ここで、特許文献1のエクステンションのような部材を更に追加すれば、剛性を更に向上させることが可能であるものの、車両の重量増大やコストの増大を招いてしまう。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、車両の重量増大やコストの増大を抑制しつつ、トレーリングアーム取付箇所において高い剛性を得ることが可能なトレーリングアーム取付部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかるトレーリングアーム取付部構造の代表的な構成は、車両後部のリヤサスペンションを構成するトーションビームの車幅方向端部に連結されるトレーリングアームを車両に取り付けるトレーリングアーム取付部構造であって、車両後部の床面を構成するリヤフロアパネルの下方で車両前後方向に延びるサイドメンバと、サイドメンバの車両外側を車両前後方向に延びるサイドシルと、サイドシルの後端に接合されトレーリングアームが取り付けられるサイドブラケットと、サイドブラケットに接合されてサイドブラケットを補強するブラケットリンフォースとを含み、サイドシルは、車両内側の縦面と、縦面の下端から屈曲して車両外側に向かって延びる下面とを備え、ブラケットリンフォースサイドシルの縦面から下面にかけて接触し少なくとも下面に接合される第1の部位を有することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、ブラケットリンフォースはサイドブラケットに接合され、更にブラケットリンフォースの下面がサイドシルの下面に接合される。これにより、上下方向および左右方向の荷重に対する剛性を高めることができる。すなわち、ブラケットリンフォースの形状をサイドシルに沿わせ、その下面をサイドシルに接合することで、他の補強部材を追加することなく剛性の向上可能である。したがって、車両の重量増大やコストの増大を抑制しつつ、トレーリングアーム取付箇所において高い剛性を得ることが可能となる。
【0008】
上記ブラケットリンフォースは、サイドメンバに沿ってサイドメンバに接合される第2の部位をさらに有するとよい。かかる構成によれば、上下方向や前後方向からの荷重に対する剛性を向上させることが可能となる。
【0009】
上記サイドメンバは、車両内側の内側面と、車両外側の外側面と、内側面および外側面の下端同士つなぐ下側面とを有し、当該トレーリングアーム取付部構造は、サイドメンバの内側面および下側面と、ブラケットリンフォースの車両内側の面とに跨るブラケットブレースを更に含むとよい。これにより、より多くの方向からの荷重に対する剛性を向上させることができる。
【0010】
上記ブラケットリンフォースの前端は、車幅方向においてサイドメンバとサイドシルとの間に位置するとよい。これにより、ブラケットリンフォースの前端を、サイドメンバおよびサイドシルに接合可能となるため、車両前後方向の荷重に対する剛性を向上させることが可能となる。
【0011】
上記サイドブラケットへのトレーリングアームの取付箇所と車幅方向で近接してサイドメンバ内に配置されるフロントブレースを更に含むとよい。これにより、サイドブラケットへのトレーリングアームの取付箇所近傍のサイドメンバ、ひいてはそれに接合される部材の剛性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の重量増大やコストの増大を抑制しつつ、トレーリングアーム取付箇所において高い剛性を得ることが可能なトレーリングアーム取付部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態にかかるトレーリングアーム取付部構造を備える車両の全体斜視図である。
図2図1(b)の拡大図である。
図3図2(a)の断面図である。
図4図2(b)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかるトレーリングアーム取付部構造(以下、単に取付部構造100と称する)を備える車両100aの全体斜視図であり、図1(a)は車両100aを左側方から観察した全体斜視図であり、図1(b)は車両100aを下方から観察した全体斜視図である。
【0016】
図1(a)に示すように、車両100aでは、車両後部の床面を構成するリヤフロアパネルとしてリアフロアセンターパネル(以下、リヤフロアパネル102と称する)が設けられている。図1(b)に示すように、リヤフロアパネル102の下方には、車両後部のリヤサスペンションを構成するトーションビーム104が配置される。このトーションビーム104の車幅方向両端部には、トレーリングアーム106a・106bが連結される。本実施形態にかかる取付部構造100は、これらのトレーリングアーム106a・106bを車両100aに取り付けるための構造である。
【0017】
図2は、図1(b)の拡大図である。図2(a)は、図1(b)の破線円内拡大図であり、図1(b)に示すトレーリングアーム106aを不図示とした状態を示している。図2(b)は、図2(a)の拡大図であり、後述するブラケットブレース150に重なる領域を破線にて図示している。なお、トレーリングアーム106a・106bは左右対称に同様の構成を有するため、以下の説明ではトレーリングアーム106aを車両に取り付ける場合を例示して説明する。
【0018】
図1(b)に示すように、車両100aでは、リヤフロアパネル102の下方に、車両前後方向に延びるサイドメンバであるリアフロアサイドメンバ(以下、サイドメンバ110と称する)が配置されている。図2(a)および(b)に示すように、サイドメンバ110の車両外側には、車両前後方向に延びるサイドシルとしてサイドシルリアエクステンション(以下、サイドシル120と称する)が配置される。
【0019】
サイドシル120の後端には、サイドブラケットであるトレーリングアームアウトサイドブラケット(以下、サイドブラケット130と称する)が接合される。本実施形態では、このサイドブラケット130の後方面134にトレーリングアーム106a(図1(b)参照)の前方側の端部が取り付けられる。またサイドブラケット130の前方面132には、ブラケットリンフォースとしてトレーリングアームブラケットリンフォース(以下、ブラケットリンフォース140と称する)が接合される。このブラケットリンフォース140によってサイドブラケット130が補強される。
【0020】
図3は、図2(a)の断面図であり、図3(a)は図2(a)のA−A断面図であり、図3(b)は図2(a)のB−B断面図である。図2(a)および(b)、ならびに図3(a)に示すように、サイドシル120は、車両内側の縦面122と、縦面の下端から屈曲して車両外側に向かって延びる下面124とを備える。本実施形態の特徴として、ブラケットリンフォース140は、サイドシル120の縦面122に接触する面である基本部位142、および下面124に接触する部位である第1の部位(以下、第1部位144と称する)を有し、少なくとも第1部位144(下面)においてサイドシル120に接合される。
【0021】
上記構成のように、ブラケットリンフォース140の第1部位144をサイドシル120の下面124に接合することにより、上下方向および左右方向の荷重に対する剛性が高まる。このように剛性の向上に他の補強部材が不要であることで、車両100aの重量増大やコストの増大を抑制しつつ、トレーリングアーム106a(図1(b)参照)の取付箇所近傍において高い剛性を得ることが可能となる。
【0022】
より好ましくは、ブラケットリンフォース140は、基本部位142においてもサイドシル120の縦面122に接合されるとよい。これにより、前後方向の荷重に対する剛性を更に高め、加えて上下方向の剛性を高めることが可能となる。なお、本実施形態では、ブラケットリンフォース140は、サイドシル120の縦面122および下面124の両方において接合される場合を例示したが、これに限定するものではなく、ブラケットリンフォース140は少なくとも第1部位144においてサイドシル120に接合されていればよい。
【0023】
また本実施形態では、図3(a)に示すように、ブラケットリンフォース140の前端は、車幅方向においてサイドメンバ110とサイドシル120との間に位置する。これにより、ブラケットリンフォース140の前端を、サイドメンバ110およびサイドシル120に接合可能となる。したがって、車両前後方向や上下方向の荷重に対してより高い剛性を得ることができる。
【0024】
本実施形態の次なる特徴として、図3(b)に示すように、ブラケットリンフォース140は、サイドメンバ110に沿う第2の部位(以下、第2部位146と称する)を有し、この第2部位146においてサイドメンバ110に接合される。これにより、上下方向や前後方向の荷重に対して更に高い剛性を得ることが可能となる。
【0025】
更に本実施形態では、図3(b)に示すように、サイドメンバ110は、車両内側の内側面112と、車両外側の外側面114と、内側面および外側面の下端同士つなぐ下側面116とを有する。そして、これらの3つの面のうち、サイドメンバ110の内側面112および下側面116と、ブラケットリンフォース140の車両内側の面である基本部位142とに跨るようにブラケットブレース150であるトレーリングアームブラケットブレース(以下、ブラケットブレース150と称する)が配置されている。このように、ブラケットブレース150が複数の面に跨るように立体的に配置されることにより、より多くの方向からの荷重に対する剛性を向上させることが可能となる。
【0026】
図4は、図2(b)の拡大図である。図4では、理解を容易にするために、上述したブラケットブレース150を不図示とし、サイドメンバ110の内部を透過させた状態を図示している。図4に示すように本実施形態では、サイドブラケット130へのトレーリングアーム106a(図1(b参照))の取付箇所、すなわちサイドブラケット130の後方面134と車幅方向で近接する位置において、サイドメンバ110内にフロントブレースであるリアフロアサイドメンバフロントブレース(以下、フロントブレース160と称する)を配置している。これにより、サイドブラケット130へのトレーリングアーム106a(図1(b)参照)の取付箇所近傍のサイドメンバ110、ひいてはそれに接合される部材の剛性を高めることができる。
【0027】
上記説明したように、本実施形態にかかる取付部構造100によれば、ブラケットリンフォース140を、サイドブラケット130に加えサイドシル120やサイドメンバ110に接合することにより、左右方向、上下方向および前後方向の荷重に対する剛性を高めることが可能となる。このとき、他の補強部材が必要でないことで、車両100aの重量増大やコストの増大を防ぎつつ、トレーリングアーム取付箇所において高い剛性を得ることが可能となる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、車両後部のリヤサスペンションを構成するトーションビームの車幅方向端部に連結されるトレーリングアームを車両に取り付けるトレーリングアーム取付部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
100…取付部構造、100a…車両、102…リヤフロアパネル、104…トーションビーム、106a…トレーリングアーム、106b…トレーリングアーム、110…サイドメンバ、112…内側面、114…外側面、116…下側面、120…サイドシル、122…縦面、124…下面、130…サイドブラケット、132…前方面、134…後方面、140…ブラケットリンフォース、142…基本部位、144…第1部位、146…第2部位、150…ブラケットブレース、160…フロントブレース
図1
図2
図3
図4