(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明の一実施の形態に係る電子打楽器の正面側の斜視図である。
図1(b)は、同電子打楽器のカバー類を外した状態の背面側の斜視図である。
図2(a)、(b)は、同電子打楽器の正面図、側面図である。
【0017】
この電子打楽器は電子バスドラムとして構成され、キックパッドとしてのドラム本体が、スタンド10で支持されてなる。本電子打楽器の奏者側には、図示はしないが、フットペダル装置が取り付けられる。以下、本電子打楽器の上下左右の各方向は、奏者側からの視点(
図2(a)等の正面視)を基準として呼称する。前後方向については奏者側を前側とする。
【0018】
取り付けられるフットペダル装置は一般的なものであり、ペダル操作によってそのビータがドラム本体のパッド体PDを打撃する。フットペダル装置はビータが単一の構成でもよいが、本実施の形態で用いられるフットペダル装置は、ツインペダル型で2つのビータが独立して操作される構成であるとする。従って、円形のパッド体PDの主として打撃される主打撃領域38内における正面視の中心点の左側及び右側を各ビータがそれぞれ打撃するようにフットペダル装置が設置される。
【0019】
図1(b)に示すように、スタンド10に対して金属製のステイ20が固定される。ステイ20の前側に、クッション保持部材19のフランジを介在させてパッド体PDが固定されている。
【0020】
図3は、
図2(a)のA−A線に沿う断面図である。
図4は、
図2(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0021】
図3、
図4に示すように、ステイ20の上部及び下部の背面側に背面カバー11が固定される。背面カバー11に対して、略筒状の前カバー25が固定される。前カバー25は、円周方向の6箇所においてフック部材12により背面カバー11に固定される。前カバー25によりパッド体PDが外周側から覆われている。
【0022】
次にパッド体PDの構成を説明する。パッド体PDは、ゴム、シリコンまたはウレタン等の弾性を有する部材で一体に形成されるヘッド部30、樹脂等でなるフレーム40、及び、硬質樹脂製または金属製のプレート49からなる。ヘッド部30は、フレーム40よりも柔らかく弾性を有した材料でなる。プレート49は、ヘッド部30よりも硬質で制振部材として機能する板状部材である。
【0023】
図5(a)、(b)は、ヘッド部30及びプレート49の断面図、背面図である。特に
図5(a)は
図5(b)のC−C線に沿う断面を示し一部を側面図で示している。
図5(c)、(d)は、フレーム40の正面図、側面図である。
【0024】
図5(a)、(b)に示すように、ヘッド部30は正面視円形で、周縁部31の上部及び下部の背面側は、半径方向内側に折り返されて折返し部32が形成されている。ヘッド部30の背面において、左右方向に直線的な溝34a、35aが互いに平行に形成されている。溝34a、35aは断面コ字状で一様の深さに彫られ、残った肉部が、ヒンジとしても機能する接続部34、35となる。周縁部31のうち、上下方向における接続部34、35の間の左右の側部には切欠部33(33−1、33−2)が形成され、折返し部32は設けられていない。上下の折返し部32には、切り込み36が複数形成されている。
【0025】
折返し部32及び接続部34、35を除いてヘッド部30はほぼ一様の厚みである。
図2(a)、
図5(a)に示すように、接続部34と接続部35との間の中間の領域が主領域R0であり、主領域R0は、主として打撃される主打撃領域38を含む領域である。接続部34より上方の領域を上方領域R1、接続部35より下方の領域を下方領域R2と記す。上方領域R1及び下方領域R2は「副領域」であり、ヘッド部30のうち主打撃領域38を含まない。主領域R0は接続部34により上方領域R1と接続されると共に、接続部35により下方領域R2と接続される。接続部34、35の最大厚みは副領域の最小厚みよりも薄いのが好ましい。
【0026】
図5(b)に示すように、プレート49は、横長のプレート穴49aが形成された環状の部材であり、外形は円形である。プレート49は、ヘッド部30の背面に接着等で固定される。プレート49がヘッド部30に固定された状態では、プレート穴49aの上下方向の縁の位置が、溝34aの上端、溝35aの下端とそれぞれ一致する。
【0027】
図5(c)、(d)に示すように、フレーム40は、横長のフレーム穴41が形成された環状に形成される。プレート穴49a(
図5(a))は、フレーム穴41に対して、上下及び左右方向において大きいかまたは等しい。フレーム40の表側において、上下方向中間部は窪んでおり、左右両側の段差部42(42−1、42−2)となっている。段差部42の上側、下側の領域は、段差部42よりも肉厚で、それらの表側の面が、プレート49と当接する受け面43となる。段差部42−1、42−2は、それぞれ切欠部33−1、33−2と対向する。
【0028】
本電子打楽器は次のように組み立てられる。
【0029】
スタンド10の上部にステイ20をネジ止め固定する(
図1(b))。クッション保持部材19には、前後方向に積層されるクッション層18を固着し、クッション層18の前後方向中間に、ピエゾ素子等でなる打撃センサ17を配設する(
図3、
図4)。そして、パッド体PDのフレーム40の背面に、ステイ20と共にクッション保持部材19のフランジをネジ止め固定する(
図1(b))。なお、ステイ20及びクッション保持部材19をフレーム40に固定する段階で、フレーム40は単体であってもよいし、パッド体PDとして完成させておいてもよい。
【0030】
パッド体PDは次のようにして組み付けられる。まず、ヘッド部30の背面にプレート49を接着固定したもの(
図5(b))の背面側を、プレート穴49aとフレーム穴41との位置を一致させつつフレーム40の表側(
図5(c))に対向させる。上下の折返し部32でフレーム40の周縁部44、45を外側から包み込むように、折返し部32を片方ずつ周縁部44、45に係合させる。その際、2箇所に切欠部33が形成されているので、折返し部32の係合作業が容易であり、切り込み36もそれに寄与している。
【0031】
このようにしてヘッド部30がフレーム40に取り付けられると、パッド体PDが完成し、プレート49が受け面43に密着当接する。ヘッド部30の表側の面全体を覆うように、ニット材等の伸縮性の保護材が貼られる。前後方向における段差部42−1と切欠部33−1との間、段差部42−2と切欠部33−2との間には、それぞれ空間が形成され、これらがパッド体PDの左右側方に開口して外気に連通する開口部となる(
図1(b)、
図4)。この開口部は実質的には通気部である。
【0032】
図3、
図4に示すように、ステイ20及びクッション保持部材19にパッド体PDが固定されると、クッション層18の一部がフレーム穴41内に介在し、クッション層18の前面がヘッド部30の背面(特に主打撃領域38の背面)に対向当接する。
【0033】
次に、ステイ20の上部及び下部の背面側に背面カバー11をネジ止め固定する。そして、背面カバー11の縁部の内側に、前方から前カバー25の縁部を嵌合し、背面カバー11及び前カバー25を6つのフック部材12で前後から挟い込む。その後、背面カバー11に対して後方から各フック部材12の後部にネジを螺合する。ネジ先端が背面カバー11を前方に押圧することで、フック部材12の前部は前カバー25を後方に付勢する。このようにして背面カバー11に対して前カバー25が固定される。
【0034】
前カバー25は、パッド体PDは外周から覆うが、パッド体PD自体には当接しない。すなわち、パッド体PDは、ステイ20を介してスタンド10に支持され、前カバー25はパッド体PDの支持に関与していない。なお、背面カバー11と前カバー25との固定方法は問わず、フック部材12も必須でない。また背面カバー11と前カバー25とは一体のカバーであってもよい。前カバー25の左右の側部には複数の開口スリット26が形成されている(
図1(a)、
図2)。開口スリット26は、切欠部33及び段差部42の位置と対応している。
【0035】
本実施の形態では、ツインビータ構成のフットペダル装置を用いるとしたので、
図1(a)、
図2(a)に示すように、主打撃領域38は横長の長円である。なお、ヘッド部30の表面にはニット材が貼られるが、以降、必要が無い限り、打撃面を表現する際にニット材の表面とヘッド部30の表面とを区別しない。
【0036】
かかる構成において、ヘッド部30の主打撃領域38がビータによって打撃されるとヘッド部30が振動し、その振動が、クッション層18の最前のクッション材の層を介して打撃センサ17に伝わる。打撃センサ17は、受けた振動を電気信号(電圧)に変換して、検出信号として出力する。そして、検出信号が所定の閾値を超えると、打撃があったことが検出される。その検出結果、すなわち、検出されたタイミングに基づくタイミングで、且つ検出信号のレベルに応じた音量にて、不図示の楽音発生機構によって楽音が発生する。
【0037】
ここで、ヘッド部30が打撃されたときに発生する生音の低減の工夫について説明する。生音は、打撃センサ17での検出による電子楽音とは別に、打撃により直接に発生する衝突音である。仮に従来のように、ヘッド部30の周縁部全体がフレーム40の周縁部全体に対して固定される構成の場合は、ヘッド部30の周縁部より半径方向内側の領域全体が打撃時に大きく振動する。しかもヘッド部30の裏側の圧力が一瞬急激に増加する。これらの事情から、従来は生音が大きかった。
【0038】
そこで本実施の形態では、ヘッド部30に溝34a、35a及び切欠部33を形成し、さらにはプレート49を設けることで、音色の改善を含めた生音の低減・抑制を図っている。
【0039】
図9は、打撃音の周波数特性を示す図である。打撃音S1はヘッドの裏面に溝及び制振部材(プレート49)を具備したヘッド構造について測定したものであり、打撃音S2は溝及び制振部材を具備しないヘッド構造について測定したものである。破線円に示すように、打撃音S1のピーク部は打撃音S2のピーク部に比べて大きく減衰している。このように静粛性が確保され、周波数特性の観点からも音響的効果が実証される。
【0040】
まず、ヘッド部30において、主領域R0は、上方領域R1、下方領域R2にそれぞれ薄肉部である接続部34、35により接続されている。従って、接続部34、35はヒンジとして機能するため、打撃時にはヘッド部30が全体として一様に振動するのではなく、接続部34、35を揺動支点として上方領域R1、下方領域R2に対して主領域R0が振動するような形態となる。振動する領域が小さくなり、生音の音量が低くなる。しかも主領域R0の厚みは接続部34、35ほど薄くないため、生音の音高は高すぎることはない。従って静粛性が向上する。
【0041】
また、ヘッド部30の周縁部31の左右側部に切欠部33が形成されているので、打撃時にヘッド部30の振動によりヘッド部30の裏側の圧力が変化したときに、切欠部33を空気が通過してヘッド部30の裏側の圧力変化を緩和する。フレーム40の段差部42も切欠部33と協働して空気抜けの空間を提供するので、空気の出入りが一層円滑である。これにより、打撃時にヘッド部の裏側の空気を逃がしやすくして静粛性を向上させることができる。
【0042】
ところで、空気を逃がすための開口部として設ける切欠部33については、周縁部31のうち最低1箇所でもよいが、複数の方が効率がよい。特に、本実施の形態のように、円周方向において最も離間した2箇所に設けることで効果的となる。本実施の形態では、主領域R0を挟んで切欠部33−1(第1の開口部)の反対側の位置に切欠部33−2(第2の開口部)が設けられている。しかしこれに限らず、ヘッド部30を半分に分けた2つの半円部分の双方に開口部を少なくとも1つずつ設けるとよい。すなわち、切欠部33−1から切欠部33−2までの距離よりも、主領域R0を挟んで切欠部33−1の反対側の位置から切欠部33−2までの距離の方が短ければ空気逃げの高い効果を維持できる。
【0043】
また、前カバー25において、円周方向における切欠部33及び段差部42と同じ位置に開口スリット26が形成されているので、切欠部33及び段差部42からの空気逃げを妨げることなくヘッド部30を覆うことができる。
【0044】
ところで、ヘッド部30の全体が大きく振動し、不要な振動が長く続くと打撃検出精度に悪影響を及ぼす。しかし本実施の形態では、ヘッド部30に、硬質のプレート49を、主打撃領域38を囲む形状で設けた。これにより、打撃時の大きな振動を抑制し、振動の減衰効果もあり、打撃の検出精度が高まる。それだけでなく、振動抑制による生音低減効果もある。特に、プレート49はフレーム40に対して密着するので、制振効果が高く、しかも切れ目のない環状であるので、主打撃領域38を中心とする半径方向全方向に対して制振効果が高い。主打撃領域38にはプレート49が干渉しないので、打撃操作感触を低下させることもない。
【0045】
このように、本実施の形態によれば、薄肉の接続部34、35を設けたので、打撃時に発生する不要雑音である生音を抑制して静粛性を向上させることができる。また、打撃面でない部分に切欠部33及び段差部42を開口部として設けたので、打撃時にヘッド部の裏側の空気を逃がしやすくして静粛性を向上させることができる。さらに、プレート49を設けたので、打撃時の不要な振動を抑制して、生音を低減すると共に打撃の検出精度を高めることができる。
【0046】
また、接続部34、35は横方向に直線的に形成され、主領域R0は横方向に長い。また、主打撃領域38を囲むプレート49の形状はプレート穴49aの形状であって、横方向に長い。従って、振動抑制効果を確保しつつバスドラムのツインビータの構成に好適である。
【0047】
また、ヘッド部30の周縁部31を固定部としてフレーム40に固定する際、折返し部32でフレーム40の周縁部44、45を外側から包み込むことでヘッド部30がフレーム40に取り付けられる。その際、周縁部31に切欠部33が形成されていることから、折返し部32がフレーム40の周縁部44、45を巻き込むように係止する作業がやりやすい。しかも、切欠部33は、ヘッド部30の周縁部31で且つ主領域R0のうち、特に接続部34、35の左右両端部の位置に形成されたので、切欠部33及び接続部34、35を加工形成しやすく、バスドラムのツインビータの構成に好適な形のヘッド部30を製作する上で有利である。
【0048】
なお、打撃時に発生する生音を抑制するためのヘッド部30の形状上の工夫の変形例を
図6(a)〜(e)の模式図で説明する。
【0049】
例えば、接続部34、35(溝34a、35a)は連続であることは必須でなく、途中で途切れてもよく、
図6(a)に例示するように断続していても、ある程度の効果は奏する。また、1本の接続部(例えば接続部34)は、1つの溝として形成することは必須でなく、ヘッド部30の表と裏の双方に窪んだ形でもよく、
図6(b)に例示するように、ヘッド部30の表と裏の双方に隣接して形成した複数の溝34b、34cによって構成してもよい。接続部35もこれと同様である。また、接続部34、35は、上方領域R1、下方領域R2より薄肉であればよく、溝の概念に含まれないような形態であってもよい。また、接続部34、35は必ずしも直線的でなくてもよく、S字状や湾曲した形状でもよい。
【0050】
また、接続部34、35は2本に限定されず、片方でもよい。また例えば、
図6(c)に例示するように1本であってもよい。すなわち、1本の接続部34が環状に構成されて、その内側の領域が主領域R0、外側の領域が副領域(上方領域R1及び下方領域R2)とされ、主領域R0と副領域とが薄肉の接続部34で接続される構成である。
【0051】
また、本実施の形態では、主領域R0と副領域(上方領域R1及び下方領域R2)とが接続部34、35で接続される構成であったが、これに限られない。接続部34、35が副領域より薄肉であればよく、主領域R0と接続部34、35とが同じ厚みであってもよい。その場合、
図6(d)に例示するように、主領域R0は副領域よりも薄肉にして、結果として接続部34、35に相当する構成要素が認識されなくなるような構成であってもよい。この場合、主領域R0と副領域とが連接しているのと同じ構成となる。厚みに関して厳密に表現すれば、主領域R0の最大厚みが副領域の最小厚みより薄い。
【0052】
また、
図6(e)に例示するように、主打撃領域38だけを他の領域よりも薄肉にして、主打撃領域38が主領域R0と一致するように構成してもよい。その場合、副領域(上方領域R1及び下方領域R2)は、主領域R0を囲む環状形状となる。
【0053】
このように、
図6に示した変形例によっても、打撃時に発生する生音を抑制して静粛性を向上させることができる。
【0054】
次に、打撃時の不要な振動を抑制する観点からは、制振部材としてのプレート49は、打撃面に平行な面において主打撃領域38を囲む形状(挟む形状も含む)であればよく、
図7に変形例を模式図で示すように、完全な環状形状に限られない。
【0055】
例えば、例えば、
図7(a)に示すように、切れ目を有し円周方向に複数のプレート49A〜49Dに分割される構成でもよい。あるいは、主打撃領域38を挟む形で囲む2つのプレート49A、49Bとして構成してもよい(
図7(b))。あるいは、接続部34の上方と接続部35の下方との2つに分けてプレート49A、49Bを配置してもよい(
図7(c))。
【0056】
いずれにしても、ヘッド部30へのプレート49の配設位置は、主打撃領域38でない領域において、背面に限られず、ヘッド部30の表面であってもよく、ヘッド部30の内部であってもよい。これらの少なくとも1つの位置に配置してもよく、例えばヘッド部30の表と裏の双方にプレート49を配置してもよい。また、固定の態様は接着に限られず、インサート成形であってもよい。制振効果を高める観点ではプレート49はフレーム40に対して密着するのがよいが、密着は直接的でなくてもよく、例えばヘッド部30の内部にインサート成形した構成のように、間接的に密着するのでもよい。
【0057】
なお、ヘッド部30の周縁部31が、フレーム40に対して取り付けられるフレーム40の部分をヘッド取付部と呼称したとすると、本実施の形態ではヘッド取付部にはフレーム40の周縁部44、45が該当した。しかし、周縁部31はフレーム40に対して直接に取り付けられることは必須でなく、
図8(a)、(b)にパッド体PDを模式的に例示するように、別部材である連結部材37を介して周縁部31とヘッド取付部とが固定される構成であってもよい。従って、フレーム40の形状は円形でなくてもよく、ヘッド部30より大きくてもよい。なお、
図8ではプレート49の図示を省略している。
【0058】
なお、打撃時にヘッド部の裏側の空気を逃がしやすくする観点からは、打撃時に空気が通過するための開口部としては、ヘッド部30の切欠部33やフレーム40の段差部42に限られない。すなわち、ヘッド部30の周縁部31、連結部材またはヘッド取付部の少なくとも1つに開口部を設ければよい。
【0059】
例えば、
図8(a)、(b)の構成を採用した場合に、環状の連結部材37の外周部の少なくとも1箇所に、貫通穴である開口部37aを形成する。また、連結部材を用いない場合でも、
図8(c)に模式的に例示するように、ヘッド部30に、切欠部33に代えて貫通穴でなる開口部39を設けてもよい。あるいは、
図8(d)に模式的に例示するように、フレーム40に切欠部でなる開口部46を設けてもよい。開口部37a、39、46は適宜組み合わせてもよい。開口部の形成は機械加工によってよいし金型成形によってもよい。
【0060】
図10(a)は、パッド体PDの正面図である。
図10(b)、(c)は、それぞれ、プレート49を組み付けたヘッド部30の断面図、背面図である。特に
図10(b)は
図10(c)のC’−C’線に沿う断面を示し一部を側面図で示している。
【0061】
図10に示す構成は、前述した
図6(d)に示す構成を詳細に示したものである。すなわち、ヘッド部30の接続部34、35を廃止すると共に、ヘッド部30の、上下の折返し部32の間の領域は、接続部34、35のような溝と認識される構造ではなく、上方領域R1、下方領域R2より薄肉としている。そしてこの、上下の折返し部32の間の領域が主領域R0になる。従って、上方領域R1、下方領域R2に対して主領域R0は連接している。主領域R0の最大厚みは上方領域R1、下方領域R2の最小厚みより薄い。この構成であっても、不要な振動がヘッド部30の全表面に伝搬することが防止される。
【0062】
ところで、従来技術には電子打楽器のヘッドの裏面において通気(空気逃し)を設けたものはない。
図5等で説明した本実施の形態では、ヘッド部30の裏面に形成された切欠部33及び接続部34、35がフレーム40の段差部42と協働してヘッド部30の裏面において十分な通気を確保する。それにより、演奏時にヘッド部30への打撃に起因する不要雑音を防止して静粛性を確保する。
図10でも例示したように、ヘッド部30の裏面に溝(接続部34、35)を形成する必要は必ずしもないが、当該溝はヘッド部30の打撃領域の周辺領域に伝達される不要振動を制振する相乗効果をもたらすものである。
【0063】
ところで、本発明の特徴である、上記実施の形態における、打撃時に空気が通過するための開口部(切欠部33、段差部42等)を、打撃時に空気を外方に逃がすための「通気メカニズム」あるいは「通気部」として把握することができる。そのように把握した電子打楽器を
図11〜
図13で説明する。
【0064】
図11、
図12、
図13は、それぞれ、本発明の特徴を有した電子打楽器の正面図、側面図、
図11のD−D線に沿う断面図である。
【0065】
図11〜
図13に示される電子打楽器において、ヘッド(ヘッド部30)は打面を有するゴムパッドを具備しており、溝100がヘッドの裏面に形成される。
図13に示されるように、ゴムパッドの溝100とヘッドの裏面を支持する硬質材との間のざぐりにより通気メカニズム200が形成される。ビータで打撃されたヘッドの裏面側から空気を逃すことを目的とした通気メカニズム200を有することにより、ヘッドの打撃に伴う不要雑音を防止して静粛性が確保される。
【0066】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0067】
なお、以下に、本発明の効果の補足、及び、本発明を実現するための追加の構成や変形例を述べておく。以下の記載には、既に述べた事項と重複する内容も含まれている。
【0068】
ヘッド部30の周縁部31には、フレーム40を取り付けるためのフレーム取付部(折返し部32)が設けられ、周縁部31から半径方向内側に防振部材(プレート49)が配置される。フレーム40は、少なくとも、ヘッド部30と防振部材とが対応する部位に対して押圧接触状態となる。それにより、ヘッド部30へのフレーム40の固定時に、フレーム取付部の間で打面が張り、防振部材に対応する部分がフレーム40と押圧接触することから、振動抑制がしっかりとできる。
【0069】
防振部材(プレート49)はドーナツ状またはリング状に形成される。防振部材が有する窓の形状は問わず、円形、楕円形、矩形、多角形でもよい。防振部材は、主打撃領域38の周囲を囲むように配置することで振動抑制効果が高まる。なお、防振部材は、単一でなくてもよく、
図7(a)〜(c)にも例示したように、複数に分割して配置してもよい。主打撃領域38の上下の2箇所、左右の2箇所、あるいは上下及び左右の4箇所に防振部材を分割配置してもよい。
【0070】
プレート49は金属の板からなるとすれば、振動抑制効果が高く、強度も高い。プレート49は硬質のプラスチック材や木材であってもよい。
【0071】
ヘッド部30の素材内部に防振部材(プレート49)をインサート成形することで、防振部材とヘッド部30との接触面積を大きくとれるため、振動抑制効果が高まる。また、防振部材の外周が覆われるため、割れにくく、錆にも強い。
【0072】
ヘッド部30においては、プレート49に形成された窓部(プレート穴49a)に対応した位置または窓部よりやや内側となる領域に、上方領域R1及び下方領域R2よりも肉薄の部分を形成してもよい。この肉薄の部分は溝として形成してもよいし、溝を含む構成としてもよい。これにより、防振部材が設けられない打面の内側の肉薄の部分が打撃によって伸び、その周囲の防振部材に覆われている部分で振動を抑制するので、打楽器として機能的に働く。
【0073】
防振部材(プレート49)のプレート穴49aは、フレーム40のフレーム穴41よりも大きくしてもよい。プレート穴49aに対応するヘッド部30の領域が、打撃により沈み込む領域となるので、防振部材の肉部が、沈み込み領域を挟む(囲む)ように配置されることで、防振部材の肉部とヘッド部30における沈み込み領域の外側の領域とが十分に重なるようにすることができる。それにより、振動抑制がより機能的に働き、また、開口となるプレート穴49aを最大限に大きく設定することができる。
【0074】
ヘッド部30の背面側において、防振部材の窓部(プレート49のプレート穴49a)に対応した位置に衝撃緩衝材(クッション層18)を配置し、さらにその背面側に打撃センサ17を配置したので、打面部周辺に高い剛性を設けることができ、演奏感触を向上させると共に、故障を生じにくくすることができる。