特許第6372110号(P6372110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372110
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20180806BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20180806BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B60H1/32 624D
   B60H1/32 624B
   B60H1/22 651C
   F25B13/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-49987(P2014-49987)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-174473(P2015-174473A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋ヶ谷 英樹
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 堅祐
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和定
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−164868(JP,A)
【文献】 特開2006−044501(JP,A)
【文献】 特開平07−266840(JP,A)
【文献】 特開平02−078865(JP,A)
【文献】 特開2013−023115(JP,A)
【文献】 特開2012−250708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
B60H 1/22
B60H 1/00
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するコンプレッサと、
前記コンプレッサによって圧縮された前記冷媒の流路を少なくとも冷房用流路及び暖房用流路を含む複数の流路の間で切り替える切替弁と、を備えた車両用空調装置であって、
車室内の音量を示す指標を取得する音量指標取得部と、
前記コンプレッサによって圧縮された前記冷媒の圧力を検出する冷媒圧検出部と、
前記冷媒圧検出部により検出された冷媒圧が所定の切り替え圧力未満の場合、前記冷媒の流路を切り替える切替制御部と、を備え、
前記切替制御部は、前記冷媒の圧力が前記切り替え圧力以上の場合、切り替え待ち時間を超えると前記冷媒の流路を切り替え、前記音量を示す指標が大きいことを示す場合は前記切り替え待ち時間を短くすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記車室内の音量を示す指標は、少なくともブロワファンの駆動状態、車速、エンジン回転数、車室内に設けられたオーディオ機器の音量調節スイッチの設定位置、のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記車室内の音量を示す指標は、ブロワファンの駆動状態、車速、エンジン回転数、車室内に設けられたオーディオ機器の音量調節スイッチの設定位置、の少なくともいずれか二つを含み、前記指標毎に該指標の値に応じて前記切り替え圧力の大きさが設定され、各指標の示す値に対応した前記切り替え圧力の最大圧力を最大切り替え圧力とし、前記冷媒の圧力が該最大切り替え圧力未満のとき前記冷媒の流路を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、詳しくは、冷房運転状態及び暖房運転状態との少なくとも2つの空調運転状態をとる車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置として、特許文献1には、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、冷媒と室外空気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器、冷媒と車室内へ送風させる送風空気との間で熱交換を行わせる室内熱交換器、及び、冷媒が循環する冷媒回路を有するものが提案されている。
【0003】
この従来の車両用空調装置は、室内熱交換器にて吸熱した冷媒を室外熱交換器にて放熱させて送風空気を冷却する冷房モードで作動する冷媒回路と、室外熱交換器にて吸熱した冷媒を室内熱交換器にて放熱させて送風空気を加熱する暖房モードで作動する冷媒回路と、冷媒回路のモードを切り替える切替弁よりなる冷媒回路切替手段を有している。
【0004】
このような車両用空調装置においては、冷房モードと暖房モードとの間で冷媒回路の切り替えが行われると、冷媒回路切替手段を構成する切替弁を通過する冷媒の圧力が変化することにより、異音及び振動が発生し、乗員に不快感を与えることがあった。
【0005】
この冷媒回路の切り替え時の異音及び振動は、冷媒の圧力が高いと大きく、冷媒の圧力が低くなると小さくなる。この車両用空調装置では、圧縮機が停止すると、時間経過により冷媒の圧力は低下するため、時間をかければ冷媒の圧力が低下し、切り替え時の異音及び振動は小さくなる。
【0006】
このため、特許文献1で提案された従来の車両用空調装置において、冷媒回路切替手段は、圧縮機が停止した後に、圧縮機の吐出側の高圧側冷媒圧力が予め定められた基準高圧側冷媒圧力以下となったことを条件として、冷媒回路切替手段が冷媒回路を切り替えるようになっている。これにより、従来の車両用空調装置は、冷媒回路切替手段の切り替えによる異音及び振動を小さくして、乗員に不快感を与えることなく、冷媒回路を切り替えていた。
【0007】
また、冷媒回路切替手段は、圧縮機が停止したときから予め定められた基準停止時間が経過した場合には、高圧側冷媒圧力が基準高圧側冷媒圧力より高くても冷媒回路を切り替えるようになっている。これにより、従来の車両用空調装置は、高圧側冷媒圧力が基準高圧側冷媒圧力まで下がるのに時間がかかる場合には、冷媒回路切替手段の作動音を小さくすることに優先して、乗員の操作に対する空調機能の応答性が悪化することを抑制していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−5981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1で提案されたものは、高圧側冷媒圧力が基準高圧側冷媒圧力まで下がるか、または、圧縮機が停止したときから予め定められた基準停止時間が経過するまで、乗員の要求は満たされないことになり、乗員の操作に対する空調機能の応答性の悪化を十分に抑制できていないといった課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、従来のものと比較して、乗員の操作に対する空調機能の応答性を向上させることができる車両用空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、冷媒を圧縮するコンプレッサと、コンプレッサによって圧縮された冷媒の流路を少なくとも冷房用流路及び暖房用流路を含む複数の流路の間で切り替え切替弁と、を備えた車両用空調装置であって、車室内の音量を示す指標を取得する音量指標取得部と、コンプレッサによって圧縮された冷媒の圧力を検出する冷媒圧検出部と、冷媒圧検出部により検出された冷媒圧が所定の切り替え圧力未満の場合、冷媒の流路を切り替える切替制御部と、を備え、切替制御部は、冷媒の圧力が切り替え圧力以上の場合、切り替え待ち時間を超えると冷媒の流路を切り替え、音量を示す指標が大きいことを示す場合は切り替え待ち時間を短くすることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第の態様としては、車室内の音量を示す指標は、少なくともブロワファンの駆動状態、車速、エンジン回転数、車室内に設けられたオーディオ機器の音量調節スイッチの設定位置、のいずれか一つであることが好ましい。
本発明の第の態様としては、車室内の音量を示す指標は、ブロワファンの駆動状態、車速、エンジン回転数、車室内に設けられたオーディオ機器の音量調節スイッチの設定位置、の少なくともいずれか二つを含み、指標毎に該指標の値に応じて切り替え圧力の大きさが設定され、各指標の値に対応した切り替え圧力の最大圧力を最大切り替え圧力とし、冷媒の圧力が最大切り替え圧力未満のとき冷媒の流路を切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
このように、上記の第1の態様は、車室内の音量を示す指標が車室内の音量が大きいことを示している場合には切り替え待ち時間を短く変更する。このため、車室内の音量の大きさに応じて空調機能の切り替えまでの時間を短縮させることができ、従来のものと比較して、乗員の操作に対する空調機能の応答性を向上させることができる。
【0014】
上記の第の態様は、ブロワファンの駆動状態、車速、エンジン回転数、車室内に設けられたオーディオ機器の音量調整スイッチの設定位置などにより車室内の音量を適切に検知することができる。
上記の第の態様は、ブロワファンの駆動状態、車速、エンジン回転数、車室内に設けられたオーディオ機器の音量調整スイッチの設定位置などの複数の指標の値に対応した切り替え圧力の最大圧力を最大切り替え圧力とし、冷媒の圧力が最大切り替え圧力以上のとき切替弁を切り替える。このため、複数の指標の最大の音量に応じて空調機能の切り替えまでの時間を短縮させることができ、従来のものと比較して、乗員の操作に対する空調機能の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置を搭載した車両の要部を示す構成図である。
図2図2は、空調運転状態が冷房運転状態にあるときの図1に示す車両の要部を示す構成図である。
図3図3は、空調運転状態が暖房運転状態にあるときの図1に示す車両の要部を示す構成図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置によって参照されるマップを示す概念図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置による空調運転状態切替動作を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置によって参照されるマップを示す概念図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置による空調運転状態切替動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1図5は本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置を示す図である。
【0017】
(第1実施形態)
図1に示すように、車両1は、車両用空調装置2と、エンジン5とを含んで構成される。また、車両用空調装置2は、空調ユニット3と、ECU(Electronic Control Unit)4とを含んで構成される。
【0018】
本実施形態において、空調ユニット3は、図2に示すように、車室内を冷やす冷房運転状態と、図3に示すように、車室内を暖める暖房運転状態との少なくとも2つの空調運転状態をとるようになっている。
【0019】
図1において、空調ユニット3には、車室内に吹出させる空気の導入口として、空調ユニット3内を車室外に連通する外気導入口10aと、空調ユニット3内を車室内に連通する内気導入口10bとが形成されている。
【0020】
外気導入口10aは、車室外の空気を空調ユニット3内に導入する導入口である。内気導入口10bは、車室内の空気を空調ユニット3内に導入する導入口、すなわち車室内で循環する空気を導入させるための導入口である。
【0021】
空調ユニット3内には、車室内に吹出させる空気の導入口を外気導入口10aと内気導入口10bとの間で切り替える導入口切替ドア11が設けられている。導入口切替ドア11は、外気導入口10aを完全に閉じて内気導入口10bを完全に開く位置と、内気導入口10bを完全に閉じて外気導入口10aを完全に開く位置との間を移動できるように、空調ユニット3内に回転自在に取り付けられている。
【0022】
導入口切替ドア11には、導入口切替ドア11を駆動するためのアクチュエータ12が設けられている。アクチュエータ12は、ECU4による制御に応じて、導入口切替ドア11の位置を制御するようになっている。
【0023】
また、空調ユニット3には、車室内に吹出させる空気の排出口として、フロントウインドガラスの車室内側に向けて開口されたデフロスタ吹出し口に連通されたデフロスタ排出口14aと、運転席及び助手席に向けて開口されたベント吹出し口に連通されたベント排出口14bと、運転席及び助手席に着座した乗員の足元に向けて開口された足元吹出し口に連通された足元排出口14cとが形成されている。
【0024】
空調ユニット3内には、デフロスタ排出口14aを開閉する吹出口切替ドア16aと、ベント排出口14b及び足元排出口14cを開閉する吹出口切替ドア16bとが設けられている。
【0025】
吹出口切替ドア16aは、デフロスタ排出口14aを完全に閉じる位置と、デフロスタ排出口14aを完全に開く位置との間を移動できるように、空調ユニット3内に回転自在に取り付けられている。
【0026】
吹出口切替ドア16aには、吹出口切替ドア16aを駆動するためのアクチュエータ17aが設けられている。アクチュエータ17aは、ECU4による制御に応じて、吹出口切替ドア16aの位置を制御するようになっている。
【0027】
吹出口切替ドア16bは、ベント排出口14bを完全に閉じて足元排出口14cを完全に開く位置と、足元排出口14cを完全に閉じてベント排出口14bを完全に開く位置との間を移動できるように、空調ユニット3内に回転自在に取り付けられている。
【0028】
吹出口切替ドア16bには、吹出口切替ドア16bを駆動するためのアクチュエータ17bが設けられている。アクチュエータ17bは、ECU4による制御に応じて、吹出口切替ドア16bの位置を制御するようになっている。
【0029】
また、空調ユニット3内には、空気の導入口10a、10bから排出口14a、14b、14cに向けて順に、ブロワファン20と、エバポレータ21と、エアミックスドア22と、ヒータコア23と、室内コンデンサ24とが設けられている。
【0030】
ブロワファン20は、車室内に吹出させる空気を送風するようになっている。ブロワファン20には、ブロワファン20を回転させるブロワファンモータ25が設けられている。ブロワファン20は、ブロワファンモータ25によって回転させられることにより、導入口10a、10bから導入された空気を排出口14a、14b、14cに向けて送風するようになっている。ブロワファンモータ25は、ECU4による制御に応じて、その回転力が変化し、ブロワファン20の送風量を変化させるようになっている。
【0031】
エバポレータ21は、エバポレータ21の表面に接触するように通過する空気と、エバポレータ21内で膨張気化する冷媒との間で熱交換を行わせることによって、エバポレータ21の表面を通過する空気を冷却及び除湿するようになっている。
【0032】
エアミックスドア22は、ヒータコア23及び室内コンデンサ24を通過する空気の流量を調整するようになっている。具体的には、エアミックスドア22は、エバポレータ21を通過した空気がヒータコア23及び室内コンデンサ24を通過する位置と、エバポレータ21を通過した空気がヒータコア23及び室内コンデンサ24を通過しない位置との間を移動できるように、空調ユニット3内に回転自在に取り付けられている。
【0033】
ヒータコア23は、ヒータコア23の表面に接触するように通過するエバポレータ21で冷却された空気と、ヒータコア23内を通過するエンジン5の冷却水との間で熱交換を行わせるようになっている。
【0034】
室内コンデンサ24は、室内コンデンサ24の表面に接触するように通過するエバポレータ21で冷却された空気と、室内コンデンサ24内を通過する冷媒との間で熱交換を行わせるようになっている。
【0035】
室内コンデンサ24内に流入する高圧かつ高温な冷媒は、室内コンデンサ24内を通過するときに、凝縮して熱を放出する。したがって、室内コンデンサ24は、車室内に吹出させる空気を暖める熱源として機能する。
【0036】
エアミックスドア22には、エアミックスドア22を駆動するためのアクチュエータ26が設けられている。アクチュエータ26は、ECU4による制御に応じて、エアミックスドア22の位置を制御するようになっている。
【0037】
具体的には、図2に示したように、空調運転状態が冷房運転状態である場合には、エアミックスドア22は、ECU4に制御されたアクチュエータ26により、エバポレータ21を通過した空気がヒータコア23及び室内コンデンサ24を通過しない位置をとるようになっている。
【0038】
一方、図3に示したように、空調運転状態が暖房運転状態である場合には、エアミックスドア22は、ECU4に制御されたアクチュエータ26により、エバポレータ21を通過した空気がヒータコア23及び室内コンデンサ24を通過する位置をとるようになっている。
【0039】
図1において、空調ユニット3には、コンプレッサ30、切替弁31、室外コンデンサ32、切替弁33及びアキュームレータタンク34が設けられている。
【0040】
コンプレッサ30は、ECU4による制御に応じて電動で作動し、冷媒を圧縮するようになっている。すなわち、コンプレッサ30は、冷媒を圧縮することにより、冷媒を高圧かつ高温にするようになっている。
【0041】
切替弁31は、例えば、ECU4による制御に応じて作動する電磁式の三方弁によって構成されている。切替弁31は、コンプレッサ30及び室内コンデンサ24内を通過し、室外コンデンサ32内に向かう冷媒の流路を、絞り40が設けられた流路と、絞り40が設けられていない流路との間で切り替えるようになっている。
【0042】
図2に示したように、切替弁31は、空調運転状態が冷房運転状態である場合には、ECU4の制御により、室外コンデンサ32内に向かう冷媒の流路として、絞り40が設けられていない流路を選択するようになっている。
【0043】
一方、図3に示したように、切替弁31は、空調運転状態が暖房運転状態である場合には、ECU4の制御により、室外コンデンサ32内に向かう冷媒の流路として、絞り40が設けられている流路を選択するようになっている。
【0044】
図1において、切替弁33は、例えば、ECU4による制御に応じて作動する電磁式の三方弁によって構成されている。切替弁33は、室外コンデンサ32内を通過した冷媒の流路を、絞り41を介してエバポレータ21内に向かう流路と、アキュームレータタンク34内に向かう流路との間で切り替えるようになっている。
【0045】
図2に示したように、空調運転状態が冷房運転状態である場合には、切替弁33は、ECU4の制御により、室外コンデンサ32内を通過した冷媒が向かう流路として、絞り41を介してエバポレータ21内に向かう流路を選択するようになっている。
【0046】
一方、図3に示したように、空調運転状態が暖房運転状態である場合には、切替弁33は、ECU4の制御により、室外コンデンサ32内を通過した冷媒が向かう流路として、アキュームレータタンク34内に向かう流路を選択するようになっている。
【0047】
図1において、室外コンデンサ32は、室外コンデンサ32の表面に接触するように通過する空気と、室外コンデンサ32内を通過する冷媒との間で熱交換を行わせるようになっている。
【0048】
ここで、図3に示したように、絞り40が設けられた流路を通過した冷媒は、絞り40により膨張し、低圧かつ低温となっているため、室外コンデンサ32内を通過するときに、室外コンデンサ32の表面を通過する空気から吸熱する。このため、空調運転状態が暖房運転状態である場合には、室外コンデンサ32の表面を通過する空気から吸熱した冷媒がアキュームレータタンク34を介してコンプレッサ30に吸入される。
【0049】
一方、図2に示したように、絞り40が設けられていない流路を通過した冷媒は、高圧かつ高温となっているため、室外コンデンサ32内を通過するときに、熱を放出して凝縮する。このため、空調運転状態が冷房運転状態である場合には、室外コンデンサ32の表面を通過する空気へ放熱した冷媒が、絞り41を通過しエバポレータ21で吸熱して、アキュームレータタンク34を介してコンプレッサ30に吸入される。
【0050】
図2において、絞り41が設けられた流路を通過した冷媒は、絞り41により膨張し、低圧かつ低温となっているため、エバポレータ21内を通過するときに、エバポレータ21の表面を通過する空気から吸熱する。このため、空調運転状態が冷房運転状態である場合には、エバポレータ21の表面を通過する空気は、冷媒によって熱が奪われ、冷却される。
【0051】
図1において、アキュームレータタンク34は、余剰な冷媒を一時的に蓄えることにより、コンプレッサ30に安定した圧力の冷媒を吸入させるようになっている。
【0052】
このように、空調運転状態が冷房運転状態である場合には、図2に示したように、コンプレッサ30、室内コンデンサ24、切替弁31、室外コンデンサ32、切替弁33、絞り41が設けられた流路、エバポレータ21及びアキュームレータタンク34は、冷房用流路を形成する。
【0053】
一方、空調運転状態が暖房運転状態である場合には、図3に示したように、コンプレッサ30、室内コンデンサ24、切替弁31、絞り40が設けられた流路、室外コンデンサ32、切替弁33及びアキュームレータタンク34は、暖房用流路を形成する。
【0054】
図1において、ECU4は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0055】
本実施形態において、ECU4の入力ポートには、車室内の温度を検出する車室内温度センサ51と、外気の温度を検出する外気温度センサ52と、コンプレッサ30によって圧縮された冷媒の圧力を検出する冷媒圧センサ53と、車両1の走行速度を検出する車速センサ54と、エンジン5の回転数を検出するエンジン回転数センサ55と、車両1に搭載されているオーディオ機器の音量が調節される音量調節スイッチの設定位置を検出する音量スイッチ位置センサ56とを含む各種センサ類と、コントロールパネル57を含む各種コントローラとが接続されている。
【0056】
コントロールパネル57には、空調機能のオン/オフが切り換えられる空調スイッチと、空調運転状態が設定される空調運転状態設定スイッチと、車室内に吹出させる空気の導入口が外気導入口10aと内気導入口10bとの間で選択される空気導入モード選択スイッチと、デフロスタ吹出し口、ベント吹出し口及び足元吹出し口から吹出される空調風の流量の比率の組合せからなる空調モードが選択される空調モード選択スイッチと、これら吹出し口から吹出させる空調風の流量(以下、単に「吹出し量」ともいう)が設定される風量調節スイッチと、設定温度が設定される温度設定スイッチとを含む各種スイッチが設けられている。
【0057】
空調モード選択スイッチは、例えば、デフモード、ベントモード、フットモード及びB/L(バイレベル)モードを含む複数の空調モードのなかから1つの空調モードを選択する空調モード選択部70を構成する。
【0058】
デフモードは、デフロスタ吹出し口から空調風を吹出させるモードである。ベントモードは、ベント吹出し口から空調風を吹出させるモードである。フットモードは、足元吹出し口から空調風を吹出させるモードである。B/Lモードは、ベント吹出し口及び足元吹出し口から空調風を吹出させるモードである。
【0059】
ECU4の出力ポートには、アクチュエータ12、17a、17b及び26、ブロワファンモータ25、コンプレッサ30並びに切替弁31及び33等の各種制御対象類が接続されている。ECU4は、各種センサ類、各種コントローラ及び各種スイッチから得られる情報に基づいて、各種制御対象類を制御するようになっている。
【0060】
例えば、ECU4は、コントロールパネル57の空調スイッチによって空調機能がオンにされているときに、車室内温度センサ51によって検出された車室内の温度と、コントロールパネル57の温度設定スイッチによって設定された温度とが等しくなるように、アクチュエータ26、及びコンプレッサ30を適宜制御するようになっている。
【0061】
また、本実施形態において、ECU4は、空調運転状態設定スイッチによって空調運転状態が冷房運転状態と暖房運転状態との間で切り替えられた場合には、空調運転状態設定スイッチによって切り替えられた空調運転状態となるように、アクチュエータ26、コンプレッサ30並びに切替弁31及び33を制御するようになっている。
【0062】
具体的には、ECU4は、空調運転状態設定スイッチによって空調運転状態が冷房運転状態と暖房運転状態との間で切り替えられた場合には、コンプレッサ30を停止させ、アクチュエータ26を制御してエアミックスドア22の位置を変化させ、切替弁31及び33を制御して冷媒の流路を冷房用流路と暖房用流路との間で切り替えるようになっている。
【0063】
特に、ECU4は、切替弁31及び33によって冷媒の流路を冷房用流路と暖房用流路との間で切り替える場合には、コンプレッサ30を停止させ、予め定められた切替条件が成立したときに冷媒の流路を切り替えるように切替弁31及び33を制御するようになっている。
【0064】
ここで、ECU4は、冷媒圧センサ53によって検出された圧力が予め定められた切り替え圧力未満となったときに切替条件が成立したと判断するようになっている。このとき、ECU4は、車室内の音量を示す指標に応じて切り替え圧力を変えるようになっている。すなわち、冷媒圧センサ53は、冷媒圧検出部を構成し、ECU4は、切替制御部71を構成する。
【0065】
車室内の音量が大きい場合、冷媒の流路を冷房用流路と暖房用流路との間で切り替える時のノイズが車室内の音で打ち消される。このため、車室内の音量が大きい状態では、切り替え圧力を高くしても、冷媒の流路を切り替える時のノイズが乗員に不快感を与えることがなく、早期に冷媒の流路を切り替えることができる。
【0066】
本実施形態において、ECU4は、車室内の音量を示す指標としてブロワファン20の駆動状態を参照するようになっている。ブロワファン20の駆動音が大きくなる駆動状態では切り替え圧力を高い圧力とし、ブロワファン20の駆動音が小さくなるにつれ切り替え圧力を低くする。
【0067】
また、ECU4は、タイマ72を構成し、コンプレッサ30を停止させたときからの経過時間を計るようになっている。ECU4は、経過時間が予め定められた切り替え待ち時間を超えたときに切替条件が成立したと判断するようになっている。ここで、切り替え待ち時間は、乗員に不快感を与えない空調運転状態切替の待ち時間の上限値であり、実験等により求められ、ECU4のROMに格納されている。
【0068】
以上に説明したようにECU4を構成するために、ECU4のROMには、図4に示すようなマップが格納されている。図4に示すマップでは、ブロワファン20の駆動状態に対して、切り替え圧力[MPa]が対応付けられている。
【0069】
図4において、ブロワファン20の駆動状態は、例えば、ブロワファンモータ25の最大出力時の回転数を100[%]とし、その回転数に対する回転数の割合でブロワファン20の駆動状態を表している。図4では、0〜100[%]の駆動状態に対し、W〜W10の11段階の切り替え圧力[MPa]が対応付けられている。
【0070】
具体的には、設定されたブロワファン20の駆動状態のとき、冷媒の流路を冷房用流路と暖房用流路との間で切り替える時のノイズが気にならない程度の切り替え圧力が実験等により求められ設定される。なお、ECU4は、ブロワファンモータ25の制御状態(供給する電流値等)からブロワファンモータ25の回転数を検知することができる。すなわち、ECU4は、音量指標取得部を構成する。
【0071】
このように、ECU4は、空調運転状態設定スイッチによって空調運転状態が冷房運転状態と暖房運転状態との間で切り替えられた場合には、コンプレッサ30を停止させてから、図4に示したマップを参照し、切替弁31及び33を切り替えるように制御してよいか否かを判断するようになっている。
【0072】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る車両用空調装置2による空調運転状態切替動作について図5を参照して説明する。ここで、空調運転状態切替動作は、空調機能がオンである状態で、空調運転状態設定スイッチによって空調運転状態が切り替えられたときにスタートする。
【0073】
図5に示す空調運転状態切替動作において、ECU4は、コンプレッサ30を停止させ(ステップS11)、タイマ72を初期値よりスタートさせる(ステップS12)。
【0074】
その後、ECU4は、ブロワファン20の駆動状態を取得し(ステップS13)、ブロワファン20の駆動状態からマップにより切り替え圧力[MPa]を取得し(ステップS14)、冷媒圧センサ53から冷媒の圧力を取得する(ステップS15)。
【0075】
次いで、ECU4は、冷媒の圧力が切り替え圧力未満であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0076】
冷媒の圧力が切り替え圧力未満であると判定した場合、ECU4は、切替弁31及び33を切り替え(ステップS17)、コンプレッサ30を作動させ(ステップS18)、処理を終了する。
【0077】
一方、冷媒の圧力が切り替え圧力未満でないと判定した場合、ECU4は、タイマ72の計測時間が、切り替え待ち時間を超えているか否かを判定する(ステップS19)。
【0078】
ここで、タイマ72の計測時間が切り替え待ち時間を超えていると判断した場合には、ECU4は、切替弁31及び33を切り替え(ステップS17)、コンプレッサ30を作動させ(ステップS18)、処理を終了する。
【0079】
一方、タイマ72の計測時間が切り替え待ち時間を超えていないと判断した場合には、ECU4は、ステップS13に戻ってブロワファン20の駆動状態の取得から処理を繰り返す。
【0080】
したがって、本実施形態は、車室内の音量を示す指標としてブロワファン20の駆動状態を用い、この指標が車室内の音量が大きいことを示している場合は切り替え圧力を高くする。このため、本実施形態は、車室内の音量の大きさに応じて空調機能の切り替えまでの時間を短縮させることができ、従来のものと比較して、乗員の操作に対する空調機能の応答性を向上させることができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、音量指標に応じて切り替え圧力を変更したが、音量指標に応じて切り替え待ち時間を変更するようにしてもよい。すなわち、音量指標が車室内の音量が大きいことを示している場合には切り替え待ち時間を短く変更するようにしてもよい。
【0082】
(第2実施形態)
次に、図6、7は本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置を示す図である。ここで、本実施形態は上述実施形態と略同様に構成されているので、図面を流用して同様な構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する。
【0083】
図1におけるECU4は、車室内の音量を示す指標としてブロワファン20の駆動状態に加え、車両1の車速[km/h]と、エンジン5の回転数[rpm]と、オーディオ機器の音量調節スイッチの設定位置[Step]とを参照するようになっている。
【0084】
ECU4は、検出された各音量指標に対応した各切り替え圧力のうち、最大の切り替え圧力と冷媒圧センサ53によって検出された冷媒の圧力を比較し、冷媒の圧力が最大の切り替え圧力未満となったときに切替条件が成立したと判断し、冷媒の流路を切り替えるようになっている。
【0085】
このため、ECU4のROMには、図6(a)〜(d)に示すようなマップが格納されている。図6(a)に示すマップでは、ブロワファン20の駆動状態に対する切り替え圧力として、ブロワファン切り替え圧力[MPa]が設定されている。図6(a)では、図4と同様に、ブロワファン20の駆動状態を最大出力時の回転数に対する割合で表し、0〜100[%]の駆動状態に対し、図4と同じW〜W10の11段階の値が、ブロワファン切り替え圧力として対応付けられている。
【0086】
図6(b)に示すマップでは、車速センサ54にて検出される車両1の車速に対する切り替え圧力として、車速切り替え圧力[MPa]が設定されている。車速切り替え圧力は、車速が早くなると車速切り替え圧力が高くなるように設定されている。図6(b)では、0〜100[km/h]の車速に対し、X〜X10の11段階の車速切り替え圧力が対応付けられている。
【0087】
図6(c)に示すマップでは、エンジン回転数センサ55にて検出されるエンジン5の回転数に対する切り替え圧力として、エンジン回転数切り替え圧力[MPa]が設定されている。エンジン回転数切り替え圧力は、エンジン回転数が高くなるとエンジン回転数切り替え圧力が高くなるように設定されている。図6(c)では、0〜5000[rpm]のエンジン回転数に対し、Y〜Y10の11段階のエンジン回転数切り替え圧力が対応付けられている。
【0088】
図6(d)に示すマップでは、音量スイッチ位置センサ56にて検出されるオーディオ機器の音量調節スイッチの設定位置に対する切り替え圧力として、オーディオ切り替え圧力[MPa]が設定されている。オーディオ切り替え圧力は、音量調節スイッチの設定位置が大音量を示す位置になるとオーディオ切り替え圧力が高くなるように設定されている。
【0089】
音量スイッチ位置センサ56は、例えば、音量調節スイッチの最小音量位置を0[Step]、最大音量位置を50[Step]とし、最小音量位置から最大音量位置まで等間隔の1[Step]単位で位置を検出するようになっている。図6(d)では、0〜50[Step]の設定位置に対し、Z〜Z10の11段階のオーディオ切り替え圧力が対応付けられている。すなわち、車速センサ54、エンジン回転数センサ55、音量スイッチ位置センサ56は、音量指標取得部を構成する。
【0090】
具体的には、各マップに設定された各音量指標の設定値のとき、冷媒の流路を冷房用流路と暖房用流路との間で切り替える時のノイズが気にならない程度の切り替え圧力が実験等により求められ設定される。
【0091】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る車両用空調装置2による空調運転状態切換動作について図7を参照して説明する。ここで、空調運転状態切換動作は、空調機能がオンである状態で、空調運転状態設定スイッチによって空調運転状態が切り替えられたときにスタートする。
【0092】
図7に示す空調運転状態切換動作において、ECU4は、上述の第1実施形態と同様に、コンプレッサ30を停止させ(ステップS11)、タイマ72を初期値よりスタートさせる(ステップS12)。
【0093】
その後、ECU4は、ブロワファン20の駆動状態、車両1の車速、エンジン5の回転数、オーディオ機器の音量スイッチの設定位置などの複数の音量指標の情報を取得する(ステップS21)。
【0094】
そしてECU4は、各音量指標情報から各音量指標情報に対応した図6に示すようなマップからそれぞれの切り替え圧力を取得し(ステップS22)、各切り替え圧力のうち最大の切り替え圧力を求め、最大切り替え圧力[MPa]とする(ステップS23)。
【0095】
次に、ECU4は、冷媒圧センサ53から冷媒の圧力を取得し(ステップS15)、冷媒の圧力が最大切り替え圧力未満であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0096】
冷媒の圧力が最大切り替え圧力未満であると判定した場合、ECU4は、上述の第1実施形態と同様に、切替弁31及び33を切り替え(ステップS17)、コンプレッサ30を作動させ(ステップS18)、処理を終了する。
【0097】
一方、冷媒の圧力が最大切り替え圧力未満でないと判定した場合、ECU4は、上述の第1実施形態と同様に、タイマ72の計測時間が、切り替え待ち時間を超えているか否かを判定する(ステップS19)。
【0098】
ここで、タイマ72の計測時間が切り替え待ち時間を超えていると判断した場合には、ECU4は、上述の第1実施形態と同様に、切替弁31及び33を切り替え(ステップS17)、コンプレッサ30を作動させ(ステップS18)、処理を終了する。
【0099】
一方、タイマ72の計測時間が切り替え待ち時間を超えていないと判断した場合には、ECU4は、ステップS21に戻って複数の音量指標の情報の取得から処理を繰り返す。
【0100】
したがって、本第2実施形態は、ブロワファン20の駆動状態と、車両1の車速と、エンジン5の回転数と、オーディオ機器の音量調節スイッチの設定位置と、を車室内の音量の指標としている。このため、本実施形態は、車室内の音量を精度良く検知することができ、従来のものと比較して、乗員の操作に対する空調機能の応答性を向上させることができる。
【0101】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0102】
1 車両
2 車両用空調装置
3 空調ユニット
4 ECU
5 エンジン
20 ブロワファン
21 エバポレータ
23 ヒータコア
24 室内コンデンサ
25 ブロワファンモータ
30 コンプレッサ
31 切替弁
32 室外コンデンサ
33 切替弁
34 アキュームレータタンク
53 冷媒圧センサ
54 車速センサ
55 エンジン回転数センサ
56 音量スイッチ位置センサ
71 切替制御部
72 タイマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7