(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが吸着されるときに放熱する吸着材又は蓄熱材が収納され、かつ、前記吸着材又は蓄熱材との間で熱交換する熱媒体が流通する熱媒体流路を有する2つ以上の反応器であって、前記2つ以上の反応器のうちの少なくとも1つは、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが物理吸着により吸着されるときに放熱する物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器と、
前記2つ以上の反応器を接続し前記2つ以上の反応器間でアンモニアを流通させるアンモニア配管と、
前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の熱媒体流路に供給する温度が異なる2種類の熱媒体を切り換え可能な3方バルブであって、前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の熱媒体流路に一端が接続されている流通配管と、温度が高い熱媒体が一端側から供給される流路配管と、温度が低い熱媒体が一端側から供給される流路配管とに接続されている3方バルブと、
前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の吸着材にアンモニアが吸着されるときに、前記温度が低い熱媒体を供給するように前記3方バルブを制御し、前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の吸着材からアンモニアが脱離するときに、前記温度が高い熱媒体を供給するように前記3方バルブを制御する制御部とを備え、
前記2つ以上の反応器間に生じたアンモニア圧の差を利用してアンモニアを一方から他方に輸送することにより熱を輸送する熱輸送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の熱輸送装置では、氷点下での始動、及び低温から中温(80°C〜300°C程度)での蓄熱及び放熱が可能となる。しかしながら、排熱(蓄熱)温度よりも高温に昇温可能な化学蓄熱システムの構築が課題となっており、上記特許文献1に記載の熱輸送装置では、排熱源温度以上の温度への昇温は原理的に実現できない。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
【0006】
即ち、本発明は、昇温幅を大きくした、熱輸送性に優れた熱輸送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱輸送装置は、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが吸着されるときに放熱する吸着材又は蓄熱材が収納され、かつ、前記吸着材又は蓄熱材との間で熱交換する熱媒体が流通する熱媒体流路を有する2つ以上の反応器であって、前記2つ以上の反応器のうちの少なくとも1つは、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが物理吸着により吸着されるときに放熱する物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器と、前記2つ以上の反応器を接続し前記2つ以上の反応器間でアンモニアを流通させるアンモニア配管と、前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の熱媒体流路に供給する温度が異なる複数種類の熱媒体を切り換え可能な温度調整機構と、を備え、前記2つ以上の反応器間に生じたアンモニア圧の差を利用してアンモニアを一方から他方に輸送することにより熱を輸送する。
【0008】
本発明に係る熱輸送装置では、2つ以上の反応器間で、蒸気圧が高いアンモニア蒸気の輸送に伴い熱を輸送するので、アンモニア蒸気の配管内流動に伴う圧力損失が抑制され、その結果、熱輸送性が向上する。即ち、本発明の熱輸送装置によれば、一方の反応器に与えられた熱を他方の反応器に効率よく輸送できる。
【0009】
また、本発明の熱輸送装置では、温度調整機構により、前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の熱媒体流路に、温度が異なる複数種類の熱媒体を切り換えて供給し、物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の熱媒体流路の温度を高くするため、昇温幅を向上することができる。
【0010】
このように、本発明の熱輸送装置によれば、昇温幅を大きくした、熱輸送性に優れた熱輸送装置を提供することができる。
【0011】
本発明の熱輸送装置は、前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の吸着材にアンモニアが吸着されるときに、前記複数種類の熱媒体のうちの温度が低い熱媒体を供給するように前記温度調整機構を制御し、前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の吸着材からアンモニアが脱離するときに、前記複数種類の熱媒体のうちの温度が高い熱媒体を供給するように前記温度調整機構を制御する制御部を更に含むようにすることができる。このように、物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の吸着材からアンモニアが脱離するときに加熱することにより、アンモニア作動圧力を高圧化することで、他の反応器の昇温速度及び昇温幅を向上することが可能となる。
【0012】
本発明の熱輸送装置において、前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の熱媒体流路は、供給された熱媒体を凝縮し、凝縮された熱媒体を保持する熱媒体保持機構を備えるようにすることができる。これにより、物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器を、温度が低い熱媒体の温度以下に潜熱冷却することが可能となり、物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の作動アンモニア圧力を低下させることで、より低温の熱源でも、反応器の蓄熱を迅速に行うことができる。
【0013】
上記の熱媒体保持機構は、前記凝縮された熱媒体の表面張力を利用して前記熱媒体を保持するようにすることができる。
【0014】
上記の熱媒体保持機構は、重力を利用して前記凝縮された熱媒体を保持するようにすることができる。
【0015】
上記の温度調整機構は、前記複数種類の熱媒体のうちの温度が高い熱媒体として、低沸点冷媒を供給するようにすることができる。
【0016】
上記の温度調整機構は、前記低沸点冷媒として、メタノール、エタノール、または水を供給するようにすることができる。
【0017】
本発明の熱輸送装置は、前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の熱媒体流路に供給された前記低沸点冷媒を回収可能な凝縮器を更に含むようにすることができる。
【0018】
本発明の熱輸送装置は、前記低沸点冷媒を蒸発させる蒸発器を更に含み、前記温度調整機構は、前記蒸発器から供給された前記低沸点冷媒を、前記物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器の熱媒体流路に供給するようにすることができる。
【0019】
上記の温度調整機構は、前記複数種類の熱媒体のうちの温度が低い熱媒体として、空気を供給するようにすることができる。
【0020】
本発明の熱輸送装置において、前記アンモニア配管に弁が設けられ、該弁の開閉によりアンモニア圧の差を調節するようにすることができる。これにより、アンモニア圧の差をより効果的に保持できるので、熱輸送性をより向上させることができる。即ち、弁を閉じることによりアンモニア圧の差を長時間保持することができ、弁を開けることによりアンモニアを輸送し、蓄熱した熱を効率よく利用することができる。
【0021】
前記2つ以上の反応器は、前記吸着材又は蓄熱材が収納された2つ以上の反応室と、少なくとも前記反応室間に配置され、前記吸着材又は蓄熱材との間で熱交換する熱媒体が流通する熱媒体流路と、を含む。これにより、熱媒体と吸着材又は蓄熱材との間で効率よく熱交換を行うことができるので、反応室内壁と吸着材又は蓄熱材との接触面(伝熱面)における接触熱抵抗が改善される。
【0022】
ここで、2つ以上の反応器は、2つ以上の反応室と2つ以上の熱媒体流路とを有し、反応室と熱媒体流路とが交互に配置された構成であることがより好ましい。
【0023】
前記2つ以上の反応器のうち少なくとも1つは、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが配位反応により固定化されるときに放熱する化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された反応器である。これにより、化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された反応器における蓄熱密度をより向上させることができるので、熱輸送装置全体における蓄熱密度をより向上させることができる。
【0024】
また、物理吸着材と比較してアンモニアの固定化及び脱離に要する熱量が大きい性質を有する化学蓄熱材と、化学蓄熱材と比較してアンモニアの吸着及び脱離に要する熱量が小さい性質を有する物理吸着材と、を用いる。このため、アンモニアの吸着及び脱離に要する熱量の差を利用して、小さな熱入力で大きな熱出力を得ることができる。
【0025】
上記の熱輸送装置において、前記化学蓄熱材が金属ハロゲン化物である。これにより、化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された反応器における蓄熱密度をより向上させることができるので、熱輸送装置全体における蓄熱密度をより向上させることができる。
【0026】
上記の熱輸送装置において、前記金属ハロゲン化物が、アルカリ金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、アルカリ土類金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、及び遷移金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物からなる群から選択される少なくとも1種である。これにより、化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された反応器における蓄熱密度をより向上させることができるので、熱輸送装置全体における蓄熱密度をより向上させることができる。
【0027】
上記の熱輸送装置において、前記物理吸着材が、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、及び粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも1種である。これにより、物理吸着材を含む吸着材が収納された反応器において、アンモニアの吸着及び脱離に要する熱量をより小さくすることができるので、熱輸送装置全体における熱輸送の制御性をより向上させることができる。
【0028】
上記の熱輸送装置において、前記アンモニア配管に、更に、圧力調整手段が設けられている。これにより、アンモニア圧の差をより効果的に生じさせることができるので、熱輸送性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、昇温幅を大きくした、熱輸送性に優れた熱輸送装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態では、NH3蓄積・輸送デバイスに本発明の熱輸送装置を適用した場合を例に説明する。
【0032】
(第1実施形態)
本発明のNH3蓄積・輸送デバイスの第1実施形態を、
図1〜
図12を参照して説明する。本実施形態では、吸着器としての第1の熱交換型反応器の物理吸着材として活性炭を、蓄熱反応器としての第2の熱交換型反応器の化学蓄熱材として塩化マグネシウム(MgCl
2)を用い、第1の熱交換型反応器の熱媒体流路に供給される熱媒体として水蒸気(水)及び外気を用いたNH3蓄積・輸送デバイスを一例に詳細に説明する。
【0033】
本実施形態のNH3蓄積・輸送デバイス100は、
図1に示すように、蒸発器10と、物理吸着材を有する第1の熱交換型反応器20と、化学蓄熱材を有する第2の熱交換型反応器30と、第1の熱交換型反応器20から排出された流体(水蒸気)を凝縮する凝縮器40と、凝縮器40から供給された水を貯蔵する水タンク41と、を備えている。
【0034】
水蒸気とは、気体の状態になっている水、及びこれが空気中で凝結して細かい水滴となったものを包含する意味である。
【0035】
蒸発器10は、排熱源からの排熱を利用して、水を気化し、気化して生成された流体である水蒸気を供給可能に第1の熱交換型反応器20と接続されている。具体的には、蒸発器10には、3方バルブV1に一端が接続された流通配管11の他端が接続されており、蒸発器10は、流通配管11及び3方バルブV1に一端が接続された流通配管12を介して第1の熱交換型反応器20と連通されている。また、蒸発器10は、第2の熱交換型反応器30と接続されている。具体的には、蒸発器10は、バルブV5を有する流通配管14を介して第2の熱交換型反応器30と連通されている。
【0036】
3方バルブV1は、温度調整機構として、蒸発器10から供給される水蒸気、及び流通配管15から供給される外気を切り換えて、第1の熱交換型反応器20へ供給する。
【0037】
凝縮器40は、第1の熱交換型反応器20からの水蒸気の供給が可能に接続されており、第1の熱交換型反応器20から供給された水蒸気を凝縮する。具体的には、凝縮器40には、バルブV4を有する流通配管45の一端が接続されている。凝縮器40は、流通配管45を介して第1の熱交換型反応器20と連通されており、第1の熱交換型反応器20から流通配管45を通じて排出された水蒸気が凝縮器40に回収されるようになっている。
【0038】
また、凝縮器40には、流通配管43の一端が接続されており、凝縮器40は、流通配管43によって水タンク41と連通されている。水タンク41は、ポンプPを有する流通配管44の一端が接続されており、水タンク41は、流通配管44によって蒸発器10と連通されている。凝縮器40で水蒸気が凝縮されて液化した水は、水タンク41に貯蔵され、水タンク41に貯蔵された水は、ポンプPを駆動させることで流通配管44を通じて蒸発器10に供給される。
【0039】
第1の熱交換型反応器20は、バルブV4を有するアンモニア配管42を介して、第2の熱交換型反応器30と接続されている。
【0040】
図2は、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30の構成を模式的に示した図である。また、
図3は、
図2における第1の熱交換型反応器20を模式的に示した図である。
【0041】
図3に示すように、第1の熱交換型反応器20は、筐体22と、筐体22に設けられた複数の熱媒体流路26と、筐体22に設けられた複数の反応室24と、各反応室24内に収納され、吸着材を含む積層体25と、を有して構成されている。
【0042】
筐体22内では、反応室24と熱媒体流路26とが交互に配置され、かつ、2つの熱媒体流路26が最も外側となるように配置されている。反応室24と熱媒体流路26とは隔壁を隔てて互いに分離されている。これらの構成により、外部から供給される熱媒体M1と反応室24内の吸着材成形体との間で熱交換を行えるようになっている。この実施形態では、反応室24、熱媒体流路26は、それぞれ扁平矩形状の開口端を有する角柱状空間とされている。この実施形態では、第1の熱交換型反応器20は、反応室24の開口方向(アンモニアの流れ方向)と熱媒体流路26の開口方向(熱媒体の流れ方向)とが側面視で直交する、直交流型の熱交換型反応器として構成されている。
【0043】
本発明における反応器は、第1の熱交換型反応器20の例のように、前記吸着材が収納された反応室を2つ以上有し、前記熱媒体流路が少なくとも前記反応室間に配置された構成であることが好ましく、2つ以上の反応室と2つ以上の熱媒体流路とを有し、反応室と熱媒体流路とが交互に配置された構成であることがより好ましい。
【0044】
第1の熱交換型反応器20における反応室24や熱媒体流路26の個数には特に限定はなく、第1の熱交換型反応器20に対し入出力する熱量や、吸着材成形体の伝熱面の面積(反応室内壁との接触面積)を考慮して適宜設定できる。
【0045】
また、筐体22の材質としては、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、等)等の熱伝導性の高く、アンモニア耐食性のある材質が好適である。
【0046】
図3に示すように、積層体25は、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが吸着されるときに放熱する2枚の吸着材成形体(吸着材成形体21A及び吸着材成形体21B;以下、これらをまとめて「吸着材成形体21A及び21B」ともいう)と、吸着材成形体21A及び21Bに挟持された支持体23と、から構成されている。
図3では、積層体25の構成を見やすくするために、吸着材成形体21Aと、支持体23と、吸着材成形体21Bと、を分離して図示している。
【0047】
但し、本発明における積層体の構成としては、このような吸着材成形体/支持体/吸着材成形体の3層構成を少なくとも有する構成であればよく、3層構成以外にも、例えば、吸着材成形体と支持体とが交互に配置され、かつ、最外層が吸着材成形体であるその他の構成(例えば、吸着材成形体/支持体/吸着材成形体/支持体/吸着材成形体の5層構成、等)であってもよい。
【0048】
吸着材成形体21A及び21Bは、それぞれ、吸熱反応によりアンモニアが脱離するときに蓄熱し、発熱反応によってアンモニアが吸着されるときに放熱する吸着材を含む。
【0049】
なお、本発明において反応器に収納される吸着材としては、吸着材成形体(例えば、吸着材成形体21A及び21B)に限定されるものではなく粉末の吸着材を用いることもできるが、反応器における熱交換の効率をより向上させる観点からは、吸着材成形体であることが好ましい。
【0050】
第1の熱交換型反応器20の吸着材は、物理吸着によりアンモニアを吸着する物理吸着材である。一方、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材は、配位反応によりアンモニアを吸着する化学蓄熱材である。なお、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材は、物理吸着によりアンモニアを吸着する物理吸着材であってもよい。
【0051】
本発明における吸着材の好ましい形態の詳細については後述する。
【0052】
支持体23としては、支持体23の面に沿った方向(例えば、
図3中の白抜き矢印の方向)にアンモニアガスを流通させることができる支持体を用いることが好ましい。これにより、2枚の吸着材成形体間にアンモニア蒸気の流路を確保することができるので、アンモニア配管42から供給されたアンモニアガス(NH
3)を、吸着材成形体21A及び21Bの広い範囲に供給できる。更に、吸着材成形体21A及び21Bの広い範囲に吸着したアンモニアを支持体23を介してアンモニア配管42に向けて放出することができる。
【0053】
このような支持体23として、具体的には、波型プレート又は多孔体プレートを用いることが好ましい。
【0054】
支持体23として多孔体プレートを用いた場合には、多孔体プレート内をアンモニアが通過する。
【0055】
支持体23として波型プレートを用いた場合には、波型プレートとの吸着材成形体との間に生じる隙間をアンモニアガスが通過する。
【0056】
図4は、特に、支持体23として波型プレートを用いた場合における第1の熱交換型反応器20及び第1の熱交換型反応器20内に収納される積層体25を概念的に示した図である。支持体23である波型プレート以外の構成は
図2と同様である。
【0057】
支持体23として波型プレートを用いた場合は、積層体25における波型プレートと吸着材成形体21A及び21Bとの間に生じる隙間をアンモニアが通過する(
図4中の白抜き矢印の方向)。
【0058】
また、
図2に示すように、第1の熱交換型反応器20とアンモニア配管42とは、第1の熱交換型反応器20中の複数の反応室24とアンモニア配管42とを気密状態で連通するヘッダ部材28(例えば、マニホールド等)を介して接続されている。これにより、複数の反応室24とアンモニア配管42との間で気密状態でアンモニアを流通できるようになっている。
【0059】
なお、
図2では、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30の構成を見やすくするために、前記ヘッダ部材28、下記ヘッダ部材29A、下記ヘッダ部材29B、下記ヘッダ部材38、下記ヘッダ部材39A、下記ヘッダ部材39B、下記流通配管12、下記流通配管45、下記流通配管14、及び下記熱媒体配管37Bを、二点鎖線で表している(後述の
図14も同様である)。
【0060】
また、
図2に示すように、第1の熱交換型反応器20は、ヘッダ部材29A(例えば、マニホールド等)を介して流通配管12に接続されるとともに、ヘッダ部材29B(例えば、マニホールド等)を介して流通配管45に接続されている。第1の熱交換型反応器20内の複数の熱媒体流路26は、該ヘッダ部材29Aにより気密状態で流通配管12に連通されるとともに、該ヘッダ部材29Bにより気密状態で流通配管45に連通されている。これにより、流通配管12及び流通配管45を通じ、第1の熱交換型反応器20内の熱媒体流路26と、蒸発器10及び凝縮器40との間で熱媒体M1を流通できるようになっている。
【0061】
熱媒体M1としては、エタノール、メタノール等のアルコール、水、油類、これらの混合物等、熱媒体として通常用いられる流体を用いることができ、エタノール、メタノール、水などの低沸点冷媒を用いることが好ましい。本実施の形態では、熱媒体M1として、水を用いる場合を例に説明する。
【0062】
図2に示すように、アンモニア配管42にはバルブV4(弁)が設けられており、バルブV4の開閉によりアンモニア圧の差を調節できるようになっている。これにより、第1の熱交換型反応器20側のアンモニア圧と第2の熱交換型反応器30側のアンモニア圧との差をより効果的に保持できる。即ち、バルブV4を閉じた状態を維持することによりアンモニア圧の差を長時間保持することができ、その後バルブV4を開くことにより一方の熱交換型反応器側から他方の熱交換型反応器側にアンモニアを輸送できる。このようにして、一方の熱交換型反応器側に蓄熱された熱を、他方の熱交換型反応器側で効率よく利用することができる。
【0063】
図2に示すように、第2の熱交換型反応器30も第1の熱交換型反応器20と同様に、筐体32に、複数の反応室34と、各反応室34内に収納された積層体35と、複数の熱媒体流路36と、が設けられた熱交換型反応器となっている。積層体35の構成及び第2の熱交換型反応器30内の構成については、それぞれ、積層体25の構成及び第1の熱交換型反応器20内の構成と同様である。
【0064】
また、第2の熱交換型反応器30は、ヘッダ部材39Aを介して流通配管14に接続されるとともに、ヘッダ部材39Bを介して熱媒体配管37Bに接続されている。第1の熱交換型反応器30内の複数の熱媒体流路36は、該ヘッダ部材39Aにより気密状態で流通配管14に連通されるとともに、該ヘッダ部材39Bにより気密状態で熱媒体配管37Bに連通されている。これにより、流通配管14及び熱媒体配管37Bを通じ、第2の熱交換型反応器30内の熱媒体流路36とNH3蓄積・輸送デバイス100の外部(以下、単に「外部」や「系外」ともいう)との間で熱媒体M2を流通できるようになっている。
【0065】
熱媒体M2としては、エタノール等のアルコール、水、油類、これらの混合物等、熱媒体として通常用いられる流体を用いることができる。本実施の形態では、熱媒体M2として、水を用いる場合を例に説明する。また、熱媒体M1の流通経路と熱媒体M2の流通経路とは、互いに独立している。
【0066】
また、NH3蓄積・輸送デバイス100には、装置内にアンモニアを供給するためのアンモニア供給手段(不図示)や、装置内を排気するための排気手段(不図示)、装置内のアンモニア圧を測定するための圧力測定手段(不図示)等が接続されていてもよい。
【0067】
第1の熱交換型反応器20の熱媒体流路26は、
図5(A)に示すように、蒸発器10から供給された熱媒体M1を凝縮し、液保持させるための液保持機構26Aを有している。液保持機構26Aとして、例えば、凝縮液の表面張力を利用した液保持機構(ディンプル/多孔体)を用いる。なお、
図5(B)に示すように、液保持機構26Aとして、重力を利用した液保持機構(ポケット)を用いてもよい。
【0068】
次に、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30との間で行われる熱輸送の例について説明する。
【0069】
(放熱モード)
まず、第1の熱交換型反応器20に供給された熱を第2の熱交換型反応器30に輸送し、輸送された熱を第2の熱交換型反応器30から外部に放熱する熱利用の一例について説明する。この一例では、第1の熱交換型反応器20を熱入力側の反応器とし、第2の熱交換型反応器30を熱出力側の反応器としている。
【0070】
この一例では、まず初期状態として、アンモニアを第1の熱交換型反応器20側に集め、第1の熱交換型反応器20における吸着材にアンモニアが吸着された状態にし、その後バルブV4を閉じる。初期状態とする具体的な方法の例は、後述する「再生」の方法と同様である。
【0071】
そして、
図6に示すように、第1の熱交換型反応器20に、3方バルブV1により、蒸発器10から供給された高温の熱媒体M1を流通させることにより、熱を供給する。
【0072】
第2の熱交換型反応器30には、外部の熱利用対象に向けて熱を放出するための熱媒体M2を流通させる。
【0073】
この状態では、第1の熱交換型反応器20側のアンモニア圧が第2の熱交換型反応器30側のアンモニア圧よりも高くなっている。バルブV4を閉じた状態を維持することで、第1の熱交換型反応器20側と第2の熱交換型反応器30側とのアンモニア圧の差を長時間保持することができる。
【0074】
次に、バルブV4を開くと、アンモニア圧が高い第1の熱交換型反応器20から、相対的にアンモニア圧が低い第2の熱交換型反応器30に向けてアンモニアの輸送が行われる。このとき、第1の熱交換型反応器20では、吸熱反応によって第1の熱交換型反応器20中の吸着材からアンモニアが脱離する。この吸熱反応の維持は、第1の熱交換型反応器20への上記高温の熱媒体M1の流通を維持することにより(即ち、第1の熱交換型反応器20への熱の供給を維持することにより)行われる。
【0075】
また、第1の熱交換型反応器20の熱媒体流路26では、
図7に示すように、供給された熱媒体M1が凝縮され、液保持機構26Aによって保持される。
【0076】
上記アンモニアの輸送により第2の熱交換型反応器30に到達したアンモニアは、第2の熱交換型反応器30における反応室34内の蓄熱材に、発熱反応により吸着される。この発熱反応により熱媒体M2が加熱され、加熱された熱媒体M2が外部の加熱対象に向けて放熱される。
【0077】
以上のようにして、第1の熱交換型反応器20から第2の熱交換型反応器30へのアンモニアの輸送に伴い、第1の熱交換型反応器20に供給された熱が、第2の熱交換型反応器30側に輸送され、第2の熱交換型反応器30から放熱される。
【0078】
(蓄熱モード)
上記の放熱が継続されて第1の熱交換型反応器20内のアンモニアが減少した場合には、系内のアンモニアを再び第1の熱交換型反応器20側に集め、第1の熱交換型反応器20における吸着材成形体21A及び21Bにアンモニアを吸着させることにより、初期状態に再生させる。
【0079】
再生の具体的な方法の例としては、バルブV4を開いた状態で、
図8に示すように、3方バルブV1により、第1の熱交換型反応器20へ外気を供給し、第2の熱交換型反応器30における熱媒体流路36に高温(例えば、160℃)に維持された熱媒体M2を流通させる。
【0080】
これにより、吸熱反応によって第2の熱交換型反応器30からアンモニアが脱離するとともに、第2の熱交換型反応器30側から第1の熱交換型反応器20側にアンモニアが輸送される。
【0081】
第1の熱交換型反応器20に到達したアンモニアは、第1の熱交換型反応器20における反応室24内の吸着材成形体21A及び21Bに発熱反応により吸着される。このとき、第1の熱交換型反応器20の熱媒体流路26では、
図9に示すように、液保持機構26Aによって保持された、凝縮された熱媒体M1が、外気によって冷却され、潜熱冷却によって、第1の熱交換型反応器20が外気温以下に冷却される。
【0082】
この発熱反応の維持は、例えば、第1の熱交換型反応器20への外気の供給を維持することにより行われる。
【0083】
NH3蓄積・輸送デバイス100では、上記の放熱モード及び蓄熱モードを繰り返し行うことができる。
【0084】
以上の実施形態の例で説明したように、本発明のNH3蓄積・輸送デバイス100は、2つ以上の反応器間に生じたアンモニア圧の差を利用してアンモニアを一方から他方に輸送することにより熱を輸送する装置である。
【0085】
図10は、第1の熱交換型反応器20の物理吸着材(例えば、活性炭)における温度依存性を示す、アンモニア(NH
3)圧力とアンモニア吸着量との関係を表すグラフである。上記
図10において、A点は、蓄熱モードでのアンモニア再生に必要な最大圧力(250kPa)を示し、B点は、放熱モードでのアンモニア供給可能な最低圧力900kPaを示す。
【0086】
図11は、第2の熱交換型反応器30の化学蓄熱材(例えば、MgCl
2)における、アンモニア(NH
3)圧力と平衡温度との関係を表すグラフである。
【0087】
外気温度よりも高温の、蒸発器10から供給される熱媒体M1(水蒸気)により、第1の熱交換型反応器20を昇温可能である。蒸気加熱であるため、顕熱加熱に比べて急速な加熱が可能となる。また、第1の熱交換型反応器20は、NH3相対圧力で作動圧力が決まり、第2の熱交換型反応器30は、NH3の作動圧力で昇温上限温度が決まる。そのため、第1の熱交換型反応器20を高温化することで作動圧力が上がり(上記
図10参照)、蓄熱反応器を高温化することが可能となる(上記
図11参照)。
【0088】
このように、第2の熱交換型反応器30の放熱時(第1の熱交換型反応器20から第2の熱交換型反応器30ヘアンモニア供給時)に、第1の熱交換型反応器20を、蒸発器10により生成した高温蒸気により加熱し、アンモニア作動圧力を高圧化することで、第2の熱交換型反応器の昇温速度及び昇温幅を向上することが可能となる。
【0089】
また、蒸気加熱時に生じた凝縮液を第1の熱交換型反応器20内部の熱媒体流路26の液保持機構26Aに液保持することが可能であるため、第2の熱交換型反応器の蓄熱時に第2の熱交換型反応器20の熱媒体流路26へ外気を供給することで外気温以下に潜熱冷却することが可能となる。第2の熱交換型反応器30の再生温度はアンモニアの作動圧力を低下することで低温化することが可能であり、潜熱冷却により外気温以下に冷却された第1の熱交換型反応器20により、より低温での蓄熱が可能となる。また、より低温の熱源でも迅速な第2の熱交換型反応器30の蓄熱が可能となる。
【0090】
以上により、蓄熱温度よりも高温に昇温可能なNH3蓄積・輸送デバイスを構築することが可能となる。
【0091】
(吸着材、蓄熱材)
次に、本発明における第1、第2の熱交換型反応器に収納される吸着材、蓄熱材の好ましい範囲について説明する。
【0092】
第2の熱交換型反応器に収納される蓄熱材は、配位反応によりアンモニアを固定化する化学蓄熱材含むことが好ましい。
【0093】
前記化学蓄熱材を含む蓄熱材を用いることで、第2の熱交換型反応器における蓄熱密度をより高くすることができるので、熱輸送装置全体としての蓄熱密度をより高くすることができる。また、化学蓄熱材は物理吸着材と比較して種類による蓄熱温度の差が大きいことから、化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された第2の熱交換型反応器を用いることで、化学蓄熱材の種類の選定により熱輸送装置の作動温度や作動アンモニア圧等の動作条件の選択の幅を広げることができる。従って、熱利用の対象に合わせ、作動アンモニア圧や作動温度を広い範囲から選定できる。
【0094】
一方、第1の熱交換型反応器では、物理吸着材を含む吸着材を用いることで、反応器において、アンモニアの吸着及び脱離に要する熱量をより小さくすることができるので、熱輸送装置全体としての熱輸送の制御性がより向上する。
【0095】
このように、第1の熱交換型反応器における吸着材及び第2の熱交換型反応器における蓄熱材の組み合わせの選択により、反応器間での反応熱量の差により、小さな熱入力で大きな熱出力を得ることができる。
【0096】
物理吸着材を含む第1の熱交換型反応器と、化学吸着材を含む第2の熱交換型反応器とを組み合わせた構成では、装置全体としては、化学蓄熱材を含む第2の熱交換型反応器によってより高い蓄熱密度が得られるとともに、物理吸着材を含む第1の熱交換型反応器によってアンモニアの吸着及び脱離の制御をより容易とすることができる。
【0097】
更に、上記の組み合わせた構成では、物理吸着材と比較してアンモニアの吸着及び脱離に要する熱量が大きい性質を有する化学蓄熱材と、化学蓄熱材と比較してアンモニアの吸着及び脱離に要する熱量が小さい性質を有する物理吸着材と、を用いる。このため、反応器間での反応熱量の差を利用して、物理吸着材を含む第1の熱交換型反応器側に小さい熱量の熱を供給する場合においても、化学蓄熱材を含む第2の熱交換型反応器側でより大きな熱量を放熱することができる。
【0098】
例えば、アンモニア1molの固定化及び脱離に要する熱量は、化学蓄熱材(例えば、LiCl、MgCl
2、CaCl
2、SrCl
2、BaCl
2、MnCl
2、CoCl
2、NiCl
2、等)では40kJ/mol〜60kJ/molであるのに対し、物理吸着材(例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物、等)では、20kJ/mol〜30kJ/molである。
【0099】
−化学蓄熱材−
次に、前記化学蓄熱材の好ましい形態について更に詳細に説明する。
【0100】
前記化学蓄熱材としては、反応器における蓄熱密度をより高くする観点からは、金属ハロゲン化物が好ましく、アルカリ金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、アルカリ土類金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、又は遷移金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物がより好ましく、LiCl、MgCl
2、CaCl
2、SrCl
2、BaCl
2、MnCl
2、CoCl
2、又はNiCl
2が特に好ましい。
【0101】
前記金属ハロゲン化物は、一種単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
【0102】
本発明における蓄熱材が前記化学蓄熱材を含む場合、該化学蓄熱材は蓄熱材中に、一種含まれていてもよいし二種以上含まれていてもよい。
【0103】
本発明における蓄熱材が前記化学蓄熱材を含む場合、該蓄熱材は前記化学蓄熱材以外のその他の成分を含んでいてもよい。
【0104】
その他の成分としては、アルミナ、シリカ等のバインダー成分、カーボンファイバー等の熱伝導補助材、等が挙げられる。
【0105】
但し、本発明における蓄熱材が前記化学蓄熱材を含む場合において、蓄熱密度をより向上させる観点からは、蓄熱材中における前記化学蓄熱材の含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0106】
また、化学蓄熱材を含む蓄熱材を蓄熱材成形体に成形する場合、その成形方法については特に限定はなく、例えば、化学蓄熱材(及び必要に応じバインダー等のその他の成分)を含む蓄熱材(又は該蓄熱材を含むスラリー)を、加圧成形、押し出し成形、等の公知の成形手段により成形する方法が挙げられる。
【0107】
前記成形の圧力としては、例えば、20MPa〜100MPaが挙げられ、20MPa〜40MPaが好ましい。
【0108】
−物理吸着材−
次に、前記物理吸着材の好ましい形態について更に詳しく説明する。
【0109】
前記物理吸着材としては、多孔体を用いることができる。
【0110】
前記多孔体としては、物理吸着によるアンモニアの吸着及び脱離の反応性をより向上させる観点からは、10nm以下の細孔を持つ多孔体が好ましい。
【0111】
前記細孔のサイズの下限としては、製造適性等の観点から、0.5nmが好ましい。
【0112】
前記多孔体としては、同様の観点より、平均1次粒子径50μm以下の1次粒子が凝集して得られた1次粒子凝集体である多孔体が好ましい。
【0113】
前記平均1次粒子径の下限としては、製造適性等の観点から、1μmが好ましい。
【0114】
前記多孔体の具体例としては、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等が挙げられる。
【0115】
前記活性炭としては、BET法による比表面積が800m
2/g以上2500m
2/g以下(より好ましくは1800m
2/g以上2500m
2/g以下)である活性炭が好ましい。
【0116】
前記粘土鉱物としては、非架橋の粘土鉱物であっても、架橋された粘土鉱物(架橋粘土鉱物)であってもよい。前記粘土鉱物としてはセピオライト等が挙げられる。
【0117】
本発明における吸着材が物理吸着材(好ましくは前記多孔体)を含む場合、該吸着材は、前記物理吸着材(好ましくは前記多孔体)を一種単独で含んでいてもよいし二種以上を含んでいてもよい。
【0118】
本発明においては、作動アンモニア圧や作動温度に合わせて、物理吸着材(好ましくは前記多孔体)の種類を適宜選定することができる。
【0119】
物理吸着によるアンモニアの吸着及び脱離の反応性をより向上させる観点からは、前記物理吸着材は活性炭を少なくとも含むことが好ましい。
【0120】
本発明における吸着材が物理吸着材を含む場合において、前記吸着材中における物理吸着材の含有量は、アンモニアの吸着及び脱離の反応性をより高く維持する観点より、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。
【0121】
また、本発明における物理吸着材を含む吸着材を成形体(吸着材成形体)として用いる場合、該吸着材は、前記物理吸着材に加えてバインダーを含むことが好ましい。前記吸着材がバインダーを含むことにより、前記吸着材成形体の形状がより効果的に維持されるので、物理吸着によるアンモニアの吸着及び脱離の反応性がより向上する。
【0122】
前記バインダーとしては、水溶性バインダーの少なくとも1種であることが好ましい。
【0123】
前記水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、トリメチルセルロース、等が挙げられる。
【0124】
本発明における吸着材が物理吸着材及びバインダーを含む場合、該吸着材中におけるバインダーの含有量は、前記吸着材成形体の形状をより効果的に維持する観点より、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましい。
【0125】
本発明における吸着材が物理吸着材及びバインダーを含む場合、必要に応じ、前記物理吸着材及び前記バインダー以外のその他の成分を含んでいてもよい。
【0126】
その他の成分としては、カーボンファイバー等の熱伝導補助材、等が挙げられる。
【0127】
また、物理吸着材を含む吸着材を吸着材成形体に成形する場合、その成形方法については特に限定はなく、例えば、物理吸着材(及び必要に応じバインダー等のその他の成分)を含む吸着材(又は該吸着材を含むスラリー)を、加圧成形、押し出し成形、等の公知の成形手段により成形する方法が挙げられる。
【0128】
前記成形の圧力としては、例えば、20MPa〜100MPaが挙げられ、20MPa〜40MPaが好ましい。
【0129】
(反応室の好ましい形態)
次に、第1、第2の熱交換型反応器における反応室(例えば、前記第1の熱交換型反応器20における反応室24、及び、前記第2の熱交換型反応器30における反応室34)の好ましい形態について、前記第1の熱交換型反応器20における反応室24を例として説明する。
【0130】
前記第1の熱交換型反応器20における反応室24は、内壁が前記吸着材成形体21A及び21Bとの接触部分を有していることが好ましい。より好ましくは、反応室24の内壁と、前記吸着材成形体21A及び21Bにおける一方の主面と、が接触している形態(即ち、吸着材成形体が、反応室の内壁と、支持体表面と、によって挟持されている形態)である。
【0131】
即ち、吸着材成形体21A及び21Bが、それぞれ、反応室24の内壁及び支持体23の表面との接触を保った状態となっていることが好ましい。
【0132】
反応室24の内壁が前記吸着材成形体21A及び21Bとの接触部分を有する構成によれば、反応室24の内壁を通じ、第1の熱交換型反応器と吸着材成形体との間での熱交換をより効果的に行うことができる。また、一般に、吸着材成形体を繰り返し使用すると、アンモニアの吸着及び脱離により吸着材成形体が体積膨張収縮を繰り返し、吸着材成形体に割れ(クラックを含む)や微粉化が生じる場合があるが、上記構成によれば、この繰り返し使用時における吸着材成形体の割れ(クラックを含む)や微粉化をより効果的に抑制できる。
【0133】
前記第2の熱交換型反応器30における反応室34の好ましい形態についても、前記第1の熱交換型反応器20における反応室24と同様である。
【0134】
制御装置90は、NH3蓄積・輸送デバイス100の全制御を担う制御部であり、3方バルブV1、バルブV3〜V5、ポンプP、及び外部熱源などと電気的に接続されており、3方バルブ、バルブやポンプ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
【0135】
次に、本実施形態のNH3蓄積・輸送デバイスを制御する制御部である制御装置90による制御ルーチンのうち、第1の熱交換型反応器20に水蒸気を供給して第2の熱交換型反応器30から放熱した後に蓄熱する放熱蓄熱サイクル制御ルーチンを中心に
図12を参照して説明する。
【0136】
本実施形態のNH3蓄積・輸送デバイスの起動スイッチのオンにより制御装置90の電源がオンされると、システムが起動され、第2の熱交換型反応器30からの放熱が要求されると、放熱蓄熱サイクル制御ルーチンが実行される。
【0137】
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ100において、流通配管45に取り付けられたバルブV3を開き、ポンプPの稼動を開始させる。
【0138】
そして、ステップ102において、蒸発器10に接続されている流通配管11を、第1の熱交換型反応器20に接続されている流通配管12と連通させるように、3方バルブV1を切り換えて、第1の熱交換型反応器20の加熱を開始する。
【0139】
そして、ステップ104において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV4を開き、第1の熱交換型反応器20から、第2の熱交換型反応器30へアンモニアを輸送させる。このとき、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に、アンモニアが吸着され、生じた吸着熱が、熱媒体M2を介して放熱される。
【0140】
次のステップ106において、ステップ100へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q
1が経過していないと判定されたときは、第1の熱交換型反応器20の吸着材がアンモニアを脱離できる状態にあるため、ステップ100〜104を継続する。一方、時間Q
1が経過したと判定されたときには、蓄熱モードに切り換えるため、ステップ108に移行する。
【0141】
ステップ108において、流通配管45に取り付けられたバルブV3を閉じ、流通配管14に取り付けられたバルブV5を開き、第2の熱交換型反応器30の加熱を開始する。
【0142】
そして、ステップ110において、外気を供給する流通配管15を、第1の熱交換型反応器20に接続されている流通配管12と連通させるように、3方バルブV1を切り換えて、第1の熱交換型反応器20の冷却を開始する。これにより、第2の熱交換型反応器30から、第1の熱交換型反応器20へアンモニアを輸送させる。このとき、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材から、アンモニアが脱離され、熱媒体M2の熱が蓄熱される。
【0143】
次のステップ112において、ステップ108へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q
2が経過していないと判定されたときは、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に吸着したアンモニアをさらに脱離させて蓄熱材を再生するため、ステップ108、110を継続する。一方、時間Q
2が経過したと判定されたときには、次のステップ114に移行して、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV4及び流通配管14に取り付けられたバルブV3を閉じ、ポンプPの稼働を停止させて、本ルーチンを終了する。これにより、第1の熱交換型反応器20と第2の熱交換型反応器30との圧力差が維持される。
【0144】
以上説明したように、第1実施形態のNH3蓄積・輸送デバイスによれば、物理吸着材を含む吸着材が収納された第1の熱交換型反応器の吸着材からアンモニアが脱離するときに、蒸発器からの水蒸気を供給して加熱することにより、アンモニア作動圧力を高圧化することで、第2の熱交換型反応器の昇温速度及び昇温幅を向上することが可能となる。
【0145】
(第2実施形態)
本発明のNH3蓄積・輸送デバイスの第2実施形態について
図13を参照して説明する。本実施形態は、蒸発器から第1の熱交換型反応器に供給された水蒸気が回収されずに排気されるシステム構成となっている。
【0146】
なお、NH3蓄積・輸送デバイスの第2実施形態において、上記の第1実施形態と同様の構成要素となる部分については、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0147】
本実施形態のNH3蓄積・輸送デバイス200は、
図13に示すように、蒸発器10と、物理吸着材を有する第1の熱交換型反応器20と、化学蓄熱材を有する第2の熱交換型反応器30と、凝縮器40から供給された水を貯蔵する水タンク41と、を備えている。
【0148】
第1の熱交換型反応器20の熱媒体流路26から排出された水蒸気は、排気されるようになっている。
【0149】
なお、第2実施形態に係るNH3蓄積・輸送デバイスの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0150】
以上、本発明の実施形態に係るNH3蓄積・輸送デバイスについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0151】
例えば、前記アンモニア配管に、更に、圧力調節機構が設けられていてもよい。
【0152】
図14は、本発明の別の実施形態に係る第1の熱交換型反応器20、第2の熱交換型反応器30、及びアンモニア配管42を模式的に示した図である。
【0153】
図14に示すように、アンモニア配管42に、圧力調整手段320が設けられている。その他の構成については前述のNH3蓄積・輸送デバイス100と同様である。
【0154】
圧力調整手段320としては、外力により第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30との間のアンモニア圧の差を更に大きくする機能を有する手段を用いることができ、具体的には、圧送ポンプや圧縮機(コンプレッサー等)等、公知の手段を用いることができる。
【0155】
このように、バルブV4に加え、補助的に圧力調整手段320を設け、この圧力調整手段320を作動させることにより、アンモニアの輸送(即ち、熱の輸送)をより効果的に行うことができる。
【0156】
なお、
図14では、圧力調整手段320がバルブV4に対し第1の熱交換型反応器20側に設けられているが、圧力調整手段はアンモニア配管の少なくとも1箇所に設けられていれば特に制限はない。例えば、圧力調整手段320はバルブV4に対し第2の熱交換型反応器30側に設けられていてもよい。
【0157】
また、本発明に係る熱輸送装置を、NH3蓄積・輸送デバイスに適用した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、NH3蓄積・輸送デバイス以外の熱輸送装置に適用してもよい。
【0158】
また、上記実施形態に係るNH3蓄積・輸送デバイス100、200では、2つの反応器のみ(第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30)をアンモニア配管42で接続した構成となっているが、NH3蓄積・輸送デバイス100、200は、その他の反応器を備えていてもよい。即ち、第1の熱交換型反応器20には、更に、第2の熱交換型反応器30以外のその他の反応器の少なくとも1つがアンモニア配管によって接続されていてもよい。この際、第1の熱交換型反応器20と2つ以上の反応器とが、分岐を有する1つのアンモニア配管によって接続されていてもよいし、第1の熱交換型反応器20と2つ以上の反応器とが、分岐を有しない2つ以上のアンモニア配管によってそれぞれ独立に接続されていてもよい。また、第1の熱交換型反応器20と3つ以上の反応器とが、分岐を有するアンモニア配管1つ以上と、分岐を有しないアンモニア配管1つ以上と、によって接続されていてもよい。
【0159】
その他の反応器としては、例えば、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30と同様に、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが吸着されるときに放熱する吸着材又は蓄熱材が収納された反応器を用いることができる。
【0160】
また、上記実施形態に係るNH3蓄積・輸送デバイス100、200では、各熱交換型反応器とアンモニア配管とがヘッダ部材を介して接続されているが、各熱交換型反応器とアンモニア配管とがヘッダ部材を介さずに気密状態で直接接続されていてもよい。また、ヘッダ部材と一体化された熱交換型反応器を用い、この熱交換型反応器とアンモニア配管とを気密状態で接続してもよい。
【0161】
また、上記実施形態に係るNH3蓄積・輸送デバイス100、200では、アンモニア配管42にバルブV4(弁)が設けられているが、このバルブV4は省略されていてもよい。バルブV4が省略されている場合でも、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30の少なくとも一方に熱を供給して第1の熱交換型反応器20側と第2の熱交換型反応器30側とでアンモニア圧の差を生じさせることができ、このアンモニア圧の差によりアンモニア及び熱の輸送を行うことができる。