特許第6372130号(P6372130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000002
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000003
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000004
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000005
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000006
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000007
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000008
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000009
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000010
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000011
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000012
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000013
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000014
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000015
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000016
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000017
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000018
  • 特許6372130-マイクロ流路熱交換器 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372130
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】マイクロ流路熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 9/00 20060101AFI20180806BHJP
   F28F 3/04 20060101ALI20180806BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   F28D9/00
   F28F3/04 A
   F28F3/08 301Z
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-68850(P2014-68850)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190705(P2015-190705A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年9月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】王 凱建
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0075054(US,A1)
【文献】 特開昭63−135786(JP,A)
【文献】 特開平09−243279(JP,A)
【文献】 特開2000−161889(JP,A)
【文献】 特開2006−220319(JP,A)
【文献】 特開2010−286229(JP,A)
【文献】 特許第6094510(JP,B2)
【文献】 特許第4448377(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 9/00 − 9/04
F28F 3/00 − 3/14
F28F 9/00 − 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体が流通する複数の高温流路が形成された複数の高温流路層と、低温流体が流通する複数の低温流路とが形成された複数の低温流路層とが交互に積層して形成された流路層積層体を有するマイクロ流路熱交換器であって、
前記流路層積層体は、同流路層積層体に流入する前記高温流体を複数の前記高温流路に分配する高温入口ヘッダと、複数の前記高温流路を流れる前記高温流体が合流する高温出口ヘッダと、前記流路層積層体に流入する前記低温流体を複数の前記低温流路に分配する低温入口ヘッダと、複数の前記低温流路を流れる前記低温流体が合流する低温出口ヘッダとを有し、
複数の前記高温流路層は、前記高温入口ヘッダの一部を形成する第1の切り欠き部と、前記高温出口ヘッダの一部を形成する第2の切り欠き部と、前記低温入口ヘッダの一部を形成する第3の切り欠き部と、前記低温出口ヘッダと一部を形成する第4の切り欠き部とを有し、
複数の前記低温流路層は、前記高温入口ヘッダの一部を形成する第5の切り欠き部と、前記高温出口ヘッダの一部を形成する第6の切り欠き部と、前記低温入口ヘッダの一部を形成する第7の切り欠き部と、前記低温出口ヘッダと一部を形成する第8の切り欠き部とを有し、
前記第1の切り欠き部と前記第2の切り欠き部とは、複数の前記高温流路で連通され、
前記第7の切り欠き部と前記第8の切り欠き部とは、複数の前記低温流路で連通され、
前記第1の切り欠き部と前記第5の切り欠き部とが積層されて前記高温入口ヘッダが形成され、
前記第2の切り欠き部と前記第6の切り欠き部とが積層されて前記高温出口ヘッダが形成され、
前記第3の切り欠き部と前記第7の切り欠き部とが積層されて前記低温入口ヘッダが形成され、
前記第4の切り欠き部と前記第8の切り欠き部とが積層されて前記低温出口ヘッダが形成され、
前記高温入口ヘッダ、前記高温出口ヘッダ、前記低温入口ヘッダおよび前記低温出口ヘッダの少なくともいずれか1つに流れる前記高温流体もしくは低温流体に感知点が直接触れるように配置されたセンサーと、
前記流路層積層体に積層され、前記センサーとして差圧センサーが前記流路層積層体に接合する面と逆側の面であるセンサー配置面に配置される差圧センサー配置層と、を具備し、
前記差圧センサー配置層は、
前記高温流体および前記低温流体の少なくともいずれか一方について、
一端が前記入口ヘッダに開口し、他端が前記センサー配置面に開口する第1のセンサー用流路と、
一端が前記出口ヘッダに開口し、他端が前記センサー配置面に開口する第2のセンサー用流路とを有し、
前記差圧センサーは、前記第1のセンサー用流路の他端と前記第2のセンサー用流路の他端での差圧を検出するように構成される
マイクロ流路熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ流路熱交換器であって、
前記センサー配置層の前記第1のセンサー用流路および前記第2のセンサー用流路の少なくとも一部、
前記複数の高温流路層の前記高温流路、および
前記複数の低温流路層の前記低温流路は、
各々の基材の主面にエッチング処理によって溝を設け、
前記各々の基材を重ね合わせ、
接触した面どうしを拡散接合することによって形成されたものである
マイクロ流路熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換用流体の流路が形成された複数の伝熱板を積層して構成されるマイクロ流路熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板をプレス加工することによって流路を形成した2種類の伝熱板を交互に重ね合わせて積層した構造のプレート式熱交換器が知られている。この種の熱交換器では、伝熱板の間に設けられる流路のうち、作動流体として、一方の流路に圧縮された高温高圧冷媒ガス、水蒸気や熱湯などの高温流体を流通させ、他方の流路に水などの低温流体を流通させることで、高温流体から伝熱板を介して低温流体へ熱伝達し、高温流体と低温流体との間での熱交換が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、伝熱板を、金属板のプレス加工ではなく、エッチング加工で形成した流路を有する金属箔(フォイル)で形成し、それらを積層して構成されるマイクロ流路熱交換器なども知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4448377号公報
【特許文献2】特開2010−286229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1で示すような従来のプレート式熱交換器の1流路あたりの流路長は、家庭用空気調和機で使用される場合、150−400mmである。これに対して、同等の熱交換効率で比較した場合、特許文献2で示すようなマイクロ流路熱交換器の1流路あたりの流路長は、10−60mmである。これは、作動流体としての冷媒同士の熱交換を行う効率が大きく異なるためである。よってマイクロ流路熱交換器における、流体が流路を流れる距離あたりの流体の温度変化率は、プレート式熱交換器の熱交換器に比べて非常に大きくなる。
【0006】
一般的に、熱交換器で熱交換された冷媒の温度を測定する場合、熱交換器の出口配管に温度センサーが取り付けられる。しかし冷媒と配管との温度抵抗、また配管と温度センサーとの間の温度抵抗により、測定誤差およびタイムラグが生じる。上述したように、マイクロ流路熱交換器では流体が流れる距離あたりの温度変化率が大きい。そのため、温度抵抗による測定誤差やタイムラグを最小限にすることが求められる。よって、熱交換器の出口配管ではなく、流路の途中や流路の合流部分(以下、ヘッダという)などで、冷媒の温度、圧力および流量等の物理量を直接測定する必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献2で示すようなマイクロ流路熱交換器において、熱交換器内の冷媒の物理量を直接測定する方法は考案されていなかった。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、熱交換器内部に設けられたヘッダ内の冷媒の物理量を正確に測定することのできるマイクロ流路熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るマイクロ流路熱交換器は、高温流体が流通する複数の高温流路が形成された複数の高温流路層と、低温流体が流通する複数の低温流路とが形成された複数の低温流路層とが交互に積層して形成された流路層積層体を有するものであって、流路層積層体は、流路層積層体に流入する高温流体を複数の高温流路に分配する高温入口ヘッダと、複数の高温流路を流れる高温流体が合流する高温出口ヘッダと、流路層積層体に流入する低温流体を複数の低温流路に分配する低温入口ヘッダと、複数の低温流路を流れる低温流体が合流する低温出口ヘッダとを有し、複数の高温流路層は、高温入口ヘッダの一部を形成する第1の切り欠き部と、高温出口ヘッダの一部を形成する第2の切り欠き部と、低温入口ヘッダの一部を形成する第3の切り欠き部と、低温出口ヘッダと一部を形成する第4の切り欠き部とを有し、複数の低温流路層は、高温入口ヘッダの一部を形成する第5の切り欠き部と、高温出口ヘッダの一部を形成する第6の切り欠き部と、低温入口ヘッダの一部を形成する第7の切り欠き部と、低温出口ヘッダと一部を形成する第8の切り欠き部とを有し、第1の切り欠き部と第2の切り欠き部とは、複数の高温流路で連通され、第7の切り欠き部と第8の切り欠き部とは、複数の低温流路で連通され、第1の切り欠き部と第5の切り欠き部とが積層されて高温入口ヘッダが形成され、第2の切り欠き部と第6の切り欠き部とが積層されて高温出口ヘッダが形成され、第3の切り欠き部と第7の切り欠き部とが積層されて低温入口ヘッダが形成され、第4の切り欠き部と前記第8の切り欠き部とが積層されて前記低温出口ヘッダが形成され、高温入口ヘッダ、高温出口ヘッダ、低温入口ヘッダおよび低温出口ヘッダの少なくともいずれか1つに流れる高温流体もしくは低温流体に感知点が直接触れるように配置されたセンサーとを具備するので、ヘッダ内の作動流体の物理量を正確に測定することが出来る。
【0010】
また、本発明に係るマイクロ流路熱交換器において、前記流路層積層体に積層され、前記高温入口ヘッダ、高温出口ヘッダ、低温入口ヘッダ、および低温出口ヘッダの少なくともいずれか1つのヘッダ内に、前記センサーの感知点が突出するように前記センサーを配置するセンサー配置層を更に具備するものであってもよい。
【0011】
また、本発明に係るマイクロ流路熱交換器において、流路層積層体に積層され、センサーとして差圧センサーが流路層積層体の逆側のセンサー配置面に配置される差圧センサー配置層をさらに具備し、差圧センサー配置層は、高温流体および低温流体の少なくともいずれか一方について、一端が入口ヘッダに開口し、他端がセンサー配置面に開口する第1のセンサー用流路と、一端が出口ヘッダに開口し、他端がセンサー配置面に開口する第2のセンサー用流路とを有し、差圧センサーは、第1のセンサー用流路の他端と第2のセンサー用流路の他端での高温流体の差圧を検出するように構成されてもよい。
【0012】
また、本発明に係るマイクロ流路熱交換器において、センサー配置層の第1のセンサー用流路および第2のセンサー用流路の少なくとも一部、複数の高温流路層の高温流路、および複数の低温流路層の低温流路は、各々の基材の主面にエッチング処理によって溝を設け、各々の基材を重ね合わせ、接触した面どうしを拡散接合することによって形成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センサーの感知点が熱交換器内に設けられたヘッダ内の流体に直接触れるので、作動流体の物理量を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロ流路熱交換器を示す斜視図である。
図2図1のマイクロ流路熱交換器を一部分解して示す斜視図である。
図3図1のマイクロ流路熱交換器において高温伝熱板の構成を示す斜視図である。
図4図1のマイクロ流路熱交換器において低温伝熱板の構成を示す斜視図である。
図5図1のマイクロ流路熱交換器において高温流路層の高温流路を説明するための斜視図である。
図6図1のマイクロ流路熱交換器において低温流路層の低温流路を説明するための斜視図である。
図7図1のマイクロ流路熱交換器の切断面を示す斜視図である。
図8図1のマイクロ流路熱交換器の断面図である。
図9図1のマイクロ流路熱交換器の断面図である。
図10図1のマイクロ流路熱交換器の切断面を示す斜視図である。
図11図1のマイクロ流路熱交換器の断面図である。
図12図1のマイクロ流路熱交換器の断面図である。
図13】本発明の一実施形態に係るマイクロ流路熱交換器を示す斜視図である。
図14図13のマイクロ流路熱交換器の側面図である。
図15図13のマイクロ流路熱交換器の断面図である。
図16】本発明の一実施形態に係るマイクロ流路熱交換器を一部分解して示す斜視図である。
図17図16のマイクロ流路熱交換器の断面図である。
図18図16のマイクロ流路熱交換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ流路熱交換器を示す斜視図、図2図1のマイクロ流路熱交換器を一部分解して示す斜視図である。
【0016】
[全体の構成]
これらの図に示すように、このマイクロ流路熱交換器1は、流路層積層体である熱交換器本体2と、センサー配置層を構成する高温検知板3Aと、同じくセンサー配置層を構成する低温検知板3Bと、高温保護板4Aと、低温保護板4Bと、作動流体である高温流体および低温流体の各々の入口用および出口用の接続金具5A、5B、5C、5Dとを有する。
【0017】
図中、熱交換器本体2、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bなどの各部材の、Z軸の矢印の方向と反対の方向の面を「高温側の面」または「下面」、各部材の、Z軸の矢印の方向の面を「低温側の面」または「上面」とする。熱交換器本体2の高温側の面には高温検知板3Aが接合され、熱交換器本体2の低温側の面には低温検知板3Bが接合されている。高温検知板3Aの高温側の面には高温保護板4Aが接合され、低温検知板3Bの低温側の面には低温保護板4Bが接合されている。
【0018】
熱交換器本体2は、2種類の伝熱板2A、2Bを交互に複数枚積層して構成される。2種類の伝熱板の構成については後で説明する。
【0019】
熱交換器本体2を構成する2種類の伝熱板2A、2Bと、高温検知板3Aと、低温検知板3Bと、高温保護板4Aと、低温保護板4Bは、例えば、熱伝導率が高い同じ種類の金属板からなる。より具体的には、ステンレス鋼などが用いられる。これらの金属板は積層された後、拡散接合によって互いに接合されることによって略直方体形状の積層体となる。なお、伝熱板2A、2Bの板厚は、後述する溝や切り欠き部が形成できかつ拡散接合が出来るものであれば、どのような厚みでもよい。
【0020】
以降、説明上の必要に応じて、マイクロ流路熱交換器1のZ軸に垂直な面を「主面」と呼び、主面以外のX軸やY軸に垂直な4つの面を「側面」と呼ぶこととする。
【0021】
図2に示すように、マイクロ流路熱交換器1の各側面には、各々、熱交換器本体2内の高温流路に高温流体を流入させる高温入口ヘッダ21と、熱交換器本体2内の高温流路から高温流体を流出させる高温出口ヘッダ22と、熱交換器本体2内の低温流路に低温流体を流入させる低温入口ヘッダ23と、熱交換器本体2内の低温流路から低温流体を流出させる低温出口ヘッダ24が形成されている。
【0022】
図1に示したように、高温入口ヘッダ21には、接続金具5Aが溶接などにより接合されている。この接続金具5Aには、高温流体の流入のための管8Aが着脱自在に接続される。高温出口ヘッダ22には、接続金具5Bが溶接などにより接合されている。この接続金具5Bには、高温流体の流出のための管8Bが着脱自在に接続される。低温入口ヘッダ23には、接続金具5Cが溶接などにより接合されている。この接続金具5Cには、低温流体の流入のための管8Cが着脱自在に接続される。低温出口ヘッダ24には、接続金具5Dが溶接などにより接合されている。この接続金具5Dには、低温流体の流出のための管8Dが着脱自在に接続される。
【0023】
[熱交換器本体2の構成]
次に、熱交換器本体2の構成を説明する。
前述したように、熱交換器本体2は、2種類の伝熱板2A、2Bを交互に複数枚積層して構成される。これらの伝熱板2A、2Bにはエッチング処理によって溝および切り欠き部が形成されている。伝熱板2A、2Bでは、流す流体が異なるので、溝のパターンは異なっているが、切り欠き部は、伝熱板2Aおよび2Bの積層後に各ヘッダ部となるように形成されるので、切り欠き部の形状は同一である。なお、伝熱板2Aおよび2Bに対するエッチング処理は、溝や切り欠き部を形成することができるものであれば、どのような方法でもよい。また、溝や切り欠き部はプレス加工によって形成してもよい。
【0024】
図3および図4は2種類の伝熱板2A、2Bを示す斜視図である。ここで、図3に示す伝熱板2Aは「高温伝熱板2A」、図4に示す伝熱板2Bは「低温伝熱板2B」である。
【0025】
(高温伝熱板2Aの構成)
図3に示すように、高温流路層を形成する高温伝熱板2Aには、高温流体の流路を形成する溝25A、30A、31Aおよび切り欠き部26A、27A、28A、29Aがそれぞれ設けられている。溝25A、30A、31Aは高温伝熱板2Aの一方の面にのみ設けられる。溝25A、30A、31Aの深さはどこも均一であってよい。切り欠き部26A、27A、28A、29Aは、高温伝熱板2Aの基材の4辺に各々対応する縁端部における所定の部位を基材の厚み分除去することによって形成される。
【0026】
以後、説明の必要に応じて、高温伝熱板2Aの各々の切り欠き部26A、27A、28A、29Aを、第1の切り欠き部26A、第2の切り欠き部27A、第3の切り欠き部28A、および第4の切り欠き部29Aと呼ぶ。
【0027】
高温伝熱板2Aにおいて、図中Y軸方向において対向して設けられる第1の切り欠き部26Aと第2の切り欠き部27Aとの間の領域には、これら第1の切り欠き部26Aと第2の切り欠き部27Aとの間を連通する複数の溝25A、30A、31Aが形成されている。なお、図3において、溝25Aの数は3本であるが、もっと幅の小さい数多くの溝を形成するようにしても良い。
【0028】
高温伝熱板2Aにおける上記の各溝25A、30A、31Aは、X軸方向に沿って形成された複数の溝25Aと、Y軸方向に沿って形成された2本の溝30A、31Aで構成される。Y軸方向に沿って形成された2本の溝30A、31Aのうち一方の溝30Aは一端が第1の切り欠き部26Aと連通し、他方の溝31Aは一端が第2の切り欠き部27Aと連通する。X軸方向に沿って形成された複数の溝25Aは各々2本の溝30A、31Aの間を連通する。これにより、高温伝熱板2Aの高温入口ヘッダ21および高温出口ヘッダ22と、後述する低温伝熱板2Bの低温入口ヘッダ23および低温出口ヘッダ24との位置関係を互いに90度異なるようにしている。
【0029】
(低温伝熱板2Bの構成)
図4に示すように、低温流路層を形成する低温伝熱板2Bには、低温流体の流路を形成する溝25Bおよび切り欠き部26B、27B、28B、29Bがそれぞれ設けられている。溝25Bは低温伝熱板2Bの一方の面にのみ設けられる。溝25Bの深さはどこも均一であってよい。切り欠き部26B、27B、28B、29Bは、低温伝熱板2Bの基材の4辺に各々対応する縁端部における所定の部位を基材の厚み分除去することによって形成される。
【0030】
以後、説明の必要に応じて、低温伝熱板2Bの各々の切り欠き部26B、27B、28B、29Bを、第5の切り欠き部26B、第6の切り欠き部27B、第7の切り欠き部28B、および第8の切り欠き部29Bと呼ぶ。
【0031】
低温伝熱板2Bにおいて、図中X軸方向において対向して設けられる第7の切り欠き部28Bと第8の切り欠き部29Bとの間には、これら第7の切り欠き部28Bと第8の切り欠き部29Bとの間を連通する複数の溝25Bが形成されている。これら複数の溝25Bは、高温伝熱板2Aに形成された複数の溝25Aと、Y軸方向にて同じ位置に各々形成されている。
【0032】
(高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとの積層構造)
上記のような構成を有する高温伝熱板2Aおよび低温伝熱板2Bは、図5および図6に示すように、双方の溝25A、25B、30A、31Aが設けられた面の向きをZ軸方向に一致させて、各々複数交互に重ね合わせて積層される。このようにして熱交換器本体2が構成される。
【0033】
この熱交換器本体2において、高温伝熱板2Aの第1の切り欠き部26Aと低温伝熱板2Bの第5の切り欠き部26Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、高温入口ヘッダ21を形成する。
【0034】
高温伝熱板2Aの第2の切り欠き部27Aと低温伝熱板2Bの第6の切り欠き部27Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、高温出口ヘッダ22を形成する。
【0035】
高温伝熱板2Aの第3の切り欠き部28Aと低温伝熱板2Bの第7の切り欠き部28Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、低温入口ヘッダ23を形成する。
【0036】
高温伝熱板2Aの第4の切り欠き部29Aと低温伝熱板2Bの第8の切り欠き部29Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、低温出口ヘッダ24を形成する。
【0037】
(高温流路と低温流路について)
図5は熱交換器本体2における高温流路を示す斜視図である。
高温流路は、高温伝熱板2Aの各溝25A、30A、31Aと低温伝熱板2Bの下面との間に形成される。高温流体は、高温入口ヘッダ21から流入し、溝30Aを通って複数の溝25Aに分配される。複数の溝25Aを通過した高温流体は溝31Aで合流し、高温出口ヘッダ22より流出する。このような高温流体の流れが各々の高温伝熱板2Aにおいて生じる。
【0038】
図6は熱交換器本体2における低温流路を示す斜視図である。
低温流路は、低温伝熱板2Bの溝25Bと高温伝熱板2Aの下面もしくは低温検知板3Bの下面との間に形成される。低温流体は、低温入口ヘッダ23から流入し、複数の溝25Bを通って低温出口ヘッダ24から流出する。このような低温流体の流れが各々の低温伝熱板2Bにおいて生じる。
【0039】
熱交換器本体2において高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bは交互に積層されているので、高温伝熱板2Aおよび低温伝熱板2Bの熱伝導によって高温流体と低温流体との間での熱交換が行われる。また、高温伝熱板2Aの溝25Aを流れる高温流体と低温伝熱板2Bの溝25Bを流れる低温流体は、対向流となっている。
【0040】
[熱交換器本体2出入口ヘッダの流体温度の検出機能]
この実施形態のマイクロ流路熱交換器1では、熱交換器本体2のヘッダ内を流れる高温流体および低温流体の温度を直接測定することを可能とするために、次のような構成を採用している。
【0041】
図7は、第1の実施形態のマイクロ流路熱交換器1の2つのY−Z断面図(切断面A−Aおよび切断面B−B)の位置を示す矢視図である。また、図8は、切断面A−Aの断面図であり、図9は、切断面B−Bの断面図である。
【0042】
図10は、本実施形態のマイクロ流路熱交換器1の2つのX−Z断面図(切断面C−Cおよび切断面D−D)の位置を示す矢視図である。また、図11は、切断面C−Cの断面図であり、図12は、切断面D−Dの断面図である。
【0043】
図8図9図11図12、および図2に示すように、熱交換器本体2の両主面には各々、センサー配置層を構成するための高温検知板3Aおよび低温検知板3Bが接合されている。高温検知板3Aおよび低温検知板3Bには、例えばエッチング処理などによってセンサー収容溝35A、35Bが形成されている。このセンサー収容溝35A、35Bの一端は、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bの端まで達している(図2参照)。
【0044】
高温検知板3Aおよび低温検知板3Bは各々、センサー収容溝35A、35Bが形成された面の向きを、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bにおいて溝25A、25B、30A、31Aが形成された面の向きに一致させて積層される。これにより、高温検知板3Aのセンサー収容溝35Aは、熱交換器本体2の高温側の主面(高温伝熱板2Aの高温側の主面)によって塞がれた状態となり、シース熱電対などの温度センサー41Aを収容する空間が形成される。一方、低温検知板3Bのセンサー収容溝35Bと低温保護板4Bとの間にも、同様の空間が形成される。
【0045】
高温検知板3Aおよび低温検知板3Bの各々のセンサー収容溝35A、35Bは、一端が高温検知板3Aおよび低温検知板3Bの端まで形成されているので、マイクロ流路熱交換器1の側面には開口33A、33Bが形成される。この開口33A、33Bからセンサー収容溝35A、35Bの空間内に温度センサー41A、41B、41C、および41Dを挿入することができる。
【0046】
温度センサー41A、41B、41C、および41Dの挿入された空間内の隙間は、少なくとも、温度センサー41A、41B、41C、および41Dの温度感知点43A、43B、43C、および43Dが位置する部分を除いて充填材42A、42Bが充填される。これにより温度センサー41A、41B、41C、および41Dの温度感知点43A、43B、43C、および43Dは、センサー収容溝35A、35Bに連通する空間内で露出した状態となる。この温度センサー41A、41B、41C、および41Dの温度感知点43A、43B、43C、および43Dが露出する空間が、流体の温度を測定するための測定空間34A、34Bとなる。
【0047】
なお、測定空間34A、34Bは、温度センサー41A、41B、41C、および41Dの温度感知点43A、43B、43C、および43Dと流体との接触量が十分確保されるように幅広い空間とされている(図2参照)。
【0048】
高温検知板3Aの測定空間34Aは、高温検知板3Aと接合された高温伝熱板2Aにおける高温入口ヘッダ21および高温出口ヘッダ22に開口しているので、高温入口ヘッダ21および高温出口ヘッダ22を流れる高温流体が測定空間34Aにも流れる。
【0049】
そして、本実施形態のマイクロ流路熱交換器1には、熱交換器本体2の低温入口ヘッダ23内および低温出口ヘッダ24内を流れる低温流体を測定空間34Bに導入するために連通穴32Bが設けられている。
【0050】
低温検知板3Bに対応して設けられる連通穴32Bは、低温検知板3Bにおける測定空間34Bの底面に一端が開口し、他端が低温検知板3Bと接合された低温伝熱板2Bにおける溝25Bに開口するように、低温検知板3Bを積層方向に貫く穴として設けられている。
【0051】
このように、第1の実施形態のマイクロ流路熱交換器1では、測定空間34Aおよび34Bに各ヘッダ内の流体が流れて温度センサー41A、41B、41C、および41Dの温度感知点43A、43B、43C、および43Dに触れる構成を採用することによって、熱交換器本体2内の出入口ヘッダにおいて大きな流動抵抗をつくりだすことなく、流体の温度を直接測定することができる。
【0052】
第1の実施形態のマイクロ流路熱交換器1では、高温流体および低温流体の温度を直接測定して熱交換器の性能を特定することができる。このため、高温高圧ガスの温度や圧力ならびに流量の調整によって、熱交換器の性能を最大現に発揮することができる。
【0053】
なお、上記の説明では、流体の温度を測るために温度センサーを用いたが、これに限らず、流体の圧力を測るために、温度センサーの代わりに圧力センサーを用いる構成でもよい。
【0054】
また、流体の温度および圧力を両方とも測るために、センサー収容溝35Aおよび35Bに温度センサーおよび圧力センサーの両方を挿入する構成でもよい。
【0055】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bに、それぞれセンサーを収容するためのセンサー収容溝35Aおよび35Bを設けた。これに対し、第2の実施形態では、流体の温度や圧力を出入口ヘッダ部分で測定するために、低温保護板4Bに積層方向に貫通穴を設け、その貫通穴にセンサーを挿入し、センサーの感知点をヘッダ内に突出させている。そのため、第2の実施形態では、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bを省略することが出来る。
【0056】
図13は、第2の実施形態のマイクロ流路熱交換器1Aの斜視図である。また、図14は、第2の実施形態のマイクロ流路熱交換器1Aを、図13の管8Dの方向から見た側面図である、また、図15は、第2の実施形態のマイクロ流路熱交換器1AのY−Z断面の断面図である。
【0057】
図13図14、および図15の例では、高温入口ヘッダ21、高温出口ヘッダ22、低温入口ヘッダ23、および低温出口ヘッダ24内の温度や圧力をそれぞれ測るために、低温保護板4Bに積層方向に4つの貫通穴を設け、貫通穴それぞれに、センサー41E、41F、41G、および41Hを挿入している。また、センサー41E、41F、41G、および41Hから出た信号線は、低温保護板4B上に設置されたコネクタにまとめてられ、コネクタからケーブルを用いて図示しない制御回路と接続される。
【0058】
なお、図13図14、および図15では、低温保護板4Bに貫通穴を形成したが、これに限らず、高温保護板4Aの方に貫通穴を形成しセンサーを挿入してもよい。
【0059】
第1の実施形態では、センサーが高温検知板3Aや低温検知板3Bの中に配置されるので、センサーの感知点を置く位置に関しZ軸方向の自由度は無かった。それに対し、第2の実施形態の構成では、貫通穴の位置だけでなく、センサーの挿入量やヘッダ内への突出量を調整することにより、センサーの感知点を出入口ヘッダ部の空間内の積層方向を含めた任意の位置に設けることができるので、流体の温度や圧力をより適切に測定することが出来る。
【0060】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。上記の実施形態では、出入口ヘッダ部における温度や圧力を測定するために、センサーの感知点をヘッダ内部またはヘッダ近傍に設けた。これに対し、第3の実施形態では、圧力伝達路を用いて、入口ヘッダの圧力および出口ヘッダの圧力を、差圧センサーを設置した場所まで導き、差圧センサーにより入口ヘッダと出口ヘッダの差圧を測定する。
【0061】
図16は、第3の実施形態のマイクロ流路熱交換器1Bの圧力伝達路を示す図である。また、図17は、第3の実施形態のマイクロ流路熱交換器1Bの圧力伝達路に関するY−Z断面図であり、図18は、第3の実施形態のマイクロ流路熱交換器1Bの圧力伝達路に関するX−Z断面図である。なお、図17および図18では、伝熱板2Aおよび2Bに設けられている流路の図示は省略している。
【0062】
図16図17、および図18から分かるように、低温保護板4B'には、積層方向に低温保護板4B'を貫通する貫通穴53A、53B、56A、および56Bが開けられている。また低温検知板3B'には、積層方向に低温検知板3B'を貫通する貫通穴51A、51B、55A、および55Bが開けられている。低温保護板4B'および低温検知板3B'が、差圧センサー配置層に相当する。低温保護板4B'の低温側の面(センサー配置面)には、差圧センサー41Jおよび41Kが配置されている。
【0063】
また、低温保護板4B'には、溝52Aおよび52Bが、エッチング処理などにより形成され、低温検知板3B'には、溝54Aおよび54Bが、エッチング処理などにより形成されている。
【0064】
高温入口ヘッダ21に開口する貫通穴51A、溝52A、およびセンサー配置面に開口する貫通穴53Aは、連通して、高温入口ヘッダ21の圧力を差圧センサー41Kに導く圧力伝達路(第1のセンサー用流路)を形成するように配置される。
【0065】
高温出口ヘッダ22に開口する貫通穴51B、溝52B、およびセンサー配置面に開口する貫通穴53Bは、連通して、高温出口ヘッダ22の圧力を差圧センサー41Kに導く圧力伝達路(第2のセンサー用流路)を形成するように配置される。
【0066】
センサー配置面に開口する貫通穴56A、55A、および溝54Aは、連通して、低温入口ヘッダ23の圧力を差圧センサー41Jに導く圧力伝達路(第1のセンサー用流路)を形成するように配置される。
【0067】
センサー配置面に開口する貫通穴56B、55B、および溝54Bは、連通して、低温出口ヘッダ24の圧力を差圧センサー41Jに導く圧力伝達路(第2のセンサー用流路)を形成するように配置される。
【0068】
第3の実施形態の構成によると、高温入口ヘッダ21と高温出口ヘッダ22との差圧や、低温入口ヘッダ23と低温出口ヘッダ24との差圧を計測するために、別途配管を設ける必要が無い。
【0069】
なお、上記の構成を採った場合、高温検知板3Aは省略することが出来る。
【0070】
また、上記の説明では、低温保護板4B'および低温検知板3B'に圧力伝達路を形成したが、この構成に限らず、同様にして高温保護板4A'および高温検知板3A'に圧力伝達路を形成する構成でもよい。
【0071】
また、高温流体の入口ヘッダと出口ヘッダの差圧を計測するための圧力伝達路および差圧センサーを低温保護板4B'および低温検知板3B'側に設け、低温流体の入口ヘッダと出口ヘッダの差圧を計測するための圧力伝達路および差圧センサーを高温保護板4A'および高温検知板3A'側に設ける構成でもよいし、その逆の構成でもよい。
【0072】
[補足事項]
その他、本技術は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1、1A、1B…マイクロ流路熱交換器
2…熱交換器本体
2A…高温伝熱板
2B…低温伝熱板
3A、3A'…高温検知板
3B、3B'…低温検知板
4A、4A'…高温保護板
4B、4B'…低温保護板
25A、25B、30A、30B、52A、52B、54A、54B…溝
32A、32B、51A、51B、53A、53B、55A、55B、56A、56B…連通穴
34A、34B…測定空間
35A、35B…センサー収容溝
41A、41B、41C、41D、41E、41F、41G、41H…温度(圧力)センサー
41J、41K…差圧センサー
43A、43B、43C、43D…温度感知点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18