(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、自然界に見られる特異的な現象に注目が集まっている。例えば、蓮の葉は非常によく水をはじくことで知られている。蓮の葉の表面には、5μmから15μm程度の高さおよび直径の突起物が、20μmから30μm程度の周期で空間配置されていることがわかっている。さらに、この突起物表面は、ナノメートルサイズの、分泌されたワックスの微結晶で覆われていることがわかっている。
【0003】
また、例えば、蛾の眼は光を反射しないことで知られている。蛾の眼の表面は、5μmから15μm程度の高さおよび直径の個眼が密に配列した複眼構造をしており、さらに各個眼の表面には、ナノメートルサイズの凹凸が形成されていることがわかっている。
【0004】
このように、一次凹凸構造上に、一次凹凸構造より小さな周期および高さを有する二次凹凸構造が形成された階層構造(以下では、単に階層構造と称する)は、撥水効果や反射防止効果を示すことから、産業的に非常に有用であると言える。そのため、このような階層構造を人工的に形成し、産業利用する方法が提案されている。
【0005】
階層構造を人工的に形成する方法として、例えば、ポリカーボネート膜に対して、凹面マイクロレンズ構造を有するモールドを熱ナノインプリント法により転写して一次凹凸構造を形成し、次にこの一次凹凸構造上に、ナノメートルサイズの逆円錐型構造を有するモールドを熱ナノインプリント法により転写することで、蛾の眼の複眼構造を形成する方法(特許文献1を参照)が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、階層構造を形成するために、熱ナノインプリント工程を2回実施する必要があり、生産性が悪い。また、一次凹凸構造を保ったまま、一次凹凸構造の表面上に二次凹凸構造を転写する必要があるため、加熱温度やプレス圧といった条件を厳密に制御する必要があり、工程が煩雑になるという問題がある。
【0006】
これに対し、階層構造を人工的に形成する別の方法として、階層構造を有するモールドを製造し、これを一括で転写する方法が提案されている。階層構造を有するモールドを製造する方法として、例えば、マイクロメートルサイズの一次凹凸構造を有する基材を用意し、この一次凹凸構造上に、面電子源を用いた電子ビームリソグラフィ法によって、ナノメートルサイズの二次凹凸構造を形成する方法(特許文献2を参照)が挙げられる。
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、ナノメートルサイズの二次凹凸構造を形成する際に、一次凹凸構造上にレジストを塗布する工程の後、更に、露光、現像、エッチング工程を実施する必要があり、生産性が悪い。また、一次凹凸構造上にレジストを均一に塗布することは困難であり、工程が煩雑になるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、電子線リソグラフィ法やフォトリソグラフィ法といった各種リソグラフィ法のような煩雑な工程を用いることなく、階層構造を有するインプリント用モールドを容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、基材の表面上に、一次凹凸構造を形成する工程と、一次凹凸構造上に、
スパッタリング法により一次凹凸構造の周期および高さより小さな周期および高さを有する二次凹凸構造を形成する工程とを含むインプリント用モールドの製造方法である。
【0010】
また、二次凹凸構造を形成する工程において、基材上に、ランダムに配列する複数の突起物を有する無機層を形成することにより、二次凹凸構造を形成してもよい。
【0012】
また、二次凹凸構造を形成する工程において、スパッタリング条件を変化させることで、突起物の配列する周期を制御してもよい。
【0013】
また、二次凹凸構造を形成する工程において、二次凹凸構造が、クロムまたはクロム化合物を用いて形成されてもよい。
【0014】
また、基材は、ロール状であり、二次凹凸構造を形成する工程において、一次凹凸構造および二次凹凸構造をロール状の基材に対してつなぎ目なく形成してもよい。
【0015】
一次凹凸構造を形成する工程において、一次凹凸構造の高さを、一次凹凸構造の谷部の開口幅に対して、1倍以下となるように形成してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のインプリント用モールドの製造方法によれば、一次凹凸構造上に二次凹凸構造を形成する際に、各種リソグラフィ法のような煩雑な工程を用いることなく、スパッタリング法による一段階の工程を用いるため、従来技術と比較して容易に階層構造を有するインプリント用モールドを製造できる。
【0019】
また、二次凹凸構造はスパッタリング法により形成されるため、基材の材質は、スパッタリング法により無機層を堆積することが可能な材質(例えば、セラミックス、樹脂、金属等)の中から、用途に応じて適宜選択することができる。
【0020】
また、二次凹凸構造はスパッタリング法により形成されるため、二次凹凸構造の材質は、スパッタリング法に用いるターゲット材料(例えば、クロム、珪素、チタン等)およびスパッタリング条件により、用途に応じて適宜選択することができる。
【0021】
また、二次凹凸構造を形成する際に、スパッタリング条件を変化させることで二次凹凸構造の形状(例えば、二次凹凸構造の周期等)を容易に制御することができるため、用途に応じて二次凹凸構造の形状を適宜選択することができる。
【0022】
また、二次凹凸構造は、段差被覆性に優れるスパッタリング法により形成されるため、一次凹凸構造の段差部分や側壁部分へも二次凹凸構造を形成することができる。
【0023】
また、本発明のインプリント用モールドの製造方法によれば、ロール状の基材につなぎ目なく階層構造を形成することができる。そのため、これを転写することで、大面積の製品を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るインプリント用モールドの製造方法およびインプリント用モールドについて
図1を参照して詳細に説明する。
【0026】
まず、
図1の(a)に示すように、基材10を用意する。
【0027】
基材10の材質は、モールドの基材として使用するために必要な機械的強度を有し、更に、後の工程で二次凹凸構造12を形成する無機層を堆積することが可能な材質であれば、特に限定されない。二次凹凸構造12をスパッタリング法により形成する場合、基材10の材質として、例えば、石英ガラス、シリコン、ニッケル、クロム、ポリエチレンテレフタラート(以下、PET)等が挙げられる。後の工程で、インプリント用モールド13の構造を転写する際に、UVインプリント法を用いる等の理由からモールドに透明性が求められる場合には、石英ガラスやPET等の透明な材質を用いるとよい。ただし、本形態の実施上問題がなければ、その他の材質を用いても構わない。
【0028】
次に、
図1の(b)に示すように、基材10の表面上に、一次凹凸構造11を形成する。
【0029】
一次凹凸構造11の形状は、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、円錐状(円錐台状も含む)の凹部または凸部、角錐状(角錐台状も含む)の凹部または凸部、線状(断面形状が、三角形状、台形上、矩形状等)の凹部または凸部であってもよい。これらのいずれの形状においても、頂部および/または底部が面取りされていてもよい。
【0030】
ここで、一次凹凸構造11の周期や高さの定義について
図2を参照して詳細に説明する。
図2は、一次凹凸構造11の任意の断面形状を模式的に示している。このような断面形状は、SPM(Scanning Probe Microscope)、SEM等の観察手法によって測定することができる。
【0031】
一次凹凸構造11の周期は、隣接する凸部の先端間の水平方向の距離pを指標として定義する。
図2に示す一次凹凸構造11のように、凹凸構造が非周期的に形成されている場合には、断面形状から得られる任意の5箇所の隣接する凸部の先端間の水平方向の距離pを測定し、これを平均した値を平均周期として定義する。
【0032】
また、一次凹凸構造11の高さは、例えば、任意の凸部30に注目した場合凸部の頂点と、隣接する谷部との垂直方向の距離h1およびh2の平均値hを指標として定義する。
図2に示す一次凹凸構造11のように、凹凸構造の高さが不均一に形成されている場合には、断面形状から得られる任意の5箇所の凸部の高さhを測定し、これを平均した値を平均高さとして定義する。
【0033】
一次凹凸構造11の周期pは、用途に応じて適宜選択すればよいが、0.1μm以上1000μm以下の範囲であると好ましい。この理由を以下に説明する。
【0034】
一次凹凸構造11の周期pが0.1μm未満であると、後の工程で形成する二次凹凸構造12の周期と同程度か、二次凹凸構造12の周期以下となり、撥水特性や反射防止特性に対する、階層構造による効果が得られないためである。また、一次凹凸構造11の周期pが1000μmより大きい場合には、微視的には平面上に二次凹凸構造12が形成されることに相当し、撥水特性や反射防止特性に対する、階層構造による効果が得られないためである。ただし、本形態の実施上問題がなければ、一次凹凸構造11の周期pの範囲は特に限定されない。
【0035】
また、一次凹凸構造11の高さhは、用途に応じて適宜選択すればよいが、0.1μm以上1000μm以下の範囲であると好ましい。この理由を以下に説明する。
【0036】
一次凹凸構造11の高さhが0.1μm未満であると、後の工程で形成する二次凹凸構造12の高さと同程度か、二次凹凸構造12の高さ以下となり、撥水特性や反射防止特性に対する、階層構造による効果が得られないためである。また、一次凹凸構造11の高さhが1000μmより大きい場合には、インプリント法による転写が困難になるためである。ただし、本形態の実施上問題がなければ、一次凹凸構造11の高さhの範囲は特に限定されない。
【0037】
また、一次凹凸構造11の高さhは、一次凹凸構造11の谷部の開口幅に対して、1倍以下であることが好ましい。一次凹凸構造11の高さhが、谷部の開口幅に対して1倍より大きい場合(一次凹凸構造11の谷部の深さが開口幅の1倍より深く、縦長の場合とも言い得る)、後の工程で二次凹凸構造12をスパッタリング法により形成する場合に、谷の底部に対してスパッタ粒子が到達しにくく、谷の底部において二次凹凸構造12が形成されにくいためである。ただし、本形態の実施上問題がなければ、一次凹凸構造11の高さが、谷部の開口幅に対して1倍より大きくても構わない。
【0038】
一次凹凸構造11の形成方法は、基材10の材質や用途に応じて適宜選択すればよい。機械的な方法として、例えば、サンドブラストによる粗化、サンドペーパーによる粗化が挙げられる。サンドブラストによって粗化を行う場合には、投射物の硬さ、平均粒形、投射速度等の処理条件によって、一次凹凸構造11の周期pや高さhを制御することができる。サンドペーパーによって粗化を行う場合には、サンドペーパーの番手によって、一次凹凸構造11の周期pや高さhを制御することができる。
【0039】
また、切削加工やレーザー加工等の微細加工技術を用いて一次凹凸構造11を形成してもよい。この方法によれば、一次凹凸構造11の周期p、高さh、形状を制御することができる。
【0040】
その他の方法として、ウェットエッチングが挙げられる。例えば、基材10が単結晶(例えば、単結晶シリコン)である場合には、異方性エッチングを利用することで、マイクロメートルサイズの凹凸構造(例えば、テクスチャ構造)を形成することができる。
また、工程数が増加することが問題にならない場合には、フォトリソグラフィ法等の各種リソグラフィ法を用いることもできる。この方法によっても、一次凹凸構造11の周期p、高さh、形状を制御することができる。
【0041】
次に、
図1の(c)に示すように、一次凹凸構造11の表面に、二次凹凸構造12を形成し、インプリント用モールド13を得る。
【0042】
二次凹凸構造12の材質は、二次凹凸構造12の形成方法等に応じて適宜選択することができる。例えば、二次凹凸構造12をスパッタリング法で形成する場合には、クロムやクロム化合物(例えば、窒化クロム、酸化クロム等)が好ましい。インプリント用モールド13に透明性が求められる場合には、二酸化珪素等の透明な材質を用いるとよい。ただし、本形態の実施上問題がなければ、その他の材質を用いても構わない。
【0043】
二次凹凸構造12の形成方法は、二次凹凸構造12に、複数の突起物が生じるように形成することを考慮すると、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法の中でも、反応性スパッタリング法が特に好ましい。反応性スパッタリング法によれば、放電電力、スパッタガス圧力、全スパッタガス流量中の反応性ガス流量の比率、スパッタターゲットと基材10との距離(以下、T−Sポジションと称する)、成膜時間等のスパッタリング条件をパラメータとして変化させることで、二次凹凸構造12の形状(複数の突起物の形状とも言い得る)を容易に制御することができるためである。また、スパッタリング法は、段差被覆性に優れるため、一次凹凸構造の段差部分や側壁部分へも二次凹凸構造を形成することができる。ただし、本形態の実施上問題がなければ、その他の形成方法を用いても構わない。
【0044】
ここで、複数の突起物について、
図3を参照して詳細に説明する。突起物とは、二次凹凸構造12のうち、二次凹凸構造12の上面において凹凸を形成する部位を示すが、突起物の生じ方は、二次凹凸構造12を形成する際の条件によって異なる。例えば、
図3の(a)および
図4Aに示すような、基材10上に無機物が直接柱状に成長した柱状物31を示すほか、
図3の(b)および
図4Cに示すような、基材10上に無機層が成長し、その無機層上に無機物が局所的に成長して形成された突起物32を示すこともある。
【0045】
二次凹凸構造12の周期は、柱状物31または突起物32(以下では、これらをまとめて突起物と称することもある)を形成した二次凹凸構造12の断面をSEMにより観察し、断面に見られた突起物の幅を測定した値である。ここで突起物の幅について
図3の(a)および
図3の(b)を用いて説明する。突起物の幅wは、断面図において、任意の突起物に着目した際に、左側で接する突起物との間にある溝の底部から、右側で接する突起物との間にある溝の底部までの、水平方向の距離を示す。二次凹凸構造12は、突起物が配列することにより形成されるため、突起物の幅wが二次凹凸構造12の周期と考えることができる。
尚、突起物はランダムに形成されるため、各突起物の形状は相異なっている。そのため、二次凹凸構造12の周期は、断面SEM画像からランダムに5つの突起物を抽出し、その幅wの平均値から算出した。
【0046】
また、二次凹凸構造12の深さ(高さとも言い得る)は、二次凹凸構造12の断面をSEMにより観察し、断面に見られた突起物の高さを測定した値である。ここで二次凹凸構造12の深さについて
図3の(a)および
図3の(b)を用いて説明する。二次凹凸構造の深さdは、断面図において、任意の突起物に着目した際に、突起物の先端を基準として、左側で接する突起物との間にある溝の底部までの深さd1と、右側で接する突起物との間にある溝の底部までの深さd2を測定し、d1とd2の平均値を算出した値である。
尚、突起物はランダムに形成されるため、各突起物の形状は相異なっている。そのため、二次凹凸構造12の深さは、断面SEM画像からランダムに5つの突起物を抽出し、その深さdの平均値から算出した。
【0047】
図4A、4B、4Cに、二次凹凸構造12の表面SEM画像を示す。
例えば、スパッタガスとしてアルゴンを用い、反応性ガスとして窒素を導入して、クロムをスパッタリングする場合において、放電電力を600W、スパッタガス圧力を0.3Pa、反応性ガス流量の比率を10%、T−Sポジションを250mm、成膜時間を10分とすると、
図4Aに示す表面形態を有する二次凹凸構造12が得られる。この場合、二次凹凸構造12の周期wは27nmであり、深さdは12nmである。
また、例えば、放電電力を800W、スパッタガス圧力を0.2Pa、反応性ガス流量の比率を7%、T−Sポジションを250mm、成膜時間を10分とすると、
図4Bに示す表面形態を有する二次凹凸構造12が得られる。この場合、二次凹凸構造12の周期wは61nmであり、深さdは35nmである。
また、例えば、放電電力を800W、スパッタガス圧力を0.2Pa、反応性ガス流量の比率を7%、T−Sポジションを250mm、成膜時間を40分とすると、
図4Cに示す表面形態を有する二次凹凸構造12が得られる。この場合、二次凹凸構造12の周期wは221nmであり、深さdは60nmである。
【0048】
このように、発明者の実験によれば、前述したパラメータを制御することで、二次凹凸構造12の形状を容易に制御することができた。このため、本発明のインプリント用モールドの製造方法によれば、用途に応じて二次凹凸構造12の形状を適宜選択することができる。
【0049】
また、基材10の形状は、平板状に限らず、ロール状でもよい。以下では、スパッタリング法を用いてロール状の基材につなぎ目なく階層構造を形成する方法を、
図5を参照して説明する。
【0050】
図5の(a)に示すように、一次凹凸構造51が形成されたロール状の基材50を用意する。
【0051】
基材50の材質は、基材10の材質に準ずる。また、一次凹凸構造51の周期p、高さh、形状、形成方法等は一次凹凸構造11に準ずる。一次凹凸構造11の形成方法のうち、サンドブラストによる粗化、サンドペーパーによる粗化、切削加工、レーザー加工、ウェットエッチングの各方法によれば、ロール状の基材50に対して、一次凹凸構造51をつなぎ目が生じることなく形成することができる。
【0052】
次に、
図5の(b)に示すように、スパッタチャンバ内に一次凹凸構造51を形成した基材50を用意し、基材50を円柱形状の軸を中心に回転させながら、スパッタターゲット60下部の電極へ所定の電力を印加してプラズマ放電させ、基材50の表面に形成された一次凹凸構造51の表面上に二次凹凸構造52を形成し、
図5の(c)に示すインプリント用モールド53を得る。
【0053】
図5を参照して説明した、階層構造が形成されたロール状のインプリント用モールドを形成する方法を用いると、二次凹凸構造52は、ロールの全面に形成された一次凹凸構造51の表面に、順次連続的に成長するため、階層構造につなぎ目が生じることはない。そのため、これをモールドとし、階層構造を転写すれば、大面積の製品を、つなぎ目等の欠陥を生じさせることなく製造することができる。
【0054】
また、基材10の形状はフィルム状でもよい。フィルム状の基材の表面上に一次凹凸構造11を形成し、この一次凹凸構造11の上面に二次凹凸構造12を形成することで、フィルム状のインプリント用モールド13を得ることができる。Roll to Roll方式でフィルム状のインプリント用モールド13を製造すれば、大面積のインプリント用モールド13を製造することができる。
【0055】
尚、これまでに示したインプリント用モールド13は、インプリント用モールドとしての用途だけでなく、直接、撥水膜や反射防止膜等の別の用途に用いてもよい。
【0056】
次に、製造したインプリント用モールドの階層構造を、被転写材に転写する工程を説明する。
図1の(d)に示すように、基材20を用意し、基材20上に被転写材21を形成し、インプリント用モールド13の微細凹凸構造を被転写材21に転写することで、
図1の(e)に示す階層構造22を有する階層構造形成体23を得る。
【0057】
被転写材21にインプリント用モールド13の微細凹凸構造を転写する方法は、二次凹凸構造12の微細凹凸構造が転写される方法であれば、特に限定されない。例えば、UVインプリント法、熱インプリント法等が挙げられる。ただし、本形態の実施上問題がなければ、その他の転写方法を用いても構わない。
【0058】
基材20の材質は、使用する転写方法に応じて適宜選択することができる。例えば、UVインプリント法を用いる場合には、石英ガラス、シリコン、PET等が挙げられる。また、例えば、熱インプリント法を用いる場合には、石英ガラス、シリコン等が好ましい。PET等のポリマーフィルムを使用する場合には、転写時に基材20を加熱する温度が、基材20の物性が変化しない範囲である必要がある。ただし、本形態の実施上問題がなければ、その他の材質を用いても構わない。
【0059】
被転写材21の材質は、使用する転写方法に応じて適宜選択することができる。例えば、UVインプリント法を用いる場合には、光硬化性樹脂を用いるとよい。また、例えば、熱インプリント法を用いる場合には、熱可塑性樹脂を用いるとよい。ただし、本形態の実施上問題がなければ、その他の材質を用いても構わない。
【0060】
被転写材21の形成方法は、用いる樹脂の粘度に応じて適宜選択することができる。例えば、バーコート法、スピンコート法、ダイコート法等が挙げられる。ただし、本形態の実施上問題がなければ、その他の形成方法を用いても構わない。
【0061】
得られた階層構造形成体23は、撥水、反射防止、放熱、接着等の用途に使用することができる。なお、階層構造形成体23は上述した方法以外の方法で製造してもよい。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
以下に、本発明の実施例について説明する。
まず、シリコンウエハからなる基材10を用意し(
図1の(a))、基材10の表面上に周期25μm、直径10μm、深さ10μmの円形の凹部をフォトリソグラフィ法により形成し、一次凹凸構造11を形成した(
図1の(b))。
【0063】
次に、一次凹凸構造11の表面上に、窒化クロムからなる二次凹凸構造12を反応性スパッタリング法により形成し、階層構造を有するインプリント用モールド13を得た(
図1の(c))。
【0064】
スパッタリングに用いたクロムターゲットは純度99.995%である。また、T−Sポジションは250mmとした。スパッタチャンバ内にアルゴンを90sccm、窒素を10sccm導入し、スパッタチャンバ内の圧力を0.3Paとし、DC電源により600Wをターゲット下部の電極へ印加してプラズマ放電させた。
【0065】
図4Aに、窒化クロムからなる二次凹凸構造12の表面SEM画像を示す。二次凹凸構造12の周期wは27nm、深さdは12nmであった。
【0066】
次に、PETフィルムからなる基材20を用意し、基材20の表面に、光硬化性樹脂をバーコーターで塗布し、膜厚20μmの被転写材21を形成した(
図1の(d))。
【0067】
次に、基材20上に形成された被転写材21に対して、二次凹凸構造12面側が接触するようにインプリント用モールド13を押し当てたまま、基材20側からUV光を照射して被転写材21を硬化させ、インプリント用モールド13を離型し、階層構造形成体23を得た(
図1の(e))。
【0068】
また、二次凹凸構造12を反応性スパッタリング法により形成する際のスパッタリング条件を変更することで、以下に示す二次凹凸構造12を有するインプリント用モールド13が得られた。なお、以下に記載の条件以外は、実施例1と同一にした。
【0069】
(実施例2)
放電電力を800W、スパッタガス圧力を0.2Pa、反応性ガス流量の比率を7%、T−Sポジションを250mm、成膜時間を10分とすると、
図4Bに示す表面形態を有する二次凹凸構造12が得られた。この場合、二次凹凸構造12の周期wは61nmであり、深さdは35nmであった。
【0070】
(実施例3)
また、放電電力を800W、スパッタガス圧力を0.2Pa、反応性ガス流量の比率を7%、T−Sポジションを250mm、成膜時間を40分とすると、
図4Cに示す表面形態を有する二次凹凸構造12が得られた。この場合、二次凹凸構造12の周期wは221nmであり、深さdは60nmであった。
【0071】
このように、発明者の実験によれば、前述したパラメータを制御することで、二次凹凸構造12の形状を容易に制御することが確認できた。このため、本発明のインプリント用モールドの製造方法によれば、用途に応じて二次凹凸構造12の形状を適宜選択することができる。