(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の電圧取得回路は、前記フォトカプラの発光ダイオードに接続され、交流電圧である前記第3電極電圧の極性が常に正極性となるように、前記第3電極電圧を嵩上げするオフセット回路を備えていることを特徴とする請求項4に記載の電圧計測装置。
前記演算手段は、前記容量検出電圧および前記注入電圧から、前記電線の心線と前記第1電極および前記第2電極との間の各静電容量を求め、これら各静電容量、前記第1電極電圧および第2電極電圧から、前記電線の電圧を求めることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電圧計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、二つの交流電圧(基準交流電圧、誘電損失電圧)の位相差を求め、求めた位相差から誘電正接を求める回路が必要となる。また、電線の導体と電極との間の結合容量を求めるために、容量が既知の2個のコンデンサ、およびこれらコンデンサを切り替えるスイッチを備えている。このため、回路構成が複雑になるという問題点を有している。
【0007】
したがって、本発明は、簡単な構成により計測電線の電圧を正確に計測することができる電圧計測装置および電圧計測方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の電圧計測装置は、電線の交流電圧を電線の絶縁被覆を通して計測する電圧計測装置において、前記絶縁被覆の周りに配置される第1電極および第2電極と、前記第1電極を前記電線のグランドと共通の第1のグランドに電気的に接続させた第1接続状態と接続させない第1非接続状態とに切り替える第1切替手段を有し、前記第1のグランドに接地され、前記交流電圧によって前記第1電極に誘起される第1電極電圧を、前記第1切替手段が前記第1接続状態であるときに取得し得る第1の電圧取得回路と、前記第2電極を前記第1のグランドに電気的に接続させた第2接続状態と接続させない第2非接続状態とに切り替える第2切替手段を有し、前記第1のグランドに接地され、前記交流電圧によって前記第2電極に誘起される第2電極電圧を、前記第2切替手段が前記第2接続状態であるときに取得し得る第2の電圧取得回路と、前記第1のグランドと絶縁されている第2のグランドに接地され、前記第1切替手段が前記第1非接続状態であり、かつ前記第2切替手段が前記第2非接続状態であるときに、注入電圧を前記第2電極に供給することにより前記第1電極に誘起された電圧を容量検出電圧として取得し得る容量検出電圧取得回路と、前記第1電極電圧、前記第2電極電圧、前記注入電圧および前記容量検出電圧から前記電線の電圧を求める演算手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、第1の電圧取得回路は、電線のグランドと共通の第1のグランドに接地されている。第1の電圧取得回路は、第1切替手段が第1電極を第1のグランドに電気的に接続させた第1接続状態であるときに、交流電圧によって第1電極に誘起される第1電極電圧を取得する。第2の電圧取得回路は、第1のグランドに接地されている。第2の電圧取得回路は、第2切替手段が第2電極を第1のグランドに電気的に接続させた第2接続状態であるときに、交流電圧によって第2電極に誘起される第2電極電圧を取得する。容量検出電圧取得回路は、第1のグランドと絶縁されている第2のグランドに接地されている。容量検出電圧取得回路は、第1切替手段が第1電極を第1のグランドに電気的に接続させない第1非接続状態であり、かつ第2切替手段が第2電極を第1のグランドに電気的に接続させない第2非接続状態であるときに、注入電圧を第2電極に供給することにより第1電極に誘起された電圧を容量検出電圧として取得する。演算手段は、第1電極電圧、第2電極電圧、注入電圧および容量検出電圧から電線の電圧を求める。
【0010】
これにより、簡単な構成にて計測対象である電線の電圧を正確に計測することができる。
【0011】
上記の電圧計測装置において、前記容量検出電圧取得回路は、前記電線の交流電圧と同じ周波数の交流の注入電圧を供給する構成としてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、容量検出電圧取得回路は、電線の交流電圧と同じ周波数の交流の注入電圧を第2電極に供給することにより第1電極に誘起された電圧を容量検出電圧として取得する。これにより、電線の交流電圧の周波数と注入電圧の周波数との違いに起因する電線の絶縁被覆の比誘電率の違いの影響を受けなくなり、電線の電圧を、温度や湿度の変化の影響を受けることなく、正確に計測することができる。
【0013】
上記の電圧計測装置は、前記絶縁被覆の周りに配置される第3電極と、前記第1のグランドに接地され、前記交流電圧によって前記第3電極に誘起される第3電極電圧を取得する第3の電圧取得回路と、前記第3電極電圧に比例した電圧を前記注入電圧として前記容量検出電圧取得回路に与え、かつ前記第3の電圧取得回路と前記容量検出電圧取得回路とを絶縁している信号伝達手段とを備えている構成としてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、第3の電圧取得回路は、交流電圧によって第3電極に誘起される第3電極電圧を取得する。信号伝達手段は、第3電極電圧に比例した電圧を注入電圧として容量検出電圧取得回路に与え、かつ第1のグランドに接地されている第3の電圧取得回路と第2のグランドに接地されている容量検出電圧取得回路とを絶縁している。
【0015】
これにより、注入電圧の供給電源を別途備えることなく、第3の電圧取得回路から容量検出電圧取得回路に対して、電線の電圧と周波数が同じで、電線の電圧に比例した注入電圧を与えることができる。
【0016】
上記の電圧計測装置において、前記信号伝達手段はフォトカプラである構成としてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、信号伝達手段がフォトカプラであるので、信号伝達手段を簡単かつ安価な構成とすることができる。
【0018】
上記の電圧計測装置において、前記第3の電圧取得回路は、前記フォトカプラの発光ダイオードに接続され、交流電圧である前記第3電極電圧の極性が常に正極性となるように、前記第3電極電圧を嵩上げするオフセット回路を備えている構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、オフセット回路により、交流電圧である第3電極電圧は、極性が常に正極性となるように嵩上げされる。これにより、信号伝達手段がフォトカプラである場合において、フォトカプラの発光ダイオードを適切に駆動し、フォトカプラによる良好な信号伝達機能を発揮させることができる。
【0020】
上記の電圧計測装置において、前記容量検出電圧および前記注入電圧は、
絶縁回路を介して前記演算手段に入力されている構成としてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、容量検出電圧および注入電圧は、
絶縁回路を介して演算手段に入力されているので、容量検出電圧取得回路と演算手段との間に、第1のグランドに接地されている回路が存在していても、第1のグランドに接地されている回路と容量検出電圧取得回路との絶縁性を確保することができる。
【0022】
上記の電圧計測装置において、前記演算手段は、前記容量検出電圧および前記注入電圧から、前記電線の心線と前記第1電極および前記第2電極との間の各静電容量を求め、これら各静電容量、前記第1電極電圧および第2電極電圧から、前記電線の電圧を求める構成としてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、演算手段は、第1電極電圧、第2電極電圧、注入電圧および容量検出電圧から電線の電圧を容易に求めることができる。
【0024】
上記の電圧計測装置において、前記注入電圧は、周波数が1kHz以下である構成としてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、容量検出電圧取得回路は、周波数が電線の交流電圧の周波数に近い好適な注入電圧を第2電極へ供給することができる。
【0026】
本発明の電圧計測方法は、電線の交流電圧を電線の絶縁被覆を通して計測する電圧計測方法において、前記電線の絶縁被覆の周りに第1電極を配置し、前記第1電極を前記電線のグランドと共通の第1のグランドに電気的に接続させた状態として、前記交流電圧によって前記第1電極に誘起される第1電極電圧を取得する第1電極電圧取得工程と、前記電線の絶縁被覆の周りに第2電極を配置し、前記第2電極を前記第1のグランドに電気的に接続させた状態として、前記交流電圧によって前記第2電極に誘起される第2電極電圧を取得する第2電極電圧取得工程と、前記第1電極および前記第2電極を前記第1のグランドに電気的に接続させない状態とし、注入電圧を前記第2電極に供給することにより、前記第1のグランドと絶縁されている第2のグランドに接地された回路にて、前記第1電極に誘起された電圧を容量検出電圧として取得する容量検出電圧取得工程と、前記第1電極電圧、前記第2電極電圧、前記注入電圧および前記容量検出電圧から前記電線の電圧を求める演算工程とを備えていることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、上記の電圧計測装置と同様に、簡単な構成により計測対象である電線の電圧を正確に計測することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の構成によれば、簡単な構成により計測対象である電線の電圧を正確に計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の実施の形態の電圧計測装置1の構成を示す回路図である。
図2は、
図1に示した電圧計測装置1の回路図において、容量検出電圧取得回路64を他の回路と区別し、破線にて示した回路図である。
【0031】
〔電圧計測装置1の概要〕
本実施の形態の電圧計測装置1は、次の手順によって計測電線11の電圧(以下、計測電圧VLと称する)を計測する方式である。すなわち、
図1に示す電圧(注入電圧)Vin、電圧(容量検出電圧)V2、電圧V(第1電極電圧)11および電圧V(第2電極電圧)12を計測する。次に、電圧Vinおよび電圧V2に基づいて、第1電極21と計測電線11の心線との結合容量CL1、および第2電極22と計測電線11の心線との結合容量CL2を求める。次に、これら結合容量CL1、CL2、電圧V11およびV12に基づいて計測電圧VLを求める。計測電圧VLを求める手順の詳細については後述する。
【0032】
ここで、本実施形態において、接地については、電圧計測対象の電線のアースと同じアースへの接地(例えば
図1のGND1(第1のグランド);以下、アース接続と称する)と、電圧計測装置1のフレームへの接地(例えば
図1のGND2(第2のグランド);以下、フレーム接続と称する)とを区別して示している。これらアース接続とフレーム接続とは互いに電気的に絶縁されている。
【0033】
〔電圧計測装置1の構成〕
電圧計測装置1は、電圧計測対象の被覆電線である計測電線(電線)11の電圧を計測するものである。
図1および
図2に示すように、電圧計測装置1は、第1電極21、第2電極22、第3電極23、計算部(演算手段)24、計算部24へ電圧Vin(注入電圧)、電圧V2(容量検出電圧)、電圧V11(第1電極電圧)および電圧V12(第2電極電圧)を供給する各回路、および電源回路44を備えている。第1電極21〜第3電極23は計測電線11の外周に配置できるように、計測電線11の方向に所定幅を有する円弧形状となっている。なお、第1電極21および基準電極22の形状は、これに限定されず、例えば平板状など、計測電線11に接することができる形状であればよい。
【0034】
第1電極21は、直列接続された抵抗R11およびスイッチ(第1切替手段)SW1を介してアース接続されている。
【0035】
第1電極21から計算部24に至る回路は、第1および第2の回路が並列に存在する。第1の回路には、演算増幅器31および抵抗R2、A/D変換器32、並びに絶縁回路41が直列に設けられている。第2の回路には、演算増幅器33およびA/D変換器34が直列に設けられている。
【0036】
第1電極21に接続されている、抵抗R11およびスイッチSW1を含む回路、並びに上記第2の回路は、第1電極電圧取得回路(第1の電圧取得回路)61を構成している。
【0037】
上記第1の回路において、抵抗R2は、演算増幅器31の反転入力端子31aと出力端子31cとの間に接続されている。演算増幅器31の非反転入力端子31bは、フレーム接続(GND2)されている。
【0038】
第2電極22は、直列接続された抵抗R12およびスイッチ(第2切替手段)SW2を介してアース接続(GND1)されている。第2電極22から計算部24に至る回路には、演算増幅器35およびA/D変換器36が直列に設けられている。第2電極22に接続されている、抵抗R12およびスイッチSW2を含む回路、並びに演算増幅器35およびA/D変換器36を含む回路は、第2電極電圧取得回路(第2の電圧取得回路)62を構成している。
【0039】
第3電極23から計算部24に至る回路には、演算増幅器37および抵抗Rf1、抵抗RF2、フォトカプラ(信号伝達手段)42、演算増幅器38、A/D変換器39、並びに絶縁回路43が直列に設けられている。演算増幅器38とA/D変換器39との間には第2電極22が接続されている。
【0040】
なお、絶縁回路41,43は、A/D変換器32,39を出力を計算部に24へ入力させ、かつ絶縁回路41,43の左右の回路を絶縁するものであり、このような機能を有する従来周知の汎用の回路や部品を使用することができる。
【0041】
抵抗Rf1は、演算増幅器37の反転入力端子37aと出力端子37cとの間に接続されている。演算増幅器37の非反転入力端子37bは、DCオフセット回路40と接続されている。DCオフセット回路40は、第3電極23に誘起される正弦波の電圧が正極性の領域で変化するように、演算増幅器37にDCオフセット電圧(Voffset)を与えて、負電圧分を嵩上げするものである。
【0042】
フォトカプラ42は、アノード42a、カソード42b、コレクタ42cおよびエミッタ42の各端子を有している。フォトカプラ42のアノード42aには抵抗RF2が接続され、カソード42bはアース接続(GND1)されている。コレクタ42cは演算増幅器38と接続され、エミッタ42dはフレーム接続(GND2)されている。コレクタ42cには、電源回路44から抵抗Rt1を介して電源電圧Vcc2が供給されている。
【0043】
第3電極23と接続されている演算増幅器37および抵抗Rf1、抵抗RF2、フォトカプラ42のLED、並びにDCオフセット回路40を含む回路は、第3電極電圧取得回路(第3の電圧取得回路)63を構成している。また、上記演算増幅器33、演算増幅器35および演算増幅器38は、ボルテージフォロワを構成し、バッファとしての機能を有する。
【0044】
また、第1電極21に接続されている上記第1の回路のうち、演算増幅器31、抵抗R2、A/D変換器32、および絶縁回路41、並びにフォトカプラ42のトランジスタと絶縁回路43との間の回路(絶縁回路43を含む)、すなわちフォトカプラ42のトランジスタ、抵抗Rt1、演算増幅器38、A/D変換器39、および絶縁回路43は、容量検出電圧取得回路64を構成している。
【0045】
上記第1〜第3電極電圧取得回路61〜63はアース接続される一方、容量検出電圧取得回路64はフレーム接続され、容量検出電圧取得回路64は、第1〜第3電極電圧取得回路61〜63とは電気的に絶縁されている。
【0046】
計算部24は、計測電線11と計算部24との間の回路から入力される電圧V2、電圧V11、V12および電圧Vinに基づいて、計測電線11の心線と第1電極21および第2電極22との間の結合容量CL1、CL2を求め、これら結合容量CL1、CL2から計測電圧VLを求める。計算部24には、電源回路44から電源電圧Vcc1が供給されている。
【0047】
電源回路44は、上記のように、各部に対して電源電圧Vcc1あるいは電源電圧Vcc2を供給する。
【0048】
なお、
図1および
図2に示した回路では、計算部24は、電源電圧Vcc1が供給され、かつアース接続(GND1)された構成となっている。しかしながら、これに限定されず、計算部24は、電源電圧Vcc2が供給され、かつフレーム接続(GND2)された構成であってもよい。この場合、計算部24は、アース接続(GND1)された回路と絶縁された構成とされる。
【0049】
〔電圧計測装置1の動作〕
上記の構成において、電圧計測装置1の動作について以下に説明する。
電圧計測装置1により計測電圧VLを計測する場合には、第1電極21〜第3電極23を計測電線11の絶縁被覆の外周面に配置する。この場合に、計測電線11の心線と第1電極21〜第3電極23との間に生じる結合容量をそれぞれCL1〜CL3とする。
【0050】
(容量検出電圧取得回路64の動作)
図3は、
図1に示した電圧計測装置における容量検出電圧取得回路の動作を説明する回路図である。上記のように第1電極21〜第3電極23を配置した状態において、計算部23によってスイッチSW1,SW2がオフにされた場合(第1非接続状態および第2非接続状態)、容量検出電圧取得回路64では、
図3に示すように、二点鎖線にて示す経路にて電流が流れる。これにより、容量検出電圧取得回路64は、電圧Vinおよび電圧V2を取得する。
【0051】
具体的には、第3電極電圧取得回路63により第3電極23から取得された信号は、フォトカプラ42を介して容量検出電圧取得回路64に入力される。この信号は、計測電圧VLと同周波数の信号である。容量検出電圧取得回路64では、
図3に示した経路にて電流が流れ、第2電極22に対して信号注入が行われ、第1電極21から電圧V2を得ることができる。このとき、容量検出電圧取得回路64は第1〜第3電極電圧取得回路61〜63とは電気的に絶縁されているので、容量検出電圧取得回路64へは、第1電極21および第2電極22を介して、計測電線11の計測電圧VLによる信号が直接流入しない。したがって、電圧V2は、混合波とならず、第3電極23から注入された信号に応じた出力電圧として取り出すことができる。
【0052】
(フォトカプラ42、DCオフセット回路40および周辺回路の動作)
ここで、フォトカプラ42、DCオフセット回路40およびその周辺回路の動作について説明する。
図4は、第3電極電圧取得回路63(フォトカプラ42のLED側の回路)の動作を説明する回路図である。
図5は、容量検出電圧取得回路64(フォトカプラ42のトランジスタ側の回路)の動作を説明する回路図である。
【0053】
図4において、計測電圧VLが正弦波(交流)であるため、第3電極23に誘起される電圧(信号)、第3電極23の結合容量CL3を流れる全体電流I、およびフォトカプラ42のLEDを流れる電流I1も正弦波(交流)となる。一方、フォトカプラ42のLEDは負電圧には反応しない。そこで、DCオフセット回路40は、上記正弦波が正極性の領域で変化するように、演算増幅器37にDCオフセット電圧(Voffset)を与え、第3電極23に誘起される電圧の負電圧分を嵩上げしている。
【0054】
この場合、フォトカプラ42のLEDの順電圧をVf、演算増幅器37の出力電圧をVoとすると、出力電圧VoおよびLEDを流れる電流I1は、
Vo=Voffset−Rf1×I
I1=(Vo−Vf)/Rf2
となる。
【0055】
次に、
図5において、フォトカプラ42のトランジスタを流れる電流をI2、演算増幅器38の出力電圧をVbufとすると、電流I2および出力電圧Vbufは、
Vbuf=Vcc2−Rt1×I2
I2=a×I1 (aはフォトカプラ42のトランジスタの増幅率)
となる。なお、Vbuf=Vinである。
【0056】
次に、上記の各式を用いて出力電圧Vbufの式を書き換えると、
Vbuf=Vcc2−Rt1×a×I1
=Vcc2−(Rt1/Rf2)×a×(Vo−Vf)
=Vcc2−(Rt1/Rf2)×a×(Voffset−Rf1×I−Vf)
となる。
【0057】
上記Vbufの式において、電流Iは正弦波であり、電流I以外の要素は固定値である。したがって、Vbuf(=Vin)は、結合容量CL3を流れる全体電流Iと同じ周波数の正弦波となる。
【0058】
(第1および第2電極電圧取得回路61,62の動作)
図6は、第1電極電圧取得回路61および第2電極電圧取得回路62の動作を説明する回路図である。
【0059】
一方、電圧計測装置1において、計算部23がスイッチSW1,SW2をオンにすると(第1接続状態および第2接続状態)、
図6に示すように、第1電極電圧取得回路61では破線にて示す経路にて電流が流れ、第2電極電圧取得回路62では一点鎖線にて示す経路にて電流が流れる。第1電極電圧取得回路61はV11を取得するものであり、第2電極電圧取得回路62はV12を取得するものである。
【0060】
具体的には、計算部23によりスイッチSW1がオンにされることにより、第1電極21から、抵抗R11、スイッチSW1、およびアース接続された計測電線11を経て第1電極21に至るループにて電流が流れる。また、計算部23によりスイッチSW2がオンにされることにより、第2電極22から、抵抗R12、スイッチSW2、およびアース接続された計測電線11を経て第2電極22に至るループにて電流が流れる。
【0061】
第1電極電圧取得回路61では、計測電圧VLにより第1電極21に電圧V11が誘起され、この電圧V11は、演算増幅器33およびA/D変換器34を経て計算部24に入力される。同様に、第2電極電圧取得回路62では、計測電圧VLにより第2電極22に電圧V12が誘起され、この電圧V12は、演算増幅器35およびA/D変換器36を経て計算部24に入力される。
【0062】
(計算部24の動作)
計算部24は、まず、容量検出電圧取得回路64から入力された電圧Vinおよび電圧V2から、第1電極21と計測電線11の心線との結合容量CL1、および第2電極22と計測電線11の心線との結合容量CL2を算出する。この場合、計算部24は、
図7に示す回路に基づいて、結合容量CL1と結合容量CL2との合成容量CLを求める。
図7は、
図3に示した容量検出電圧取得回路64の等価回路である。
【0063】
図7において、合成容量CLと抵抗R2とは直列接続であるから、
図7の回路のインピーダンスZの絶対値は、式(1)のようになる。
【0065】
電圧V2は、合成容量CLと抵抗R2とで電圧Vinを分圧した場合の抵抗R2の両端の電圧であるから、式(2)のようになる。
【0067】
式(2)を合成容量CLで整理すると、式(3)のようになる。
【0069】
また、合成容量CLと結合容量CL1および結合容量CL2には、式(4)の関係がある。
【0071】
次に、計算部24は、第1電極電圧取得回路61から入力された電圧V11、および第2電極電圧取得回路62から入力された電圧V12から、結合容量CL1と結合容量CL2との比を算出する。
図8は、
図6に示した第1電極電圧取得回路61の等価回路、
図9は、
図6に示した第2電極電圧取得回路62の等価回路である。
【0072】
図8において、結合容量CL1と抵抗R11とは直列接続であるから、
図8の回路のインピーダンスZの絶対値は、式(5)のようになる。
【0074】
電圧V11は、結合容量CL1と抵抗R11とで計測電圧VLを分圧した場合の抵抗R11の両端の電圧であるから、式(6)のようになる。
【0076】
図9の回路は
図8の回路と同じ構成であるから、電圧12は、電圧11と同様にして、式(7)のようになる。
【0078】
また、式(6)を計測電圧VLについて整理すると、式(8)のようになる。
【0080】
式(6)および(7)から、R11=R12として、V12/V11とすると、未知数であるVLを消すことができ、式(9)のようになる。
【0082】
次に、計算部24は、下記の計算により、計測電圧VLを求める。まず、入力された電圧V2から、式(3)により合成容量CLを算出する。次に、算出した合成容量CLおよび式(4)から、結合容量CL2を算出する。この場合の結合容量CL2の計算は次のようになる。
【0083】
CL2=(1−CL)/(CL−1)×CL1
次に、算出したCL2を式(9)に代入すると、未知数が結合容量CL1のみとなり、結合容量CL1を算出することができる。次に、算出した結合容量CL1を式(8)に代入して、計測電圧VLを算出する。
【0084】
上記のように、電圧計測装置1では、計算部23によりスイッチSW1,SW2がオフにされた場合に、容量検出電圧取得回路64が形成され、計算部23によりスイッチSW1,SW2がオンにされた場合に、第1電極電圧取得回路61および第2電極電圧取得回路62が形成される。さらに、容量検出電圧取得回路64と第1〜第3電極電圧取得回路61〜63とは電気的に互いに絶縁されている。
【0085】
したがって、容量検出電圧取得回路64では、計測電圧VLによって第3電極23に誘起された信号(注入信号)が第2電極22に注入され、第3電極23からは、第2電極22への注入信号によって第1電極21に誘起された電圧V2のみを取り出すことができる。また、第1電極電圧取得回路61および第2電極電圧取得回路62では、それぞれ計測電圧VLによって第1電極21に誘起される電圧V11、および計測電圧VLによって第2電極22に誘起される電圧V12を取り出すことができる。計算部24は、電圧Vinおよび電圧V2に基づいて計測電線11の心線と第1電極21および第2電極22との間の結合容量CL1、CL2を求める。さらに、計算部24は、これら結合容量CL1,CL2、電圧V11および電圧V12から計測電圧VLを求める。
【0086】
これにより、電圧計測装置1では、電圧V2を得るために、混合波を分離する手段を必要とせず、分離精度による計測値誤差が生じることがない。したがって、電圧計測装置1では、計測電圧VLを簡単な構成にて正確に計測することができる。
【0087】
〔電圧計測装置1の実体的な形態例〕
図10は、電圧計測装置1の実体的な形態例を示す縦断面図、
図11は
図10に示した検出ユニットの斜視図である。なお、
図4および
図5に示した構成は、他の実施の形態の電圧計測装置についても同様である。
【0088】
図10に示すように、電圧計測装置1は、検出ユニット141と計算部24とを備えている。検出ユニット141は、上筐体部143と下筐体部144とに分離された筐体部142を備えている。上筐体部143と下筐体部144とはヒンジ145によって連結され、上筐体部143は下筐体部144に対して開閉可能となっている。また、筐体部142の内面には、シールド板146が設けられている。
【0089】
下筐体部144の上面部には、第2電極22および第3電極23が配置され、上筐体部143の下面部には、第2電極22と対向して第1電極21が配置されている。これら第1電極21、第2電極22および第3電極23は、円筒を縦割りした形状の半円筒形に形成されている。したがって、下筐体部144に対して上筐体部143を閉じた場合に、第1電極21と第2電極22とにより円筒が形成され、計測電線11の周りに第1〜第3電極21〜23を配置できるようになっている。なお、
図10において、符号12は計測電線11の心線、符号13は計測電線11の絶縁被覆を示している。
【0090】
なお、検出ユニット141における第1〜第3電極21〜23の配置形態については、上記のものに限定されず、下筐体部144に対して上筐体部143を閉じた場合に、計測電線11の周りに第1〜第3電極21〜23を配置できるようになっていればよい。
【0091】
下筐体部144の内部には、検出回路基板147が配置されている。検出回路基板147には、
図1に示した電圧計測装置1における第1〜第3電極21〜23および計算部24以外の回路が設けられている。検出回路基板147は、下筐体部144に設けられたコネクタ148、およびケーブル149を介して筐体部142の外部に配置される計算部24と接続されている。
【0092】
なお、
図1および
図10に示した電圧計測装置1は、計測電線11が単層2線の場合には1セット使用される。また、計測電線11が三相3線の場合には3セット使用される。
【0093】
また、本実施の形態では、計測電線11の電圧(計測電圧)VLを第3電極23を介して、第1電極21および第2電極22に印加する構成とした。しかしながら、これに代えて、計測電線11と独立した交流電圧発生源(周波数が1kHz以下)から第1電極21よび第2電極22に電圧を印加し、電圧Vinおよび電圧V2を取得してもよい。この場合、交流電圧発生源による交流電圧は、計測電線11の電圧(計測電圧)VLの周波数に近い方が好ましく、例えば200Hz以下であればなお好ましい。交流電圧発生源は、演算増幅器38の出力端子から交流を発生するようにして、GND2に接地されるように接続すればよい。この場合、第3電極23、演算増幅器37、フォトカプラ42および電源電圧Vcc2(Vcc2を供給する電源)は不要となる。
【0094】
また、本実施の形態では、計算部24がスイッチSW1,SW2をオンオフ制御する構成としたが、スイッチSW1,SW2は、外部から制御されてもよい。この場合、計算部24は、スイッチSW1,SW2のオンオフ制御に関する情報(どのタイミングでオンにし、どのタイミングでオフにするかの情報)を得て適切なタイミングにて電圧を取得する。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。